(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】男性の避妊のための非ホルモン性組成物および方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/404 20060101AFI20230501BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20230501BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20230501BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20230501BHJP
A61K 45/06 20060101ALI20230501BHJP
A61P 15/16 20060101ALI20230501BHJP
A61P 15/10 20060101ALI20230501BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
A61K31/404
A61K47/38
A61K9/16
A61K9/48
A61K45/06
A61P15/16
A61P15/10
A61P43/00 111
(21)【出願番号】P 2021500350
(86)(22)【出願日】2019-03-22
(86)【国際出願番号】 EP2019057267
(87)【国際公開番号】W WO2019180217
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2022-03-18
(32)【優先日】2018-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2018-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523110905
【氏名又は名称】ファーマジョール インターナショナル
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】エル グラウィ,ギヨーム
(72)【発明者】
【氏名】エル グラウィ,メフディ
(72)【発明者】
【氏名】ペラン,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ドルーピー,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】アガトン-メリアウ,ベロニク
【審査官】新熊 忠信
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0242717(US,A1)
【文献】International Journal of Impotence Research,2009年,Vol.21,pp.306-310
【文献】Andrology,2015年,Vol.3,pp.1076-1081
【文献】Indian Journal of Urology,2018年01月01日,Vol.34, Supplement 1,p.S7, Abstract No.BKP02
【文献】Urology,2012年,Vol.80,pp.614-617
【文献】Medical Hypotheses,2009年,Vol.73,pp.140-141
【文献】Contraception,1988年,Vol.37, No.6,pp.621-629
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61K 45/00-45/08
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61P 15/00
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
男性対象のための非ホルモン性避妊法における使用のための組成物であって、
前記組成物は、
α-1-アドレナリン受容体アンタゴニストと、
少なくとも1つの薬学的に許容される担体と
を含む徐放製剤であり、
前記避妊法が、毎日ほぼ同じ時間での前記組成物の1日1回の投与を含み、前記男性対象に持続的で可逆性の無精液症、無精子症、または重篤な精子減少症をもたらし、
前記α-1-アドレナリン受容体アンタゴニストが(R)-シロドシンであ
り、
前記組成物は、少なくとも1つのコーティングされた粒子の形態に製剤化されており、
前記コーティングされた粒子は、(i)不活性なコアと、(ii)前記不活性なコアに適用された薬物層であって、(R)-シロドシンおよび結合剤を含む、薬物層と、(iii)前記薬物層を囲む徐放コーティングと、を含み、
前記コーティングされた粒子の平均粒径は、0.01~5mmの範囲にあり、
(R)-シロドシンが、約4~約30mgの範囲の量である、
組成物。
【請求項2】
前記組成物が、経口投与される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記避妊法が、少なくとも8日間行われる、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
(R)-シロドシンが、約4~約20mgの範囲の量である、請求項
1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
(R)-シロドシンが、約8~約12mgの範囲の量である、請求項
4に記載の組成物。
【請求項6】
(R)-シロドシンが、多形またはアモルファスの形態である、請求項1~
5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1つの
コーティングされた粒子の平均粒径が、0.1~2mmである、請求項
1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記粒子が、カプセルに包有されており、各カプセルが、1日用量に達するために十分な数の粒子により充填されている、請求項
1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記避妊が、前記男性対象による食物摂取とは無関係に達成される、請求項1~
8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
毎日の投与の避妊法が、勃起不全の処置に適したさらなる組成物の同時投与または逐次投与をさらに含む、請求項1~
9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記さらなる組成物が、ホスホジエステラーゼ5阻害剤を含む、請求項
10に記載の組成物。
【請求項12】
それぞれの単位用量が1日用量である、請求項1~
9のいずれか1項に記載の組成物の少なくとも7、14、28、56、84、もしくは168~365単位用量を含むかまたは10、20、30、60、90、もしくは180~360単位用量を含む、避妊用キット。
【請求項13】
前記組成物が、約
4~約
20mgの範囲の量の(R)-シロドシンを含む、請求項
12に記載の避妊用キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、男性の避妊のための非ホルモン性組成物および方法に関する。より具体的には、本発明は、男性対象に、持続的な避妊効果に十分な、無精液症、無精子症、または重篤な精子減少症の可逆的な状態を誘導する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
女性の避妊に関する医薬組成物および方法は、何十年もの間当該分野で十分に知られているが、男性の避妊に関しては同じことを言うことができない。このような製品の著しい需要は、各男性対象の個別のニーズに基づくものであり、たとえば、いずれかの女性のパートナーへの経口ホルモン剤による避妊の負担を低減するため、または女性の避妊に関連する失敗の可能性を最小限にするための要望およびニーズを含み得る。この需要にも関わらず、男性用の避妊用の医薬組成物および方法の開発は、大きな医学的課題であることが判明している。
【0003】
現在、利用可能な避妊法の大部分は、女性用の避妊薬である。受胎調節の責任を担いたい男性にとっての選択肢はほとんどなく、これは、主にコンドームなどの予防方法の使用ということになる。コンドームの多くの欠点は、この分野でよく知られており、失敗の可能性(すなわち破損または不適切な使用)および性的感覚の減少が挙げられる。男性が利用可能な別の避妊の選択肢は、男性の精管を切断し、尿道に精子が入らないような方法で結索または密閉する手法である、精管切除術を含む外科的な選択肢である。精管切除術は、通常、永続的な不妊方法とみなされており、容易に元に戻らず、よって、将来のいずれかの時点で子供を持ちたいと願ういずれの男性対象にとっても実行可能な選択肢ではない。
【0004】
この観点から、安全であり有効なホルモンベースまたは化学物質ベースの男性用の可逆的な避妊薬を発見するための試みがなされてきた。歴史的に、ほとんどの治療上の標的は、ホルモンであり、よって、性的欲望の喪失、生殖能力の喪失(たとえば勃起不全、乳房の圧痛および乳房組織の成長、精巣および陰茎の縮小、または筋肉質量の喪失)、うつ、起こり得る自殺念慮、頭脳明晰さの減少、体重増加、疲労、またはホットフラッシュなどの、耐えられない性的、行動上、生理的、および心理的な副作用を有する可能性がある。
【0005】
ホルモンによる避妊法は、同様に、たとえば高用量が必要であること(Guerin et al, INTERNATIONAL JOURNAL10 OF ANDROLOGY, 1988, 11 (3), 187-199)または頻繁な注射スケジュール(World Health Organization Task Force on Methods for the Regulation of Male Fertility, FERTIL. STERIL., 1996, 65(4), 821-829)を含む他の欠点を有する
