(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
F25D 25/00 20060101AFI20230501BHJP
F25D 23/06 20060101ALI20230501BHJP
F25D 17/04 20060101ALI20230501BHJP
F25D 17/06 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
F25D25/00 Z
F25D25/00 E
F25D23/06 P
F25D17/04 302
F25D17/06 308
(21)【出願番号】P 2018246780
(22)【出願日】2018-12-28
【審査請求日】2021-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】307036856
【氏名又は名称】アクア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100186060
【氏名又は名称】吉澤 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100145458
【氏名又は名称】秋元 正哉
(72)【発明者】
【氏名】設楽 真輔
【審査官】関口 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-280834(JP,A)
【文献】実開昭57-109480(JP,U)
【文献】特開平08-094228(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0181911(US,A1)
【文献】特開平11-237147(JP,A)
【文献】特開2006-057970(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 25/00
F25D 23/06
F25D 17/04
F25D 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷蔵庫庫内において、
被支持部材を支持する支持部材を支持する支持構造体を備え、
前記支持構造体は、前記支持部材側に備えられる上面から上方にせり出し後方に延設されるように形成された掛止部と、
庫内空間を形成する
内箱の上面に前記掛止部を掛止する掛止受けとからな
り、
前記掛止受けを掛止受け部材が有していて、
前記掛止受け部材は、庫内空間を形成する内箱の前記上面の部分から上方側にツマミ部材を位置させ、内箱の前記上面の部分から下方側に前記掛止受けを位置させた部材であって、
前記掛止受けは、庫内空間前方に向けて開いた開口であることを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
前記支持構造体は、前記支持部材後方に位置するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
冷気を前記被支持部材内に排出する冷気排出口を備え、
前記被支持部材は、
収納物を収納する収納部材であり、
後方の位置であって左右どちらかに偏倚した位置に冷気を導入する冷気導入口と、前方に前方壁を形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記冷気排出口は、縦断面上方の少なくとも一部を傾斜させたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から一般的に利用される冷蔵庫は、冷蔵室、冷凍室といった庫内空間の概形を形成する内箱と、外郭にあたる外箱、および、その間に充填される発泡断熱材を有する断熱箱体として形成される。冷蔵室等といった冷蔵庫庫内には、利用者の利便性向上や冷却効率向上の観点から、庫内を適当に区画するために中仕切り部材が設けられる。また、中仕切り部材に、引き出し式の収納手段を支持ガイドするための支持部材などが設けられることも多い。
【0003】
こうした中仕切り部材を設けるにあたっては、たとえば、特許文献1のように、内箱を真空形成する際に中仕切り部材を接合する手段が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、内箱の真空成型の段階では組み付けが困難な中仕切り部材も存在する。例えば、
図12に示す冷蔵庫100のように、下方の庫内110が中仕切り部材120により左右に区画され、また、庫内110の上方面に引き出し式の収納手段を支持する支持部材130が設けられる場合、一般的には、内箱101に、中仕切り部材120、および、収納手段組み付けのための支持部材130の組付作業が必要となる。
【0006】
