(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】圧着端子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01R 43/16 20060101AFI20230501BHJP
H01R 4/18 20060101ALN20230501BHJP
【FI】
H01R43/16
H01R4/18 A
(21)【出願番号】P 2021509563
(86)(22)【出願日】2020-03-26
(86)【国際出願番号】 JP2020013534
(87)【国際公開番号】W WO2020196706
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-02-04
(31)【優先権主張番号】P 2019063689
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000108742
【氏名又は名称】タツタ電線株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】509295631
【氏名又は名称】株式会社岩沼精工
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】中園 正司
(72)【発明者】
【氏名】浦下 清貴
(72)【発明者】
【氏名】千葉 厚治
(72)【発明者】
【氏名】堀 浩吉
【審査官】濱田 莉菜子
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-538423(JP,A)
【文献】特開2014-160577(JP,A)
【文献】特開2017-84558(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 43/027-43/28
H01R 4/00-4/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯線と該芯線を被覆する絶縁部材とを有する電線において前記芯線が露出している露出部を保持可能な芯線保持部と、前記芯線保持部と隣り合う位置に配置され、且つ前記電線の前記露出部と隣接する位置において前記芯線が前記絶縁部材に被覆されている被覆部を該被覆部の周方向に囲むように保持可能な被覆部保持部と、を有する電線保持部を備える圧着端子の製造方法であって、
前記被覆部保持部が前記被覆部を保持したときに該被覆部に押し付けられる該被覆部保持部の対向面に、前記周方向に沿って延びる係止部であって、該対向面における当該係止部以外の領域に対して突出している凸部と、該凸部に隣接する位置において前記領域に対して凹んでいる凹部と、を有する係止部が形成される工程を備え、
該係止部が形成される工程では、前記係止部が形成される前の平らな状態の被覆部保持部の前記対向面に対して、該対向面に押し当てられた状態の加工刃を該被覆部保持部における前記周方向に対応する方向に沿って移動させることにより、前記凹部が形成されつつ、該被覆部保持部における前記凹部の形成される領域にあった部位が前記加工刃の移動に伴って該凹部と隣接する位置に押し退けられることで前記凸部も形成される、圧着端子の製造方法。
【請求項2】
前記平らな状態の被覆部保持部は、前記周方向に対応する方向の端縁に外側を向いた端面を有し、
前記係止部が形成される工程では、前記加工刃を、前記端面又は該端面と前記対向面とによって構成される角部から当てて前記周方向に対応する方向に沿って移動させる、請求項
1に記載の圧着端子の製造方法。
【請求項3】
前記加工刃における少なくとも前記対向面に押し当てられる部位は、移動方向に対して上り勾配となるように延びている、請求項
1又は2に記載の圧着端子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、日本国特願2019-063689号の優先権を主張し、日本国特願2019-063689号の内容は、引用によって本願明細書の記載に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、電線を保持したときの電線保持部における引張強度を向上させた圧着端子、前記圧着端子付き電線、及び前記圧着端子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
従来から、電線を保持する圧着接続部を備えた端子が知られている(特許文献1参照)。具体的に、この端子は、
図19に示すように、電気接続部810と、圧着接続部820と、を備えている。
【0004】
圧着接続部820は、電気接続部810側から順に、導体圧着部830と、外被圧着部840と、を有している。
【0005】
導体圧着部830は、基底部831と、基底部831の両側部に形成された一対の導体圧着片832と、を有している。導体圧着片832は、芯線901を挟むように基底部831から延設されている。導体圧着部830は、一対の導体圧着片832を内側へ向けて湾曲させることにより、電線900の芯線901に圧着される(
図20参照)。これにより、端子800が電線900の芯線901と導通接続される。
【0006】
外被圧着部840は、基底部841と、基底部841の両側部に形成された一対の外被圧着片842と、を有している。外被圧着部840の基底部841は、導体圧着部830の基底部831から延びている。外被圧着片842は、基底部841から電線900の絶縁被覆部分902を挟むように延設されている。外被圧着部840は、一対の外被圧着片842を内側へ向けて湾曲させることにより、電線900の絶縁被覆部分902に圧着され且つ固定される(
図20参照)。
【0007】
上記の端子800が取り付けられた電線900では、使用状態や使用環境によって電線900の圧着接続部820に保持されている部位に負荷や応力が集中する場合がある。このため、近年、電線900に取り付けられる端子800では、圧着接続部820における引張強度の向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、電線を保持したときの電線保持部における引張強度を向上させた圧着端子、前記圧着端子付き電線、及び前記圧着端子の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る圧着端子は、