【0006】
男性の泌尿器の平滑筋は、高密度のα-1-アドレナリン受容体を含んでおり、いくつかのα-1-アドレナリン受容体のサブタイプ、すなわちα-1a、α-1b、およびα-1dのアドナリン受容体のサブタイプが同定されている。α-1a-アドレナリン受容体のサブタイプは、ヒトの前立腺で顕著であることが記載されており、男性の生殖器系組織(精巣、精巣上体、精嚢、および前立腺)に存在している(Patrao et al, MHR-BASIC SCIENCE OF REPRODUCTIVE MEDECINE, 2008, 14 (2), 85-96)。
【0007】
α-1-アドレナリン受容体アンタゴニスト(α-1遮断剤またはα-1-アドレナリン遮断剤としても知られている)は、動脈、平滑筋、および中枢神経系の組織においてα-1-アドレナリン受容体を遮断するクラスの薬物を構成する。ヒトに投与される場合、これらは、ホルモンであるノルエピネフリンが小さな動脈壁および静脈壁の筋肉を収縮させないようにし、よって血管を開口および弛緩させたままにする。これは、血流を改善し、血圧を低下させる。またα-遮断剤は全身の他の筋肉をも弛緩させるため、これら薬物処方は、良性前立腺肥大(「BPH」)などの前立腺の問題を有する高齢の男性において尿流の改善を支援し得る。
【0008】
しかしながら、α-1-アドレナリン受容体アンタゴニストの投与は、低血圧、眼瞼下垂、鼻漏、疲労、頭痛、または下痢などの負の副作用を誘導し得る。
【0009】
α-1-アドレナリン受容体アンタゴニストのタムスロシンは、BPHの処置のためのたとえばFlomax(登録商標)といった商標名としてタムスロシン塩酸塩、((-)-(R)-5-[2-[[2-(o-エトキシフェノキシ)エチル]アミノ]プロピル]-2-メトキシ-ベンゼンスルホンアミド、一塩酸塩)として市販されている。Wangらは、0.4または0.8mgのタムスロシンの単回投与後の精液量の用量依存的な減少を報告した(Wang J et al., Assessment of Tamsulosin as a Potential Male Contraceptive in Healthy Volunteers. UROLOGY (2012) 10 80: 614-617)。精液量は、投与から4時間後または6時間後に評価された。完全な無射精が、0.8mgの用量で達成され、著者らは、0.4mgで「機能的な精子数が有意に減少した」ことを報告した。リビドーおよびオーガズムは、全ての志願者で正常であった。射精時の不快感を含む副作用およびα-1-アドレナリン受容体アンタゴニストの副作用、たとえば眼瞼下垂、疲労、および鼻漏が、一部の対象により報告された。
【0010】
シロドシンは、(-)-(R)-1-(3-ヒドロキシプロピル)-5-[2-[[2-[2-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)フェノキシ]エチル]アミノ]プロピル]インドリン-7-カルボキサミドとしても知られている、BPHの処置において同様に現在知られており使用されている選択性の高いα-1a―アドレナリン受容体アンタゴニストである。これは現在、商標名Urorec(登録商標)またはRapaflo(登録商標)でBPHの処置剤として市場に出され販売されている。In vitroでのヒトでの試験は、前立腺平滑筋の収縮を低減する薬物であるシロドシンの尿における選択性が(Moriyama N, Akiyama K, Murata S, et al., KMD-3213, a novel alpha1A-adrenoceptor antagonist, potently inhibits the functional alpha1-adrenoceptor in human prostate. EUR J PHARMACOL. 1997;331(1):39-42)(Akiyama K, Tatemichi S, Katayama S, et al.25 Relationship between prostatic alpha(1)-adrenoceptor binding and reduction in intraurethral pressure following continuous infusion of KMD-3213 in rats. PHARMACOLOGY. 2002;64(3):140-147)、タムスロシンおよびナフトピジルなどの他のα-1遮断剤の選択性よりも高いことを証明している(Tatemichi S, Tomiyama Y, Maruyama I, et al. Uroselectivity in male dogs of silodosin (KMD-3213), a novel drug for the obstructive component of benign prostatic hyperplasia. NEUROUROL URODYN. 2006;25(7):792-799. discussion 800-801)。
【0011】
BPHを処置するための量で投与される場合のシロドシンの副作用の1つとして、射精時の精液の減少または非存在としても知られている、逆行性射精(RE)がある。たとえば、Sakata Kらは、シロドシン4mgを1日2回投与することが、高頻度で射精障害を誘導することを示した(K. Sakata et al., BMC Urology 2012, 12:29)。Kobayashiらは、3日間にわたりシロドシン4mgを1日2回投与することが、健常な志願者に精液の放出の完全な欠如を誘導することを報告した(Kobayashi et al., International Journal of Impotence Research 2009, 21, 306-310)。またKobayashiらは、シロドシンで処置した男性の対象について射精時の不快感が100%の割合であることを示しており(Kobayashi K, et al. Inhibition of seminal emission is the main cause of anejaculation induced by a new highly selective α1A-blocker in normal volunteers. J. SEX MED (2008) 5:2185-2190)、Shimizuらは、オーガズムの質の低下を報告している(Shimizu F, et al. Impact of dry ejaculation caused by highly selective alpha1a-blocker: randomized,double-blind, placebo-controlled crossover pilot study in healthy volunteer men. J. SEX MED. (2010) 7(3):1277-83)。他の研究はさらに、勃起の機能(Bozkurt O, et al. Silodosin causes impaired ejaculation and enlargement of seminal vesicles in sexually active men treated for lower urinary tract symptoms suggestive of benign prostatic hyperplasia. UROLOGY (2015) 85(5):1085-9)および性的欲望(Capogrosso P, et al. Effects of silodosin on sexual function - realistic picture from the everyday clinical practice. ANDROLOGY (2015) 3:1076-1081)の減少を示している。
【0012】
さらに、射精の機能に及ぼすα-1、特にα-1a遮断剤の作用、およびそれらの副作用は、用量依存的であることが知られている(たとえばHisasue SI, et al. Ejaculatory disorder caused by alpha-1 adrenoceptor antagonists is not retrograde ejaculation but a loss of seminal emission. INTERNATIONAL JOURNAL OF UROLOGY (2006) 13:1311-1316を参照)。
【0013】
従来技術では、Bhatら(INDIAN JOURNAL OF UROLOGY (2018) 34(5): S7)は、要望に応じた可逆性の男性用の経口避妊法として8mgのシロドシンの効果を評価することを目的とする試験を報告した。この試験は、いくつかのパートで行われた。第1のパートでは、参加者に、シロドシン8mgを7日間投与し、摂取から2時間後に評価した(この結果は下記の通りである:精液および分析後の尿に精子なし)。第2のパートでは、8日目~15日目に、参加者にプラセボを投与した(この結果は下記の通りである:最初の2日間では情報なし、プラセボの2日目から正常な精液分析)。第3のパートでは、6カ月間の間、参加者は性交の前に散発的に、要望に応じてシロドシン8mgを摂取した。その時点では、参加者を評価せず、試験は、意図しない妊娠がないことが報告されたと述べている。
【0014】
Bhatらは、要望に応じた男性の避妊を報告している。
【0015】
しかしながらBhatらは、妊娠するリスクにさらされていないことが確約される持続的な避妊効果を保証する安全な避妊法を望む対象のニーズを満たしてはいない。
【0016】
本発明は、これら対象に解決策をもたらすことを目的とする。特に本発明は、男性対象の勃起機能、性的欲望、射精、およびオーガズムの質に影響を与えず、かつ男性対象にそれを使用させないようにする望ましくない副作用を誘導しない組成物および方法を提供することを目的とする。
【発明の概要】
【0017】
