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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】加工用ヘッド
(51)【国際特許分類】
   B24B 41/047 20060101AFI20230501BHJP
   B24B 37/005 20120101ALI20230501BHJP
   B24B 49/16 20060101ALI20230501BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
B24B41/047
B24B37/005 A
B24B49/16
H01L21/304 622K
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018136271
(22)【出願日】2018-07-20
(65)【公開番号】P2020011353
(43)【公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】521310990
【氏名又は名称】株式会社東邦鋼機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100107700
【弁理士】
【氏名又は名称】守田 賢一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 辰俊
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 英資
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-055921(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0037681(US,A1)
【文献】特開2015-128161(JP,A)
【文献】再公表特許第2016/108284(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 41/047
B24B 37/005
B24B 49/16
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物に対しパッドを所定の押し付け荷重で押し付けた状態で一方を小振幅振動させることにより触媒基準研磨ないし触媒基準クリーニングする装置において使用する加工用ヘッドであって、主軸の先端に固定される第1ベース板と、間隙を有して前記第1ベース板の板面に対向して配設された第2ベース板と、当該第2ベース板を板面に垂直な方向で前記第1ベース板に対して相対移動可能に案内する案内手段と、前記第1ベース板ないし第2ベース板の一方の側に設置され、その荷重受け部が前記第1ベース板ないし第2ベース板の他方の側に当接ないし固定されて、前記第1ベース板に対する前記第2ベース板の相対移動に応じて前記荷重受け部が変位することにより前記被加工物に対する前記パッドの押し付け荷重を検出する荷重検出手段とを備え、前記第2ベース板の、前記第1ベース板に対向する板面とは反対側に前記パッドないし被加工物の一方を保持して、これを前記パッドないし被加工物の他方の表面に当接させるようにした加工用ヘッド。
【請求項2】
前記主軸は回転可能であり、前記案内手段は、前記第2ベース板を、前記主軸の回転方向では前記第1ベース板と一体に回転案内するとともに板面に垂直な方向では前記第1ベース板に対して相対移動可能に案内するものである請求項1に記載の加工用ヘッド。
【請求項3】
前記案内手段は、前記第1ベース板ないし前記第2ベース板の一方に立設された軸部材と、前記第1ベース板ないし前記第2ベース板の他方に形成されて前記軸部材の外周に摺動可能に嵌装された案内穴とで構成されている請求項2に記載の加工用ヘッド。
【請求項4】
前記軸部材はその外周に形成された雄ねじ部を前記第1ベース板ないし前記第2ベース板に形成された雌ねじ部に螺合させて前記第1ベース板ないし前記第2ベース板に立設されている請求項3に記載の加工用ヘッド。
【請求項5】
前記軸部材はその軸中心に形成された雌ねじ部に、前記第1ベース板ないし前記第2ベース板側から雄ねじ部材を螺合させて前記第1ベース板ないし前記第2ベース板に立設されている請求項3に記載の加工用ヘッド。
