(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】分析物の濃縮
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6813 20180101AFI20230501BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20230501BHJP
C12N 15/10 20060101ALI20230501BHJP
C12M 1/00 20060101ALN20230501BHJP
C12M 1/34 20060101ALN20230501BHJP
【FI】
C12Q1/6813 Z ZNA
G01N33/53 M
C12N15/10 100Z
C12M1/00 A
C12M1/34 Z
(21)【出願番号】P 2020532561
(86)(22)【出願日】2018-12-13
(86)【国際出願番号】 US2018065421
(87)【国際公開番号】W WO2019118705
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-11-12
(32)【優先日】2017-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507238218
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミシガン
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン-バック,アレキサンダー エドモンド
(72)【発明者】
【氏名】テワリ,マニーシュ
(72)【発明者】
【氏名】ウォルター,ニルス ジー.
【審査官】林 康子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/116256(WO,A2)
【文献】特表2017-513015(JP,A)
【文献】国際公開第2017/041030(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/139354(WO,A1)
【文献】Azevedo AM et al,Partitioning of human antibodies in polyethylene glycol-sodium citrate aqueous two-phase systems,Separation and Purification Technology,2009年,Vol 65 No 1,14-21
【文献】Johnson-Buck A et al,Kinetic fingerprinting to identify and count single nucleic acids,Nature Biotechnology,2015年,Vol 33 No 7,730-732
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00
C12M 1/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上の分析物の分析のための方法であって、前記方法は以下の工程:
(a)分析物を含む水性二相系(ATPS)を提供する工程;
(b)前記分析物をATPSの第1の相の中に濃縮する工程;および
(c)前記第1の相を基材に接触させる工程
を含
み、
前記分析物が核酸であり、
前記ATPSが、PEG、クエン酸塩、および塩化ナトリウムを含み、
混合物中のPEGの質量分率が30%超であり、混合物中のクエン酸塩の質量分率が2.5%未満であり、そして塩の濃度が0.25M超であり、
前記クエン酸塩が、クエン酸およびクエン酸ナトリウムとして、5.5~8.5のpHを提供する比で存在する、
方法。
【請求項2】
前記第1の相を第2の相から分離する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の相の中の前記分析物の濃度が、前記第2の相の中の前記分析物の濃度の少なくとも約10倍である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の相の体積が、前記第1の相の体積の少なくとも約10倍である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記基材上に固定化された捕捉プローブによって前記分析物を捕捉する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
検出可能に標識されたクエリープローブと前記分析物との会合および/または解離の反応速度論を分析することによって、前記基材上の前記分析物を検出する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記基材上の前記分析物を単一分子感度で検出する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ATPSを提供する工程が、第1の組成物と第2の組成物との混合物であり、当該混合物への前記分析物を含む水性サンプルの添加に際してATPSを形成する第1の組成物と第2の組成物との混合物を提供することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記混合物が、固体、ニートの混合物であるか、または固体およびニートの構成要素を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記分析物を含むサンプルを提供する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記サンプルが生物学的サンプルである、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の相が、0.01~100mm
2の制限された面積にわたって基材に接触させられる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記分析物を含む前記サンプルを加熱すること、および/または前記分析物を含む前記ATPSを加熱することをさらに含む、請求項
10に記載の方法。
【請求項14】
前記PEGの分子量が600~6000Daである、請求項
