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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】発泡成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/04 20060101AFI20230501BHJP
【FI】
C08J9/04 CEZ
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020104096
(22)【出願日】2020-05-20
(65)【公開番号】P2021006622
(43)【公開日】2021-01-21
【審査請求日】2021-10-15
(31)【優先権主張番号】P 2019131475
(32)【優先日】2019-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】305011787
【氏名又は名称】睦月電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】満永 章
(72)【発明者】
【氏名】平岡 重道
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特公昭41-016075(JP,B1)
【文献】特開2016-064626(JP,A)
【文献】特表平06-500806(JP,A)
【文献】特開2014-058658(JP,A)
【文献】特開平04-320433(JP,A)
【文献】特開2003-192818(JP,A)
【文献】特公昭55-010557(JP,B2)
【文献】米国特許第06140380(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00- 9/42
B29C 44/00-44/60;67/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項2】
前記発泡剤形成工程において、硼砂、硼酸などの硼素化合物や水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムなどの水溶性金属化合物を1種または2種以上組み合わせて前記水溶性アルカリ珪酸塩に混合し処理して粒子状の発泡剤を得ることを特徴とする請求項1に記載の発泡成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性アルカリ珪酸塩を処理して形成した発泡剤を用いた熱可塑性樹脂材の発泡成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水ガラスなどの水溶性アルカリ珪酸塩の発泡剤を用いた熱可塑性樹脂材の発泡成形体は種々提案されている。
【0003】
水ガラスなどの水溶性アルカリ珪酸塩の発泡剤を用いた熱可塑性樹脂材の発泡成形体の単体として、特許文献1にて、重量比でMO・nSiO=21~85:100:3~150(ただしMはアルカリ金属)で表される発泡性組成物(アルカリ無水珪酸)をポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4弗化エチレン、ポリ塩化ビニール、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリメタクリル酸エステル、ポリカーボネート、ポリアミド、飽和ポリエステルなどの熱可塑性樹脂と混合させて、その混合物を約80℃で水和水の一部を放出して水蒸気を発生し、その水蒸気の圧力によって小さな気泡は膨張して互いに連結して気泡内の圧力差によって隔膜が破れ、連続気泡体となった気泡の周囲に熱可塑性樹脂の被膜が形成された発泡体の製造方法が提案されている。
【0004】
しかし、特許文献1の熱可塑性樹脂の発泡体においては、前記発泡性組成物が酸化アルカリ、無水珪酸、水に換算した重量比を特定して乾燥させているが、所定のモル比の水溶性アルカリ珪酸塩を所定の含水分量となるように処理することは開示されておらず、また、発泡剤を熱可塑性樹脂材に接触させた状態で熱可塑性樹脂材の溶融温度以上の加熱により発泡剤を発泡させて溶融した多数個の気泡部の表面を被覆するとともに多数個の気泡部間を連結させることは開示されていない。
【0005】