ここで、内箱101等に組み付けられる中仕切り部材120や支持部材130は、断熱箱体形成の前後、すなわち、内箱101と外箱との間の発泡断熱材を充填発泡させる前後のどちらかのタイミングで組み付けられることとなる。冷蔵庫100における中仕切り部材120のように、庫内110それ自体の形状や庫内110に設けられる他の各種部材や手段等の形状を前提に成形されている部材等は、発泡断熱材の発泡後、別の各種手段が組み付けられた後から組み付けることになる。
【0007】
一方で、支持部材130の組付作業を、発泡断熱材の発泡後に行おうとすると、特に、冷蔵庫100下部の庫内110の奥側で、かつ、庫内空間上面にビス止め位置がくる。そのため、作業者が作業をする上で、非常に視認性が悪く、ビス穴の位置把握が困難であるなど、組付作業が困難であるという不都合があった。
【0008】
そのため、支持部材130のように、発泡断熱材の発泡後に組付作業を行うと、視認性が悪いなどの理由で作業が困難となるため、作業効率が悪くなるような手段の組付作業は、発泡断熱材の発泡前の段階で、内箱101に直接、組付作業をする方が望ましい。
【0009】
しかしながら、支持部材130を発泡断熱材の発泡前の段階で組み付けて、発泡後に中仕切り部材120を組み付けようとすると、支持部材130が作業の邪魔になる。また、支柱140を避けつつ中仕切り部材120を入れ込む場合、中仕切り部材120を入れ込むスペースを支持部材130が塞いでしまうなど、支持部材130が干渉して中仕切り部材120の組み付けが困難である、といった不都合があった。
【0010】
本発明の目的は、発泡断熱材の発泡、および、中仕切り部材120の組付作業の後に、支持部材130の組付作業ができるようにすることで、組付作業を容易、かつ、効率的にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述の課題に鑑み、本発明に係る冷蔵庫は、
冷蔵庫庫内において、
被支持部材を支持する支持部材を支持する支持構造体を備え、
前記支持構造体は、前記支持部材側に備えられる上面から上方にせり出し後方に延設されるように形成された掛止部と、
庫内空間を形成する内箱の上面に前記掛止部を掛止する掛止受けとからなり、
前記掛止受けを掛止受け部材が有していて、
前記掛止受け部材は、庫内空間を形成する内箱の前記上面の部分から上方側にツマミ部材を位置させ、内箱の前記上面の部分から下方側に前記掛止受けを位置させた部材であって、
前記掛止受けは、庫内空間前方に向けて開いた開口であることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る冷蔵庫は、前記支持構造体は、前記支持部材後方に位置するようにしたことを特徴とする。
【0013】
本発明に係る冷蔵庫は、さらに、冷気を前記被支持部材内に排出する冷気排出口を備え、
前記被支持部材は、
後方の位置であって左右どちらかに偏倚した位置に冷気を導入する冷気導入口と、前方に前方壁を形成したことを特徴とする。
【0014】
本発明に係る冷蔵庫は、さらに、前記冷気排出口は、縦断面上方の少なくとも一部を傾斜させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る冷蔵庫によれば、支持部材に備えられる上面から上方にややせり出し後方に延設されるように形成される掛止部と、庫内空間を形成する上面に前記掛止部を掛止する掛止受け部材からなる支持構造体を備えるため、支持部材を掛止受け部材に引っ掛けた状態での作業が可能となる。そのため、発泡断熱材発泡後の狭い庫内で上方を見上げつつ、支持部材が落下しないように全体を押さえながらの組付作業といった困難な組付作業が強いられることがなくなる。また、これにより、発泡断熱材発泡後に中仕切り部材を組み付けた後に支持部材の組み付けができるため、支持部材と中仕切り部材が干渉することにより組み付けが困難になる、といった組付作業における前述の問題を解消することができる。
【0016】
本発明に係る冷蔵庫によれば、支持構造を支持部材の後方に位置するようにしたので、組付作業の際、特に視認性が悪い庫内奥側において支持部材を掛止した状態で作業できるため、組付作業を容易化することができる。また、ビス止め等による固定作業を視認性の良い前方側だけとすることができる。
【0017】
本発明に係る冷蔵庫によれば、冷気排出口から被支持部材内に冷気を排出するにあたり、被支持部材の後方の位置であって左右どちらかに偏倚した位置において冷気を導入し、被支持部材前方に前方壁を形成しているので、冷気の排出の勢いと前方壁への衝突により冷気が被支持部材内で回転循環するようになる。そのため、より確実に、かつ、速やかに被支持部材内の収納物を冷却することができる。
【0018】
