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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】毛髪処理装置
(51)【国際特許分類】
   A45D 20/14 20060101AFI20230501BHJP
   A45D 20/08 20060101ALI20230501BHJP
   A45D 7/06 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
A45D20/14
A45D20/08 Z
A45D7/06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018174124
(22)【出願日】2018-09-18
(65)【公開番号】P2020044041
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-08-06
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000108672
【氏名又は名称】タカラベルモント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】大柴 晴樹
【審査官】大内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-129503(JP,A)
【文献】特開平05-168518(JP,A)
【文献】特開2018-023754(JP,A)
【文献】特開2010-240231(JP,A)
【文献】特表2008-529731(JP,A)
【文献】特開平02-052604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 19/00~20/52
A45D 2/00~ 7/06
F21S 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被施術者の毛髪に照射される赤外線を放射する赤外線放射部、弧状に湾曲した形状であって凹面側に配置された前記赤外線放射部からの赤外線を毛髪に向けて反射させる反射部、および、冷風でも熱風でもない風を前記反射部の周囲の吹出し口から毛髪に向けて送風する送風部が備えられた長手の施術本体部と、
前記施術本体部を支持して被施術者の頭部の近傍に配置させる支持部と、を有し、
前記赤外線放射部、前記反射部及び前記送風部が、前記施術本体部に沿って長手であり
前記赤外線放射部が、扁平であり、当該赤外線放射部の両放射面が前記反射部と対面しており、
前記放射面から放射したほとんどの赤外線が、前記反射部で反射して被施術者の頭部よりも手前において交差し、当該交差部から被施術者の頭部における所定の照射幅の範囲に拡散するものであり
前記照射幅の範囲が、前記反射部の幅よりも広く、かつ、被施術者の頭部の大部分であり、
前記照射幅の範囲内における赤外線の照射照度が、前記照射幅の範囲外における赤外線の照射照度よりも、前記照射幅の範囲内外の境界で顕著に異なる程度に高い
ことを特徴とする毛髪処理装置。
【請求項2】
前記照射幅の範囲内における赤外線の照射照度の分布が概ね均一である
ことを特徴とする請求項1に記載された毛髪処理装置。
【請求項3】
前記反射部における被施術者側の端部と、被施術者の頭部との間隔が、約50から300mmである
ことを特徴とする請求項2に記載された毛髪処理装置。
【請求項4】
直交するY軸とZ軸とで表される座標系において、前記反射部の断面形状が、式1で表される、
ことを特徴とする請求項3に記載された毛髪処理装置。
[式1]
【数1】
1 :曲率半径
k:コーニック係数
C:1/r 1
【請求項5】
曲率半径が、r 1 =14から19、
コーニック係数が、k=-0.4から-0.9である、
ことを特徴とする請求項4に記載された毛髪処理装置。
【請求項6】
前記施術本体部が、前記支持部に対して被施術者の頭部の周囲を回転する、
