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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】過熱水蒸気生成装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/10 20060101AFI20230501BHJP
   F22G 1/16 20060101ALI20230501BHJP
   F22B 1/28 20060101ALI20230501BHJP
   H05B 6/44 20060101ALI20230501BHJP
   H05B 6/36 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
H05B6/10 301
F22G1/16
F22B1/28 Z
H05B6/10 311
H05B6/44
H05B6/36 D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019167084
(22)【出願日】2019-09-13
(65)【公開番号】P2021044200
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000110158
【氏名又は名称】トクデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】水嶋 深
【審査官】柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-191680(JP,A)
【文献】米国特許第04855552(US,A)
【文献】特開2013-053760(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/10
F22G 1/16
F22B 1/28
H05B 6/44
H05B 6/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体管を電磁誘導により発熱させて当該導体管を流れる水を加熱して過熱水蒸気を生成する過熱水蒸気生成装置であって、
3相の閉磁路鉄心における3つの脚鉄心を用いて3つの過熱水蒸気生成ユニットを構成し、当該3つの過熱水蒸気生成ユニットに互いに異なる相の交流電圧を印加して過熱水蒸気を生成するものであり、
前記各過熱水蒸気生成ユニットは、
1相の交流電圧が印加される一次コイルであり、前記脚鉄心の周りに同心状に配置される螺旋状の第1導体管及び第2導体管と、
誘導電流が流れる二次コイルであり、前記閉磁路鉄心の周りに配置される螺旋状の第3導体管とを備え、
前記各導体管は径方向内側から前記第2導体管、前記第3導体管及び前記第1導体管の順に配置されるとともに、前記第1導体管、前記第2導体管及び前記第3導体管の順に直列に接続されており、
前記第1導体管に設けられた導入ポートから水又は水蒸気を導入して、前記第2導体管を介して、前記第3導体管に設けられた導出ポートから過熱水蒸気を導出するものであり、
前記第3導体管は、互いに逆向きに螺旋状に巻回された内側管要素及び外側管要素と、前記内側管要素及び前記外側管要素の軸方向一端部同士及び軸方向他端部同士を流体的に接続するとともにそれらを短絡接続する接続管要素とを備える複数の第3導体管ユニットを有し、
前記複数の第3導体管ユニットは、互いに独立して電磁誘導されるとともに、前記水又は前記水蒸気が通流できるように互いに直列となるように接続されており、下流側の第3導体管ユニットが上流側の第3導体管ユニットに対して高温となるように、それらを構成する管要素の巻数が設定されている、過熱水蒸気生成装置。
【請求項2】
前記第1導体管と前記第3導体管との間及び前記第2導体管及び前記第3導体管との間に断熱材が充填されている、請求項に記載の過熱水蒸気生成装置。
【請求項3】
前記3つの過熱水蒸気生成ユニットそれぞれの前記導出ポートが1つの過熱水蒸気吐出ポートに接続されている、請求項1又は2に記載の過熱水蒸気生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過熱水蒸気生成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の過熱水蒸気生成装置としては、特許文献1に示すように、円筒状鉄心と、この円筒状鉄心の周りに配置された加熱導体管と、前記円筒状鉄心の内部に磁束を発生させる誘導コイルとを備えており、加熱導体管に誘導電流を流して、加熱導体管の内部を流れる被加熱流体を加熱するものが考えられている。
