(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】組立式段ボール棺
(51)【国際特許分類】
A61G 17/013 20060101AFI20230501BHJP
A61G 17/007 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
A61G17/013
A61G17/007
(21)【出願番号】P 2019149297
(22)【出願日】2019-08-16
【審査請求日】2022-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】594101994
【氏名又は名称】株式会社平和カスケット
(74)【代理人】
【識別番号】100119792
【氏名又は名称】熊崎 陽一
(72)【発明者】
【氏名】日比 章
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-161509(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0088866(US,A1)
【文献】登録実用新案第3134919(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 17/013
A61G 17/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化段ボール材からなる展開シートにV溝加工を施して、このV溝に沿って展開シートを折り曲げて箱状に組み立てる段ボール棺であって、
前記展開シート(P)は、
矩形の底板(12)と、
この底板の左右にV溝を介して連結される側板(13)と、
前記底板の前後にV溝を介して連結される折り代板(15)と、
前記側板の前後にV溝を介して連結される妻板(14)と、を有し、
加えて、前記妻板には、前記側板の長手方向に連なる平行な二本のV溝(v1,v1)で仕切られる外板部(14a)と内板部(14b)とを有しており、
前記展開シートの組み立て時には、前記底板の左右に側板がほぼ垂直に立ち上げられ、かつ、前記底板の前後に前記折り代板がほぼ垂直に立ち上げられた状態で、前記左右の側板の前後で前記妻板の外板部が内向きに折り曲げられて前記折り代板の外側に重なり、さらに、この外板部の上端で前記妻板の内板部が前記平行な二本のV溝により棺内側に下向きに折り返されて前記折り代板の内側に重なるように構成されたことを特徴とする、組立式段ボール棺。
【請求項2】
強化段ボール材からなる展開シートにV溝加工を施して、このV溝に沿って展開シートを折り曲げて箱状に組み立てる段ボール棺であって、
前記展開シート(P)は、
矩形の底板(12)と、
この底板の左右にV溝を介して連結される側板(13)と、
前記底板の前後にV溝を介して連結される折り代板(15)と、
前記側板の前後にV溝を介して連結される妻板(14)と、を有し、
加えて、前記妻板には、前記側板の長手方向に連なる平行な二本のV溝(v1,v1)で仕切られる外板部(14a)と内板部(14b)とを有しており、
前記展開シートの組み立て時には、前記底板の左右に側板がほぼ垂直に立ち上げられ、かつ、前記底板の前後に前記折り代板がほぼ垂直に立ち上げられた状態で、前記左右の側板の前後で前記妻板の外板部が内向きに折り曲げられて前記折り代板の外側に重なり、さらに、この外板部の上端で前記妻板の内板部が前記平行な二本のV溝により棺内側に下向きに折り返されて前記折り代板の上方で前記妻板の外板部の内側に重なるように構成されたことを特徴とする、組立式段ボール棺。
【請求項3】
請求項1または2記載の段ボール棺であって、前記側板には、その長手方向に連なる端部をV溝により棺内側に折り返してなる補強枠(F)が設けられており、前記展開シートの組立時、前記妻板の外板部の上端で前記内板部が棺内側に下向きに折り返されると、この折り返し部分の両端に前記補強枠の両端が直交方向に一体的に連なるように構成される、組立式段ボール棺。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、組立式段ボール棺に関し、詳しくは、強化段ボール製の展開シートを箱状に組み立てる段ボール棺に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、組立式段ボール棺として、強化段ボール材からなる展開シートにV溝加工を施して、このV溝に沿って展開シートを折り曲げて箱状に組み立てるものが知られている。