本発明に係る冷蔵庫によれば、前記冷気排出口は、縦断面上方の少なくとも一部を傾斜させているため、排出される冷気の向きが斜め下方向きとなる。そのため、被支持部材前方壁に衝突し易くなるため、被支持部材内の冷気の循環に資する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】一般的な冷蔵庫の外観の一例と、本実施例の説明における方向の定義を付けるための説明図である。
【
図2】本実施形態に係る冷蔵庫の、特に下方の庫内に備えられる各部の分解斜視図である。
【
図3】本実施形態に係る冷蔵庫の庫内の様子を示す正面図である。
【
図5】
図3で指示するE-E線断面の要部拡大図である。
【
図11】仕切り部材のファン、および、冷気排出口近傍の透視図である。
【
図12】本発明が解決しようとする課題を説明するための冷蔵庫庫内の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係る冷蔵庫10について詳細に説明する。以下の本実施形態に係る冷蔵庫の説明にあたり、「上下」「左右」「前後」といった方向を示す語については、
図1に示すとおりとする。すなわち、「上下」方向は、冷蔵庫10の高さ方向に対応し、「左右」方向は、冷蔵庫10の幅方向に対応し、「前後」方向は、冷蔵庫10の奥行き方向に対応するものとする。これを前提に、以下、本実施形態に係る冷蔵庫10について説明する。
【0021】
図2、および、
図3に示すように、冷蔵庫10は、冷凍室と冷却室とを仕切るものであって、発生された冷気を庫内に送るための仕切り部材20と、庫内11を左右に区画する中仕切り部材30と、中仕切り部材30の組付位置から更に前方側に備えられる支柱部材13と、引き出し式等の被支持部材50と、それを支持するための支持部材40とを備える。
【0022】
図4に示すように、仕切り部材20は、内部に冷気の流路となる空間を形成しており、所望の位置から冷気を庫内に導入する冷気排出口21を備える。仕切り部材20の左右方向ほぼ中央の位置に、冷気を庫内11に循環させるファン23が備えられ、その下方にエバポレータ24を備える。また、ファン23は、冷凍庫10の高さ位置において上側となる位置に備えられる。
【0023】
冷気排出口21は、冷蔵庫庫内の構成や形状に応じて複数設けてもよい。なお、本実施形態に係る以下の説明において、冷気排出口21とは、図示しているものを指し、それ以外の図面に表れる冷気排出口は、本実施形態においては重要でないため、図示、および、説明は省略する。
【0024】
中仕切り部材30は、庫内11の空間を左右に区画する部材である。中仕切り部材30には、引き出し式の収納庫を支持、ガイドする収納庫支持部材31等が備えられる。
【0025】
支持部材40は、庫内11を形成する上方面に固定されるものであり、被支持部材50を掛止し、前後方向に移動自在に支持するための支持部42を備える。また、支持部材40は、後述する、掛止受け部材400に掛止支持されるように支持部材40の天面よりやや上方に張り出し、天面と略平行で後方に延びる掛止部41を備える。
【0026】
被支持部材50は、たとえば、食料や飲料を収納する収納空間を備える収納部材であり、具体的には、野菜室内に更に設置される小型の簡易な収納部材であるが、これに限定されない。
【0027】
図3乃至
図5に示すように、支持部材40は、内箱12等による庫内11を形成する上方面の所定の位置に組み付けられる。その状態で、一対の支持部42が下方に延び、被支持部材50を前後方向に移動自在に左右側から掛止支持する。
【0028】
図6は、
図4にて指示するB-B線断面図である。庫内11の上面を形成する内箱12において矩形領域12
5として示す部分の下方、すなわち、内箱12を挟んで庫内11側に支持部材40が組み付けられる。
【0029】
内箱12は、支持部材40の組付位置において、そのやや後方位置に、凸状部12aが形成され、頂部は掛止受け部材400を組み付けるための開口を有する。
【0030】
図7に示すように、掛止受け部材400は、組み付ける際に作業者が指で保持するためのツマミ部401と、固着手段404と、略U字状形成される掛止受け403と、掛止受け403により形成される掛止部挿入空間402を有する。
【0031】
図8、および、
図9に示すように、内箱12に形成される凸状部12
aの開口に、掛止受け部材400の掛止受け403が庫内11にやや入り込んだ位置で固着手段404により掛止受け部材400が固定される。
【0032】
支持部材40が備える掛止部41は、掛止受け部材400の掛止部挿入空間402に入り込んだ状態で組み付けられる。これにより、掛止部41が掛止受け403に掛かった状態となり、支持部材40が掛止めされる。このように、支持部材40が備える掛止部41と、掛止受け部材400の掛止受け403とが、支持部材40を支持するための支持構造体としての役割を果たす。
【0033】