【0003】
この過熱水蒸気生成装置では、円筒状鉄心の径方向外側に設けられた円筒状をなす外側磁路形成部と、円筒状鉄心及び外側磁路形成部の軸方向一端部を連結する第1径方向磁路形成部と、円筒状鉄心及び前記外側磁路形成部の軸方向他端部を連結する第2径方向磁路形成部とを有する閉磁路鉄心要素を備えている。
【0004】
また、第1径方向磁路形成部及び第2径方向磁路形成部には、加熱導体管に流入する被加熱流体が流れる第1流路を形成する第1流路形成部が設けられており、第2径方向磁路形成部には、加熱導体管に流入する被加熱流体が流れる第2流路が形成されている。さらに、誘導コイルは、加熱導体管に流入する被加熱流体が流れる中空導体管からなる外側中空コイル要素及び内側中空コイル要素と、中実導線からなる中実コイル要素とを有している。
【0005】
しかしながら、上記の過熱水蒸気生成装置では、加熱導体管に流入する被加熱流体は、第1流路、第2流路、外側中空コイル要素、内側中空コイル要素及びそれらを接続する接続配管を流れることになり、装置構成が複雑となってしまう。また、誘導コイルが中空コイル要素の他に中実コイル要素を有する構成であることも装置構成を複雑にしている。さらに、上記の過熱水蒸気生成装置は、単相交流電源を用いた構成であり、3相交流電源を用いた構成については検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-213074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、3相交流電源を用いた過熱水蒸気生成装置において、熱効率を向上するとともに装置の簡略化及び小型化を可能にすることをその主たる課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明に係る過熱水蒸気生成装置は、導体管を電磁誘導により発熱させて当該導体管を流れる水を加熱して過熱水蒸気を生成する過熱水蒸気生成装置であって、3相の閉磁路鉄心における3つの脚鉄心を用いて3つの過熱水蒸気生成ユニットを構成し、当該3つの過熱水蒸気生成ユニットに互いに異なる相の交流電圧を印加して過熱水蒸気を生成するものであり、前記各過熱水蒸気生成ユニットは、1相の交流電圧が印加される一次コイルであり、前記脚鉄心の周りに同心状に配置される螺旋状の第1導体管及び第2導体管と、誘導電流が流れる二次コイルであり、前記閉磁路鉄心の周りに配置される螺旋状の第3導体管とを備え、前記各導体管は径方向内側から前記第2導体管、前記第3導体管及び前記第1導体管の順に配置されるとともに、前記第1導体管、前記第2導体管及び前記第3導体管の順に直列に接続されており、前記第1導体管に設けられた導入ポートから水又は水蒸気を導入して、前記第2導体管を介して、前記第3導体管に設けられた導出ポートから過熱水蒸気を導出することを特徴とする。
【0009】
このような過熱水蒸気生成装置によれば、3つの過熱水蒸気生成ユニットに互いに異なる相の交流電圧を印加して過熱水蒸気を生成するので、3相交流電源を用いた過熱水蒸気生成装置において過熱水蒸気の生成能力を向上させることができる。
そして、一次コイルとして第1導体管及び第2導体管を用いているとともに、当該第1導体管及び第2導体管の間に二次コイルである第3導体管を設けているので、第1導体管及び第2導体管は通電加熱されるとともに、第3導体管の放熱を利用して加熱されるので、第3導体管からの装置外部への放熱を低減でき、熱効率を上げることができる。
また、第1導体管、第2導体管及び第3導体管の順に直列に接続し、第1導体管に設けられた導入ポートから水又は水蒸気を導入して、第2導体管を介して、第3導体管に設けられた導出ポートから過熱水蒸気を導出するので、過熱水蒸気生成装置の簡略化及び小型化することができる。
さらに、一次コイルを形成する第1導体管及び第2導体管は、それぞれの巻数、導体管の通電断面積、導体管の通流孔径の設定により、発熱比や流体への熱伝達面積比、流体の流速比を調整することができる。
【0010】
前記第3導体管は、互いに逆向きに螺旋状に巻回された内側管要素及び外側管要素と、前記内側管要素及び前記外側管要素の軸方向一端部同士及び軸方向他端部同士を流体的に接続するとともにそれらを短絡接続する接続管要素とを有することが望ましい。
