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<図1A>
  • -吸排気弁および排水ホッパー 図1A
  • -吸排気弁および排水ホッパー 図1B
  • -吸排気弁および排水ホッパー 図1C
  • -吸排気弁および排水ホッパー 図1D
  • -吸排気弁および排水ホッパー 図2A
  • -吸排気弁および排水ホッパー 図2B
  • -吸排気弁および排水ホッパー 図2C
  • -吸排気弁および排水ホッパー 図3
  • -吸排気弁および排水ホッパー 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】吸排気弁および排水ホッパー
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/02 20060101AFI20230501BHJP
   F16L 55/07 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
E03C1/02
F16L55/07 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019145793
(22)【出願日】2019-08-07
(65)【公開番号】P2021025358
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】390006736
【氏名又は名称】株式会社日邦バルブ
(73)【特許権者】
【識別番号】000165295
【氏名又は名称】兼工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】595086328
【氏名又は名称】株式会社光明製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000151025
【氏名又は名称】株式会社タブチ
(73)【特許権者】
【識別番号】000201593
【氏名又は名称】前澤給装工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】粟津原 光明
(72)【発明者】
【氏名】竹田 優一
(72)【発明者】
【氏名】西村 友志
(72)【発明者】
【氏名】階元 鳴彰
(72)【発明者】
【氏名】坂本 武司
(72)【発明者】
【氏名】中山 歳久
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-170936(JP,A)
【文献】登録実用新案第3201854(JP,U)
【文献】特開2017-150773(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/00-1/33
F16K 24/00
F16L 55/07
E03B 9/04
F16L 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直結給水方式の給水管のうちの立管の頂部に配置される吸排気弁であって、
前記立管における空気の吸気および排気と排水とを行う吸排気口と、
前記吸排気口に接続され、前記吸排気口から略水平方向に延びる横引き配管と、
前記横引き配管に接続された排水ホッパーと、を有し、
前記排水ホッパーは、前記横引き配管の端部から所定距離離間して前記横引き配管と対向するように形成された対向壁部を一部に有する壁部によって形成されており、前記対向壁部以外の前記壁部に空気の吸気および排気を行わせる通気口が設けられている
ことを特徴とする吸排気弁。
【請求項2】
前記通気口が、前記排水ホッパーの上側の壁部および前記排水ホッパーの前記横引き配管と接続する側の壁部の一方または両方に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の吸排気弁。
【請求項3】
前記排水ホッパーのうち、少なくとも前記通気口を覆うネット部材を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の吸排気弁。
【請求項4】
前記排水ホッパーの底部に、略鉛直に下方に延びる排水配管が接続されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の吸排気弁。
【請求項5】
直結給水方式の給水管のうちの立管の頂部に配置されるとともに、前記立管における空気の吸気および排気と排水とを行う吸排気口と、前記吸排気口に接続され、前記吸排気口から略水平方向に延びる横引き配管と、を有する吸排気弁に対して、前記横引き配管に応じて取り付けることのできる排水ホッパーであって、
前記横引き配管と接続する接続口と、