本発明は、副作用が著しく限定されており、投与が単純であり、効果が可逆的であり、かつ、女性の避妊のように、推奨される投与スキームと比較して遅延が起こっても当該遅延がこの有効性に影響を与えない、男性の避妊法を提供することを目的とする。男性対象における馴染みやすさおよびコンプライアンスを確立するために、このような処置方法は、1日1回のピルを毎日同じ時間に投与すべきであり、対象が24時間もの間1回のピルの摂取を遅らせても避妊効果に影響を与えない女性のホルモンによる避妊法に類似するものとする。
【0018】
従来技術の一部は、α-アドレナリン性アンタゴニストを投与した場合の薬理作用、すなわち無精液症を報告しているが、本出願人が知る限り、α-1アドレナリン受容体アンタゴニスト、特にα-1aアドレナリン受容体アンタゴニストが、多くの限定を伴うことなく多数の集団に完全に適した持続的な男性避妊法の必要条件および基準の全てを満たしていることは、これまで従来技術の文献に記載または示唆されていない。
【0019】
本発明の前に、1日1回の投与を含み規定の作用期間を有する男性避妊に関する投与プロファイルは、今まで提案されてはいない。驚くべきことに、本出願人は、男性避妊法が想定され得ること、および毎日のα-1アドレナリン受容体アンタゴニストの投与が、特定の条件下で、本明細書中上述される全ての基準を満たし得ることを見出した。本発明に係る組成物の使用は、簡便性および可逆可能性をさらに確約している。
【0020】
さらに、本出願人が驚いたことに、この男性避妊法の薬物動態プロファイルが、臨床的に意義のある形式で、随伴する食物消費の影響を受けないことが見出され、このことは、本発明の利益対リスクの評価および対象の処置に対するコンプライアンスの観点から有意な改善である。
【0021】
また驚くべきことに、本出願人は、本発明の方法を行った対象において、オーガズムの主観的な質に関する数値評価スケール(numerical rating scale)(NRS)スコアが変化しないことおよび国際勃起機能指数(international index of erectile function)(IIEF)が変化しないことにより示されるように、オーガズムの質および勃起機能が保存されることを示している。
【0022】
本発明は、男性対象のための非ホルモン性避妊法における組成物の使用であって、前記組成物が、
α-1-アドレナリン受容体アンタゴニストと、
少なくとも1つの薬学的に許容される担体と
を含む徐放製剤であり、
前記避妊法が、毎日ほぼ同じ時間での前記組成物の1日1回の投与を含み、前記男性対象に持続的であり可逆性の無精液症、無精子症、または重篤な精子減少症をもたらし、
連続して少なくとも2日間の最初の期間の後、避妊が、その後の1日1回の摂取の遅延により損なわれない、
使用に関する。
【0023】
一実施形態では、本組成物は、経口投与される。別の実施形態では、連続した日数の最初の期間の後、次回の用量の摂取は、最後の通常の毎日の投与時間から6~18時間後まで遅延してもよく、無精液症、無精子症、または重篤な精子減少症の状態が前記男性対象で維持される。
【0024】
別の実施形態では、連続した日数の最初の期間の後、1日1回の用量を摂取できなくとも、無精液症、無精子症、または重篤な精子減少症の持続的な状態に影響を与えず、最後の摂取時間以後36~48時間避妊法を維持する。
【0025】
別の実施形態では、避妊法は、少なくとも8日間行われる。別の実施形態では、α-1-アドレナリン受容体アンタゴニストは、約0.1~約30mg、好ましくは約0.2~20mgの範囲の量である。別の実施形態では、α-1-アドレナリン受容体アンタゴニストは、(R)-シロドシンである。別の実施形態では、(R)-シロドシンは、多形またはアモルファスの形態である。別の実施形態では、本組成物は、徐放製剤で製剤化されている。別の実施形態では、本組成物は、少なくとも1つの粒子、好ましくは少なくとも1つのコーティングされた粒子を含むかまたはからなり、この平均粒径は、0.01~5mm、好ましくは0.1~2mmの範囲にある。別の実施形態では、粒子は、カプセルに包有されており、各カプセルは、1日用量に達するために十分な数の粒子により充填されている。別の実施形態では、避妊は、男性対象による食物消費とは無関係に達成される。別の実施形態では、毎日の投与の避妊法は、勃起不全を処置するために適切なさらなる組成物の同時投与または逐次投与を含み、好ましくはさらなる組成物は、ホスホジエステラーゼ5阻害剤を含む。
【0026】
また本発明は、各単位用量が1日用量である、本発明の組成物の少なくとも7、14、28、56、84、もしくは168~365単位用量を含むか、または10、20、30、60、90、もしくは180~360単位用量を含むパッケージングに関する。一実施形態では、本組成物は、約0.1~約30mg、好ましくは約0.2~20mgの範囲の量のα-1-アドレナリン受容体アンタゴニストを含み、好ましくはα-1-アドレナリン受容体アンタゴニストは、8~12mgの量の(R)-シロドシンである。
【0027】
また本発明は、避妊効果が十分である、無精液症、無精子症、または重篤な精子減少症の可逆的な状態を男性対象に誘導する方法であって、
1日1回の投与レジメンで投与した場合に、男性対象の避妊効果にとって十分である、無精液症、無精子症、または重篤な精子減少症の可逆的な状態を誘導するために有効な量のα-1-アドレナリン受容体アンタゴニストの徐放製剤と、
薬学的に許容される担体と
を含む組成物の1日1回の用量を投与するステップを含み、
連続した2日間の最初の期間の後に1日1回の投与を行うことができなくとも、男性対象の避妊効果にとって十分である、無精液症、無精子症、または重篤な精子減少症の持続的な状態に影響を与えない、
方法に関する。
【0028】
一実施形態では、連続した日数の最初の期間は、連続して少なくとも2日間であり、ここで投与は毎日ほぼ同じ時間に行われる。一実施形態では、連続した日数の最初の期間は、少なくとも5日間である。一実施形態では、本方法は、少なくとも8日間といった短期間から長期間の処置に適している。一実施形態では、連続した毎日の投与が、投与が約48時間超投与されないように行われないかまたは飲み忘れてもよい。
【0029】
一実施形態では、2つの連続した毎日の投与が、男性対象の避妊効果に影響を与えることなく行われないかまたは飲み忘れてもよい。
【0030】
一実施形態では、1日1回投与される本組成物中のα-1-アドレナリン受容体アンタゴニストの量は、約4~約12mgである。一実施形態では、α-1-アドレナリン受容体アンタゴニストは、(R)-シロドシンである。一実施形態では、1日1回投与される本組成物中の(R)-シロドシンの量は、約4~約12mgである。一実施形態では、1日1回投与される本組成物中の(R)-シロドシンの量は、約8mgである。
【0031】
一実施形態では、本組成物は、経口投与される。一実施形態では、本組成物は、勃起不全の処置に適切な組成物と同時または逐次的に共投与され;好ましくは、さらなる組成物は、ホスホジエステラーゼ―5(PDE5)阻害剤を含む。一実施形態では、男性対象は、良性前立腺肥大(BPH)を罹患している。一実施形態では、男性対象は、BPHおよび勃起不全を罹患している。一実施形態では、本組成物は、食物と共に投与される。一実施形態では、本組成物は、食物を伴わずに投与される。
【0032】
一実施形態では、徐放製剤は、微粒剤の形態を含む。一実施形態では、微粒剤は、直径2ミリメートル未満である。一実施形態では、微粒剤は、約1以上の密度を有する。
【0033】
また本発明は、男性対象における可逆性の持続的な非ホルモン性避妊のための方法であって、
1日1回の投与レジメンで投与される場合に、男性対象の避妊効果にとって十分である、無精液症、無精子症、または重篤な精子減少症の可逆的な状態を誘導するために有効な量のα-1-アドレナリン受容体アンタゴニストの徐放製剤と、
薬学的に許容される担体と
を含む組成物の1日1回の用量を投与するステップを含み、
連続した2日間の最初の期間の後に1日1回の投与を行うことができなくとも、男性対象の避妊効果にとって十分である、無精液症、無精子症、または重篤な精子減少症の持続的な状態に影響を与えない、
方法に関する。
【0034】
また本発明は、受胎調節のための方法であって、
1日1回の投与レジメンで投与される場合に、男性対象の避妊効果にとって十分である、無精液症、無精子症、または重篤な精子減少症の可逆的な状態を誘導するために有効な量のα-1-アドレナリン受容体アンタゴニストの徐放製剤と、
薬学的に許容される担体と
を含む組成物の1日1回の用量を男性対象に投与するステップを含み、
連続した2日間の最初の期間の後に1日1回の投与を行うことができなくとも、男性対象の避妊効果にとって十分である、無精液症、無精子症、または重篤な精子減少症の持続的な状態に影響を与えない、
方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0035】
説明
α-1-アドレナリン受容体アンタゴニストを含む組成物の使用
本発明は、男性対象のための非ホルモン性避妊法における組成物の使用であって、前記組成物が、α-1-アドレナリン受容体アンタゴニスト、好ましくはα-1a-アドレナリン受容体アンタゴニスト、より好ましくはシロドシンと、薬学的に許容される担体とを含む、使用に関する。非ホルモン性避妊法は、本発明に係る組成物の1日1回の投与を含む。男性対象に対し有効な曝露を維持するために、避妊法は、少なくとも2日間行われる。
【0036】
この1日1回の投与は、少なくとも24時間、男性対象に無精液症、無精子症、または重篤な精子減少症をもたらすことから得られる避妊効果を誘導する。
【0037】
好適には、本発明の組成物の1日1回の投与により得られる避妊効果は、前回の投与から24時間後に行われるはずである連続する1日1回の投与が遅延しても影響を受けず、上記遅延は、第1の投与後6時間を超えず、上記遅延は、さらなる投与後24時間を超えるものではない。よって、本発明の組成物の1日1回の投与により得られる避妊効果は、連続する1日1回の投与の遅延により反転せず、上記遅延は、第1の投与後6時間を超えず、上記遅延は、さらなる投与後24時間を超えるものではない。