芯線と該芯線を被覆する絶縁部材とを有する電線を保持可能な電線保持部を備え、
前記電線保持部は、
前記電線において前記芯線が露出している露出部を保持可能な芯線保持部と、
前記芯線保持部と隣り合う位置に配置され、且つ、前記電線における前記露出部と隣接する位置において前記芯線が前記絶縁部材に被覆されている被覆部を該被覆部の周方向に囲むように保持可能な被覆部保持部と、を有し、
前記被覆部保持部は、前記被覆部を保持したときに該被覆部に押し付けられる対向面において前記周方向に沿って延びる係止部を有し、
前記係止部は、前記対向面における当該係止部以外の領域に対して突出している凸部と、該凸部に隣接する位置において前記領域に対して凹んでいる凹部と、を有する。
【0011】
前記圧着端子では、
前記凹部は、前記凸部の芯線保持部側において該凸部と隣接していてもよい。
【0012】
また、前記圧着端子では、
前記対向面と直交し且つ前記芯線保持部と前記被覆部保持部とが並ぶ方向に延びる断面において、前記凹部の内側領域の断面積は、前記凸部の断面積より大きいことが好ましい。
【0013】
また、前記圧着端子では、
前記凹部の内側領域の断面積に対する前記凸部の断面積の比は、80%以上且つ90%未満であってもよい。
【0014】
また、本発明に係る圧着端子付き電線は、
上記のいずれかの圧着端子と、
芯線と該芯線を被覆する絶縁部材とを有する電線と、を有し、
前記電線は、前記芯線が露出する露出部を有し、
前記圧着端子の前記電線保持部では、前記芯線保持部が前記電線の前記露出部を保持すると共に、前記被覆部保持部が前記電線における前記露出部と隣接した位置で前記芯線が前記絶縁部材によって被覆されている被覆部を保持する。
【0015】
また、前記圧着端子付き電線では、
前記電線の前記芯線に対する前記絶縁部材の密着力は、5N以下であってもよい。
【0016】
また、本発明に係る圧着端子の製造方法は、
芯線と該芯線を被覆する絶縁部材とを有する電線において前記芯線が露出している露出部を保持可能な芯線保持部と、前記芯線保持部と隣り合う位置に配置され、且つ前記電線の前記露出部と隣接する位置において前記芯線が前記絶縁部材に被覆されている被覆部を該被覆部の周方向に囲むように保持可能な被覆部保持部と、を有する電線保持部を備える圧着端子の製造方法であって、
前記被覆部保持部が前記被覆部を保持したときに該被覆部に押し付けられる該被覆部保持部の対向面に、前記周方向に沿って延びる係止部であって、該対向面における当該係止部以外の領域に対して突出している凸部と、該凸部に隣接する位置において前記領域に対して凹んでいる凹部と、を有する係止部が形成される工程を備え、
該係止部が形成される工程では、前記係止部が形成される前の平らな状態の被覆部保持部の前記対向面に対して、該対向面に押し当てられた状態の加工刃を該被覆部保持部における前記周方向に対応する方向に沿って移動させることにより、前記凹部が形成されつつ、該被覆部保持部における前記凹部の形成される領域にあった部位が前記加工刃の移動に伴って該凹部と隣接する位置に押し退けられることで前記凸部も形成される。
【0017】
また、前記圧着端子の製造方法では、
前記平らな状態の被覆部保持部は、前記周方向に対応する方向の端縁に外側を向いた端面を有し、
前記係止部が形成される工程では、前記加工刃を、前記端面又は該端面と前記対向面とによって構成される角部から当てて前記周方向に対応する方向に沿って移動させてもよい。
【0018】
また、前記圧着端子の製造方法では、
前記加工刃における少なくとも前記対向面に押し当てられる部位は、移動方向に対して上り勾配となるように延びていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る圧着端子の斜視図である。
【
図2】
図2は、前記圧着端子の電線保持部の構成を説明するための図である。
【
図5】
図5は、前記電線保持部が電線を保持した状態を示す図である。
【
図6】
図6は、圧着端子の製造装置を含むプレス装置の模式図である。
【
図7】
図7は、
図6においてVIIで示す位置の拡大断面図である。
【
図8】
図8は、導電性を有する帯状の部材から圧着端子が形成される工程を説明するための図である。
【
図9】
図9は、可動部材を進行方向と直交する方向から見た図である。
【
図11】
図11は、加工刃が係止部を形成する状態を説明するための図である。
【
図12】
図12は、各加工刃が被覆部保持部の内側面に押し付けられている状態を示す断面図である。
【
図13】
図13は、被覆部保持部が電線保持部を保持した状態を説明するための模式断面図である。
【
図14】
図14は、他実施形態に係る被覆部保持部の断面図である。
【
図15】
図15は、他実施形態に係る被覆部保持部が電線を保持した状態の断面図である。
【
図16A】
図16Aは、他実施形態に係る被覆部保持部のカシメ前の状態を示す断面図である。
【
図17】
図17は、他実施形態に係る圧着端子に電線が接続された状態を示す図である。
【
図18A】
図18Aは、他実施形態に係る圧着端子に電線が接続された状態を示す平面図である。
【
図18B】
図18Bは、他実施形態に係る圧着端子に電線が接続された状態を示す側面図である。
【
図19】
図19は、従来の圧着端子であって、電線の接続前の状態の圧着端子を示す斜視図である。
【
図20】
図20は、従来の圧着端子であって、電線の接続後の状態の圧着端子を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態について、
図1~
図13を参照しつつ説明する。
【0021】
本実施形態に係る圧着端子は、
図1及び
図2に示すように、電線7(
図5参照)を保持可能な電線保持部2を備える。具体的に、圧着端子1は、電線保持部2と、電線保持部2と隣接し且つ相手側端子ピンが挿抜される接続部3と、を備える。本実施形態の圧着端子1では、電線保持部2と接続部3とが相手側端子ピンの挿抜方向(
