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特許7270935増粘安定剤、及びそれを用いた電子デバイス製造用溶剤組成物
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  • 特許-増粘安定剤、及びそれを用いた電子デバイス製造用溶剤組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】増粘安定剤、及びそれを用いた電子デバイス製造用溶剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C07C 291/04 20060101AFI20230501BHJP
   C07C 231/02 20060101ALI20230501BHJP
   C07C 233/36 20060101ALI20230501BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20230501BHJP
   C09K 3/00 20060101ALN20230501BHJP
【FI】
C07C291/04 CSP
C07C231/02
C07C233/36
C07B61/00 300
C09K3/00 103H
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020510702
(86)(22)【出願日】2019-03-18
(86)【国際出願番号】 JP2019011207
(87)【国際公開番号】W WO2019188508
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-01-18
(31)【優先権主張番号】P 2018069615
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(73)【特許権者】
【識別番号】517132810
【氏名又は名称】地方独立行政法人大阪産業技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 陽二
(72)【発明者】
【氏名】懸橋 理枝
(72)【発明者】
【氏名】東海 直治
【審査官】神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-218994(JP,A)
【文献】KAKEHASHI, Rie et al.,Effects of the spacer length on the aggregate formation and the gelation of alkylamide amine oxides,Colloid and Polymer Science,2015年,Vol.293, No.11,pp.3157-3165,ISSN: 0303-402X, DOI: 10.1007/s00396-015-3634-4
【文献】KAKEHASHI, Rie et al.,Solution behavior of long-alkyl-chain amide amine oxide surfactants having multiple hydrogen-bonding sites,Chemistry Letters,2012年,Vol.41, No.10, pp.1050-1051,ISSN: 0366-7022, DOI: 10.1246/cl.2012.1050
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】
(式中、R1は炭素数14~25のアルキル基、R2、R3は同一又は異なって、炭素数2、4、6、若しくは8の2価の脂肪族炭化水素基、炭素数6の2価の脂環式炭化水素基、又は2価の芳香族炭化水素基を示し、R4は炭素数1~8の2価の脂肪族炭化水素基を示し、R5、R6は同一又は異なって、炭素数1~3の1価の脂肪族炭化水素基、又はヒドロキシアルキルエーテル基を示す。L1~L3はアミド結合を示し、L1とL3が-CONH-である場合、L2は-NHCO-であり、L1とL3が-NHCO-である場合、L2は-CONH-である)
で表される化合物。
【請求項2】
下記式(2)
【化2】
(式中、R1は炭素数14~25のアルキル基、R2、R3は同一又は異なって、炭素数2、4、6、若しくは8の2価の脂肪族炭化水素基、炭素数6の2価の脂環式炭化水素基、又は2価の芳香族炭化水素基を示し、R4は炭素数1~8の2価の脂肪族炭化水素基を示し、R5、R6は同一又は異なって、炭素数1~3の1価の脂肪族炭化水素基、又はヒドロキシアルキルエーテル基を示す。L1~L3はアミド結合を示し、L1とL3が-CONH-である場合、L2は-NHCO-であり、L1とL3が-NHCO-である場合、L2は-CONH-である)
で表される化合物。
【請求項3】
下記式(3)で表される化合物と、下記式(4)で表される化合物を反応させて、若しくは下記式(3’)で表される化合物と、下記式(4’)で表される化合物を反応させて、下記式(2)で表される化合物を得る、式(2)で表される化合物の製造方法。
【化3】
(式中、R1は炭素数14~25のアルキル基、R2、R3は同一又は異なって、炭素数2、4、6、若しくは8の2価の脂肪族炭化水素基、炭素数6の2価の脂環式炭化水素基、又は2価の芳香族炭化水素基を示し、R4は炭素数1~8の2価の脂肪族炭化水素基を示し、R5、R6は同一又は異なって、炭素数1~3の1価の脂肪族炭化水素基、又はヒドロキシアルキルエーテル基を示す。L1~L3はアミド結合を示し、L1とL3が-CONH-である場合、L2は-NHCO-であり、L1とL3が-NHCO-である場合、L2は-CONH-である。R7は水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を示す。尚、式(3)において、OR7はL2を構成する水素原子と脱水縮合又は脱アルコール縮合して、環を形成していてもよい)
【請求項4】
下記式(2)
【化4】
(式中、R1は炭素数14~25のアルキル基、R2、R3は同一又は異なって、炭素数2、4、6、若しくは8の2価の脂肪族炭化水素基、炭素数6の2価の脂環式炭化水素基、又は2価の芳香族炭化水素基を示し、R4は炭素数1~8の2価の脂肪族炭化水素基を示し、R5、R6は同一又は異なって、炭素数1~3の1価の脂肪族炭化水素基、又はヒドロキシアルキルエーテル基を示す。L1~L3はアミド結合を示し、L1とL3が-CONH-である場合、L2は-NHCO-であり、L1とL3が-NHCO-である場合、L2は-CONH-である)
で表される化合物を酸化して、下記式(1)
【化5】
(式中、R1~R6、L1~L3は、上記に同じ)
で表される化合物を得る、式(1)で表される化合物の製造方法。
【請求項5】
下記式(1)
【化6】
(式中、R 1 は炭素数10~25の1価の直鎖状脂肪族炭化水素基、R 2 、R 3 は同一又は異なって、炭素数2、4、6、若しくは8の2価の脂肪族炭化水素基、炭素数6の2価の脂環式炭化水素基、又は2価の芳香族炭化水素基を示し、R 4 は炭素数1~8の2価の脂肪族炭化水素基を示し、R 5 、R 6 は同一又は異なって、炭素数1~3の1価の脂肪族炭化水素基、又はヒドロキシアルキルエーテル基を示す。L 1 ~L 3 はアミド結合を示し、L 1 とL 3 が-CONH-である場合、L 2 は-NHCO-であり、L 1 とL 3 が-NHCO-である場合、L 2 は-CONH-である)