この構成であれば、導体管とは別に電気接続部材を設ける必要が無く、導体管自体の構成により短絡回路を形成することができる。また、接続管要素が各管要素の軸方向一端部同士を接続し、軸方向他端部同士を接続する構成であり、短絡回路を構成するための接続構造を簡単にすることができる。
【0011】
前記第3導体管は、互いに逆向きに螺旋状に巻回された内側管要素及び外側管要素と、前記内側管要素及び前記外側管要素の軸方向一端部同士及び軸方向他端部同士を流体的に接続するとともにそれらを短絡接続する接続管要素とを備える複数の第3導体管ユニットを有し、それら複数の第3導体管ユニットは、前記水又は前記水蒸気が通流できるように接続されていることが望ましい。
この構成であれば、第3導体管が内側管要素及び外側管要素が短絡接続された複数の第3導体管ユニットを有するので、各第3導体管ユニットに流れる短絡電流を調整して、各第3導体管ユニットのジュール発熱量を調整することができる。その結果、各第3導体管ユニットにおいて流体を段階的に昇温することができ、第3導体管による流体の加熱効率を向上することができる。また、各第3導体管ユニットの入口側と出口側との温度差を小さくすることができ、導体管の熱応力による劣化を低減することができる。
【0012】
各第3導体管ユニットに流れる短絡電流を調整するための具体的構成としては、前記複数の第3導体管ユニットは、それらを構成する管要素の巻数が互いに異なることが望ましい。この構成であれば、第3導体管ユニットの管要素の巻数を変更するだけで、各第3導体管ユニットに流れる短絡電流を調整することができる。
【0013】
第3導体管による流体の加熱を段階的に行うためには、前記複数の第3導体管ユニットは、互いに直列となるように接続されていることが望ましい。
例えば、直列接続された複数の第3導体管ユニットにおいて、下流側の第3導体管ユニットに行くほど管要素の巻数を多くすることにより、下流側の第3導体管ユニットに行くほど誘導電流を大きくでき、ジュール発熱量を大きくして、流体を高温に加熱しやすくできる。
なお、直列接続された複数の第3導体管ユニットにおいて、下流側の第3導体管ユニットに行くほど管要素の巻数を少なくしてもよい。
【0014】
第3導体管の放熱が装置外部へ漏れること及び第3導体管の放熱による第1導体管及び第2導体管の加熱を安全に実現するためには、前記第1導体管と前記第3導体管との間及び前記第2導体管及び前記第3導体管との間に断熱材が充填されていることが望ましい。
この構成であれば、第1導体管と第3導体管との間の断熱材の厚み、及び、第2導体管と第3導体管との間の断熱材の厚みにより、第3導体管から第1導体管及び第2導体管への熱伝達比を調整することができる。
【0015】
前記3つの過熱水蒸気生成ユニットそれぞれの前記導出ポートが1つの過熱水蒸気吐出ポートに接続されていることが望ましい。
この構成であれば、過熱水蒸気吐出ポートから供給される過熱水蒸気を大容量化することができる。
【発明の効果】
【0016】
このように構成した本発明によれば、相交流電源を用いた過熱水蒸気生成装置において、熱効率を向上するとともに装置の簡略化及び小型化を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る過熱水蒸気生成装置の構成を模式的に示す断面図である。
図2】同実施形態の過熱水蒸気生成装置の径方向における配置を模式的に示す断面図である。
図3】同実施形態のコイル接続及び流体の流れを示す図である。
図4】同実施形態の閉磁路鉄心の構成を示す正面図及びヨーク鉄心を示す平面図である。
図5】同実施形態の第3導体管の構成を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明に係る過熱水蒸気生成装置の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0019】
<1.装置構成>
本実施形態に係る過熱水蒸気生成装置100は、三相交流電源を用いたものであり、導体管を電磁誘導により発熱させて当該導体管を流れる水を加熱して過熱水蒸気を生成するものである。その他、過熱水蒸気生成装置100としては、例えば、外部で生成された飽和水蒸気を加熱して過熱水蒸気を発生するものであっても良い。
【0020】
具体的に過熱水蒸気生成装置100は、図1図3に示すように、3相の閉磁路鉄心2における3つの脚鉄心21、22、23を用いて3つの過熱水蒸気生成ユニット100A、100B、100Cを構成し、当該3つの過熱水蒸気生成ユニット100A、100B、100Cに互いに異なる相の交流電圧を印加して過熱水蒸気を生成するものである。
