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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】漏洩電流遮断装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/52 20200101AFI20230501BHJP
   H02H 3/16 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
G01R31/52
H02H3/16 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022162828
(22)【出願日】2022-10-07
(65)【公開番号】P2023057072
(43)【公開日】2023-04-20
【審査請求日】2022-10-11
(31)【優先権主張番号】P 2021166509
(32)【優先日】2021-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508130281
【氏名又は名称】Igr技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166187
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】阿閉 豊次
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-174613(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1227659(KR,B1)
【文献】特開2013-207877(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第113125913(CN,A)
【文献】特開平10-082819(JP,A)
【文献】特開2013-170961(JP,A)
【文献】特開2001-215247(JP,A)
【文献】特開2001-298878(JP,A)
【文献】特開2002-131362(JP,A)
【文献】国際公開第2006/134678(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第107069675(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/52
H02H 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定電線路を流れている漏洩電流を検出する漏洩電流検出部と、
前記被測定電線路に印加している電圧を検出する電圧検出部と、
前記漏洩電流検出部の検出した漏洩電流の信号波形と前記電圧検出部の検出した電圧の信号波形との位相差を検出する位相差検出部と、
前記電圧検出部の検出した電圧の信号波形に基づいて、前記被測定電線路に印加している電源周波数を測定する電源周波数測定部と、
前記位相差検出部の検出した位相差と、前記電源周波数測定部の測定した電源周波数とに基づいて、前記被測定電線路を流れている漏洩電流の位相角度を算出する位相角度算出部と、
前記漏洩電流検出部の検出した漏洩電流と、前記位相角度算出部の算出した位相角度とに基づいて、漏洩電流に含まれている対地絶縁抵抗に起因する漏洩電流成分Igrを算出する対地絶縁抵抗漏洩電流成分算出部と、
前記対地絶縁抵抗漏洩電流成分算出部の算出した漏洩電流成分Igrに基づいて、前記被測定電線路の漏洩状態を判定する判定部と、
前記判定部が前記被測定電線路は漏洩していると判定した場合、前記被測定電線路を遮断する遮断部と、
前記判定部が判定した漏洩状態を報知する報知部と、
湿度を検出する湿度検出部と、
前記被測定電線路の周囲を換気する換気部と、
を備え、
前記判定部は、
漏洩電流成分Igrが漏洩していると判断される漏洩閾値以上である場合、前記被測定電線路は漏洩していると判定し、
前記漏洩閾値よりも小さくかつ漏洩する虞があると判断される漏洩虞閾値を、前記湿度検出部の検出する湿度が高くなるにつれて、小さくなるように補正し、
漏洩電流成分Igrが補正後の漏洩虞閾値以上である場合、前記被測定電線路は漏洩する虞があると判定し、
記判定部が前記被測定電線路は漏洩する虞があると判定した場合、前記報知部は前記被測定電線路は漏洩する虞があること対応した漏洩虞信号を報知し、前記換気部は換気を開始する
ことを特徴とする漏洩電流遮断装置。
【請求項2】
前記報知部が漏洩虞信号を報知し前記換気部か換気している間において前記判定部が漏洩電流成分Igrは漏洩虞閾値未満に低下したと判定した場合、前記報知部は漏洩虞信号の報知を停止し前記換気部は換気を停止する
ことを特徴とする請求項1に記載の漏洩電流遮断装置。
【請求項3】
前記被測定電線路の使用時間を検出する使用時間検出部を備え、
前記判定部は、前記使用時間検出部の検出する使用時間が長くなるにつれて、漏洩虞閾値を小さくなるように補正する
ことを特徴とする請求項に記載の漏洩電流遮断装置。
【請求項4】
温度を検出する温度検出部を備え、
前記判定部は、前記温度検出部の検出する温度に基づく所定時間における温度差が大きくなるにつれて、漏洩虞閾値を小さくなるように補正する
ことを特徴とする請求項に記載の漏洩電流遮断装置。
【請求項5】
地上からの地上高さを設定する地上高さ設定部を備え、
前記判定部は、前記地上高さ設定部に設定された地上高さが小さくなるにつれて、漏洩虞閾値を小さくなるように補正する
ことを特徴とする請求項に記載の漏洩電流遮断装置。
【請求項6】
漏洩電流成分Igr、漏洩閾値及び漏洩虞閾値の少なくとも1つを表示する表示部を備える
ことを特徴とする請求項から請求項のいずれか1項に記載の漏洩電流遮断装置。
【請求項7】
前記判定部が判定した漏洩状態と、
他の漏洩電流遮断装置を構成する判定部が判定した漏洩状態と、
を報知する外部報知部を備える
ことを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の漏洩電流遮断装置。
【請求項8】
前記判定部は、前記被測定電線路が漏洩する虞の程度に対応した複数の漏洩虞閾値に基づいて前記被測定電線路の漏洩する虞を複数段階で判定し、
前記報知部は、前記被測定電線路が漏洩する虞の段階に対応して、漏洩虞信号を報知する
ことを特徴とする請求項から請求項のいずれか1項に記載の漏洩電流遮断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漏洩電流遮断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被測定電線路の漏洩電流Iを遮断する漏洩電流遮断装置が知られている(特許文献1参照)。漏洩電流Iは、対地静電容量に起因する漏洩電流成分Igcと、絶縁抵抗に直接関与している対地絶縁抵抗に起因する漏洩電流成分Igrと、を含んでいる。そして、所謂漏電火災は、絶縁抵抗を原因として発生するので、絶縁抵抗に起因する漏洩電流成分Igrによって、被測定電線路の絶縁状態をチェックできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-174613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、漏洩電流成分Igrが所定値を超えた場合に、漏洩状態を報知せずに画一的に遮断するので、遮断前に漏洩する虞を検知できない。
【0005】