1に記載の方法。
【請求項15】
前記分析物が加熱によって変性させられる、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記分析物が一本鎖核酸である、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、2018年6月29日に出願された米国仮特許出願第62/692,001号、および2017年12月14日に出願された米国仮特許出願第62/598,802号に優先権を主張し、その各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[連邦政府の支援を受けた研究または開発に関する陳述]
本発明は、米国陸軍研究所の陸軍研究室(ARO)によって授与されたW911NF-12-1-0420、および国立衛生研究所によって授与されたGM062357の下での政府の支援でなされた。政府は本発明における特定の権利を有する。
【0003】
[分野]
分析物の検出に関する技術、特に、限定するものではないが、例えば、低存在量の分析物のイメージングおよび検出のための、表面において分析物を濃縮するための組成物、方法、およびシステムに関する技術が本明細書において提供される。
【0004】
[背景]
いくつかの分子診断技術は、他の、より存在量が多いかまたは野生型の対立遺伝子を有する混合サンプル中に混ざった大過剰の非腫瘍DNAまたは稀な遺伝的対立遺伝子を含む血液サンプルにおける腫瘍由来DNAの小集団のような、非常に低存在量のバイオマーカーの同定を可能にする。いくつかのサンプルにおいて、これらの情報を与えるバイオマーカーは、生体液(血液、血漿、尿など)1ミリリットル当たり数コピー(例えば、1~1000コピー)ほどの低い存在量で存在する。低濃度(例えば、1フェムトモル濃度未満および/または約1~1000分子/ml生体液)で存在するバイオマーカーを分析することは、多くの技術、特に表面固定化が関与する技術(例えば、マイクロアレイ(例えば、Schulze & Downward (2001) "Navigating gene expression using microarrays - a technology review" Nat. Cell Biol. Lond. 3: E190-95)を参照のこと)、標的特異的カラーコード化プローブ対を使用する核酸の直接デジタル検出(例えば、NANOSTRING NCOUNTER、例えば、Kulkarni (2001) "Digital Multiplexed Gene Expression Analysis Using the NanoString nCounter System", Current Protocols in Molecular Biology (John Wiley & Sons, Inc.)を参照のこと)、および大部分の次世代シーケンシングプラットフォーム(例えば、Metzker (2010) "Sequencing technologies - the next generation" Nat. Rev. Genet. 11: 31-46; Eid et al. (2009) "Real-Time DNA Sequencing from Single Polymerase Molecules" Science 323: 133-38を参照のこと)について感度の課題をもたらす。
【0005】
いくつかの既存の技術は、低存在量の分析物の濃度を増加させるために、表面捕捉または分析物抽出を使用する(例えば、次世代シーケンシングのための表面捕捉、ドロップレットデジタルPCRのためのドロップレット生成など)。しかし、これらの技術には、特に、分析のために大量の生体液を処理する場合、コストおよび/または時間がかかる(例えば、数時間を必要とする)。他の技術は、サンプル中の標的核酸の量を増加させるために、核酸増幅技術(例えば、PCR)を使用していた。しかし、核酸増幅は、増幅産物に化学的損傷およびコピーエラーの両方を導入する(例えば、Potapov & Ong (2017) "Examining Sources of Error in PCR by Single-Molecule Sequencing" PLOS ONE 12: e0169774を参照のこと)。これらのエラーは、原則的に、高リード深度を伴うユニークモレキュラーアイデンティファイヤー(またはバーコード配列)の付加を用いて同定および除去され得るが(Schmitt et al. (2012) "Detection of ultra-rare mutations by next-generation sequencing" Proc. Natl. Acad. Sci. 109: 14508-13)、このストラテジーは、アッセイのコストおよび分析の複雑さを著しくつけ加える。さらに、DNAおよびRNA配列のような分析物は、PCRによって増幅され得るが、他のバイオマーカー(例えば、メチル化および他の修飾がなされた核酸塩基、ペプチド、タンパク質、複合糖質、糖タンパク質、脂質、翻訳後修飾、代謝物など)は、PCRによっても、いかなる類似のプロセスによってもコピーされ得ない。
【0006】
[概要]
従って、分析物(例えば、生体分子(例えば、核酸(例えば、DNA、RNA、メチル化および他の修飾がなされた、または天然に生じない核酸塩基)、ポリペプチド(例えば、ペプチド、タンパク質、糖タンパク質)、炭水化物、脂質、翻訳後修飾、アミノ酸、代謝物)、小分子など)を濃縮するための技術が、本明細書において提供される。いくつかの実施形態において、技術は、表面において分析物を濃縮するための水性二相系(ATPS)の使用に関する。いくつかの実施形態において、技術は、表面における分析物の電気泳動濃縮の使用に関する。いくつかの実施形態において、表面における分析物の濃縮の後に、分析物の表面捕捉(例えば、表面における分析物の固定化)が続く。いくつかの実施形態において、表面における分析物の濃縮、および任意に、表面における分析物の表面捕捉の後に、分析物の分析が続く。
【0007】