【0038】
特定の実施形態では、α-1-アドレナリン受容体アンタゴニストの毎日の投与は、毎日ほぼ同じ時間になされる。この特定の実施形態では、およそ(about)は、同じ時間の2時間前または2時間後を意味する。
【0039】
投与における通常のタイムテーブルは、毎日の投与スケジュールで患者のコンプライアンスを支援する利点を有する。さらに、以下でより詳細に論述されるように、通常、避妊用生成物では、投与間隔にわたり薬物への患者の有効な曝露を維持するために、毎日ほぼ同じ時間で薬物を摂取することが推奨されている。一実施形態では、毎日の投与の避妊法は、1日1回投与の避妊法である。
【0040】
用量
一実施形態では、上述の本組成物の使用は、生物学的に有効な量のα-1-アドレナリン受容体アンタゴニストを含む。α-1-アドレナリン受容体アンタゴニストの生物学的に有効な量は、当業者の知識、α-1-アドレナリン受容体アンタゴニストの薬物動態のパラメータ、対象の年齢、健康状態などに基づき、当業者により決定され得る。
【0041】
一実施形態では、α-1-アドレナリン受容体アンタゴニストは、約0.1~約30mgの量で本組成物に含まれている。1つの特定の実施形態では、α-1-アドレナリン受容体アンタゴニストは、約0.2~約30mg、好ましくは約4~約20mgの量で含まれている。
【0042】
一実施形態では、本明細書中記載または言及される剤形のいずれかで使用されるα-1-アドレナリン受容体アンタゴニスト(α遮断剤)の治療用量は、単なる例として、約0.1mg、約0.2mg、約0.4mg、約0.8mg、約1mg、約2mg、約4mg、約6mg、約8mg、約10mg、約12mg、約16mg、約20mg、約24mg、約26mg、または約30mgであり得るかまたはこれを含み得る。
【0043】
経口製剤
本発明の使用で投与される組成物の製剤の実施形態は、当該分野でよく知られている様々な剤形であり得るか、これらを含むか、またはこれらに類似し得る。たとえば、これは、カプセル剤、錠剤、カプレット剤、軟シェルカプセル剤、ゲルカプセル剤(ゲルカプセル)、液体組成物、散剤、濃縮粉末、液体と混合した濃縮粉末、咀嚼可能形態、嚥下可能形態、水溶性フィルム、顆粒形態、ペレットの形態、および経口液体懸濁剤を含み得る。
【0044】
本組成物は、ソフトゲル、カプレット剤、丸剤、錠剤、マイクロタブレット、カプセル剤、ハイドロマトリックスタブレット、および浸透圧性錠剤(osmotic tablets)からなる群から選択される1日経口剤形にすることができる。
【0045】
本明細書中記載される全ての医薬調製物は、当業者によく知られており、いずれかの特定の例において口腔内で溶解可能な組成物を調製するための作業可能な方法の決定は、全般的に当業者の能力の範囲内にある。
【0046】
全ての賦形剤に関する詳細は、WADE&WELLER, HANDBOOK OF PHARMACEUTICAL EXCIPIENTS (2nd ed. 1994)で見出され得る。全ての有効成分、充填剤、および賦形剤は、Aldrich Chemical Co.、FMC Corp、Bayer、BASF、Alexi Fres、Witco、Mallinckrodt、Rhodia、ISP、およびその他などの企業から市販されている。口腔内で溶解可能な組成物に使用される賦形剤は、いくつかの機能的なカテゴリーに該当し、例として、可塑剤、乳化剤、味感増強剤、甘味剤、および香味剤を含み得る。さらにまたはあるいは、賦形剤は、FDAにより承認された他の経口避妊製品に使用される種類であり得る。
【0047】
一実施形態では、非ホルモン性避妊組成物は、1つ以上の不活性成分を含む。不活性成分は、以下:糖、コーンスターチ、水、ゼラチン、クエン酸、乳酸、1つ以上の艶出し剤(たとえば植物油、ミツロウ、カルナウバロウ)、1つ以上の天然のフレーバー(たとえばプラム、リンゴ、ミックスベリー、サクランボ)、1つ以上の天然の色素(colors)(たとえば黒ニンジン)、および1つ以上のマスキングフレーバー(たとえば酒石酸、メントール)のうちの1つ以上を含み得る。一部の実施形態では、非ホルモン性避妊組成物は、限定するものではないが、水、バッファー(例として、限定するものではないが、リン酸塩バッファー、クエン酸塩バッファー、乳酸、および当業者に知られているその他のバッファーを含む)、安定化剤(例として限定するものではないが、抗酸化剤(たとえばアスコルビン酸、プロピオン酸、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど)、キレート剤(たとえばフマル酸、エデト酸ナトリウムなど)、および当業者に知られているその他の安定化剤を含む)、界面活性剤(例として限定するものではないが、湿潤化剤(たとえばソルビタンモノラウラートなど)、消泡剤(たとえばソルビタントリオレアートなど)、界面活性剤(detergents)(たとえばステアリン酸スクロースなど)、可溶化剤(たとえばポリエチレングリコール400モノステアラートなど)、および当業者に知られているその他の界面活性剤を含む)、処理助剤(たとえば、例として限定するものではないが、平滑剤、抗酸化剤、および当業者に知られているその他のものを含む処理を支援するために使用される物質)、平滑剤(たとえば限定するものではないが、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、タルク、鉱油および植物油、安息香酸、ポリ(エチレングリコール)、ベヘン酸グリセリル、フマル酸ステアリル(stearyl futmarate)、ならびに当業者に知られているその他の平滑剤を含む)、乳化剤(例として限定するものではないが、合成(たとえばラウリル硫酸ナトリウム、ラウリン酸カリウムなど)、天然(たとえばゼラチン、レシチンなど)、および微粉化した固体の乳化剤(たとえばベントナイト、水酸化マグネシウムなど)、および当業者に知られているその他の乳化剤を含む)、懸濁化剤(例として限定するものではないが、セルロース誘導体(たとえばカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロースなど)、天然のポリマー(たとえばアルギン酸塩、キサンタンガム、グアーガムなど)、合成ポリマー(たとえばカルボマー、ポリビニルピロリドンなど)、粘土(たとえばケイ酸アルミニウムマグネシウム、ヘクトライトなど)、および当業者に知られているその他の懸濁化剤を含む)、保存剤(例として限定するものではないが、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、セトリミド、グリセリン、プロピレングリコール、安息香酸および安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カリウムおよびソルビン酸、ならびに当業者に知られているその他の保存剤を含む)、混濁剤(opaquing agent)(例として限定するものではないが、二酸化チタン、および当業者に知られている他の混濁剤を含む)、滑剤(例として限定するものではないが、二酸化ケイ素、コロイドシリカまたはヒュームド・シリカ、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、コーンスターチ、タルク、および当業者に知られている他の滑剤を含む)、希釈剤(例として限定するものではないが、コーンシロップ、ラクトース、塩化ナトリウム、スクロース(糖)、および当業者に知られている他の希釈剤を含む)、着色剤(colorantsまたはcoloring agents)(例として限定するものではないが、FD&C Red No. 3、FD&C Red No. 20、FD&C Yellow No. 6、FD&C Blue No. 2、D&C Green No. 5、FD&C Orange No. 5、D&C Red No. 8、カラメル、酸化鉄III、色素、染料、ティント、二酸化チタン、天然の着色剤、たとえばブドウの皮の抽出物、レッドビートパウダー、βカロテン、アナトー、カルミン、ウコン、パプリカ、黒ニンジンジュース、および当業者に知られている他の着色剤を含む)、甘味料(sweetenersまたはsweetening agents)(例として限定するものではないが、スクロース、フルクトース、高フルクトースコーンシロップ、デキストロース、サッカリンナトリウム、マルトデキストリン、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、ネオヘスペリジン、ジヒドロカルコン、スクラロース、グリチルリチン酸モノアンモニウム、および当業者に知られているその他の甘味剤を含む)、芳香剤(例として限定するものではないが、天然のフレーバーオイル、天然のバニラ抽出物、合成のフレーバーオイル、および当業者に知られている他の芳香剤を含む)、艶出し剤(例として限定するものではないが、植物油、ミツロウ、カルナウバロウ、および当業者に知られている他の艶出し剤を含む)、香味剤(flavoring agentsまたはflavorant)(例として限定するものではないが、天然のフレーバーオイル、合成のフレーバーオイル、および当業者に知られている他のマスキングフレーバーを含む)、ならびに冷却剤(例として限定するものではないが、N-置換p-メンタン-3-カルボキサミド、たとえばN-エチル p-メンタン―3-カルボキサミド(「WS-3」)(Millennium Specialty Chemicals, Jacksonville, FL)を含む)の1つ以上を含み得る。他の不活性成分のさらなる例は、当業者によく知られている。たとえばREMINGTON: THE SCIENCE AND PRACTICE OF PHARMACY (21st ed. 2005)を参照されたい。
【0048】