そこで、本発明は、遮断前に漏洩する虞を報知する漏洩電流遮断装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、被測定電線路を流れている漏洩電流を検出する漏洩電流検出部と、前記被測定電線路に印加している電圧を検出する電圧検出部と、前記漏洩電流検出部の検出した漏洩電流の信号波形と前記電圧検出部の検出した電圧の信号波形との位相差を検出する位相差検出部と、前記電圧検出部の検出した電圧の信号波形に基づいて、前記被測定電線路に印加している電源周波数を測定する電源周波数測定部と、前記位相差検出部の検出した位相差と、前記電源周波数測定部の測定した電源周波数とに基づいて、前記被測定電線路を流れている漏洩電流の位相角度を算出する位相角度算出部と、前記漏洩電流検出部の検出した漏洩電流と、前記位相角度算出部の算出した位相角度とに基づいて、漏洩電流に含まれている対地絶縁抵抗に起因する漏洩電流成分Igrを算出する対地絶縁抵抗漏洩電流成分算出部と、前記対地絶縁抵抗漏洩電流成分算出部の算出した漏洩電流成分Igrに基づいて、前記被測定電線路の漏洩状態を判定する判定部と、前記判定部が前記被測定電線路は漏洩していると判定した場合、前記被測定電線路を遮断する遮断部と、前記判定部が判定した漏洩状態を報知する報知部と、湿度を検出する湿度検出部と、前記被測定電線路の周囲を換気する換気部と、を備え、前記判定部は、漏洩電流成分Igrが漏洩していると判断される漏洩閾値以上である場合、前記被測定電線路は漏洩していると判定し、前記漏洩閾値よりも小さくかつ漏洩する虞があると判断される漏洩虞閾値を、前記湿度検出部の検出する湿度が高くなるにつれて、小さくなるように補正し、漏洩電流成分Igrが補正後の漏洩虞閾値以上である場合、前記被測定電線路は漏洩する虞があると判定し、記判定部が前記被測定電線路は漏洩する虞があると判定した場合、前記報知部は前記被測定電線路は漏洩する虞があること対応した漏洩虞信号を報知し、前記換気部は換気を開始することを特徴とする漏洩電流遮断装置である。
また、前記報知部が漏洩虞信号を報知し前記換気部か換気している間において、前記判定部が漏洩電流成分Igrは漏洩虞閾値未満に低下したと判定した場合、前記報知部は漏洩虞信号の報知を停止し前記換気部は換気を停止する構成としてもよい。
【0007】
このような構成によれば、判定部は漏洩電流成分Igrが漏洩閾値以上である場合に被測定電線路は漏洩していると判定し、遮断部が被測定電線路を遮断する。そして、判定部は漏洩電流成分Igrが漏洩虞閾値以上である場合に被測定電線路は漏洩する虞があると判定し、報知部が被測定電線路は漏洩する虞があること対応した漏洩虞信号を報知する。このようにして、被測定電線路の遮断前に漏洩する虞を報知できる。
【0008】
また、判定部が、湿度検出部の検出する湿度が高くなるにつれて、漏洩虞閾値を小さくなるように補正するので、漏洩する虞があるか否か正確に判定できる。ここで、湿度が高くなるにつれて漏洩し易くなる。
このような構成によれば、報知部が漏洩虞信号を報知している間において判定部が漏洩電流成分Igrは漏洩虞閾値未満に低下したと判定した場合、報知部は漏洩虞信号の報知を停止できる。
【0009】
また、前記被測定電線路の使用時間を検出する使用時間検出部を備え、前記判定部は、前記使用時間検出部の検出する使用時間が長くなるにつれて、漏洩虞閾値を小さくなるように補正する構成としてもよい。
【0010】
このような構成によれば、判定部が、使用時間検出部の検出する被測定電線路の使用時間が長くなるにつれて、漏洩虞閾値を小さくなるように補正するので、漏洩する虞があるか否か正確に判定できる。ここで、被測定電線路の使用時間が長くなるにつれて漏洩し易くなる。
【0011】
また、温度を検出する温度検出部を備え、前記判定部は、前記温度検出部の検出する温度に基づく所定時間における温度差が大きくなるにつれて、漏洩虞閾値を小さくなるように補正する構成としてもよい。
【0012】
このような構成によれば、判定部が、温度検出部の検出する温度に基づく所定時間における温度差が大きくなるにつれて、漏洩虞閾値を小さくなるように補正するので、漏洩する虞があるか否か正確に判定できる。ここで、所定時間における温度差が大きくなるにつれて漏洩し易くなる。
【0013】
また、地上からの地上高さを設定する地上高さ設定部を備え、前記判定部は、前記地上高さ設定部に設定された地上高さが小さくなるにつれて、漏洩虞閾値を小さくなるように補正する構成としてもよい。
【0014】
このような構成によれば、判定部が、地上高さ設定部に設定された地上高さが小さくなるにつれて、漏洩虞閾値を小さくなるように補正するので、漏洩する虞があるか否か正確に判定できる。ここで、地上高さが小さくなるにつれて、結露し易くなるので、漏洩し易くなる。
【0015】
また、漏洩電流成分Igr、漏洩閾値及び漏洩虞閾値の少なくとも1つを表示する表示部を備える構成としてもよい。
【0016】
このような構成によれば、表示部によって、漏洩電流成分Igr、漏洩閾値及び漏洩虞閾値の少なくとも1つを表示できる。
【0017】
また、前記判定部が判定した漏洩状態と、他の漏洩電流遮断装置を構成する判定部が判定した漏洩状態と、を報知する外部報知部を備える構成としてもよい。
【0019】
また、前記判定部は、前記被測定電線路が漏洩する虞の程度に対応した複数の漏洩虞閾値に基づいて前記被測定電線路の漏洩する虞を複数段階で判定し、前記報知部は、前記被測定電線路が漏洩する虞の段階に対応して、漏洩虞信号を報知する構成としてもよい。
【0020】
このような構成によれば、判定部が、被測定電線路が漏洩する虞の程度に対応した複数の漏洩虞閾値に基づいて被測定電線路の漏洩する虞を複数段階で判定し、報知部が、被測定電線路が漏洩する虞の段階に対応して、漏洩虞信号を報知できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、遮断前に漏洩する虞を報知する漏洩電流遮断装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本実施形態に係る漏洩電流遮断装置の構成を示すブロック図である。
図2A】電源が単相式の場合において、対地絶縁抵抗に起因する漏洩電流成分Igrと対地静電容量に起因する漏洩電流成分Igcとの位相差を示す図である。
図2B】電源が三相式の場合において、対地絶縁抵抗に起因する漏洩電流成分Igrと対地静電容量に起因する漏洩電流成分Igcとの位相差を示す図である。
図3A】電源が三相式の場合において、位相が120°ずつ異なるR相-S相間、S相-T相間及びT相-R相間の波形を示す図である。
図3B】電源が三相式の場合において、R相-T相間の電圧を反転した図である。
図3C】電源が三相式の場合において、R相に漏洩電流成分Igr(R相Igr)のみが発生し、T相に漏洩電流成分Igr(T相Igr)のみが発生している場合を示す図である。
図3D】電源が三相式の場合において、R相に漏洩電流成分Igc(R相Igc)のみが発生し、T相に漏洩電流成分Igc(T相Igc)のみが発生している場合を示す図である。
図3E】電源が三相式の場合において、R相に漏洩電流成分Igrと漏洩電流成分Igcとが発生し、T相に漏洩電流成分Igrと漏洩電流成分Igcとが発生している場合を示す図である。
図4A】電源が三相式の場合において、位相が120°ずつ異なるR相-S相間、S相-T相間及びT相-R相間の波形をベクトルで示す図である。
図4B】電源が三相式の場合において、R相-T相間の検出された電圧から基準点aを求めた単相式のベクトル図である。
図4C】電源が単相式の場合において、基準点aから180°(0°)の位置に、R相IgcとT相Igcとの合成ベクトルIgcを求めるベクトル図である。
図4D】電源が三相式の場合において、R相Igrのみが発生しているとき、R相IgrとIgcとの合成ベクトル(漏洩電流I0)を示すベクトル図である。
図4E】電源が三相式の場合において、T相Igrのみが発生しているとき、T相IgrとIgcとの合成ベクトル(漏洩電流I0)を示すベクトル図である。
図5】比較部に入力された変換後電圧V1と電圧V2の位相差を示す図である。
図6A】比較部に入力されたときの変換後電圧V1の波形と、変換後電圧V1に基づき方形波変換したときの波形を示す図である。
図6B】比較部に入力されたときの電圧V2の波形と、電圧V2に基づき方形波変換したときの波形を示す図である。
図7図6Aの変換後電圧V1に基づき方形波変換したときの波形と、図6Bの電圧V2に基づき方形波変換したときの波形に基づきEXORを実行した際に形成される波形を示す図である。
図8】本実施形態に係る漏洩電流遮断装置の動作を示すフローチャートである。
図9】本実施形態に係る漏洩電流遮断装置の地上高さと、第1漏洩虞閾値、第2漏洩虞閾値、漏洩閾値との関係を示すマップ(グラフ)である。
図10】本実施形態に係る漏洩電流遮断装置の使用時間と補正係数との関係を示すマップ(グラフ)である。