【請求項6】
前記荷重検出手段は、前記第1ベース板と前記第2ベース板の間に配設されてこれらベース板の相対移動に応じて圧縮変形させられるロードセルである請求項1ないし5のいずれかに記載の加工用ヘッド。
【請求項7】
前記第2ベース板に前記パッドないし被加工物を保持する保持部材を着脱可能に設けた請求項1ないし6のいずれかに記載の加工用ヘッド。
【請求項8】
前記第1ベース板に対する前記第2ベース板相対移動範囲を制限する規制手段を設けた請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の加工用ヘッド。
【請求項9】
前記ロードセルは一端が前記第1ベース板ないし前記第2ベース板の一方の側に固定されるとともに、他端に突設された荷重受け部の雄ねじ部にナット部材が装着されており、前記ナット部材は、前記第1ベース板ないし第2ベース板の他方に設けられた前記ナット部材よりもやや内径の大きい開口内に位置させられている請求項6に記載の加工用ヘッド。
【請求項10】
前記ナット部材は前記第1ベース板ないし前記第2ベース板の他方に形成された凹状曲面に当接してこれに沿って摺動可能に設けられている請求項9に記載の加工用ヘッド。
【請求項11】
前記第1ベース板と第2ベース板を同材質とした請求項1ないし10のいずれかに記載の加工用ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加工用ヘッドに関し、特に、小振幅振動式の触媒基準研磨(CARE)装置や触媒基準クリーニング装置に好適に使用できる振幅振動式加工用ヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、基板研磨装置としては大径の回転パッド周面上に、小径の回転研磨ヘッドに保持させたウェハを当接させつつ研磨する方式のものが他社は主流であり、ここでは、特許文献1の図3に示されるような研磨ヘッドが使用されていた。ここで使用されている研磨ヘッドは、ボール軸受によって研磨ヘッドが回転パッドの周面の傾きに倣うように姿勢変化可能としたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-128161
【文献】WO16/108284
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献2に示されているように、CARE装置として画期的な小振幅振動式のものが提案されており、このような小振幅振動式のCARE装置にボール軸受式の上記従来の研磨ヘッドを使用すると、パッドの小振幅振動に伴う往復加速度を受けて研磨ヘッドの姿勢が変動し、ウェハにキンク(半導体ステップに生じる欠陥。GaNの2inch基板で1μm×1μmの範囲を撮像したAFM画像を図9に示す)が発生するという問題があった。なお、特許文献1に記載の従来回転方式は等速円運動の力を受けて研磨ヘッドの姿勢が変動しているのでヘッドに発生する加工原理が異なる。そのため上記小振幅運動の往復加速度による問題は発見されておらず、従って上記対策向けのヘッドは考案されていなかった。
【0005】
また、CARE装置では研磨ヘッド(すなわちウェハ)のパッドへの押付圧を精密に管理する必要があることから、押付圧を研磨ヘッド部分で正確に測定したいという要請もあった。
【0006】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、特に小振幅振動式のCARE装置において、キンク等を生じない被加工物の良好な研磨を行うことができる加工用ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本第1発明は、被加工物に対しパッドを所定の押し付け荷重で押し付けた状態で一方を小振幅振動させることにより触媒基準研磨ないし触媒基準クリーニングする装置において使用する加工用ヘッドであって、主軸(1)の先端に固定される第1ベース板(2)と、間隙を有して前記第1ベース板(2)の板面に対向して配設された第2ベース板(3)と、当該第2ベース板(3)を板面に垂直な方向で前記第1ベース板(2)に対して相対移動可能に案内する案内手段(22,71,72)と、前記第1ベース板(2)ないし第2ベース板(3)の一方の側に設置され、その荷重受け部(54)が前記第1ベース板(2)ないし第2ベース板(3)の他方の側に当接ないし固定されて、前記第1ベース板(2)に対する前記第2ベース板(3)の相対移動に応じて前記荷重受け部(54)が変位することにより前記被加工物に対する前記パッドの押し付け荷重を検出する荷重検出手段(5)とを備え、前記第2ベース板(3)の、前記第1ベース板(2)に対向する板面とは反対側に前記パッドないし被加工物の一方を保持して、これを前記パッドないし被加工物の他方の表面に当接させるようにする。