たとえば
図13に示すような段ボール棺1は、矩形の底板2の左右に側板3,3を有し、底板2の前後に妻板4を有する。側板3,3の前後にはV溝により折れ曲がる折り代板5,5が連結される。妻板4は、平行な二本のV溝v0で仕切られる外板部4aと内板部4bを有しており、これらのV溝によって外板部4aと内板部4bが180゜折り返される。これらの板が単一の展開シートにV溝で仕切られて設けられている。
【0003】
展開シートを組み立てる際には、まず底板2の左右に側板3,3をほぼ垂直に立ち上げる。次いで、この側板3,3の折り代板5,5を底板2の前後で左右内側に向けて折り曲げる(
図13(a)参照)。この状態から折り代板5,5の外側に妻板4の外板部4aを立ち上げ、さらに折り代板5,5に被せるように妻板4の内板部4bを棺内側に折り返す(
図13(b)参照)。これにより箱状の段ボール棺1が組み立てられる。なお、
図13において符号Fは、側板3の長手方向に連なる端部を棺内側に折り返してなる補強枠である。
このような段ボール棺1によれば、使用前にはその展開シートをコンパクトに折り畳んで保管しておき、葬儀で棺が必要となったときには展開シートを組み立てて直ぐに準備することができる。
【0004】
なお、従来の組立式段ボール棺に関する先行技術としては、特許文献1,2が公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実用新案登録第3134919号公報
【文献】特開2013-132300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来の組立式段ボール棺は、前述したように、展開シートを組み立てると、側板3と妻板4との繋ぎ目に段差が生じるため(
図13(B)参照)、この部分に段ボール端面(積層面)が表れる。つまり、展開シートの構造上、側板3の前後で折り曲げられる折り代板5,5に妻板4(外板部4aおよび内板部4b)が被せられると、妻板4の左右の端が折り代板5,5の折り角(かど)よりも内側に来るので、この部分の段差に段ボール端面(積層面)が表れる(
図13)。この結果、棺の見た目が悪くなり、高級感に欠ける仕上がりとなってしまう。
【0007】
これに対し、本発明者らは、側板と妻板との繋ぎ目における段差を解消するために妻板差し込みタイプの段ボール棺を開発した(特許文献2等)。この種の段ボール棺では、妻板部分を展開シートから独立させて、この妻板を側板との繋ぎ目に上方から差し込むようにして段差を解消している。
しかしながら、このような妻板差し込みタイプの段ボール棺は、展開シートと別個に妻板を作製するのに手間がかかり、また、側板と妻板との繋ぎ目の構造が複雑なることから製造コストが大きくなる。
【0008】
図13に示すような単一の展開シート(ワンシート)で組み上げる段ボール棺は、その製造コストの面で優位であるため、段ボール棺を市場に十分に普及させるためには、その特性を活かしつつ、前述したような段差による見た目の問題を解消することが重要である。
【0009】
本発明は、このような現状に鑑みなされたもので、単一の展開シートにより簡単に組み立てることができ、しかも、側板と妻板との繋ぎ目の段差を解消して良好な見た目に仕上げることができる組立式段ボール棺を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[第1発明]
前記課題を解決するための本発明の組立式段ボール棺は、
強化段ボール材からなる展開シートにV溝加工を施して、このV溝に沿って展開シートを折り曲げて箱状に組み立てる段ボール棺であって、
前記展開シート(P)は、
矩形の底板(12)と、