市販の製品のRapaflo(登録商標)またはUrorec(登録商標)などの、良性前立腺肥大(BPH)の処置のためのα-1-アドレナリン受容体アンタゴニストの現在の製剤は、嚥下した直後に有効成分を放出し、したがって「即時放出」(または「IR」)製剤である。避妊用製品では、しかしながら、治療効果が摂取の遅延に耐えることができる非ホルモン性避妊組成物の製剤を含む本発明の実施形態が、特に望ましいとされ得る。このような製剤は、「徐放」(または「ER」)製剤と呼ばれ得る。このような実施形態では、男性対象の1回(またはそれ以上)の用量の摂取が遅れてもまたは摂取できなくとも、処置レジメンの避妊効果を無効にせず、より簡便な摂取時間へと日毎に調節することも可能である。
【0049】
第1の実施形態では、α-1-アドレナリン受容体アンタゴニストの毎日の投与は、男性対象に及ぼす避妊効果に影響を与えることなく、2回連続して毎日摂取した3日目以後では遅延してもよいが、当該遅延は、前日の摂取時間から2、4、6、8、10、12、16、20、または24時間を超えるものではなく、好ましくはその前日の摂取時間から2、4、6時間を超えるものではない。
【0050】
第2の実施形態では、α-1-アドレナリン受容体アンタゴニストの毎日の投与は、男性対象に及ぼす避妊効果に影響を与えることなく、3回連続して毎日摂取した4日目以後では遅延してもよいが、当該遅延は、前日の摂取時間から2、4、6、8、10、12、16、20、または24時間を超えるものではない。
【0051】
第3の実施形態では、α-1-アドレナリン受容体アンタゴニストの毎日の投与は、男性対象に及ぼす避妊効果に影響を与えることなく、4回連続して毎日摂取した5日目以後では遅延してもよいが、当該遅延は、前日の摂取時間から2、4、6、8、10、12、16、20、または24時間を超えるものではない。
【0052】
第4の実施形態では、α-1-アドレナリン受容体アンタゴニストの毎日の投与は、男性対象に及ぼす避妊効果に影響を与えることなく、5回連続して毎日摂取した6日目以後では遅延してもよいが、当該遅延は、前日の摂取時間から2、4、6、8、10、12、16、20、または24時間を超えるものではない。
【0053】
第5の実施形態では、α-1-アドレナリン受容体アンタゴニストの毎日の投与は、男性対象に及ぼす避妊効果に影響を与えることなく、6回連続して毎日摂取した7日目以後では遅延してもよいが、当該遅延は、前日の摂取時間から2、4、 6、8、10、12、16、20、または24時間を超えるものではない。
【0054】
一実施形態では、1日1回投与の避妊法は、少なくとも2日間行われる。一実施形態では、1日1回投与の避妊法は、少なくとも3日間行われる。一実施形態では、1日1回投与の避妊法は、少なくとも4日間行われる。一実施形態では、1日1回投与の避妊法は、少なくとも5回行われる。一実施形態では、1日1回投与の避妊法は、少なくとも6日間行われる。
【0055】
上述の実施形態では、その後の毎日の投与の遅延は、前日の摂取時間から2、4、 6、8、10、12、16、20、または24時間を超えるものではない。一実施形態では、遅延は、前日の摂取時間から2、4、6、8、10、12、16、20、または24時間を超えるものではない。一実施形態では、遅延は、前日の摂取時間から2時間を超えるものではない。一実施形態では、遅延は、前日の摂取時間から4時間を超えるものではない。一実施形態では、遅延は、前日の摂取時間から6時間を超えるものではない。一実施形態では、遅延は、前日の摂取時間から8時間を超えるものではない。一実施形態では、遅延は、前日の摂取時間から10時間を超えるものではない。一実施形態では、遅延は、前日の摂取時間から12時間を超えるものではない。一実施形態では、遅延は、前日の摂取時間から16時間を超えるものではない。一実施形態では、遅延は、前日の摂取時間から20時間を超えるものではない。一実施形態では、遅延は、前日の摂取時間から24時間を超えるものではない。
【0056】
単なる例として、避妊効果は、6時間の摂取の遅延に耐えるように設計され得る(たとえば避妊効果は、投与後最大24時間、およびさらに6時間の遅延、合計30時間維持され得る)。
【0057】
本発明の実施形態では、この作用期間は長く、この場合、毎日のα-1-アドレナリン受容体アンタゴニストの投与は、1回目、2回目、3回目、4回目、5回目、または6回目の毎日の投与以後では遅延することができる。
【0058】
作用期間の長期化―治療用量の増大を達成する典型的または従来の手段は、患者を起立性低血圧のリスクの増加にさらし得るため、α-1-アドレナリン受容体アンタゴニストの事例では実行可能な選択肢ではないことに留意されたい。
【0059】
一実施形態では、剤形は、自己投与される。
【0060】
剤形は、経腸的、特に経口、バッカル、または舌下用であり得る。経口投与、バッカル投与、舌下投与、または経皮投与は、いずれの外部の装置を必要とすることなく個別に行われ得る。本発明の特定の実施形態では、剤形は、目的の期間の間避妊を保証するための生物学的に有効な量のα-1-アドレナリン受容体アンタゴニストを含む硬カプセル剤中の顆粒を含み得る。このような実施形態では、顆粒は、(i)不活性なコアと、(ii)α-1-アドレナリン受容体アンタゴニストおよび結合剤を含む不活性なコアに適用される薬物層と、(iii)薬物層を囲む徐放コーティングとを含み得る。また本発明のさらなる実施形態は、任意選択で、項目(ii)と組み合わせた界面活性剤を含み得る。
【0061】
さらにまたはあるいは、顆粒は、徐放コーティングにより囲まれており、たとえば硬カプセル剤などのカプセル剤に充填されたα-1-アドレナリン受容体アンタゴニストのマトリックス顆粒であり得る。あるいは、顆粒を、錠剤に圧縮することができる。この段落に記載される組成物、およびそれらを調製するための方法は、医薬の分野でよく知られている(WADE & WELLER, HANDBOOK OF PHARMACEUTICAL EXCIPIENTS (2nd ed. 1994); REMINGTON: THE SCIENCE AND PRACTICE OF PHARMACY (21st ed. 2005))。
【0062】
このような実施形態では、本発明の方法で使用される製剤はさらに、目的の期間の間避妊を保証するための生物学的に有効な量のα-1-アドレナリン受容体アンタゴニストを含む、硬カプセル剤、コーティング錠剤、ハイドロマトリックス錠剤、または浸透圧性錠剤の錠剤またはマイクロタブレットであり得るか、これらを含み得るか、またはこれら錠剤に類似し得る。よって本発明の実施形態は、徐放コーティングで囲まれており、硬カプセル剤に充填されているα-1-アドレナリン受容体アンタゴニストの錠剤、特にマトリックス錠剤を含み得る。任意選択で、錠剤は、錠剤へと製剤化される前に徐放コーティングによりコーティングされ得る。得られた錠剤はさらに、徐放コーティングによりコーティングされ得る。コーティングされた錠剤は、徐放コーティングにより囲まれたα-1-アドレナリン受容体アンタゴニストのマトリックス錠剤であり得るかまたはこれを含み得る。
【0063】
このような実施形態では、本発明に係る使用で投与される組成物は、顆粒または錠剤を含む形態で製剤化されている。顆粒または錠剤は、任意選択で、徐放コーティングによりコーティングされ得る。
【0064】
上述の顆粒または錠剤は、徐放コーティングを任意選択で含むカプセル剤に、さらに充填され得る。
【0065】
一実施形態では、本組成物は、多粒子の形態である。よって、このような実施形態では、カプセル剤は、上述の粒子または顆粒で充填され得る。カプセル剤の中のこれら粒子または顆粒の十分な数は、α-1-アドレナリン受容体アンタゴニストの1日用量に達する観点から、当業者によって決定される。
【0066】
一実施形態では、男性対象において無精液症、無精子症、または重篤な精子減少症をもたらすことから得られる避妊効果、および望ましくない副作用が存在しないことは、男性対象が消費する食物とは無関係に達成される。
【0067】
一実施形態では、男性対象において無精液症、無精子症、または重篤な精子減少症をもたらすことから得られる避妊効果は、男性対象が消費する食物とは無関係に同じ効果および/または安全性のプロファイルを有する。
【0068】
一実施形態では、α-1-アドレナリン受容体アンタゴニストを含む組成物は、少なくとも1つの粒子、好ましくは少なくとも1つのコーティングされた粒子を含むかまたはからなり、この平均粒径は、0.01~5mm、好ましくは0.1~2mmの範囲にある。
【0069】
上述されるように、本発明の実施形態は、胃で放出されるカプセル剤中の顆粒または錠剤などの単位剤形を含み得る。消化液の流れにおいて腸へと進むために十分小さな大きさ(たとえば直径5mm以下、好ましくは2mm以下を有する)では、顆粒または錠剤は、食物と共に胃に保持されることはない。よって、シロドシンで見られる通常の食物の作用-(食物の存在下での胃からの排出の遅延に依存する)-は、このような製剤に影響を与えない。このような実施形態では、粒子の平均直径は、0.01~5mm、好ましくは0.1~2mmの範囲にある。
【0070】
一実施形態では、上述の粒子は、カプセル剤に包有されており、各カプセルは、1日用量に達するために十分な数の粒子により充填されている。
【0071】
本発明の実施形態では、顆粒または錠剤はまた、食物作用を回避するための特定の密度で設計され得る。顆粒または錠剤の密度が小さすぎる場合、これらは、空腹状態の間胃に含まれる胃液の上部に浮遊するため、腸への移動が遅延する。よって、本発明の実施形態では、浮遊現象を回避するために、目的の密度の顆粒または錠剤を設計してもよい。本発明の実施形態では、約1~約1.6の範囲の密度が望ましいとされ得る。しかしながら、当業者は、他の密度が適切または理想的であり得ることを理解するものである。
【0072】