また、水ガラス・硼砂の混合発泡剤を用いてその発泡剤を合成樹脂に添加させる発泡成形体として、特許文献2にて、トリクロルエチレン1000ccに硼砂120gを投入し攪拌して溶解せしめた中に水ガラス(2号)100gを滴下しながら攪拌する作業により大体5mmφ程度の統一された白色の粒状体を成形するマイクロカプセル化にもとづき、発泡剤を100とし、ウレタン樹脂の合成樹脂を100とする割合で加熱して板状に成形した発泡成形体を得ることが開示されている。
【0006】
しかし、特許文献2の水ガラス・硼砂の混合発泡剤を用いてその発泡剤を合成樹脂に添加させる発泡成形体については開示されているが、特許文献1と同様に所定のモル比の水溶性アルカリ珪酸塩を所定の含水分量となるように処理して発泡剤を形成することや溶融した熱可塑性樹脂材の被膜で多数個の気泡部の表面を被覆するとともに前記多数個の気泡部間を連結させてできた発泡成形体を得ることは開示されていない。
【0007】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特公昭41-16075号公報
【文献】特公昭55-10557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の問題点を解消するために、水溶性アルカリ珪酸塩を処理して形成した発泡剤を用いた熱可塑性樹脂材の発泡成形体の製造方法により多数個の気泡部を確保してできた発泡成形体を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1に記載の発泡成形体の製造方法は、一般式MO・nSiO(但し、Mはナトリウムやカリウムのアルカリ金属を示し、nはモル比を示す)で表される水溶性アルカリ珪酸塩を処理して形成した粒径が500μm以下の粒子状発泡剤を熱可塑性樹脂材の存在状態で前記熱可塑性樹脂材の溶融温度で発泡させる発泡成形体の製造方法において、前記熱可塑性樹脂はスーパーエンジニアリングプラスチックであって、前記水溶性アルカリ珪酸塩としてモル比が2~3.2の珪酸ナトリウム水溶液を用い、前記モル比が2~3.2の珪酸ナトリウム水溶液を乾燥させて5~30重量%の含水分量とする珪酸ナトリウム固体を粉砕して粒径が500μm以下の粒子状の発泡剤を得る発泡剤形成工程と、前記粒子状の発泡剤と前記スーパーエンジニアリングプラスチックとを混合して混合物とする混合工程と、前記混合物を前記スーパーエンジニアリングプラスチックの融点以上の温度で加熱して前記発泡剤を発泡させて多数個の気泡部を形成するとともに前記気泡部の外周に前記溶融したスーパーエンジニアリングプラスチックの被膜を形成する加熱発泡工程と、冷却することにより前記溶融したスーパーエンジニアリングプラスチックの被膜が固化して多数個の気泡部間を前記被膜で連結させてできた発泡成形体を得る冷却工程とからなることを特徴とする。同請求項2に記載の発泡成形体の製造方法は、請求項1において、前記発泡剤形成工程において、硼砂、硼酸などの硼素化合物や水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムなどの水溶性金属化合物を1種または2種以上組み合わせて前記水溶性アルカリ珪酸塩に混合し処理して粒子状の発泡剤を得ることを特徴とす
る。
【発明の効果】
【0011】
本発明の発泡成形体の製造方法により、一般式MO・nSiO(但し、Mはナトリウムやカリウムのアルカリ金属を示し、nはモル比を示す)で表される水溶性アルカリ珪酸塩を処理して形成した粒径が500μm以下の粒子状発泡剤を熱可塑性樹脂材と接触させた状態で前記熱可塑性樹脂材の溶融温度で発泡させてできた発泡成形体において、前記熱可塑性樹脂にスーパーエンジニアリングプラスチックであって、前記発泡剤が発泡して形成された多数個の気泡部の表面を前記スーパーエンジニアリングプラスチックで被覆するとともに前記多数個の気泡部間を連結させてできた発泡成形体を得ることができ、さらに、硼砂、硼酸などの硼素化合物や水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムなどの水溶性金属化合物を1種または2種以上組み合わせて前記水溶性アルカリ珪酸塩に混合し処理して形成した発泡剤が発泡して形成された多数個の気泡部の表面を前記スーパーエンジニアリングプラスチックで被覆するとともに前記多数個の気泡部間を連結させてできた発泡成形体を得ることができるので、PPS樹脂などのスーパーエンジニアリングプラスチックを用いて多数個の気泡部を確保できて、緩衝材、断熱材、吸音材、ろ過材または電気絶縁材に有用であり、自動車、飛行機、搬送器機などの軽量化に役立て省エネルギー対策の一旦を担うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態1で発泡成形体の断面図である。