【0021】
ここで、3相の閉磁路鉄心2は、図4に示すように、3つの脚鉄心21、22、23と、当該3つの脚鉄心21、22、23の一方の端面(図4では上端面)同士を接続する上側ヨーク鉄心24と、3つの脚鉄心21、22、23の他方の端面(図4では下端面)同士を接続する下側ヨーク鉄心25とを有している。ここで、3つの脚鉄心21、22、23は、三角形の頂点に位置しており、これらを接続する各ヨーク鉄心24、25は、Y字形状をなすものである。また、各脚鉄心21、22、23は、例えば、インボリュート形状に湾曲された湾曲部を有する多数の磁性鋼板を放射状に積層して円筒状に形成した円筒状のインボリュート鉄心である。
【0022】
各過熱水蒸気生成ユニット100A、100B、100Cは、図1及び図2に示すように、前記脚鉄心21、22、23と、1相の交流電圧が印加される一次コイルであり、脚鉄心21、22、23の周りに同心状に配置される螺旋状(コイル状)の第1導体管31及び第2導体管32と、誘導電流が流れる二次コイルであり、脚鉄心21、22、23の周りに配置される螺旋状(コイル状)の第3導体管4とを備えている。なお、3つの脚鉄心21、22、23は三角形の頂点に位置していることから、3つの過熱水蒸気生成ユニット100A、100B、100Cも三角形の頂点に位置することになる(図2参照)。
【0023】
第1導体管31及び第2導体管32は、それぞれ単層巻きであり、径方向内側に第2導体管32が配置され、径方向外側に第1導体管31が配置されている。また、第1導体管31の軸方向一端部に導入ポートP1が設けられており、第1導体管31の軸方向他端部が第2導体管32の軸方向他端部に接続されている。なお、導入ポートP1又はその近傍には、第1導体管31に流入する水の流量を調整するための流量調整バルブ5が設けられている。
【0024】
さらに、三相交流電源(不図示)の各相の交流電圧は、第1導体管31の軸方向一端部に設けられた給電端子61及び第2導体管32の軸方向一端部に設けられた給電端子62に接続されている。具体的には、第1の過熱水蒸気生成ユニット100Aの第1導体管31に設けられたU端子及び第2導体管32に設けられたV端子に1相の交流電圧が印加され、第2の過熱水蒸気生成ユニット100Bの第1導体管31に設けられたV端子及び第2導体管32に設けられたW端子に1相の交流電圧を印加され、第3の過熱水蒸気生成ユニット100Cの第1導体管31に設けられたW端子及び第2導体管32に設けられたU端子に1相の交流電圧が印加される。
【0025】
そして、第1導体管31及び第2導体管32は、各導体管31、32の巻回部分が互いに短絡しないように構成されている。なお、巻回部分とは螺旋1巻き部分のことである。具体的には、第1導体管31及び第2導体管32において、各巻回部分の外側周面が互いに接触しないように隙間を持って巻回されることにより、第1導体管31の巻回部分及び第2導体管32の巻回部分が互いに短絡しないように構成されている。なお、各導体管31、32において、その外側周面に絶縁体(不図示)が巻かれる等の絶縁処理が施されることにより、各導体管31、32の巻回部分が互いに短絡しないように構成しても良い。
【0026】
第3導体管4は、第1導体管31及び第2導体管32の間に配置されている。また、第3導体管4の軸方向一端部が第2導体管32の一端部に接続されており、第3導体管4の軸方向他端部に導出ポートP2が設けられている。このような構成により、各導体管31、32、4は、径方向内側から第2導体管32、第3導体管4及び第1導体管31の順に配置されるとともに、第1導体管31、第2導体管32及び第3導体管4の順に直列に接続されることになる。
【0027】
本実施形態では、図1及び図3に示すように、3つの過熱水蒸気生成ユニット100A、100B、100Cそれぞれの導出ポートP2は、1つの過熱水蒸気吐出ポートP3に接続されており、各過熱水蒸気生成ユニット100A、100B、100Cで生成された過熱水蒸気が合流して吐出されるように構成されている。なお、過熱水蒸気吐出ポートP3又はその近傍には、過熱水蒸気の温度を制御するための温度センサ7が設けられている。
【0028】
そして、第3導体管4は、図5に示すように、複数(例えば2つ)の第3導体管ユニット4A、4Bを有しており、それら複数の第3導体管ユニット4A、4Bは水又は水蒸気が通流できるように接続されている。なお、以下では、一方(上流側)の第3導体管ユニット4Aを第3導体管ユニット4Aといい、他方(下流側)の第3導体管ユニット4Bを第3導体管ユニット4Bという。