で表される化合物と流動性有機物質との相溶物を含む、電子デバイス製造用溶剤組成物。
【請求項6】
流動性有機物質が、炭化水素油、エーテル、ハロゲン化炭化水素、石油成分、動植物油、シリコーン油、エステル、芳香族カルボン酸、ピリジン、及びアルコールから選択される少なくとも1種である、請求項5に記載の電子デバイス製造用溶剤組成物。
【請求項7】
下記式(1)
【化7】
(式中、R1は炭素数10~25の1価の直鎖状脂肪族炭化水素基、R2、R3は同一又は異なって、炭素数2、4、6、若しくは8の2価の脂肪族炭化水素基、炭素数6の2価の脂環式炭化水素基、又は2価の芳香族炭化水素基を示し、R4は炭素数1~8の2価の脂肪族炭化水素基を示し、R5、R6は同一又は異なって、炭素数1~3の1価の脂肪族炭化水素基、又はヒドロキシアルキルエーテル基を示す。L1~L3はアミド結合を示し、L1とL3が-CONH-である場合、L2は-NHCO-であり、L1とL3が-NHCO-である場合、L2は-CONH-である)
で表される化合物と流動性有機物質とを相溶させる工程を経て、請求項5又は6に記載の電子デバイス製造用溶剤組成物を得る、電子デバイス製造用溶剤組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイル等の流動性有機物質を増粘安定化する新規な化合物、及びそれを含有する電子デバイス製造用溶剤組成物に関する。本願は、2018年3月30日に日本に出願した、特願2018-069615号の優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
液体を増粘安定化する方法は産業上非常に重要な技術であり、例えば、準安定状態の乳化物であるマヨネーズやサラダドレッシング等が長期間安定的にその乳化状態を維持することができるのは、水性成分が増粘安定化されているためである。そのため、種々の増粘安定剤が開発されてきた。
【0003】
水性媒体を増粘安定化させる化合物としては、例えば、アルキルアクリレートコポリマー等が知られている。
【0004】
一方、流動性有機物質(例えば、油性媒体等の流動性を有する有機物質)の増粘安定剤としては12-ヒドロキシステアリン酸が知られている(特許文献1等)。12-ヒドロキシステアリン酸は、主に、食用油の廃棄処理にそのゲル化作用が利用されている。しかし、12-ヒドロキシステアリン酸はゲル化の程度を調整することができず、完全に固化するか液体のままかの何れかの状態に誘導することしかできなかった。即ち、流動性有機物質を所望の粘度に増粘する化合物は未だ見いだされていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平01-163111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、流動性有機物質を所望の粘度に増粘し、組成を均一に安定化することができる化合物を提供することにある。
本発明の他の目的は、流動性有機物質を所望の粘度に増粘し、組成を均一に安定化することができる前記化合物の前駆体を提供することにある。
本発明の他の目的は、前記化合物と流動性有機物質との相溶物を含み、電子デバイス製造用に好適に使用される溶剤組成物を提供することにある。
本発明の更に他の目的は、前記溶剤組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は上記課題を解決するため鋭意検討した結果、下記式(1)で表される化合物は、流動性有機物質と相溶させることにより、流動性有機物質を増粘することができ、組成が均一に安定化(組成物の沈降、局所的な凝集、又は濃縮を防ぎ、均一状態を安定的に維持すること)された相溶物が得られること、下記式(1)で表される化合物の炭素数を調整することにより、得られる相溶物の粘度をコントロールすることができることを見いだした。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0008】
すなわち、本発明は下記式(1)
【化1】
(式中、R1は炭素数10~25の1価の直鎖状脂肪族炭化水素基、R2、R3は同一又は異なって、炭素数2、4、6、若しくは8の2価の脂肪族炭化水素基、炭素数6の2価の脂環式炭化水素基、又は2価の芳香族炭化水素基を示し、R4は炭素数1~8の2価の脂肪族炭化水素基を示し、R5、R6は同一又は異なって、炭素数1~3の1価の脂肪族炭化水素基、又はヒドロキシアルキルエーテル基を示す。L1~L3はアミド結合を示し、L1とL3が-CONH-である場合、L2は-NHCO-であり、L1とL3が-NHCO-である場合、L2は-CONH-である)
で表される化合物を提供する。
【0009】
本発明は、また、下記式(2)
【化2】
(式中、R1は炭素数10~25の1価の直鎖状脂肪族炭化水素基、R2、R3は同一又は異なって、炭素数2、4、6、若しくは8の2価の脂肪族炭化水素基、炭素数6の2価の脂環式炭化水素基、又は2価の芳香族炭化水素基を示し、R4は炭素数1~8の2価の脂肪族炭化水素基を示し、R5、R6は同一又は異なって、炭素数1~3の1価の脂肪族炭化水素基、又はヒドロキシアルキルエーテル基を示す。L1~L3はアミド結合を示し、L1とL3が-CONH-である場合、L2は-NHCO-であり、L1とL3が-NHCO-である場合、L2は-CONH-である)
で表される化合物を提供する。
【0010】
本発明は、また、下記式(3)で表される化合物と、下記式(4)で表される化合物を反応させて、若しくは下記式(3’)で表される化合物と、下記式(4’)で表される化合物を反応させて、下記式(2)で表される化合物を得る、式(2)で表される化合物の製造方法を提供する。
【化3】
(式中、R1は炭素数10~25の1価の直鎖状脂肪族炭化水素基、R2、R3は同一又は異なって、炭素数2、4、6、若しくは8の2価の脂肪族炭化水素基、炭素数6の2価の脂環式炭化水素基、又は2価の芳香族炭化水素基を示し、R4は炭素数1~8の2価の脂肪族炭化水素基を示し、R5、R6は同一又は異なって、炭素数1~3の1価の脂肪族炭化水素基、又はヒドロキシアルキルエーテル基を示す。L1~L3はアミド結合を示し、L1とL3が-CONH-である場合、L2は-NHCO-であり、L1とL3が-NHCO-である場合、L2は-CONH-である。R7は水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を示す。尚、式(3)において、OR7はL2を構成する水素原子と脱水縮合又は脱アルコール縮合して、環を形成していてもよい)
【0011】
本発明は、また、下記式(2)
【化4】
(式中、R1は炭素数10~25の1価の直鎖状脂肪族炭化水素基、R2、R3は同一又は異なって、炭素数2、4、6、若しくは8の2価の脂肪族炭化水素基、炭素数6の2価の脂環式炭化水素基、又は2価の芳香族炭化水素基を示し、R4は炭素数1~8の2価の脂肪族炭化水素基を示し、R5、R6は同一又は異なって、炭素数1~3の1価の脂肪族炭化水素基、又はヒドロキシアルキルエーテル基を示す。L1~L3はアミド結合を示し、L1とL3が-CONH-である場合、L2は-NHCO-であり、L1とL3が-NHCO-である場合、L2は-CONH-である)