本明細書に記載される技術の実施形態の開発の間に、ATPSを使用する実験によって、技術の実施形態が、ポリ(エチレングリコール)(PEG)3350、クエン酸ナトリウム、および塩化ナトリウムを含むATPSを使用した、捕捉された腫瘍DNA配列の表面密度の80倍超の増加を提供したことが示された。捕捉された分析物の表面密度の増加は、その後の検出の感度の80倍超の増加をもたらした。さらに、本明細書において提供される技術の実施形態の開発の間に、電気泳動濃縮を使用する実験によって、分析物(例えば、荷電分析物(例えば、負に荷電した、正に荷電した))の電気泳動濃縮が、分析物の濃度の少なくとも50倍~100倍の増加を提供したことが示された。いくつかの実施形態において、技術は、2017年12月14日に出願された米国仮特許出願第62/598,802号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるようなATPSの使用を含む。
【0008】
水系二相系ATPS(例えば、Iqbal et al. (2016) "Aqueous two-phase system (ATPS): an overview and advances in its applications" Biol. Proced. Online 18(その全体が参照により本明細書に組み込まれる))は、2つの水溶性構成要素(例えば、2つのポリマーまたはポリマーおよび塩)が閾値濃度を超え、そして異なる組成を有する2つの水相に分離するときに生じる。いくつかの型のATPSは、生体分子(DNAおよびタンパク質を含む)を、2つの相の1つに選択的に分配する。いくつかのATPS系において、相の一方における生体分子の濃度は、他方の相における生体分子の濃度の1000倍超である(Alberts (1967) "Efficient Separation of Single-Stranded and Double-Stranded Deoxyribonucleic Acid in a Dextran-Polyethylene Glycol Two-Phase System" Biochemistry (Mosc.) 6: 2527-32(その全体が参照により本明細書に組み込まれる))。2つのATPS構成要素の一方が他方に比較して過剰に存在する場合、得られる2つの相は、平衡状態で、等しくない体積を有し得、このことは、より小さな相において目的の生体分子を濃縮することを可能にする(例えば、Iqbal、前出を参照のこと)。本明細書において提供される技術のいくつかの実施形態において、ATPS系を使用して、分析物の迅速かつ効率的な捕捉のために、イメージング表面の小さな領域にわたってDNAの非常に希薄な溶液を濃縮する(例えば、
図1aを参照のこと)。いくつかの実施形態において、方法は、サンプルを加熱すること(例えば、生体分子(例えば、核酸(例えば、RNA、DNA)、タンパク質、または他の分子、生体分子、および/または分子複合体)を変性させるために)、サンプルをATPS形成成分とともに激しく混合すること、次いで、サンプルを含む(例えば、サンプル由来の分析物を含む)ATPSを手短かに遠心分離して、分析物リッチな下相をイメージング表面の近くに配置することを含む。特に、方法の実施形態は、DNAサンプルを加熱すること(例えば、DNAを変性させるために)、DNAサンプルをATPS形成成分とともに激しく混合すること、次いで、ATPSおよびDNAを手短に遠心分離して、DNAリッチな下相をイメージング表面の近くに配置することを含む。この技術は簡単であり、そして1~10分で完了する。
【0009】
電気泳動捕捉(例えば、分析物の)は、分析物(例えば、荷電した分析物(例えば、正に荷電した、負に荷電した))を表面に移動させるための、そして/または、表面において分析物(例えば、荷電した分析物(例えば、正に荷電した、負に荷電した))を濃縮するための(例えば、分析物を移動させて表面に接触させるための)電圧の使用を含む。いくつかの実施形態において、分析物は、表面上の特定の部位(例えば、表面上の特定の、規定された、そして/またはアドレス可能な部位)において濃縮される。いくつかの実施形態において、分析物は、表面に送達され、そして表面にわたって拡散させられて、表面にわたって分析物の均一な分布を提供する。いくつかの実施形態において、分析物は、表面への分析物の送達後、および/または表面への分析物の接触後に、表面において捕捉される(例えば、本明細書に記載されるように(例えば、捕捉プローブによって))。いくつかの実施形態において、分析物の電気泳動捕捉は、内部チャンバ、外部チャンバ、ならびに内部チャンバおよび外部チャンバを横切って印加される電圧を含む電気泳動サンプルセル(例えば、本明細書に記載されるような)の使用を含む。いくつかの実施形態において、電気泳動サンプルセルは、内部チャンバと外部チャンバとの間の電流の通過を可能にし、そして内部チャンバと外部チャンバとの間の分析物の流動を最小化および/または排除する多孔質材料を含む。
【0010】
従って、いくつかの実施形態において、技術は、基材上の分析物の分析のための方法を提供する。例えば、いくつかの実施形態において、方法は、分析物を含む水性二相系(ATPS)を提供すること;分析物をATPSの第1の相の中に濃縮すること;および前記第1の相を基材に接触させることを含む。いくつかの実施形態において、方法は、例えば、遠心分離または重力によって、前記第1の相を第2の相から分離することをさらに含む。いくつかの実施形態において、第1の相の中の分析物の濃度は、第2の相の中の分析物の濃度よりも高い(例えば、第2の相の中の分析物の濃度の少なくとも約2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、または20倍)。いくつかの実施形態において、第2の相の体積は、第1の相の体積よりも大きい(例えば、第1の相の体積の少なくとも約2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、または20倍)。いくつかの実施形態において、第1の相を基材に接触させることは、約20秒超(例えば、約20秒超、30秒、40秒、50秒、60秒、70秒、80秒、90秒、100秒、110秒、または120秒)生じる。いくつかの実施形態において、第1の相を基材に接触させることは、約60秒超生じる。
【0011】
