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特許7270990バルブ装置、流体制御装置、流体制御方法、半導体製造装置及び半導体製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】バルブ装置、流体制御装置、流体制御方法、半導体製造装置及び半導体製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16K 7/17 20060101AFI20230501BHJP
   G05D 7/06 20060101ALI20230501BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
F16K7/17 C
F16K7/17 B
G05D7/06 Z
H01L21/31 B
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020532214
(86)(22)【出願日】2019-06-18
(86)【国際出願番号】 JP2019024000
(87)【国際公開番号】W WO2020021911
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-05-18
(31)【優先権主張番号】P 2018138284
(32)【優先日】2018-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】110002893
【氏名又は名称】弁理士法人KEN知財総合事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 龍彦
(72)【発明者】
【氏名】中田 知宏
(72)【発明者】
【氏名】篠原 努
(72)【発明者】
【氏名】三浦 尊
【審査官】篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-172026(JP,A)
【文献】特開平06-193747(JP,A)
【文献】特表2016-505125(JP,A)
【文献】米国特許第05485984(US,A)
【文献】特開2018-123871(JP,A)
【文献】特開2010-159790(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 7/12 - 7/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容凹部と、前記収容凹部の底面で開口する第1の流路と、前記収容凹部に接続された第2の流路とを画定するバルブボディと、
前記収容凹部内に設けられ、前記
第1の流路と連通する流路を画定する筒状部材と、
前記筒状部材の上端部で支持される環状のバルブシートと、
前記収容凹部の底面の前記第1の流路の開口周囲と前記筒状部材の下端部との間に介在する環状のシール部材と、
外周縁部が前記バルブボディの収容凹部の内周面に形成された環状の支持部に気密又は液密に固定され、内周縁部が前記筒状部材の外周面に形成された環状の支持部に気密又は液密に固定され、前記収容凹部を通じて前記第2の流路と連通する複数の開口を有し、かつ、可撓性を有する環状プレートと、
前記筒状部材上のバルブシートおよび前記環状プレートを覆い、前記バルブシートに対して接触しない開位置及び接触する閉位置の間で移動することにより前記第1の流路と前記第2の流路との連通及び遮断を行うダイヤフラムと、を有し、
前記筒状部材は、前記環状プレートにより片持ち梁状に支持されることにより、前記ダイヤフラムから前記バルブシートを通じて受ける力を、前記シール部材を前記収容凹部の底面に向けて押圧する力として伝達可能となっている、バルブ装置
【請求項2】
収容凹部と、前記収容凹部の底面で開口する第1の流路と、前記収容凹部に接続された第2の流路とを画定するバルブボディと、
前記収容凹部内に設けられ、前記
第1の流路と連通する流路を画定する筒状部材と、
前記筒状部材の上端部で支持される環状のバルブシートと、
前記収容凹部の底面の前記第1の流路の開口周囲と前記筒状部材の下端部との間に介在する環状のシール部材と、
外周縁部が前記バルブボディの収容凹部の内周面に形成された環状の支持部に気密又は液密に固定され、内周縁部が前記筒状部材の外周面に形成された環状の支持部に気密又は液密に固定され、前記収容凹部を通じて前記第2の流路と連通する複数の開口を有し、かつ、可撓性を有する環状プレートと、
前記筒状部材上のバルブシートおよび前記環状プレートを覆い、前記バルブシートに対して接触しない開位置及び接触する閉位置の間で移動することにより前記第1の流路と前記第2の流路との連通及び遮断を行うダイヤフラムと、を有し、