この底板の左右にV溝を介して連結される側板(13)と、
前記底板の前後にV溝を介して連結される折り代板(15)と、
前記側板の前後にV溝を介して連結される妻板(14)と、を有し、
加えて、前記妻板には、前記側板の長手方向に連なる平行な二本のV溝(v1,v1)で仕切られる外板部(14a)と内板部(14b)とを有しており、
前記展開シートの組み立て時には、前記底板の左右に側板がほぼ垂直に立ち上げられ、かつ、前記底板の前後に前記折り代板がほぼ垂直に立ち上げられた状態で、前記左右の側板の前後で前記妻板の外板部が内向きに折り曲げられて前記折り代板の外側に重なり、さらに、この外板部の上端で前記妻板の内板部が前記平行な二本のV溝により棺内側に下向きに折り返されて前記折り代板の内側に重なる構成とした。
【0011】
第1発明の構成によれば、側板と妻板とがV溝を介して直接連結されることから、両者を折り曲げてできる折り角(かど)がそのまま繋ぎ目となる。これにより、側板と妻板との繋ぎ目の段差が解消されて棺の仕上がりを美しくすることができる。また、側板と妻板とが強化段ボール材の表皮層(ライナー)で繋がるため、これらの繋ぎ目の強度を十分に確保することができる。
【0012】
従来、単一の展開シートをV溝で折り曲げて段ボール棺を組み立てる際には、底板の左右に側板と折り代板を連結し、底板の前後に妻板を連結する構成が採用されてきた(
図13参照)。特に、前述したような補強枠Fを備えた段ボール棺の場合には、補強枠Fの繋ぎ目をV溝加工によって形成することができるため、有利な構成となっていた。
本発明は、このような従来の発想を切り替えて底板の左右に側板と妻板を連結し、底板の前後に折り代板を連結したものである。これにより、前述したように側板と妻板との繋ぎ目の段差を解消し、段ボール棺の見た目を良好にすることができる。
なお、展開シートにおいて、底板の左右に側板と妻板を連結し、底板の前後に折り代板を連結する場合、折り代板の折り目の位置が、側板と妻板の折り目と同一線上にあると、これらの板を箱状に折り曲げる際に互いの板が干渉することになる。本発明では、折り代板の折り目の位置を、側板と妻板の折り目よりも棺内側に設定することにより、上記のような干渉を回避することができる。
【0013】
[第2発明]
第2発明の組立式段ボール棺は、強化段ボール材からなる展開シートにV溝加工を施して、このV溝に沿って展開シートを折り曲げて箱状に組み立てる段ボール棺であって、
前記展開シート(P)は、
矩形の底板(12)と、
この底板の左右にV溝を介して連結される側板(13)と、
前記底板の前後にV溝を介して連結される折り代板(15)と、
前記側板の前後にV溝を介して連結される妻板(14)と、を有し、
加えて、前記妻板には、前記側板の長手方向に連なる平行な二本のV溝(v1,v1)で仕切られる外板部(14a)と内板部(14b)とを有しており、
前記展開シートの組み立て時には、前記底板の左右に側板がほぼ垂直に立ち上げられ、かつ、前記底板の前後に前記折り代板がほぼ垂直に立ち上げられた状態で、前記左右の側板の前後で前記妻板の外板部が内向きに折り曲げられて前記折り代板の外側に重なり、さらに、この外板部の上端で前記妻板の内板部が前記平行な二本のV溝により棺内側に下向きに折り返されて前記折り代板の上方で前記妻板の外板部の内側に重なる構成とした。
【0014】
第2発明は、第1発明における妻板(外板部と内板部)の折り返し方を変更したものである。第1発明の構成では、妻板(外板部と内板部)が折り代板に被さるように折り返されるところ、第2発明の構成では、妻板の内板部が折り代板の上方に折り返されて、これらの板が面一となって外板部の内側に重なる形となる。
【0015】
第2発明の構成についても、第1発明と同様な効果を得ることができる。つまり、側板と妻板とがV溝を介して直接連結されることから、両者を折り曲げてできる折り角(かど)がそのまま繋ぎ目となる。これにより、側板と妻板との繋ぎ目の段差が解消されて棺の仕上がりを美しくすることができる。また、側板と妻板とが強化段ボール材の表皮層(ライナー)で繋がるため、これらの繋ぎ目の強度を十分に確保することができる。