で表される化合物を酸化して、下記式(1)
【化5】
(式中、R1~R6、L1~L3は、上記に同じ)
で表される化合物を得る、式(1)で表される化合物の製造方法を提供する。
【0012】
本発明は、また、前記の式(1)で表される化合物と流動性有機物質との相溶物を含む、電子デバイス製造用溶剤組成物を提供する。
【0013】
本発明は、また、流動性有機物質が、炭化水素油、エーテル、ハロゲン化炭化水素、石油成分、動植物油、シリコーン油、エステル、芳香族カルボン酸、ピリジン、及びアルコールから選択される少なくとも1種である、前記の電子デバイス製造用溶剤組成物を提供する。
【0014】
本発明は、また、下記式(1)
【化6】
(式中、R1は炭素数10~25の1価の直鎖状脂肪族炭化水素基、R2、R3は同一又は異なって、炭素数2、4、6、若しくは8の2価の脂肪族炭化水素基、炭素数6の2価の脂環式炭化水素基、又は2価の芳香族炭化水素基を示し、R4は炭素数1~8の2価の脂肪族炭化水素基を示し、R5、R6は同一又は異なって、炭素数1~3の1価の脂肪族炭化水素基、又はヒドロキシアルキルエーテル基を示す。L1~L3はアミド結合を示し、L1とL3が-CONH-である場合、L2は-NHCO-であり、L1とL3が-NHCO-である場合、L2は-CONH-である)
で表される化合物と流動性有機物質とを相溶させる工程を経て、前記の電子デバイス製造用溶剤組成物を得る、電子デバイス製造用溶剤組成物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の式(1)で表される化合物は、流動性有機物質と相溶させることにより、容易に流動性有機物質を増粘し、流動性有機物質を含有する組成物の組成を均一に安定化することができる。そのため、塗料、接着剤、インク、潤滑油、医薬品、医薬部外品、化粧品等の増粘安定剤として好適に使用することができる。
【0016】
また、本発明の式(2)で表される化合物を酸化すれば、容易に上記の通り有用な式(1)で表される化合物を製造することができる。すなわち、式(2)で表される化合物は式(1)で表される化合物の前駆体として極めて有用である。
【0017】
そして、上記式(1)で表される化合物を含む、本発明の電子デバイス製造用溶剤組成物は、適度な粘度とシェアシニング性とを有する。そのため、液ダレしにくく、良好な塗布性(若しくは、吐出性)を有する。
更に、エチルセルロースにより流動性有機物質を増粘して得られる溶剤組成物に比べて、本発明の電子デバイス製造用溶剤組成物は低温で焼成することができ、溶剤組成物が塗布された被塗布体が長時間高温に曝されることにより軟化、変形することを防止できる。その上、焼成後の灰分の残留量を著しく低減することができ、残留灰分により引き起こされていた種々の問題(例えば、導電性インクに使用した場合の電気特性の低下等)の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施例で得られた化合物(2-3)の1H-NMR測定結果を示す図である。
図2】実施例で得られた化合物(1-3)の1H-NMR測定結果を示す図である。
図3】実施例で得られた化合物(2-4)の1H-NMR測定結果を示す図である。
図4】実施例で得られた化合物(1-4)の1H-NMR測定結果を示す図である。
図5】実施例で得られた化合物(2-1)の1H-NMR測定結果を示す図である。
図6】実施例で得られた化合物(1-1)の1H-NMR測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[化合物(1)]
本発明の化合物(1)は、下記式(1)で表される。
【化7】
(式中、R1は炭素数10~25の1価の直鎖状脂肪族炭化水素基、R2、R3は同一又は異なって、炭素数2、4、6、若しくは8の2価の脂肪族炭化水素基、炭素数6の2価の脂環式炭化水素基、又は2価の芳香族炭化水素基を示し、R4は炭素数1~8の2価の脂肪族炭化水素基を示し、R5、R6は同一又は異なって、炭素数1~3の1価の脂肪族炭化水素基、又はヒドロキシアルキルエーテル基を示す。L1~L3はアミド結合を示し、L1とL3が-CONH-である場合、L2は-NHCO-であり、L1とL3が-NHCO-である場合、L2は-CONH-である)
【0020】
1は炭素数10~25の1価の直鎖状脂肪族炭化水素基であり、例えば、デシル基、ラウリル基、ミリスチル基、ペンタデシル基、ステアリル基、パルミチル基、ノナデシル基、エイコシル基、ベヘニル基等の直鎖状アルキル基;デセニル基、ペンタデセニル基、オレイル基、エイコセニル基等の直鎖状アルケニル基;ペンタデシニル基、オクタデシニル基、ノナデシニル基等の直鎖状アルキニル基が挙げられる。
【0021】
1としては、なかでも、流動性有機物質の増粘効果に優れ、且つ、低い温度で焼成しても灰分の残存を極めて低く抑制することができる点で、炭素数14~25の1価の直鎖状脂肪族炭化水素基(とりわけ好ましくは、炭素数14~25のアルキル基)が好ましく、特に好ましくは炭素数18~21の1価の直鎖状脂肪族炭化水素基(とりわけ好ましくは、炭素数18~21のアルキル基)である。
【0022】
2、R3における炭素数2、4、6、若しくは8の2価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、エチレン基、n-ブチレン基、n-ヘキシレン基、n-オクチレン基が挙げられる。
【0023】
2、R3における炭素数6の2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、1,4-シクロヘキシレン基、1,3-シクロヘキシレン基、1,2-シクロヘキシレン基が挙げられる。
【0024】
2、R3における2価の芳香族炭化水素基としては、例えば、1,4-フェニレン基、1,3-フェニレン基、1,2-フェニレン基等の炭素数6~10のアリーレン基が挙げられる。
【0025】
2、R3としては、なかでも、流動性有機物質の増粘効果に優れる点で、炭素数2、4、6、若しくは8の2価の脂肪族炭化水素基(とりわけ好ましくは、直鎖状アルキレン基)が好ましく、より好ましくは炭素数2、4、若しくは6の2価の脂肪族炭化水素基(とりわけ好ましくは、直鎖状アルキレン基)、特に好ましくは炭素数2若しくは4の2価の脂肪族炭化水素基(とりわけ好ましくは、直鎖状アルキレン基)、最も好ましくは炭素数2の2価の脂肪族炭化水素基(とりわけ好ましくは、直鎖状アルキレン基)である。
【0026】
4は炭素数1~8の2価の脂肪族炭化水素基を示し、なかでも、流動性有機物質の増粘効果に優れる点で、直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基が好ましく、特に好ましくは直鎖状アルキレン基である。
【0027】
また、R4は炭素数1~8の2価の脂肪族炭化水素基を示し、なかでも、流動性有機物質の増粘効果に優れる点で、より好ましくは炭素数1~7の2価の脂肪族炭化水素基、特に好ましくは炭素数3~7の2価の脂肪族炭化水素基、最も好ましくは炭素数3~6の2価の脂肪族炭化水素基、とりわけ好ましくは炭素数3~5の2価の脂肪族炭化水素基である。
【0028】
従って、R4としては、炭素数1~8の直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基が好ましく、より好ましくは炭素数1~7の直鎖状アルキレン基、特に好ましくは炭素数3~7の直鎖状アルキレン基、最も好ましくは炭素数3~6の直鎖状アルキレン基、とりわけ好ましくは炭素数3~5の直鎖状アルキレン基である。