前記環状プレートの外周縁部は、前記収容凹部の内周面に形成された支持部と当該支持部に対向するように前記内周面に挿入された支持リングに接触し、
前記支持リング上に前記ダイヤフラムの外周縁部が配置され、
前記ダイヤフラムの外周縁部の前記支持リングの側とは反対側の面が押えアダプタによって押圧されて、前記支持リングの外周縁部および前記ダイヤフラムの外周縁部が前記支持部に固定される、バルブ装置
【請求項3】
収容凹部と、前記収容凹部の底面で開口する第1の流路と、前記収容凹部に接続された第2の流路とを画定するバルブボディと、
前記収容凹部内に設けられ、前記
第1の流路と連通する流路を画定する筒状部材と、
前記筒状部材の上端部で支持される環状のバルブシートと、
前記収容凹部の底面の前記第1の流路の開口周囲と前記筒状部材の下端部との間に介在する環状のシール部材と、
外周縁部が前記バルブボディの収容凹部の内周面に形成された環状の支持部に気密又は液密に固定され、内周縁部が前記筒状部材の外周面に形成された環状の支持部に気密又は液密に固定され、前記収容凹部を通じて前記第2の流路と連通する複数の開口を有し、かつ、可撓性を有する環状プレートと、
前記筒状部材上のバルブシートおよび前記環状プレートを覆い、前記バルブシートに対して接触しない開位置及び接触する閉位置の間で移動することにより前記第1の流路と前記第2の流路との連通及び遮断を行うダイヤフラムと、を有し、
前記環状プレートの内周縁部は、前記筒状部材の外周面に形成された支持部と対向するように前記筒状部材の外周面に挿入され、前記環状プレートの内周縁部を介して当該支持部に対向するように前記外周面に圧入された固定リングにより前記筒状部材の外周面に形成された支持部に固定されている、バルブ装置
【請求項4】
収容凹部と、前記収容凹部の底面で開口する第1の流路と、前記収容凹部に接続された第2の流路とを画定するバルブボディと、
前記収容凹部内に設けられ、前記
第1の流路と連通する流路を画定する筒状部材と、
前記筒状部材の上端部で支持される環状のバルブシートと、
前記収容凹部の底面の前記第1の流路の開口周囲と前記筒状部材の下端部との間に介在する環状のシール部材と、
外周縁部が前記バルブボディの収容凹部の内周面に形成された環状の支持部に気密又は液密に固定され、内周縁部が前記筒状部材の外周面に形成された環状の支持部に気密又は液密に固定され、前記収容凹部を通じて前記第2の流路と連通する複数の開口を有し、かつ、可撓性を有する環状プレートと、
前記筒状部材上のバルブシートおよび前記環状プレートを覆い、前記バルブシートに対して接触しない開位置及び接触する閉位置の間で移動することにより前記第1の流路と前記第2の流路との連通及び遮断を行うダイヤフラムと、を有し、
前記環状プレートは、金属製であり、半径方向の中途に屈曲した屈曲部を有し、
前記収容凹部の内周面に形成された支持部および前記筒状部材の外周面に形成された支持部に固定される際に、前記屈曲部を反らせるように固定されることで、前記筒状部材を前記収容凹部の底面に向けて付勢して、前記シール部材を当該底面に押圧する弾性付勢力を発揮する、バルブ装置
【請求項5】
前記筒状部材を前記収容凹部の底面に向けて付勢して、前記シール部材を当該底面に押圧する付勢機構をさらに有する、請求項1~3のいずれかに記載のバルブ装置。
【請求項6】
前記環状プレートは、当該環状プレートが発揮する弾性復元力により前記付勢機構を兼ねている、請求項に記載のバルブ装置。
【請求項7】
前記シール部材は、前記筒状部材の前記バルブボディ側に形成されたシール凹部に保持される、請求項1ないしのいずれかに記載のバルブ装置。
【請求項8】
前記筒状部材は、前記ダイヤフラム側に形成されたバルブシート凹部を有し、
前記バルブシートは、前記バルブシート凹部に保持され、
前記バルブシートは、前記シール部材と同じ材料及び形状からなる、請求項に記載のバルブ装置。
【請求項9】
複数の流体機器が配列された流体制御装置であって、
前記複数の流体機器は、請求項1ないしのいずれかに記載のバルブ装置を含む流体制御装置。
【請求項10】
請求項1ないしのいずれかに記載のバルブ装置を用いて、流体の制御を行う流体制御方法。
【請求項11】
密閉されたチャンバ内においてプロセスガスによる処理工程を要する半導体装置の製造プロセスにおいて、前記プロセスガスの制御に請求項1ないしのいずれかに記載のバルブ装置を用いる半導体製造装置。
【請求項12】