【0016】
加えて、第2発明の構成は、第1発明の構成に比べて段ボール棺の妻部分(棺の短手側の板全体を意味する。)の厚みを抑えることができる。つまり、第1発明の構成では、段ボール棺の妻部分における最大の厚みが、妻板の外板部および内板部で折り代板を挟んだ三枚分の厚みになるが、第2発明の構成では、妻板と折り代板とを重ねた二枚分の厚みになる。厚みの大きい強化段ボール材を採用する際にこのような構成が有利となる。
【0017】
[第3発明]
第3発明の組立式段ボール棺は、第1発明または第2発明の構成を備えるものであって、
前記側板には、その長手方向に連なる端部をV溝により棺内側に折り返してなる補強枠(F)が設けられており、前記展開シートの組立時、前記妻板の外板部の上端で前記内板部が棺内側に下向きに折り返されると、この折り返し部分の両端に前記補強枠の両端が直交方向に一体的に連なる構成とした。
【0018】
このような構成によれば、側板の長手方向に補強枠が設けられるため、段ボール棺の強度を大幅に向上させることができる。さらに、妻板(外板部と内板部)の折り返し部分と側板の補強枠とが一体的に連なることにより、段ボール棺の外観の品質が向上し、高級感のある仕上がりにすることができる。
【0019】
[第1~3発明]
第1~3発明において、段ボール棺の用途(人用、ペット用等)や種類(寝棺、座棺等)は、特に限定されることはない。
第1~3発明の段ボール棺は、展開シートを箱状に組み立てた後の形状を保つために適宜、固定手段を用いることが望ましい。固定手段としては、ダボや段ボール専用ネジ、両面テープ等を採用することができる。もちろん展開シートの各板を接着剤で貼り合わせて固定してもよい。
また、第1~3発明の段ボール棺は、強化段ボール材を主体として形成されるが、必要に応じて木材等で補強してもよい。
なお、第1~3発明には必要に応じて本明細書に記載される他の発明を組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1実施形態による組立式段ボール棺を示す斜視図である。
【
図2】同段ボール棺を示すもので、
図1の[2]-[2]線断面図である。
【
図3】同段ボール棺の展開シートを組み立てる様子を示すもので、折り代板を立ち上げる前の部分斜視図である。
【
図4】同段ボール棺の展開シートを組み立てる様子を示すもので、折り代板を立ち上げた後の部分斜視図である。
【
図5】同段ボール棺の展開シートを組み立てる様子を示すもので、妻板の折り返す前後の状態を示す部分断面図である。
【
図6】同段ボール棺の固定手段を説明するもので、(A)は部分平面図、(B)は断面図である。
【
図7】同段ボール棺の展開シートを示す平面図である。
【
図9】第2実施形態による組立式段ボール棺を示す斜視図である。
【
図10】同段ボール棺を示すもので、
図9の[10]-[10]線断面図である。
【
図11】同段ボール棺の展開シートを組み立てる様子を示すもので、妻板を折り返す前後の状態を示す部分断面図である。
【
図12】同段ボール棺の固定手段を説明するもので、(A)は部分平面図、(B)は断面図である。
【
図13】従来形態による組立式段ボール棺の展開シートを組み立てる様子を示すもので、(A)は妻板を立ち上げる前の部分斜視図、(B)は妻板を立ち上げた後の部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下に記載の実施形態およびその変形例は、本発明を適用した形態の一例であり、発明の範囲がこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0022】
[第1実施形態]
図1に示すように、段ボール棺10は、棺本体10Aと蓋10Bとからなる。棺本体10Aの上方に蓋10Bが設けられ、蓋10Bの片寄りの位置に観音扉式の窓11が設けられる。この窓11の扉を開くことで棺の内部を覗けるようになっている。
段ボール棺10の寸法は、例えば前後の棺長さ(長辺)が170~200cm程度、左右の棺幅(短辺)が50~70cm程度、高さが40~50cm程度である。
【0023】