【0029】
5、R6における炭素数1~3の1価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等の炭素数1~3の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基;ビニル基、1-メチルビニル基、2-プロペニル基等の炭素数2~3の直鎖状又は分岐鎖状アルケニル基;エチニル基、プロピニル基等の炭素数2~3の直鎖状又は分岐鎖状アルキニル基等が挙げられる。
【0030】
5、R6におけるヒドロキシアルキルエーテル基としては、例えば、2-ヒドロキシエトキシ基、2-ヒドロキシプロポキシ基、2,3-ジヒドロキシプロポキシ基等の、モノ又はジ(ヒドロキシ)C1-3アルキルエーテル基が挙げられる。
【0031】
5、R6としては、なかでも、同一又は異なって、炭素数1~3の1価の脂肪族炭化水素基が好ましく、より好ましくは炭素数1~3の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基、特に好ましくは炭素数1~3の直鎖状アルキル基、とりわけ好ましくはメチル基である。
【0032】
式(1)で表される化合物としては、なかでも、下記式(1-1)~(1-9)で表される化合物が、流動性有機物質の溶解性に優れる点で好ましい。また前記化合物は流動性有機物質に、前記流動性有機物質が透明の場合はその透明性を維持しつつ、増粘安定化することができる点でも好ましい。
【化8】
【0033】
[化合物(2)]
本発明の化合物(2)は下記式(2)で表される。化合物(2)は上記化合物(1)の前駆体として有用である。
【化9】
(式中、R1は炭素数10~25の1価の直鎖状脂肪族炭化水素基、R2、R3は同一又は異なって、炭素数2、4、6、若しくは8の2価の脂肪族炭化水素基、炭素数6の2価の脂環式炭化水素基、又は2価の芳香族炭化水素基を示し、R4は炭素数1~8の2価の脂肪族炭化水素基を示し、R5、R6は同一又は異なって、炭素数1~3の1価の脂肪族炭化水素基、又はヒドロキシアルキルエーテル基を示す。L1~L3はアミド結合を示し、L1とL3が-CONH-である場合、L2は-NHCO-であり、L1とL3が-NHCO-である場合、L2は-CONH-である)
【0034】
上記式(2)中のR1~R6、L1~L3は上記に同じ。
【0035】
式(2)で表される化合物としては、なかでも、下記式(2-1)~(2-9)で表される化合物が好ましい。
【化10】
【0036】
[化合物(1)、化合物(2)の製造方法]
上記化合物(2)は、下記式(3)で表される化合物(以後、「化合物(3)」と称する場合がある)と、下記式(4)で表される化合物(以後、「化合物(4)」と称する場合がある)を反応させて、若しくは下記式(3’)で表される化合物(以後、「化合物(3’)」と称する場合がある)と、下記式(4’)で表される化合物(以後、「化合物(4’)」と称する場合がある)を反応させることで製造することができる。
【化11】
(式中、R1は炭素数10~25の1価の直鎖状脂肪族炭化水素基、R2、R3は同一又は異なって、炭素数2、4、6、若しくは8の2価の脂肪族炭化水素基、炭素数6の2価の脂環式炭化水素基、又は2価の芳香族炭化水素基を示し、R4は炭素数1~8の2価の脂肪族炭化水素基を示し、R5、R6は同一又は異なって、炭素数1~3の1価の脂肪族炭化水素基、又はヒドロキシアルキルエーテル基を示す。L1~L3はアミド結合を示し、L1とL3が-CONH-である場合、L2は-NHCO-であり、L1とL3が-NHCO-である場合、L2は-CONH-である。R7は水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を示す。尚、式(3)において、OR7はL2を構成する水素原子と脱水縮合又は脱アルコール縮合して、環を形成していてもよい)
【0037】
上記式中のR1~R6、L1~L2は上記に同じ。
【0038】
上記式(3)、(4’)中のR7における炭素数1~3のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。
【0039】
式(3)中のOR7がL2を構成する水素原子と脱水縮合又は脱アルコール縮合して、形成する環としては、例えば、ピロリジン-2,5-ジオン環、ピペリジン-2,6-ジオン環等が挙げられる。
【0040】
化合物(4)の使用量は、化合物(3)1molに対して1mol以上であれば良く、過剰量使用することもできる。
【0041】
化合物(4’)の使用量は、化合物(3’)1molに対して1mol以上であれば良く、過剰量使用することもできる。
【0042】
化合物(3)と化合物(4)、若しくは化合物(3’)と化合物(4’)の反応は、例えば100~120℃の温度で10~20時間撹拌することにより行うことができる。
【0043】
反応雰囲気としては反応を阻害しない限り特に限定されず、例えば、空気雰囲気、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等の何れであってもよい。また、反応はバッチ式、セミバッチ式、連続式等の何れの方法でも行うことができる。
【0044】
反応終了後、得られた反応生成物は、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、吸着、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。
【0045】
また、化合物(1)は、上記方法で化合物(2)を得、得られた化合物(2)を酸化することにより製造することができる。
【0046】
上記方法で得られた化合物(2)の酸化に使用する酸化剤としては、例えば、過酸化水素を使用することができる。前記過酸化水素としては、純粋な過酸化水素を用いてもよいが、取扱性の点から、通常、適当な溶媒(例えば、水)で希釈して用いられる(例えば、5~70重量%過酸化水素水)。過酸化水素の使用量は、化合物(2)1molに対して、例えば0.1~10mol程度である。
【0047】
酸化反応は、例えば30~70℃の温度で3~20時間撹拌することにより行うことができる。
【0048】
化合物(2)の酸化反応は、溶媒の存在下又は無溶媒下で行われる。前記溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、1,2-ジメトキシエタン、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒;酢酸ブチル、酢酸エチル等のエステル系溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の炭化水素系溶媒;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0049】
反応終了後、得られた反応生成物は、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、吸着、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。
【0050】
