(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】細胞観察システムおよび細胞観察方法
(51)【国際特許分類】
G01N 15/14 20060101AFI20230501BHJP
C12Q 1/04 20060101ALI20230501BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
G01N15/14 D
C12Q1/04
C12M1/34 A
(21)【出願番号】P 2019033782
(22)【出願日】2019-02-27
【審査請求日】2021-10-29
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人 日本医療研究開発機構、「医療分野研究成果展開事業・先端計測分析技術・機器開発プログラム」、「三次元像フローサイトメーター基盤技術の開発」委託研究開発、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504300181
【氏名又は名称】国立大学法人浜松医科大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124800
【氏名又は名称】諏澤 勇司
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100110582
【氏名又は名称】柴田 昌聰
(72)【発明者】
【氏名】菊池 寛利
(72)【発明者】
【氏名】山田 秀直
(72)【発明者】
【氏名】廣津 周
(72)【発明者】
【氏名】山下 大輔
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 茂俊
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-510592(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0267021(US,A1)
【文献】特開2005-021831(JP,A)
【文献】国際公開第2018/067770(WO,A1)
【文献】特表2016-519760(JP,A)
【文献】山田秀直, 血中循環腫瘍細胞検出のためのトモグラフィック位相イメージングフローサイトメトリー,Med Imag Tech,2016年03月,Vol. 34 No.2,pp.95-102
【文献】粟辻安浩,ディジタルホログラフィ -3次元動画像高精度計測が可能な技術,システム/制御/情報,2008年,Vol.52 No.11,pp.407-413
【文献】大貫一朗,4章 撮像面位相差センサを用いたカメラ,映像情報メディア学会誌,2014年,Vol.68, No.3,pp.203-207
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/14
C12M 1/34
C12Q 1/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路を流体とともに移動する細胞を観察する細胞観察システムであって、
第1光学系および第1撮像素子を含み、前記流路における前記細胞の移動方向に関して第1位置にある前記細胞から前記第1光学系を経て前記第1撮像素子に到達した光を前記第1撮像素子により受光して前記細胞を撮像する第1撮像装置と、
フォーカス調整信号に基づいてフォーカスが調整される第2光学系および第2撮像素子を含み、前記流路における前記細胞の移動方向に関して前記第1位置より下流の第2位置にある前記細胞から前記第2光学系を経て前記第2撮像素子に到達した光を前記第2撮像素子により受光して前記細胞を撮像する第2撮像装置と、
前記第1撮像装置の前記第1撮像素子による撮像により得られた画像に基づいて前記流路の断面における前記細胞の通過位置を求め、その求めた通過位置に基づいて前記フォーカス調整信号を生成して前記第2撮像装置の前記第2光学系に与える制御装置と、
を備える細胞観察システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記通過位置に基づいて前記第2光学系のフォーカスを調整すべきであるか否かを判断し、前記第2光学系のフォーカスを調整すべきであると判断した場合に前記フォーカス調整信号を前記第2撮像装置に与える、
請求項1に記載の細胞観察システム。
【請求項3】
前記第1撮像装置は定量位相顕微鏡である、
請求項1または2に記載の細胞観察システム。
【請求項4】
前記第2撮像装置は定量位相顕微鏡または位相トモグラフィック顕微鏡である、
請求項1または2に記載の細胞観察システム。
【請求項5】
前記第1撮像装置は定量位相顕微鏡であり、
前記第2撮像装置は位相トモグラフィック顕微鏡である、
請求項1または2に記載の細胞観察システム。
【請求項6】
前記制御装置は、位相差オートフォーカス技術、像面位相差フォーカス技術またはデジタルホログラフィを用いるオートフォーカス技術により、前記画像に基づいて前記通過位置を求める、
請求項1~5の何れか1項に記載の細胞観察システム。
【請求項7】
流体力学的集束効果を利用して前記流路において前記流体を層流として流す、
請求項1~6の何れか1項に記載の細胞観察システム。