図2】本発明の実施形態2で発泡成形体の断面図である。
図3】本発明の実施形態3で発泡成形体の断面図である。
図4】本発明の発泡成形体の周囲に熱可塑性樹脂材の存在状態を示す説明図である。
図5】本発明の発泡成形体の加熱発泡状態を示す説明図である。
図6】本発明の発泡成形体の製造工程を示す作業図である。
図7】本発明の発泡成形体の斜視図である。
図8】実施例2により得た発泡成形体において図7のAA断面の拡大図である。
図9】実施例3により得た発泡成形体において図7のAA断面の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(本願の発泡成形体における発泡作用)
図1図5を参照して、以下、発泡成形体の発泡作用を説明する。なお、本発明における発泡成形体は発泡成形体の単体および複合体を含む。
【0014】
図4において、発泡剤1は、所定のモル比の水溶性アルカリ珪酸塩を所定の含水分量に処理して形成されており、好ましくは、前記所定のモル比の水溶性アルカリ珪酸塩としてモル比が2~3.2の珪酸ナトリウム水溶液を用い、5~30重量%の含水分量となるように、好ましくは15~20重量%の含水分量となるように、処理して粒径が500μm以下の粒子状に形成されている。この発泡剤1の周囲には熱可塑性樹脂材2が存在状態にあり、この熱可塑性樹脂材2は発泡剤1と接触させており、好ましくは、熱可塑性樹脂材2は発泡剤1よりも微小な粒径の固体または水分を含む半硬化体で発泡剤1と接触させている。この場合、発泡剤1を熱可塑性樹脂材2と接触させるには、発泡剤1と熱可塑性樹脂材2とを混合して混合物とすればよいので、その混合方法としては、ミキサー装置や吹き付け装置を用いて発泡剤1と熱可塑性樹脂材2とを混合させればよい。
【0015】
また、発泡剤1としては、以下、実施形態1、2および3においては、水溶性アルカリ珪酸塩を用いた発泡剤を説明するが、所定のモル比の珪酸ナトリウム水溶液に硼砂、硼酸などの硼素化合物や水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムなどの水溶性金属化合物を1種または2種以上組み合わせて所定の含水分量となるように処理した発泡剤1も同様であり、その発泡剤1を用いて熱可塑性樹脂材2の被膜を難水溶性あるいは不溶性とするように強化して、難水溶性あるいは不溶性の被膜を残存させた熱可塑性樹脂材2の独立気泡の発泡成形体を得ることができ、連続気泡からなる発泡成形体に比し、強度が向上し、断熱性や誘電率が向上する。この場合、所定のモル比の珪酸ナトリウム水溶液に硼砂、硼酸などの硼素化合物や水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムなどの水溶性金属化合物を1種または2種以上組み合わせて所定の含水分量となるように処理した発泡剤1としては、好ましくは、モル比が2~3.2の珪酸ナトリウム水溶液を用い、この珪酸ナトリウム水溶液を用い、珪酸ナトリウム塩固形物に対して硼砂、硼酸などの硼素化合物や水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムなどの水溶性金属化合物を1種または2種以上組み合わせてそれぞれを5~15重量%混合し溶解させて5~30重量%の含水分量となるように処理して粒径が500μm以下の粒子状に形成されている。
【0016】
図1図3および図5において、熱可塑性樹脂材2を発泡剤1に接触させた状態で熱可塑性樹脂材2の溶融温度以上に加熱して、気泡部1Aの表面には溶融した熱可塑性樹脂材2の被膜2Aが被覆されている。この場合、一般式MO・nSiO(但し、Mはナトリウムやカリウムのアルカリ金属を示し、nはモル比を示す)で表される水溶性アルカリ珪酸塩を用いてこれを熱可塑性樹脂材2の存在状態で熱可塑性樹脂材2の溶融温度で発泡させることのみではなく、所定のモル比の水溶性アルカリ珪酸塩を所定の含水分量に処理して形成されてできた発泡剤1を用いて、多数個の気泡部1Aを被覆するとともに多数個の気泡部1A間を連結させた発泡成形体としており、好ましくは、熱制御により急速加熱と冷却を行って、発泡作用と熱可塑性樹脂材2の溶融作用とを同時に行うようにして気泡部1Aを確保させた発泡成形体とする。