いくつかの実施形態において、前記ATPSを提供することは、混合に際してATPSを形成する第1の組成物および第2の組成物を提供することを含む。いくつかの実施形態において、前記ATPSを提供することは、第1の組成物と第2の組成物との混合物であり、当該混合物への前記分析物を含む水性サンプルの混合物への添加に際してATPSを形成する第1の組成物と第2の組成物との混合物を提供することを提供することを含む。いくつかの実施形態において、前記ATPSを提供することは、第1の組成物と第2の組成物とを混合して、ATPSを形成する混合物を形成することを含む。いくつかの実施形態において、前記ATPSを提供することは、第1の組成物と第2の組成物とを混合すること、および前記分析物を含む水性サンプルを前記混合物に添加することを含む。いくつかの実施形態において、提供される混合物は、固体、ニートの混合物であるか、または固体およびニートの構成要素を含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、ATPSは、ポリエチレングリコール(PEG)およびクエン酸塩を含む。いくつかの実施形態において、ATPSは、(PEG)、クエン酸塩、および塩(例えば、塩化ナトリウム)を含む。いくつかの実施形態において、ATPSの第1の相(例えば、濃縮された分析物を含む相)は、クエン酸塩を含む。
【0013】
いくつかの実施形態において、方法は、前記分析物を含む前記サンプルを加熱すること、および/または前記分析物を含む前記ATPSを加熱することを含む。いくつかの実施形態において、分析物は核酸であり、そして方法は前記核酸を変性させることを含む。
【0014】
いくつかの実施形態において、分析物を含む前記水性二相系(ATPS)を提供することは、前記分析物を含む水性サンプルを、ATPSを形成する第1の組成物および第2の組成物に添加することを含む。いくつかの実施形態において、分析物は、ATPSを形成する前記第1の組成物および前記第2の組成物に、前記分析物を含む前記水性サンプルを添加する前に変性させられる。いくつかの実施形態において、分析物は加熱によって変性させられる。そして、いくつかの実施形態において、分析物は核酸である。
【0015】
いくつかの実施形態において、ATPSは、PEG、クエン酸塩、および塩を含み、例えば、いくつかの実施形態において、混合物中のPEGの質量分率は30%超であり、混合物中のクエン酸塩の質量分率は2.5%未満であり、そして塩の濃度は0.25M超である。いくつかの実施形態において、前記PEGの分子量は600~6000Daである。いくつかの実施形態において、クエン酸塩は、クエン酸およびクエン酸ナトリウムとして、5.5~8.5のpHを提供する比で存在する。
【0016】
ATPS技術に関連するいくつかの実施形態において、ATPSは、酵素、界面活性剤、カオトロピック剤、および/またはオリゴヌクレオチドをさらに含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、技術は、表面において分析物を移動および/または濃縮するための電気泳動セルの使用に関する。例えば、いくつかの実施形態は、基材上の分析物の分析のための方法を提供する(例えば、分析物を含む溶液を含む内部チャンバ、および電解質を含む溶液を含む外部チャンバを含む電気泳動セルを提供すること;内部チャンバおよび外部チャンバを横切って電圧を提供すること;および電気泳動セルを基材に接触させることを含む、方法)。いくつかの実施形態において、方法は、外部チャンバのための多孔質底部を提供することを含む。いくつかの実施形態において、前記多孔質底部は、それを通って電流が流動し、そしてそれを通って分析物の流動が最小化および/または排除される材料(例えば、ポリマー)を含む。いくつかの実施形態において、多孔質底部を通る分析物の流動は、分析物の分子量および/または流体力学的半径に基づいて阻害され、例えば、いくつかの実施形態において、分析物の分子量および/または流体力学的半径は、多孔質底部を通って流動しない閾値を超える。
【0018】
いくつかの実施形態において、前記電圧は、交流電源によって提供される。いくつかの実施形態において、前記電圧は、直流電源によって提供される。いくつかの実施形態において、前記電圧は、約1分(例えば、0.1分、0.2分、0.3分、0.4分、0.5分、0.6分、0.7分、0.8分、0.9分、1分、1.5分、2分、2.5分、3分、3.5分、4分、4.5分、5分、5.5分、6分、6.5分、7分、7.5分、8分、8.5分、9分、9.5分、または10分)の期間で変動する。いくつかの実施形態において、前記電圧は、0Vと約50~120Vとの間(例えば、0V、5V、10V、15V、20V、25V、30V、35V、40V、45V、50V、55V、60V、65V、70V、75V、80V、85V、90V、95V、100V、105V、110V、115V、または120V)で変動する。
【0019】
いくつかの実施形態において、電気泳動セルの使用を含む方法は、前記基材上に固定された捕捉プローブによって分析物を捕捉することをさらに含む。いくつかの実施形態において、方法は、基材上の分析物を検出すること(例えば、検出可能に標識されたクエリープローブの分析物への会合および解離の反応速度論を分析することによって(例えば、SiMREPSによって)、基材上の分析物を検出すること)をさらに含む。いくつかの実施形態において、方法は、単一分子感度で基材上の分析物を検出することを含む。
【0020】
いくつかの実施形態において、捕捉プローブは、核酸、ポリペプチド、糖、または脂質を含む。いくつかの実施形態において、クエリープローブは、核酸、ポリペプチド、糖、または脂質を含む。いくつかの実施形態において、分析物は、核酸、ポリペプチド、代謝物、脂質、小分子、または炭水化物を含む。
【0021】
さらなる実施形態は、前記分析物を含むサンプルを提供することを含む。いくつかの実施形態において、前記サンプルは生物学的サンプルである。いくつかの実施形態において、前記サンプルは生体液である。いくつかの実施形態において、前記分析物を含む前記溶液は、0.01~100mm2(例えば、0.01mm2、0.02mm2、0.05mm2、0.1mm2、0.15mm2、0.2mm2、0.25mm2、0.3mm2、0.35mm2、0.4mm2、0.45mm2、0.5mm2、0.55mm2、0.6mm2、0.65mm2、0.7mm2、0.75mm2、0.8mm2、0.85mm2、0.9mm2、1mm2、2mm2、3mm2、4mm2、5mm2、6mm2、7mm2、8mm2、9mm2、10mm2、15mm2、20mm2、25mm2、30mm2、35mm2、40mm2、45mm2、50mm2、55mm2、60mm2、65mm2、70mm2、75mm2、80mm2、85mm2、90mm2、95mm2、または100mm2)の面積にわたって基材に接触させられる。いくつかの実施形態において、前記内部チャンバは、約0.01~10mm(例えば、0.01mm、0.02mm、0.05mm、0.1mm、0.15mm、0.2mm、0.25mm、0.3mm、0.35mm、0.4mm、0.45mm、0.5mm、0.55mm、0.6mm、0.65mm、0.7mm、0.75mm、0.8mm、0.85mm、0.9mm、1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、又は10mm)の幅を有する開口部を含む。