また、本第2発明では、前記主軸(1)は回転可能であり、前記案内手段(22,71.72)は、前記第2ベース板(3)を、前記主軸(1)の回転方向では前記第1ベース板(2)と一体に回転案内するとともに板面に垂直な方向では前記第1ベース板(2)に対して相対移動可能に案内するものである。
【0008】
本第1発明および第2発明において、加工工程を行う場合には、第2ベース板にパッドないし被加工物を保持させ、これを被加工物ないしパッドに主加工動作前に押し付ける。その後、主加工動作である振幅運動を行う。この際、被加工物ないしパッドが往復小振幅振動させられても、第2ベース板は、案内手段によって第1ベース板に対して垂直な方向にのみ移動するように規制されているから、往復加速度を受けても第2ベース板の姿勢が不安定になることはない。これにより、キンク等を生じることなく被加工物を良好に研磨することができる(GaNの2inch基板で1μm×1μmの範囲を撮像したAFM画像を図8に示す)。そしてこの時、被加工物ないしパッドに対する押付圧は、案内手段によって規制された第2ベース板の第1ベース板に対する相対移動に応じて変化する荷重として荷重検出手段によって検出される。なお、被加工物は、例えば、SiCやGaNやサファイアや酸化ガリュウムやダイヤモンドやアルミニウムガリウムナイトライドやシリコンなどの基板、酸化物の基板、セラミックの基板、エピタキシャル成長膜や成膜面、3元素混晶、4元素混晶、SiかCかGaかNかAlかOの少なくともいずれかの成分を有する物などである。被加工物は、四角や円筒や扇形や円形など任意の立体形状でもよい。すなわち、被加工物は、基板に限定されない。
【0009】
本第3発明の加工用ヘッドでは、前記案内手段は、前記第1ベース板(2)ないし前記第2ベース板(3)の一方に立設された軸部材(71,72)と、前記第1ベース板(2)ないし前記第2ベース板(3)の他方に形成されて前記軸部材(71,72)の外周に摺動可能に嵌装された案内穴(22)とで構成されている。
【0010】
本第3発明では案内手段を簡易に構成することができる。
【0011】
本第4発明では、前記軸部材(71)はその外周に形成された雄ねじ部を前記第1ベース板(2)ないし前記第2ベース板(3)に形成された雌ねじ部(34)に螺合させて前記第1ベース板(2)ないし前記第2ベース板(3)に立設されている。
【0012】
本第4発明では、軸部材を簡易に構成することができるとともに軸径を細くして摺動摩擦を小さくすることができる。
【0013】
本第5発明では、前記軸部材(72)はその軸中心に形成された雌ねじ部(721)に、前記第1ベース板(2)側ないし前記第2ベース板(3)側から雄ねじ部材(73)を螺合させて前記第1ベース板(2)ないし前記第2ベース板(3)に立設されている。
【0014】
本第5発明では、軸部材を簡易に構成することができるとともに軸部材の芯出しを容易に行うことができる。
【0015】
本第6発明では、前記荷重検出手段は、前記第1ベース板(2)と前記第2ベース板(3)の間に配設されてこれらベース板(2,3)の相対移動に応じて圧縮変形させられるロードセル(5)である。
【0016】
本第7発明では、前記第2ベース板(3)に前記パッドないし被加工物を保持する保持部材(46)を着脱可能に設ける。
【0017】
本第7発明によれば、被加工物の形状が変わっても保持部材を取り換えるだけで容易に対応することができる。
【0018】
本第8発明では、前記第1ベース板(2)に対する前記第2ベース板(3)相対移動範を制限する規制手段(71,72)を設ける。
【0019】
本第8発明によれば、第1ベース板と第2ベース板の離間間隔を荷重検出に必要な最小限とすることによって案内手段にこじりが生じることが回避される。
