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  • 特許-放電電荷量測定装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】放電電荷量測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 29/24 20060101AFI20230501BHJP
【FI】
G01R29/24 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021139566
(22)【出願日】2021-08-30
(65)【公開番号】P2023033709
(43)【公開日】2023-03-13
【審査請求日】2022-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000183738
【氏名又は名称】春日電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504268744
【氏名又は名称】独立行政法人労働者健康安全機構
(74)【代理人】
【識別番号】110002446
【氏名又は名称】弁理士法人アイリンク国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 輝夫
(72)【発明者】
【氏名】崔 光石
(72)【発明者】
【氏名】長田 裕生
(72)【発明者】
【氏名】宮林 善也
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-017873(JP,A)
【文献】特開2001-042644(JP,A)
【文献】特開2007-212208(JP,A)
【文献】特開平08-304500(JP,A)
【文献】特開平10-197482(JP,A)
【文献】特開2000-081468(JP,A)
【文献】特開2008-076213(JP,A)
【文献】米国特許第05754056(US,A)
【文献】中国特許出願公開第111766458(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 29/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電気帯電した測定対象物に接触させる検出端子と、
一方の端子が上記検出端子に接続されるとともに他方の端子が接地されたコンデンサと、
上記コンデンサに並列に接続された抵抗体と、
上記コンデンサの端子間電圧を測定する電圧測定手段と、
上記電圧測定手段で測定された電圧値のピーク値を検出するピーク検出手段と、
上記ピーク検出手段で検出された上記ピーク値を電荷量に変換する変換手段と
を備え、
上記ピーク検出手段は、予め設定されたサンプリング時間Δtごとに上記電圧測定手段で測定された端子間電圧をサンプリングし、サンプリングした電圧値の最高値をピーク値として特定する機能を備えるとともに、
上記コンデンサの静電容量C、上記抵抗体の抵抗値R、及び上記サンプリング時間Δtのそれぞれは、C×R>Δtを満足する範囲で設定された放電電荷量測定装置。
【請求項2】
静電気帯電した測定対象物に接触させる検出端子と、
一方の端子が上記検出端子に接続されるとともに他方の端子が接地されたコンデンサと、
上記コンデンサに並列に接続された抵抗体と、
上記コンデンサの端子間電圧を測定する電圧測定手段と、
上記電圧測定手段で測定された電圧値を電荷量に変換する変換手段と
上記変換手段で変換された電荷量のピーク値を検出するピーク検出手段と
を備え、
上記ピーク検出手段は、予め設定されたサンプリング時間Δtごとに上記変換手段で変換された電荷量をサンプリングし、サンプリングした電荷量の最高値をピーク値として特定する機能を備えるとともに、
上記コンデンサの静電容量C、上記抵抗体の抵抗値R、及び上記サンプリング時間Δtのそれぞれは、C・R>Δtを満足する範囲で設定された放電電荷量測定装置。
【請求項3】
上記静電容量Cと上記抵抗値R、及び上記サンプリング時間Δtは、