上記反応の原料となる化合物(3)として、例えば下記式(3-1)で表される化合物は、下記方法で製造することができる。尚、下記式中のR1、R2、R3、R7は上記に同じ。また、式(3a)中のR7と式(3d)中の2つのR7は、それぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。更に、式(3d)で表される化合物は、当該式中の2つのCOOR7が脱水縮合して酸無水物を形成していてもよい。
【化12】
【0051】
また、上記反応の原料となる化合物(3’)として、例えば下記式(3’-1)で表される化合物は、下記方法で製造することができる。尚、下記式中のR1、R2、R3、R7は上記に同じ。式(3b’)中の2つのR7は、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、式(3b’)で表される化合物は、当該式中の2つのCOOR7が脱水縮合して酸無水物を形成していてもよい。
【化13】
【0052】
[1]の工程は、式(3a)で表される化合物と式(3b)で表される化合物を反応させて、式(3c)で表される化合物を得る工程である。式(3b)で表される化合物の使用量は、式(3a)で表される化合物1molに対して1mol以上であれば良く、過剰量使用することもできる。この反応の反応温度は、例えば80~150℃であり、反応時間は、例えば1~24時間程度である。
【0053】
[2]の工程は、式(3c)で表される化合物と式(3d)で表される化合物を反応させて、式(3-1)で表される化合物を得る工程である。式(3d)で表される化合物の使用量は、式(3c)で表される化合物1molに対して1mol以上であれば良く、好ましくは1~3molである。この反応の反応温度は、例えば80~150℃であり、反応時間は、例えば0.5~10時間程度である。この反応が進行すると、水が生成する。そのため、脱水剤(例えば、無水酢酸等)を使用して水を除去しつつ反応を行うことが、反応の進行を促進する上で好ましい。
【0054】
[2]の反応は溶媒の存在下で反応を行うことが好ましい。前記溶媒としては、例えば、ペンタフルオロフェノール、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、o-ジクロロベンゼン等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0055】
また、[2]の反応は、必要に応じてトリエチルアミン、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン等の塩基の存在下で行うことができる。
【0056】
[3]の工程は、式(3a’)で表される化合物と式(3b’)で表される化合物を反応させて、式(3c’)で表される化合物を得る工程である。[3]の反応は、上記[2]の反応に準じた条件で行うことができる。
【0057】
[4]の工程は、式(3c’)で表される化合物と式(3d’)で表される化合物を反応させて、式(3’-1)で表される化合物を得る工程である。[4]の反応は、上記[1]の反応に準じた条件で行うことができる。
【0058】
各工程の反応終了後、得られた反応生成物は、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、吸着、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。
【0059】
[電子デバイス製造用溶剤組成物]
本発明の電子デバイス製造用溶剤組成物は、上記化合物(1)と流動性有機物質との相溶物を含む組成物であり、上記化合物(1)によって流動性有機物質が増粘され、組成が均一に安定化された組成物である。
【0060】
原料としての流動性有機物質は、レオメーターによる粘度[25℃、ずり速度1s-1における粘度(η)]が例えば0.5Pa・s未満の有機物質である。このような流動性有機物質としては、例えば、炭化水素油(例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、イソドデカン、ベンゼン、トルエン、ポリαオレフィン、流動パラフィン等)、エーテル類(例えば、テトラヒドロフラン等)、ハロゲン化炭化水素(例えば、四塩化炭素、クロロベンゼン等)、石油成分(例えば、ケロシン、ガソリン、軽油、重油等)、動植物油(例えば、ヒマワリ油、オリーブ油、大豆油、コーン油、ヒマシ油、牛脂、ホホバ油、スクワラン等)、シリコーン油(例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等)、エステル類(例えば、オレイン酸オクチルドデシル、オクタン酸セチル、エチルヘキサン酸セチル、グリセリルトリイソオクタネート、ネオペンチルグリコールジイソオクタネート等)、芳香族カルボン酸、ピリジン、アルコール類(例えば、α-ターピネオール、ジヒドロターピネオール、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール)等を挙げることができる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0061】
前記電子デバイス製造用溶剤組成物は、化合物(1)と流動性有機物質を相溶させる工程を経て製造することができる。より詳細には、流動性有機物質の全量と化合物(1)を混合して加温し、相溶させた後、冷却することにより製造することができる。また、流動性有機物質の一部に化合物(1)を混合して、加温、相溶させた後、冷却して、電子デバイス製造用溶剤組成物を製造し、これを残りの流動性有機物質に混合する方法でも製造することができる。
【0062】
相溶の際の温度は、化合物(1)と流動性有機物質の種類によって適宜選択されるものであり、化合物(1)と流動性有機物質が相溶する温度であれば特に制限されないが、100℃を超えないことが好ましく、流動性有機物質の沸点が100℃以下の場合には沸点程度が好ましい。
【0063】
相溶後の冷却は、室温(例えば、25℃)以下にまで冷却することができればよく、室温で徐々に冷却してもよいし、氷冷等により急速に冷却してもよい。
【0064】
化合物(1)の使用量は、流動性有機物質の種類にもよるが、流動性有機物質1000重量部に対して、例えば0.1~100重量部、好ましくは0.5~80重量部、特に好ましくは1~60重量部、最も好ましくは1~30重量部である。化合物(1)を上記範囲で使用することにより、流動性有機物質が増粘され、組成が均一に安定化された組成物(若しくは、相溶物)が得られる。
【0065】
本発明の電子デバイス製造用溶剤組成物は、化合物(1)と流動性有機物質との相溶物以外にも本発明の効果を損なわない範囲内で他の成分を含有していてもよいが、電子デバイス製造用溶剤組成物全量における、前記相溶物の含有量(若しくは、化合物(1)と流動性有機物質の総量)は、例えば30重量%以上、好ましくは50重量%以上、特に好ましくは60重量%以上、最も好ましくは70重量%以上、とりわけ好ましくは90重量%以上である。尚、上限は100重量%である。すなわち、本発明の電子デバイス製造用溶剤組成物は、実質的に他の成分を含有せず、化合物(1)と流動性有機物質との相溶物のみからなるものであってもよい。他の成分としては、用途に応じて適宜調整することができる。
【0066】