【0020】
本第9発明では、前記ロードセル(5)は一端が前記第1ベース板(2)ないし前記第2ベース板(3)の一方に固定されるとともに、他端に突設された荷重受け部(54)の雄ねじ部にナット部材(55)が装着されており、前記ナット部材(55)は、前記第1ベース板(2)ないし第2ベース板(3)の他方に設けられた前記ナット部材(55)よりもやや内径の大きい開口(33)内に位置させられている。
【0021】
本第9発明によれば、第1ベース板と第2ベース板の組み付け時に、ロードセルに突設された荷重受け部が常に開口の軸心に位置決めされ芯出しされる。
【0022】
本第10発明では、前記ナット部材(55)は前記第1ベース板(2)ないし前記第2ベース板(3)の他方に形成された凹状曲面(56a)に当接してこれに沿って摺動可能に設けられている。
【0023】
本第10発明によれば、第1ベース板と第2ベース板の組み付け時に、ナット部材が凹状曲面上を適宜摺動して荷重受け部にこじりを生じることが回避される。
【0024】
本第11発明では、前記第1ベース板と第2ベース板を同材質とする。
【0035】
上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を参考的に示すものである。
【発明の効果】
【0036】
以上のように、本発明の加工用ヘッドによれば、特に小振幅振動式のCARE装置において、キンク等を生じない被加工物の良好な研磨を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の第1実施形態における、加工用ヘッドの全体断面図である。
図2】加工用ヘッドを上方から見た全体斜視図である。
図3】加工用ヘッドを下方から見た全体斜視図である。
図4】本発明の第2実施形態における、加工用ヘッドの全体断面図である。
図5】本発明の他の実施形態における、加工用ヘッドの要部断面図である。
図6】本発明のさらに他の実施形態における、加工用ヘッドの要部断面図である。
図7】本発明のさらに他の実施形態における、加工用ヘッドの要部断面図である。
図8】小振幅振動式研磨で本発明のヘッドを用いた場合における、被加工物(基板)表面のAFM測定画像である。
図9】小振幅振動式研磨で従来ヘッドを用いた場合における被加工物(基板)表面のAFM測定画像である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
なお、以下に説明する実施形態はあくまで一例であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が行う種々の設計的改良も本発明の範囲に含まれる。
【0039】
(第1実施形態)
図1には本発明の第1実施形態における加工用ヘッドの全体断面図を示す。また、第2図には上記加工用ヘッドを上方から見た斜視図を、第3図には加工用ヘッドを下方から見た斜視図をそれぞれ示す。加工用ヘッドHは円筒状の主軸1の下端に固定されている。すなわち、加工用ヘッドHは回転モータ(図示略)によって回転させられる上記主軸1の下端面に直接ねじ固定された円形の第1ベース板2と、第1ベース板2に沿ってその下方に設けられた同形の第2ベース板3とを備えている。なお、第2ベース板3は本実施形態では製作上の理由により同径の上側板31と下側板32を重ねて構成されている。第2ベース板3にはその下面に、被加工物としてのウェハを吸引保持するための詳細を後述する保持ベース板4がねじ固定されている。
【0040】
主軸1の下端開口内には板状の取付け台座51が水平姿勢で設けられて、その中心部下面に荷重検出手段としてのロードセル5が固定されている。ロードセル5としては例えば(株)共和電業製のLUX-B-ID等が使用できる。取付け台座51は主軸1の内周段付面にねじ固定されており、ロードセル5は、その筐体の頂面中心に形成された雌ねじ部52に、取付け台座51の板面を上下に貫通させた雄ねじ部材53が螺合させられて取付け台座51の下面に固定されている。ロードセル5の筐体の大部分は第1ベース板2に設けた開口21内に位置し、筐体底面からはその下方の第2ベース板3に設けた円形有底の開口33内へねじ形状の荷重受け部54が突出している。
【0041】