C・R≧50×Δtを満足する請求項1又は2に記載の放電電荷量測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、帯電物体が放電したときの、放電電荷量を測定する放電電荷量測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、静電気が帯電した物体から放電が発生したときの電荷量を測定する装置が知られている。
例えば、図4に示す放電電荷量測定装置は、帯電物体1に接近させる検出端子2にコンデンサ3を直列に接続するとともに、コンデンサ3の端子3a,3b間の電圧を測定する電圧測定部4を備え、この電圧測定部4が検出した電圧を図示しない変換手段で電荷量に変換している。このような測定装置では、帯電物体1に検出端子2の先端2aを接近させると、先端2aと帯電物体1との間の電界が大きくなり、この電界が放電開始電界強度を超えると、帯電物体1から検出端子2に向かう放電が発生する。
この放電により帯電物体1から検出端子2側へ流れ込んだ電荷はコンデンサ3に充電される。この充電電荷量をコンデンサ3の端子3a,3b間の電圧Vを測定して検出するようにしている。具体的には、検出された端子間電圧にコンデンサ3の静電容量を掛けて、放電電荷量を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-212208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した測定装置は、検出端子2の先端2aを、帯電物体1に接近させる過程で、帯電物体1の電荷によってコンデンサ3に誘導電圧が発生する。
例えば、帯電物体1がプラスに帯電していた場合、先端2aが帯電物体1に近づくと、検出端子2内のマイナス電荷が帯電物体1のプラス電荷に引き付けられる。したがって、コンデンサ3の一方の端子3a側にプラスの電荷が誘導されることになる。そのため、コンデンサ3の端子3a,3b間にはプラスの誘導電圧が発生する。
このように、帯電物体1からの放電が発生しなくても、コンデンサ3の端子3a,3b間に誘導電圧が発生してしまう。そのため、実際に放電が発生したときの、放電電荷量によって発生するコンデンサの端子3a,3b間の電圧が、上記誘導電圧の影響を受け、その結果、放電電荷量を正確に測定できなくなってしまう。
【0005】
この発明の目的は、測定対象物の放電電荷量を正確、簡単に測定できる放電電荷量測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、静電気帯電した測定対象物に接近させる検出端子と、一方の端子が上記検出端子に接続されるとともに他方の端子が接地されたコンデンサと、上記コンデンサに並列に接続された抵抗体と、上記コンデンサの端子間電圧を測定する電圧測定手段と、上記電圧測定手段で測定された電圧値のピーク値を検出するピーク検出手段と、上記ピーク検出手段で検出された上記ピーク値を電荷量に変換する変換手段とを備え、上記ピーク検出手段は、予め設定されたサンプリング時間Δtごとに上記電圧測定手段で測定された端子間電圧をサンプリングし、サンプリングした電圧値の最高値をピーク値として特定する機能を備えるとともに、上記コンデンサの静電容量C、上記抵抗体の抵抗値R、及び上記サンプリング時間Δtのそれぞれは、C×R>Δtを満足する範囲で設定されている。
【0007】
第2の発明は、静電気帯電した測定対象物に接触させる検出端子と、上記検出端子に接続され、上記測定対象物からの放電電荷を蓄積するコンデンサと、上記コンデンサに並列に接続された抵抗体と、上記コンデンサの端子間電圧を測定する電圧測定手段と、上記電圧測定手段で測定された電圧値を電荷量に変換する変換手段と上記変換手段で変換された電荷量のピーク値を検出するピーク検出手段とを備え、上記ピーク検出手段は、予め設定されたサンプリング時間Δtごとに上記変換手段で変換された電荷量をサンプリングし、サンプリングした電荷量の最高値をピーク値として特定する機能を備えるとともに、上記コンデンサの静電容量C、上記抵抗体の抵抗値R、及び上記サンプリング時間Δtのそれぞれは、C・R>Δtを満足する範囲で設定されている。
【0008】
第3の発明は、上記静電容量Cと上記抵抗値R、及び上記サンプリング時間Δtが、C・R≧50×Δtを満足する。