【請求項8】
流路を流体とともに移動する細胞を観察する細胞観察方法であって、
第1光学系および第1撮像素子を含む第1撮像装置を用いて、前記流路における前記細胞の移動方向に関して第1位置にある前記細胞から前記第1光学系を経て前記第1撮像素子に到達した光を前記第1撮像素子により受光して前記細胞を撮像する第1撮像ステップと、
フォーカス調整信号に基づいてフォーカスが調整される第2光学系および第2撮像素子を含む第2撮像装置を用いて、前記流路における前記細胞の移動方向に関して前記第1位置より下流の第2位置にある前記細胞から前記第2光学系を経て前記第2撮像素子に到達した光を前記第2撮像素子により受光して前記細胞を撮像する第2撮像ステップと、
前記第1撮像ステップの後であって前記第2撮像ステップの前に、前記第1撮像装置の前記第1撮像素子による撮像により得られた画像に基づいて前記流路の断面における前記細胞の通過位置を求め、その求めた通過位置に基づいて前記フォーカス調整信号を生成して前記第2撮像装置の前記第2光学系に与えるフォーカス調整指示ステップと、
を備える細胞観察方法。
【請求項9】
前記フォーカス調整指示ステップにおいて、前記通過位置に基づいて前記第2光学系のフォーカスを調整すべきであるか否かを判断し、前記第2光学系のフォーカスを調整すべきであると判断した場合に前記フォーカス調整信号を前記第2撮像装置に与える、
請求項8に記載の細胞観察方法。
【請求項10】
前記第1撮像装置として定量位相顕微鏡を用いる、
請求項8または9に記載の細胞観察方法。
【請求項11】
前記第2撮像装置として定量位相顕微鏡または位相トモグラフィック顕微鏡を用いる、
請求項8または9に記載の細胞観察方法。
【請求項12】
前記第1撮像装置として定量位相顕微鏡を用い、
前記第2撮像装置として位相トモグラフィック顕微鏡を用いる、
請求項8または9に記載の細胞観察方法。
【請求項13】
前記フォーカス調整指示ステップにおいて、位相差オートフォーカス技術、像面位相差フォーカス技術またはデジタルホログラフィを用いるオートフォーカス技術により、前記画像に基づいて前記通過位置を求める、
請求項8~12の何れか1項に記載の細胞観察方法。
【請求項14】
流体力学的集束効果を利用して前記流路において前記流体を層流として流す、
請求項8~13の何れか1項に記載の細胞観察方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞観察システムおよび細胞観察方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
流路を流体とともに移動する細胞を観察する細胞観察システム(フローサイトメータ又はイメージングフローサイトメータ)において、観察の対象である細胞の鮮明な画像を取得するために撮像装置のフォーカシングは重要である。細胞の鮮明な画像を取得することで、例えば、その細胞が、がん患者に含まれるがん細胞(血中循環腫瘍細胞、circulating tumor cells)であるか否かを識別することができる。
【0003】
フローサイトメータは、光電子増倍管およびフォトダイオード等のポイントセンサ型の光検出器を用いたものである。フローサイトメータによる細胞観察では、数m/s~10m/sの流速で細胞を流す。
【0004】
イメージングフローサイトメータは、リニアアレイセンサ又は2次元センサ型の光検出器を用いたものである。イメージングフローサイトメータによる細胞観察では、数mm/s~数十mm/sの流速で細胞を流すと言われている。この流速は、フローサイトメータによる細胞観察の場合の約1/103である。イメージングフローサイトメータとして、細胞の定量位相像を取得することができる2次元像イメージングフローサイトメータと、細胞の屈折率分布に関する3次元像を取得することができる3次元像イメージングフローサイトメータとがある。
【0005】
一般的に、フローサイトメータにおいては、流体力学的収束効果により、培養液などの流体とともに細胞を流すことで、細胞を流れ方向に沿って略一列にすることができる。この流体力学的収束効果により、撮像装置の光学系のフォーカスを固定したままであっても、フォーカスのあった細胞の画像を取得することができる。流体力学的収束効果による細胞の一列の程度は、サンプル液(細胞懸濁液)とシース液(培養液)との体積比による。この体積比率は、一般的に、これらの液体を押し出すために付加される圧力によって制御される。体積比を小さくすることで、サンプル液柱の直径は小さくなり、その結果、細胞は、より真に一列になる。一方、体積比を大きくすることで、サンプル液柱の直径Δdは大きくなり、その結果、細胞は、真に一列には流れなくなる。この場合、撮像装置の光学系の光軸方向に厚みをもった範囲に亘って、細胞が流れることになり、フォーカスが合わない細胞の画像が取得される。
【0006】
一方、撮像装置の光学系の焦点深度(DOF, depth of focus)より、サンプル液柱の直径Δdが小さい場合(すなわち、DOF>Δd)は、フォーカスがあった細胞の画像が得られる。また、フローサイトメータにおいては、サンプルノズルの位置に影響を与えるような機器の調整を行った場合において、略一列に流れる細胞の流路断面内における位置が変化し、結果、フォーカスの合わない細胞の画像が取得される。また、現在の技術レベルにおいて、撮像光学系のフォーカス調整に要する時間は、一般的に最小1μsと言われており、十分な応答速度が得られない。この2つの技術的課題を回避するために、本測定前に予備試料またはビーズ等の擬似試料を流し、フォーカス調整を行ってフォーカス面を決定した上で、試験試料を流す。撮像光学系のフォーカス調整に要する時間より短い時間で、細胞が流れる場合には、試験試料を流している間にはフォーカスの再調整を行うことはない。