図11】本実施形態に係る漏洩電流遮断装置の周囲の湿度と補正係数との関係を示すマップ(グラフ)である。
図12】本実施形態に係る漏洩電流遮断装置の周囲の温度差と補正係数との関係を示すマップ(グラフ)である。
図13】本実施形態に係る漏洩電流遮断装置の一動作例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の一実施形態について、図1図13を参照して説明する。
【0024】
≪漏洩電流遮断装置の構成≫
図1に示すように、漏洩電流遮断装置1は、CTセンサ部10(カレントトランスセンサ部、漏洩電流検出部)と、増幅部11と、LPF12(ローパスフィルター)と、全波整流部13と、電圧検出部14と、変圧部15と、LPF16(ローパスフィルター)と、全波整流部17と、比較部18と、演算部19と、位相パルス幅測定部20(位相差検出部)と、電源周波数測定部21と、位相角度算出部22と、A/D変換部23と、実効値算出部24と、A/D変換部25と、実効値算出部26、漏洩電流成分算出部27と、抵抗値算出部28と、判定部29と、遮断部30と、閾値設定部31と、制御部32と、LED33(報知部)と、ブザー34(報知部)と、地上高さ設定部35と、温度センサ36(温度検出部)と、湿度センサ37(湿度検出部)と、クロック38(使用時間検出部)と、液晶モニタ39(表示部)と、外部LED111(外部報知部)と、外部液晶モニタ112(外部表示部)と、ファン121(換気部)と、を備えている。
【0025】
<CTセンサ部>
CTセンサ部10は、被測定電線路Aの全体にクランプし、被測定電線路Aに流れている漏洩電流Iを検出する部分である。具体的には、CTセンサ部10は、被測定電線路Aに流れている漏洩電流成分から生じる磁気を検出し、検出した磁気から電流を生成する。CTセンサ部10は、生成した電流を漏洩電流Iとして増幅部11に供給する。
【0026】
なお、CTセンサ部10により生成された漏洩電流Iは、対地静電容量に起因する漏洩電流成分Igcと、絶縁抵抗に直接関与している対地絶縁抵抗に起因する漏洩電流成分Igrと、を含む。また、漏洩電流成分Igcは、被測定電線路Aの長さに応じて容量が増大するだけでなく、電気機器に使用されているインバータやノイズフィルター等に起因する高調波歪み電流によっても容量が増大する。
【0027】
<増幅部>
増幅部11は、CTセンサ部10からの漏洩電流Iを電圧に変換し、変換後の電圧(変換後電圧V1)を、所定のレベルまで増幅する部分である。例えば、CTセンサ部10からの漏洩電流Iが0mA~10mAである場合、増幅部11は2段階で増幅する。また、CTセンサ部10からの漏洩電流Iが10mA~300mAである場合、増幅部11は1段階で増幅する。そして、増幅部11は、増幅後の変換後電圧V1をLPF12に供給する。
【0028】
<LPF>
LPF12は、増幅部11からの変換後電圧V1から高調波成分を除去するフィルターである。そして、LPF12は、高調波成分を除去した変換後電圧V1を全波整流部13と比較部18とに供給する。
【0029】
<全波整流部>
全波整流部13は、LPF12からの変換後電圧V1を整流する部分である。そして、全波整流部13は、整流後の変換後電圧V1をA/D変換部23に供給する。
【0030】
<電圧検出部>
電圧検出部14は、被測定電線路Aに電圧プローブを接続することにより、被測定電線路Aの電圧線路から電圧V2を検出する部分である。なお、被測定電線路Aの電気方式が三相3線式(デルタ結線からなる方式)である場合、電圧検出部14はS相(接地)以外のR相とT相間の電圧を検出する。また、被測定電線路Aの電気方式が三相4線式(スター結線からなる方式)である場合、電圧検出部14はS相(接地線)以外の相間から電圧を検出する。さらに、被測定電線路Aの電気方式が単相2線式である場合、電圧検出部14はN相とL相間の電圧を検出する。
【0031】
そして、電圧検出部14は、被測定電線路Aから検出した電圧V2から基準点を求め、電圧V2を変圧部15に供給する。例えば、電圧検出部14は、被測定電線路Aから検出した電圧V2の0クロスする点を基準点とする。
【0032】
<変圧部>
変圧部15は、電圧検出部14が検出した電圧V2を所定の変圧比になるように変圧する部分である。すなわち、変圧部15は、供給された電圧V2を所定の電圧値に変圧し、変圧後の電圧VをLPF16に供給する。変圧部15は、例えば、電圧比が20:1になるように変圧する。
【0033】
<LPF>
LPF16は、変圧部15が所定の電圧値に変圧した電圧V2から高調波成分を除去する部分である。そして、LPF16は、高調波成分を除去した電圧V2を、全波整流部17と比較部18と電源周波数測定部21とに供給する。
【0034】
<全波整流部>
全波整流部17は、LPF16からの電圧V2を整流する部分である。そして、全波整流部17は、整流後の電圧V2をA/D変換部25に供給する。
【0035】
<比較部>
比較部18は、LPF12からの変換後電圧V1の信号波形S1と、LPF16からの電圧V2の信号波形S2と、を比較する部分である。すなわち、比較部18は、LPF12から供給された変換後電圧V1の0Vクロス点をとり、方形波変換を行い、方形波変換後の信号を演算部19に供給する。また、比較部18は、LPF16から供給された電圧V2の0Vクロス点をとり、方形波変換を行い、方形波変換後の信号を演算部19に供給する。
【0036】
<演算部>
演算部19は、比較部18が比較した結果に基づいて所定の演算を行う部分である。すなわち、演算部19は、比較部18から供給される信号に基づき所定の演算を行い、演算後の信号を位相パルス幅測定部20に供給する。例えば、演算部19は、EXOR(排他的論理和)回路からなっており、比較部18から供給された2つの方形波変換後の信号についてEXOR演算を実行する。
【0037】
<位相パルス幅測定部>
位相パルス幅測定部20は、演算部19の演算結果に基づいて、変換後電圧V1と電圧V2の位相パルス幅(位相差)を測定する部分である。
【0038】
具体的には、被測定電線路A(電源)が単相式の場合、図2Aに示すように、漏洩電流成分Igrの位相角θは0°、漏洩電流成分Igcの位相角θは90°となる。したがって、漏洩電流成分Igrと漏洩電流成分Igcの位相差は、90°(1/4サイクル)となる。また、被測定電線路A(電源)が三相式の場合、図2Bに示すように、漏洩電流成分Igrの位相角θは60°、漏洩電流成分Igcの位相角θは0°となる。したがって、漏洩電流成分Igrと漏洩電流成分Igcの位相差は、60°(1/6サイクル)となる。そこで、位相パルス幅測定部20は、被測定電線路A(電源)が単相のときでも、三相のときでも対応できるように、位相パルス幅を1サイクルの1/4以下のもののみ対象とする。
【0039】
そして、位相パルス幅測定部20は、演算部19から供給される演算結果に基づいて算出した、1サイクルの1/4以下の位相パルス幅を位相角度算出部22に出力する。なお、電源周波数が60Hzの場合には、1サイクルが16.6msであるので、位相パルス幅は、4.15ms以下となる。また、電源周波数が50Hzの場合には、1サイクルが20msであるので、5ms以下となる。
【0040】
<電源周波数測定部>
電源周波数測定部21は、LPF16からの電圧V2の信号に基づいて、被測定電線路Aの電圧線路に発生している電源周波数を測定する部分である。
【0041】
すなわち、電源周波数測定部21は、LPF16から供給された電圧V2に基づき、電源周波数を測定し、測定結果を位相角度算出部22に供給する。なお、被測定電線路Aが商用電源である場合、電源周波数測定部21の測定結果は、50Hz若しくは60Hzとなる。その他、電源周波数測定部21は、LPF16から供給された電圧V2に基づいて、50Hz又は60Hzの何れかを判定する構成としてもよい。
【0042】
<位相角度算出部>
位相角度算出部22は、位相パルス幅測定部20からの位相パルス幅と、電源周波数測定部21からの電源周波数とに基づいて、被測定電線路Aに流れる漏洩電流Iの位相角度を算出する部分である。
【0043】
すなわち、位相角度算出部22は、位相パルス幅測定部20から供給された位相パルス幅Wと、電源周波数測定部21から供給された電源周波数Fに基づいて、下記(1)式により被測定電線路Aに流れている漏洩電流Iの位相角度θを算出する。