図1における中心軸Cの延びる方向)に並んでいる。この圧着端子1は、導電性を有する。本実施形態の圧着端子1は、リン青銅によって形成されているが、真鍮、洋白、メッキ処理されたSUS等によって形成されていてもよい。
【0022】
圧着端子1に保持(接続)される電線7は、
図5に示すように、芯線71と、該芯線71を被覆する絶縁部材72と、を有する。本実施形態の電線7では、多数の芯線71が束ねられた状態で絶縁部材72に被覆されている。芯線71は、例えば、カーボン繊維のような導電性繊維である。また、絶縁部材72は、例えば、エラストマーである。以下では、電線7の端部において、芯線71が露出している部位を露出部7Aと称し、露出部7Aと隣接する位置において芯線71が絶縁部材72に被覆されている部位を被覆部7Bと称する。
【0023】
図1及び
図2に戻り、電線保持部2は、露出部7Aを保持可能な芯線保持部21と、芯線保持部21と隣り合う位置に配置され且つ被覆部7Bを該被覆部7Bの周方向に囲むように保持可能な被覆部保持部22と、を有する。この電線保持部2は、電線7の被保持部を、電線7の中心軸が芯線保持部21と被覆部保持部22との並び方向(以下、単に「並び方向」と称する。)を向くように保持する(
図5参照)。尚、電線7の被保持部は、電線保持部2によって保持される部位であり、本実施形態では、電線7の端部である。本実施形態の電線保持部2は、所定の形状に打ち抜かれた平板状の部位(平板状保持部2A:
図2参照)が並び方向に延びる中心線C
1と平行な中心軸C周りに湾曲させられることによって形成されている。
【0024】
芯線保持部21は、湾曲した板状の第一本体211と、第一本体211から延びる複数の導体カシメ片212と、を有する。
【0025】
第一本体211は、中心軸C周りに湾曲し且つ並び方向に延びる板状の部位である。
【0026】
複数の導体カシメ片212は、第一本体211上に配置された露出部7Aに向けてそれぞれカシメられることにより、該露出部7Aを第一本体211に圧着させる(
図5参照)。これにより、芯線保持部21は、電線7の露出部7A(芯線71)を保持する。
【0027】
これら複数の導体カシメ片212のそれぞれは、平板状保持部2Aにおいて、第一本体211の幅方向(
図2における左右方向)の両端から該幅方向の外側に向けて延びている。本実施形態の圧着端子1では、幅方向の一方側(
図2の右側)の導体カシメ片212と他方側(
図2の左側)の導体カシメ片212とが、並び方向(中心線C
1方向)にずれた位置から交互に延びている。
【0028】
被覆部保持部22は、被覆部7Bを保持したときに被覆部7B側を向く内側面(対向面)22Aと、内側面22Aと反対側を向く外側面22Bとを有する板状の部位である。具体的に、被覆部保持部22は、芯線保持部21の第一本体211と連接する第二本体221と、第二本体221から延びる一対の被覆部カシメ片222と、を有する。また、被覆部保持部22は、被覆部7Bを保持したときに該被覆部7Bに押し付けられる内側面22Aにおいて被覆部7Bの周方向に沿って延びる係止部23を有する。
【0029】
第二本体221は、中心軸C周りに湾曲し且つ第一本体211から並び方向に延びる板状の部位である。
【0030】
一対の被覆部カシメ片222は、第二本体221上に配置された被覆部7Bに向けてそれぞれカシメられることにより、第二本体221と共同して被覆部7Bを挟持する(
図5参照)。これにより、被覆部保持部22は、電線7の被覆部7Bを保持する。このとき、被覆部保持部22の内側面22Aは、被覆部7Bの外周面(絶縁部材72)に押し付けられている。尚、電線7の被保持部7Bは、芯線71が絶縁部材72によって被覆されている部位である。
【0031】
これら一対の被覆部カシメ片222のそれぞれは、平板状保持部2Aにおいて、第二本体221の幅方向の両端から該幅方向の外側に向けて延びている(
図2参照)。本実施形態の圧着端子1では、幅方向の一方側の被覆部カシメ片(第一被覆部カシメ片)222Aと他方側の被覆部カシメ片(第二被覆部カシメ片)222Bとが、第二本体221における並び方向の同じ位置から延びている。
【0032】
係止部23は、
図3にも示すように、内側面22Aにおける当該係止部23以外の領域(以下、「基準面」と称する。)220Aに対して突出している凸部231と、該凸部231に隣接する位置において基準面220Aに対して凹んでいる凹部232と、を有する。詳しくは、凸部231は、外側面22Bの側とは反対側に突出し、凹部232は、外側面22Bの側に凹んでいる。
【0033】
ここで、基準面220Aとは、係止部23の凸部231と凹部232とを区分けするために基準とした面であり、内側面22Aには、係止部23及び基準面220A以外の構成(凹凸等)が含まれていてもよい。また、本実施形態の基準面220Aは、係止部23と直接接している、即ち、隣接しているが、この構成に限定されず、係止部23と直接接していない構成であってもよい。
【0034】
本実施形態の係止部23は、二つの凸部231と、一つの凹部232と、を有する。これら二つの凸部231は、並び方向において凹部232の両側に配置されている。詳しくは、二つの凸部231のうちの一方の凸部(第一凸部)231aは、凹部232の芯線保持部21側と反対側において該凹部232と隣接する。また、二つの凸部231のうちの他方の凸部(第二凸部)231bは、凹部232の芯線保持部21側において該凹部232と隣接する。
【0035】
この係止部23において、凹部232は、凸部231(第一凸部231a、第二凸部231b)より大きい。詳しくは、以下の通りである。
図4にも示すように、基準面220Aと直交し且つ並び方向に延びる断面において、凹部232の内側領域(内側空間)の断面積(内側領域断面積)S
1は、凸部231の断面積(凸部断面積)S
2より大きい。尚、第一凸部231aと第二凸部231bとは同じ若しくは略同じ形状である。
【0036】
