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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】注入装置
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20230501BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
E04G23/02 B
B05C5/00 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019079428
(22)【出願日】2019-04-18
(65)【公開番号】P2020176446
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】506162828
【氏名又は名称】FSテクニカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001623
【氏名又は名称】弁理士法人真菱国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 正吾
【審査官】荒井 隆一
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-247770(JP,A)
【文献】特開2002-242418(JP,A)
【文献】特開平09-329079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/02
E04F 21/165
B05C 5/00
F04B 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主成分となるセメントの微粒子と水とを混合して成るセメントスラリーを対象物に注入するための注入装置であって、
シリンダー部に対し往復動するプランジャー部により、前記シリンダー部の周面に形成された吸込口から吸い込んだ前記セメントスラリーを、前記シリンダー部の先端部に形成された吐出口から吐出する往復ポンプ部を備え、
前記プランジャー部は、前記シリンダー部に対し非摺接状態で往復動するプランジャー本体と、前記プランジャー本体に形成した環状溝部に装着され、前記シリンダー部に対し摺接状態で往復動する環状シール部と、を有し、
前記環状溝部は、軸方向に離間して前記プランジャー本体に形成された、先端側の第1環状溝と基端側の第2環状溝とを有し、
前記環状シール部は、前記第1環状溝に装着され前記吸込口を含む領域において往復動する第1環状シールと、前記第2環状溝に装着され前記吸込口よりも基端側の領域で往復動する第2環状シールと、を有し、
前記シリンダー部と前記プランジャー本体との間隙は、往復動に際し前記環状シール部が前記環状溝部から離脱しない範囲で、前記セメントの微粒子の最大粒子径0.04mmよりも大きいことを特徴とする注入装置。
【請求項2】
前記第1環状シールおよび前記第2環状シールの各々は、断面方形に形成され、且つ硬度ショアA45度~90度のゴム材で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の注入装置。
【請求項3】
前記第1環状溝および前記第2環状溝の各々は、前記第1・第2各環状シールを支持する装着軸部と、軸方向において前記第1・第2各環状シールを挟持すると共に、摺動に伴う前記第1・第2各環状シールの径方向外周部における軸方向の変形を許容する一対の装着挟持部と、を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の注入装置。
【請求項4】
前記シリンダー部は、前記プランジャー本体に対応するシリンダー本体と、前記シリンダー本体の基端から軸方向に延長された直動ガイド部と、を有し、
前記プランジャー部は、前記プランジャー本体の基端から軸方向に延長され、前記直動ガイド部に摺接する直動被ガイド部を、更に有していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の注入装置。
【請求項5】
前記シリンダー本体の前記直動ガイド部側の基端部には、前記シリンダー本体の内部と外部とを連通する連通孔が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の注入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物に生じた浮きやひび割れ等の対象物に対し、セメントスラリーを注入するための注入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の注入装置として、エポキシ樹脂をコンクリートクラック等に注入する補強用注入材・充填材の混合注出装置が知られている(特許文献1参照)。