【0029】
各第3導体管ユニット4A、4Bは、互いに逆向きに螺旋状に巻回された内側管要素41及び外側管要素42と、内側管要素41及び外側管要素42の軸方向一端部同士及び軸方向他端部同士を流体的に接続するとともにそれらを短絡接続する接続管要素43、44とを有している。内側管要素41及び外側管要素42は、軸方向から見て径方向の隙間が形成されている。また、各管要素41、42は、各巻回部分の外側周面が互いに接触しないように隙間を持って巻回されている。
【0030】
複数の第3導体管ユニット4A、4Bは、それらを構成する管要素41、42の巻数が互いに異なる。本実施形態では、第3導体管ユニット4Aの内側管要素41は、第3導体管ユニット4Bの内側管要素41よりも巻数が少なく、第3導体管ユニット4Aの外側管要素42は、第3導体管ユニット4Bの外側管要素42よりも巻数が少ないように構成されている。
【0031】
そして、複数の第3導体管ユニット4A、4Bは、互いに直列となるように接続されている。具体的には、第3導体管ユニット4Aの他方の接続管要素44が、第3導体管ユニット4Bの一方の接続管要素43に接続されることにより、直列に接続されている。ここで、第3導体管ユニット4Aの他方の接続管要素44と第3導体管ユニット4Bの一方の接続管要素43とは、第3導体管ユニット4A及び第3導体管ユニット4Bを連結する連結管45により構成されている。
【0032】
また、第3導体管ユニット4Aの一方の接続管要素43には、第2導体管32の軸方向一端部が接続され、第3導体管ユニット4Bの他方の接続管要素44には、導出ポートP2が設けられている。この構成により、第3導体管ユニット4Aの一方の接続管要素43から流入した流体は、当該接続管要素43により第3導体管ユニット4Aの内側管要素41及び外側管要素42に分岐して流れ、内側管要素41及び外側管要素42を流れた流体は、第3導体管ユニット4Aの接続管要素44で合流する。合流した流体は、連結管45を流れて、第3導体管ユニット4Bの一方の接続管要素43に流入する。第3導体管ユニット4Bの一方の接続管要素43から流入した流体は、当該接続管要素43により第3導体管ユニット4Bの内側管要素41及び外側管要素42に分岐して流れ、内側管要素41及び外側管要素42を流れた流体は、第3導体管ユニット4Bの接続管要素44を介して、導出ポートP2から流出する。
【0033】
また、このように構成した第3導体管4は、各第3導体管ユニット4A、4Bにおいて、内側管要素41及び外側管要素42が接続管要素43、44により電気的に並列接続される構成となる。つまり、本実施形態の第3導体管4では、2つの並列回路が直列接続された構成となる。そして、一次コイルである第1導体管31及び第2導体管32により生じる磁束によって、第3導体管ユニット4Aにおいて、内側管要素41及び外側管要素42により1つの閉回路が形成されて短絡電流が流れ、第3導体管ユニット4Bにおいて、内側管要素41及び外側管要素42により1つの閉回路が形成されて短絡電流が流れる。つまり、内側管要素41には、軸方向一端部から軸方向他端部に向かって短絡電流が流れ、外側管要素42には、軸方向他端部から軸方向一端部に向かって短絡電流が流れる。
【0034】
また、本実施形態の各過熱水蒸気生成ユニット100A、100B、100Cでは、図1及び図2に示すように、第1導体管31と第3導体管4との間及び第2導体管32と第3導体管4との間に断熱材8が充填されている。この断熱材8は、第2導体管32の巻回部分間の隙間にも充填されており、第3導体管4の内側管要素41及び外側管要素42の間にも充填される。本実施形態では、第1導体管31の外周にケーシング9が設けられており、第1導体管31とケーシング9との間に断熱材8が設けられている。その他、閉磁路鉄心2の脚鉄心部21a、22aと第2導体管32との間に断熱材8を充填しても良い。
【0035】
このように構成した本実施形態の過熱水蒸気生成装置100において、各過熱水蒸気生成ユニット100A、100B、100Cに互いに異なる相の交流電圧を印加すると、各過熱水蒸気生成ユニットにおいて、第1導体管31及び第2導体管32に交流電流が流れて脚鉄心21~23に磁束が流れる。当該磁束によって第3導体管4の各第3導体管ユニット4A、4Bに個別に短絡電流が流れて、第3導体管4の各第3導体管ユニット4A、4Bが個別にジュール発熱する。また、第1導体管31及び第2導体管32は、交流電圧が印加されることで通電によりジュール発熱するとともに、第3導体管4からの伝熱により加熱される。