密閉されたチャンバ内においてプロセスガスによる処理工程を要する半導体装置の製造プロセスにおいて、前記プロセスガスの制御に請求項1ないしのいずれかに記載のバルブ装置を用いる半導体製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブ装置、流体制御装置、流体制御方法、半導体製造装置及び半導体製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体製造工程においては、半導体製造装置のチャンバに対して、各種のプロセスガスの供給を制御するバルブ装置が用いられている。原子層堆積法(ALD:Atomic Layer Deposition 法)等においては、小型化されつつ、基板に膜を堆積させる処理プロセスに使用する処理ガスをより大きな流量で安定的に供給するバルブ装置が求められている。
引用文献1は、小型化されるとともに処理ガスをより大きな流量で安定的に供給可能なダイヤフラム弁について開示している。このダイヤフラム弁の本体の凹所は、開口に近い大径部および段差部を介して大径部の下方に連なる小径部からなる。凹所に流路形成ディスクが嵌め合わせられている。流路形成ディスクは、凹所大径部に嵌め合わせられている大径円筒部と、凹所段差部に受け止められている連結部と、凹所小径部の内径よりも小さい外径を有し下端が凹所の底面で受け止められている小径円筒部とからなる。流路形成ディスクの連結部に、小径円筒部外側環状空間と大径円筒部内側環状空間とを連通する複数の貫通孔が形成されている。流体流入通路は流路形成ディスクの小径円筒部下端に、流体流出通路は小径円筒部外側環状空間にそれぞれ通じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-172026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したダイヤフラム弁では、ダイヤフラム弁の本体の凹所段差部と流路形成ディスクの大径円筒部との間、および、ダイヤフラム弁の本体の凹所底面と流路形成ディスクの下端との間の2箇所をシールする必要がある。このため、部品間の寸法誤差等が原因で、複数のダイヤフラム弁の間で、流路形成ディスクの下端部とダイヤフラム弁の本体の凹所の底面との間のシール性能がばらつくという問題が存在した。
【0005】
本発明の目的の一つは、シール性能が改善され、小型化されつつより安定的に大きな流量を制御することのできるバルブ装置、そのバルブ装置を用いた流体制御装置、流体制御方法、半導体製造装置及び半導体製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のバルブ装置は、収容凹部と、前記収容凹部の底面で開口する第1の流路と、前記収容凹部に接続された第2の流路とを画定するバルブボディと、
前記収容凹部内に設けられ、第1の流路と連通する流路を画定する筒状部材と、
前記筒状部材の上端部で支持される環状のバルブシートと、
前記収容凹部の底面の前記第1の流路の開口周囲と前記筒状部材の下端部との間に介在する環状のシール部材と、
外周縁部が前記バルブボディの収容凹部の内周面に形成された環状の支持部に気密又は液密に固定され、内周縁部が前記筒状部材の外周面に形成された環状の支持部に気密又は液密に固定され、前記収容凹部を通じて前記第2の流路と連通する複数の開口を有し、かつ、可撓性を有する環状プレートと、
前記筒状部材上のバルブシートおよび前記環状プレートを覆い、前記バルブシートに対して接触しない開位置及び接触する閉位置の間で移動することにより前記第1の流路と前記第2の流路との連通及び遮断を行うダイヤフラムと、を有する。
前記筒状部材は、前記環状プレートにより片持ち梁状に支持されることにより、前記ダイヤフラムから前記バルブシートを通じて受ける力を、前記シール部材を前記収容凹部の底面に向けて押圧する力として伝達可能となっている。
【0007】
前記筒状部材を前記収容凹部の底面に向けて付勢して、前記シール部材を当該底面に押圧する付勢機構をさらに有する、構成を採用できる。
【0008】
好適には、前記環状プレートは、当該環状プレートが発揮する弾性復元力により前記付勢機構を兼ねている。
【0009】
前記環状プレートの外周縁部は、前記収容凹部の内周面に形成された支持部と当該支持部に対向するように前記内周面に挿入された支持リングに接触し、
前記支持リング上に前記ダイヤフラムの外周縁部が配置され、
前記ダイヤフラムの外周縁部の前記支持リングの側とは反対側の面が押えアダプタによって押圧されて、前記支持リングの外周縁部および前記ダイヤフラムの外周縁部が前記支持部に固定される、構成とすることができる。
【0010】
前記環状プレートの内周縁部は、前記筒状部材の外周面に形成された支持部と対向するように前記筒状部材の外周面に挿入され、前記環状プレートの内周縁部を介して当該支持部に対向するように前記外周面に圧入された固定リングにより前記筒状部材の外周面に形成された支持部に固定されている、構成とすることができる。