この混合注出装置は、フレームにそれぞれ支持した主剤タンクおよび硬化剤タンクと、主剤タンクにサクション側ホースを介して接続された主剤側のピストンポンプと、硬化剤にサクション側ホースを介して接続された硬化剤側のピストンポンプと、両ピストンポンプを同時に作動させる操作レバーと、一対の送出ホースを介して両ピストンポンプのデリベリー側に接続された混合部付きのノズルと、を備えている。両ピストンポンプは、それぞれ下端部をフレームに傾斜自在に取り付けられ、上端部でロッド連結ポイントを介して操作レバーに連結されている。また、操作レバーの先端部は、連結ピンを介してフレームにヒンジ連結されている。
連結ピンを中心に操作レバーを上下作動させ、各ピストンポンプのシリンダーに対しピストンを往復動させると、それぞれの送出ホースを介して主剤および硬化剤が混合部に供給され、ここで混合されてノズルから吐出される。
【0003】
一方、特許文献1の「従来の技術」の欄には、エポキシ樹脂と硬化剤の混合物を注入する装置として、グリースポンプが用いられることが記載されている。そして、この種のグリースポンプの具体的な例として、レバー式グリースガンが知られている(特許文献2参照)。特許文献2の「従来の技術」の欄には、図4と共に典型的なレバー式グリースガンが記載されている。
このレバー式グリースガンは、注入物のチューブを収容する外筒と、外筒に取り付けられ、シリンダー室およびプランジャーを有するキャップと、キャップに取り付けられた注油口金と、キャップに揺動可能に取り付けられたリンクと、プランジャーおよびリンクにそれぞれ揺動可能に取り付けられたレバーと、を備えている。そして、キャップのシリンダー室とチューブ接続口とが連通し、且つシリンダー室と注油口金接続口とが連通している。また、注油口金接続口側の流路には、逆止弁が介設されている。
レバーを操作してプランジャーを引くと、チューブ内の注入物がシリンダー室に吸引され、続いてプランジャーを押すと、シリンダー室の注入物がチューブ接続口を介して注油口金から吐出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-28913号公報
【文献】実用新案登録第3046945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような、従来の混合注出装置やレバー式グリースガンでは、プランジャー(ピストン)がシリンダー内を往復動することで、注入物のポンプ作用が為される。一方、プランジャーの往復動は、レバー(操作レバー)の回動操作により行われる。このため、レバーを含むリンク機構により、レバー操作による回動運動がプランジャーの往復直線運動に変換される。このリンク機構において、特許文献1ではピストンポンプ(シリンダー)がフレームに対し傾動し、特許文献2ではレバーに連結されたリンクがキャップに対し揺動する。このため、往復直線運動するプランジャーは、シリンダー内において、往復動に同期するように微小に揺動することになる。
この微小な揺動は、注入物がエポキシ樹脂の場合には、エポキシ樹脂が潤滑剤として機能するため、問題とはならないが、注入物がセメントスラリーの場合には、シリンダーの往復動(摺動)が円滑に行われなくなる問題がある。
セメントスラリーは、主成分となる微粒子のセメントに水を混合したものであり、親水性があり、また硬化後は、熱膨張係数、強度、弾性係数等においてコンクリートと同等であり、しかも火災に強いため、エポキシ樹脂に対し優位性を有している。
注入物がセメントスラリーの場合には、微小な揺動に合わせてプランジャーとシリンダーとの間(特に、狭くなる先端部と基端部)にセメントスラリーの微粒子(セメントの微粒子)が噛み込む形となり、シリンダーの往復動(摺動)が円滑に行われなくなる問題があった。
この点、例えばプランジャーにOリング等のシールリングを設ける構造において、シールリングとシリンダーとの間に上記微粒子の噛み込みが阻止できても、シールリング以外の部分とシリンダーとの間に微粒子が噛み込むと、シリンダーの往復動(摺動)の円滑さは損なわれることとなる。
【0006】
本発明は、注入物がセメントスラリーであっても、ポンピングの円滑さが損なわれることのない注入装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の注入装置は、主成分となるセメントの微粒子と水とを混合して成るセメントスラリーを対象物に注入するための注入装置であって、シリンダー部に対し往復動するプランジャー部により、シリンダー部の周面に形成された吸込口から吸い込んだセメントスラリーを、シリンダー部の先端部に形成された吐出口から吐出する往復ポンプ部を備え、プランジャー部は、シリンダー部に対し非摺接状態で往復動するプランジャー本体と、プランジャー本体に形成した環状溝部に装着され、シリンダー部に対し摺接状態で往復動する環状シール部と、を有し、環状溝部は、軸方向に離間してプランジャー本体に形成された、先端側の第1環状溝と基端側の第2環状溝とを有し、環状シール部は、第1環状溝に装着され吸込口を含む領域において往復動する第1環状シールと、第2環状溝に装着され吸込口よりも基端側の領域で往復動する第2環状シールと、を有し、シリンダー部とプランジャー本体との間隙は、往復動に際し環状シール部が環状溝部から離脱しない範囲で、セメントの微粒子の最大粒子径0.04mmよりも大きいことを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、シリンダー部に対し往復動するプランジャー部は、シリンダー部に対し、プランジャー本体が非摺接状態となる一方、プランジャー本体に装着した環状シール部が摺接状態となる。