本実施形態の係止部23において、この内側領域断面積S1と凸部断面積S2との比(以下、「断面積比」と称する。)S2/S1は、80%以上且つ90%未満である。この断面積比S2/S1は、本実施形態においては、凹部232を、仮想中心線(断面において最も凹んだ位置を通る仮想中心線)V1を中心とする線対称な形状と見なし、且つ、凸部231を、仮想中心線(断面において最も突出した位置を通る仮想中心線)V2を中心とする線対称な形状と見なしたときに、凹部232の内側領域における仮想中心線V1より凸部231側の領域の面積S1と、凸部231の仮想中心線V2より凹部232側の領域の面積S2との比によって求められている。尚、凹部232も凸部231も共に仮想中心線V1、V2に対して線対称な図形と見なしているため、断面積比S2/S1は、凹部232の内側領域全体の断面積と、凸部231全体の断面積との比が用いられてもよい。
【0037】
このような凸部231と凹部232とを含む係止部23は、内側面22Aにおいて、並び方向と交差する方向に延びる。本実施形態の係止部23は、内側面22Aにおいて、並び方向と直交する方向に延びている。また、この係止部23は、内側面22Aにおいて、第一被覆部カシメ片222Aの外側端縁222aから第二本体221を通って第二被覆部カシメ片222Bの外側端縁222bまで連続して延びている(
図2参照)。尚、第一被覆部カシメ片222Aの外側端縁222aは、第二本体221の側とは反対側の端縁である。また、第二被覆部カシメ片222Bの外側端縁222bは、第二本体221の側と反対側の端縁である。
【0038】
本実施形態の内側面22Aには、複数の係止部23が配置されている。
図2に示す例では、三つの係止部23が配置されている。これら複数の係止部23は、並び方向に間隔をあけて配置されている。隣り合う係止部23同士は、互いに平行である。
【0039】
図1に戻り、接続部3は、電線保持部2と連接し且つ中心軸Cを囲む筒部31と、筒部31からそれぞれ延び且つ筒部31の中心軸C周りに間隔をあけて並ぶ複数の弾性接触片32と、を有する。この接続部3は、複数の弾性接触片32に囲まれた領域に相手側端子ピンが挿入されることによって、該相手側端子ピンと導通可能に接続される。本実施形態の接続部3は、相手側端子ピンと導通可能に嵌合する。
【0040】
筒部31は、中心軸Cを囲む筒部本体311と、筒部本体311から外側に延びる一対のランス312と、を有する。
【0041】
複数の弾性接触片32のそれぞれは、中心軸Cに沿って延び、複数の弾性接触片32に囲まれた領域に挿入された相手側端子ピンに押圧されることで弾性変形する。各弾性接触片32は、相手側端子ピンが挿入されたときに該相手側端子ピンと接触する内側面32Aを中心軸Cに向けた状態で、筒部31(筒部本体311)から相手側端子ピンの抜去方向(
図1における左側)に延びる板状である。
【0042】
以上のように構成される圧着端子1は、
図5に示すように電線7に接続される。具体的には、以下の通りである。
【0043】
電線7の端部に設けられた露出部7Aが芯線保持部21の第一本体211の上に配置されると共に、被覆部7B、詳しくは、被覆部7Bにおける露出部7Aと隣接する部位が被覆部保持部22の第二本体221の上に配置される。ここで、電線7の端部とは、電線7における長手方向の端縁を含む部位であり、露出部7Aは、露出する芯線71の束である。
【0044】
この状態で、芯線保持部21の複数の導体カシメ片212のそれぞれがカシメられる。また、被覆部保持部22の一対の被覆部カシメ片222のそれぞれがカシメられる。このとき、各導体カシメ片212がカシメられた後、各被覆部カシメ片222がカシメられてもよく、各被覆部カシメ片222がカシメられた後、各導体カシメ片212がカシメられてもよい。また、各導体カシメ片212と、各被覆部カシメ片222とが同じタイミングでカシメられてもよい。
【0045】
以上のように、複数の導体カシメ片212のそれぞれと、一対の被覆部カシメ片222のそれぞれとがカシメられることで、圧着端子1が電線7に接続される。これにより、圧着端子1付き電線7が完成する。
【0046】
続いて、圧着端子1の製造方法について説明する。本実施形態の圧着端子1は、導電性を有する帯状の部材(原材料)mから
図6及び
図7に示す製造装置5によって製造される。
【0047】
製造装置5は、プレス機Pに設置された金型である。この製造装置(金型)5は、帯状の部材m(
図8参照)を所定の形状に打ち抜き加工する打ち抜き部51と、打ち抜き部51において打ち抜き加工された部材m
1(第一加工部材:
図8参照)に係止部23を形成する係止部形成部52と、係止部23が形成された部材m
2(第二加工部材:
図8参照)に曲げ等の成形を行って圧着端子形状を完成させる曲げ等成形部53と、を備える。
【0048】
打ち抜き部51は、圧着端子1に対応する形状に帯状の部材mを打ち抜く。この打ち抜き部51において打ち抜かれた状態の第一加工部材m1では、各圧着端子に相当する端子相当部1aの電線保持部2側の端部と接続部3側の端部とが帯状の部位(キャリア)mcにつながった状態となっている。
【0049】
係止部形成部52は、第一加工部材m
1の端子相当部1aにおける被覆部保持部22であって係止部23が形成される前の平らな状態の被覆部保持部22の内側面(対向面)22Aに対して、該内側面22Aに押し当てられた加工刃61を被覆部保持部22における周方向に相当する方向に沿って移動させることにより、係止部23を形成する(
図11参照)。尚、被覆部保持部22における周方向に相当する方向とは、電線7の被覆部7Bを保持したときに該電線7の周方向に相当する方向であり、
図8のに示す例では左右方向である。
【0050】
具体的に、係止部形成部52は、
図9及び
図10に示すような、加工刃61を有する可動部材6を備える。この可動部材6は、端子相当部1aに係止部23を形成するときに、端子相当部1aにおける矩形の被覆部保持部22の長尺方向で且つ内側面22Aと平行(以下、「係止部形成方向」とも称する。:
図11において矢印で示す方向)に可動する。
【0051】
この可動部材6は、加工刃61が配置される傾斜面62を有する。傾斜面62は、係止部形成方向に対して上り勾配となっている。本実施形態の傾斜面62は、係止部形成方向に対して傾斜した方向に真っ直ぐ延びる面である。
【0052】
加工刃61における少なくとも内側面22Aに押し当てられる部位は、係止部形成方向に対して上り勾配となるように延びている。本実施形態の加工刃61は、可動部材6の傾斜面62と平行に真っ直ぐ延びている。また、加工刃61の横断面の形状は、該横断面の中心線C
2を中心にして線対称である(