【0011】
前記環状プレートは、金属製であり、半径方向の中途に屈曲した屈曲部を有し、
前記収容凹部の内周面に形成された支持部および前記筒状部材の外周面に形成された支持部に固定される際に、前記屈曲部を反らせるように固定されることで、前記筒状部材を前記収容凹部の底面に向けて付勢して、前記シール部材を当該底面に押圧する弾性付勢力を発揮する、構成を採用できる。
【0012】
前記シール部材は、前記筒状部材の前記バルブボディ側に形成されたシール凹部に保持される、構成を採用できる。
【0013】
前記筒状部材は、前記ダイヤフラム側に形成されたバルブシート凹部を有し、
前記バルブシートは、前記バルブシート凹部に保持され、
前記バルブシートは、前記シール部材と同じ材料及び形状からなる、構成を採用できる。
【0014】
本発明の流体制御装置は、上流側から下流側に向かって複数の流体機器が配列された流体制御装置であって、前記複数の流体機器は、上記のバルブ装置を含む流体制御装置である。
【0015】
本発明の流量制御方法は、上記のバルブ装置を用いて、流体の流量を調整する流量制御方法である。
【0016】
本発明の半導体製造装置は、密閉されたチャンバ内においてプロセスガスによる処理工程を要する半導体装置の製造プロセスにおいて、前記プロセスガスの制御に上記のバルブ装置を用いる半導体製造装置である。
【0017】
本発明の半導体製造方法は、密閉されたチャンバ内においてプロセスガスによる処理工程を要する半導体装置の製造プロセスにおいて、前記プロセスガスの流量制御に上記のバルブ装置を用いる半導体製造方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、シール性能が改善され、小型化されつつより安定的に大きな流量を制御するバルブ装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1A】本発明の一実施形態に係るバルブ装置の構成を示す縦断面図。
図1B図1Aのバルブ装置における、開状態を示す断面図。
図2A】バルブシートおよびシール部材を保持する筒状部材の上面図。
図2B図2Aの2B-2B線における筒状部材の断面図。
図3】環状プレートの平面図
図4A】固定リングの平面図。
図4B図4Aの4B-4B線における固定リングの端面図
図5】環状プレートが装着された筒状部材の断面図。
図6図1Aのバルブ装置の組み立て手順を説明する断面図。
図7図1Aのバルブ装置の要部拡大断面図。
図8A】本発明の他の実施形態に係るバルブ装置の環状プレートの平面図。
図8B図8Aの8B-8B線における環状の断面図。
図8C図8Bの円A内の拡大断面図。
図9A】筒状部材に環状プレートを固定する前の状態を示す断面図。
図9B】筒状部材に環状プレートを固定リングで固定した状態を示す断面図。
図10A】環状プレートが固定された筒状部材を収容凹部に挿入した状態を示す断面図。
図10B】環状プレートを収容凹部の支持部に固定した状態を示す断面図。
図11】本発明の一実施形態に係るバルブ装置の半導体製造プロセスへの適用例を示す概略図。
図12】本実施形態のバルブ装置を用いる流体制御装置の一例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
第1実施形態
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。説明において同様の要素には同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
先ず、図12を参照して、本発明が適用される流体制御装置の一例を説明する。
図12に示す流体制御装置には、幅方向W1,W2に沿って配列され長手方向G1,G2に延びる金属製のベースプレートBSが設けられている。なお、W1は背面側、W2は正面側,G1は上流側、G2は下流側の方向を示している。ベースプレートBSには、複数の流路ブロック992を介して各種流体機器991A~991Eが設置され、複数の流路ブロック992によって、上流側G1から下流側G2に向かって流体が流通する図示しない流路がそれぞれ形成されている。
【0021】
ここで、「流体機器」とは、流体の流れを制御する流体制御装置に使用される機器であって、流体流路を画定するボディを備え、このボディの表面で開口する少なくとも2つの流路口を有する機器である。具体的には、開閉弁(2方弁)991A、レギュレータ991B、プレッシャーゲージ991C、開閉弁(3方弁)991D、マスフローコントローラ991E等が含まれるが、これらに限定されるわけではない。なお、導入管993は、上記した図示しない流路の上流側の流路口に接続されている。