【0007】
イメージングフローサイトメータでは、撮影対象の細胞が移動することを利用して、リニアアレイセンサ(TDIセンサ含む)を用いることが多い。リニアアレイセンサでは、流れ方向に垂直な方向の線上毎(L1、L2、L3、…)に対象物を、流れ方向に走査して画像を取得する。細胞のような球形の物体を流れ方向での走査にて撮影する場合、最初の線上(L1)で細胞全体のフォーカスを推定する必要がある。しかし、これは困難である。
【0008】
特許文献1,2に記載された発明では、撮像装置は、撮像光学系とは別に設けた光学系によりフォーカスずれ量を測定し、この測定結果に基づいて撮像光学系のフォーカスを調整する。この撮像装置は、流路における細胞の移動方向に関して共通の位置においてフォーカスずれ量の測定および撮像を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許出願公開第2004/021725号明細書
【文献】特開2001-255260号公報
【非特許文献】
【0010】
【文献】Park, Y., Popescu, G.,Badizadegan, K., Dasari, R.R., Feld, M.S.: Fresnel particle tracing in threedimensions using diffraction phase microscopy. Opt. Lett. 32, 811-813 (2007).doi:10.1364/OL.32.000811
【文献】山内豊彦、山田秀直、上田之雄、「定量位相顕微鏡の小型化と各種応用計測 =空気定盤不要な卓上二光束干渉顕微鏡=」、光アライアンス、2017.2. pp.26-29
【文献】山田秀直、山内豊彦、上田之雄、山下豊、「血中循環腫瘍細胞検出のためのトモグラフィック位相イメージングフローサイトメトリー」、Medical Imaging Technology, Vol.34, No.2, pp.95-102 (2016)
【文献】Langehanenberg, P., Kemper, B.,Dirksen, D., von Bally, G.: Autofocusing in digital holographic phase contrastmicroscopy on pure phase objects for live cell imaging. Appl. Opt. 47, D176(2008). doi:10.1364/AO.47.00D176
【文献】Liebling, M., Unser, M.: Autofocusfor digital Fresnel holograms by use of a Fresnelet-sparsity criterion. J. Opt.Soc. Am. A. 21, 2424 (2004). doi:10.1364/JOSAA.21.002424
【文献】Rinehart, M.T., Park, H.S., Wax,A.: Influence of defocus on quantitative analysis of microscopic objects andindividual cells with digital holography. Biomed. Opt. Express. 6, 2067-2075(2015). doi:10.1364/BOE.6.002067
【文献】一朗大貫: 4. 撮像面位相差センサを用いたカメラ. 映像情報メディア学会誌. 68, 203-207 (2014).doi:10.3169/itej.68.203
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1,2に記載された発明では、流路に細胞を流す速さは、フォーカスずれ量の測定および撮像光学系のフォーカス調整に要する時間により制限される。次に流れてくる細胞の光軸方向の位置が前の細胞と同じであるという保証がないことから、この発明では、細胞の流速はフォーカシング速度(フォーカスずれ量の測定および撮像光学系のフォーカス調整に要する時間)により制限される。
【0012】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、フォーカシング速度による細胞の流速の制限を緩和することができる細胞観察システムおよび細胞観察方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の細胞観察システムは、流路を流体とともに移動する細胞を観察する細胞観察システムであって、(1) 第1光学系および第1撮像素子を含み、流路における細胞の移動方向に関して第1位置にある細胞から第1光学系を経て第1撮像素子に到達した光を第1撮像素子により受光して細胞を撮像する第1撮像装置と、(2) フォーカス調整信号に基づいてフォーカスが調整される第2光学系および第2撮像素子を含み、流路における細胞の移動方向に関して第1位置より下流の第2位置にある細胞から第2光学系を経て第2撮像素子に到達した光を第2撮像素子により受光して細胞を撮像する第2撮像装置と、(3) 第1撮像装置の第1撮像素子による撮像により得られた画像に基づいて流路の断面における細胞の通過位置を求め、その求めた通過位置に基づいてフォーカス調整信号を生成して第2撮像装置の第2光学系に与える制御装置と、を備える。