前記接続口から所定距離離間して前記接続口と対向するように形成された対向壁部を一部に有する壁部によって形成されており、前記対向壁部以外の前記壁部に空気の吸気および排気を行わせる通気口が設けられている
ことを特徴とする排水ホッパー。
【請求項6】
前記接続口と前記横引き配管との間に設けられるアダプターを有していることを特徴とする請求項5に記載の排水ホッパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直結給水方式の給水管のうちの立管の頂部に配置される吸排気弁および排水ホッパーに関する。
【背景技術】
【0002】
水道管(配水管)から各住戸への給水方式として貯水槽水道方式と直結給水方式とがある。貯水槽水道方式は、水をいったん受水槽に貯めて、その後ポンプを使って、屋上の高置水槽へくみ上げ、自然流下により給水する方式である(なお、受水槽または高置水槽の片方だけを設置する場合もある)。直結給水方式は、配水管の水圧を利用して、または必要に応じて増圧ポンプを用い水圧の不足分を増圧して給水する方式である。直結給水方式には、蛇口まで水道水を直接届けることができ、貯水槽の点検および清掃が不要であり、貯水槽のスペースが不要であるので敷地を有効活用でき、配水管の圧力を利用するためエネルギーを有効に活用できるという長所がある。そのため、現在、直結給水方式の適用範囲の拡大などが図られている。
【0003】
直結給水方式を採用する給水システム(以下、「直結給水システム」という場合がある)では、断水や増圧ポンプの故障などにより水圧が下がり、給水管内が負圧になることがある。給水管内の負圧が大きくなると、各住戸の蛇口やシャワーなどから吸気されたり、水が逆流したりする。そのため、例えば、非特許文献1に記載されているように、給水管のうちの立管の頂部に吸排気弁を配置して、給水管内が負圧になった場合に吸排気弁から吸気を行わせることで負圧を解消している。なお、「立管」とは、主管から垂直(高さ方向)に分岐し、各階の住戸に給水するための配管をいう。「主管」とは、直結給水システムの配管のうち、配水管の分岐から立管までの配管をいう。「給水管」は、主管と立管とを含んでなる。
【0004】
図4は、従来の吸排気弁100の構成を説明する概略側面図である。
図4に示すように、非特許文献1に記載されている従来の吸排気弁100は、立管SPにおける空気の吸気および排気と排水Dとを行う吸排気口105にドレン配管106が接続されている。なお、本明細書において「排水」とは、給水管WP(具体的には、立管SP)内において排出される水をいう。ドレン配管106は、吸排気口105から略水平方向に延びる横引き配管107と、この横引き配管107から略垂直に下方に曲がって延び、開口端108bが下方に向けて開口している立下り配管108とを含んでなる。そして、従来は、立下り配管108の開口端108bの下方に、開口部の大きさに応じて定められた空間・寸法(排水口空間DS)をあけて排水ホッパーDHが設けられており、この排水ホッパーDHが開口端108bからの排水Dを受けて建物の排水管路に流すようになっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】「直結給水における逆流防止システム設置のガイドラインとその解説」、公益財団法人給水工事技術振興財団、平成29年3月発行、第13頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記したように、従来の吸排気弁100は横引き配管107から略垂直に下方に曲がって立下り配管108が延びている。そして、吸排気弁100は、断水や増圧ポンプの故障などにより水圧が下がり、給水管WP内が負圧となったときは、負圧を解消するため、急速な吸気がなされる。
【0007】
本発明者が検討したところ、従来の吸排気弁100は、横引き配管107と立下り配管108との間に、略垂直に曲がっている部分(以下、当該部分を「エルボ」という)178があることによって吸気性能が大幅に低下することが分かった。
【0008】
本発明は前記状況に鑑みてなされたものであり、吸気性能に優れた吸排気弁および排水ホッパーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記課題を解決するため鋭意研究した結果、排水ホッパーの構造を改変するとともに、当該排水ホッパーと横引き配管との関係を見直すことで吸気性能が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
前記課題を解決した本発明に係る吸排気弁は、直結給水方式の給水管のうちの立管の頂部に配置される吸排気弁であって、前記立管における空気の吸気および排気と排水とを行う吸排気口と、前記吸排気口に接続され、前記吸排気口から略水平方向に延びる横引き配管と、前記横引き配管に接続された排水ホッパーと、を有し、前記排水ホッパーは、前記横引き配管の端部から所定距離離間して前記横引き配管と対向するように形成された対向壁部を一部に有する壁部によって形成されており、前記対向壁部以外の前記壁部に空気の吸気および排気を行わせる通気口が設けられている。