【0036】
ここで、第3導体管ユニット4Aの各管要素41、42は、第3導体管ユニット4Bの各管要素41、42よりも巻数が少ないので、第3導体管ユニット4Aの誘導起電力は、第3導体管ユニット4Bの誘導起電力よりも小さくなる。その結果、第3導体管ユニット4Aを流れる短絡電流は、第3導体管ユニット4Bを流れる短絡電流よりも小さい。これにより、第3導体管ユニット4Aから第3導体管ユニット4Bに段階的に加熱温度を上昇させている。
【0037】
これにより、図3に示すように、第1導体管31の導入ポートP1から導入された水は、第1導体管31及び第2導体管32を流れることにより、第1導体管31及び第2導体管32により加熱されて高温の水又は飽和水蒸気となる。その後、第2導体管32から第3導体管4に流入した高温の水又は飽和水蒸気は、第3導体管4の各第3導体管ユニット4A、4Bにより段階的に加熱されて過熱水蒸気となり、導出ポートP2から導出され、その後合流して、過熱水蒸気吐出ポートP3から吐出される。
【0038】
<2.本実施形態の効果>
このように構成した過熱水蒸気生成装置100によれば、3つの過熱水蒸気生成ユニット100A、100B、100Cに互いに異なる相の交流電圧を印加して過熱水蒸気を生成するので、3相交流電源を用いた過熱水蒸気生成装置100において過熱水蒸気の生成能力を向上させることができる。
【0039】
そして、一次コイルとして第1導体管31及び第2導体管32を用いているとともに、当該第1導体管31及び第2導体管32の間に二次コイルである第3導体管4を設けているので、第1導体管31及び第2導体管32は通電加熱されるとともに、第3導体管4の放熱を利用して加熱されるので、第3導体管4からの装置外部への放熱を低減でき、熱効率を上げることができる。また、第1導体管31、第2導体管32及び第3導体管4の順に直列に接続し、第1導体管31に設けられた導入ポートP1から水又は水蒸気を導入して、第2導体管32を介して、第3導体管4に設けられた導出ポートP2から過熱水蒸気を導出するので、過熱水蒸気生成装置100の簡略化及び小型化することができる。ここで、一次コイルを形成する第1導体管31及び第2導体管32において、それぞれの巻数、導体管の通電断面積、導体管の通流孔径の設定により、発熱比や流体への熱伝達面積比、流体の流速比を調整することができる。
【0040】
第3導体管4が内側管要素41及び外側管要素42が短絡接続された複数の第3導体管ユニット4A、4Bを有するので、各第3導体管ユニット4A、4Bに流れる短絡電流を調整して、各第3導体管ユニット4A、4Bのジュール発熱量を調整することができる。その結果、各第3導体管ユニット4A、4Bにおいて流体を段階的に昇温することができ、第3導体管4による流体の加熱効率を向上することができる。また、各第3導体管ユニット4A、4Bの入口側と出口側との温度差を小さくすることができ、管要素41、42の熱応力による劣化を低減することができる。
【0041】
なお、各第3導体管ユニット4A、4Bは、互いに逆向きに螺旋状に巻回された内側管要素41及び外側管要素42の軸方向一端部同士及び軸方向他端部同士を流体的に接続するとともにそれらを短絡接続しているので、短絡回路を構成するための接続構造を簡単にすることができる。
【0042】
また、複数の第3導体管ユニット4A、4Bは、それらを構成する管要素41、42の巻数が互いに異なる構成としているので、第3導体管ユニット4A、4Bの管要素41、42の巻数を変更するだけで、各第3導体管ユニット4A、4Bに流れる短絡電流を調整することができる。
【0043】
さらに、直列接続された複数の第3導体管ユニット4A、4Bにおいて、下流側の導体管ユニット4Bほど管要素41、42の巻数を多くすることにより、下流側の導体管ユニット4Bほど誘導電流を大きくでき、ジュール発熱量を大きくして、流体を段階的に高温に加熱しやすくできる。
【0044】
その他、一次コイルとして第1導体管31及び第2導体管32を用いているとともに、当該第1導体管31及び第2導体管32の間に二次コイルである第3導体管4を設けているので、第1導体管31及び第2導体管32は通電加熱されるとともに、第3導体管4の放熱を利用して加熱されるので、第3導体管4からの装置外部への放熱を低減でき、熱効率を上げることができる。また、第1導体管31、第2導体管32及び第3導体管4の順に直列に接続し、第1導体管31に設けられた導入ポートP1から水又は水蒸気を導入して、第2導体管32を介して、第3導体管4に設けられた導出ポートP2から過熱水蒸気を導出するので、過熱水蒸気生成装置100の簡略化及び小型化することができる。ここで、一次コイルを形成する第1導体管31及び第2導体管32において、それぞれの巻数、導体管の通電断面積、導体管の通流孔径の設定により、発熱比や流体への熱伝達面積比、流体の流速比を調整することができる。