図12参照)。尚、本実施形態の加工刃61の角度は、60°(中心線C
2から30°)である。
【0053】
本実施形態の加工刃61は、可動部材6の傾斜面62に複数(本実施形態の例では三つ)配置されている。即ち、可動部材6は、複数の加工刃61を有する。これら複数の加工刃61は、互いに平行である。
【0054】
以上の可動部材6は、リンク機構520(
図7参照)によって、第一加工部材m
1の面と垂直な方向(本実施形態の例では、下方向)の力が水平方向に変換されることにより、係止部形成方向に移動(可動)する。この移動によって、
図11及び
図12に示されるように、各加工刃61が内側面22Aに押し込まれた状態で該内側面22Aに沿って移動する。これにより、加工刃61の数に応じた数の係止部23が、端子相当部1aにおける被覆部保持部22の内側面22Aに形成される。
【0055】
具体的には、可動部材6の係止部形成方向への移動によって、複数の加工刃61のそれぞれが、被覆部保持部22の長尺方向における一方の端面22a(
図8参照)から入って他方の端面22b(
図8参照)から抜けるまで、各加工刃61が内側面22Aに押し当てられた状態で移動する。具体的には、各加工刃61の一部、詳しくは、加工刃61の延びる方向における下方側の端部が内側面22Aに食い込んだ状態で移動する。このとき、各加工刃61が内側面22Aを削らず、可動部材6は、内側面22A上を滑るように移動する。
【0056】
このとき、可動部材6の移動に伴って各加工刃61が移動することで、対応する加工刃61が通過する位置において、係止部23の凹部232が形成されつつ、該被覆部保持部22における凹部232の形成される領域にあった部位が加工刃61の移動に伴って該凹部232と隣接する位置に押し退けられて該部位(隣接する位置)が盛り上がることで係止部23の凸部231も形成される(
図11参照)。即ち、凹部232の形成と同時に二つの凸部231も形成される。尚、本実施形態では、被覆部保持部22における凹部232の形成される領域にあった部位が加工刃61の移動に伴って係止部形成方向と直交する方向に押し退けられて該部位が盛り上がることで係止部23の凸部231が形成される。
【0057】
曲げ等成形部53は、係止部23が打ち抜き加工された第二加工部材m2に対し、接続部3側のキャリアmcのせん断及び各端子相当部1aに曲げ等の成形を行うことによって圧着端子1を完成させる。
【0058】
その後、完成した圧着端子1がリールRに巻き取られる(
図6参照)。
【0059】
以上のように製造(形成)された圧着端子1によれば、被覆部保持部22が電線7の被覆部7Bを保持したときに係止部23が被覆部7Bに外側から押し付けられることで、
図13に示すように、凸部231が絶縁部材72に食い込みつつ該凸部231によって芯線71側に押圧された絶縁部材72の一部が該凸部231と隣接する凹部232側に逃げることができる(
図13の凹部232側に向かう矢印参照)。このとき、凸部231と隣接する位置に凹部232が配置されていない、即ち、凹部232の位置に基準面220Aが配置されている構成では、凹部232側に逃げることができる絶縁部材72の量が十分ではないため、凸部231の食い込みにより生じる応力集中を十分には抑えられない。しかし、凸部231に隣接して凹部232が設けられることで、前記応力集中を抑えることができる程度の凹部232側への絶縁部材72の逃げ、詳しくは、凸部231に押圧された絶縁部材72の逃げが許容される。
【0060】
即ち、引張強度を確保するために凸部231を絶縁部材72に十分に食い込ませると、絶縁部材72における凸部231に押された部位の応力集中が大きくなり過ぎ、電線7に引張力が加わったときに前記応力集中が大きくなり過ぎた部位から絶縁部材72が破れ易くなるが、凸部231と隣接する位置に凹部232を設けて凸部231に押圧された絶縁部材72の一部を該凹部232側に逃がすことで前記応力集中が大きくなり過ぎることを防ぐことができる。
【0061】
このように、本実施形態の圧着端子1では、凸部231の食い込みによる過度な応力集中によって絶縁部材72が破れ易くなることを防ぎつつ、凸部231を絶縁部材72に十分に食い込ませることができる。その結果、被覆部保持部22における引張強度を好適に向上させることができる。
【0062】
しかも、本実施形態の係止部23では、凸部231(第一凸部231a、第二凸部231b:
図2及び
図3参照)が凹部232の両側に配置されているため、絶縁部材72に食い込む凸部231の数が十分に確保される。これにより、係止部23において凹部232の片側だけに凸部231が配置される構成に比べ、引張強度が向上する。
【0063】
また、本実施形態の係止部23では、凹部232が、第一凸部231aの芯線保持部21側において該第一凸部231aと隣接している。このように、第一凸部231aに押圧された絶縁部材72の一部を芯線保持部21側に逃がす構成とすることで、引張力、即ち、芯線保持部21から被覆部保持部22に向かう方向の力が電線7に加わったときに、絶縁部材72の第一凸部231aへの引っ掛かりがより大きくなる。このため、引張強度がより向上する。
【0064】
また、本実施形態の圧着端子1では、内側面22A(詳しくは、基準面220A)と直交し且つ並び方向に延びる断面において、内側領域断面積S
1が、凸部断面積S
2より大きい(
図4参照)。このように、凹部232の内側領域の断面積S
1が該凹部232と隣接する凸部231の断面積S
2より大きいことで、凸部231に押圧された絶縁部材72の一部が凹部232側に逃げたときの絶縁部材72における応力集中、詳しくは、絶縁部材72における凸部231に押圧されている部位の応力集中が十分に抑えられる。これにより、電線7に引張力が加わったときの被覆部保持部22における絶縁部材72の破れがより効果的に防がれる。
【0065】
また、本実施形態の圧着端子1では、断面積比S
2/S
1が、80%以上且つ90%未満である。この構成によれば、凸部231に押圧された絶縁部材72の一部が凹部232側に逃げる(移動する)ことで、凹部232と二つの凸部231a、231bと電線7とで規定される領域(