【0022】
いくつかの実施形態において、前記分析物は核酸である。例えば、いくつかの実施形態において、前記分析物は、200未満の塩基対またはヌクレオチドを含む核酸である。いくつかの実施形態において、前記分析物は、40未満の塩基対またはヌクレオチドを含む核酸である。いくつかの実施形態において、前記分析物は一本鎖核酸である。いくつかの実施形態において、前記分析物は二本鎖核酸である。特定の実施形態において、前記サンプルは、細胞、単一細胞、少なくとも1個の細胞、少なくとも10個の細胞、少なくとも100個の細胞、少なくとも1000個の細胞、または細胞のクラスタ;生体液;細胞溶解物、細胞由来の溶解物、単一細胞由来の溶解物、少なくとも1個の細胞由来の溶解物、少なくとも10個の細胞由来の溶解物、少なくとも100個の細胞由来の溶解物、少なくとも1000個の細胞由来の溶解物、または細胞のクラスタ由来の溶解物;細胞内区画、単一の細胞内区画、少なくとも1個の細胞内区画、少なくとも10個の細胞内区画、少なくとも100個の細胞内区画、少なくとも1000個の細胞内区画;および/または細胞内区画の溶解物、単一細胞内区画の溶解物、少なくとも1個の細胞内区画の溶解物、少なくとも10個の細胞内区画の溶解物、少なくとも100個の細胞内区画の溶解物、または少なくとも1000個の細胞内区画の溶解物を含む。
【0023】
関連する実施形態において、技術は、分析物を検出するためのシステムを提供する。例えば、システムの実施形態は、分析物を含む溶液を保持することができる内部チャンバ、および電解質を含む溶液を保持することができる外部チャンバを含む電気泳動セル;前記分析物を捕捉するための基材;電圧源;および検出可能に標識されたクエリープローブの前記分析物への会合および解離の反応速度論を分析することによって、基材上の前記分析物を検出するように構成されたシステムを含む。いくつかの実施形態において、前記基材は、固定化された捕捉プローブを含む。いくつかの実施形態において、クエリープローブは、0.1分-1超である反応速度定数koffおよび/または0.1分-1超である反応速度定数konで、分析物と反復して会合する蛍光標識核酸である。いくつかの実施形態において、前記システムは、前記分析物を検出するように構成され、蛍光検出器を含む。いくつかの実施形態において、前記分析物を検出するように構成された前記システムは、クエリープローブ結合データに二状態モデルを適合させるように構成されたソフトウェアコンポーネントを含む。
【0024】
本明細書に記載されるように、技術は、表面において分析物を濃縮するためのATPSまたは電気泳動セルの使用に関する。いくつかの実施形態において、技術は、検出可能に標識されたクエリープローブの前記分析物への会合および解離の反応速度論を分析することによって、基材上の前記分析物を検出するために、表面において分析物を濃縮するための、ATPSまたは電気泳動セルの使用を提供する。いくつかの実施形態は、表面において分析物を濃縮するための、例えば、前記分析物を定量するための、ATPSまたは電気泳動セルの使用に関する。いくつかの実施形態において、表面において分析物を濃縮するためのATPSまたは電気泳動セルの使用は、核酸、ポリペプチド、代謝物、脂質、小分子、または炭水化物を含む分析物を濃縮するために使用される。
【0025】
いくつかの実施形態において、方法は、基材表面において分析物を捕捉すること(例えば、前記基材上に固定化された捕捉プローブによって)をさらに含む。いくつかの実施形態において、方法は、基材上の分析物を検出すること(例えば、検出可能に標識されたクエリープローブの分析物への会合および解離の反応速度論を分析することによって、基材上の分析物を検出すること)をさらに含む。いくつかの実施形態において、方法は、基材上の分析物を特徴付けること、基材上の分析物を定量すること、および/または基材上の分析物をイメージングすることを含む。いくつかの実施形態において、分析物は、単一分子感度で検出、特徴付け、定量、および/またはイメージングされる。
【0026】
技術は、捕捉プローブにおいて限定されない。例えば、いくつかの実施形態において、捕捉プローブは、核酸、ポリペプチド、糖、または脂質を含む。技術は、クエリープローブにおいて限定されない。例えば、いくつかの実施形態において、クエリープローブは、核酸、ポリペプチド、糖、または脂質を含む。技術は、分析物において限定されない。例えば、いくつかの実施形態において、分析物は、核酸、ポリペプチド、代謝物、脂質、小分子、または炭水化物を含む。いくつかの実施形態において、分析物は、核酸(例えば、200未満の塩基対またはヌクレオチド(例えば、200未満、195、190、185、180、185、180、175、170、165、160、155、150、145、140、135、130、125、120、115、110、100、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、または8の塩基対またはヌクレオチド)を含む核酸)である。いくつかの実施形態において、分析物は、40未満の塩基対またはヌクレオチド(例えば、40未満、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、または8の塩基対またはヌクレオチド)を含む核酸である。いくつかの実施形態において、分析物は一本鎖核酸である。いくつかの実施形態において、分析物は二本鎖核酸である。捕捉プローブ、クエリープローブ、および分析物のさらなる説明は、本明細書中他所で提供される。
【0027】