【0022】
本発明は、上記した開閉弁991A、991D、レギュレータ991B等の種々のバルブ装置に適用可能であるが、本実施形態では、開閉弁に適用する場合を例に挙げて説明する。
【0023】
図1Aは、本発明の一実施形態に係る開状態におけるバルブ装置1の構成を示す断面図である。図1Bは、図1のバルブ装置1における、開状態を示す断面図である。図1A,1Bに示すように、バルブ装置1は、ケーシング6と、ボンネット5と、バルブボディ2と、円筒状に形成された筒状部材3と、バルブシート48と、シール部材49と、支持リング10、環状プレート11、固定リング12、ダイヤフラム41と、押えホルダ43と、ダイヤフラム押え42と、ステム44と、コイルばね45とを有している。
なお、図中の矢印A1,A2は上下方向であってA1が上方向、A2が下方向を示すものとする。
【0024】
バルブボディ2は、ステンレス鋼により形成されており、上面2a及び互いに対向する側面2b及び2cを有している。上面2aからは、円筒状部26が上方向A1に向けて延びている。円筒状部26の内部には、筒状部材3を配置する空間であり、段差状の支持部24を有する収容凹部23が開けられると共に、ボンネット5と螺合するネジ穴25が形成されている。また、バルブボディ2は第1の流路21及び第2の流路22を形成している。第1の流路21は、側面2bと、収容凹部23の底面で開口する流路である。第2の流路22は、側面2cと、収容凹部23の側面に開口する流路である。
【0025】
ダイヤフラム41は、その外周縁部が、後述する支持リング10と押えアダプタ13により挟持され、バルブシート48に対して接触する閉位置及び非接触の開位置の間で移動することにより第1の流路21と第2の流路22との連通及び遮断を行う。ケーシング6は、ダイヤフラム41を駆動するアクチュエータ8を内蔵し、ボンネット5に螺合することにより固定される。操作部材7は、弁体であるダイヤフラム41に第1の流路21の開口を閉鎖させる閉位置と、開口を開放させる開位置との間で移動する。アクチュエータ8の操作部材7は、略円筒状に形成され、ボンネット5の円孔54の内周面と、ケーシング6内に形成された円孔64の内周面に保持され、上下方向A1,A2に移動自在に支持されている。円孔54及び64の内周面と、操作部材7との間はOリング91が配置され、気密性が確保されている。
【0026】
ボンネット5の内部において、操作部材7はステム44に結合され、ステム44は操作部材7と共に移動する。ステム44は、ボンネット5の内部において、コイルばね46により、ボンネット5に対して下方向A2、つまりダイヤフラム41を閉位置に移動させる方向に付勢されている。本実施形態では、コイルばね46を使用しているが、これに限定されるわけではなく、皿ばねや板バネ等の他の種類の弾性部材を使用することができる。ステム44の下端面には押えホルダ43が固定され、この押えホルダ43には、ダイヤフラム41の中央部上面に当接するポリイミド等の合成樹脂製のダイヤフラム押え42が装着されている。なお、ダイヤフラム押え42にはアルミ等の金属を用いても良い。
【0027】
ケーシング6内部には、操作部材7の周囲に環状のバルクヘッド82が形成され、ボンネット5の上面5aとバルクヘッド82で挟まれたシリンダ83内にはピストン81が配置され、バルクヘッド82の上方に形成されたシリンダ83にもピストン81が配置されている。上側のピストン81は、コイルばね45により下方向A2に向けて付勢されている。
ケーシング6内部の空間を形成する内周面とピストン81との間、及び操作部材7とピストン81との間はOリング91が配置され、気密性が確保されている。
【0028】
シリンダ83およびピストン81は、操作部材7をコイルばね46に抗して開位置に移動させるアクチュエータ8を構成している。アクチュエータ8は、例えば複数のピストン81を用いて圧力の作用面積を増加させることにより、操作ガスによる力を増力できる構成とすることができる。上側のピストン81の上側の空間は、通気路62等により大気に開放されている。
【0029】
各シリンダ83のピストン81下側の空間は、操作部材7に形成された操作部材流通路71と連通している。操作部材流通路71は、ケーシング6の上面6aに形成された円孔64に繋がる操作ガス供給口61に連通している。これにより操作ガス供給口61から供給される操作ガスは、シリンダ83に供給され、ピストン81を上方向A1に押し上げる。なお、ケーシング6、アクチュエータ8、ボンネット5、ステム44、ダイヤフラム押え42及びコイルばね45、46の構成は、圧縮空気により弁体の開閉を制御する自動バルブ装置における構成の一例であり、これらの構成は他の公知の構成等適宜選択することができる。また手動バルブ装置である場合等においてこれらの構成は有していなくてもよい。