図13の符号αで示すドットが付された範囲参照)を満たす絶縁部材72が適度な圧縮状態となる。これにより、該領域を満たしている絶縁部材72が芯線71に押し付けられて密着する。このため、電線7(絶縁部材72)に引張力が加わったときに被覆部保持部22に保持された電線7(絶縁部材72)に加わる力の一部を、芯線71を通じて芯線保持部21にも受けさせることができる。その結果、被覆部保持部22での絶縁部材72の破れがより好適に抑えられる。
【0066】
即ち、被覆部保持部22における絶縁部材72の芯線71への押し付けが、凸部231が絶縁部材72に食い込むことによる押し付けに加え、隣接する部位、具体的には、凹部232と二つの凸部231a、231bと電線7とで規定される領域αを満たす絶縁部材72も圧縮状態となっていることで芯線71に押し付けられ、これにより、絶縁部材72が長手方向の広い範囲で芯線71に密着することとなる。このため、電線7(絶縁部材72)に引張力が加わったときに、電線7の被覆部保持部22に保持された部位に加わる力の一部を、芯線71を通じて芯線保持部21にも受けさせる(分担させる)ことができる。尚、
図13において、模式的に、凸部231の押し付けによって芯線71と絶縁部材72とが密着する領域(ハッチングで示す範囲)をβ
1で示し、前記領域αを満たす絶縁部材72が圧縮されていることで芯線71と絶縁部材72とが密着する領域(β
1と異なるハッチングで示す範囲)をβ
2で示す。
【0067】
また、本実施形態の係止部23では、凸部231(第二凸部231b)が凹部232の芯線保持部21側にも配置されている。このため、該凸部231(第二凸部231b)の食い込みによって押圧された絶縁部材72の一部も前記領域αに逃げ、これにより、前記領域αを満たす絶縁部材72が十分に圧縮された状態となる。その結果、該領域αを満たす絶縁部材72の芯線71への密着力(
図13のβ
2で示す範囲の密着力)が十分に大きくなる。
【0068】
また、本実施形態の圧着端子1の製造方法では、凹部232を形成しつつ、端子相当部1a(被覆部保持部22)における凹部232の形成された領域にあった部位を該凹部232と隣接する位置に押し退けて凸部231を形成する(即ち、係止部23を形成する)。これにより、凹部232を形成する部位を削り取る場合に比べ、加工刃61を内側面(対向面)22Aに押し当てた状態で移動させるときの抵抗が抑えられ、その結果、より薄い部材に対して係止部23を形成することができる。
【0069】
詳しくは、バイト等の引っ掻き部材による削りや引っ掻きによって係止部23(凹部232)を形成する場合には、爪を引っ掛けた状態で引っ掻き部材等を移動さるときの抵抗が大きい。このため、薄い部材に対して係止部23(凹部232)を形成する場合、破れや変形等の損傷が生じ易い。しかし、本実施形態の係止部形成部52のように、削り等と異なって鋭利な加工刃61を内側面22Aに押し当てて滑らすように移動させて係止部23(凹部232)を形成することにより、可動部材6の移動の際の抵抗が抑えられる。これにより、係止部23を形成する際の前記破れ等の損傷が生じ難くなり、その結果、より薄い部材に対して係止部23を形成することができる。
【0070】
例えば、本実施形態の圧着端子1の製造方法によれば、凹部232の基準面220Aからの深さが板厚の30%程度となる係止部23を板厚が0.5mm以下の部材に対して形成することができる。しかも、係止部23を形成する際に、可動部材6の移動の際の抵抗が十分に抑えられているため、破れや変形等が生じ難い。これにより、圧着端子1の生産効率の低下(廃棄となる製品の数)が十分に抑えられる。これに対し、バイト等の引っ掻き部材によって板厚が0.5mm以下の部材に対して係止部23を形成しようとすると、削り等の際の抵抗によって破れや変形等が生じ易く、圧着端子1の生産効率が著しく低下する。
【0071】
板状の部材に係止部23が形成された後に該部材が被覆部保持部22の形状に打ち抜かれると、係止部23の延びる方向(係止部形成方向)の端縁にある係止部23の形状が潰れる。しかし、本実施形態の圧着端子1の製造方法のように、端面22a、22bが形成された状態、即ち、被覆部保持部22(端面22a、22b)の形状が形成された状態で一方の端面22a又は該端面22aと内側面22Aとによって構成される角部(エッジ)から加工刃61が入って他方の端面22bから抜けるまで移動することで、係止部23の両端が潰れていない状態で圧着端子1を製造することができる。
【0072】
また、本実施形態の圧着端子1の製造方法では、各加工刃61における少なくとも内側面22Aに押し当てられる部位は、移動方向(係止部形成方向)に対して上り勾配となるように延びている。このため、各加工刃61を内側面22Aに押し当てた状態で移動させるときの抵抗がより抑えられ、これにより、より薄い部材に対して係止部23を形成することが可能となる。
【0073】
また、本実施形態の圧着端子1の製造方法によれば、係止部23が形成される際に、加工刃61を内側面22Aに押し当てて該内側面22A上を滑らすだけなので削り屑等が生じない、若しくは、極めて僅かしか生じない。このため、係止部23が形成された直後の工程においてプレス加工等が行われても、前記削り屑等に起因する傷等の損傷が生じ難い。これにより、一つの金型内において係止部23の形成工程と、プレス工程とを行うことが可能となる。
【実施例】
【0074】
ここで、本実施形態の圧着端子1が電線7に接続された際の効果を確認するために、以下の実験を行った。
【0075】
本実施形態の圧着端子1(被覆部保持部22に係止部23が形成されている圧着端子1)と、被覆部保持部22に係止部がない点以外は、本実施形態の圧着端子1と同じ構成の圧着端子(対比用端子)と、をそれぞれ固定した状態で、各圧着端子に接続された電線7を該圧着端子から離れる方向(中心軸C方向:
図5に示す例では下方側)に150mm/minで引っ張る。そして、電線保持部2によって保持されている部位(被覆部7B)の絶縁部材72に破れ等が発生したときの引張力の大きさを測定した。尚、実験で用いた圧着端子1及び対比用端子は、φ3.0の圧着端子である。また、実験で用いた電線7のφは、1.1mmであり、芯線71は、カーボン繊維であり、絶縁部材(シース)は、エラストマーである。
【0076】