θ=360×W×F …(1)
【0044】
そして、位相角度算出部22は、算出した位相角度θを漏洩電流成分算出部27に供給する。
【0045】
<A/D変換部>
A/D変換部23は、全波整流部13からの整流後の変換後電圧V1をデジタル信号に変換する部分である。そして、A/D変換部23は、変換後のデジタル信号を実効値算出部24に供給する。
【0046】
<実効値算出部>
実効値算出部24は、A/D変換部23からのデジタル信号に変換された変換後電圧V1に基づいて、下記(2)式により、変換後電圧V1の実効値I0を算出する部分である。なお、実効値算出部24に供給される信号は、被測定電線路Aに流れている漏洩電流Iを電圧に変換した変換後電圧V1に基づくものであるので、便宜的にI0とする。
I0=I×(π/2)/√2 …(2)
【0047】
そして、実効値算出部24は、算出した実効値I0を漏洩電流成分算出部27に供給する。
【0048】
<A/D変換部>
A/D変換部25は、全波整流部17からの整流後の電圧V2をデジタル信号に変換する部分である。そして、A/D変換部25は、変換後のデジタル信号を実効値算出部26に供給する。
【0049】
<実効値算出部>
実効値算出部26は、A/D変換部25からのデジタル信号に変換された電圧V2に基づいて、下記(3)式により、電圧V2の実効値V0を算出する部分である。
V0=V×(π/2)√2 …(3)
【0050】
そして、実効値算出部26は、算出した実効値V0を抵抗値算出部28に供給する。
【0051】
<漏洩電流成分算出部>
漏洩電流成分算出部27は、実効値算出部24で算出された変換後電圧V1の実効値I0(漏洩電流)と、位相角度算出部22で算出された漏洩電流Iの位相角度θと、に基づいて、対地絶縁抵抗に起因する漏洩電流成分Igrを算出する部分である。そして、漏洩電流成分算出部27は、算出した漏洩電流成分Igrを、判定部29と抵抗値算出部28とに供給する。
【0052】
ここで、被測定電線路A(電源)が単相式の場合、漏洩電流成分算出部27は、下記(4)式により漏洩電流成分Igrを算出する。被測定電線路A(電源)が三相式の場合、漏洩電流成分算出部27は、下記(5)式により漏洩電流成分Igrを算出する。
Igr=I0×cosθ …(4)
Igr=(I0×sinθ)/cos30° …(5)
【0053】
なお、漏洩電流成分算出部27は、被測定電線路A(電源)が単相電源であるか三相電源であるかを、ロータリースイッチ(図示しない)の選択状態に応じて判断する。
【0054】
<抵抗値算出部>
抵抗値算出部28は、実効値算出部26から供給された実効値V0と、漏洩電流成分算出部27から供給された漏洩電流成分Igrとに基づいて、下記(6)式によりGrを算出する。
Gr=V0/Igr …(6)
【0055】
<判定部>
判定部29は、被測定電線路Aの漏洩状態を判定する部分である。判定部29の処理(動作)は後で詳細に説明する。
【0056】
<遮断部>
遮断部30は、判定部29が被測定電線路Aは漏洩していると判定した場合、判定部29からの遮断信号に従って、被測定電線路Aを遮断する部分である。
また、遮断部30は、既存の漏電ブレーカに準じており、遮断スピードは概ね2サイクル(50Hzの場合には0.04秒)~5サイクル(50Hzの場合には0.1秒)程度である。遮断部30は、例えば、引き外しコイルTC等により構成されている。
【0057】
<閾値設定部>
閾値設定部31は、例えば、漏洩電流成分Igr基づいて、使用者が漏洩閾値、第1漏洩虞閾値~第2漏洩虞閾値を設定する部分である。漏洩閾値、第1漏洩虞閾値~第2漏洩虞閾値は、現在の漏洩電流成分Igrと比較することで、被測定電線路Aの漏洩状態の判定するための閾値である。「第1漏洩虞閾値<第2漏洩虞閾値<漏洩閾値」の関係となっている。ここでは、地上高さが基準高さ(10m)である場合の基準値として、第1漏洩虞閾値として6mA、第2漏洩虞閾値として8mA、漏洩閾値として15mAが設定されている構成を例示する(図9参照)。ただし、漏洩閾値、第1漏洩虞閾値~第2漏洩虞閾値の具体的値は変更自由であり、漏洩虞閾値の数も変更自由である。なお、ここでは、後記するように、判定部29が図9のマップ等に基づいて漏洩閾値等を算出し補正する構成を例示する。
【0058】
漏洩閾値は、漏洩電流成分Igrが漏洩閾値以上である場合、現在、被測定電線路Aは漏洩していると判断される値に設定される。
【0059】
第1漏洩虞閾値~第2漏洩虞閾値は、漏洩電流成分Igrが第1漏洩虞閾値~第2漏洩虞閾値以上である場合、その後、被測定電線路Aは漏洩する虞があると判断される値に設定される。「第1漏洩虞閾値<第2漏洩虞閾値」であり、漏洩電流成分Igrと、第1漏洩虞閾値、第2漏洩虞閾値とを順に比較することで、被測定電線路Aの漏洩する虞が2段階で段階的に判定されるようになっている。
【0060】
すなわち、漏洩電流成分Igrが徐々に大きくなり、第1漏洩虞閾値、第2漏洩虞閾値以上であるか否か段階的に判定することで、被測定電線路Aの漏洩する虞が2段階で段階的に判定されるようになっている。なお、漏洩電流成分Igrが徐々に大きくなるつれて、被測定電線路Aの漏洩する虞は高くなる。
【0061】
<制御部>
制御部32は、被測定電線路Aの漏洩状態に対応して、LED33及び外部LED111の消灯/点灯/点滅及び出力色を制御する部分である。また、制御部32は、被測定電線路Aの漏洩状態に対応して、ブザー34をON/OFF制御する部分である。
【0062】
さらに、制御部32は、現在の漏洩電流成分Igrと、補正後の第1漏洩虞閾値及び第2漏洩虞閾値と、を液晶モニタ39及び外部液晶モニタ112に出力し表示させる部分である。また、制御部32は、被測定電線路Aの漏洩状態に対応して、ファン121をON/OFF制御する部分である。
【0063】
<LED>
LED33は、点灯/点滅することで、被測定電線路Aの漏洩状態/漏洩虞状態を外部に報知する部分である。すなわち、LED33は、被測定電線路Aの漏洩状態/漏洩虞状態に対応した点灯/点滅/消灯信号(漏洩信号/漏洩虞信号)を、外部に報知する報知部である。
【0064】
ここでは、LED33は、制御部32からの信号に従って、緑色、黄色、赤色に点灯/点滅の他、消灯(OFF)するように構成されている。具体的には、漏洩電流成分Igrが第1漏洩虞閾値(例えば6mA)未満である場合(Igr<第1漏洩虞閾値)、LED33は緑色で点灯するように構成されている。漏洩電流成分Igrが第1漏洩虞閾値以上第2漏洩虞閾値(例えば8mA)未満である場合(第1漏洩虞閾値≦Igr<第2漏洩虞閾値)、LED33は黄色で点灯するように構成されている。漏洩電流成分Igrが第2漏洩虞閾値以上漏洩閾値(例えば15mA)未満である場合(第2漏洩虞閾値≦Igr<漏洩閾値)、LED33は赤色で点灯するように構成されている。漏洩電流成分Igrが漏洩閾値以上である場合(漏洩閾値≦Igr)、LED33は消灯(OFF)するように構成されている。
【0065】
<ブザー>
ブザー34は、ブザー音(漏洩信号/漏洩虞信号)を出力することで、被測定電線路Aの漏洩状態/漏洩虞状態を外部に報知する部分である。すなわち、ブザー34は、被測定電線路Aの漏洩状態/漏洩虞状態に対応したブザー音(漏洩信号/漏洩虞信号)を、外部に報知する報知部である。
【0066】
具体的には、漏洩電流成分Igrが第2漏洩虞閾値未満である場合(Igr<第2漏洩虞閾値)、ブザー34はOFFするように構成されている。漏洩電流成分Igrが第2漏洩虞閾値以上漏洩閾値未満である場合(第2漏洩虞閾値≦Igr<漏洩閾値)、ブザー34はONするように構成されている。
【0067】
<地上高さ設定部>
地上高さ設定部35は、使用者が地上高さ(m)を設定する部分である。地上高さは、被測定電線路Aの設置された地上からの高さ(標高)である。地上高さ設定部35は、設定された地上高さを判定部29に出力するようになっている。
【0068】
<温度センサ>
温度センサ36は、被測定電線路Aの周辺の温度を検出するセンサである。そして、温度センサ36は、直前の所定期間(例えば、直前1日間、直前1週間、直前1月間)における最高温度と最低温度との差である温度差を算出し、この温度差を判定部29に出力するようになっている。
【0069】
<湿度センサ>