棺本体10Aおよび蓋10Bは、強化段ボール材により形成される。棺本体10Aは、強化段ボール材からなる単一の展開シートにV溝加工を施し、この展開シートをV溝に沿って箱状に折り曲げることにより組み立てられる。
【0024】
強化段ボール材としては、たとえば板厚10~15mm程度の二層強化段ボール材(例えばトライウォール社製)が採用される。この段ボール材は、
図2のR部分拡大図に示すように、2枚の厚板(ライナー)Rb,Rfとの間に、2層の波板r1,r2が仕切り板q1を介して積層されてなるもので、優れた耐圧性・耐水性をもつ。
【0025】
強化段ボール材に折曲げ用のV溝を形成する際には、これらの層のうち厚板Rf,Rbのいずれかを残して他の層を回転刃等を用いて切削する。強化段ボール材を折り曲げる場合、残した片方の厚板(ライナー)のみを折り曲げてV溝の溝面を互いに密着させる。V溝の溝角がほぼ90゜になるようにV溝加工を施せば、隣り合う板材同士がほぼ垂直に折れ曲がる。
このように強化段ボール材をV溝で折り曲げることにより、厚板(ライナー)の折り曲げ部分がヒンジとなって、折り曲げた板材同士の切れ目がV溝の反対側に隠れることになる。これにより、棺本体10Aの角部の寸法精度が向上し、外観の仕上がりを良好にすることができる。なお、V溝加工の手段としては、プレス機等で強化段ボール材を断面V字状に圧縮してもよい。
【0026】
段ボール棺10の表面には、必要に応じて布やフィルムなどの化粧シートが貼り付けられる。このような化粧仕上げ施すことで、段ボール棺10の質感を高めることができる。強化段ボール材の表面に予め木目などの化粧柄がプリントされたものを用いることも可能である。
【0027】
図1に示すように、棺本体10Aは、矩形の底板12の左右に側板13,13を有し、底板12の前後に妻板14,14を有する。側板13,13の上端部には、その長手方向に連なる端部を折り曲げてなる補強枠Fが設けられ、この補強枠Fにより棺本体10Aの強度が高められている。
【0028】
図7に、棺本体10Aを組み立てるための展開シートPを示した。
図7に示すように、展開シートPは、強化段ボール材の原板を前後(
図7で上下)および左右に対称な形状にカットし、その表面にV溝加工を施すことにより作製される。原板の加工にNCルータ等を用いることにより、展開シートPの切り出し加工とV溝加工を自動で実施することができる。
【0029】
図7において、符号v1は、棺の長手方向(
図7で上下方向)に延びるV溝であり、符号v2は棺の短手方向(
図7で左右方向)に延びるV溝である。これらのV溝の断面は、ほぼ90゜の溝角になっており、隣り合う板をV溝で折り曲げると、これらの板がほぼ直角に折れ曲がる。長手方向に延びる各V溝v1(計10本)はそれぞれ同一直線上に貫通している。これにより、展開シートPのV溝加工が容易になっている。
符号Hは、ダボ穴であり、後述するように展開シートPを箱状に組み立てた後、これらのダボ穴HにダボDが打ち込まれる。
【0030】
展開シートPは、その中央の底板12を中心に各板がV溝を介して連結される。底板12の左右に側板13,13が連結され、側板13,13の前後(
図7では上下)に折り代板15が連結される。
【0031】
側板13,13の前後(
図7では上下)には妻板14,14が連結される。妻板14,14は、側板13の長手方向に連なる平行な二本のV溝v1,v1で外板部14aと内板部14bとに仕切られており、これらのV溝で妻板14,14を折り曲げると、外板部14aと内板部14bとが180゜折り返される。
外板部14aと内板部14bとを仕切る二本のV溝v1,v1の間には強化段ボール材の厚みと同じ幅の曲げ代14cが設けられる。これにより、後述するように、外板部14aと内板部14bの間に折り代板15を挟めるようになる。
【0032】
側板13,13の左右外側には補強枠Fを形成するための外枠板13aと内枠板13bとが連結される。外枠板13aは、曲げ代13cを有する二本のV溝により側板13と仕切られており、内枠板13bは曲げ代のない隣接する二本のV溝v1,v1により外枠板13aと仕切られている。