その測定結果を以下の表1及び表2に示す。表1は、係止部23が形成された圧着端子1を用いた実験結果である。この実験で用いられた圧着端子1の係止部23における断面積比S
2/S
1は、80.3%である。また、表2は、係止部のない対比用端子を用いた実験結果である。各表における「プレスの押込量」とは、被覆部カシメ片222をカシメるときに、被覆部カシメ片222が電線7の被覆部7Bに接してから、さらにプレスによって第二本体221側に押し込んだ量(単位はmm)である。
【表1】
【表2】
【0077】
これら表1及び表2から、被覆部保持部22に係止部23を設けることで、通常の電線(例えば、芯線が銅等の金属で、絶縁部材がポリ塩化ビニル(PVC)の電線)よりも芯線71に対する絶縁部材(シース)72の密着力が小さい電線7が用いられても、圧着端子1と電線7との接続部位(電線保持部2)において十分な引っ張り強度が確保できることが分かる。
【0078】
尚、本発明に係る圧着端子、前記圧着端子付き電線、及び前記圧着端子の製造方法は、上記実施形態の構成に限定されるものではない。また、本発明に係る圧着端子、前記圧着端子付き電線、及び前記圧着端子の製造方法は、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明に係る圧着端子、前記圧着端子付き電線、及び前記圧着端子の製造方法装置は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
【0079】
上記実施形態の圧着端子1では、複数の係止部23が被覆部保持部22に配置されているが、この構成に限定されない。被覆部保持部22に配置される係止部23は、一つでもよい。
【0080】
また、例えば
図14に示すように、被覆部保持部22が、少なくとも一つの係止部23と、少なくとも一つの凹凸部23Aと、を有していてもよい。この凹凸部23Aは、係止部23と同様に、基準面220Aに対して突出する凸部、及び該凸部と隣接し且つ基準面220Aに対して凹む凹部を有する。これら凸部及び凹部は、内側面22Aにおいて並び方向と交差する方向に延びているが、断面積比S
2/S
1は、係止部23のような80%以上且つ90%未満でなくてもよい。尚、上記実施形態の係止部23における凹部232の深さは、板厚の30%程度であるが、
図14に示す凹凸部23Aにおける凹部の深さは、係止部23の凹部232より浅い。このように被覆部保持部22に少なくとも一つの係止部23と少なくとも一つの凹凸部23Aとが並ぶ場合、芯線保持部21から離れる方向側の端に係止部23が配置されることが好ましい。かかる位置が、電線7に引張力が加わったときに、最も絶縁部材72が破れやすくなるからである。
【0081】
また、係止部23の凹部232の具体的な深さは、限定されない。上記実施形態の係止部23における凹部232の深さは、板厚の30%程度であるが、より浅くてもよく、より深くてもよい。
【0082】
また、上記実施形態の係止部23は、連続的に延びているが、この構成に限定されない。係止部23は、断続的に延びていてもよい。また、上記実施形態の係止部23は、被覆部保持部22における第一被覆部カシメ片222Aの外側端縁222aから第二被覆部カシメ片222Bの外側端縁222bまで延びているが、この構成に限定されない。係止部23は、第一被覆部カシメ片222Aの外側端縁222aから第二被覆部カシメ片222Bの外側端縁222bまでの間における一部の領域(範囲)に配置されていてもよい。
【0083】
また、上記実施形態の係止部23は、内側面22Aにおいて並び方向に対して直交する方向に延びているが、この構成に限定されない。係止部23は、内側面22Aにおいて並び方向に対して交差する方向に延びていればよい。また、係止部23は、平板状に広げたときの被覆部保持部22(平板状保持部2A)において、直線状に真っ直ぐ延びていなくてもよい。係止部23は、例えば、湾曲、屈曲等していてもよい。
【0084】
また、上記実施形態の係止部23では、並び方向における凹部232の両側に凸部231(第一凸部231a、第二凸部231b)が配置されているが、この構成に限定されない。係止部23において、第一凸部231aと第二凸部231bのうちの少なくとも一方が配置されていればよい。かかる構成によれば、凸部231の食い込みによる過度な応力集中によって絶縁部材72が破れやすくなることを防ぎつつ、凸部231を絶縁部材72に十分に食い込ませることができる。
【0085】
係止部23において凸部231が一つだけ設けられる場合、第一凸部231aが配置されていれば、第一凸部231aに押圧された絶縁部材72の一部が芯線保持部21側に逃げる。これにより、引張力が電線7に加わったときの絶縁部材72の第一凸部231aへの引っ掛かりがより大きくなる。その結果、係止部23に凸部231として第二凸部231bだけが設けられる場合に比べ、引張強度がより向上する。
【0086】
被覆部保持部22の具体的な構成は限定されない。例えば、被覆部保持部22は、
図15に示すように、第二本体221から一つの被覆部カシメ片222が延びる構成でもよく、
図16A及び
図16Bに示すように、筒状であってもよい。即ち、被覆部保持部22は、被覆部7Bを保持したときに該被覆部7Bに押し付けられる内側面22Aと、該内側面22Aに配置された少なくとも一つの係止部23と、を有していればよい。
【0087】
また、上記実施形態の圧着端子1では、並び方向と、相手側端子ピンの挿抜方向とが同じであるが、この構成に限定されない。例えば
図17に示すように、圧着端子1Aにおいて、並び方向と、相手側端子ピンの挿抜方向とが交差していてもよい。また、電線保持部2と接続部3との並ぶ方向も限定されない。
【0088】
また、上記実施形態の圧着端子1に接続される電線7では、長手方向の端部に露出部7Aが配置されているが、この構成に限定されない。例えば
図18A及び
図18Bに示すように、電線7において、露出部7Aが長手方向の途中位置に配置(即ち、被覆部7B間に露出部7Aが配置)されていてもよい。
【0089】
上記実施形態の圧着端子1では、接続部3が相手側端子ピンを挿抜可能に構成されているが、この構成に限定されない。接続部3は、例えば、端子ピン(即ち、圧着端子1が雄型の端子)であってもよく、ビス等によって相手側端子に接続される構成(例えば