【0030】
筒状部材3は、ステンレス鋼等の金属材料により円筒状に形成され、収容凹部23の底面の第1の流路21の開口と連通する流路3aを画定している。図2A,2Bに示すように、筒状部材3の上端部には、保持凹部35が形成され、下端部には保持凹部36が形成され、保持凹部35にはバルブシート48が、保持凹部36には環状のシール部材49がカシメにより固定されている。筒状部材3の上端部および下端部の外周面にはそれぞれ段差部37が形成されている。
シール部材49は、筒状部材3のバルブボディ2側において、筒状部材3の内側と外側との間を遮断し、気密性を確保する。
バルブシート48は、PFA、PA、PI、PCTFE、PTFE等の合成樹脂で形成され、シール部材49もバルブシート48と同じ材料及び形状からなるものとすることができる。この構成によれば、バルブシート48およびシール部材49を装着した筒状部材3を上下いずれの向きでも使用可能となる。部品を共通化して製品コストを低減することも可能となる。なお、バルブシート48およびシール部材49を筒状部材3に固定しない構成も採用でき、バルブシート48およびシール部材49を同一材料、同一形状にしない構成を採用することもできる。
【0031】
環状プレート11は、図3に示すように、中心部に貫通孔11aを有する可撓性の円環状の平坦な板材であり、ステンレス等の金属で形成され、周方向に複数の開口11bが形成されている。環状プレート11は、後述するように、内周縁部11cが筒状部材3の外周面に形成された段差部37に固定され、外周縁部11dが収容凹部23の支持部24に固定される。
【0032】
支持リング10は、筒状部材3と同心の環状形状である。支持リング10は、環状プレート11の外周縁部11dを介して収容凹部23の段差状の支持部24に配置される。
【0033】
固定リング12は、筒状部材3と同心の環状形状であり、図4Bに示すように、上下端面12aが互いに平行な平坦面で構成されている。図5に示すように、環状プレート11が筒状部材3の上端側の段差部37に配置され、固定リング12が筒状部材3の上端側の外周面に圧入される。これにより、環状プレート11が筒状部材3に固定される。
【0034】
本実施形態においては、筒状部材3は、筒状部材3の内側の流路3aが第1の流路21と連通している。収容凹部23の底面に第1の流路21の開口を設け、収容凹部23の側面に第2の流路22の開口を設けることができるため、第1の流路21及び第2の流路22の径をより大きくすることができる。これにより開状態における流量を大きくすることができる。
【0035】
ダイヤフラム41は、バルブボディ2の第1の流路21から伸びる筒状部材3の流路3aを閉鎖して第1の流路21と第2の流路22とを遮断すると共に、流路3aを開放して第1の流路21と第2の流路22とを連通させる。ダイヤフラム41は、バルブシート48の上方に配設されており、収容凹部23の気密を保持すると共に、その中央部が上下動してバルブシート48に当離座することにより、第1の流路21及び第2の流路22の遮断又は連通する。本実施形態では、ダイヤフラム41は、特殊ステンレス鋼等の金属製薄板及びニッケル・コバルト合金薄板の中央部を上方へ膨出させることにより、上に凸の円弧状が自然状態の球殻状とされている。ダイヤフラム41は、例えば、ステンレス、NiCo系合金などの金属やフッ素系樹脂で球殻状に弾性変形可能に形成されている。
【0036】
バルブ装置1は、図6に示すように、図5に示した環状プレート11が固定リング12により固定された筒状部材3が、シール部材49が収容凹部23の底面に形成された第1の流路21の開口周囲の環状のシール面23sに接するように配置される。次いで、支持リング10が環状プレート11に接触するように配置され、その後に、支持リング10に接触するようにダイヤフラム41が配置され、ダイヤフラム41に接触するように押えアダプタ13が配置され、ボンネット5がバルブボディ2のネジ穴25にねじ込まれる。ボンネット5の下端面により、押えアダプタ13が下方向A2に向けて押圧され、ダイヤフラム41および支持リング10を介して環状プレート11の外周縁部11dがバルブボディ2の収容凹部23の支持部24に押圧される。これにより、環状プレート11の外周縁部11dは、バルブボディ2の収容凹部23の支持部24に気密又は液密に固定される。なお、環状プレート11の内周縁部11cは、筒状部材3の外周面に形成された段差部(支持部)37に気密又は液密に固定リング12により固定されている。
【0037】
ここで、バルブ装置1の筒状部材3に作用する力について図7を参照して説明する。