【0011】
また、本発明に係る排水ホッパーは、直結給水方式の給水管のうちの立管の頂部に配置されるとともに、前記立管における空気の吸気および排気と排水とを行う吸排気口と、前記吸排気口に接続され、前記吸排気口から略水平方向に延びる横引き配管と、を有する吸排気弁に対して、前記横引き配管に応じて取り付けることのできる排水ホッパーであって、前記横引き配管と接続する接続口と、前記接続口から所定距離離間して前記接続口と対向するように形成された対向壁部を一部に有する壁部によって形成されており、前記対向壁部以外の前記壁部に空気の吸気および排気を行わせる通気口が設けられている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、吸気性能に優れた吸排気弁および排水ホッパーを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A】本実施形態に係る吸排気弁が配置される一態様を説明する概略構成図である。
図1B】本実施形態に係る吸排気弁が配置される一態様を説明する概略構成図である。
図1C】本実施形態に係る吸排気弁が配置される一態様を説明する概略構成図である。
図1D】本実施形態に係る吸排気弁が配置される一態様を説明する概略構成図である。
図2A】本実施形態に係る吸排気弁および排水ホッパーの一態様を説明する一部切欠き概略側面図である。
図2B図2AのIIB矢視図である。
図2C図2AのIIC-IIC線断面図である。
図3】本実施形態に係る排水ホッパーの一態様を説明する概略断面図である。
図4】従来の吸排気弁の構成を説明する概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明において参照する図面は、実施形態を概略的に示したものであるため、部材のスケールや間隔、位置関係などが誇張や変形あるいは部材の一部の図示が省略されている場合がある。なお、以下の説明は本発明の内容の具体例を示すものであり、本発明はこれらの説明に限定されるものではなく、本明細書に開示される技術的思想の範囲内において当業者による様々な変更および修正が可能である。また、本発明を説明するための全図において、同一の機能を有するものは同一の符号を付け、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0015】
また、本明細書において、「上」、「下」などは構成要素間の相対的な位置を示すものであって、絶対的な位置を示すことを意図したものではない。
また、本明細書および特許請求の範囲における「略水平」、「略垂直」、「略直角」、「略鉛直」などはいずれも厳密に水平、垂直、直角、鉛直であることを要せず、概ね水平、垂直、直角、鉛直であればよいことを意味しており、それぞれ水平、垂直、直角、鉛直から例えば±2°の範囲で設定することができるが限定はされない。
【0016】
[吸排気弁]
はじめに、本実施形態に係る吸排気弁について説明する。参照する図面において、図1A図1Dは、本実施形態に係る吸排気弁1が配置される一態様を説明する概略構成図である。図2Aは、本実施形態に係る吸排気弁1および排水ホッパー7の一態様を説明する一部切欠き概略側面図である。図2Bは、図2AのIIB矢視図である。図2Cは、図2AのIIC-IIC線断面図である。
【0017】
図1A図1Dに示すように、直結給水方式の給水管WPは、主管MPと立管SPとを含んでなり、本発明の一実施形態に係る吸排気弁1は、給水管WPのうちの立管SPの頂部Tに配置される。
【0018】
直結給水方式としては、例えば、3階までの直圧給水方式、特例直圧給水方式、増圧直結給水方式(標準型)、増圧直結給水方式(直列多段型)、増圧直結給水方式(並列型)などがある。本実施形態に係る吸排気弁1はこれらのうち、特に、特例直圧給水方式、増圧直結給水方式(標準型)、増圧直結給水方式(直列多段型)、増圧直結給水方式(並列型)に好適に用いることができる。
【0019】
なお、特例直圧給水方式とは、図1Aに示すように、現状の配水管WDPの水圧で建物Bの4階以上へ直接給水できる場合に、増圧ポンプBP(図1B参照)の設置スペースSを確保しつつ、特例として直圧で給水する方式をいう。
増圧直結給水方式(標準型)とは、図1Bに示すように、配水管WDPから分岐させた給水管WPに増圧ポンプBPを設置し、水圧の不足分を増圧して建物Bの中高層階まで直結給水する方式をいう。
【0020】
増圧直結給水方式(直列多段型)とは、図1Cに示すように、増圧ポンプBPを直列に配置して給水する方式をいう。増圧直結給水方式(直列多段型)は、標準型の増圧直結給水方式より高層階へ直結給水する場合に適用される。