そして、環状シール部が復動することで、吸込口からシリンダー部内にセメントスラリーが吸い込まれ(流入)、往動することで、シリンダー部内のセメントスラリーが吐出口から吐出される(流出)。この場合、非摺接状態となるシリンダー部とプランジャー本体との間隙が、往復動に際し環状シール部が環状溝部から離脱しない範囲で、セメントの微粒子の最大粒子径よりも大きいため、シリンダー部とプランジャー本体との間隙にセメントスラリーが侵入しても、この間隙にセメントの微粒子が噛み込む状態とはならない。したがって、プランジャー部を往復動させるポンピングにおいて、その円滑さが損なわれることがない。
また、先端側の第1環状シールにより、ポンプとしての機能が発揮される。また、基端側の第2環状シールより、非摺接状態となるプランジャー部とシリンダー部との基端側の間隙に対し、セメントスラリーの侵入が抑制される。これにより、ポンプ機能が損なわれることがなく、且つポンピングの円滑さが損なわれることがない。
【0011】
この場合、第1環状シールおよび第2環状シールの各々は、断面方形に形成され、且つ硬度ショアA45度~90度のゴム材で構成されていることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、第1環状シールおよび第2環状シールが、適度な弾力性と硬度を有し、且つシリンダー部の内周面に付着したセメントスラリー(微粒子)を掻き出す形態とすることができるため、往復動する第1・第2各環状シールとシリンダー部の内周面との間において、セメントスラリー(微粒子)の噛み込みが抑制される。したがって、プランジャー部を往復動させるポンピングにおいて、摺動抵抗が低減され、この点でもポンピングの円滑さが損なわれることがない。
【0013】
また、第1環状溝および第2環状溝の各々は、第1・第2各環状シールを支持する装着軸部と、軸方向において第1・第2各環状シールを挟持すると共に、摺動に伴う第1・第2各環状シールの径方向外周部における軸方向の変形を許容する一対の装着挟持部と、を含むことを特徴とする請求項2または3に記載の注入装置。
【0014】
この構成によれば、第1・第2各環状溝に装着した(保持した)第1・第2各環状シール材の径方向外周部を、摺動抵抗に応じて適宜変形させることができる。これにより、第1・第2各環状シールの摺動抵抗を低減することができると共に、第1・第2各環状シールの第1・第2各環状溝からの脱落を防止することができる。
【0015】
一方、シリンダー部は、プランジャー本体に対応するシリンダー本体と、シリンダー本体の基端から軸方向に延長された直動ガイド部と、を有し、プランジャー部は、プランジャー本体の基端から軸方向に延長され、直動ガイド部に摺接する直動被ガイド部を、更に有していることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、シリンダー部に対するプランジャー部の往復動に際し、プランジャー部の直動被ガイド部がシリンダー部の直動ガイド部によりガイドされるため、シリンダー本体に対するプランジャー本体の直進性が精度良く維持される。これにより、ポンピンクにおいて、シリンダー本体内におけるプランジャー本体の微小な揺動(ブレ)が抑制される。したがって、この点でも、ポンピングの円滑さが損なわれることがない。
【0017】
この場合、シリンダー本体の直動ガイド部側の基端部には、シリンダー本体の内部と外部とを連通する連通孔が設けられていることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、基端側の第2環状シールからセメントスラリーが漏れても、これを連通孔からシリンダー本体の外部に排出することができ、直動ガイド部と直動被ガイド部との間隙にセメントスラリーが侵入するのを抑制することができる。
また、プランジャー本体と共に基端側の第2環状シールが往動すると、連通孔を介してシリンダー本体にエアーが流入し、復動すると、連通孔を介してシリンダー本体からエアーが流出する。すなわち、連通孔が通気口として機能する。このため、第2環状シールを設けることによるプランジャー本体の無駄な往復動負荷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態に係る注入装置の側面視外観図である。
図2】注入装置の要部の構造図である。
図3】注入装置の要部の平面図である。
図4】往復ポンプ部におけるシリンダー部の分解図(a)、およびプランジャー部の分解図(b)である。
図5】各環状シール廻りの拡大図であって、非往復動時の図(a)、往動時の図(b)および復動時の図(c)である。
図6】第1・第2環状シール廻りの拡大図である。
図7】変形例に係る環状シール廻り拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付の図面を参照して、本発明の一実施形態に係る注入装置について説明する。この注入装置は、コンクリート構造物の「浮き」や「ひび割れ」等の対象物に、セメントスラリーを注入するためのものである。実際の施工では、この注入装置に、対象物(施工方法)別の注入ノズルを接続して用いられる。なお、セメントスラリーは、微粒子(超微粒子)のセメントと水とを混合したものであり、厳密には「ポリマーセメントスラリー」と称呼される。そして、「浮き」用のセメントスラリーは、液だれを考慮して粘性の高いものが用いられ、「ひび割れ」用のセメントスラリーは、浸透性を考慮して粘性の低いものが用いられる。