湿度センサ37は、被測定電線路Aの周辺の湿度(相対湿度)を検出するセンサである。そして、湿度センサ37は、検出した湿度を判定部29に出力するようになっている。
【0070】
<クロック>
クロック38は、被測定電線路Aの使用開始からの累積した使用(供用)時間を検出する時計である。そして、クロック38は、使用時間を判定部29に出力するようになっている。
【0071】
<液晶モニタ>
液晶モニタ39は、制御部32から入力される漏洩電流成分Igr、第1漏洩虞閾値、第2漏洩虞閾値、漏洩虞閾値を表示する部分である。
【0072】
<外部LED>
外部LED111は、LED33と同様に、点灯/点滅することで、被測定電線路Aの漏洩状態/漏洩虞状態を外部に報知する部分である。また、外部LED111は、他の漏洩電流遮断装置1とも接続されており、他の漏洩電流遮断装置1からの信号に基づいて、他の被測定電線路Aの漏洩状態/漏洩虞状態を外部に報知する部分である。外部LED111は、例えば、漏洩電流遮断装置1の分電盤や監視盤に設置されている。
【0073】
すなわち、外部LED111は、各漏洩電流遮断装置1(制御部32)からの信号状態に基づいて、点灯/点滅することで、各被測定電線路Aの漏洩状態/漏洩虞状態を外部に報知する部分である。これにより、使用者は、外部LED111を介して、複数の被測定電線路Aの漏洩状態/漏洩虞状態を集中監視可能となっている。
【0074】
<外部液晶モニタ>
外部液晶モニタ112は、液晶モニタ39と同様に、制御部32から入力される漏洩電流成分Igr、第1漏洩虞閾値、第2漏洩虞閾値、漏洩閾値を表示する部分である。また、外部液晶モニタ112は、他の漏洩電流遮断装置1とも接続されており、他の制御部32からの漏洩電流成分Igr、第1漏洩虞閾値、第2漏洩虞閾値、漏洩閾値も表示する部分である。外部液晶モニタ112は、例えば、漏洩電流遮断装置1の分電盤や監視盤に設置されている。
【0075】
すなわち、外部液晶モニタ112は、各漏洩電流遮断装置1(各制御部32)からの漏洩電流成分Igr、第1漏洩虞閾値、第2漏洩虞閾値、漏洩閾値を個別にそれぞれ表示する部分である。これにより、使用者は、外部液晶モニタ112を介して、複数の被測定電線路Aの漏洩状態/漏洩虞状態を集中監視可能となっている。
【0076】
<ファン>
ファン121は、被測定電線路Aの周辺に配置された電動ファンであり、駆動(ON)することで被測定電線路Aの周囲を換気する送風機である。ここで、ファン121が駆動すると、被測定電線路Aの周辺が換気され、被測定電線路A周囲の湿度及び温度が低下するようになっている。
【0077】
≪漏洩電流遮断装置の測定原理-波形図≫
次に、漏洩電流遮断装置の測定原理を説明する。
ここでは、被測定電線路Aの電源が三相式である場合を説明するが、電源が単相式である場合も同様である。
【0078】
CTセンサ部10は、被測定電線路Aをクランプし、図3Aに示すように、位相が120°ずつ異なるR相-S相間、S相-T相間及びT相-R相間の波形を検出する。なお、図3Aでは、便宜的にそれぞれの波形を示しているが、CTセンサ部10で検出される波形は合成波形である。CTセンサ部10により検出された合成波形は、増幅部11、LPF12及び比較部18を介して演算部19に入力される。
【0079】
また、電圧検出部14は、R相及びT相に電圧プローブを接続し、R相-T相間の電圧を検出し、検出した電圧を、図3Bに示すように、反転させる。電圧検出部14は、検出した電圧の所定の場所で0クロスする点を基準点aとして定める。このように基準点aが定まった電圧V2は、変圧部15、LPF16及び比較部18を介して演算部19に入力される。
【0080】
例えば、被測定電線路AのR相に漏洩電流成分Igr(以下「R相Igr」という。)のみが発生し、また、T相に漏洩電流成分Igr(以下「T相Igr」という。)のみが発生している場合には、図3Cに示すように、R相Igrは、基準点aから120°の位相差が生じ、T相Igrは、基準点aから60°の位相差が生じる。
【0081】
また、被測定電線路AのR相に漏洩電流成分Igc(以下「R相Igc」という。)のみが発生し、また、T相に漏洩電流成分Igc(以下「T相Igc」という。)のみが発生している場合には、図3Dに示すように、R相IgcとT相Igcの合成波形の基準点aからの位相差は、180°(0°)である。
【0082】
さらに、被測定電線路AのR相に漏洩電流成分Igrと漏洩電流成分Igcとが発生し、T相に漏洩電流成分Igrと漏洩電流成分Igcとが発生している場合には、図3Eに示すようになる。
【0083】
≪漏洩電流遮断装置の測定原理-ベクトル図≫
また、上述の説明をベクトルで表すと、以下のようになる。被測定電線路Aが三相式なので、図4Aに示すようになる。そして、電圧検出部14でR相-T相間の電圧を検出し、検出した電圧から基準点aを求めると、図4Bに示すように、単相式のベクトル図となる。なお、上述したように、R相Igrと基準点aとの位相差は、60°であり、また、T相Igrと基準点aとの位相差は、120°である。
【0084】
また、単相式の場合には、図2Aを用いて既述したように、漏洩電流成分Igrと漏洩電流成分Igcの位相差は90°なので、R相Igrから90°回った位置にR相Igcを求めることができ、また、T相Igrから90°回った位置にT相Igcを求めることができる。さらに、基準点aから180°(0°)の位置に、R相IgcとT相Igcとの合成ベクトルIgcを求めることができる(図4C)。
【0085】
したがって、例えば、被測定電線路AにR相Igrのみが発生している場合には、R相IgrとIgcとの合成ベクトル、すなわち被測定電線路Aに流れている漏洩電流I0は、図4Dのように表すことができる。なお、図4Dから、R相Igrを算出する式として
、上述した(5)式を導き出すことができる。また、漏洩電流I0の位相差θは、R相Igr及びIgcの大きさにより変化し、変化の幅は、基準点aから60°~180°である。
【0086】
また、例えば、被測定電線路AにT相Igrのみが発生している場合には、T相IgrとIgcとの合成ベクトル、すなわち被測定電線路Aに流れている漏洩電流I0は、図4Eのように表すことができる。なお、図4Eから、T相Igrを算出する式として、上述した(5)式を導き出すことができる。また、漏洩電流I0の位相差θは、T相Igr及びIgcの大きさにより変化し、変化の幅は、120°~180°である。
【0087】
≪漏洩電流遮断装置の第1測定例≫
次に、本実施形態に係る漏洩電流遮断装置1により、実際に被測定電線路Aから漏洩電流成分を測定した第1測定例を表1に示す。表1は、屋上受配電キュービクル(高圧受電設備)の動力盤(電源周波数:50Hz、電圧:200V、被測定低電圧電路の種類:三相3線式、150kvA、室温:41℃、湿度:43%)を測定対象として行ったものである。
【0088】
【表1】
【0089】
また、測定例では、測定開始から6分経過時~9分経過前(3分間)に疑似絶縁抵抗としてR相に20kΩを接地し、測定開始から9分経過時~11分経過前(2分間)に疑似絶縁抵抗としてT相に20kΩを接地し、測定開始から11分経過時~12分経過前(1分間)に疑似絶縁抵抗を外し(接地解除)、測定開始から12分経過時~13分経過前(1分間)に疑似絶縁抵抗としてR相に10kΩを接地し、測定開始から13分経過時~15分経過前(2分間)に疑似絶縁抵抗としてT相に10kΩを接地し、測定開始から15分経過後に疑似絶縁抵抗を外した。
例えば、疑似絶縁抵抗としてR相に20kΩの抵抗を接地した場合には、理論的に、疑似絶縁抵抗成分の電流として、
Igr=V/R=200/(20×103)=10mA
の電流が被測定電線路に加算されて流れる。
【0090】
漏洩電流遮断装置1は、表1に示すように、時間が6分経過時に、疑似絶縁抵抗としてR相に20kΩの抵抗を接地したら、12.3mAの漏洩電流成分Igrを検出した。疑似絶縁抵抗を接地していないとき(測定開始から6分経過前、測定開始から11分経過時~12分経過前及び測定開始から15分経過後)の漏洩電流成分Igrが2mAであるので、R相に20kΩの疑似抵抗を接地した後の漏洩電流成分Igrから2mAを差し引くと、10.3mAとなる。したがって、本実施形態に係る漏洩電流遮断装置1は、10.3mAの変化を測定できたことになる。この値は、上述した理論値(10mA)とほぼ一致している。