荷重受け部54の先端雄ねじ部には摺動ナット55が螺着されている。摺動ナット55は下面が下方へ膨出する円弧面55aとなっている。開口33の底面上には、下方へ円弧状に凹陥する凹状曲面56aを形成した受けリング56が、所定数のシム板61を介して設置されており(ただし、シム板は必ずしも設けなくても良い)、上記摺動ナット55の円弧面55aが、受けリング56の凹状曲面56aに、これに沿って摺動可能に当接している。
【0042】
第1ベース板2の板面には、主軸1の軸心を中心とした周方向等間隔の四ケ所(すなわち90度間隔)に円形の案内穴22が貫通形成されて、これら案内穴22内に軸部材としての案内ボルト71が挿入されている。各案内穴22内には下方から筒状の滑り軸受23が挿入してあり(軸受23は上方からでも良い)、滑り軸受23の下端フランジが第2ベース板3(より正確には上側板31)上面の座ぐり部311内に位置している。案内ボルト71の軸部は滑り軸受23の筒内周に接してこれを下方へ貫通し、案内ボルト71先端部外周の雄ねじ部が第2ベース板3の上側板31に形成された雌ねじ部34内に螺入させられている。これら滑り軸受23を設けた案内穴22と案内ボルト71によって案内手段が構成されている。
【0043】
また、案内ボルト71の頭部711は軸部よりも大径の平行な切欠きを有する円形状としてあり(図2)、頭部711の下面と第1ベース板2の上面との間には所定数のシム板62が介設されている(ただし、シム板は必ずしも設けなくても良い)。このような頭部711を有する案内ボルト71は第1ベース板2と第2ベース板3の離間間隔を制限する規制手段としても機能している。
【0044】
第2ベース板3の下面にねじ固定された保持ベース板4には下面中心部に吸引部41が形成されている。吸引部41には、ウェハの外形に倣った内周形状のリング壁42が突出形成され、その内部にはクッション材43が接合されている。もしくは、バッキング材が付いている。保持ベース板4の中心部内には複数の吸引空気流路44が平行に形成されてその下端はクッション材43の吸引口45(図3)とつながるかたちで開口している。なお、CARE加工で加工効率を上げるために被加工物としてのウェハに電界を作用させる場合があり、この場合はクッション材を導電ゴム等の導電性材料にすれば、もしくは、クッション材の表面に成膜などを施し表面の電気抵抗を下げれば、これを電界発生用の電極として利用することができる。この場合には、ロードセル5との間に絶縁体等を設けてロードセル5に電気的影響が及ばないような構造とする。
【0045】
第2ベース板3を第1ベース板2へ取り付ける際には、案内穴22内の滑り軸受23の筒内に挿入された案内ボルト71の雄ねじ部を第2ベース板3の雌ねじ部34内に螺入させるが、この際にシム板61,62の枚数(すなわち全体の厚み)を適当に設定することによって、案内ボルト71を締め付けた状態でロードセル5の荷重受け部54に所望の圧縮荷重が印加されるようにし、かつこの時、第2ベース板3の上面と第1ベース板2の下面が平行になって、これらの間に、ロードセル5の使用中の最大変位量(例えば20μm)を確保するための隙間(例えば0.1mm)Sが確保される。言い換えると、第1ベース板2と第2ベース板3の離間間隔はSに規制されている。この場合の隙間Sは、ロードセル5の最大変位を保証できる最小範囲のものとするのが、摺動時の案内ボルト71のこじりを回避する点でより好ましい。
【0046】
ここで、ロードセル5の荷重受け部54の先端に開口33よりやや小径の軸対称形の摺動ナット55が螺着されていることによって、第2ベース板3の第1ベース板2への取り付け時に、荷重受け部54が開口33のほぼ軸心に位置決めされ容易に芯出しされる。さらに、案内ボルト71が主軸1の軸線に対して左右対称位置にあるから主軸1の軸線を支点とした曲げモーメント方向のこじりに強い。さらに、第2ベース板3を第1ベース板2に平行に取り付ける際の調整が容易であるとともに、両基板2,3の平行度を調整する際に摺動ナット55が受けリング56上で摺動することによって、ねじ形状をなす荷重受け部54にこじりを生じることが防止される。
【0047】