本発明の実施形態では、ハイドロマトリックス錠剤もまた、α-1-アドレナリン受容体アンタゴニストおよび親水性の賦形剤を含む剤形、特にはたとえば単層または複層の錠剤として使用され得る。この段落に記載される組成物およびそれらを調製するための方法は、医薬の分野でよく知られている(Peter Timmins,Samuel R. Pygall,Colin D. Melia. Hydrophilic Matrix Tablets for Oral Controlled Release (2014), Rumondor ACF et al. Minitablets: Manufacturing, Characterization Methods, and Future Opportunities. July 30, 2016. Nokhodchi A. The Role of Oral Controlled Release Matrix Tablets in Drug Delivery Systems. BioImpacts (2012) 2(4):175-187)。
【0073】
α-1-アドレナリン受容体アンタゴニスト
本発明は、いずれかのα-1-アドレナリン受容体アンタゴニストと共に実施され得る。当業者は、上記α-1-アドレナリン受容体アンタゴニストの薬力学的および薬物動態的な性質に関する一般的な知識を使用して、本組成物を適合させることができる。一実施形態では、α-1-アドレナリン受容体アンタゴニストは、シロドシン、テラゾシン、ドキサゾシン、タムスロシン、およびフィズキソシンを含む群から選択される。
【0074】
好ましい実施形態では、本発明で実施される組成物は、α-1-アドレナリン受容体アンタゴニストとしてシロドシンを含む。別の実施形態では、本組成物は、α-1-アドレナリン受容体アンタゴニストとしてタムスロシンを含む。
【0075】
好ましい実施形態では、α-1-アドレナリン受容体アンタゴニストは、(R)-シロドシンである。一実施形態では、α-1-アドレナリン受容体アンタゴニストは、多形またはアモルファスの形態の(R)-シロドシンである。
【0076】
(R)-シロドシンは、α-1-アドレナリン受容体の既知のアンタゴニストであり、特にヒトのα-1a-アドレナリン受容体に対して高い親和性および選択性を有するため(pKi=10.4±0.07)(CDER, NDA 22-206, PHARMACOLOGYREVIEWS. Sep 2008)、特に好適である
【0077】
本明細書中記載される製剤の実施形態では、非ホルモン性組成物はまた、食物を伴う消費または食物を伴わない消費を可能にし得る。通常、本明細書中論述される場合、α-1遮断剤は、それらの血漿中濃度のピークを減少させるためおよび心血管系の副作用の発生を結果的に制限するために、食物と共に投与され得る。いわゆる「食物作用(food effect)」は、(R)-シロドシンの従来の製剤の薬物動態プロファイルに影響を与え、Tmaxの遅延およびCmaxの低下をもたらすことが知られている(EMA/793234/2009. CHMP assessment report for Urorec. Procedure No.EMEA/H/C/001092. 10 Jan 2010)。これら作用は、食物の存在下での胃からの排出の遅延によるものであることが想定されている。結果的に、本発明に係る組成物の使用は、一般的な集団が使用でき、投与前、投与時、または投与後の食事または食物の摂取に関する特定の警告が必要ではないため、特に非常に興味深い。
【0078】
本発明の実施形態では、本組成物の使用は、避妊効果の維持を可能にする約30時間の有効な曝露を提供する。
【0079】
特定の実施形態では、1日1回の経口剤形は、約12mgの、α-1-アドレナリン受容体アンタゴニストを含み、上記組成物は、
i)約3時間~約8時間の範囲のTmaxと、
ii)約70ng/mL未満の平均Cmaxと
を有するα-1-アドレナリン受容体アンタゴニストの薬物動態プロファイルを提供する。
【0080】
別の特定の実施形態では、1日1回の経口剤形は、約8mgのα-1-アドレナリン受容体アンタゴニストを含み、上記組成物は、
i)約3時間~約8時間の範囲のTmaxと、
ii)約50ng/mL未満の平均Cmaxと
を有するα-1-アドレナリン受容体アンタゴニストの薬物動態プロファイルを提供する。
【0081】
本発明の実施形態では、連日投与の投与は、本組成物の避妊効果に影響を与えることなくまたは変えることなく、24時間の範囲内で(単なる例として、約1、約2、約3、約4、約6、約8、約10、約12、約15、約18、または約21時間)遅延させてもよい。本発明の実施形態では、24時間超(単なる例として、約24、約36、約48、約60、約72、約84、または約96時間)の間投与が行われないように投与が行われないかまたは飲み忘れてもよい。
【0082】
よって本発明の実施形態は、男性対象のオーガズムの質(多くの場合オーガズムの質に関するNRS(Numerical Rating Scale)により測定される)を損なうことなくまたは有意に損なうことなく、α-1-アドレナリン受容体アンタゴニスト、または特にシロドシンを投与する方法および組成物を含む。特許請求される本発明が回避するかまたは最小限に維持する他の起こり得る副作用として、射精時の不快感、性的欲望の減少、生殖能力の減少を感じること、射精の困難さ、満足感の減少、腟内射精の待機時間の望ましくない減少もしくは増加、または早発性の射精が挙げられる。
【0083】
本発明の実施形態では、α-1-アドレナリン受容体アンタゴニスト、特にシロドシンは、単独で存在するか、または別の有効成分と結合して存在するか、または別の有効成分と組み合わせて存在する。
【0084】
同時投与
本発明の一実施形態では、上述のα-1-アドレナリン受容体アンタゴニストは、上に記載されたいずれかの特定の形態の非ホルモン性避妊組成物に含まれ得るかまたは使用され得る。別の実施形態では、非ホルモン性避妊組成物は、上述のα-1-アドレナリン受容体アンタゴニストまたは当該分野で一般的に知られている範囲もしくは量の他の成分の組み合わせを含むかまたは使用し得る。
【0085】
一実施形態では、毎日の投与の避妊法における組成物の使用はさらに、さらなる組成物の同時投与または逐次投与を含む。一実施形態では、さらなる組成物は、男性対象の性的な健康状態に関連するかまたは関連していない。一実施形態では、さらなる組成物は、男性対象の心血管系に影響を与えない。1つの他の実施形態では、さらなる組成物は、男性対象の心血管系に影響を与える。特に、さらなる組成物は、男性対象の動脈圧の低下を誘導し得る。
【0086】
好適には、本発明の男性の避妊法の安全性のプロファイルは、低血圧クライシスのリスクを伴うことなく、患者の動脈圧を低下し得るさらなる組成物の同時投与または逐次投与を可能にする。
【0087】
たとえば、ホスホジエステラーゼ5型(PDE5)阻害剤は、勃起不全の処置に使用されるクラスの薬物であり、対象の血圧を低下させる副作用を有する。本発明の実施形態は、勃起不全を罹患しており男性の避妊法に従うことを望んでいる男性患者におけるPDE5阻害剤および(R)-シロドシンの同時投与を含み得る。
【0088】
一実施形態では、毎日の投与の避妊法における本組成物の使用はさらに、勃起不全の処置に適切なさらなる組成物の同時投与または逐次投与を含み、好ましくはこのさらなる組成物は、ホスホジエステラーゼ5阻害剤を含む。
【0089】
PDE5阻害剤は、血圧のわずかな低下に関連する軽い血管拡張剤である(Huang S; and Lie J. Phosphodiesterase-5 (PDE5) Inhibitors In the Management of Erectile Dysfunction. PT (2013) 38(7): 407, 414-419.)。またα遮断剤も、よく知られている血管作動性化合物である。よって、PDE5阻害剤およびα遮断剤の同時投与は、一部の条件下で、特に診療でPDE5阻害剤を処方される可能性が高い患者集団の中で、さらなる血管拡張作用をもたらし得る(Schwartz B, Kloner R. Drug Interactions With Phosphodiesterase-5 Inhibitors Used for the Treatment of Erectile Dysfunction or Pulmonary Hypertension. CIRCULATION (2010) 122:88-95)(CDER, NDA 22-206, Medical Reviews, Sep 2008.)。しかしながら、本発明の実施形態は、α遮断剤のCmaxの減少を伴うER(R)-シロドシンを含む。α遮断剤の心血管系の副作用はこれらのCmaxに関連しているため、ER(R)-シロドシン製剤は、恐らく、PDE5阻害剤との同時投与の間に相加的な副作用の可能性を最小限にする。
【0090】
α遮断剤およびPDE5阻害剤の同時投与の副作用のリスクを限定する別の典型的な方法は、Schwartzらにより報告されているように、各薬物の摂取を数時間離すことである。現在販売されている4つのPDE5阻害剤(シルデナフィル、バルデナフィル、タダラフィル、アバナフィル)のTmaxの中央値(血漿中濃度のピークが達成される際の時間)は、0.5~2時間の範囲にある(Sharon A. Huang; and Janette D. Lie.Phosphodiesterase-5(PDE5) Inhibitors In the Management of Erectile Dysfunction. P&T (2013) 38 (7):407-419)。(R)-シロドシンLのTmaxの中央値は、約2時間である(CDER, NDA 22-206, CLINICAL PHARMACOLOGY AND BIOPHARMACEUTICS REVIEWS. Jul 2008)。α遮断剤およびPDE5阻害剤が数時間離して摂取される場合、各化合物のCmaxは、同時に達成されず、よって累積効果は低い。しかしながら、本明細書中記載されるように、(R)-シロドシンのER製剤などの本発明の実施形態において、Cmaxは、(R)-シロドシンの従来の/IR製剤より低く、Tmaxは、関連するPDE5阻害剤のTmaxとさらに離れて遅延する。よって、患者の利便性および良好な順守のため同時に本明細書中記載されるα遮断剤組成物およびPDE5阻害剤を同時投与することが可能である。