【0021】
[実施形態]
図1は、実施形態に係る注入装置の側面視外観図であり、図2および図3は、それぞれ注入装置における要部の構造図および平面図である。これらの図に示すように、この注入装置10は、手動式のものであり、セメントスラリーSを加圧状態で貯留するスラリー貯留部11と、スラリー貯留部11が着脱自在に装着される往復ポンプ部12と、往復ポンプ部12を作動させるための操作レバー14を有するポンピング機構部13と、を備えている。
【0022】
また、往復ポンプ部12は、吸込口22および吐出口23を含むシリンダー部21と、シリンダー部21に対し往復動するプランジャー部24と、吐出口23に組み込んだ逆止弁25と、を有している(図2参照)。操作レバー14は、先端側でシリンダー部21に回動自在に支持されると共に、プランジャー部24に連結されており、操作レバー14を手動で押し引き(ポンピング)することで、プランジャー部24を往復動させ、ポンプ作用を奏する。
【0023】
具体的には、プランジャー部24が復動すると、吸込口22を介してセメントスラリーSがスラリー貯留部11からシリンダー部21に流入する(吸込)。続いて、プランジャー部24が往動すると、吸込口22が閉じ、その後シリンダー部21のセメントスラリーSが吐出口23から流出する(吐出)。これを繰り返すことで、スラリー貯留部11のセメントスラリーSが、往復ポンプ部12から吐出される。
【0024】
なお、本実施形態は、スラリー貯留部11においてセメントスラリーSを直接貯留するタイプのものとしたが、セメントスラリーSを貯留したチューブ(カートリッジ)を注入装置10に装着するタイプのものであってもよい。また、ポンピング機構部13は、モーター駆動やエアー駆動等の自動の者であってもよい。
【0025】
シリンダー部21の吐出口23には、逆止弁25を介して、対象物に応じた専用の注入ノズルNが着脱可能に接続されるようになっている(図1参照)。ポンピングを繰り返すことにより、セメントスラリーSが、往復ポンプ部12を介して注入ノズルNから吐出され、対象物に注入される。この場合の対象物は、コンクリート構造物の外壁等であり、注入装置10は、例えばコンクリート打放し仕上げ、モルタル塗り仕上げ、タイル張り仕上げ等における、ひび割れ改修工法、欠損部改修工法、浮き改修工法(ピンニング工法、充填工法)等に、共通して用いられる。また、あと施工アンカー等において、下穴に、エポキシ樹脂(接着剤)に代えてセメントスラリーSを注入する場合にも用いられる。
【0026】
スラリー貯留部11は、前側の太径筒部32と後側の細径筒部33とで一体に形成された筒体31と、筒体31内に組み込まれ、セメントスラリーSを加圧する加圧機構部34と、を有している。セメントスラリーSは、太径筒部32に貯留され、加圧機構部34は、太径筒部32の後端部から細径筒部33に亘って内蔵されている。加圧機構部34は、細径筒部33から突出したハンドル36と、ハンドル36から延びるロッド37と、ロッド37の先端に取り付けたわん型パッキン38と、わん型パッキン38を前方に付勢する圧縮バネ39と、を有している。
【0027】
太径筒部32の前端は開放されており、これに形成したリング状雄ネジ41により、往復ポンプ部12にネジ接合されている。詳細は後述するが、往復ポンプ部12のシリンダー部21には、太径筒部32の軸心に位置して吸込口22が形成されており、この吸込口22を介して太径筒部32(の内部)とシリンダー部21(の内部)とが連通している(いずれも図2参照)。また、圧縮バネ39は、太径筒部32の内部において、わん型パッキン38と太径筒部32の内部後端との間に配設されている。圧縮バネ39に抗してハンドル36を後方に引くと、わん型パッキン38が後退し、続いてハンドル36を離すと、圧縮バネ39によりわん型パッキン38が前進する。
【0028】
細径筒部33には、軸方向に延びるストレート開口43と、ストレート開口43の後端に直角に連なるクランク開口44とが形成されており、このストレート開口43およびクランク開口44から、ハンドル36が操作可能に突出している(図1参照)。ストレート開口43に臨むハンドル36を、圧縮バネ39に抗して後方に引き回動させてクランク開口44に掛止めすることにより、わん型パッキン38が最後端位置に移動する。この状態でスラリー貯留部11を往復ポンプ部12から外すことで、太径筒部32へのセメントスラリーSの充填が可能となる。
【0029】
セメントスラリーSを充填したら、スラリー貯留部11を往復ポンプ部12に装着する。続いて、ハンドル36をクランク開口44からストレート開口43に移動させ、圧縮バネ39によりわん型パッキン38を介して、貯留されているセメントスラリーSに圧力を加えた状態とする。ポンピングにより、スラリー貯留部11のセメントスラリーSが消費されてゆくと、その消費量分、圧縮バネ39によりわん型パッキン38が徐々に前進する。