図18Aの接続部3A参照)等であってもよい。
【0090】
また、上記実施形態の圧着端子に接続される電線7では、芯線71は、カーボン繊維であるが、この構成に限定されない。例えば、芯線71は、金属フィラーを有した樹脂繊維、ポリエステル繊維やカーボン繊維等に金属メッキを施したメッキ繊維、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアセチレン類、ポリフェニレン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアニリン類、ポリアセン類、ポリチオフェンビニレン類、およびこれらのうちの二以上の共重合体からなる繊維等の導電性繊維であってもよい。
【0091】
また、上記実施形態の電線7の絶縁部材72は、エラストマーであるが、この構成に限定されない。例えば、絶縁部材72は、オレフィン系、塩化ビニル、フッ素系等であってもよい。即ち、絶縁部材72は、芯線71が導電性繊維の場合に、該芯線71との密着強度が5N以下のものでもよい。ここで、密着強度とは、圧着端子1が固定された状態で該圧着端子1に接続されている電線7を並び方向(芯線保持部21と被覆部保持部22との並び方向)に150mm/minで引っ張り、絶縁部材72が破れたときに電線7に加わっている力(引張力)を計測して得られた値(単位はN)である。
【0092】
このような芯線71と絶縁部材72との密着強度が5N以下の電線7では、芯線71に対する絶縁部材72の長手方向の相対移動が生じ易い。これにより、電線7に引張力が加わったときに被覆部保持部22において絶縁部材72にのみ力が集中するため絶縁部材72が破れ易い。しかし、上記実施形態の圧着端子1が用いられることで、被覆部保持部22に保持される部位(被覆部7B)における芯線71に対する絶縁部材72の密着力が確保され、これにより、前記破れが効果的に防がれる。尚、密着強度とは、長さが200mmの電線7の両端50mmの被覆(絶縁部材72)をそれぞれ剥ぎ(即ち、芯線71を露出させ)、芯線71の径より大きく且つ絶縁部材(電線7)の径より小さい穴の開いたダイスの当該穴に電線7の一方の端部で露出する芯線71を挿通させ、穴から突出する芯線71を引っ張ったときに該芯線71が動いた時の引張力(芯線71が動いているときの最大荷重)のことである。
【0093】
このように、上記実施形態の圧着端子1では、芯線71と絶縁部材72との密着強度が5N以下の電線7に用いられることで、被覆部保持部22における引張強度の向上(即ち、被覆部保持部22において絶縁部材72の破れを防ぐ)といった効果がより顕著に得られる。しかし、芯線71と絶縁部材72との密着強度が5Nより大きな電線7に用いられても、被覆部保持部22に係止部23が設けられていれば、被覆部保持部22において引張強度は向上する。
【0094】
上記実施形態の加工刃61の横断面形状は、中心線C2を中心にして線対称であるが、この構成に限定されない。加工刃61の横断面形状は、中心線C2を中心にして非対称であってもよい。このような横断面形状が非対称の加工刃61によって係止部23を形成した場合、形成された係止部23の二つの凸部231a、231bの大きさ(基準面220Aからの高さ)は、異なる。
【0095】
また、上記実施形態の加工刃61は、可動部材6の傾斜面62に沿って真っ直ぐ延びているが、この構成に限定されない。加工刃61は、湾曲するように延びていてもよい。また、加工刃61は、丸刃等であってもよい。
【0096】
また、加工刃61の数は限定されない。上記実施形態の可動部材6は、三つの加工刃61を有しているが、一つ~二つ、又は四つ以上の加工刃61を有する構成でもよい。
【0097】
また、上記実施形態の圧着端子1の製造方法では、係止部23が形成される際に、端子相当部1aの両端である電線保持部2側の端部と接続部3側の端部とがキャリアmcに接続されているが、この構成に限定されない。加工刃61が内側面22Aに押し当てられた状態で可動部材6が移動する際に、端子相当部1aの被覆部保持部22が移動しない(ズレない)ように固定等されていれば、端子相当部1aがキャリアmc等に接続されずに単独で配置されていてもよい。
【0098】
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更及び/又は改良することは容易に成し得ることであると認識すべきである。従って、当業者が実施する変更形態又は改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態又は当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【符号の説明】
【0099】
1、1A、1B…圧着端子、1a…端子相当部、2…電線保持部、2A…平板状保持部、21…芯線保持部、211…第一本体、212…導体カシメ片、22…被覆部保持部、22A…内側面、22B…外側面、22a…一方の端面、22b…他方の端面、220A…基準面、221…第二本体、222…被覆部カシメ片、222A…第一被覆部カシメ片、222B…第二被覆部カシメ片、222a…第一被覆部カシメ片の外側端縁、222b…第二被覆部カシメ片の外側端縁、23…係止部、23A…凹凸部、3、3A…接続部、231…凸部、231a…第一凸部、231b…第二凸部、232…凹部、31…筒部、311…筒部本体、312…ランス、32…弾性接触片、32A…内側面、5…製造装置、51…打ち抜き部、52…係止部形成部、520…リンク機構、53…曲げ等成形部、6…可動部材、61…加工刃、62…傾斜面、7…電線、7A…露出部、7B…被覆部、71…芯線、72…絶縁部材、800…端子、810…電気接続部、820…圧着接続部、830…導体圧着部、831…基底部、832…導体圧着片、840…外被圧着部、841…基底部、842…外被圧着片、900…電線、901…芯線、902…絶縁被覆部分、C…中心軸、C1、C2…中心線、m…導電性を有する帯状の部材(原材料)、m1…第一加工部材、m2…第二加工部材、mc…キャリア、P…プレス機、R…リール、S1…内側領域断面積、S2…凸部断面積、S2/S1…断面積比、V1、V2…仮想中心線、α…領域、β1、β2…絶縁部材と芯線との密着範囲