ことを特徴とする請求項5に記載された毛髪処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪に赤外線を照射する際に用いられる毛髪処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、理美容施設では、例えば、カラー、パーマなどの施術が行われるところ、これらの施術の際、薬剤の効果を促進させるために、被施術者の毛髪に対して赤外線が照射される場合がある。例えば、下記特許文献1に記載された毛髪処理促進装置によれば、赤外線ヒーターを有する長手の部材が、被施術者の頭部の周囲を回転し、赤外線が毛髪に照射される。赤外線ヒーターは、例えばニクロム線などであり、反射板と共に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平4-129503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
赤外線ヒーターの形状は様々であるが、棒状であれば、長手方向と交差する全方位に向けて赤外線が放射されるところ、反射板を介して反射した赤外線は、頭髪に向けて集光されるが、反射板を介さずに放射された赤外線は、頭髪に向けて拡散する。このように、従来の外線ヒーターは、集光する赤外線と発散する赤外線とが交錯するため、赤外線のエネルギー分布が、所望の状態とならない場合がある。
【0005】
本発明は、上記の実情に鑑みて提案されたものである。すなわち、赤外線のエネルギー分布を所望の状態にすることができ、赤外線を効果的に毛髪に照射することができる毛髪処理装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る毛髪処理装置は、被施術者の毛髪に照射される赤外線を放射する赤外線放射部、および、赤外線を毛髪に向けて反射させる反射部が備えられた施術本体部と、前記施術本体部を支持して被施術者の頭部の近傍に配置させる支持部と、を有し、前記反射部が、弧状に湾曲した形状であり、凹面側に前記赤外線放射部が配置され、前記赤外線放射部が、扁平であり、当該赤外線放射部の両放射面が前記反射部と対面した、ことを特徴とする。
【0007】
本発明に係る毛髪処理装置は、前記放射面から放射して前記反射部で反射した赤外線が、被施術者の頭部よりも手前において交差し、当該交差部から被施術者の頭部に向けて拡散した、ことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る毛髪処理装置は、前記反射部における被施術者側の端部と、被施術者の頭部との間隔が、約50から300mmである、ことを特徴とする。
【0009】
本発明に係る毛髪処理装置は、直交するY軸とZ軸とで表される座標系において、前記反射部の断面形状が、式1で表される、ことを特徴とする。
[式1]
【数1】
1:曲率半径
k:コーニック係数
C:1/r1
【0010】
本発明に係る毛髪処理装置は、曲率半径が、r1=14から19、コーニック係数が、k=-0.4から-0.9である、ことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る毛髪処理装置は、前記施術本体部が、前記支持部に対して被施術者の頭部の周囲を回転する、ことを特徴とする。
【0012】
本発明に係る毛髪処理装置は、前記施術本体部が長手であり、この施術本体部の一方の端部が前記支持部に連結された、ことを特徴とする。
【0013】
本発明に係る毛髪処理装置は、前記施術本体部が、開口部が形成された本体カバー部と、この本体カバー部に収容された送風部とを有し、前記開口部に、前記凹面側が外側に向けられた前記反射部、および、前記送風部から毛髪に向けて送風される風が通る吹出し口が備えられた、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る毛髪処理装置は、被施術者の毛髪に照射される赤外線を放射する赤外線放射部、および、赤外線を毛髪に向けて反射させる反射部が備えられた施術本体部と、施術本体部を支持して被施術者の頭部の近傍に配置させる支持部とを有し、反射部が、弧状に湾曲した形状であり、凹面側に赤外線放射部が配置され、赤外線放射部が、扁平であり、当該赤外線放射部の両放射面が前記反射部と対面している。すなわち、扁平な赤外線照射部は、両放射面がいずれも反射部と対面しているため、放射面から放射されたほとんどの赤外線は、反射部で反射する。反射した赤外線は、毛髪に照射される。予め赤外線の反射角などを計算して反射部の曲面を設計することで、赤外線を所望の方向に集光させてネルギー分布を制御する。したがって、赤外線のエネルギー分布を所望の状態にすることができ、赤外線を効果的に毛髪に照射することができる。また、ほとんどの赤外線が反射部で反射するため、換言すれば、反射部を経ずに放射される赤外線の量が僅かである。すなわち、反射部の縁近傍において、反射部を経ずに放射される赤外線が僅かであれば、反射部の縁近傍に配置されたカバーなどの部材に直接照射される赤外線も僅かであるため、カバーなどへの熱の影響を抑えることができる。