【0091】
また、R相に疑似絶縁抵抗を20kΩ接地したとき、接地前の抵抗値(Gr≒105.46kΩ(測定開始から6分経過前までのGrの平均値))との合成抵抗値は、
Gr=(20×103×105.46×103)/(20×103+105.46×103)≒16.3kΩ
となる。漏洩電流遮断装置1は、表1に示すように、測定開始から6分経過時の抵抗Grは17.2kΩを示しており、上述した理論値(16.3kΩ)とほぼ一致している。
【0092】
また、疑似絶縁抵抗としてT相に20kΩの抵抗を接地した場合にも、上述と同様に、理論的には、疑似絶縁抵抗成分の電流は10mA増加する。漏洩電流遮断装置1では、表1に示すように、測定開始から9分経過時~11分経過前に検出した漏洩電流成分Igrは、ほぼ12.4mAとなっており、該数値から2mAを差し引くと、10.4mAとなり、ほぼ理論値(10mA)と一致する。
【0093】
また、T相に疑似絶縁抵抗を20kΩ接地したときの合成抵抗値Grは、上述と同様に、理論的には、16.3kΩであり、測定値は17.4kΩを示しており、ほぼ理論値と一致している。
【0094】
また、漏洩電流遮断装置1は、表1に示すとおり、疑似絶縁抵抗としてR相又はT相に10kΩを接地したときの漏洩電流成分IgrとGrも理論値と実測値がほぼ一致している。
【0095】
さらに、漏洩電流遮断装置1は、測定開始から11分経過後から12分経過前、及び15分経過時に疑似絶縁抵抗の接地状態を解除した場合、漏洩電流成分Igr、I0及びGrの値が接地以前(測定開始から1分~5分)の状態に戻った。
【0096】
≪漏洩電流遮断装置の第2測定例≫
次に、本実施形態に係る漏洩電流遮断装置1により、実際に被測定電線路から漏洩電流成分を測定した第2測定例を表2に示す。表2は、受配電キュービクル(高圧受電設備)の動力盤(電源周波数:50Hz、電圧:200V、被測定低電圧電路の種類:三相3線式、150kvA)を測定対象として行ったものである。
【0097】
【表2】
【0098】
また、測定例は、測定開始から1分経過時~4分経過前(3分間)に疑似静電容量としてR相及びT相に0.22μFを接地し、測定開始から3分経過時~4分経過前(1分間)に疑似絶縁抵抗としてT相に20kΩを接地し、測定開始から4分経過後に疑似静電容量及び疑似絶縁抵抗を外して行った。したがって、測定開始から3分経過時~4分経過前は、R相及びT相に疑似静電容量を接地し、かつ、T相に疑似絶縁抵抗を接地して行った。
【0099】
例えば、疑似静電容量としてR相及びT相に0.22μFの容量を接地した場合には、容量性リアクタンスXは、
X=1/2πfC=1/(2π×50×(0.22×10-6+0.22×10-6))≒7.23×103
となる。
【0100】
したがって、被測定電線路には、
I=V/X=200/7.23×103≒27.6mA
の電流が加算されて流れる。
【0101】
また、絶縁抵抗としてT相に20kΩの抵抗を接地した場合には、理論的に、疑似絶縁抵抗成分の電流として、
Igr=V/R=200/(20×103)=10mA
の電流が被測定電線路に加算されて流れる。
【0102】
漏洩電流遮断装置1は、表2に示すように、時間が測定開始から1分経過時に、疑似静電容量としてR相及びT相に0.22μFの静電容量が接地されているときに、7.8mAの漏洩電流成分Igrを検出し、また、100.8mAのI0を検出した。なお、I0は、上述したように絶縁抵抗に起因する漏洩電流成分Igrと、静電容量に起因する漏洩電流成分Igcの合成電流である。
【0103】
疑似静電容量を接地していないときの漏洩電流成分Igrは、表2に示したとおり、7.6mA(測定開始から1分経過前の漏洩電流成分Igr)であるので、R相及びT相に疑似静電容量を接地した場合、漏洩電流成分Igrの変化は殆どない。
【0104】
一方、疑似静電容量を接地していないときのI0は、75.9mA(測定開始から1分経過前のI0)である。疑似静電容量接地後のI0(100.8mA)から疑似静電容量接地前のI0(75.9mA)を差し引くと、24.9mAとなり、これが、加算された漏洩電流成分Igcである。この加算された漏洩電流成分Igcは、理論値(27.6mA)とほぼ等しい。
【0105】
また、漏洩電流遮断装置1は、表2に示すように、R相及びT相に疑似静電容量が接地され、かつ、T相に疑似絶縁抵抗が接地されているとき(測定開始から3分経過時~4分経過前)に、21.0mAの漏洩電流成分Igrを検出し、また、107.0mAのI0を検出した。
【0106】
T相に絶縁抵抗を接地した後の漏洩電流成分Igr(21mA)から、絶縁抵抗を接地する前の漏洩電流成分Igr(8mA(測定開始から3分経過時の漏洩電流成分Igr))を差し引くと、13mAとなり、理論値(10mA)とほぼ等しくなる。
【0107】
≪比較部、演算部の動作例≫
次に、R相に疑似絶縁抵抗として10kΩを接地したときの比較部18と演算部19の動作について、図5図7を参照して説明する。
【0108】
比較部18は、図5に示すように、LPF12から変換後電圧V1が入力され、LPF16から電圧V2が入力される。変換後電圧V1と電圧V2の位相差は、120°である。比較部18は、図6Aに示すように、LPF12から入力された変換後電圧V1を方形波変換し、変換後の信号を演算部19に出力する。また、比較部18は、図6Bに示すように、LPF16から入力された電圧V2を方形波変換し、変換後の信号を演算部19に出力する。
【0109】
演算部19は、図7に示すように、変換後電圧V2の方形波信号と、電圧V2の方形波信号に基づき、EXOR演算を実行する。演算部19は、EXOR演算後の信号に基づき、1サイクルの1/4以下の位相パルス幅を求め、求めた位相パルス幅を位相角度算出部22に出力する。
【0110】
≪漏洩電流遮断装置の動作≫
次に、図8を参照して、漏洩電流遮断装置1の動作を説明する。なお、初期状態において、LED33及び外部LED111は緑色で点灯し、ブザー34は停止し、ファン121は停止している。
【0111】
<第1漏洩虞閾値の算出・補正>
ステップS101において、判定部29は、第1漏洩虞閾値を算出し補正する。
【0112】
<地上高さに基づく第1漏洩虞閾値の算出(補正)>
具体的には、判定部29は、地上高さ設定部35に入力された地上高さと、図9に示す第1漏洩虞閾値のマップ(グラフ)とに基づいて、判定基準となる第1漏洩虞閾値を算出する。第1漏洩虞閾値のマップ、後記する第2漏洩虞閾値のマップ、漏洩閾値のマップは、事前試験、シミュレーション等によって求められ、判定部29に記憶されている。
【0113】
図9に示すように、第1漏洩虞閾値は、地上高さが小さくなるにつれて線形的に小さくなる関係となっている。すなわち、地上高さが小さくなるにつれて、第1漏洩虞閾値が小さくように補正されるようになっている。ここで、地上高さが小さくなると、被測定電線路Aが低温になり易く、結露し易くなるので、漏洩し易くなる。そこで、地上高さが小さくなるにつれて、判定基準となる第1漏洩虞閾値を小さくすることにより、漏洩する虞があるか否か正確に判定し易くなっている。ここでは、基準の地上高さ(10m)において、第1漏洩虞閾値は6mAに設定されている。
【0114】
<使用時間に基づく補正>
次いで、判定部29は、クロック38からの使用時間と、図10に示す補正係数のマップ(グラフ)とに基づいて、使用時間に係る補正係数を算出する。補正係数のマップは、事前試験、シミュレーション等によって求められ、判定部29に記憶されている。
【0115】
図10に示すように、使用時間に係る補正係数は、使用時間が長くなるにつれて、線形的に小さくなる関係となっている。ここでは、使用時間が0において、補正係数は1に設定されている。そして、判定部29は、地上高さに基づいて算出した第1漏洩虞閾値と、使用時間に係る補正係数とを乗算し、第1漏洩虞閾値を補正するようになっている。すなわち、使用時間が長くなるにつれて、第1漏洩虞閾値が小さくなるように補正されるようになっている。ここで、使用時間が長くなると、被測定電線路Aの劣化(例えば、絶縁被覆の劣化)が進行し、漏洩し易くなる。そこで、使用時間が長くなるにつれて、判定基準となる第1漏洩虞閾値を小さくすることにより、漏洩する虞があるか否か正確に判定し易くなっている。