【0014】
本発明の細胞観察方法は、流路を流体とともに移動する細胞を観察する細胞観察方法であって、(1) 第1光学系および第1撮像素子を含む第1撮像装置を用いて、流路における細胞の移動方向に関して第1位置にある細胞から第1光学系を経て第1撮像素子に到達した光を第1撮像素子により受光して細胞を撮像する第1撮像ステップと、(2) フォーカス調整信号に基づいてフォーカスが調整される第2光学系および第2撮像素子を含む第2撮像装置を用いて、流路における細胞の移動方向に関して第1位置より下流の第2位置にある細胞から第2光学系を経て第2撮像素子に到達した光を第2撮像素子により受光して細胞を撮像する第2撮像ステップと、(3) 第1撮像ステップの後であって第2撮像ステップの前に、第1撮像装置の第1撮像素子による撮像により得られた画像に基づいて流路の断面における細胞の通過位置を求め、その求めた通過位置に基づいてフォーカス調整信号を生成して第2撮像装置の第2光学系に与えるフォーカス調整指示ステップと、を備える。
【0015】
本発明の一側面において、制御装置またはフォーカス調整指示ステップは、通過位置に基づいて第2光学系のフォーカスを調整すべきであるか否かを判断し、第2光学系のフォーカスを調整すべきであると判断した場合にフォーカス調整信号を第2撮像装置に与えてもよい。
【0016】
本発明の一側面において、第1撮像装置は定量位相顕微鏡であってもよい。第2撮像装置は定量位相顕微鏡または位相トモグラフィック顕微鏡であってもよい。第1撮像装置は定量位相顕微鏡であり、第2撮像装置は位相トモグラフィック顕微鏡であってもよい。
【0017】
本発明の一側面において、制御装置またはフォーカス調整指示ステップは、位相差オートフォーカス技術、像面位相差フォーカス技術またはデジタルホログラフィを用いるオートフォーカス技術により、画像に基づいて通過位置を求めてもよい。
【0018】
また、本発明の一側面において、流体力学的集束効果を利用して流路において流体を層流として流してもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、フォーカシング速度による細胞の流速の制限を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、細胞観察システム1の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、流路10の構造の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、細胞30の相互間の間隔のヒストグラムの例である。
【
図4】
図4は、撮像装置100Aの構成を示す図である。
【
図5】
図5は、制御装置60から与えられるカメラトリガ信号が指示するタイミングで撮像素子120が撮像を行う場合のタイミングチャートである。
【
図6】
図6は、撮像装置100Bの構成を示す図である。
【
図7】
図7は、撮像装置100Cの構成を示す図である。
【
図8】
図8は、撮像装置100Dの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0022】
図1は、細胞観察システム1の構成を示す図である。細胞観察システム1は、流路10を流体20とともに移動する細胞30を観察するものである。細胞観察システム1は、第1撮像装置40、第2撮像装置50、制御装置60および解析装置70を備える。
【0023】
例えば、流路10はフローセルであり、流体20は培養液であり、細胞30は赤血球,白血球およびCTC等である。細胞30は培養液に懸濁された状態で準備される。その懸濁液濃度は例えば106個/mLとされる。その細胞懸濁液は流路10に導かれる。流体力学的集束効果により、流路10中を細胞30が略一直線上を移動するようにする。
【0024】
第1撮像装置40は、第1光学系41および第1撮像素子42を含む。第1光学系41は、流路10における細胞30の移動方向に関して第1位置にある細胞30から到達した光を第1撮像素子42の受光面へ導く。第1撮像素子42は、第1光学系41と光学的に接続されており、受光面に到達した光を受光して細胞30を撮像する(第1撮像ステップ)。
【0025】
第2撮像装置50は、第2光学系51および第2撮像素子52を含む。第2光学系51は、流路10における細胞30の移動方向に関して第2位置にある細胞30から到達した光を第2撮像素子52の受光面へ導く。第2撮像素子52は、第2光学系51と光学的に接続されており、受光面に到達した光を受光して細胞30を撮像する(第2撮像ステップ)。第2位置は、第1位置より下流にある。
【0026】