外枠板13aと内枠板13bをV溝v1,v1に沿って180゜折り返すと、両板が向き合って重なる。さらに、重なった外枠板13aと内枠板13bを、V溝v1,v1に沿って側板13,13に向けて180゜折り返すと、これらの板が三枚に重なり、側板13,13の端部に補強枠Fが形成される(
図6(B)参照)。
【0033】
次に、展開シートPの組み立て方法について説明する。
展開シートPから棺本体10Aを組み立てる場合、まず最初に、側板13,13の端部に補強枠Fを形成する。補強枠Fは、前述したように、外枠板13aおよび内枠板13bをV溝に沿って折り返すことにより形成する。
次いで、
図3に示すように、側板13,13の左右にほぼ垂直に側板13,13を立ち上げ、側板13,13の前後で妻板14,14を左右に向き合わせる。続けて
図4に示すように、側板13,13の前後でほぼ垂直に折り代板15を立ち上げて左右の側板13,13の間に入れる。
【0034】
この状態から、左右の妻板14,14を内向きに折り曲げ、折り代板15の外側に妻板14,14の外板部14a,14aを重ね合わせる。このとき、左右の妻板14,14の先端が折り代板15の左右中間位置で隙間なく合わさるため、折り代板15が棺内側に隠れる。
【0035】
さらに、
図5(A)に示すように、妻板14の外板部14aの上端で内板部14bを棺内側に180゜下向きに折り返すと、折り代板15の内側に妻板14の内板部14bが重なり、折り代板15に妻板14が被せられた状態となる(
図5(B)参照)。そして、曲げ代14cの上端が補強枠Fの高さに一致する。
【0036】
ここで、
図8に示すように、展開シートPにおける折り代板15の折り目(V溝v2の折れ線)は、側板13と妻板14との折り目(V溝v2の折れ線)よりも展開シートPの板厚分だけ棺内側(
図8で下側)にズレた位置にある。これにより、底板12の前後で折り代板15と妻板14,14を折り曲げても、両者の折り目が干渉し合うことがなく、折り代板15の外側に妻板14の外板部14aが重なり合う。
【0037】
また、展開シートPの四隅付近において、側板13の補強枠Fの展開部分(外枠板13a,内枠板13b)と、妻板の展開部分(内板部14b)の間には、平面方向からみて鋭角にカットされる切れ目Kが設けられる。
図4に示すように、補強枠Fを形成した側板13,13を底板12の左右に立ち上げた状態で、左右の外板部14aに対して内板部14bおよび曲げ代14cを水平(ほぼ90゜)に折り曲げると、これらの切れ目Kのカット面が、側板13と妻板14との間のV溝面に一致する。このため、前述したように折り代板15に妻板14を重ねて展開シートPを箱状に組み立てると、妻板14(外板部14aと内板部14b)の折り返し部分の両端と、側板13,13の補強枠Fの両端とが直交方向に一体的に連なることになる(
図6(A)参照)。
【0038】
このように展開シートPを箱状に組み立てた後、展開シートPの各所に設けられたダボ穴HにダボDを打ち込むことで、箱状の棺本体10Aを固定する。ダボ穴Hは、すべて棺本体10Aの内側になるように配置されるため、棺本体10Aの外観にダボDが表れることはない。これにより、
図1に示すように、側板13,13と妻板14,14とが違和感なく一体的に繋がった外観の棺本体10Aが完成する。
【0039】
なお、本実施形態では、
図6(B)に示すように、妻板14と折り代板15ととを固定するために上下方向に3箇所、左右方向に4箇所の計12箇所にダボ穴Hが設けられる。また、
図7に示すように、側板13,13の補強枠F(外枠板13aおよび内枠板13b)を固定するために棺長手方向に6箇所のダボ穴Hが設けられる。これらのダボ穴Hの位置は、棺のサイズや強化段ボール材の厚みなどに応じて適宜変更しても構わない。
【0040】
このように第1実施形態の段ボール棺10によれば、側板13と妻板14とがV溝を介して直接連結されることから、両者を折り曲げてできる折り角(かど)がそのまま繋ぎ目となる。これにより、側板13と妻板14との繋ぎ目の段差が解消されて棺の仕上がりを美しくすることができる。
また、側板13と妻板14とが強化段ボール材の表皮層(ライナー)で繋がるため、これらの繋ぎ目の強度を十分に確保することができる。