この場合、好ましい発泡剤1としては、モル比が2~3.2の珪酸ナトリウム水溶液を用い5~30重量%の含水分量となるように処理して、粒径が500μm以下の粒子状に形成されており、この発泡剤1を熱可塑性樹脂材2と接触させて熱制御により急速加熱と冷却とを行なって発泡作用と熱可塑性樹脂材2の溶融作用とを同時に行うようにする必要があるので、この熱制御は、形成される発泡成形体の形状や確保する気泡部1Aの用途を考慮して、熱可塑性樹脂材2の素材に応じて発泡剤1の含水分量や粒径さらには熱可塑性樹脂材2と発泡剤1との配合比率にもとづき選定して実施すればよい。
【0017】
溶融される熱可塑性樹脂材2の素材としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニール樹脂、ABS樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂およびフッ素樹脂さらにはポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、熱可塑ポリイミド(LARC-PAI)、ポリアミドイミド、ポリアリールアミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルホン(PPSU)、ポリメタクリルイミド(PMI)などのスーパーエンジニアリングプラスチックが例示できる。また、これらの素材は2種以上の素材を混合してもよい。これらの素材にカーボン繊維材またはガラス繊維材を混合させてもよい。
【0018】
(実施形態1)
図1は、一般式MO・nSiO(但し、Mはナトリウムやカリウムのアルカリ金属を示し、nはモル比を示す)で表される水溶性アルカリ珪酸塩を処理して形成した発泡剤1を熱可塑性樹脂材2の存在状態で熱可塑性樹脂材2の溶融温度で発泡させてできた発泡成形体の表面状態を示す。
【0019】
図1において、多数個の気泡部1Aのそれぞれの周囲は熱可塑性樹脂材2の被膜2Aで覆われており、その被膜2Aは隣接する気泡部1Aの周囲の被膜2Aと連結されている。この場合、図示する表面と交叉する面も同じ状態であれば、気泡部1Aは独立気泡で構成されていることになり、この独立気泡としてはガラス被膜状バルーンが例示できる。
【0020】
(実施形態2)
図2は、実施形態1と同様に一般式MO・nSiO(但し、Mはナトリウムやカリウムのアルカリ金属を示し、nはモル比を示す)で表される水溶性アルカリ珪酸塩を処理して形成した発泡剤1を熱可塑性樹脂材2の存在状態で熱可塑性樹脂材2の溶融温度で発泡させてできた発泡成形体の表面状態を示す。
【0021】
図2において、気泡部1Aと隣接する気泡部1Aが接触しており、それぞれの周囲は熱可塑性樹脂材2の被膜2Aで覆われており、その被膜2Aは隣接する気泡部1Aの周囲の被膜2Aと連結されている。この場合、気泡部1Aは連続気泡で構成されている。
【0022】
(実施形態3)
図3は、実施形態1と同様に一般式MO・nSiO(但し、Mはナトリウムやカリウムのアルカリ金属を示し、nはモル比を示す)で表される水溶性アルカリ珪酸塩を処理して形成した発泡剤1を熱可塑性樹脂材2の存在状態で熱可塑性樹脂材2の溶融温度で発泡させてできた発泡成形体の表面状態を示す。
【0023】
図3において、気泡部1Aと隣接する気泡部1Aとが連通部1Bで連通しており、それぞれの周囲は熱可塑性樹脂材2の被膜2Aで覆われており、その被膜2Aは隣接する気泡部1Aの周囲の被膜2Aと連結されている。この場合、気泡部1Aは連続気泡で構成されている。
【0024】
(発泡成形体の製造方法)
図6は、所定のモル比の水溶性アルカリ珪酸塩としてモル比が2~3.2の珪酸ナトリウム水溶液を用いて上述の発泡成形体の実施形態1~3を得る発泡成形体の製造工程の作業図を示し、この発泡成形体の製造工程は、発泡剤形成工程101と混合工程102と加熱発泡工程103と冷却工程104とからなる。
【0025】
図6において、発泡剤形成工程101では、モル比が2~3.2の珪酸ナトリウム水溶液を5~30重量%の含水分量となるように乾燥装置(図示せず)にて乾燥させてできた珪酸ナトリウム固体を粉砕してモル比が2.2~3.2で、含水分量が5~30重量%で粒径が500μm以下で、好ましくは10~300μmからなる珪酸ナトリウムの粒子でできた粒子状の発泡剤1を得る。この場合、発泡剤1を粒子状に処理する方法としては、前記珪酸ナトリウム固体を板状に形成して後、その珪酸ナトリウム固体を粉砕装置にて粉砕して粒子状とする方法が例示できる。