【0015】
本発明に係る毛髪処理装置は、放射面から放射して反射部で反射した赤外線が、被施術者の頭部よりも手前において交差し、当該交差部から被施術者の頭部に向けて拡散する。この構成により、交差部よりも頭部側に向けた赤外線の反射範囲を、反射部の幅よりも広くすることがでる。したがって、照射範囲に関わらず反射部の小型化が実現する。なお、反射部を利用した一般的な技術では、反射した赤外線を被照射部に向けて集光させる仕様であるため、反射部を大きくすることで照射範囲が広げられる。
【0016】
本発明に係る毛髪処理装置は、反射部における被施術者側の端部と、被施術者の頭部との間隔が、約50から300mmである。したがって、被施術者の頭部に対して、赤外線のエネルギー分布を所望の状態にすることができ、赤外線を効果的に毛髪に照射することができる。
【0017】
本発明に係る毛髪処理装置は、直交するY軸とZ軸とで表される座標系において、反射部の断面形状が、式1で表される(r1:曲率半径、k:コーニック係数、C:1/r1)。この構成により、被施術者の頭部に対して、赤外線のエネルギー分布を所望の状態にするために、適切な反射部の形状が決定される。
【0018】
本発明に係る毛髪処理装置は、曲率半径が、r1=14から19、コーニック係数が、k=-0.4から-0.9である。すなわち、曲率半径およびコーニック係数を調節して設計することで、被施術者の頭部に対して、赤外線のエネルギー分布を所望の状態にするために、適切な反射部の形状が決定される。
【0019】
本発明に係る毛髪処理装置は、施術本体部が、支持部に対して被施術者の頭部の周囲を回転する。したがって、毛髪処理装置は、頭髪の全体に赤外線を斑なく照射することができる。
【0020】
本発明に係る毛髪処理装置は、施術本体部が長手であり、この施術本体部の一方の端部が支持部に連結されている。したがって、毛髪処理装置は、長髪に対して斑なく赤外線を照射することができる。
【0021】
本発明に係る毛髪処理装置は、施術本体部が、開口部が形成された本体カバー部と、この本体カバー部に収容された送風部とを有し、開口部に、凹面側が外側に向けられた反射部、および、送風部から毛髪に向けて送風される風が通る吹出し口が備えられている。この構成によって、反射部で反射した赤外線と、送風部からの風とが、共通の排出口である開口部を通って放出される。そのため、毛髪処理装置は、赤外線と風とを別々に一か所から毛髪に向けて放出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明の実施形態に係る毛髪処理装置が示され、(a)は右側面図、(b)は正面図、(c)は背面図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る毛髪処理装置における施術本体部の正面拡大図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る毛髪処理装置における施術本体部の断面が示され、図2におけるA-A断面図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る毛髪処理装置における反射板の断面図である。
図5図5は、本発明の実施形態に係る毛髪処理装置における赤外線の照射の様子が示された概略図である。
図6図6は、本発明の実施形態に係る毛髪処理装置における赤外線の分布が示され、(a)はY軸方向放射度分布計算例の図、(b)はX軸方向放射度分布計算例の図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下は、毛髪処理装置の説明である。図1は、毛髪処理装置1の外観が示されている。以下の説明では、設置面に対して垂直な方向である鉛直方向が、上下方向であり、被施術者(図示省略)に向けられる側が正面方向であり、その反対側が背面方向である。
【0024】
図1に示されているとおり、毛髪処理装置1は、設置面に自立する支持部2と、この支持部2の上端部に連結されて支持された施術本体部15とを有している。
【0025】
支持部2は、上下方向に縦長であり、上方部が鈍角に折れ曲がって傾斜している。支持部2は、複数のキャスター3a~dが取り付けられた支持脚部4と、この支持脚部4が下端部に接続された支持本体部8と、この支持本体部8の上端部に接続された支持連結部11とを有している。