作業者が、支持部材40の組付作業を行うときは、まず、支持部材40の掛止部41を掛止部挿入空間402に挿入する。これにより、掛止部41が掛止受け403により掛止されることで掛止部41が支持されることになる。つまり、掛止部41に掛止受け403に引っ掛かった状態にすれば、少なくとも、支持部材40の一部が掛け止めされており落下防止に資するため、作業者が支持部材40の組み付ける際、下方から上方に向かって支持部材40を押さえつつ固定する作業が容易となる。
【0034】
また、掛止部41、および、掛止受け部材400は、組み付けられた状態における支持部材40の後方側に備えられることが望ましい。これにより、支持部材40の特に後方側が掛け止めされるようになる。このような構成を採用することによって、作業者にとっては、手が届きやすく、また、視認性が向上する。さらに、作業者は、支持部材40の前方付近だけを押さえれば支持部材40の落下を防止することができるので、組付作業が更に容易となる。また、支持部材40後方が掛止されるため、前方側の固定手段12f,12fのみを固定することで、支持部材40の組み付けを完了することができる。
【0035】
また、
図10、および、
図5を参照しつつ、仕切り部材20の冷気排出口21、および、被支持部材50との関係について説明する。蒸発器で冷却された冷気は、仕切り部材20を介して、冷気排出口21から排出される。冷気排出口21は、被支持部材50内に冷気を直接送り込むことができるように、被支持部材50の後方近接した位置に設定される。
【0036】
被支持部材50には、冷気排出口21と近接した位置関係となるように、冷気導入口52が形成される。冷気導入口52は、被支持部材50の後方上縁部分を下方に窪ませ、かつ、後方にややせり出す形状となる。
【0037】
冷気排出口21の高さは、
図5に示すように、冷気導入口52とほぼ同じ高さから、それよりやや高い位置となるように設定するのが望ましい。また、冷気排出口21からの冷気の排出方向が、斜め下方方向となるように冷気排出口21の角度を適宜設定してもよいし、排出方向調整部22を設けるようにしてもよい。
【0038】
排出方向調整部22は、たとえば、冷気排出口21の冷気出口付近のみ、他の部位より角度を付けるようにしてもよい。その際、冷気排出口21の断面上方を断面下部より長く延設することとしてもよい。ただ、これに限定されるものではない。
【0039】
なお、
図12に示すファン23周囲に示す矢印はファン23からの風向きを示す。ファン23の位置に近接する位置だと十分な風量が供給されないので、十分な冷気が冷気排出口21から排出されるよう、冷気排出口21はファン23から離反した位置とする。例えば、冷気排出口21の位置をファン23の半径程度離した位置にするのが好適であるが、これに限定されるものではない。
【0040】
また、
図11に示すように、被支持部材50の冷気導入口52は、後方側に形成される。また、被支持部材50の冷気導入口52は、被
支持部材50の後方側の左右どちらかに偏倚した位置となるよう形成される。
【0041】
これにより、冷気排出口21から斜め下方向きに排出された冷気が、冷気導入口52を介して被支持部材50内に導入され、冷気は排出の勢いと前方側の前方壁51への衝突とにより、被支持部材50内に冷気が回転循環するように冷気を排出することができる。これにより、被支持部材50内の収納物を確実に、かつ、速やかに冷却することができる。
【0042】
本発明は、前述の例に限定されない。被支持部材50は、前述の説明のような収納の用に供する部材に限定されるものではなく、たとえば、棚部材、製氷皿、庫内灯の光源、または、カバー、もしくは、その他の部材であってよい。支持部材40も同様に、棚支持部材、製氷皿支持部材、庫内灯のハウジング、など庫内上面に組み付けて被支持部材を支持する部材に広く適用できる。
【0043】
また、前述の説明における、各部材、各手段の材料は特に限定されるものではなく、合成樹脂,各種金属など従来既知の材料を適宜利用できる。
【0044】
前述の説明は、本発明を限定する趣旨で記載されたものではない。本発明には、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るものを含み得る。また、本発明にはその等価物が含まれる。
【符号の説明】
【0045】
10 冷蔵庫
11 庫内空間
12 内箱
12a 凸状部
12f 固定手段
13 支柱部材
20 仕切り部材
21 冷気排出口
22 排出方向調整部
23 ファン
24 エバポレータ
30 中仕切り部材
31 収納庫支持部材
40 支持部材
41 掛止部
42 支持部
50 被支持部材
51 前方壁
52 冷気導入口
400 掛止受け部材
401 ツマミ部
402 掛止部挿入空間
403 掛止受け
404 固着手段