【0026】
また、発泡剤形成工程101について、上記珪酸ナトリウムの粒子でできた粒子状の発泡剤1に代えて、モル比が2~3.2の水溶性アルカリ珪酸塩に硼砂、硼酸などの硼素化合物や水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムなどの水溶性金属化合物を1種または2種以上組み合わせてそれぞれを5~15重量%混合し溶解させて5~30重量%の含水分量となるように処理してガラス被膜状バルーンとなる粒子状の発泡剤を得るようにしてもよい。
【0027】
混合工程102では、粒子状の発泡剤1と熱可塑性樹脂材2とを混合して、図4に示すように発泡剤1の周囲に熱可塑性樹脂材2が存在状態となった混合物とする。その混合方法としては双方を混ぜるミキサー装置や一方を他方に吹き付ける吹き付け装置にて行う方法が例示できる。
【0028】
加熱発泡工程103では、加熱装置(図示せず)にて前記混合物を熱可塑性樹脂材2の融点以上の温度で加熱して発泡剤1を発泡させて、図5に示すように、多数個の気泡部1Aを形成するとともに気泡部1Aの外周に溶融した熱可塑性樹脂材2の被膜2Aを形成する。熱可塑性樹脂材2の融点以上の温度としては、PPS樹脂の場合は300℃で20分間の加熱が例示できる。
【0029】
冷却工程104では、加熱発泡工程103で作業して後、冷却装置(図示せず)にて冷却処理することにより溶融した熱可塑性樹脂材2の被膜2Aが固化して多数個の気泡部1A間を熱可塑性樹脂材2で連結させてできた発泡成形体を得る。
【0030】
(実施例1)
富士化学株式会社製のモル比3.17の3号珪酸ナトリウムの61%水溶液とモル比2.10の1号珪酸ナトリウムの53%水溶液とからモル比2.5になる配合の珪酸ナトリウムの57%水溶液を用意し、140℃で熱処理して含水分量が23重量%の珪酸ナトリウムの固形体を得て、その固形体を粉砕処理して3種の粒径の粒子状に形成された発泡剤20gとDIC株式会社製PPS樹脂MA―520粉末60gとを混合して、300℃で20分間加熱して、冷却して、図7に示すように縦の長さXが120mmで横の長さYが120mmで厚さZが15mmの板材の発泡成形体を得て3種の粒径の粒子状に形成された発泡剤に対する発泡成形体の気泡部径を観察する発泡成形体の確認サンプルを用意して、発泡剤の粒径毎に気泡部径を観察した結果、下表のとおりとなった。
【0031】
(実施例2)
富士化学株式会社製のモル比3.17の3号珪酸ナトリウムの61%水溶液を用意し、140℃で熱処理して含水分量が20重量%の珪酸ナトリウムの固形体を得て、固形体を粉砕して、粒子状の発泡剤25gと東レ株式会社製PPS樹脂PN-50NNAAの粉末70gとを混合して、300℃で20分間加熱して、冷却して、実施例1と同様に、図7に示すように縦の長さXが120mmで横の長さYが120mmで厚さZが15mmの板材の発泡成形体を得て、3種の粒径の粒子状に形成された発泡剤に対する発泡成形体の気泡部径を観察する発泡成形体の確認サンプルを用意して、発泡剤の粒径毎に気泡部径を観察した結果、下表のとおりとなった。
【0032】
(実施例3)
富士化学株式会社製のモル比3.17の3号珪酸ナトリウムの61%水溶液を用意し、この水溶液に珪酸ナトリウム塩固形物に対して12.5重量%の硼砂と5重量%水酸化マグネシウムとを混合してこれを140℃で熱処理して含水分量が18重量%の珪酸ナトリウムの固形体を得て、固形体を粉砕して、粒子状の発泡剤25gと東レ株式会社製PPS樹脂PN-50NNAAの粉末70gとを混合して、300℃で20分間加熱して、冷却して、実施例1と同様に、実施例1および2と同様に、図7に示すように縦の長さXが120mmで横の長さYが120mmで厚さZが15mmの板材の発泡成形体を得て、3種の粒径の粒子状に形成された発泡剤に対する発泡成形体の気泡部径を観察する発泡成形体の確認サンプルを用意して、発泡剤の粒径毎に気泡部径を観察した結果、下表のとおりとなった。
【0033】