【0026】
支持脚部4は、ほぼ水平方向に広がった“X”字状の水平脚部5の各先端にキャスター3a~dが取り付けられ、水平脚部5の中心から垂直脚部6が上方に伸びている。水平脚部5は、中心の下部に、ペダル7が備えられている。
【0027】
支持本体部8は、上下方向に長手の筐体に、電源部(図示省略)、制御部(図示省略)、ピストンシリンダー(図示省略)などが内蔵されている。ピストンシリンダーは、例えばガス式、油圧式などであり、支持脚部4のペダル7と連結されている。筐体は、正面側に電源スイッチ9が備えられ、背面側の上端部に、操作部10が形成されている。
【0028】
支持連結部11は、上下方向に長手の垂直連結部12と、この垂直連結部12の上端部から、斜め上方かつ前方に向けて伸びた傾斜連結部13と、この傾斜連結部13の先端部に取り付けられた連結本体部14とを有している。連結本体部14は、筐体に例えばギアモーター(図示省略)が内蔵されている。支持連結部11は、支持脚部4のペダル7が操作されることによって、支持本体部8のピストンシリンダーが稼働し、支持本体部8に対して上昇する。支持連結部11は、任意の高さで止められる。
【0029】
施術本体部15は、上下方向に長手のほぼ直方体であり、一方の端部である上端部に連結腕部16を有している。連結腕部16は、連結本体部14に連結され、支持連結部11のギアモーターに接続されている。すなわち、施術本体部15は、ギアモーターを介して、連結本体部14に対して回転する。施術本体部15の回転軸Pは、垂直方向に対して傾斜し、垂直方向の軸と回転軸Pとは鈍角である。なお、施術本体部15の長さは、任意である。例えば、施術本体部15は、上端部が被施術者の頭頂部の近傍に配置され、回転軸P上に頭部が配置された場合に、施術本体部15の他方の端部である下端部が、後頭部、首、肩、背中の近傍に配置される程度の長さである。
【0030】
以下は、施術本体部15についての詳細な説明である。図2は、施術本体部15の外観が示され、図3は、施術本体部15の断面が示されている。
【0031】
図2および図3に示されているとおり、施術本体部15は、正面側に開口部18が形成された本体カバー部17と、この本体カバー部17の内側に収容された送風部20と、開口部18に取り付けられた赤外線放射部21、反射部22および吹出し口26と、この吹出し口26の近傍に配置されて風向きを制御する風向板27と、開口部18を覆う格子状のガードカバー28とを有している。
【0032】
本体カバー部17は、上下方向に長手のほぼ直方体であり、側面に吸気孔19が形成されている。開口部18も、本体カバー部17の長手方向に沿って上下方向に長手である。ガードカバー28は、開口部18の長さに対応して上下方向に長手である。
【0033】
反射部22および吹出し口26は、開口部18におけるガードカバー28よりも内側において、互いに隣接して取り付けられている。反射部22は、開口部18の長さに対応して上下方向に長手であり、断面が、弧状に湾曲した形状である。反射部22の凹面23は、施術本体部15の外側に向けられ、凸面24は、施術本体部15の内側に向けられている。反射部22は、施術本体部15の上端部側であって、反射部22において中心よりも吹出し口26に近い側の近傍に、通風孔25が形成されている。なお、通風孔25の形状および数は任意である。吹出し口26は、開口部18の長さに対応して上下方向に長手であり、例えば、ハニカム構造などによる整流器を有している。風向板27は、開口部18の長さに対応して上下方向に長手であり、吹出し口26に対して反射部22と反対側に取り付けられている。
【0034】
赤外線放射部21は、カーボンヒーターであり、開口部18の長さに対応して上下方向に長手である。赤外線放射部21は、反射部22の凹面23側における中心に配置されている。
【0035】
送風部20は、例えばクロスフローファンであり、開口部18の長さに対応して上下方向に長手である。送風部20は、反射部22の凸面24側において、本体カバー部17の内側に配置されている。なお、羽の形状や数は任意である。
【0036】
以下は、反射部22および赤外線放射部21の詳細な説明である。図4は、反射部22の断面であって、この反射部22における赤外線放射部21の配置が示されている。
【0037】
図4に示されているとおり、反射部22の断面形状は、直交するY軸とZ軸とで表される二次元座標系において、[式1]で表される。なお、図4に示されているとおり、上方から視した場合において、湾曲の度合いが最も大きい箇所を原点とし、反射部22の幅方向がY軸であり、反射部22の厚み方向にY軸と直交する方向がZ軸である。