【0045】
第1導体管31と第3導体管4との間及び第2導体管32及び第3導体管4との間に断熱材8が充填されているので、第3導体管4の放熱が装置外部へ漏れること及び第3導体管4の放熱による第1導体管31及び第2導体管32の加熱を安全に実現することができる。ここで、第1導体管31と第3導体管4との間の断熱材8の厚み、及び、第2導体管32と第3導体管4との間の断熱材8の厚みにより、第3導体管4から第1導体管31及び第2導体管32への熱伝達比を調整することができる。
【0046】
第3導体管4を複数回巻きの二次コイルとすることで励磁電流を小さくするとともに漏れインピーダンスを減少できるので、閉磁路鉄心2の断面積を小さくして鉄心の使用量を少なくし、鉄損を低減でき熱効率を上げることができる。また、Y型のヨーク鉄心24、25により3つの過熱水蒸気生成ユニット100A~100Cを組み合わせて過熱水蒸気生成装置100を構成しているので、3相電流をバランスさせながら、過熱水蒸気生成容量の大きな装置が実現できる。
【0047】
さらに、交流電圧を印加する交流電源を第1導体管31の軸方向一端部及び第2導体管32の軸方向一端部に接続する構成としているので、電源配線の取り回しを容易にすることができる。
【0048】
<3.本発明の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
例えば、前記実施形態では、第1導体管31及び第2導体管32がそれぞれ単層巻きのものであったが、第1導体管31又は第2導体管32の少なくとも一方が、二層巻き以上のものであっても良い。
【0049】
また、前記実施形態では、第3導体管4は2つの第3導体管ユニット4A、4Bを直列接続する構成であったが、3つ以上の第3導体管ユニットを直列接続する構成であっても良い。その他、第3導体管4は、複数の第3導体管ユニットを並列接続する構成であっても良い。
【0050】
さらに、前記実施形態では、各第3導体管ユニットの巻回径が互いに同じであったが、互いに異なるようにしても良い。
【0051】
その上、前記実施形態の各第3導体管ユニット4A、4Bは、2重管構造をなすものであったが、4重管又はそれ以上の偶数重の管要素を有するものであっても良い。この場合、2つの管要素毎にそれぞれ接続管要素で接続する。例えば、前記実施形態の第3導体管4を同心円状に複数配置した構成とすることが考えられる。
【0052】
前記実施形態では、第3導体管が複数の第3導体管ユニットを有する構成であったが、単一の第3導体管ユニットの構成であっても良い。つまり、第3導体管が、互いに逆向きに螺旋状に巻回された内側管要素及び外側管要素と、内側管要素及び外側管要素の軸方向一端部同士及び軸方向他端部同士を流体的に接続するとともにそれらを短絡接続する接続管要素とを有する構成であっても良い。
【0053】
前記実施形態では、3つの導出ポートP2を1つの過熱水蒸気吐出ポートP3に接続しているが、過熱水蒸気吐出ポートP3を設けることなく、3つの導出ポートP2から独立して過熱水蒸気を吐出するようにしても良い。
【0054】
前記実施形態では、一次コイルに導体管31、32を用いていたが、中実コイルを用いても良い。
【0055】
前記実施形態では、流体として水又は水蒸気を加熱する装置について説明したが、その他の液体又は気体を加熱するものであっても良い。
【0056】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0057】
100・・・過熱水蒸気生成装置
100A・・・第1の過熱水蒸気生成ユニット
100B・・・第2の過熱水蒸気生成ユニット
100C・・・第3の過熱水蒸気生成ユニット
2・・・閉磁路鉄心
21、22、23・・・脚鉄心
31・・・第1導体管
32・・・第2導体管
4・・・第3導体管
4A・・・第3導体管ユニット
4B・・・第3導体管ユニット
41・・・内側管要素
42・・・外側管要素
43、44・・・接続管要素
P1・・・導入ポート
P2・・・導出ポート
8・・・断熱材
図1
図2
図3
図4
図5