増圧直結給水方式(並列型)とは、図1Dに示すように、増圧ポンプBPを並列に配置して給水する方式をいう。増圧直結給水方式(並列型)は、大規模な集合住宅などに増圧直結給水する場合に適用される。
【0021】
図1A図1Dに示すように、本実施形態における吸排気弁1は、中高層建物における給水管WPのうちの立管SPの頂部Tに配置される。立管SPは、主管MPから垂直(高さ方向)に分岐したものであり、図2Aに示すように、頂部Tにおいて開口部SPaが上方に向けて開口している。吸排気弁1は、下方に開口する取付部2を有しており、当該取付部2を立管SPの開口部SPaに取り付けて使用する。吸排気弁1の取付部2と立管SPの開口部SPaとは、例えば、いずれか一方が雄ねじ部(図示せず)を備えるとともに他方が雌ねじ部(図示せず)を備え、これらを螺着させるなどすることにより固定できる。なお、吸排気弁1の取付部2と立管SPの開口部SPaとの間には、保守点検時に止水するための補修弁RVが設けられている。
【0022】
そして、吸排気弁1は、取付部2から連なる本体部3の内部に任意の吸排気機構(図示せず)などを備えている。吸排気機構は、吸排気弁1に用いられる従来公知のものであればどのようなものでも適用でき、特定の機構に限定されない。吸排気弁1は、吸排気機構を備えることによって、前記したように、給水管WP内が負圧になった場合に吸気を行わせ、負圧を解消することができる。
【0023】
吸排気弁1は、本体部3から連なって、吸排気する空気の方向や排水Dの方向(すなわち、流路の方向)を略直角に曲げるカバー4を有している。また、吸排気弁1は、このカバー4の端部に、吸排気と排水とを行う吸排気口5を有している。そして、吸排気弁1は、この吸排気口5に横引き配管6が接続されている。
【0024】
なお、本実施形態における吸排気弁1は、給水管WP内が負圧になった場合に吸排気口5から吸気を行わせることで負圧を解消できるものであり、図2Aに示すように、取付部2と吸排気口5とを有しているものであって、かつ、横引き配管6を接続できるものであれば限定されることなくどのようなものも用いることができる。
【0025】
横引き配管6は、前記した吸排気口5に接続され、吸排気口5から略水平方向に延びる任意の長さの配管である。横引き配管6は、金属や樹脂などの従来公知の材料で形成できる。横引き配管6は、例えば、ステンレス鋼管、ポリエチレン粉体ライニング鋼管、硬質塩化ビニル管、耐衝撃性硬質塩化ビニル管などの管内径が呼び径よりも大きい管種を用いることができる。
【0026】
そして、本実施形態においては、図2A図2Cに示すように、横引き配管6の端部に後記する排水ホッパー7が接続されている。ここで、本実施形態においては、図2Aおよび図2Bに示すように、排水ホッパー7と横引き配管6との間に、一方の端部8aの開口部が排水ホッパー7の接続口7aに適する口径を有し、他方の端部8bの開口部が横引き配管6に適する口径を有するアダプター8を設けることができる。アダプター8を設けると、横引き配管6に応じてアダプター8を変更するだけで容易に排水ホッパー7と接続できるようになる。アダプター8と排水ホッパー7とは、例えば、それぞれ任意のはめ込み構造を採用し、これらが着脱自在となるように設けることができる。アダプター8は、例えば、ステンレス鋼、鋳鉄などの金属や、硬質塩化ビニル、耐衝撃性硬質塩化ビニルなどの樹脂で形成することができる。
【0027】
排水ホッパー7は、横引き配管6の端部から所定距離離間して横引き配管6と対向するように形成された対向壁部71を一部に有する壁部72によって形成されている。なお、この対向壁部71は、好ましくは、略鉛直方向に延びる平面、図2Bに示すような湾曲面(円筒面)、または球面(図示せず)などを形成しているが、これらに限定されない。壁部72によって形成される内部の空間は、横引き配管6から水が勢いよく排出されても容易に溢れないだけの容積を有していることが好ましい。壁部72によって形成される空間の形状(排水を受ける部分の形状)は、特に限定されないが、例えば、図2Bに示すように、上方が略半円筒形、かつ、図2Cに示すように、下方が円弧を描いて窄んだ形状とすることが好ましい。このようにすると、横引き配管6から排水ホッパー7内に排出された水をスムーズに排水配管DPに導くことができる。
【0028】
また、図2A図2Cに示すように、排水ホッパー7には、対向壁部71以外の壁部72に、空気の吸気および排気を行わせる通気口73が設けられている。ここで、横引き配管6と対向するように形成された対向壁部71に通気口73が設けられていないのは、当該対向壁部71が、横引き配管6から水が勢いよく排出された場合にこれを受け止めて流下させるためである。このため、対向壁部71の横幅は、例えば、横引き配管6の出口側の口径の1~2倍程度の寸法とすることが好ましく、1~1.5倍程度の寸法とすることがより好ましいが、これらに限定されない。また、このため、本実施形態においては、通気口73は対向壁部71以外の任意の箇所に設けることとしている。通気口73は対向壁部71以外の一箇所のみに設けることもできるが、複数箇所に設けてもよい。通気口73の開口形状は吸気および排気できればよく、特に限定されない。