第2光学系51は、制御装置60から与えられるフォーカス調整信号に基づいてフォーカスが調整される。そのフォーカス調整後に第2撮像素子52は細胞30を撮像することで、フォーカスの合った細胞30の鮮明な画像を取得することができる。第2撮像素子52による撮像動作は、制御装置60から与えられるカメラトリガ信号が指示するタイミングで行われてもよいし、一定のフレームレートで連続して行われてもよい。
【0027】
制御装置60は、第1撮像装置40の第1撮像素子42と電気的に接続され、第2撮像装置50の第2光学系51および第2撮像素子52と電気的に接続されている。制御装置60は、第1撮像素子42による撮像により得られた画像を入力し、その画像を解析することで、流路10の断面における細胞30の通過位置を求める。そして、制御装置60は、その求めた通過位置に基づいてフォーカス調整信号を生成し、そのフォーカス調整信号を第2光学系51に与える(フォーカス調整指示ステップ)。また、制御装置60は、第2撮像素子52による撮像のタイミングを指示するカメラトリガ信号を第2撮像素子52に与える。
【0028】
制御装置60は、プロセッサであるCPU(Central ProcessingUnit)、記憶媒体であるRAM(Random Access Memory)又はROM(Read Only Memory)、キーボードまたはマウス等の入力部、液晶ディスプレイ等の表示部、及び入出力モジュールを含んで構成された汎用のコンピュータであってもよい。制御装置60は、例えばマイコンまたはFPGA(Field Programmable Gate Array)等を用いて専用機として構成されてもよい。
【0029】
解析装置70は、第2撮像装置50の第2撮像素子52と電気的に接続されている。解析装置70は、第2撮像素子52による撮像により得られた画像を入力し、その画像を解析することで、その画像の細胞30の種類を識別する。解析装置70は、プロセッサであるCPU、記憶媒体であるRAM又はROM、キーボードまたはマウス等の入力部、液晶ディスプレイ等の表示部、及び入出力モジュールを含んで構成された汎用のコンピュータであってもよい。
【0030】
流路10は、例えばガラス等の透明な材料からなるパイプ構造を有し、その内部に流体20とともに細胞30を流す。流体20は例えば細胞培養液である。撮像位置(第1位置、第2位置)において、流路10の壁面は平面であるのが好ましく、また、流路10の断面形状が長方形(正方形を含む。)であるのが好ましい。このようにすることで、細胞に関して歪みの小さい画像を取得することができる。
【0031】
流路10に流体20を流す場合、層流(Laminar flow)条件にて流体20を流すのが好ましい。層流条件ではなく乱流条件とすると、培養液などの流体20の流線が光軸に対して垂直な面内に収まらない場合が多く、したがって、流線に沿って流れる細胞30は撮像位置(第1位置、第2位置)において光軸方向の位置が異なるので、フォーカス調整の効果が表れにくい。
【0032】
流路10に流体20を流す場合、撮像位置(第1位置、第2位置)より上流において、予め流路10の断面における或る一定領域(例えば中心付近領域)に細胞30を集束させておくことが好ましい。この集束を実現する方法として、流体力学的集束(Hydrodynamic focusing)、超音波集束(Acousticfocusing)および慣性集束(Inertial focusing)などが知られている。このような方法により細胞30を予め流路10の中心付近に集束させておくことで、フォーカスずれ量をある一定の幅(Δd)に制限することができる。
【0033】
本実施形態の細胞観察方法は、上記の第1撮像装置40および第2撮像装置50を用いて、流路10を流体20とともに移動する細胞30を観察するものである。
【0034】
第1撮像ステップにおいて、第1光学系41および第1撮像素子42を含む第1撮像装置40を用いて、流路10における細胞30の移動方向に関して第1位置にある細胞30から第1光学系41を経て第1撮像素子42に到達した光を第1撮像素子42により受光して細胞を撮像する。この撮像により得られた画像データは制御装置60へ送られる。
【0035】
第2撮像ステップにおいて、フォーカス調整信号に基づいてフォーカスが調整される第2光学系51および第2撮像素子52を含む第2撮像装置50を用いて、第1位置より下流の第2位置にある細胞30から第2光学系51を経て第2撮像素子52に到達した光を第2撮像素子52により受光して細胞を撮像する。この撮像により得られた細胞の画像は、解析装置70により解析されて細胞の種類が識別され、また、表示部に表示される。
【0036】
第1撮像ステップの後であって第2撮像ステップの前のフォーカス調整指示ステップにおいて、制御装置60により、第1撮像装置40の第1撮像素子42による撮像により得られた画像に基づいて、流路10の断面における細胞30の通過位置を求める。そして、その求めた通過位置に基づいてフォーカス調整信号を生成して第2撮像装置50の第2光学系51に与える。
【0037】
図2は、流路10の構造の一例を示す図である。この構造は、流体力学的集束効果を利用して流路10において流体20を層流として流すものである。撮像位置(第1位置、第2位置)より上流において、流路10の中にノズル11が挿入されている。ノズル11から細胞懸濁液(サンプル液)が流路10に供給され、ノズル11を中心とした同心円管からシース液が流路10に供給される。サンプル液およびシース液それぞれに与える圧力により流量を調整することができ、サンプル液に含まれる細胞30を流路10の中心付近に集束させることができる。サンプル液の流量をQsaとし、シース液の流量をQshとすると、集束幅Δdは2液の流量比(Qsh/Qsa)に依存する。また、細胞30の平均流速Vは、2液の流路によって決まり、流路断面積をSとすると、V=(Qsh+Qsa)/S で表される。例えば、Qsh=30μL/min、Qsa=2μL/min、S=0.25