【0030】
[往復ポンプ部]
図2図3および図4に示すように、往復ポンプ部12は、吸込口22を介してスラリー貯留部11と連通するシリンダー部21と、シリンダー部21に対し往復動するプランジャー部24と、シリンダー部21の吐出口23に組み込んだ逆止弁25と、シリンダー部21の背面側(スラリー貯留部11側)に設けた筒体接合部26と、を備えている。筒体接合部26は、スラリー貯留部11(太径筒部32)の蓋体を兼ねるものであり、円形の蓋板部46と、蓋板部46の縁端から突出するリング状の接合部47と、で一体に形成されている。
【0031】
蓋板部46に中心部には、シリンダー部21の吸込口22に連なる円孔48が形成されている。また、接合部47には、上記の太径筒部32のリング状雄ネジ41に螺合するリング状雌ネジ49が形成されている。これにより、スラリー貯留部11は、往復ポンプ部12に相互に着脱自在に装着される。往復ポンプ部12にスラリー貯留部11を装着すると、円孔48および吸込口22を介して、シリンダー部21とスラリー貯留部11とが連通する。
【0032】
シリンダー部21は、シリンダーとして機能する内側が断面円形に形成され、外側が断面略方形に形成されている。筒体接合部26に対しシリンダー部21は、筒体接合部26の径方向に延在し、溶着等により筒体接合部26に一体的に固着されている。また、シリンダー部21は、吸込口22が形成されたシリンダー本体51と、シリンダー本体51から操作レバー14側に延びる直動ガイド部52と、を有している。シリンダー本体51は、筒体接合部26に対応する位置に配設される一方、直動ガイド部52は、操作レバー14を越えて延在している。なお、言うまでもないが、シリンダー本体51と直動ガイド部52とは、同軸上に配設されている。
【0033】
シリンダー本体51と直動ガイド部52とは、一体に形成されており、シリンダー本体51は、後述するプランジャー部24のプランジャー本体71に対応し、直動ガイド部52は、後述するプランジャー部24の直動被ガイド部72に対応している。すなわち、シリンダー本体51は、往復動するプランジャー本体71と協働して実質上のポンプとして機能する一方、直動ガイド部52は、直動被ガイド部72(プランジャー部24)の往復動をガイドし、プランジャー本体71の直進性を担保している。
【0034】
詳細は後述するが、外径において、プランジャー本体71と直動被ガイド部72とは、同径に形成されている。これに対し、内径において、シリンダー本体51は、直動ガイド部52よりも太径に形成されている。なお、シリンダー本体51と直動ガイド部52とが同径に形成される一方、直動被ガイド部72よりもプランジャー本体71が細径に形成されていてもよい。すなわち、直動ガイド部52と直動被ガイド部72との間隙(クリアランス)は極めて狭く、直動被ガイド部72を精度良くガイドできる(がたつきがない)寸法となっている。一方、シリンダー本体51とプランジャー本体71との間隙(嵌め合い)は広く、シリンダー本体51とプランジャー本体71との間にセメントスラリーSの微粒子が噛み込まない寸法となっている(詳細は後述する)。
【0035】
言い換えれば、往復動に際し、直動ガイド部52に対し直動被ガイド部72が(潤滑油を介して)摺接し、プランジャー本体71の直進性が担保されている。一方、往復動に際し、シリンダー本体51に対しプランジャー本体71は摺接することはなく、これに代えて後述する第1環状シール73Aおよび第2環状シール73Bがプランジャー本体71に摺接し、ポンプ機能を奏する。なお、請求項に言う環状シール部は、この第1環状シール73Aと第2環状シール73Bとで構成されている。
【0036】
また、第1環状シール73Aが摺接するシリンダー本体51の内周面において、吸込口22が臨む内周面部分が面取り形状に形成されている。すなわち、シリンダー本体51の内周面側において、吸込口22が形成された吸込口形成縁部55が、環状に面取りされている。これにより、往復動する(先端側の)第1環状シール73Aは、この面取り形状により吸込口22への引っ掛かりが抑制される。したがって、第1環状シール73Aの損傷が抑制されると共に、ポンピングの円滑さが損なわれることがない。
【0037】
また、シリンダー本体51の直動ガイド部52側の基端部には、三方に位置して、シリンダー本体51の内部と外部とを連通する3つの連通孔57が設けられている(図2および図4(b)参照)。プランジャー本体71の基部側には第2環状シール73Bが設けられており、この第2環状シール73Bから直動ガイド部52側にセメントスラリーSが漏れても、これを適宜連通孔57からシリンダー本体51の外部に排出できるようになっている。また、連通孔57は、往動動する第2環状シール73Bにより拡大・縮小するシリンダー本体51の内部空間の通気口としても機能している。
【0038】
すなわち、シリンダー本体51に3つの連通孔57を設けることにより、直動ガイド部52と直動被ガイド部72との間隙にセメントスラリーSが侵入するのを防止することができ、直動ガイド部52に対する直動被ガイド部72の円滑な往復動(ガイド)を可能にしている。また、シリンダー本体51の内部空間を通気することにより、シリンダー本体51に対するプランジャー本体71の円滑な往復動を可能にしている。なお、連通孔57の数は、1以上であれば任意である。