いくつかの実施形態は、分析物を含むサンプルを提供することをさらに含む。技術は、分析物を含むサンプルにおいて限定されない。例えば、いくつかの実施形態において、サンプルは、生物学的サンプルおよび/または生体液であるか、またはそれを含む。例えば、いくつかの実施形態において、サンプルは、細胞、単一細胞、少なくとも1個の細胞、少なくとも10個の細胞、少なくとも100個の細胞、少なくとも1000個の細胞、または細胞のクラスタ;生体液;細胞溶解物、細胞由来の溶解物、単一細胞由来の溶解物、少なくとも1個の細胞由来の溶解物、少なくとも10個の細胞由来の溶解物、少なくとも100個の細胞由来の溶解物、少なくとも1000個の細胞由来の溶解物、または細胞のクラスタ由来の溶解物;細胞内区画、単一の細胞内区画、少なくとも1個の細胞内区画、少なくとも10個の細胞内区画、少なくとも100個の細胞内区画、少なくとも1000個の細胞内区画;および/または細胞内区画の溶解物、単一の細胞内区画の溶解物、少なくとも1個の細胞内区画の溶解物、少なくとも10個の細胞内区画の溶解物、少なくとも100個の細胞内区画の溶解物、または少なくとも1000個の細胞内区画の溶解物を含む。サンプルのさらなる説明は、本明細書中他所で提供される。
【0028】
いくつかの実施形態において、技術は、分析物を基材に送達すること(例えば、分析物を基材表面において濃縮するために、そして/または分析物を基材表面において固定化するために)に関する。さらに、いくつかの実施形態において、技術は、分析物の検出のために分析される基材上の分析物の濃度を増加させることによって、分析物検出の感度を改善することに関する。従って、ATPSに関するいくつかの実施形態において、第1の相は、0.01~100mm2(例えば、0.01mm2、0.02mm2、0.05mm2、0.1mm2、0.15mm2、0.2mm2、0.25mm2、0.3mm2、0.35mm2、0.4mm2、0.45mm2、0.5mm2、0.55mm2、0.6mm2、0.65mm2、0.7mm2、0.75mm2、0.8mm2、0.85mm2、0.9mm2、1mm2、2mm2、3mm2、4mm2、5mm2、6mm2、7mm2、8mm2、9mm2、10mm2、15mm2、20mm2、25mm2、30mm2、35mm2、40mm2、45mm2、50mm2、55mm2、60mm2、65mm2、70mm2、75mm2、80mm2、85mm2、90mm2、95mm2、または100mm2)の制限された面積にわたって基材に接触させられる。いくつかの実施形態において、第1の相を基材に接触させることは、0.01~100mm2(例えば、0.01mm2、0.02mm2、0.05mm2、0.1mm2、0.15mm2、0.2mm2、0.25mm2、0.3mm2、0.35mm2、0.4mm2、0.45mm2、0.5mm2、0.55mm2、0.6mm2、0.65mm2、0.7mm2、0.75mm2、0.8mm2、0.85mm2、0.9mm2、1mm2、2mm2、3mm2、4mm2、5mm2、6mm2、7mm2、8mm2、9mm2、10mm2、15mm2、20mm2、25mm2、30mm2、35mm2、40mm2、45mm2、50mm2、55mm2、60mm2、65mm2、70mm2、75mm2、80mm2、85mm2、90mm2、95mm2、または100mm2)の面積を有する制限された開口部を含むサンプルウェルの使用を含む。さらに、電気泳動セルの使用に関するいくつかの実施形態において、分析物を含むサンプルは、0.01~100mm2(例えば、0.01mm2、0.02mm2、0.05mm2、0.1mm2、0.15mm2、0.2mm2、0.25mm2、0.3mm2、0.35mm2、0.4mm2、0.45mm2、0.5mm2、0.55mm2、0.6mm2、0.65mm2、0.7mm2、0.75mm2、0.8mm2、0.85mm2、0.9mm2、1mm2、2mm2、3mm2、4mm2、5mm2、6mm2、7mm2、8mm2、9mm2、10mm2、15mm2、20mm2、25mm2、30mm2、35mm2、40mm2、45mm2、50mm2、55mm2、60mm2、65mm2、70mm2、75mm2、80mm2、85mm2、90mm2、95mm2、または100mm2)の制限された面積にわたって基材に接触させられる。いくつかの実施形態において、分析物を含むサンプルを基材に接触させることは、0.01~100mm2(例えば、0.01mm2、0.02mm2、0.05mm2、0.1mm2、0.15mm2、0.2mm2、0.25mm2、0.3mm2、0.35mm2、0.4mm2、0.45mm2、0.5mm2、0.55mm2、0.6mm2、0.65mm2、0.7mm2、0.75mm2、0.8mm2、0.85mm2、0.9mm2、1mm2、2mm2、3mm2、4mm2、5mm2、6mm2、7mm2、8mm2、9mm2、10mm2、15mm2、20mm2、25mm2、30mm2、35mm2、40mm2、45mm2、50mm2、55mm2、60mm2、65mm2、70mm2、75mm2、80mm2、85mm2、90mm2、95mm2、または100mm2)の面積を有する制限された開口部を含む内部チャンバを含む電気泳動セルの使用を含む。
【0029】
いくつかの実施形態において、方法は、オリゴヌクレオチドを添加して、前記核酸によるハイブリダイゼーションおよび/または二次構造の形成を最小化および/または排除することをさらに含む。いくつかの実施形態において、前記分析物を変性させる前に酵素が添加される。いくつかの実施形態において、前記分析物を変性させる前に、プロテイナーゼおよび/またはリパーゼが添加される。いくつかの実施形態において、前記分析物を変性させる前に、界面活性剤および/またはカオトロピック剤が添加される。
【0030】