そして、本発明の電子デバイス製造用溶剤組成物のレオメーターによる粘度[25℃、ずり速度0.3s-1における粘度(η)]は、10Pa・s以上(例えば10~100Pa・s)の範囲であることが、塗布された組成物がダレる若しくは流れるのを抑制することができ、塗布精度を向上することができる点で好ましい。
【0067】
また、本発明の電子デバイス製造用溶剤組成物のレオメーターによる粘度[25℃、ずり速度0.1s-1における粘度(η)]は、10Pa・s以上(例えば10~100Pa・s)の範囲であることが、塗布された組成物がダレる若しくは流れるのを抑制することができ、塗布精度を向上することができる点で好ましい。
【0068】
本発明の電子デバイス製造用溶剤組成物はシェアシニング性を有し、粘度比[レオメーターによる25℃、ずり速度1s-1の時の粘度/レオメーターによるずり速度10s-1の時の粘度]は、例えば1.5超、好ましくは2以上、特に好ましくは3以上である。尚、上限は例えば10、好ましくは8である。そのため、塗布時は粘度を低下させることができ、例えば、印刷機等を利用して塗布する場合は吐出性に優れる。その上、塗布後は急激に粘度を増すことにより、塗布された組成物がダレるのを抑制することができ、塗布精度を向上することができる。
【0069】
本発明の電子デバイス製造用溶剤組成物は上記の通りの適度な粘度及びシェアシニング性を有するため、バインダー樹脂(例えば、エチルセルロース樹脂、アルキルセルロース樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、アクリル樹脂等の分子量10000以上の高分子化合物)を添加する必要がなく、添加する場合であっても、添加量は、組成物全量(100重量%)の例えば10重量%以下であり、好ましくは5重量%以下である。バインダー樹脂の添加量が上記範囲を上回ると、焼成によって生じるバインダー樹脂由来の灰分の残留量が増し、残留灰分が原因の種々の問題(例えば、導電性インクに使用した場合の電気特性の低下)の発生を抑制することが困難となる傾向がある。
【0070】
更に、本発明の電子デバイス製造用溶剤組成物は熱分解性に優れ、容易に低分子量化する。そのため、本発明の電子デバイス製造用溶剤組成物はエチルセルロース等のバインダー樹脂により粘度が付与された溶剤組成物に比べて低温(例えば100~350℃、好ましくは150~300℃、特に好ましくは150~250℃)で焼成することができ、焼成工程における被塗布体の軟化、変形を防止することができる。
【0071】
本発明の電子デバイス製造用溶剤組成物は上記特性を兼ね備えるため、例えば、コンデンサ、インダクタ、バリスタ、サーミスタ、スピーカ、アクチュエータ、アンテナ、固体酸化物燃料電池(SOFC)等(特に、積層セラミックコンデンサ)の電子デバイス製造において、配線及び/又は電極を製造するためのインクの溶剤として有用である。また、前記電子デバイス製造において、接着剤の溶剤として特に有用である。
【実施例
【0072】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0073】
実施例1<化合物(1-3)の製造>
ドコサン酸メチル(20.0g、56.4mmol)およびエチレンジアミン(16.9g、281mmol)を110℃で18時間撹拌し、反応物をメタノールで洗浄後、濾過した。濾液を溶媒留去し、得られた残渣に対しヘキサンを用いて再結晶により精製した。N-ドコサノイルエチレンジアミンを白色結晶として得た(収率65%、14.0g、36.7mmol)。
【0074】
N-ジメチルホルムアミド(40ml)溶液に、N-ドコサノイルエチレンジアミン(12.0g、31.4mmol)およびトリエチルアミン(6.35g、62.8mmol)を無水コハク酸(3.45g、34.5mmol)に10分かけて加え、100℃で15分間撹拌した。無水コハク酸を溶解後、反応粗液に酢酸無水物(4.81g、47.1mmol)を10分かけて滴下し、100℃で1時間撹拌した。反応混合物を水(200ml)に注ぎ、沈殿物を濾過し、水で洗浄した。沈殿物を精製し2-プロパノールを用いた再結晶により精製した。N-ドコサノイルアミノエチルスクシンイミドを白色結晶性粉末として得た(収率92%、13.4g、28.9mmol)。
【0075】
N-ドコサノイルアミノエチルスクシンイミド(4.00g、8.60mmol)およびN,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミン(2.63g、25.8mmol)を120℃で18時間撹拌した。反応混合物をメタノールに注ぎ、沈殿物を濾過し、メタノールで洗浄した。得られた固形物をアセトン、メタノールを用いて再結晶により精製した。下記式(2-3)で表される、N-(ドコサノイルアミノエチルアミノスクシナモイルアミノプロピル)-N,N-ジメチルアミン(化合物(2-3))を白色結晶性粉末として得た(収率94%、4.58g、8.08mmol)。得られた化合物の1H-NMR(CDCl3)測定結果を図1に示す。
【0076】
【化14】
【0077】
N-(ドコサノイルアミノエチルアミノスクシナモイルアミノプロピル)-N,N-ジメチルアミン(4.00g、7.06mmol)、35%過酸化水素水(2.06ml)および、2-プロパノール(10ml)を60℃で5時間撹拌した。反応液に、パラジウムカーボン(約10mg)加え室温で18時間撹拌した。反応液を濾過し、溶媒を留去させた後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、2-プロパノール/メタノール)で精製した。下記式(1-3)で表される、N-(ドコサノイルアミノエチルアミノスクシナモイルアミノプロピル)-N,N-ジメチルアミンオキシド(化合物(1-3))を白色固体として得た(収率69%、2.84g、4.87mmol)。得られた化合物の1H-NMR(CDCl3)測定結果を図2に示す。
【0078】
【化15】
【0079】
実施例2<化合物(1-4)の製造>
実施例1と同様の方法でN-ドコサノイルアミノエチルスクシンイミドを得た。
【0080】
得られたN-ドコサノイルアミノエチルスクシンイミド(8.00g、17.2mmol)およびヘキサメチレンジアミン(10.0g、86.1mmol)を120℃で18時間撹拌した。反応混合物をメタノールに注ぎ、沈殿物を濾過し、メタノールで洗浄した。得られた固形物をアセトニトリル、メタノールを用いて再結晶により精製した。N-(ドコサノイルアミノエチル)アミノスクシナモイルアミノヘキシルアミンを白色結晶性粉末として得た(収率69%6.91g、11.9mmol)。
【0081】
N-(ドコサノイルアミノエチル)アミノスクシナモイルアミノヘキシルアミン(3.25g、5.59mmol)、37%ホルムアルデヒド水溶液(2.73ml)およびギ酸(1.55g、33.7mmol)を2-プロパノール(15ml)に溶解し、100℃で4時間撹拌した。反応混合物を1M水酸化ナトリウム水溶液(20ml)に注ぎ結晶を濾過した。得られた結晶をメタノール、アセトンで再結晶し、下記式(2-4)で表される、N-(ドコサノイルアミノエチルアミノスクシナモイルアミノヘキシル)-N,N-ジメチルアミン(化合物(2-4))を白色固体として得た(収率89%、3.03g、4.98mmol)。得られた化合物の1H-NMR(CDCl3)測定結果を図3に示す。
【0082】