ウェハ研磨時には、保持ベース板4の吸引部41(より正確にはクッション材43の下面)にウェハを吸引した状態でウェハの研磨面たる下面をパッドに当接させる(なお下面の一部は近接した状態でも良い)。その後、加工用ヘッドHを回転させつつ、パッドを水平面内で往復小振幅振動させる。この際、第2ベース板3(およびこれと一体の保持ベース板4)は、案内手段を構成する滑り軸受23と案内ボルト71によって第1ベース板2に対して垂直な方向にのみ移動するように規制されているから、パッドからの往復加速度を受けても加工用ヘッドHの姿勢が不安定になることはなく、キンク等を生じないウェハの良好な研磨を行うことができる。そしてこの時、加工用ヘッドHすなわちウェハのパッドに対する押付け圧(荷重)は、案内手段によって規制された第2ベース板3(およびこれと一体の保持ベース板4)の第1ベース板2に対する相対移動に応じてロードセル5の荷重受け部54が変位させられることによって検出される。なお、CARE加工の場合には加工液が70℃程度に加熱されることがあるから、加工用ヘッドHを構成する部材は耐熱性のあるものが好ましい。そして、第1ベース板2と第2ベース板3は同じ材質の方が熱膨張係数が同じであるため軸に熱膨張係数の影響が出にくいので好ましい。
【0048】
(第2実施形態)
図4に本発明の第2実施形態における加工用ヘッドの全体断面図を示す。以下、第1実施形態と本実施形態の加工用ヘッドHの、構造上の相違点を中心に説明する。本実施形態の加工用ヘッドHでは、案内手段を構成する軸部材を第1実施形態のような案内ボルト71ではなく、これよりも大径の案内ナット72としている。すなわち、案内ナット72の軸部は、案内穴22内に設置された滑り軸受23に挿入されて第2ベース板3の座ぐり部311へ延びており、軸部下端からはその軸心に沿って雌ねじ部721が形成されている。そして、この雌ねじ部721に、第2ベース板3の上側板31内に頭部を位置させた雄ねじ73が下方から螺入させてある。なお、案内ナット72の上端頭部722は平行な切欠きを有する、より大径の円形状で、頭部722下面と第1ベース板2の上面との間には所定数のシム板62が介設されている。このような頭部722を有する案内ナット72は第1ベース板2と第2ベース板3の離間間隔を制限する規制手段としても機能している。なお、雄ねじ73の頭部にワッシャを装着した構造としても良い。他の構造は第1実施形態と同様である。
【0049】
このような構造によっても第1実施形態と同様の作用効果が得られるとともに、第2ベース板3内に設けられた雄ねじ73を案内ナット72内に下方から螺入させて当該案内ナット72を第2ベース板3に固定する構造としているから、ウェハ研磨時に第2ベース板3の移動を第1ベース板2に対して垂直方向のみに規制する役目を果たす、軸部としての案内ナット72の芯出しをより容易に行うことができる。したがって、軸部たる案内ナット72の径が大きくなる分摺動抵抗が大きくなる、という問題が無視できる場合には有用な構造である。
【0050】
(その他の実施形態)
上記各実施形態では主軸(すなわち加工用ヘッド)を回転させているが、必ずしも回転させる必要はなく、停止したものであっても良いい
上記各実施形態では案内手段を構成する軸部材や案内穴を主軸周りの四か所に等間隔で設けているが、必ずしも四か所に設ける必要はなく、等間隔に三か所等、設置数は特に限定されない。
上記各実施形態では、頭部を備えた案内ボルトないし案内ナットで規制手段を兼用させたが、規制手段を別に設けても良い。
【0051】
上記第1実施形態における軸部材としては、案内ボルト71に代えて、例えば六角穴付きなどの全ねじに、内径がねじで外径が円柱形の滑り摺動部をねじ込む構造としても良い。この場合、滑り軸受は省略することも可能である。
上記各実施形態において、ロードセルを第2ベース板側に、軸部材を第1ベース板側に設けるようにしても良い。なお、ロードセルはシングルポイント型等、その形状は特に限定されない。またロードセルは圧縮型に限らず、引張型を使用することもできる。
上記各実施形態では、第2ベース板3と一体の保持ベース板4に被加工物たるウェハを保持させたが、パッドを保持させるようにしても良い。この場合にはウェハを小振幅振動させる。
【0052】
上記各実施形態では保持ベース板4に吸引部41を形成したが、図5に示すように保持ベース板4に、上述した構造の吸引部41を形成した別体の保持部材たるアタッチメント46を着脱可能にねじ止めする構造としても良い(または、テープ貼りもしくはワックスによる取り付けでも良い)。これによれば、被加工物の形状に応じてアタッチメント46のみを容易に交換装着することができる。