【0029】
通気口73は、一箇所のみに設ける場合も複数箇所に設ける場合も、一箇所につき1つの大きな開口部を有する形状で設けることもできるし、一箇所につき複数の開口部を有する網目形状として設けてもよい。
【0030】
一例として、図2Aおよび図2Bに示すように、排水ホッパー7の上側の壁部74の一箇所に、複数の開口部を有する網目形状で通気口73を設けることができる。なお、前記したように、通気口73は当該壁部74のうちの一箇所に大きな開口部として設けることもできる。
【0031】
また、一例として、図2Cに示すように、排水ホッパー7の横引き配管6と接続する側の壁部75の複数箇所に、複数の開口部を有する網目形状で通気口73を設けることができる。なお、前記したように、通気口73は当該壁部75のうちの複数箇所に大きな開口部として設けることもできる。
【0032】
なお、前記した通気口73は、排水ホッパー7の上側の壁部74および排水ホッパー7の横引き配管6と接続する側の壁部75の一方または両方に設けることができるが、両方に設けることが好ましい。
【0033】
通気口73は、排水ホッパー7内への虫やゴミなどの侵入を防止する観点から網目形状で形成することが好ましい。本実施形態においては、排水ホッパー7内への虫やゴミなどの侵入をさらに防止するため、排水ホッパー7のうち、少なくとも通気口73を覆うようにネット部材(例えば、防虫ネット)を設けてもよい。当該ネット部材は、排水ホッパー7全体を覆うように設けることもできる。ネット部材は、天然繊維、化学繊維、金属などの公知の材料で形成された網状の形態をなすものであればどのようなものも用いることができる。
【0034】
本実施形態においては、通気口73の開口面積(通気口73が複数箇所ある場合や網目形状で形成されている場合は開口部の面積の合計値)があまりにも小さいと所望の効果を発揮することができないおそれがある。そのため、通気口73の開口面積は、吸排気弁1の吸気性能を勘案して任意に設定することができる。通気口73の開口面積は、例えば、吸排気弁1および横引き配管6のみで構成したときにおける吸気性能を100%とした場合に、吸排気弁1、横引き配管6および通気口73が設けられている排水ホッパー7で構成したときにおける吸気性能が80%以上、85%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上または99%以上となるように設定することが好ましい。ネット部材で覆う場合はこれも考慮に入れて吸気性能が前記した数値以上となるように設定することが好ましい。
【0035】
排水ホッパー7は、例えば、ステンレス鋼、鋳鉄などの金属や、硬質塩化ビニル、耐衝撃性硬質塩化ビニルなどの樹脂で形成することができる。
通気口73は、型を使用して排水ホッパー7を製造する場合は、通気口73に対応する形状の凸部を型に設けておくことで容易に形成できる。また、通気口73は、排水ホッパー7製造後に機械加工を行って穿孔することでも形成できる。
【0036】
そして、図2Aおよび図2Bに示すように、排水ホッパー7の底部には、略鉛直に下方に延びる排水配管DPが接続されており、排水配管DP内を排水が通流するようになっている。
【0037】
[排水ホッパー]
次に、図3を参照して本実施形態に係る排水ホッパー37について説明する。図3は、本実施形態に係る排水ホッパー37の一態様を説明する概略断面図である。
【0038】
図3に示す排水ホッパー37は、図2A図2Cに示す直結給水方式の給水管WPのうちの立管SPの頂部Tに配置されるとともに、立管SPにおける空気の吸気および排気と排水Dとを行う吸排気口5と、吸排気口5に接続され、吸排気口5から略水平方向に延びる横引き配管6と、を有する吸排気弁1に対して、横引き配管6に応じて取り付けることができる。なお、本実施形態に係る排水ホッパー37は、図2A図2Cに示した排水ホッパー7と実質的に同一の構成を有しており、同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略することがある。
【0039】
図3に示すように、排水ホッパー37は接続口371を有している。排水ホッパー37は、この接続口371に横引き配管6(図2Aなど参照)を差し込むことで横引き配管6と接続できる。したがって、排水ホッパー37は、既存の設備(中高層建物)において従来の吸排気弁100(図4参照)が採用されている場合に、これを改修して従来の吸排気弁100の横引き配管107(図4参照、前記横引き配管6に相当)に直接接続することができる。