2mm
2 とすると、平均流速Vは8.5mm/sとなる。
【0038】
ノズル11から供給される前の初期の細胞懸濁液濃度は、一般的に1x10
6個/mLである。この場合の体積分率は約0.1%であり、細胞懸濁液中における細胞30の存在は極めて疎である。したがって、流路10の中央付近に細胞30を集束させて、局所的に細胞濃度を高めても、細胞30の相互間の間隔は、細胞30の大きさ(一般的に10μm程度)に比べて十分に大きい。
図3は、細胞30の相互間の間隔Lのヒストグラムの例である。このヒストグラムは、流体力学的集束効果を利用して上記の流速および細胞懸濁液濃度の条件とした場合のものである。この例では、細胞30の相互間の平均間隔は320μmである。
【0039】
図4は、撮像装置100Aの構成を示す図である。撮像装置100Aは、透過照明光学系を有する構成であり、第1撮像装置40として用いられ得る。撮像装置100Aは、対物レンズ111および結像レンズ112を含む結像光学系110、撮像素子120、光源130、ならびに照射光学系140を備える。
【0040】
光源130は、細胞30に照射すべき光を出力するものである。光源130はレーザ光源(例えばHeNeレーザ光源)であってもよい。照射光学系140は、光源130と光学系に接続されており、光源130から出力された光を流路10内の細胞30に照射する。照射光学系140は、ビーム形成光学系として、流路10における細胞30の移動方向に対して垂直方向に長いビーム断面を有するライン状の光を細胞30に照射するのが、光のエネルギー効率の点で好適である。また、ライン状の光を細胞30に照射する場合には、撮像素子120としてリニアアレイセンサを用いることができ、そのリニアアレイセンサの露光時間を短縮することができるので、より速く流れる細胞30についても鮮明な画像を取得することができる。
【0041】
照射光学系140は、ライン状の光を細胞30に照射する為に、集光レンズ、シングルモード光ファイバ、コリメータレンズおよびシリンドリカルレンズを含む構成とすることができる。この場合、光源130から出力された光は、集光レンズにより光ファイバの入射端に集光され、光ファイバにより導光される。導光された光は、光ファイバの出射端から出射され、その出射端に設けられたコリメータレンズにより平行光とされる。その後、その平行光は、シリンドリカルレンズにより1軸方向のみに集光されることにより、細胞集束付近にてライン状ビームに形成される。
【0042】
結像光学系110は、第1撮像装置40の第1光学系41に相当し、対物レンズ111および結像レンズ112を含む。対物レンズ111および結像レンズ112は、細胞30からの光を撮像素子120の受光面へ導く。例えば、対物レンズ111の倍率は20倍であり、対物レンズ111のNAは0.45であり、結像レンズ112の焦点距離は200mmである。対物レンズ111の光軸方向の位置を調整し、流路10の中心にフォーカスを合わせておく。結像光学系110は固定焦点となる。
【0043】
撮像素子120は、第1撮像装置40の第1撮像素子42に相当する。撮像素子120は、リニアアレイセンサであってもよい。例えば、撮像素子120としてBasler社製ラインセンサ(型番raL2048-80km)が好適に用いられる。このラインセンサの1画素の大きさは7x7μmである。撮像素子120は、所定のラインレートにて連続的に撮影動作させればよい。
【0044】
制御装置60は、第1撮像装置40としての撮像装置100Aにより取得された画像に基づいて、フォーカスずれ量(流路10の断面における基準位置に対する細胞30の通過位置の偏位量)を、次のようにして求める。制御装置60は、ラインセンサである撮像素子120から次々出力される1次元画像を、その順に並べることで二次元画像を作成する。例えばM個の1次元画像(1行N列)をM個並べることで、二次元画像(M行N列)を得ることができる。撮像素子120から1次元画像の出力が続く限り二次元画像の画素数は多くなっていく一方であるが、FIFO(First-in first-out)メモリを用いることで、古い画像データを消去して、一定画素数の直近の二次元画像を記憶しておくことができる。
【0045】
制御装置60は、その二次元画像中に所望の細胞を示す部分画像があるか否かを検知し、その細胞を示す部分画像を切り出す。これに際しては、各画素の輝度が閾値を超えるか否かに基づいて、所望の細胞を示す部分画像があるか否かを検知する。そして、その細胞を示す部分画像を含む矩形画像を切り出す。
【0046】
制御装置60は、位相差オートフォーカス技術、像面位相差フォーカス技術またはデジタルホログラフィを用いるオートフォーカス技術により、この矩形画像に基づいて、結像光学系110のフォーカス面(撮像素子120の受光面に対する共役面)からの細胞30のずれ量ΔZを求める。この矩形画像はずれ量ΔZに応じてボケたものとなるので、ボケ量からずれ量ΔZを求めることができる(非特許文献1参照)。ずれ量ΔZは正負の値を取り得る。制御装置60は、このずれ量ΔZに基づいてフォーカス調整信号を生成し、そのフォーカス調整信号を第2撮像装置50の第2光学系51に与える。