【化16】
【0083】
N-(ドコサノイルアミノエチルアミノスクシナモイルアミノヘキシル)-N,N-ジメチルアミン(2.80g、4.60mmol)、35%過酸化水素水(1.30ml)および、2-プロパノール(10ml)を60℃で5時間撹拌した。反応液に、パラジウムカーボン(約10mg)加え室温で18時間撹拌した。反応液を濾過し、溶媒を留去させた後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、2-プロパノール/メタノール)で精製した。下記式(1-4)で表される、N-(ドコサノイルアミノエチルアミノスクシナモイルアミノヘキシル)-N,N-ジメチルアミンオキシド(化合物(1-4))を白色固体として得た(収率74%、2.13g、3.40mmol)。得られた化合物の1H-NMR(CDCl3)測定結果を図4に示す。
【0084】
【化17】
【0085】
実施例3<化合物(1-1)の製造>
エイコサン酸メチル(18.0g、55.1mmol)およびエチレンジアミン(16.5g、276mmol)を110℃で18時間撹拌し、反応物をメタノールで洗浄後、濾過した。濾液を溶媒留去し、得られた残渣に対しヘキサンを用いて再結晶により精製した。N-エイコサノイルエチレンジアミンを白色結晶として得た(収率68%、13.3g、37.5mmol)。
【0086】
N-ジメチルホルムアミド(30ml)溶液に、N-エイコサノイルエチレンジアミン(10.0g、28.2mmol)およびトリエチルアミン(5.71g、56.4mmol)を無水コハク酸(3.10g、31.0mmol)に10分かけて加え、100℃で15分間撹拌した。無水コハク酸を溶解後、反応粗液に酢酸無水物(4.32g、42.3mmol)を10分かけて滴下し、100℃で1時間撹拌した。反応混合物を水(150ml)に注ぎ、沈殿物を濾過し、水で洗浄した。沈殿物を精製し2-プロパノールを用いた再結晶により精製した。N-エイコサノイルアミノエチルスクシンイミドを91%白色結晶性粉末として収量(11.2g、25.7mmol)を得た。
【0087】
N-エイコサノイルアミノエチルスクシンイミド(4.00g、9.16mmol)およびN,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミン(2.81g、27.5mmol)を120℃で18時間撹拌した。反応混合物をメタノールに注ぎ、沈殿物を濾過し、メタノールで洗浄した。得られた固形物をアセトン、メタノールを用いて再結晶により精製した。下記式(2-1)で表される、N-(エイコサノイルアミノエチルアミノスクシナモイルアミノプロピル)-N,N-ジメチルアミン(化合物(2-1))を白色結晶性粉末として得た(収率91%、4.49g、8.34mmol)。得られた化合物の1H-NMR(CDCl3)測定結果を図5に示す。
【0088】
【化18】
【0089】
N-(エイコサノイルアミノエチルアミノスクシナモイルアミノプロピル)-N,N-ジメチルアミン(4.00g、7.42mmol)、35%過酸化水素水(2.16ml)および、2-プロパノール(10ml)を60℃で5時間撹拌した。反応液に、パラジウムカーボン(約10mg)加え室温で18時間撹拌した。反応液を濾過し、溶媒を留去させた後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、2-プロパノール/メタノール)で精製した。下記式(1-1)で表される、N-(エイコサノイルアミノエチルアミノスクシナモイルアミノプロピル)-N,N-ジメチルアミンオキシド(化合物(1-1))を白色固体として得た(収率58%、2.39g、4.30mmol)。得られた化合物の1H-NMR(CDCl3)測定結果を図6に示す。
【0090】
【化19】
【0091】
実施例4<化合物(1-5)の製造>
ドコサン酸メチルに代えてオクタデカン酸メチルを使用した以外は実施例2と同様にして、下記式(2-5)で表される化合物を得、下記式(1-5)で表される化合物を得た。
【0092】
【化20】
【0093】
実施例5<化合物(1-6)の製造>
ドコサン酸メチルに代えてオクタデカン酸メチルを使用した以外は実施例1と同様にして、下記式(2-6)で表される化合物を得、下記式(1-6)で表される化合物を得た。
【0094】
【化21】
【0095】
実施例6<化合物(1-7)の製造>
ドコサン酸メチルに代えてパルミチン酸メチルを使用した以外は実施例2と同様にして、下記式(2-7)で表される化合物を得、下記式(1-7)で表される化合物を得た。
【0096】
【化22】
【0097】
実施例7<化合物(1-8)の製造>
ドコサン酸メチルに代えてパルミチン酸メチルを使用した以外は実施例1と同様にして、下記式(2-8)で表される化合物を得、下記式(1-8)で表される化合物を得た。
【0098】
【化23】
【0099】
実施例8(参考例とする)<化合物(1-9)の製造>
ドコサン酸メチルに代えてミリスチン酸メチルを使用した以外は実施例2と同様にして、下記式(2-9)で表される化合物を得、下記式(1-9)で表される化合物を得た。
【0100】
【化24】
【0101】
実施例9~16(実施例16は参考例とする)、比較例1~2<溶剤組成物の製造>
表1に示す各種流動性有機物質(1,3-ブタンジオール(1,3-BG)、α-ターピネオール(TPO))を試験管に1cm3ずつはかりとり、ここに増粘安定剤として上記実施例1~8で得られた化合物をそれぞれ10mg加えて混合し、100℃で加熱撹拌して流動性有機物質と増粘安定剤を相溶させ、25℃まで冷却して溶剤組成物を得た。尚、比較例では増粘安定剤としてエチルセルロース(EC:商品名「エトセルSTD200」、日新化成(株)製)を使用し、液温80℃で24時間加熱溶解し、25℃まで冷却して溶剤組成物を得た。
【0102】
得られた溶剤組成物の粘度はコーンプレートセンサー(直径60mmでコーン角1°、直径35mmでコーン角1°、2°、4°を使用)とペルチェ温度コントローラーを装着した粘度・粘弾性測定装置(レオメータ)(商品名「RheoStress600」、HAAKE社製)を用い、25℃条件下、定常流粘度測定モードにより、ずり速度を対数きざみで0.1~100s-1まで変化させて粘度を測定し、増粘効果(シェアシニング性、及び増粘性)を評価した。
【0103】
<シェアシニング性評価>
得られた溶剤組成物の[ずり速度1s-1の時の粘度/ずり速度10s-1の時の粘度]から、下記基準に従ってシェアシニング性を評価した。
1: 1.5以下
2: 1.5を超え、3.0以下
3: 3.0を超え、4.5以下
4: 4.5超
【0104】
<増粘性評価>
得られた溶剤組成物のずり速度0.1s-1の時の粘度から、下記基準に従って増粘性を評価した。
1: 5Pa・s以下
2: 5Pa・sを超え、10Pa・s以下
3: 10Pa・sを超え、50Pa・s以下
4: 50Pa・s超え
【0105】
また、実施例及び比較例で得られた溶剤組成物の250℃における灰分残存率を下記方法で測定した。
TG-DTAを用い、溶剤組成物各20mgを20℃から400℃まで10℃/分で昇温し、250℃における残留灰分量を測定して、溶剤組成物全量に対する残留灰分量の割合(=灰分残存率)を算出した。
【0106】
上記結果を下記表にまとめて示す。
【表1】
【0107】