【0040】
ここで、接続口371と横引き配管6との間には、図3に示すように、一方の端部372aの開口部が排水ホッパー37の接続口371に適する口径を有し、他方の端部372bの開口部が横引き配管6(図3において図示せず)に適する口径を有するアダプター372(前記アダプター8に相当)を設けることができる。アダプター372を用いるようにすると、横引き配管6に応じてアダプター372を変更するだけで容易に排水ホッパー37と接続できるようになる。したがって、アダプター372を設けるようにすると、例えば、既存の設備(中高層建物)において従来の吸排気弁100(図4参照)が採用されている場合に、これを改修して従来の吸排気弁100の横引き配管107(図4参照、前記横引き配管6に相当)に排水ホッパー37を接続する際に容易にこれを行うことができるようになる。アダプター372と排水ホッパー37とは、例えば、それぞれ任意のはめ込み構造を採用し、これらが着脱自在となるように設けることができる。アダプター372は、例えば、ステンレス鋼、鋳鉄などの金属や、硬質塩化ビニル、耐衝撃性硬質塩化ビニルなどの樹脂で形成することができる。
【0041】
また、排水ホッパー37は、接続口371から所定距離離間して接続口371と対向するように形成された対向壁部71を一部に有する壁部72によって形成されている。また、排水ホッパー37は、対向壁部71以外の壁部72に空気の吸気および排気を行わせる通気口73が設けられている。そして、排水ホッパー37においても、通気口73は、対向壁部71以外の任意の箇所に設けることができる。
【0042】
さらに、通気口73は対向壁部71以外の一箇所のみに設けることもでき、複数箇所に設けることもできる。通気口73の開口形状は吸気および排気できればよく、特に限定されない。また、さらに、通気口73は、一箇所のみに設ける場合も複数箇所に設ける場合も、一箇所につき1つの大きな開口部を有する形状で設けることもできるし、一箇所につき複数の開口部を有する網目形状として設けてもよい。そして、排水ホッパー37においても、通気口73は、排水ホッパー7の上側の壁部74および排水ホッパー7の横引き配管6と接続する側の壁部75の一方または両方に設けることができる。
【0043】
以上に説明したように、本実施形態に係る吸排気弁1と従来の吸排気弁100(図4)とは、従来の吸排気弁100が、横引き配管107と立下り配管108(本実施形態における排水配管DPに相当)との間にエルボ178が設けられている点で、エルボ178を設けていない本実施形態に係る吸排気弁1と相違している。本実施形態に係る吸排気弁1はエルボ178を設けていないため、吸気性能をほとんど低下させることなく、排水ホッパー7の通気口73から吸入した空気を横引き配管6を介して吸排気弁1の本体部3に吸入させることができる。すなわち、本実施形態に係る吸排気弁1は、従来の吸排気弁100と比較して吸気性能が向上している。本実施形態に係る排水ホッパー37も本実施形態に係る吸排気弁1と同様にエルボ178を設けていないため、吸気性能をほとんど低下させることなく、排水ホッパー37の通気口73から吸入した空気を横引き配管6を介して吸排気弁1の本体部3に吸入させることができる。
【実施例
【0044】
本発明の効果を実施例および比較例により具体的に説明する。
比較例として、図4に示す構成の吸排気弁100を作製した。すなわち、吸排気口105→0.5mの横引き配管107→エルボ178→0.5mの立下り配管108→排水ホッパーDHという構成の吸排気弁100を作製した。なお、横引き配管107、エルボ178、立下り配管108は、口径25mmの硬質塩化ビニル管を用い、これらの部材の合計の長さが1mとなるように作製した。そして、その吸気性能を測定したところ813L/minであった。
【0045】
実施例として、図2A図2Cに示す構成の吸排気弁1を作製した。実施例は、吸排気口5から1mの横引き配管6(比較例と配管の長さを合わせた)→排水ホッパー7という構成の吸排気弁1を作製した。なお、横引き配管6は、吸排気口5側から排水ホッパー7手前までの口径が30mmであり、排水ホッパー7を取り付ける部分の口径が25mmである中空管を、光造形樹脂を用いて作製した。そして、その吸気性能を測定したところ959L/minであった。実施例は、比較例に対して吸気性能が約18%向上していた。
【符号の説明】
【0046】
1 吸排気弁
2 取付部
3 本体部
4 カバー
5 吸排気口
6 横引き配管
7、37 排水ホッパー
71 対向壁部
72 壁部
73 通気口
371 接続口
SP 立管
SPa 開口部
T 頂部
WP 給水管
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図3
図4