さらに、段ボール棺10では、側板13の長手方向に補強枠Fが設けられるため、耐荷重性などの棺の強度を大幅に向上させることができる。さらに、妻板14(外板部14aと内板部14b)の折り返し部分と、側板13,13の補強枠Fとが一体的に連なることにより、棺の外観の品質が向上し、高級感のある仕上がりにすることができる。
【0041】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態の組立式段ボール棺を
図9~
図12に示す。第2実施形態は、二層タイプの強化段ボール材(第1実施形態)に代えて、三層タイプの強化段ボール材を採用したものである。
【0042】
図9に示すように、段ボール棺20は、第1実施形態と同様、箱状の棺本体10Aと、この棺本体10Aに被せられる蓋10Bとを備えている。棺本体10Aは、矩形の底板12の左右に側板13,13を有し、底板12の前後に妻板14,14を有している。
【0043】
図10に示すように、棺本体10Aおよび蓋10Bは、三層強化段ボール材により形成される。棺本体10Aは、強化段ボール材からなる単一の展開シートにV溝加工を施し、この展開シートをV溝に沿って箱状に折り曲げることにより組み立てられる。
【0044】
強化段ボール材としては、たとえば板厚15~20mm程度の三層強化段ボール材(例えばトライウォール社製)が採用される。この強化段ボール材は、
図10のR部分拡大図に示すように、2枚の厚板(ライナー)Rb,Rfとの間に、三層の波板r1~r3が仕切り板q1,q2を介して積層されてなるもので、優れた耐圧性・耐水性をもつ。
【0045】
第2実施形態の棺本体10Aを組み立てるための展開シートは、基本的には
図7に示す展開シートPと同様な構成である。
図7に倣って説明すると、底板12の左右に側板13,13が連結され、側板13,13の前後に折り代板15が連結される。側板13,13の前後には妻板14,14が連結される。各板の境界には折り曲げ用のV溝v1,v2が形成される。
【0046】
第2実施形態において、妻板14,14は、曲げ代14cのない平行な二本のV溝v1,v1によって外板部14aと内板部14bとに仕切られる。これにより、外板部14aと内板部14bをこれらのV溝で折り返すと、両板が隙間なく重なり合う。
また、第2実施形態の展開シートでは、側板13,13の内枠板13bとこれを折り返すための二本のV溝v1,v1とが省略される。側板13,13と外枠板13aとの間の二本のV溝v1,v1は、前述の妻板14,14のV溝と同様に曲げ代13cのない平行な二本のV溝となっており、側板13,13と外枠板13aとをこれらのV溝で折り返すと、両板が隙間なく重なり合う。
【0047】
第2実施形態の展開シートにより棺本体を組み立てる場合、第1実施形態と同様、最初に側板13,13の端部に補強枠Fを形成する。補強枠Fは、側板13,13の長手方向に連なる端部で外枠板13aをV溝に沿って180゜折り返すことにより形成する。
次いで、底板12の左右にほぼ垂直に側板13,13を立ち上げ、側板13,13の前後で妻板14,14を左右に向き合わせる。続けて、側板13,13の前後でほぼ垂直に折り代板15を立ち上げて左右の側板13,13の間に入れる。
【0048】
この状態から、左右の妻板14,14を内向きに折り曲げ、折り代板15の外側に妻板14,14の外板部14aを重ね合わせる。このとき、左右の妻板14,14の先端が折り代板15の左右中間位置で隙間なく合わさるため、折り代板15が棺内側に隠れることになる。
【0049】
さらに、
図11(A)に示すように、この外板部14aの上端で内板部14bを棺内側に180゜下向きに折り返すと、折り代板15の上方で外板部14aと内板部14bとが面一になって重なる(
図11(B)参照)。そして、曲げ代14cの上端が補強枠Fの高さに一致する。
【0050】
このとき、第1実施形態と同様に、側板13,13と折り代板15との折り目が、側板13,13と妻板14,14との折り目よりも板厚分だけ棺内側にズレた位置にあるため、側板13,13の前後で折り代板15と妻板14,14を折り曲げても、両者の折り目が干渉し合うことがなく、折り代板15の外側に妻板14,14の外板部14aが重なり合う。