【0091】
好適には、α-アドレナリン受容体アンタゴニスト徐放製剤は、低血圧クライシスのリスクを伴うことなく、患者の動脈圧を低下し得るさらなる組成物の同時投与または逐次投与を可能にする。一実施形態では、α-アドレナリン受容体アンタゴニストは、α-1-アドレナリン受容体アンタゴニスト、好ましくは(R)-シロドシンである。一実施形態では、徐放製剤は、当業者の一般的な知識に従い適合させる。一実施形態では、徐放製剤は、本発明に係る徐放製剤である。
【0092】
勃起不全および良性前立腺肥大の有症率は高齢の男性で増加しているため、本発明の実施形態は、両病態を罹患している男性患者の処置のための徐放製剤におけるPDE5阻害剤および(R)-シロドシンの同時投与を含み得る。
【0093】
パッケージング
特定の実施形態では、様々な有効成分が、キットとして複数の組成物に組み込まれ得る。一部の実施形態では、本明細書中開示される非ホルモン性避妊組成物は、当業者に知られている物質を使用したキットとしてパッケージングされ得る。
【0094】
本発明のパッケージングは、限定するものではないがPDE5阻害剤を含む、組成物の組み合わせを含むかまたはこれを使用し得る。さらにまたはあるいは、キットは、例として、必要とされる場合に提供される受胎調節の1つ以上のバックアップ方法をさらに含み得る。たとえば、本発明の実施形態は、男性対象において避妊効果を約30時間維持するように製剤化された組成物を含み得る。
【0095】
本発明の実施形態では、パッケージングは、サチェットまたはパッケージにパッケージングされ得る。このような実施形態では、パッケージングは、1つ以上の個別の剤形を含み得る。一部の実施形態では、各パッケージングは、2つの個別の剤形を含み得る。一部の実施形態では、各パッケージングは、3つの個別の剤形を含み得る。
【0096】
さらにまたはあるいは、本発明の実施形態では、単位剤形は、限定するものではないが、紙片上の複数の単位、好ましくはブリスターとして、または任意の大きさのバイアルに、個別に包まれ、パッケージングされ得る。一実施形態では、単位用量は、本発明により実装される本組成物を含む個別に取り外し可能な経口投与単位である。本発明の口腔内で溶解可能な組成物は、限定するものではないが、単位用量、ロール、バルクボトル、およびそれらの組み合わせにパッケージングされ得る。
【0097】
よって本発明はまた、本発明の組成物の単位用量のパッケージングに関する。上述の組成物は、約0.1~約30mg、好ましくは約0.2~約20mgの範囲の量のα-1-アドレナリン受容体アンタゴニストを含み、好ましくは、α-1-アドレナリン受容体アンタゴニストは、8~12mgの量の(R)-シロドシンである。
【0098】
一実施形態では、男性の避妊用パッケージングは、少なくとも1つのパッケージング単位を含み、ここで上記パッケージング単位は、本発明で記載される組成物の約7~約30の別々にパッケージングされた単位用量を含む。
【0099】
一実施形態では、男性の避妊用パッケージングは、約7~約28単位用量を含む。男性の避妊用パッケージングは、7、14、28、56、または84単位用量を含み得る。男性の避妊用パッケージングは、長期間の本発明の非ホルモン性の男性の避妊法に適切であり得る。このような実施形態では、男性の避妊用パッケージングは、本発明に記載される組成物の7、14、28、56、84、または168~365単位用量を含む。
【0100】
別の実施形態では、男性の避妊用パッケージングは、約10~約30単位用量を含む。男性の避妊用パッケージングは、10、20、30、60、または90単位用量を含み得る。男性の避妊用パッケージングは、長期間の本発明の非ホルモン性の男性の避妊法に適切であり得る。このような実施形態では、男性の避妊用パッケージングは、本発明に記載される組成物の10、20、30、60、90、もしくは180~360単位用量を含む。
【0101】
一実施形態では、単位用量は、少なくとも1つのブリスターに配置されている。男性の避妊用パッケージングは、適切にラベル付けされ、本発明に係る男性の避妊法に関する説明書をさらに含み得る。
【0102】
非経口製剤
本発明は、しかしながら、例えばカプセル剤、錠剤などの経口投与に限定されない。本発明の実施形態は、注射、経皮パッチ、または皮下インプラントなどの他の剤形または方法であり得るかこれを含み得る。これらもまた当該分野でよく知られており、本発明の実施形態において、たとえばそれぞれDepo-Provera(登録商標)、Ortho Evra(登録商標)、およびNexplanon(登録商標)などの比較可能な女性の避妊用製品と類似し得る。
【0103】
方法
一態様において、本発明は、男性の避妊のための方法に関する。この方法は、α-1-アドレナリン受容体アンタゴニストおよび薬学的に許容される担体を含む組成物の投与を含み、ここで本組成物は、男性対象に妊娠を行わせなくする無精液症、無精子症、または重篤な精子減少症を誘導することによる避妊効果を有する。
【0104】
別の態様では、本発明は、男性対象に、無精液症、無精子症、または重篤な精子減少症の持続的な状態を誘導するための方法に関する。この方法は、α-1-アドレナリン受容体アンタゴニストおよび薬学的に許容される担体を含む組成物の投与を含む。このような態様では、α-1-アドレナリン受容体アンタゴニスト、その組成物および製剤、ならびにその投与頻度は、上述される通りであり得る。
【0105】
本発明の他の目的、特性、および利点は、以下の特定の実施形態から明らかとなるであろう。この特定の実施例は、本発明の具体的な実施形態を表すものであるが、単なる例として提供されている。よって本発明はまた、この詳細な説明から当業者に明らかとなり得る本発明の趣旨および範囲の中の様々な変更および修正を含む。本発明は、さらに以下の非限定的な実施例により、例示される。
【0106】
定義
本発明において、以下の用語は以下の意味を有する。
【0107】
「約」は、おおよそ、大体、周辺、または相当(approximately, roughly, around, or in the region of)を意味するように本明細書中使用される。用語「約」は、ある数字の前にある場合、上記数字の+または-20%の値を意味する。用語「約」は、数値範囲と組み合わせて使用される場合、記載される数値の20%超および20%未満まで境界を延長させることにより当該範囲を修飾する。
【0108】
「無精液症」は、精液を産生することができないことを表す。
【0109】
「無精子症」は、精液中に精子が存在しないことを表す。
【0110】
「避妊法」は、薬物の避妊効果を持続させ、一般的な集団による通常の幅広い使用にとって効率的かつ適切にさせる、投与スキームおよび飲み忘れの規定(効果を下げることなく取り込みの遅延を許容する可能性)により定義される方法を意味する。言い換えると、本発明の意味における避妊法では、男性対象に対する毎日の投与レジメンの間に1日1回の用量を投与できなくとも、特に投与できないことが、その前に少なくとも2日間、好ましくは少なくとも5日間の連続投与後に起こる場合、無精液症、無精子症、または重篤な精子減少症の持続的な状態に影響を与えない。
【0111】
「剤形」は、用量が、対象または患者に投与される形態であり得る。薬物および栄養補助食品は、一般に、非医療的作用物質を含む製剤の一部として投与される。剤形は、固有の物理的および薬学的な特徴を有する。剤形は、たとえば、固体、液体、または気体状であり得る。「剤形」は、たとえば、カプセル剤、錠剤、カプレット剤、ゲルカプレット剤(ゲルカプセル)などの軟シェルカプセル剤、シロップ、液体組成物、散剤、濃縮粉末、液体と混合した濃縮粉末、嚥下可能形態、顆粒形態、ペレットの形態、および経口液体液剤を含み得る。また剤形は、皮下インプラント、経皮パッチ、注射可能な形態、点鼻薬、貼付剤、または経粘膜的に送達される液剤を含み得る。
【0112】
「賦形剤」は、記載される組成物の不活性成分であるいずれかの化合物を表す。本明細書中使用される場合の「不活性成分(inactive ingredient)」の定義は、21 C.F.R. § 201.3(b)(8)に定義される米国の食品医薬局の定義に従うものであり、有効成分以外の製剤のいずれかの成分である。本明細書中使用される場合、用語「不活性な(inert)」は、記載される組成物の不活性成分であるいずれかの化合物を表す。本発明の意味における用語「有効成分」は、男性の避妊法で必要とされる場合に、薬理学的活性および薬学的なプロファイルを提供するように意図されているいずれかの化合物を含む。
【0113】
「男性対象の避妊」は、男性対象の女性の性的パートナーの妊娠を予防するために男性に使用される方法であり;男性対象に妊娠を行わせないように、無精液症、無精子症、および/または重篤な精子減少症の状態のうちの1つを誘導することを表し得る。
【0114】
「多粒子」は、1超の粒子を含むことを意味し、用語粒子は、球体、マイクロスフィア、錠剤、マイクロタブレット、カプセル、またはマイクロカプセルを意味する。用語多粒子は、クラスター形成された粒子、ペレット状の粒子、圧縮された粒子、または脆い粒子を含み得る。
【0115】
「1日1回の投与」は、ほぼ同じ時間、すなわち±2時間を意味する。
【0116】
「薬学的に許容される」は、妥当な薬学的/医学的な判断の範囲内にあり、ヒトおよび動物の組織と接触させて使用するのに適切であり、過度な毒性、刺激、アレルギー応答、または他の問題もしくは合併症を伴わず、合理的なリスク・ベネフィット比と釣り合った、化合物、物質、組成物、および/または剤形を表す。よって、「薬学的に許容される担体」との文言は、本明細書中使用される場合、十分な剤形の処理を支援するかまたは剤形に望ましい物理的な特徴を提供するために剤形に添加され得る上記に定義したこのような適切な化合物および物質を表す。たとえば、「薬学的に許容される担体」は、限定するものでないが、結合剤、希釈剤、潤滑剤、滑剤、着色剤、乳化剤、崩壊剤、スターチ、水、油、アルコール、保存剤、および糖を含み得る。