【0047】
制御装置60は、細胞の通過位置(ずれ量ΔZ)に基づいて第2光学系51のフォーカスを調整すべきであるか否かを判断し、第2光学系51のフォーカスを調整すべきであると判断した場合にフォーカス調整信号を第2撮像装置50に与えることとしてもよい。例えば、第2光学系51の焦点深度が大きく、ずれ量ΔZが小さい場合、制御装置60はフォーカス調整信号を第2撮像装置50に与えなくてもよい。また、今回撮像しようとする細胞のずれ量ΔZが前回撮像した細胞のずれ量と同じであれば、第2光学系51のフォーカス位置を動かす必要がないので、制御装置60はフォーカス調整信号を第2撮像装置50に与えなくてもよい。
【0048】
第2撮像装置50も、撮像装置100Aと略同様の構成を有することができる。ただし、第2撮像装置50として撮像装置100Aが用いられる場合、照射光学系140は細胞30に対して光をライン状ではなく面状に照射するのが好適であり、撮像素子120は2次元アレイセンサであるのが好適である。また、結像光学系110は、制御装置60から与えられるフォーカス調整信号を受けて、フォーカスを調整することができる。このとき、ずれ量ΔZに応じて対物レンズ111を光軸方向に移動させるのが好適である。これにより、結像光学系110が合焦し、フォーカスの合った鮮明な細胞30の画像が撮像素子120により取得される。
【0049】
第2撮像装置50として撮像装置100Aが用いられる場合、撮像素子120は、結像光学系110のフォーカス調整動作と関係なく、一定のフレームレートで連続して撮像を行ってもよい。また、撮像素子120は、制御装置60から与えられるカメラトリガ信号が指示するタイミングで撮像を行ってもよい。
【0050】
図5は、制御装置60から与えられるカメラトリガ信号が指示するタイミングで撮像素子120が撮像を行う場合のタイミングチャートである。第1撮像装置40が細胞を撮像する第1位置と、第2撮像装置50が細胞を撮像する第2位置と、の間の細胞移動方向に沿った間隔をLとする。細胞の平均流速をVとする。第1撮像装置40および第2撮像装置50それぞれによる撮像の時間差Tdは、Td=L/V で表される。第1撮像装置40において撮像および画像データの送出に要する時間をTaとする。制御装置60において画像データに基づいてずれ量ΔZを算出してフォーカス調整信号を生成するのに要する時間(フォーカスずれ量の測定に要する時間)をTbとする。制御装置60は、第1撮像装置40が細胞を撮像した時刻から時間(Ta+Tb)だけ経過した後にフォーカス調整信号を第2撮像装置50へ出力する。また、制御装置60は、第2撮像装置50の第2光学系51がフォーカス調整に要する時間Tcを勘案して、フォーカス調整信号を出力した時刻から時間(Td-Ta-Tb)だけ経過した後にカメラトリガ信号を第2撮像装置50へ出力する。これらのパラメータの間に、Ta+Tb+Tc<Td なる関係がある。
【0051】
第1撮像装置40および第2撮像装置50それぞれは、
図4に示された透過照明光学系を有する構成の他、様々な構成とすることができる。第1撮像装置40および第2撮像装置50それぞれは、落射照明光学系を有する構成であってもよい。第1撮像装置40は、マッハツェンダ干渉計またはマイケルソン干渉計等の干渉光学系を有する構成(例えば定量位相顕微鏡(非特許文献2参照))であってもよい。第2撮像装置50は、定量位相顕微鏡または位相トモグラフィック顕微鏡(非特許文献3参照)であってもよい。第1撮像装置40は定量位相顕微鏡であって、第2撮像装置50は位相トモグラフィック顕微鏡であってもよい。以下では、撮像装置100Aの変形例として、落射照明光学系を有する撮像装置100B(
図6)、干渉光学系を有する撮像装置100C(
図7)、および、結像光学系において結像レンズとしてセパレータレンズを有する撮像装置100D(
図8)、それぞれについて説明する。
【0052】
図6は、撮像装置100Bの構成を示す図である。撮像装置100Bは、落射照明光学系を有する構成であり、対物レンズ111および結像レンズ112を含む結像光学系110、撮像素子120、光源130、ならびに照射光学系140を備え、更にミラー151およびビームスプリッタ152を備える。
【0053】
ミラー151は、光源130から出力され照射光学系140によりビーム形成された光をビームスプリッタ152へ反射させる。ビームスプリッタ152は、対物レンズ111と結像レンズ112との間の光路上に設けられている。ビームスプリッタ152は、ミラー151から到達した光の一部を反射させて対物レンズ111へ入射させるとともに、対物レンズ111から到達した光の一部を透過させて結像レンズ112へ入射させる。この場合、細胞の暗視野照明像を取得することができる。
【0054】
ビームスプリッタ152に替えて、励起光を反射させ蛍光を透過させるダイクロイックミラーが設けられてもよい。光源130は励起光を出力し、励起光が照射された細胞から蛍光が発生する。ダイクロイックミラーは、ミラー151から到達した励起光を反射させて対物レンズ111へ入射させるとともに、対物レンズ111から到達した蛍光を透過させて結像レンズ112へ入射させる。この場合、細胞の蛍光像を取得することができる。