【発明の効果】
【0010】
第1,2の発明によれば、帯電物体に検出端子を近づける過程で誘導される電荷を、抵抗体を介してアースへ逃がすことができるので、放電によって発生するコンデンサの端子間電圧が誘導電圧の影響を受けることを防止できる。さらに、コンデンサの静電容量C及び抵抗体の抵抗値Rを、コンデンサの端子間電圧の減衰時定数が、サンプリング時間Δtより大きくなるように設定しているので、コンデンサの端子間電圧のピーク値をより正確に特定することができる。その結果、コンデンサに蓄積された電荷量を正確に測定することができる。
【0011】
第3の発明によれば、電圧のピーク値をより正確に検出でき、放電電荷量を正確に測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態の放電電荷量測定装置の回路図である。
図2図2は、コンデンサの端子間電圧の変化を示したグラフである。
図3図3は、実施形態の放電電荷量測定装置を用いた電荷量の測定結果を示したグラフである。
図4図4は、従来の電荷量測定装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施形態]
この発明の一実施形態を説明する。図1は、実施形態の放電電荷量測定装置の回路図、図2は実施形態のコンデンサの端子間電圧の変化を示すグラフ、図3は、実施形態の放電電荷量測定装置を用いた電荷量の測定結果を示したグラフである。
【0015】
この実施形態の放電電荷量測定装置は、図1に示すように、先端2aをコロナ放電が発生しにくい形状にした検出端子2を備え、この検出端子2に一方の端子3aを接続するとともに他方の端子3bを接地させたコンデンサ3を備えている。そして、従来と同様に、コンデンサ3の端子間電圧を測定する電圧測定手段である電圧測定部4を備えている。ただし、この実施形態では、コンデンサ3に並列に抵抗体5が接続されている。
【0016】
そして、上記コンデンサ3の静電容量はC[F]、抵抗体5の抵抗値はR[Ω]である。
なお、上記コロナ放電が発生しにくい形状とは、帯電物体1からの放電が尖端などの周りで持続するコロナ放電にならないような形状である。具体的には、直径が20[mm]以上の球形である。このように検出端子2の先端2aの直径を大きくすることで球表面の曲率が小さくなり、検出端子2の先端2aを帯電物体1に接近させても、帯電物体1からの電界が先端2aの球形表面の一箇所に集中しなくなる。そのため、検出端子2の先端2a付近でコロナ放電が発生しにくくなり、帯電物体1からはパルス状の放電が発生する。
【0017】
もし、検出端子2の曲率を大きくすると、帯電物体1からの電界が検出端子2の球面の一箇所に集中して、パルス状の放電が発生する前にコロナ放電が発生してしまう。このような場合には、帯電物体1の帯電電荷をコロナ放電によって逃がした後に発生したパルス状の放電の放電電荷量を測定することになるため、帯電物体1が保持していた電荷量に相当する、パルス状の放電の放電電荷量を正確に測定できない。つまり、この実施形態で、検出端子2の先端2aをコロナ放電が発生し難い形状にしたのは、帯電物体1から発生する一つのパルス状の放電の放電電荷量の測定を可能にするためである。したがって、帯電物体1と対向する側の面が、曲率が小さい曲面などでとがった部分を持たなければ、検出端子2の先端2aは球形でなくてもよい。
【0018】
また、上記電圧測定部4には、電圧測定部4が測定した電圧値のピーク値を検出して保持するピーク検出手段であるピーク検出部6が接続され、このピーク検出部6で検出された電圧のピーク値を電荷量に変換する変換部7(変換手段)が接続されている。さらに、変換部7が変換した電荷量の値を出力する出力部8を備えている。
【0019】
上記電圧測定部4は、コンデンサ3の端子3a,3b間の電圧を連続して検出する機能を備えている。ピーク検出部6は、電圧測定部4で検出された電圧値をサンプリング時間Δtで繰り返しサンプリングし、最高値をピーク値Vpとして特定する機能を備えている。具体的には、ピーク検出部6は、測定開始時に電圧値Vをサンプリングしてその電圧値Vを保持し、そのサンプリング時間Δt後に再度、電圧値Vをサンプリングするとともに、この電圧値VとVとを比較して、大きい方の値を保持し、他方を消去することを一定時間繰り返し、その間の最大値をピーク値Vpとして特定する。