なお、図7は環状プレート11が支持部24に固定された状態を示しているが、ダイヤフラム41およびボンネット5の記載を省略している。
環状プレート11の外周縁部は、バルブボディ2の支持部24の平坦面および支持リング10の平坦面により挟持されており、筒状部材3は環状プレート11により片持ち梁状に支持されている。環状プレート11は、矢印B1,B2の方向に撓むことが可能であり、環状プレート11が撓めば筒状部材3は収容凹部23の底面に対して上下方向A1,A2に移動可能となる。
図示しないダイヤフラム41が下方向A2に押圧されてバルブシート48に密着すると、バルブシート48には下方向A2に向かう力Fが作用する。これにより、筒状部材3の下端部に設けられたシール部材49は、収容凹部23の第1の流路21の開口周囲のシール面23sからダイヤフラム41から受ける力Fの反力Rを受ける。反力Rがシール面23sからシール部材49に作用することで、シール部材49がシール面23sに密着し、収容凹部23の底面において、筒状部材3の内周と外周との間が確実にシールされる。
すなわち、バルブ装置1が図1に示した閉鎖状態において、筒状部材3と収容凹部23の底面との間のリークを確実に防ぐことができる。
【0038】
第2実施形態
図8A図8Cに、本発明の第2の実施形態に係るバルブ装置に用いられる環状プレート11Aの構造を示す。なお、第2の実施形態に係るバルブ装置は、環状プレート11Aの構造以外については、第1の実施形態に係るバルブ装置1と同様の構成である。
図8Aに示す環状プレート11Aは、中心部に貫通孔11aを有する可撓性の円環状の板材であり、ステンレス等の金属で形成され、周方向に複数の開口11bが形成されている。加えて、環状プレート11Aは、内周縁部11cと外周縁部11dとの間に屈曲部11eを有する。
図8Cから分かるように、環状プレート11Aは、内周縁部11cの屈曲部11eよりも内周側の部分が環状プレート11Aの中心軸線方向下方に向くように、内周縁部11cの一部(半径方向の中途)を環状プレート11Aと同心の円に沿って予め塑性変形させてある。
【0039】
図9Aに示すように、筒状部材3の外周面に環状プレート11Aの貫通孔11aを嵌め込んで、段差部37に環状プレート11Aに配置する。この状態では、環状プレート11Aは、筒状部材3の中心軸線CLに直交する水平面HPに略沿った位置に配置される。
この状態から、図9Bに示すように、固定リング12を筒状部材3の上端部の外周面に圧入し、固定リング12の平坦な端面と、段差部37の平坦な支持面とで、環状プレート11Aの内周縁部11cを挟持すると、環状プレート11Aは、水平面HPに対して下方に向かうように反る。
【0040】
図9Bに示した環状プレート11Aが固定された筒状部材3をバルブボディ2の収容凹部23に挿入すると、図10Aに示すように、環状プレート11Aが外周側に向かって下方に傾斜した状態で支持部24に配置される。
この状態から、支持リング10を環状プレート11A上に配置し、さらに、図示しないダイヤフラム41および押えアダプタ13を支持リング10上に配置し、ボンネット5の下端面により押えアダプタ13を下方向A2に向けて押圧することで、支持部24とボンネット5の下端面との間で環状プレート11Aの外周縁部およびダイヤフラム41の外周縁部が気密又は液密に固定される。
【0041】
図10Bは、環状プレート11Aが支持部24に固定された状態を示しているが、ダイヤフラム41およびボンネット5の記載を省略している。また、説明の便宜上、筒状部材3の断面へのハッチングの記載を省略している。
図10Bに示す状態では、環状プレート11Aは水平方向にのびているが、筒状部材3の上端部には、環状プレート11Aから下方向A2に向かう曲げモーメントMが常時作用している。すなわち、収容凹部23の支持部24および筒状部材3の外周面に形成された段差部(支持部)37に固定される際に、環状プレート11Aの屈曲部11eを反らせるように固定されることで、環状プレート11Aは、筒状部材3を収容凹部23の底面に向けて付勢して、シール部材49をシール面23sに押圧する弾性付勢力を発揮する。シール部材49には、シール面23sから反力R1が常時作用する。このような構成とすることで、バルブ装置が開状態にあり、流体が流通している際に、流体に脈動(圧力変動)があると、筒状部材3がシール面23sに対して上下動するいわゆるチャタリングを起こす可能性がある。しかし、付勢機構として、環状プレート11Aにシール部材49をシール面23sに押圧する弾性付勢力を発揮させることで、チャタリングを抑制することができる。筒状部材3を収容凹部23の底面に向けて付勢する付勢機構を環状プレート11Aとは別に設けることも可能であるが、環状プレート11Aに付勢機能を併せ持たせることで、構造を簡素化できる。
【0042】