【0053】
第1実施形態では案内ボルト71先端部外周の雄ねじ部を上側板31の雌ねじ部34内にねじ込み固定したが、これに代えて図6に示すように、案内ボルト71先端部外周の雄ねじ部にナット部材74を螺着し、これを上側板31の下面に形成した、ナット部材74よりもやや大径の座ぐり部312内に位置させる。このようにすると、案内ボルト71が座ぐり部312のほぼ軸心に位置決めされ容易に芯出しされるとともに、案内ボルト71の軸部は第2実施形態の案内ナット72に比して細くできるから摺動抵抗を小さくすることができる。なお、ナット74にワッシャを装着した構造としても良い。
【0054】
ロードセルの設置構造は図7に示すようなものとしても良い。すなわち、図7において、第2ベース板3の上側板31の上下面にそれぞれ座ぐり部313,314を形成し、これら座ぐり部313,314内に、ロードセル5の筐体から下方へ突出するねじ形状の荷重受け部54に装着したナット部材57,58をそれぞれ位置させる。そして、両ナット部材57,58で上側板31の中間部を上下から挟み込むようにして荷重受け部54を上側板31に固定する。
【0055】
上記各実施形態ではロードセル5の筐体底面から突出する荷重受け部54に摺動ナット55を螺合させる構造としているが、摺動ナットを使用せず、第2ベース板3の上面中心に雌ねじ部を形成して、これに荷重受け部54の先端をねじ込み固定するようにしても良い。
CARE加工において、触媒毒を除去するために加工用ヘッドの外周に紫外線発光ダイオード(LED)を設ける場合、あるいは紫外線発光ダイオード(LED)を装置に設ける場合には、作業員の目を保護するために、直接加工状況を視認するのに代えてビデオやカメラを使用して紫外線を物理的に遮断できるようにモニター画面で加工状況を監視する方が好ましい。またこの場合、加工用ヘッドHを構成する部材は紫外線に耐性のあるものを使用することが好ましく、SUS304やSUS316等の金属や樹脂やセラミクス、金や白金、テフロン(デュポン社登録商標)等の紫外線に耐性がある表面処理を施したものを使用することが好ましい。
【0056】
また、加工用ヘッドの外周に円筒状のガイド板を設けて、当該ガイド板のパッドとの対向面に加工液の流動性を向上させる溝を形成しても良い。また、上記ガイド板は曲面形状やテーパ形状にしても良い。上記ガイド板は電極になっていても良い。
本発明の加工用ヘッドは小振幅振動式のCARE装置に特に好適に使用することができるが、他の研磨装置への利用ももちろん可能である。また、本発明の加工用ヘッドは不純物を除去する触媒基準クリーニングにも使用可能である。例えば、被加工物の表面にはCAREにおいて触媒として用いられたPt(白金)などの有害物質が金属汚染として付着する。そこで、表面にNiやFe成分からなる触媒を形成したパッドを、加工用ヘッドに保持させた被加工物に当接ないし近接させて主加工動作(例えば小振幅振動)させることによって被加工物の表面に付着したPtなどの(株)リガクの全反射蛍光X線などで検知できるレベルの微量成分を除去又は低減(クリーニング)することができる。この場合、Pt(白金)など代わりに被加工物表面にはNiやFe成分が金属汚染物質として付着するが、RCA洗浄などでNiやFe成分などは除去可能であるため煮沸王水などを使用しなくても白金などの従来洗浄できないとされていた成分を例えば水と触媒で容易に除去可能になる。通常の洗浄は新たな金属汚染を嫌うが本発明はあえて金属汚染させる代わりに採りにくい他の白金や金などの汚染成分を被加工物表層ごと除去または低減可能なクリーニングである。
【符号の説明】
【0057】
1…主軸、2…第1ベース板、22…案内穴(案内手段)、3…第2ベース板、33…有底開口(開口)、34…雌ねじ部、4…保持ベース板、46…アタッチメント(保持部材)、5…ロードセル(荷重検出手段)、54…荷重受け部、55…ナット部材、56…受けリング、56a…凹状曲面、71…案内ボルト(軸部材、規制手段)、72…案内ナット(軸部材、規制手段)、721…雌ねじ部、73…雄ねじ部材。
図1
図2
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図5
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図7
図8
図9