【0116】
<湿度に基づく補正>
次いで、判定部29は、湿度センサ37からの湿度と、図11に示す補正係数のマップ(グラフ)とに基づいて、湿度に係る補正係数を算出する。補正係数のマップは、事前試験、シミュレーション等によって求められ、判定部29に記憶されている。
【0117】
図11に示すように、湿度に係る補正係数は、湿度が高くなるにつれて、線形的に小さくなる関係となっている。ここでは、湿度が50%において、補正係数は1に設定されている。そして、判定部29は、地上高さに基づいて算出した第1漏洩虞閾値と、湿度に係る補正係数とを乗算し、第1漏洩虞閾値を補正するようになっている。すなわち、湿度が高くなるにつれて、第1漏洩虞閾値が小さくなるように補正されるようになっている。ここで、湿度が高くなると、被測定電線路Aの周囲において結露し易くなり、漏洩し易くなる。そこで、湿度が高くなるにつれて、判定基準となる第1漏洩虞閾値を小さくすることにより、漏洩する虞があるか否か正確に判定し易くなっている。
【0118】
<温度差に基づく補正>
次いで、判定部29は、温度センサ36からの温度差(℃)と、図12に示す補正係数のマップ(グラフ)とに基づいて、温度差に係る補正係数を算出する。補正係数のマップは、事前試験、シミュレーション等によって求められ、判定部29に記憶されている。
【0119】
図12に示すように、温度差に係る補正係数は、温度差が大きくなるにつれて、線形的に小さくなる関係となっている。ここでは、温度差が0において、補正係数は1に設定されている。そして、判定部29は、地上高さに基づいて算出した第1漏洩虞閾値と、温度差に係る補正係数とを乗算し、第1漏洩虞閾値を補正するようになっている。すなわち、温度差が大きくなるにつれて、第1漏洩虞閾値が小さくなるように補正されるようになっている。ここで、温度差が高くなると、被測定電線路Aの周囲において結露し易くなり、漏洩し易くなる。そこで、温度差が大きくなるにつれて、判定基準となる第1漏洩虞閾値を小さくすることにより、漏洩する虞があるか否か正確に判定し易くなっている。
【0120】
<まとめ>
すなわち、判定部29は、地上高さに基づく第1漏洩虞閾値(図9参照)に、使用時間に係る補正係数(図10参照)と、湿度に係る補正係数(図11参照)と、温度差に係る補正係数(図12参照)とを乗算し、第1漏洩虞閾値を補正し、補正後の第1漏洩虞閾値を算出するようになっている。なお、制御部32は、補正後の第1漏洩虞閾値を、液晶モニタ39及び外部液晶モニタ112に出力し表示させる。
【0121】
ステップS102において、判定部29は、漏洩電流成分Igrが補正後の第1漏洩虞閾値以上であるか否か判定する。なお、制御部32は、漏洩電流成分Igrを、液晶モニタ39及び外部液晶モニタ112に出力し表示させる。漏洩電流成分Igrが補正後の第1漏洩虞閾値以上であると判定した場合(S102・Yes)、漏洩電流遮断装置1の処理は、ステップS103に進む。漏洩電流成分Igrが補正後の第1漏洩虞閾値以上でないと判定した場合(S102・No)、漏洩電流遮断装置1の処理は、ステップS101に進む。
【0122】
ステップS103において、制御部32は、LED33及び外部LED111を黄色で点灯させる。また、制御部32は、ファン121をON(駆動)し、被測定電線路Aの周囲を換気する。これにより、被測定電線路Aの周囲の湿度が下がり、結露し難くなるので、漏洩し難くなる。
【0123】
ステップS104において、判定部29は、漏洩電流成分Igrが補正後の第1漏洩虞閾値よりも小さいか否か判定する。漏洩電流成分Igrが補正後の第1漏洩虞閾値よりも小さいと判定した場合(S104・Yes)、漏洩電流遮断装置1の処理は、ステップS105に進む。漏洩電流成分Igrが補正後の第1漏洩虞閾値よりも小さくないと判定した場合(S104・No)、漏洩電流遮断装置1の処理は、ステップS106に進む。
【0124】
ステップS105において、制御部32は、LED33及び外部LED111を緑色で点灯する。また、制御部32は、ファン121をOFF(停止)する。そして、漏洩電流遮断装置1の処理は、ステップS101に進む。
【0125】
<第2漏洩虞閾値の算出・補正>
ステップS106において、判定部29は、ステップS101と同様に、第2漏洩虞閾値を算出し補正する。
【0126】
<地上高さに基づく第2漏洩虞閾値の算出(補正)>
具体的には、判定部29は、地上高さ設定部35に入力された地上高さと、図9に示す第2漏洩虞閾値のマップ(グラフ)とに基づいて、判定基準となるて第2漏洩虞閾値を算出する。
【0127】
図9に示すように、第2漏洩虞閾値は、地上高さが小さくなるにつれて線形的に小さくなる関係となっている。すなわち、地上高さが小さくなるにつれて、第2漏洩虞閾値が小さくように補正されるようになっている。ここでは、基準の地上高さ(10m)において、第2漏洩虞閾値は8mAに設定されている。
【0128】
<使用時間に基づく補正>
次いで、判定部29は、クロック38からの使用時間と、図10に示す補正係数のマップ(グラフ)とに基づいて、使用時間に係る補正係数を算出する。そして、判定部29は、地上高さに基づいて算出した第2漏洩虞閾値と、使用時間に係る補正係数とを乗算し、第2漏洩虞閾値を補正するようになっている。
【0129】
<湿度に基づく補正>
次いで、判定部29は、湿度センサ37からの湿度と、図11に示す補正係数のマップ(グラフ)とに基づいて、湿度に係る補正係数を算出する。そして、判定部29は、地上高さに基づいて算出した第2漏洩虞閾値と、湿度に係る補正係数とを乗算し、第2漏洩虞閾値を補正するようになっている。
【0130】
<温度差に基づく補正>
次いで、判定部29は、温度センサ36からの温度差(℃)と、図12に示す補正係数のマップ(グラフ)とに基づいて、温度差に係る補正係数を算出する。そして、判定部29は、地上高さに基づいて算出した第2漏洩虞閾値と、温度差に係る補正係数とを乗算し、第2漏洩虞閾値を補正するようになっている。
【0131】
<まとめ>
すなわち、判定部29は、地上高さに基づく第2漏洩虞閾値(図9参照)に、使用時間に係る補正係数(図10参照)と、湿度に係る補正係数(図11参照)と、温度差に係る補正係数(図12参照)とを乗算し、第2漏洩虞閾値を補正し、補正後の第2漏洩虞閾値を算出するようになっている。なお、制御部32は、補正後の第2漏洩虞閾値を、液晶モニタ39及び外部液晶モニタ112に出力し表示させる。
【0132】
ステップS107において、判定部29は、漏洩電流成分Igrが補正後の第2漏洩虞閾値以上であるか否か判定する。漏洩電流成分Igrが補正後の第2漏洩虞閾値以上であると判定した場合(S107・Yes)、漏洩電流遮断装置1の処理は、ステップS108に進む。漏洩電流成分Igrが補正後の第2漏洩虞閾値以上でないと判定した場合(S107・No)、漏洩電流遮断装置1の処理は、ステップS104に進む。
【0133】
ステップS108において、制御部32は、LED33及び外部LED111を赤色で点灯させ、ブザー34をONする。
【0134】
ステップS109において、判定部29は、漏洩電流成分Igrが補正後の第2漏洩虞閾値よりも小さいか否か判定する。漏洩電流成分Igrが補正後の第2漏洩虞閾値よりも小さいと判定した場合(S109・Yes)、漏洩電流遮断装置1の処理は、ステップS110に進む。漏洩電流成分Igrが補正後の第2漏洩虞閾値よりも小さくないと判定した場合(S109・No)、漏洩電流遮断装置1の処理は、ステップS111に進む。
【0135】
ステップS110において、制御部32は、ブザー34をOFFする。その後、漏洩電流遮断装置1の処理は、ステップS103に進む。
【0136】
<漏洩閾値の算出・補正>
ステップS111において、判定部29は、ステップS101と同様に、漏洩閾値を算出し補正する。
【0137】
<地上高さに基づく漏洩閾値の算出(補正)>
具体的には、判定部29は、地上高さ設定部35に入力された地上高さと、図9に示す漏洩閾値のマップ(グラフ)とに基づいて、判定基準となる漏洩閾値を算出する。
【0138】
図9に示すように、漏洩閾値は、地上高さが小さくなるにつれて線形的に小さくなる関係となっている。すなわち、地上高さが小さくなるにつれて、漏洩閾値が小さくように補正されるようになっている。ここでは、基準の地上高さ(10m)において、漏洩閾値は15mAに設定されている。