【0038】
[式1]
【数2】
【0039】
1:曲率半径
k:コーニック係数
C:1/r1
曲率半径は、r1=14から19
コーニック係数は、k=-0.4から-0.9
【0040】
赤外線放射部21は、例えば、石英ガラスなどで棒状に形成された容器30に、フィラメント状のカーボンが編み込まれて扁平な薄板状に形成された面源部31が封入されている。赤外線の放射温度は、例えば、1100から1400Kであることが好ましい。
【0041】
赤外線照射部21と凹面23との距離は、反射部23が過剰に加熱されない程度である。赤外線照射部21の両放射面32a、bは、いずれも反射部22の凹面23と対面している。すなわち、面源部31は、Z軸に並行に、かつ、Y軸と直交して配置され、一方の放射面32aが、凹面23における一方の凹内面33aと対面し、他方の放射面32bが、凹面23における他方の凹内面33bと対面している。
【0042】
以上のとおり、毛髪処理装置1が構成されている。以下は、毛髪処理装置1の動作の説明である。図5は、上方から視した赤外線の照射の様子の概略が示されている。
【0043】
例えば、図1において、毛髪処理装置1は、被施術者の背面に設置され、連結腕部16が被施術者の頭部の近傍に配置される。回転軸P上に頭部が配置され、施術本体部15が被施術者の後頭部の近傍に配置される。その際、施術本体部15は、支持脚部4のペダル7が操作されることによって、支持本体部8のピストンシリンダーが稼働し、支持本体部8に対して支持連結部11と共に昇降する。電源スイッチ9が入れられると、図3において、赤外線放射部21から赤外線が放射される。同時に、送風部20が稼働すると、吸気孔19から吸気され(流路29a)、風が反射部22の凸面24に送られる(流路29b)。凸面24に当たった風は、反射部22の熱で極僅かに加温され、熱風ではない状態で、風向板27に当たって吹出し口26から放出される(流路29c、29d)。風量は、例えば1m3/minある。
【0044】
図5に示されているとおり、反射部22における仮想線Sから被施術者の頭部Hとの間隔は、約50から300mmである。ここで、仮想線Sは、反射部22において、被施術者側の端部をとおり、Y軸と平行な線である。赤外線照射部21の両放射面32a、bは、いずれも反射部22の凹面23と対面しているため、赤外線は、一方の放射面32aが、凹面23における一方の凹内面33aで反射し、他方の放射面32bが、凹面23における他方の凹内面33bで反射する。反射した赤外線は、後頭部よりも手前において交差し、この交差部Cから後頭部に向けて拡散する。赤外線は、照射幅Wの範囲で毛髪に照射される。照射幅Wは、仮想線Sから被施術者の頭部Hとの間隔、曲率半径、コーニック係数に基づいて決定される。
【0045】
反射部22で反射した赤外線は、毛髪の表面の水分に吸収され、毛髪は、内部に水分が残って潤ったまま、表面の水分のみが気化する。同時に、毛髪は、送風部20からの風が当たることで、内部の潤いが残ったまま表面のキューティクルが引き締められる。風は、頭髪の表面だけでなく、密集した頭髪をかき分けて、内部の毛髪に届くため、頭髪全体に渡って各毛髪が同様に処理される。すなわち、毛髪は、内部に水分を残しつつ、表面が乾燥することで、様々な施術を行ううえで適切な状態となる。
【0046】
また、施術本体部15は、支持本体部8の操作部10で選択された動作モードに従って、支持部2に対して被施術者の頭部の周囲を回転する。例えば、施術本体部15のうち、回転中心から最も離れた下端部が、鉛直方向における下端に配置された状態(図1参照。)の回転角を0度とした場合、施術本体部15は360度回転することができる。なお、動作モードを決定するプログラムは任意であるため、施術本体部15は、任意の回転角において往復運動することもでき、また、回転運動や往復運動をせずに、任意の回転角の位置で停止することもできる。
【0047】
上記のとおり、毛髪処理装置1が構成されている。以下は、毛髪処理装置1の効果の説明である。
【0048】
毛髪処理装置1は、フィラメント状のカーボンが編み込まれて扁平な薄板状に形成された面源部31を有する赤外線放射部21が、Z軸に並行に、かつ、Y軸と直交して配置され、一方の放射面32aが、凹面23における一方の凹内面33aと対面し、他方の放射面32bが、凹面23における他方の凹内面33bと対面している(図4参照)。すなわち、扁平な赤外線照射部は、両放射面32a、bがいずれも凹面23と対面しているため、両放射面32a、bから放射されたほとんどの赤外線は、凹面23で反射する。特に、予め赤外線の反射角などを計算し、上記した[式1]に則って反射部の曲面を設計することで、赤外線を所望の方向に集光させてネルギー分布を制御することができる。したがって、赤外線のエネルギー分布を所望の状態にすることができ、赤外線を効果的に毛髪に照射することができる。