図8は、実施例2に示す珪酸ナトリウムとPPS樹脂とからなり、粒径100~290μmの発泡剤により得られたPPS樹脂発泡成形体の確認サンプルについて図7のAA断面における7.5倍に拡大した断面図を示す。この図8に示す拡大断面図においては、確認サンプルが板材の発泡成形体をAA方向の切断により多数個の気泡部1Aが切断されるので、気泡部1A毎にその切断面と交叉した面(厚さZ方向)の種々の位置で切断されて、種々の切断形状を呈しているが、この確認サンプルにおいては、気泡部1Aの形状は、図1から図3に示す発泡成形体の実施形態1から実施形態3の気泡部1Aが混在し、それぞれの周囲は熱可塑性樹脂材2の被膜2Aで覆われており、その被膜2Aは隣接する気泡部1Aの周囲の被膜2Aで連結されていることが確認できた。
【0034】
図9は、実施例3に示す硼砂と水酸化マグネシウムとを混合した珪酸ナトリウムとPPS樹脂とからなり、粒径100~290μmの発泡剤により得られたPPS樹脂発泡成形体の確認サンプルについて図7のAA断面における7.5倍に拡大した断面図を示す。この図9に示す拡大断面図においては、確認サンプルが板材の発泡成形体をAA方向の切断により多数個の気泡部1Aが切断されるので、気泡部1A毎にその切断面と交叉した面(厚さZ方向)の種々の位置で切断されて、種々の切断形状を呈しているが、この確認サンプルにおいて白色の円形部位はガラス被膜状バルーンである気泡部1Aに相当し、図8に比し略均一に分布しており、図1に示す実施形態1に相当してこれら気泡部1Aは独立気泡で構成されて、それぞれの周囲は熱可塑性樹脂材2の被膜2Aで覆われており、その被膜2Aは隣接する気泡部1Aの周囲の被膜2Aで連結されていることが確認できた。
【0035】
従って、実施例1および2に示す確認サンプルを用意して、モル比が2~3.2の珪酸ナトリウム水溶液を乾燥させて含水分量が5~30重量%となった珪酸ナトリウム固体を粉砕して粒径が500μm以下、好ましくは10~300μmの粒子状の発泡剤をPPS樹脂の粉末とともに300℃で加熱発泡させることにより、実施例1および2の確認サンプルにて気泡部1Aを確保した発泡成形体が得られることが立証できた。さらに、実施例3に示す確認サンプルを用意して、モル比が2~3.2の水溶性アルカリ珪酸塩に硼砂、硼酸などの硼素化合物や水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムなどの水溶性金属化合物を1種または2種以上組み合わせてそれぞれを5~15重量%混合し溶解させて5~30重量%の含水分量となるように処理して粒径が500μm以下、好ましくは10~300μmの粒子状の発泡剤をPPS樹脂の粉末とともに300℃で加熱発泡させることにより、実施例3の確認サンプルにてガラス被膜状バルーンの気泡部1Aを確保した発泡成形体が得られることが立証できた。
【0036】
このようにして、本発明の水溶性アルカリ珪酸塩の発泡剤を用いた熱可塑性樹脂材の発泡成形体の製造方法により多数個の気泡部を確保する発泡成形体が得られるが、モル比が2~3.2の水溶性アルカリ珪酸塩に硼砂、硼酸などの硼素化合物や水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムなどの水溶性金属化合物を1種または2種以上組み合わせてそれぞれを5~15重量%混合し溶解させて5~30重量%の含水分量となるように処理してできた粒子状の発泡剤を用いる場合、発泡剤形成工程101において、その粒子状の発泡剤と熱可塑性樹脂材との混合物を熱可塑性樹脂材の融点以上の温度で所定時間加熱するに際しその温度は一定の温度(実施例3においては300℃で20分間)で行っているが、2段階(実施例3においては285℃で10分間と300℃で10分間)の温度制御で行ってもよい。また、加圧させながら加熱することにより、形成されるガラス被膜状バルーンの発泡を遅延させて発泡成形を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は発泡成形体を単体または複合体で構成して、緩衝材、断熱材、吸音材、ろ過材または電気絶縁材に有用であり、特に、スーパーエンジニアリングプラスチックの存在状態で珪酸ナトリウムの発泡剤を有効に活用してスーパーエンジニアリングプラスチックを採用した発泡成形体を提供することにより、自動車、飛行機、搬送器機などの軽量化に役立て省エネルギー対策の一旦を担うことができる。
【符号の説明】
【0038】
1 発泡剤
1A 気泡部
2 熱可塑性樹脂材
2A 被膜
101 発泡剤形成工程
102 混合工程
103 加熱発泡工程
104 冷却工程
できた発泡成形体の表面状態を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9