【0020】
そして、この実施形態の放電電荷量測定装置においては、C×R≧サンプリング時間Δtとなるようにしている。
上記C×Rは、放電電荷が充電されることによって上昇したコンデンサ3の端子間電圧が、最大電圧V0から減衰する際の時定数τ[S]に相当する。時定数τは、指数関数的に減衰するコンデンサ3の端子間電圧が最大電圧V0から、その36.8%の電圧V1まで減衰する時間である(図2参照)。
【0021】
また、上記変換部7は、ピーク検出部6で特定し保持された電圧のピーク値Vpを電荷量Qに変換して出力部8に対して出力する。変換部7は、上記ピーク値Vpと上記コンデンサ3の静電容量Cとに基づいて、電荷量Q=C×Vpを算出する。
出力部8は、入力された電荷量Qの値を表示したり、記録したりする機能を備えている。
なお、この実施形態では、コンデンサ3の静電容量C=1[μF]、抵抗体5の抵抗値R=100[kΩ]、サンプリング時間Δt=2[mS]とする。つまり、この実施形態では、時定数τ=C×Rが、サンプリング時間Δtの50倍にしている。
【0022】
[作用・効果等]
上記のように構成されたこの実施形態の放電電荷量測定装置の作用等を説明する。
帯電物体1の放電電荷量を測定する際には、帯電物体1からの放電が発生する距離まで、検出端子2の先端2aを帯電物体1の表面に近づける。
この過程で、帯電物体1の電荷によって、検出端子2内において帯電物体1と逆極性の電荷が引き付けられ、コンデンサ3の一方の端子3aには帯電物体1と同極性の電荷が誘導される。しかし、この実施形態では、コンデンサ3に並列に抵抗体5が接続されているので、コンデンサ3に蓄積された電荷は抵抗体5を介して接地へ流れる。
このように誘導電荷は接地へ流れるので、誘導電荷によるコンデンサ3の端子3a,3b間の電圧はほとんど上昇せず、ほぼゼロに保たれる。
【0023】
上記先端2aが一定以上近づくと、帯電物体1からパルス状の放電が発生し、瞬間的に放電電荷が検出端子2から流れ込んでコンデンサ3が充電される。このときコンデンサ3に蓄積された電荷は放電によるもので、誘導電荷による誘導電圧の影響をほとんど受けない。したがって、コンデンサ3の端子間電圧を測定することで、対応する放電電荷量を特定することができる。
【0024】
また、コンデンサ3に一旦蓄積された放電電荷も、時間とともに抵抗体5を介して接地へ流れてしまうため、コンデンサ3の端子間電圧Vは、図2のように減衰してしまう。そこで、ピーク検出部6は、次のようにしてコンデンサ3の端子間電圧のピーク値Vpを検出して保持する。
ピーク検出部6は、上記電圧測定部4が測定したコンデンサ3の端子間電圧Vを、サンプリング時間Δt、ここでは2[mS]ごとにサンプリングする。そして、サンプリングした端子間電圧Vを対比し、ピーク値Vpを特定して変換部7へ入力する。
【0025】
ピーク検出部6が特定して保持したピーク値Vpが入力された変換部7は、上記ピーク値Vpにコンデンサ3の静電容量Cを掛けて電荷量を算出し、出力部8に出力させる。上記変換部7には、コンデンサ3の静電容量Cの値が予め設定されている。
この実施形態では、誘導電荷が抵抗体5を介して接地へ流れるようにしているので、測定される端子間電圧が、従来のように誘導電荷の影響を受けない。
【0026】
また、ピーク検出部6のサンプリング時間Δtを、コンデンサ3の静電容量Cと抵抗体5の抵抗値Rとの積である時定数τの50分の1にしているので、ピーク値Vpを正確に検出できる。
その理由を以下に説明する。
図2は、コンデンサ3の端子間電圧Vの変化のグラフである。帯電物体1からの放電が発生した瞬間tに、放電電荷がコンデンサ3に一気に流れ込んで端子間の電圧がV0まで上昇する。その後、コンデンサ3から抵抗体5を介して電荷が接地へ流れて、端子間電圧Vが減衰する。そして、時刻tで、最大電圧V0の36.8[%]まで減衰する。この時刻tからtまでの時間が、上記時定数τである。
【0027】
このように端子間電圧Vが減衰する過程で、ピーク検出部6がサンプリング時間Δt=2[mS]ごとに端子間電圧Vをサンプリングする。