【0051】
また、第1実施形態と同様に、展開シートの四隅付近において、側板13の補強枠Fの展開部分(外枠板13a,内枠板13b)と、妻板の展開部分(内板部14b)の間には、平面方向からみて鋭角にカットされる切れ目K(
図7参照)が設けられるため、妻板14(外板部14aと内板部14b)の折り返し部分の両端と、側板13,13の補強枠Fの両端とが直交方向に一体的に連なることになる(
図12(A)参照)。
【0052】
このように展開シートを箱状に組み立てた後、展開シートの各所に設けられたダボ穴HにダボDを打ち込むことで、棺本体10Aの形状を固定する。これにより、
図9に示すように、側板13,13と妻板14,14とが違和感なく一体的に繋がった外観の棺本体10Aが完成する。
【0053】
第2実施形態の段ボール棺20においても、側板13,13と妻板14,14とがV溝を介して直接連結されることから、両者を折り曲げてできる折り角(かど)がそのまま繋ぎ目となる。これにより、側板13,13と妻板14,14との繋ぎ目の段差が解消されて棺の仕上がりを美しくすることができる。
また、側板13,13と妻板14,14とが強化段ボール材の表皮層(ライナー)で繋がるため、これらの繋ぎ目の強度を十分確保することができる。
さらに、段ボール棺では、側板13,13の長手方向に補強枠が設けられるため、段ボール棺の強度を大幅に向上させることができる。さらに、妻板14,14(外板部14aと内板部14b)の折り返し部分が側板13,13の補強枠に一体的に連なることにより、段ボール棺の外観の品質が向上し、高級感のある仕上がりにすることができる。
【0054】
加えて、第2実施形態の段ボール棺20は、第1実施形態に比べて段ボール棺の妻部分の厚みを抑えることができる。つまり、第1実施形態では、段ボール棺10の妻部分における最大の厚みが、妻板14の外板部14aおよび内板部14bで折り代板15を挟んだ三枚分の厚みになるが、第2実施形態では、妻板14と折り代板15とを重ねた二枚分の厚みになる。このため、段ボール棺20の強度を十分に確保しつつ、その展開シートをよりシンプルな形状にすることができる。
【0055】
[変形例]
以上、実施形態による組立式段ボール棺を説明したが、本発明の実施形態は、これらの構成に限定されることなく、種々の変形や変更を伴ってもよい。
前記実施形態では、平面的な形状の蓋を採用しているが、立体的な形状の蓋を採用してもよい。
【0056】
また、前記実施形態では、展開シートから組み立てた棺本体10Aの形状を保つための固定手段として、ダボDを用いているが、これに代えて、強化段ボール接合ネジやステープラーを用いてもよい。この種の固定手段は、強化段ボール材に電動ドライバやタッカーで直接打ち込むことができるため、展開シートにダボ穴Hのような下穴を空けておかなくても済む。また、強化段ボール材の固定位置を自在に設定することができるため、展開シートの組み立て作業をより簡単にすることができる。その他、固定手段としては、両面テープや接着剤等を採用することももちろん可能である。
【0057】
前記実施形態では、棺内側に固定手段(ダボ)が隠れるようにしているが、固定手段を外側に見せるようにしてもよい。前述したような特殊な固定手段を採用する場合には、固定手段を敢えて棺の外観に見せることにより装飾効果を与えることもできる。
【0058】
前記実施形態の段ボール棺を木材等で補強してもよい。たとえば底板12に合板や集成材を重ねて貼り合わせると、棺の強度を高めて耐荷重性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0059】
10・・段ボール棺(組立式段ボール棺)
10A・・棺本体 10B・・蓋 11・・窓 12・・底板
13・・側板13 13a・・外枠板 13b・・内枠板
13c・・曲げ代 14・・妻板 14a・・外板部 14b・・内板部14c・・曲げ代 15・・折り代板 D・・ダボ H・・ダボ穴
P・・展開シート v1,v2・・V溝