技術のさらなる実施形態は、分析物を検出するためのシステムに関する。例えば、いくつかの実施形態において、技術は、水性二相系(ATPS)の第1の相の中の分析物を濃縮するためのATPS;ATPSの前記第1の相から前記分析物を捕捉するための基材;および検出可能に標識されたクエリープローブの前記分析物への会合および解離の反応速度論を分析することによって、基材上の前記分析物を検出するように構成されたシステムを含むシステムを提供する。いくつかの実施形態において、基材は、固定化された捕捉プローブを含む。いくつかの実施形態において、クエリープローブは、0.1分-1超である反応速度定数koffおよび/または0.1分-1超である反応速度定数konで、分析物と反復して会合する蛍光標識核酸である。いくつかの実施形態において、前記分析物を検出するように構成されたシステムは、蛍光検出器を含む。いくつかの実施形態において、システムは、前記分析物を検出するように構成され、クエリープローブ結合データに二状態モデルを適合させるように構成されたソフトウェアコンポーネントを含む。いくつかの実施形態において、システムは遠心分離機をさらに含む。いくつかの実施形態において、システムは、0.01~10mm(例えば、0.01mm、0.02mm、0.05mm、0.1mm、0.15mm、0.2mm、0.25mm、0.3mm、0.35mm、0.4mm、0.45mm、0.5mm、0.55mm、0.6mm、0.65mm、0.7mm、0.75mm、0.8mm、0.85mm、0.9mm、1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、又は10mm)の面積を有する制限された開口部を含むサンプルウェルをさらに含む。システムのこれらの種々の構成要素(例えば、ATPS、コンピュータ、サンプルウェル、クエリープローブ、捕捉プローブ、基材、および反応速度検出の態様)は、出願全体を通してより十分に記載され、その関連部分は参照により本明細書に組み込まれる。
【0031】
いくつかの実施形態は、分析物を検出するためのさらなるシステムの実施形態に関する。例えば、いくつかの実施形態において、技術は、電気泳動濃縮セル(例えば、分析物を含む溶液を保持することができる内部チャンバ、および緩衝液を保持することができる外部チャンバを含む);前記内部チャンバから前記分析物を捕捉するための基材;および検出可能に標識されたクエリープローブの前記分析物への会合および解離の反応速度論を分析することによって、基材上の前記分析物を検出するように構成されたシステムを含むシステムを提供する。いくつかの実施形態において、システムは、電気泳動サンプルセル外部チャンバの底部を提供するための多孔質材料(例えば、ポリマー)を含み、ここで、前記多孔質材料は、電流が電気泳動セルの外部チャンバと内部チャンバとの間を流動することを可能にするが、電気泳動セルの外部チャンバと内部チャンバとの間の分析物の流動を最小化および/または排除する。いくつかの実施形態において、モノマーを含む組成物が提供され、そして使用者は、前記モノマーを重合させて、使用のための電気泳動サンプルセルの構築において前記底部を提供する。いくつかの実施形態において、底部の多孔質マトリックスは、内部チャンバに導入され、そして分析物のサンプルチャンバへの添加の前に電圧の印加によって底部に移動させられる、荷電した分岐ポリマー(例えば、硫酸デキストラン)の析出(例えば、電気泳動析出)によってさらにブロックされる。
【0032】
いくつかの実施形態において、基材は、固定化された捕捉プローブを含む。いくつかの実施形態において、クエリープローブは、0.1分-1超である反応速度定数koffおよび/または0.1分-1超である上反応速度定数konで、分析物と反復して会合する蛍光標識核酸である。いくつかの実施形態において、前記分析物を検出するように構成されたシステムは、蛍光検出器を含む。いくつかの実施形態において、システムは、前記分析物を検出するように構成され、クエリープローブ結合データに二状態モデルを適合させるように構成されたソフトウェアコンポーネントを含む。いくつかの実施形態において、システムは、電圧源(例えば、直流または交流源)をさらに含む。いくつかの実施形態において、電気泳動セルの内部チャンバは、0.01~10mm(例えば、0.01mm、0.02mm、0.05mm、0.1mm、0.15mm、0.2mm、0.25mm、0.3mm、0.35mm、0.4mm、0.45mm、0.5mm、0.55mm、0.6mm、0.65mm、0.7mm、0.75mm、0.8mm、0.85mm、0.9mm、1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm又は10mm)の面積を有する制限された開口部を含む。システムのこれらの種々の構成要素(例えば、電気泳動セル、コンピュータ、内側および外部チャンバ、クエリープローブ、捕捉プローブ、基材、および反応速度検出の態様)は、出願全体を通してより十分に記載され、その関連部分は参照により本明細書に組み込まれる。
【0033】
技術の実施形態は、組成物、例えば、水性二相系(ATPS)に関する。いくつかの実施形態において、ATPSは、ポリエチレングリコール(PEG)およびクエン酸塩を含む。いくつかの実施形態において、ATPSは、塩(例えば、塩化ナトリウム)をさらに含む。ATPSのいくつかの実施形態において、ATPSは、30%超のPEGの質量分率、2.5%未満のクエン酸塩の質量分率を含み、そして塩の濃度は0.25M超である。いくつかの実施形態において、前記PEGの分子量は、1000~6000Daである。いくつかの実施形態において、前記クエン酸塩は、5.5~8.5のpHを提供する比でクエン酸およびクエン酸ナトリウムとして存在する。
【0034】
すなわち、いくつかの実施形態において、技術は、30%超(例えば、30%超、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、70%、71%、72%、73%、74%、または75%)である組成物中の質量分率を有するPEGを含み;2.5%未満(例えば、1.00%未満、1.25%、1.50%、1.75%、2.00%、2.25%、または2.50%)の組成物中の質量分率を有するクエン酸塩を含む組成物を提供する。いくつかの実施形態において、技術は、0.25M超(例えば、0.25M超、0.3M、0.35M、0.4M、0.45M、0.5M、0.55M、0.6M、0.65M、0.7M、0.75M、0.8M、0.85M、0.9M、1.0M、1.1M、1.2M、1.3M、1.4M、または1.5M超)の濃度の塩化ナトリウムを含む組成物を提供する。いくつかの実施形態において、PEGは、600~8000Da(例えば、600Da、700Da、800Da、900Da、1000Da、1100Da、1200Da、1300Da、1400Da、1500Da、1600Da、1700Da、1800Da、1900Da、2000Da、2100Da、2200Da、2300Da、2400Da、2500Da、2600Da、2700Da、2800Da、2900Da、3000Da、3100Da、3200Da、3300Da、3400Da、3500Da、3600Da、3700Da、3800Da、3900Da、4000Da、4100Da、4200Da、4300Da、4400Da、4500Da、4600Da、4700Da、4800Da、4900Da、5000Da、5100Da、5200Da、5300Da、5400Da、5500Da、5600Da、5700Da、5800Da、5900Da、6000Da、7000Da、または8000Da)の組成物中の平均分子量を有する。いくつかの実施形態において、組成物中のクエン酸ナトリウムに対するクエン酸の比は、5.5~8.5のpH(例えば、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、または8.5のpH)を提供する。