【0055】
図7は、撮像装置100Cの構成を示す図である。撮像装置100Cは、干渉光学系を有する構成であり、対物レンズ111および結像レンズ112を含む結像光学系110、撮像素子120、光源130、ならびに照射光学系140を備え、更にビームスプリッタ161、ミラー162、ミラー163およびビームスプリッタ164を備える。
【0056】
ビームスプリッタ161は、光源130と照射光学系140との間の光路上に設けられている。ビームスプリッタ161は、光源130から出力された光を入力し、その光の一部を反射させ残部を透過させることで、光を2分岐する。照射光学系140は、ビームスプリッタ161を透過した光を入力する。
【0057】
ビームスプリッタ164は、結像レンズ112と撮像素子120との間の光路上に設けられている。ビームスプリッタ164は、結像レンズ112から到達した光を入力するとともに、ビームスプリッタ161で反射され更にミラー162,163で反射されて到達した光を入力して、両光を合波して撮像素子120へ出力する。
【0058】
ビームスプリッタ161からビームスプリッタ164に至るまでの光学系は、マッハツェンダ干渉計を構成している。撮像素子120は細胞の干渉像を取得することができる。また、ビームスプリッタ161からビームスプリッタ164に至るまでの二つの光路の間の光路長差を変化させて各光路長差において干渉像を取得し、これら複数の干渉像を解析することで、細胞の位相画像を取得することができる。
【0059】
なお、この図に示される光学系はマッハツェンダ干渉計であるが、マイケルソン干渉計の光学系としてもよい。
【0060】
これまで説明した構成例では、撮像装置100A,100Bまたは100Cが第1撮像装置40として用いられる場合、撮像素子120は、画素が1次元配列されたリニアアレイセンサであってもよいし、画素が2次元配列された2次元アレイセンサであってもよい。後者の場合、照射光学系140から出力される光の断面形状は、ライン状ではなく、円形または四角形等とされる。
【0061】
撮像装置100A,100Bまたは100Cが第2撮像装置50として用いられる場合も、撮像素子120は、画素が1次元配列されたリニアアレイセンサであってもよいし、画素が2次元配列された2次元アレイセンサであってもよい。前者の場合、照射光学系140から出力される光の断面形状は、ライン状であるのが好ましい。
【0062】
また、制御装置60は、第1撮像装置40により取得された細胞の画像についてデジタルリフォーカシング処理(非特許文献4~6参照)を行い、フォーカスがあった像に基づいて第2撮像装置50が撮像を行うべきか否かを判断して、第2撮像装置50が撮像を行うべきであると判断した場合にカメラトリガ信号を第2撮像装置50に与えることとしてもよい。
【0063】
オートフォーカス(AF)の方法として、コントラストAF、位相差AFおよび像面位相差AFがよく知られている(非特許文献7)。これらのうち、コントラストAFは、レンズを前後に動かす機械的な駆動を伴うことから、本実施形態において用いるには好適でない。一方、位相差AFおよび像面位相差AFは、レンズの機械的な駆動が不要であり、ずれ量ΔZ及びその方向(ΔZの正負)が分かるので、本実施形態において好適に用いることができる。
【0064】
図8に示される構成は、位相差AFによりずれ量ΔZを求めることができるものである。
図8は、撮像装置100Dの構成を示す図である。撮像装置100Dは、
図4に示された透過照明光学系を有する構成の撮像装置100Aと比較すると、結像光学系110において結像レンズとしてセパレータレンズ113を有する点で相違する。この構成の場合、前述したデジタルリフォーカシング処理を行うことができない。したがって、第1撮像装置40により取得された細胞の画像に基づいて第2撮像装置50が撮像を行うべきか否かを判断することができず、カメラトリガ信号を第2撮像装置50に与えることができない。
【0065】
本実施形態では、フォーカシング速度による細胞の流速の制限を緩和して、高速に移動している細胞であっても該細胞の鮮明な(ぼけの小さい)画像を取得することができる。したがって、流路を流れる細胞の検査のスループットを向上させることができる。流路における流体の流れが完全な層流でなく、細胞が空間的にランダムに移動している場合であっても、該細胞の鮮明な(ぼけの小さい)画像を取得することができる。第1撮像装置および第2撮像装置の双方または何れか一方において撮像素子としてラインセンサを用いることができるので、その場合には、第1撮像装置および第2撮像装置の双方において撮像素子として2次元センサを用いる場合と比較して、安価にシステムを構成することができる。
【符号の説明】
【0066】
1…細胞観察システム、10…流路、20…流体、30…細胞、40…第1撮像装置、41…第1光学系、42…第1撮像素子、50…第2撮像装置、51…第2光学系、52…第2撮像素子、60…制御装置、70…解析装置、100A~100D…撮像装置、110…結像光学系、111…対物レンズ、112…結像レンズ、120…撮像素子、130…光源、140…照射光学系、151…ミラー、152…ビームスプリッタ、161…ビームスプリッタ、162…ミラー、163…ミラー、164…ビームスプリッタ。