【0049】
また、ほとんどの赤外線が凹面23で反射するため、換言すれば、凹面23を経ずに放射される赤外線の量が僅かである。すなわち、反射部22の縁近傍において、凹面23を経ずに放射される赤外線が僅かであれば、反射部22の縁近傍に配置されたガードカバー28などの部材に直接照射される赤外線も僅かであるため、ガードカバー28などへの熱の影響を抑えることができる。
【0050】
毛髪処理装置1では、凹面23で反射した赤外線が、頭部Hよりも手前において交差し、この交差部Cから頭部Hに向けて拡散する(図5参照)。この構成により、交差部Cよりも頭部H側に向けた赤外線の反射範囲を、反射部22の幅よりも広くすることができる。したがって、照射範囲に関わらず反射部22の小型化が実現する。
【0051】
特に、反射部22における仮想線Sから被施術者の頭部Hとの間隔を、約50から300mm、曲率半径を、r1=14から19、コーニック係数を、k=-0.4から-0.9の間でそれぞれ調節することで、毛髪に照射される赤外線の照射幅Wを任意に設定することができる。具体的には、照射幅Wを、頭部Hの中心から両幅方向に向けてそれぞれ65mm(照射幅W=130mm)まで調節することができ、この範囲において赤外線のエネルギー分布を所望の状態にすることができ、赤外線を効果的に毛髪に照射することができる。このように、赤外線のエネルギー分布や照射範囲を選択することができるため、施術に応じた適切な加温や毛髪の乾燥状態を実現することができる。
【0052】
施術本体部15は、支持連結部11のギアモーターを介して、連結本体部14に対して、被施術者の頭部の周囲を回転する。したがって、毛髪処理装置1は、頭髪の全体に赤外線を斑なく照射することができる。
【0053】
施術本体部15は、上下方向に長手であり、この施術本体部15の上端部の連結腕部16が、支持部2の連結本体部14に連結されている。したがって、毛髪処理装置1は、長髪に対して斑なく赤外線を照射することができる。
【0054】
施術本体部15は、開口部18に、凹面23側が外側に向けられた反射部22、および、送風部20から毛髪に向けて送風される風が通る吹出し口26が備えられている。この構成によって、反射部22で反射した赤外線と、送風部20からの風とが、共通の排出口である開口部18を通って放出される。したがって、毛髪処理装置1は、赤外線と風とを別々に一か所から毛髪に向けて放出することができる。
【0055】
以下は、本発明の実施例の説明である。図6は、毛髪処理装置1における赤外線の分布が示されている。なお、図6におけるY軸は、図4と同様であり、X軸は、赤外線放射部21の長手方向である。原点は、赤外線放射部21の中心であり、かつ、赤外線放射部21の長手方向における中央である。
【0056】
仮想線Sと頭部Hとの間隔を約150mmとし、後頭部に接する仮想平面において赤外線の放射照度を計算した。図6に示されているとおり、Y軸およびX軸における赤外線放射照度の分布は、仮想平面において、照射幅Wが130mmの範囲で効率よく照射されていることがわかる。
【0057】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。そして本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 毛髪処理装置
2 支持部
3a~3d キャスター
4 支持脚部
5 水平脚部
6 垂直脚部
7 ペダル
8 支持本体部
9 電源スイッチ
10 操作部
11 支持連結部
12 垂直連結部
13 傾斜連結部
14 連結本体部
15 施術本体部
16 連結腕部
17 本体カバー部
18 開口部
19 吸気孔
20 送風部
21 赤外線放射部
22 反射部
23 凹面
24 凸面
25 通風孔
26 吹出し口
27 風向板
28 ガードカバー
29a~29d 流路
30 容器
31 面源部
32a、b 放射面
33a、b 凹内面
C 交差部
H 頭部
P 回転軸
S 仮想線
W 照射幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6