【0039】
上述のように、直動ガイド部52は操作レバー14を越えて延在しており、後述するように、二股形状の操作レバー14は、直動ガイド部52の中間部を挟むように配設されている。そして、詳細は後述するが、操作レバー14と直動被ガイド部72との連結部は、直動被ガイド部72を軸方向に直交する方向に貫通するガイドピン74で構成されている。このため、直動ガイド部52には、ガイドピン74がスライド自在に係合すると共に軸方向に延びる一対の長孔58が形成されている。
【0040】
直動ガイド部52にガイドされて往復動する直動被ガイド部72は、ガイドピン74を介して操作レバー14により作動する。このため、直動被ガイド部72から両側に突出したガイドピン74は、直動ガイド部52に形成された一対の長孔58に沿って往復動する。これにより、操作レバー14を、直動ガイド部52の中間部に配設することが可能となっている。
【0041】
図2および図4(b)に示すように、シリンダー部21(シリンダー本体51)の吐出口23には、接続アタッチメントを兼ねる逆止弁25が取り付けられている。逆止弁25の外周部には、シリンダー本体51に接続されるシリンダー側雄ネジ部61aと、注入ノズルNに接続されるノズル側雄ネジ部61bと、これらの中間に位置する六角の工具掛け部61cと、が形成されている。上述のように、注入ノズルNは、対象物に応じて複数種のものが用意されており、本実施形態では、これら複数種の注入ノズルNを接続できるように、ノズル側雄ネジ部61bが異なる複数種の逆止弁25が用意されている。なお、図1に示した注入ノズルNは、ピンニング工法用(「浮き」用)のものである。
【0042】
逆止弁25の内部には、シリンダー本体51に連なる吐出流路63が形成されている。吐出流路63には、逆止弁25の弁体を構成する球体64と、球体64を付勢するコイルバネ65と、コイルバネ65を受けるリングネジ66と、を有している。また、吐出流路63の吸込口22側には、逆止弁25の弁座を構成する狭小部63aが形成されている。リングネジ66は、コイルバネ65を圧縮するようにノズル側雄ネジ部61bの内側に螺合している。
【0043】
リングネジ66により圧縮されたコイルバネ65は球体64を付勢し、球体64は狭小部63aに密接される。これにより、逆止弁25は閉弁(閉塞)される。一方、プランジャー部24が往動し、シリンダー部21内の圧力が高まると、コイルバネ65に抗して球体64が狭小部63aから離れる。これにより、逆止弁25は開弁(開放)され、シリンダー部21内のセメントスラリーSが、吐出流路63を介してシリンダー部21から吐出される。
【0044】
このように、逆止弁25は、プランジャー部24の往動時以外は吐出流路63を閉塞している。これにより、注入ノズルNからのセメントスラリーSの液だれが防止される。
【0045】
一方、シリンダー部21の基部側には、直動ガイド部52から前方に延びる板状の支持片68が設けられている(図2および図3参照)。詳細は後述するが、支持片68はポンピング機構部13の一部を構成しており、先端部で操作レバー14を回動自在に支持し、基端部で直動ガイド部52(シリンダー部21)の側面(前面)に溶着等により取り付けられている。この支持片68により、操作レバー14の回動支点の位置と、操作レバー14と直動被ガイド部72(プランジャー部24)との連結点の位置との離間距離、言い換えれば操作レバー14の操作角度と、プランジャー部24の往復動ストロークとが規制されるようになっている。
【0046】
図2図3および図4(a)に示すように、プランジャー部24は、シリンダー本体51に対し往復動するプランジャー本体71と、直動ガイド部52に対し往復動する直動被ガイド部72と、プランジャー本体71に取り付けられた第1環状シール73Aおよび第2環状シール73Bと、を備えている。第1環状シール73Aおよび第2環状シール73Bは、軸方向において相互に離間して配設されており、先端側の第1環状シール73Aは、吸込口22を含む領域において往復動し、基端側の第2環状シール73Bは、吸込口22よりも基端側の領域において往復動する。なお、言うまでもないが、プランジャー本体71と直動被ガイド部72とは、同軸上に配設されている。
【0047】
上述のように、直動ガイド部52は、操作レバー14を越えて延在しており、直動ガイド部52に対応する直動被ガイド部72も、操作レバー14を越えて延在している。そして、直動被ガイド部72の中間部には、操作レバー14との連結部を構成するガイドピン74が取り付けられている。すなわち、直動被ガイド部72の中間部には、軸方向に直交するガイドピン74用の貫通孔75が形成されている。
【0048】
プランジャー本体71の先端部および基端部には、軸方向に相互に離間して第1環状溝77Aおよび第2環状溝77Bが形成されており、第1環状溝77Aに第1環状シール73Aが、第2環状溝77Bに第2環状シール73Bが、それぞれ装着されている。第1・第2各環状溝77A,77Bは、第1・第2各環状シール73A,73Bを支持する装着軸部78と、軸方向において第1・第2各環状シール73A,73Bを挟持すると共に、摺動に伴う第1・第2各環状シール73A,73Bの径方向外周部73ab(図5参照)における軸方向の変形を許容する一対の装着挟持部79と、を有している。