次に、図11を参照して、上記したバルブ装置1の適用例について説明する。
図11に示す半導体製造装置980は、ALD法による半導体製造プロセスを実行するための装置であり、981はプロセスガス供給源、982はガスボックス、983はタンク、984は制御部、985は処理チャンバ、986は排気ポンプを示している。
ALD法による半導体製造プロセスでは、処理ガスの流量を精密に調整する必要があるとともに、基板の大口径化により、処理ガスの流量をある程度確保する必要もある。
ガスボックス982は、正確に計量したプロセスガスを処理チャンバ985に供給するために、開閉バルブ、レギュレータ、マスフローコントローラ等の各種の流体制御機器を集積化してボックスに収容した集積化ガスシステム(流体制御装置)である。
タンク983は、ガスボックス982から供給される処理ガスを一時的に貯留するバッファとして機能する。
制御部984は、バルブ装置1への操作ガスの供給制御による流量調整制御を実行する。
処理チャンバ985は、ALD法による基板への膜形成のための密閉処理空間を提供する。
排気ポンプ986は、処理チャンバ985内を真空引きする。
【0043】
上記のようなシステム構成によれば、制御部984からバルブ装置1に流量調整のための指令を送れば、処理ガスの初期調整が可能になる。
【0044】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されない。当業者であれば、本発明の範囲内で、種々の追加や変更等を行うことができる。例えば、上記適用例では、バルブ装置1をALD法による半導体製造プロセスに用いる場合について例示したが、これに限定されるわけではなく、本発明は、例えば原子層エッチング法(ALE:Atomic Layer Etching 法)等、精密な流量調整が必要なあらゆる対象に適用可能である。
【0045】
上記実施形態では、アクチュエータとして、ガス圧で作動するシリンダに内蔵されたピストンを用いたが、本発明はこれに限定されるわけではなく、制御対象に応じて最適なアクチュエータを種々選択可能である。
【0046】
上記実施形態では、バルブ装置1を流体制御装置としてのガスボックス982の外部に配置する構成としたが、開閉バルブ、レギュレータ、マスフローコントローラ等の各種の流体機器を集積化してボックスに収容した流体制御装置に上記実施形態のバルブ装置1を含ませることも可能である。
【0047】
上記実施形態では、流体制御装置として複数の流路ブロック992にバルブ装置を搭載したものを例示したが、分割タイプの流路ブロック992以外にも、一体型の流路ブロックやベースプレートに対しても本発明のバルブ装置は適用可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 :バルブ装置
2 :バルブボディ
2a :上面
2b :側面
2c :側面
3 :筒状部材
3a :流路
5 :ボンネット
5a :上面
6 :ケーシング
6a :上面
7 :操作部材
8 :アクチュエータ
10 :支持リング
11 :環状プレート
11A :環状プレート
11a :貫通孔
11b :開口
11c :内周縁部
11d :外周縁部
11e :屈曲部
12 :固定リング
12a :上下端面
13 :押えアダプタ
21 :第1の流路
22 :第2の流路
23 :収容凹部
23s :シール面
24 :支持部
25 :ネジ穴
26 :円筒状部
35 :保持凹部
36 :保持凹部
37 :段差部
41 :ダイヤフラム
42 :ダイヤフラム押え
43 :押えホルダ
44 :ステム
45 :コイルばね
46 :コイルばね
48 :バルブシート
49 :シール部材
54 :円孔
61 :操作ガス供給口
62 :通気路
64 :円孔
71 :操作部材流通路
81 :ピストン
82 :バルクヘッド
83 :シリンダ
91 :Oリング
980 :半導体製造装置
981 :プロセスガス供給源
982 :ガスボックス
983 :タンク
984 :制御部
985 :処理チャンバ
986 :排気ポンプ
991A :開閉弁(流体機器)
991B :レギュレータ(流体機器)
991C :プレッシャーゲージ(流体機器)
991D :開閉弁(流体機器)
991E :マスフローコントローラ(流体機器)
992 :流路ブロック
993 :導入管
A :円
A1 :上方向
A2 :下方向
BS :ベースプレート
CL :中心軸線
F :力
G1 :長手方向(上流側)
G2 :長手方向(下流側)
HP :水平面
M :曲げモーメント
R :反力
W1,W2:幅方向
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図10A
図10B
図11
図12