上記表1より、本発明の溶剤組成物は、適度な粘度とシェアシニング性を有しており、灰分残存率が非常に低いことが確認できた。一方、比較例の溶剤組成物は、粘度が低く、シェアシニング性に乏しく、灰分残存率が高かった。
【0108】
以上のまとめとして、本発明の構成及びそのバリエーションを以下に付記する。
[1] 式(1)で表される化合物。
[2] 式(1)中のR2、R3は同一又は異なって、炭素数2、4、6、若しくは8の2価の脂肪族炭化水素基である、[1]に記載の化合物。
[3] 式(1)中のR2、R3は同一又は異なって、炭素数2、4、6、若しくは8の直鎖状アルキレン基である、[1]に記載の化合物。
[4] 式(1)中のR2、R3は同一又は異なって、炭素数2若しくは4の2価の脂肪族炭化水素基である、[1]に記載の化合物。
[5] 式(1)中のR2、R3は同一又は異なって、炭素数2若しくは4の直鎖状アルキレン基である、[1]に記載の化合物。
[6] 式(1)中のR2、R3は同一又は異なって、炭素数2の2価の脂肪族炭化水素基である、[1]に記載の化合物。
[7] 式(1)中のR2、R3は同一に、炭素数2の直鎖状アルキレン基である、[1]に記載の化合物。
[8] 式(1)中のR4は炭素数1~8の直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基である、[1]~[7]の何れか1つに記載の化合物。
[9] 式(1)中のR4は炭素数1~7の直鎖状アルキレン基である、[1]~[7]の何れか1つに記載の化合物。
[10] 式(1)中のR4は炭素数3~7の直鎖状アルキレン基である、[1]~[7]の何れか1つに記載の化合物。
[11] 式(1)中のR4は炭素数3~6の直鎖状アルキレン基である、[1]~[7]の何れか1つに記載の化合物。
[12] 式(1)中のR4は炭素数3~5の直鎖状アルキレン基である、[1]~[7]の何れか1つに記載の化合物。
[13] 式(1)中のR5、R6は同一又は異なって、炭素数1~3の1価の脂肪族炭化水素基である、[1]~[12]の何れか1つに記載の化合物。
[14] 式(1)中のR5、R6は同一又は異なって、炭素数1~3の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基である、[1]~[12]の何れか1つに記載の化合物。
[15] 式(1)中のR5、R6は同一又は異なって、炭素数1~3の直鎖状アルキル基である、[1]~[12]の何れか1つに記載の化合物。
[16] 式(1)中のR5、R6は同一にメチル基である、[1]~[12]の何れか1つに記載の化合物。
[17] 式(1-1)~(1-9)で表される化合物から選択される少なくとも1種の化合物である、[1]~[16]の何れか1つに記載の化合物。
[18] 下記式(2)で表される化合物。
[19] 式(2-1)~(2-9)で表される化合物から選択される少なくとも1種の化合物である、[18]に記載の化合物。
[20] 式(3)で表される化合物と、式(4)で表される化合物を反応させて、若しくは式(3’)で表される化合物と、式(4’)で表される化合物を反応させて、式(2)で表される化合物を得る、式(2)で表される化合物の製造方法。
[21] 式(2)で表される化合物を酸化して、式(1)で表される化合物を得る、式(1)で表される化合物の製造方法。
[22] 式(2)で表される化合物1molに対して、過酸化水素を0.1~10mol反応させて酸化する、[21]に記載の式(1)で表される化合物の製造方法。
[23] [1]~[17]の何れか1つに記載の化合物と流動性有機物質との相溶物を含む溶剤組成物。
[24] 流動性有機物質の、レオメーターによる、25℃、ずり速度1s-1における粘度が0.5Pa・s未満である、[23]に記載の溶剤組成物。
[25] 流動性有機物質が、炭化水素油、エーテル、ハロゲン化炭化水素、石油成分、動植物油、シリコーン油、エステル、芳香族カルボン酸、ピリジン、及びアルコールから選択される少なくとも1種である、[23]又は[24]に記載の溶剤組成物。
[26] レオメーターによる、25℃、ずり速度0.3s-1における粘度が10Pa・s以上である、[23]~[25]の何れか1つに記載の溶剤組成物。
[27] レオメーターによる、25℃、ずり速度0.1s-1における粘度が10Pa・s以上である、[23]~[26]の何れか1つに記載の溶剤組成物。
[28] 粘度比[レオメーターによる25℃、ずり速度1s-1の時の粘度/レオメーターによるずり速度10s-1の時の粘度]が1.5超である、[23]~[27]の何れか1つに記載の溶剤組成物。
[29] エチルセルロース樹脂、アルキルセルロース樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、及びアクリル樹脂から選択される少なくとも種の高分子化合物の含有量が、溶剤組成物全量の10重量%以下である、[23]~[28]の何れか1つに記載の溶剤組成物。
[30] 高分子化合物が、分子量10000以上の高分子化合物である、[29]に記載の溶剤組成物。
[31] 分子量10000以上の高分子化合物の含有量が、溶剤組成物全量の10重量%以下である、[23]~[28]の何れか1つに記載の溶剤組成物。
[32] 電子デバイス製造用である、[23]~[31]の何れか1つに記載の溶剤組成物。
[33] 積層セラミックコンデンサ製造用である、[23]~[31]の何れか1つに記載の溶剤組成物。
[34] [23]~[33]の何れか1つに記載の溶剤組成物を含むインク。
[35] [23]~[33]の何れか1つに記載の溶剤組成物を含む電子デバイス製造用インク。
[36] [23]~[33]の何れか1つに記載の溶剤組成物を含む導電性インク。
[37] [34]~[36]の何れか1つに記載のインクを使用して電子デバイスの配線及び/又は電極を製造する工程を有する、電子デバイス製造方法。
[38] [23]~[33]の何れか1つに記載の溶剤組成物を含む、電子デバイス製造用接着剤。
[39] [38]に記載の接着剤を使用して電子デバイスを製造する、電子デバイス製造方法。
[40] [1]~[17]の何れか1つに記載の化合物と流動性有機物質とを相溶させる工程を経て溶剤組成物を得る、溶剤組成物の製造方法。
[41] 流動性有機物質1000重量部に対して、[1]~[17]の何れか1つに記載の化合物を0.1~100重量部の割合で相溶させる、[40]に記載の溶剤組成物の製造方法。
[42] 式(1)で表される化合物と流動性有機物質とを相溶させる工程を経て、[23]~[33]の何れか1つに記載の溶剤組成物を得る、溶剤組成物の製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の式(1)で表される化合物は、塗料、接着剤、インク、潤滑油、医薬品、医薬部外品、化粧品等の増粘安定剤として好適に使用することができる。
また、前記式(1)で表される化合物を含む溶剤組成物は、適度な粘度とシェアシニング性とを有する。そのため、液ダレしにくく、良好な塗布性を有する。更に、低温で焼成することができ、焼成後の灰分の残留量を著しく低減することができる。そのため、前記溶剤組成物は、電子デバイスを製造するためのインクの溶剤、或いは電子デバイス製造用接着剤の溶剤として特に有用である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6