【0049】
この場合、プランジャー本体71は、第1・第2各環状溝77A,77Bを境に軸方向に3分割された構造になっており、第1・第2各環状シール73A,73Bは、3分割された部材を組み上げる際に組み付けられるようになっている。なお、請求項に言う環状溝部は、第1環状溝77Aと第2環状溝77Bとで構成されている。
【0050】
具体的には、図4(a)に示すように、プランジャー本体71は、別体で構成された先端部プランジャー81、中間部プランジャー82および基端部プランジャー83を有している。基端部プランジャー83は、直動被ガイド部72と一体に形成されている。そして、中間部プランジャー82は、第2環状シール73Bを装着した状態で基端部プランジャー83に螺合し、且つ先端部プランジャー81は、第1環状シール73Aを装着した状態で中間部プランジャー82に螺合している。
【0051】
基端部プランジャー83は、直動被ガイド部72と一体に且つ同径に形成された本体長寸部85と、本体長寸部85の先端に一体に形成された(一方の)装着挟持部79と、を有している。中間部プランジャー82は、直動被ガイド部72(本体長寸部85)と同径に形成された本体短寸部87と、本体短寸部87の基端に一体に形成されたネジ付きの装着軸部78および装着挟持部79と、本体短寸部87の先端に一体に形成された装着挟持部79と、を有している。また、先端部プランジャー81は、ネジ付きの装着軸部78と、これに一体に形成された装着挟持部79と、を有している。
【0052】
基端部プランジャー83に、第2環状シール73Bおよび中間部プランジャー82を組み込むと、第2環状シール73Bは、装着軸部78に軸支され且つ一対の装着挟持部79により挟持された状態となる。同様に、中間部プランジャー82に、第1環状シール73Aおよび先端部プランジャー81を組み込むと、第1環状シール73Aは、装着軸部78に軸支され且つ一対の装着挟持部79により挟持された状態となる。
【0053】
この場合、本体長寸部85や本体短寸部87に比して装着挟持部79が細径に形成されているため、詳細は後述するが、第1・第2各環状シール73A,73Bは、その径方向内周部73aaが一対の装着挟持部79により挟持された状態で、径方向外周部73abが変形可能となる(図5参照)。なお、実施形態の第1・第2各環状シール73A,73Bは、径方向の内側半部強(径方向内周部73aa)が一対の装着挟持部79により挟持され、外側半部弱(径方向外周部73ab)が変形可能となっている(図5参照)。
【0054】
第1・第2各環状シール73A,73Bは、硬度ショアA45度~90度のゴム材、例えばウレタンゴムで構成されている。すなわち、実施形態の第1・第2各環状シール73A,73Bは、一般的なOリングに比して硬度が高く変形し難いものとなっている。また、第1・第2各環状シール73A,73Bは、往復動に際し、シリンダー部21(シリンダー本体51)の内周面に付着したセメントスラリーSを掻き出し得るように断面方形に形成されている。すなわち、第1・第2各環状シール73A,73Bは、シリンダー本体51に摺接する際にセメントスラリーSを掻き出すように進んで、シリンダー本体51との間に極力セメントスラリーSが噛み込まないような形状に形成されている。
【0055】
図5に示すように、非往復動(非摺接)の状態において、一対の装着挟持部79により挟持された第1・第2各環状シール73A,73Bは、断面方形となる自由状態の形状を維持している(同図(a)参照)。この状態からプランジャー部24が往動すると、摺動抵抗により第1・第2各環状シール73A,73Bの径方向外周部73abが進行方向後方に反るようにわずかに変形する(同図(b)参照)。同様に、プランジャー部24が復動すると、摺動抵抗により第1・第2各環状シール73A,73Bの径方向外周部73abが進行方向後方に反るようにわずかに変形する(同図(c)参照)。
【0056】
この変形により、径方向外周部73abの角部位が、シリンダー本体51の内周面に強く摺接し、セメントスラリーSを掻き出すように進む。これにより、シリンダー本体51と摺動する第1・第2各環状シール73A,73Bとの間において、セメントスラリーS(実質的には、セメントの微粒子)の噛み込みが抑制され、摺動抵抗が低減することとなる。
【0057】
一方、図6に示すように、シリンダー本体51と、本体長寸部85および本体短寸部87との間隙d、すなわち、シリンダー本体51とプランジャー本体71との間隙dは、往復動に際し第1・第2各環状シール73A,73Bが第1・第2各環状溝77A,77Bから離脱しない範囲で、セメントの微粒子の最大粒子径よりも大きいものとなっている。
【0058】
上述のように、セメントスラリーSは、主成分となる微粒子(超微粒子)のセメントと水とを混合したものであり、実施形態のセメントの微粒子は、0.02~0.04mmの粒子径のものが混在している。そこで、本実施形態におけるシリンダー本体51とプランジャー本体71との間隙dは、0.05mm以上となるように設計されている(実施形態のものは、0.5mm程度)。したがって、シリンダー本体51(本体長寸部85および本体短寸部87)とプランジャー本体71との間隙dに、セメントスラリーSが侵入しても、この間隙dにセメントの微粒子が噛み込む状態とはならず、プランジャー部24の往復動が円滑に行われる。