一方、コンデンサ3の端子間電圧が減衰する時定数は、τ=100[mS]である。これに対し、ピーク検出部6は、上記サンプリング時間Δt=2[mS]でサンプリングを実行するため、時定数τの時間内に50回のサンプリングに基づいてピーク値Vpが特定され保持されることになる。
このように、最大電圧V0がV1まで減衰するまでの間に50回のサンプリングを行なってピーク検出部6がピーク値Vpを検出することになるので、検出されたVpは最大電圧V0に近いものとなる。
【0028】
以下に、この実施形態の放電電荷量測定装置を用いた電荷量測定結果を説明する。
この実験では、上記帯電物体1の代わりに、市販のフィルムコンデンサに既知の値の電荷量を充電して用いた。実験で用いた電荷量は-10000[nC]~+10000[nC]で、フィルムコンデンサには、±500[nC]と、±1000[nC]から1000[nC]ずつを与えた。
そして、充電したフィルムコンデンサに検出端子2の先端2aを接触させて放電させ、その時の放電電荷量を測定した。
【0029】
この測定結果は、図3のグラフに示すとおりである。このグラフは、横軸をフィルムコンデンサの充電電荷量Qとし、縦軸を測定値Qとしている。
図3に示すように、実施形態の放電電荷量測定装置による測定値Qとフィルムコンデンサの充電電荷量Qとは一致し、この放電電荷量測定装置の信頼性が確認できた。
【0030】
実施形態の放電電荷測定装置では、コンデンサ3と並列に、接地に接続された抵抗体5を設けるとともに、時定数τに比べてサンプリング時間Δtを小さくしているため、放電電荷量を精度よく測定できるようになった。
サンプリング時間Δtは、小さければ小さいほどより最大電圧V0に近い値、つまり正確なピーク値Vpを特定できることになる。ただし、サンプリング時間Δtが時定数τ未満であれば、少なくとも1回は時定数τ内でのサンプリングが実行され、十分な検出精度が得られると考えられるが、上記のように50分の1ならば、さらに精度が上がる。
また、時定数τは、静電容量C及び抵抗値Rによって設定できるので、ピーク検出部6のサンプリング時間Δτに応じて時定数τを調整することもできる。
【0031】
ただし、繰り返し電荷量を測定する際には、コンデンサ3に蓄積された電荷をその都度すべて接地へ流さなければならない。したがって、時定数τが大きすぎて、上記端子間電圧の減衰時間を長く設定された測定装置は、繰り返しの電荷量測定には適さない。
上記端子間電圧Vが最大電圧V0からほぼゼロになるまでの時間は、時定数τの約5倍であるので、例えば、上記のように時定数τ=100[mS]ならば、約500[mS]でコンデンサ3が空になる。また、時定数τ=200[mS]でも、約1[S]で、コンデンサ3が空になるので、1[S]間隔での測定も可能になる。
【0032】
さらに、大きな放電電荷量を測定するためには、コンデンサ3の静電容量Cを大きくしなければならない。しかし、静電容量Cが放電電荷量と比べて大きすぎる場合には、端子間電圧が小さすぎて、検出精度が落ちてしまうこともある。また、コンデンサ3の端子間電圧の絶対値の大きさによって、対応する能力を有するピーク検出部6や変換部7、出力部8が必要になる。
【0033】
したがって、上記コンデンサ3の静電容量C、上記抵抗体5の抵抗値R、及び上記サンプリング時間Δtのそれぞれは、使用目的などに応じ、C×R>Δtを満足する範囲で設定すればよい。
なお、上記実施形態では、ピーク検出部6が、端子間電圧のピーク値Vpを特定して保持した後に、その値を電荷量に変換するようにしているが、電圧測定部4の測定値をそのまま電荷量に変換し、その後、電荷量のピーク値を検出して保持するようにしてもよい。
この場合には、図1に示す電圧測定部4とピーク検出部6との間に変換部7が接続される。
【産業上の利用可能性】
【0034】
帯電物体からの放電電荷量を、簡単かつ正確に測定することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 測定対象物
2 検出端子
2a (検出端子の)先端
3 コンデンサ
3a,3b (コンデンサの)端子
4 (電圧測定手段)電圧測定部
5 抵抗体
6 (ピーク検出手段)ピーク検出部
7 変換部
図1
図2
図3
図4