【0139】
<使用時間に基づく補正>
次いで、判定部29は、クロック38からの使用時間と、図10に示す補正係数のマップ(グラフ)とに基づいて、使用時間に係る補正係数を算出する。そして、判定部29は、地上高さに基づいて算出した漏洩閾値と、使用時間に係る補正係数とを乗算し、漏洩閾値を補正するようになっている。
【0140】
<湿度に基づく補正>
次いで、判定部29は、湿度センサ37からの湿度と、図11に示す補正係数のマップ(グラフ)とに基づいて、湿度に係る補正係数を算出する。そして、判定部29は、地上高さに基づいて算出した漏洩閾値と、湿度に係る補正係数とを乗算し、漏洩閾値を補正するようになっている。
【0141】
<温度差に基づく補正>
次いで、判定部29は、温度センサ36からの温度差(℃)と、図12に示す補正係数のマップ(グラフ)とに基づいて、温度差に係る補正係数を算出する。そして、判定部29は、地上高さに基づいて算出した漏洩閾値と、温度差に係る補正係数とを乗算し、漏洩閾値を補正するようになっている。
【0142】
<まとめ>
すなわち、判定部29は、地上高さに基づく漏洩閾値(図9参照)に、使用時間に係る補正係数(図10参照)と、湿度に係る補正係数(図11参照)と、温度差に係る補正係数(図12参照)とを乗算し、漏洩閾値を補正し、補正後の漏洩閾値を算出するようになっている。なお、制御部32は、補正後の漏洩閾値を、液晶モニタ39及び外部液晶モニタ112に出力し表示させる。
【0143】
ステップS112において、判定部29は、漏洩電流成分Igrが補正後の漏洩閾値以上であるか否か判定する。漏洩電流成分Igrが補正後の漏洩閾値以上であると判定した場合(S112・Yes)、漏洩電流遮断装置1の処理は、ステップS113に進む。漏洩電流成分Igrが補正後の漏洩閾値以上でないと判定した場合(S112・No)、漏洩電流遮断装置1の処理は、ステップS109に進む。
【0144】
ステップS113において、遮断部30は、被測定電線路Aを電気的に遮断する。これにより、漏洩電流遮断装置1は電源を消失するので、LED33は消灯(OFF)し、ブザー34は停止(OFF)し、ファン121は停止(OFF)する。
【0145】
その後、漏洩電流遮断装置1の処理は、エンドに進み、一連の処理を終了する。
【0146】
≪漏洩電流遮断装置の効果≫
漏洩電流遮断装置1の効果を説明する。
漏洩電流成分Igrが補正後の漏洩閾値以上(例えば15mA以上)である場合(S112・Yes)、判定部29が被測定電線路Aは漏洩していると判定し、遮断部30が被測定電線路Aを遮断する(S113)。これにより、被測定電線路Aの漏電(漏洩)を防止できる。
【0147】
漏洩電流成分Igrが補正後の第1漏洩虞閾値以上である場合(例えば6mA以上)である場合(S102・Yes)、制御部32がLED33及び外部LED111を黄色で点灯させるので(S103)、被測定電線路Aの遮断前に漏洩の虞を検知できる。これにより、被測定電線路Aの遮断前に、漏洩しているか否か点検できる。すなわち、例えば、湿度が上昇したことによって漏洩電流成分Igrが補正後の第1漏洩虞閾値(例えば6mA)以上となりLED33が黄色で点灯した場合、被測定電線路Aを遮断せず電源供給を継続した状態でファン121をONし除湿することで、漏洩電流成分Igrを低下させることができる。
【0148】
LED33が黄色で点灯している間において(S103)、漏洩電流成分Igrが補正後の第1漏洩虞閾値(例えば6mA)未満に低下した場合(S104・Yes)、制御部32がLED33を緑色で点灯させるので(S105)、LED33の初期状態(直前状態)に戻すことができる。LED33が赤色で点灯している間において(S108)、漏洩電流成分Igrが補正後の第2漏洩虞閾値(例えば8mA)未満に低下した場合(S109・Yes)についても同様である。
【0149】
判定部29が、漏洩電流成分Igrと、被測定電線路Aが漏洩する虞の程度に対応した第1~第2漏洩虞閾値(例えば、6mA、8mA)とを比較するので(S102、S107)、漏洩する虞を複数段階で判定できる。そして、これに対応して、制御部32が、LED33及び外部LED111を、黄色(S103)、赤色(S108)で点灯させ、ブザー34をONするので(S108)、使用者は漏洩する虞を複数段階で検知できる。
【0150】
判定部29が、第1漏洩虞閾値、第2漏洩虞閾値、漏洩閾値を、地上高さ、使用時間、湿度、温度差に基づいて補正するので、被測定電線路Aの漏洩状態を適切に判定できる。
【0151】
制御部32が、漏洩電流成分Igr、補正後の第1漏洩虞閾値、補正後の第2漏洩虞閾値、補正後の漏洩閾値を、液晶モニタ39及び外部液晶モニタ112に出力し表示させるので、使用者は、漏洩電流成分Igr等を容易かつ確実に監視できる。
【0152】
≪漏洩電流遮断装置の一動作例≫
次に、図13を参照して、漏洩電流遮断装置1の一動作例を説明する。なお、ここでは、説明を簡便とするために、地上高さが基準(図9参照)であって、使用時間に係る補正係数が1(図10参照)、湿度に係る補正係数が1(図11参照)、温度差に係る補正係数が1(図12参照)、を例示する。
【0153】
漏洩電流成分Igrが6mA(第1漏洩虞閾値)になると(S102・Yes)、LED33が黄色で点灯する(S103)。その後、漏洩電流成分Igrが8mA(第2漏洩虞閾値)になると(S107・Yes)、LED33が赤色で点灯し、ブザー34がONする(S108)。その後、漏洩電流成分Igrが15mA(漏洩閾値)になると(S112・Yes)、遮断部30が被測定電線路Aを遮断(OFF)し(S113)、LED33及びブザー34がOFFする。
【0154】
≪変形例≫
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば、次のように変更してもよい。
【0155】
前記した実施形態では、2つの漏洩虞閾値(第1漏洩虞閾値~第2漏洩虞閾値)が設定された構成を例示したが、その他に例えば、漏洩虞閾値は、1つである構成でもよいし、3つ以上である構成でもよい。
【0156】
前記した実施形態では、報知部がLED33、ブザー34であり、被測定電線路Aの漏洩状態/漏洩虞状態に対応して、LED33が複数の色で点灯/点滅/消灯し、ブザー34がブザー音を出力する構成を例示したが、その他に例えば、報知部がブザー(警報装置)であり、被測定電線路Aの漏洩状態/漏洩虞状態に対応した漏洩信号/漏洩虞信号がブザー音である構成でもよい。この場合、被測定電線路Aの漏洩状態/漏洩虞状態に対応して、例えば、ブザー音の種類、ブザー音の出力間隔等を変更することで区別する構成とできる。
【0157】
前記した実施形態では、判定部29が、第1漏洩虞閾値を、地上高さ、使用時間、湿度及び温度差の4つに基づいて補正する構成を例示したが、その他に例えば、地上高さ、使用時間、湿度及び温度差の少なくとも1つに基づいて補正する構成としてもよい。第2漏洩虞閾値、漏洩閾値についても同様である。
【0158】
前記した実施形態では、制御部32が、漏洩電流成分Igr、補正後の第1漏洩虞閾値、補正後の第2漏洩虞閾値、補正後の漏洩閾値を、液晶モニタ39及び外部液晶モニタ112に出力し表示させる構成を例示したが、その他に例えば、少なくとも1つを出力し表示させる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0159】
1 漏洩電流遮断装置
10 CTセンサ部(漏洩電流検出部)
14 電圧検出部
20 位相パルス幅測定部(位相差検出部)
21 電源周波数測定部
22 位相角度算出部
27 漏洩電流成分算出部(対地絶縁抵抗漏洩電流成分算出部)
29 判定部
30 遮断部
31 閾値設定部(漏洩閾値設定部、漏洩虞閾値設定部)
33 LED(報知部)
34 ブザー(報知部)
35 地上高さ設定部
36 温度センサ(温度検出部)
37 湿度センサ(湿度検出部)
38 クロック(使用時間検出部)
39 液晶モニタ(表示部)
111 外部LED(報知部)
112 外部液晶モニタ(表示部)
121 ファン(換気部)
A 被測定電線路
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13