【0059】
図1図2および図3に示すように、ポンピング機構部13は、シリンダー部21に設けた上記の支持片68と、支軸76を介して支持片68に支持された操作レバー14と、直動被ガイド部72に取り付けられたガイドピン74とを有している。操作レバー14は、手持ち部分となる棒状のレバー本体91と、レバー本体91から先方に延び先端部で支持片68に回動自在に軸支されたプランジャー作動部92とで構成されている。そして、プランジャー作動部92は、ガイドピン74を両持ちで且つ延在方向にスライド自在に支持している。
【0060】
レバー本体91は、細径筒部33の位置まで長く延びており、支軸76を中心に押し引き回動(ポンピング)させることにより、プランジャー部24を作動(往復動)させる。作業者は、一方の手で細径筒部33を持って注入装置10を保持し、他方の手でレバー本体91を持ってポンピングを行う。
【0061】
プランジャー作動部92は、先端に向かって二股形状に形成されており、レバー本体91が螺合する基部側のレバー取付け部94と、レバー取付け部94から先方に延びる板状の一対の出力片部95と、で一体に形成されている(図3参照)。各出力片部95には、延在方向に長い係合孔96が形成されており、この一対の係合孔96に対し、ガイドピン74が両持ちで且つ延在方向にスライド自在に支持されている(図2参照)。これにより、操作レバー14による回動運動がプランジャー部24の往復運動に変換される。
【0062】
すなわち、直動被ガイド部72(プランジャー部24)が直動ガイド部52に案内されて往復動すると、直動被ガイド部72に設けられたガイドピン74は、直動ガイド部52の一対の長孔58に沿って往復動する。一方で、操作レバー14を押し引き(往復回動)させると、操作レバー14に支持されたガイドピン74は、一対の係合孔96に沿って相対的にスライドしながら往復動する(図2参照)。これにより、操作レバー14は、直動ガイド部52の中間部で、ガイドピン74を介して往復の回動運動を往復の直線運動に変換しつつ直動被ガイド部72に力(ポンピング力)を伝達する。
【0063】
[変形例]
次に、図7を参照して、実施形態の変形例について簡単に説明する。この変形例では、第1環状シール73Aおよび第2環状シール73Bに代えて、単一の環状シール73(環状シール部)が設けられている。この変形例では、中間部プランジャー82は省略され、プランジャー本体71は、別体で構成された先端部プランジャー81および基端部プランジャー83を有している。すなわち先端部プランジャー81は、環状シール73を装着した状態で基端部プランジャー83に螺合している。
【0064】
そして、この場合も、シリンダー本体51とプランジャー本体71との間隙dは、往復動に際し環状シール73が環状溝77(環状溝部)から離脱しない範囲で、セメントの微粒子の最大粒子径よりも大きい0.05mm以上となっている。したがって、シリンダー本体51とプランジャー本体71との間隙dに、セメントスラリーSが侵入しても、この間隙dにセメントの微粒子が噛み込む状態とはならず、プランジャー部24の往復動が円滑に行われる。
【0065】
以上のように、実施形態の注入装置10によれば、シリンダー本体51とプランジャー本体51との間隙dが、往復動に際し第1・第2環状シール73A,73B(環状シール73)が第1・第2環状溝77A,77B(環状溝77)から離脱しない範囲で、セメントの微粒子の最大粒子径よりも大きいものとなっている。このため、シリンダー本体51とプランジャー本体71との間隙dに侵入したセメントスラリーS(セメントの微粒子)は、シリンダー本体51とプランジャー本体71との間に噛み込むように作用することがない。また、摺動に際し、各環状シール73A,73Bが適宜変形して摺動抵抗を低減する。したがって、プランジャー部24を往復動させるポンピングにおいて、その円滑さが損なわれることがない。
【0066】
また、直動被ガイド部72の往復動が直動ガイド部52によりガイドされるため、シリンダー本体51に対するプランジャー本体71の直進性が精度良く維持される。すなわち、第1・第2環状シール73A,73Bは、ブレを生ずることなく直進する。このため、摺動時の各環状シール73A,73Bの形状が安定し、この点でも、ポンピングの円滑さが損なわれることがない。
【符号の説明】
【0067】
10…注入装置、11…スラリー貯留部、12…往復ポンプ部、13…ポンピング機構部、14…操作レバー、21…シリンダー部、22…吸込口、23…吐出口、24…プランジャー部、51…シリンダー本体、52…直動ガイド部、57…連通孔、71…プランジャー本体、72…直動被ガイド部、73…環状シール、73A…第1環状シール、73B…第2環状シール、77…環状溝、77A…第1環状溝、77B…第2環状溝、78…装着軸部、79…装着挟持部、81…基端部プランジャー、82…中間部プランジャー、83…先端部プランジャー、S…セメントスラリー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7