【0117】
「重篤な精子減少症」は、精子の総数が少ないかまたは精子が低濃度、通常射精液あたりの精子が約1×106個以下である、精液を表す。
【0118】
「シロドシン」は、1-(3-ヒドロキシプロピル)-5-[2-[[2-[2-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)フェノキシ]エチル]アミノ]プロピル]インドリン-7-カルボキサミドを表す。この分子式はC
25H
32F
3N
3O
4であり、495.53の分子量を有する。好ましい実施形態では、シロドシンの(R)立体異性体、「(R)-シロドシン」が使用される。公式には(-)-(R)-1-(3-ヒドロキシプロピル)-5-[2-[[2-[2-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)フェノキシ]エチル]アミノ]プロピル]インドリン-7-カルボキサミドとして知られている(R)-シロドシンは、以下の式:
【化1】
を有する。「(R)-シロドシン」は、白色または淡黄色/白色に見える散剤である。これは、約105~109℃で融解する。これは、酢酸に非常に可溶性であり、アルコールに溶解しやすく、かつ、水に非常に溶解しにくい。
【0119】
「対象」は、本明細書中使用される場合、あらゆる生物を含み、用語「患者」を包有する。「対象」は、ヒトまたは他のいずれかの動物を表し得る。対象は、それぞれの性別に応じて「男性対象」または「女性対象」と表され得る。一実施形態では、「対象」は、健常な男性のヒト対象である。第2の実施形態では、対象は、勃起不全を罹患している男性のヒトである。第3の実施形態では、対象は、良性前立腺肥大(BPH)を罹患している男性のヒトである。第4の実施形態では、対象は、良性前立腺肥大(BPH)および勃起不全の両方を罹患している男性のヒトである。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【
図1】
図1は、(R)-シロドシンの即時放出(IR)製剤の溶解速度と比較した、(R)-シロドシンの徐放(ER)製剤Aの溶解速度を示すグラフである。
【
図2】
図2は、12または8mgの(R)-シロドシンの徐放製剤の複数日の毎日経口投与後の(R)-シロドシンの血漿中濃度対時間のプロファイルを示すグラフである。即時放出製剤(C24)における8mgの(R)-シロドシンの単回投与から24時間後に得られた血漿中濃度もまたグラフに提示されている。
【
図3】
図3は、12または8mgの(R)-シロドシンの徐放製剤(ER)の複数日の毎日経口投与後および6時間遅延した6回目の摂取後の(R)-シロドシンの血漿中濃度対時間のプロファイルを示すグラフである。即時放出製剤(C24)における8mgの(R)-シロドシンの単回投与から24時間後に得られた血漿中濃度もまたグラフに提示されている。
【
図4】
図4は、12または8mgの(R)-シロドシンの徐放製剤(ER)の複数日の毎日経口投与後および6回目を飲み忘れた後の、(R)-シロドシンの血漿中濃度対時間のプロファイルを示すグラフである。即時放出製剤(C24)における8mgの(R)-シロドシンの単回投与から24時間後に得られた血漿中濃度もまたグラフに提示されている。
【実施例】
【0121】
さらに本発明を、限定するものではないが以下の実施例により示す。
【0122】
実施例1:(R)-シロドシンの徐放製剤
この実施例は、(R)-シロドシンの徐放製剤に関する。
【0123】
(R)-シロドシンの徐放顆粒は、以下の通り本発明に従って調節される。(R)-シロドシンを、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(Opadry(著作権))およびリン酸二水素カリウム(KH
2PO
4)の水溶液に懸濁する。(R)-シロドシン懸濁液の組成を、以下の表1に詳述する。
【表1】
【0124】
次に、この懸濁液を、連続して撹拌しながら、不活性なコアであるセルロースの球体の上に噴霧し、得られた顆粒を乾燥する。得られた顆粒の組成を、表2に提示する。
【表2】
【0125】
次に、エチルセルロース(ECD Aquacoat(登録商標)、26.67(w/w)%)およびセバシン酸ジブチル(DBS,2.0(w/w)%)を含む水性のコーティング液を、(R)-シロドシンの顆粒の上に噴霧し、乾燥する。保護された顆粒の組成を、表3に提示する。
【表3】
【0126】
コーティングされた顆粒を、エチルセルロース(ECD Aquacoat(登録商標), 25.25(w/w)%)、セバシン酸ジブチル(DBS、1.89(w/w)%)、およびグアーガム(0.53(w/w)%)の水性の徐放コーティング溶液を噴霧することにより、さらにコーティングする。この徐放顆粒を乾燥し、最終的な組成を表4に提示し、本明細書中以降で製剤Aと呼ぶ。
【表4】
【0127】
平均粒径は、2mm未満であり、その平均密度は1超であった。
【0128】
硬カプセル剤を、カプセルあたり最終含有量8および12mgまでの適切な量の製剤Aで充填した。
【0129】
実施例2:(R)-シロドシンの徐放溶解速度
参照物質の即時放出(Urorec(登録商標))製剤および実施例1に係る実験上の徐放製剤Aからの(R)-シロドシンの溶解速度を比較するための溶解試験を、USP2型の装置の0.1NのHCl溶液900mlにおいて25℃、50rpmで行った。この比較した溶解速度の結果を、
図1に提示する。
【0130】
徐放製剤の溶解速度は、たとえばRapaflo(登録商標)またはUrorec(登録商標)などの参照物質の即時放出製剤の溶解速度と比較して遅い。
【0131】
実施例3:単回投与の避妊効果
男性対象の処置における本発明の組成物の有効性を評価するための試験を行う。この試験の目的は、(R)-シロドシンの経口摂取が避妊効果をもたらすかどうかを決定することである。
【0132】
18~40歳の合計7名の対象を、オープンラベル試験に登録した。3日間禁欲した後のマスタベーションを介して回収された各対象の精液の初回の解析を行う。各対象は、12mgの(R)-シロドシンの1回の単回投与を受ける。
【0133】
各対象の精液解析を、投与から24時間後に行う。この解析は、以下の表5の結果を示す。
【表5】
【0134】
表5に示されるように、(R)-シロドシン製剤の投与は、男性対象において100%の避妊効果(無精液症または無精子症)をもたらす。
【0135】
この試験はまた、本組成物の投与が、全ての男性対象において勃起の機能およびオーガズムの質の両方を損なわなかったことを示した。
【0136】
実施例4:(R)-シロドシンの薬物動態の性質
(R)-シロドシン(SIL)の薬物動態の性質は、8mgの(R)-シロドシンを健常な志願者に単回投与した後に得られる血漿中濃度-対-時間プロファイルに基づき、モデル化される。(R)-シロドシンのデータは、一次速度定数と共に2コンパートメントモデルにより記載される。(R)-シロドシンの薬物動態の性質は、観察される血漿中濃度に基づき測定した。観察した血漿中濃度により、(R)-シロドシンの血漿中濃度のシミュレーション方法が有効であることが確認される。
【0137】
(R)-シロドシンの薬物動態の性質は、用量範囲1~24mgにわたり直線状であり、時間とは無関係であるため、このモデルは、複数回投与レジメン下での異なる用量で提供される化合物の薬物動態プロファイルの予測に適している。
【0138】
避妊は、(R)-シロドシンの12mgの単回用量の投与から最大24時間後まで維持される。C24は、投与から24時間後の(R)-シロドシンの血漿中濃度である。よって、C24を有意に超える(R)-シロドシンの血漿中濃度を維持する投与レジメンは、持続的な避妊をもたらす。
【0139】
(R)-シロドシンの濃度を少なくともC24に等しいレベルで維持することは、十分であるが;しかしながら、(R)-シロドシンの薬物動態の性質のばらつきおよび個々の代謝のばらつきのため、有意な安全域(すなわちC24よりも有意に高い最低(R)-シロドシン濃度)を提供することが重要である。
【0140】
実施例5:(R)-シロドシンの反復投与後の有効な曝露
このモデルは、8mgの(R)-シロドシンの少なくとも2回~少なくとも5回の毎日の投与後の(R)-シロドシンの薬物動態の性質をシミュレートするために使用される。(R)-シロドシン製剤Aの投与の後、(R)-シロドシンの血漿中濃度は、
図2に示されるように一定してC24を超えている。
【0141】
(R)-シロドシン濃度の有効な曝露は、第2の投与に関してC24濃度より著しく優れており、避妊の効力が維持されていることを示している。
【0142】
さらに、最大血漿中濃度(Cmax)は、起立性低血圧のリスクが保健当局により許容されるものとみなされている即時放出型の8mgの(R)-シロドシン製剤の投与後に測定したCmaxよりも低い。
【0143】
よって、(R)-シロドシン製剤Aの投与は、許容不能な起立性低血圧のリスクを下げる。
【0144】
実施例6:摂取の遅延または飲み忘れは、避妊効果に影響しない。
製剤Aによる8および12mgの(R)-シロドシン徐放製剤の投与は、摂取が遅延する場合および1回飲み忘れる場合を含む、1日1回処置を通しての避妊の維持を可能にする。
【0145】
6回目の摂取が6時間遅延しても(120時間の代わりに126時間での摂取)、
図3に示されるように、(R)-シロドシンの濃度は、C24濃度未満に低下しない。
【0146】
さらに、(R)-シロドシン血漿中濃度は、
図4に示されるように、6日目の投与を忘れた場合であっても、C24超に維持される。
【0147】
よって、
図3および4に提示される結果により確認される通り、本発明に係る投与は、摂取が遅延する場合および1回飲み忘れる場合を含む、全ての処置期間にわたり避妊を維持することが可能である。