【0035】
いくつかの実施形態において、ATPSは分析物をさらに含む。いくつかの実施形態において、ATPSは、第1の相および第2の相を含み、そして第1の相は、第2の相の中の分析物の濃度よりも高い前記分析物の濃度(例えば、第2の相の中の分析物の濃度の少なくとも約2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、または20倍)を含む。いくつかの実施形態において、ATPSは、第1の相および第2の相を含み、そして第2の相は、第1の相の体積より大きな体積(例えば、第1の相の体積の少なくとも約2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、または20倍)を含む。
【0036】
いくつかの実施形態において、分析物は、核酸(例えば、200未満の塩基対またはヌクレオチド(例えば、200未満、195、190、185、180、185、180、175、170、165、160、155、150、145、140、135、130、125、120、115、110、100、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、または8の塩基対またはヌクレオチド)を含む核酸)である。いくつかの実施形態において、分析物は、40未満の塩基対またはヌクレオチド(例えば、40未満、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、または8の塩基対またはヌクレオチド)を含む核酸である。いくつかの実施形態において、分析物は一本鎖核酸である。いくつかの実施形態において、分析物は二本鎖核酸である。捕捉プローブ、クエリープローブ、および分析物のさらなる説明は、本明細書中他所で提供される。
【0037】
いくつかの実施形態は、キットに関する。例えば、実施形態は、ポリエチレングリコール(PEG)およびクエン酸塩を含むキットを提供する。いくつかの実施形態において、キットは、制限された開口部を含むサンプルウェルをさらに含む。いくつかの実施形態は、電気泳動サンプルセル、電圧源、および/または本明細書に記載されるようなサンプルセルの外部チャンバの多孔質底部を提供するための多孔質材料(例えば、ポリマー)を含む。いくつかのキットは、分析物の捕捉および/または固定化のための基材を含む。ATPSサンプルウェルおよび電気泳動サンプルセルは、本明細書中他所で記載され、そして適切な説明は参照により本明細書に組み込まれる。
【0038】
いくつかの実施形態において、方法、システム、ATPS組成物、およびキットは、単一細胞、オルガネラ、無膜オルガネラ、細胞クラスタ、小胞(例えば、エキソソーム)、または分子の分析における使用を見出す。
【0039】
さらなる実施形態は、本明細書に含まれる教示に基づいて、関連技術の当業者に明らかとなる。
【0040】
[図面の簡単な説明]
本技術のこれらおよび他の特徴、態様、および利点は、以下の図面を参照することにより、より良く理解されるであろう。
【0041】
図1a、1b、1cは、二本鎖変異DNAのためのSiMREPSアッセイにおいて検出された分子を増加させることによって実証されるように、捕捉効率およびアッセイ感度を高めるために、DNAバイオマーカーを表面近くに濃縮するための水性二相系の使用を示している。
図1aは、捕捉効率およびアッセイ感度を高めるために、バイオマーカーを表面近くに濃縮するために水性二相系を使用する本技術の実施形態の工程を示す図である。
図1aにおいて、DNA分析物は、水性二相系のマイノリティ相(例えば、より小さい体積を有する相)中で濃縮され、そして分析物は続いて、分析のために表面において前記マイノリティ相から捕捉される(例えば、単一分子分析によって(例えば、本明細書中に記載されるようなSiMREPSによって))。遠心分離は、典型的にはカバースリップ表面での分析物の高い捕捉効率を提供するために、約1000×gで10~120分間行われる。しかしながら、本明細書において提供される技術の開発中に行われた実験は、1000×gで約1分間の遠心分離が相分離を提供するのに十分であることを示した。
【0042】
図1bは、本明細書において提供されるATPS技術に従って濃縮していない(「-ATPS」)、および本明細書において提供されるAPTS技術に従って濃縮した後(「+ATPS」)に、表面上に捕捉され、そしてイメージングされた分析物の2つの写真を示す。それぞれの写真は、約52×52μm
2の顕微鏡視野を示す。
図1bにおいて、分析物は、非小細胞肺癌において治療抵抗性を引き起こす臨床的に重要なEGFR突然変異であるEGFRのT790M置換をコードするDNAの28塩基対フラグメントである。
【0043】
図1cは、水性二相系(例えば、PEG3350(例えば、約39% w/w)、クエン酸ナトリウム(例えば、約1.2w/w)、および塩化ナトリウム(例えば、約2.8% w/w)を含む)を使用して、EGFR変異体T790Mについての動的フィンガープリンティング(kinetic fingerprinting)の感度が80倍超増加することを示すプロットである。表面捕捉されたEGFR変異体T790M分析物をイメージングし、画像分析によってカウントした。約118×118μm
2の面積あたりの表面に固定化された25の分析物の密度を、本明細書において提供されるATPS技術にしたがって、濃度がない状態でカウントした。対照的に、同じ約118×118μm
2の面積あたりの表面に固定化された2001分析物の密度を、本明細書において提供されるATPS技術にしたがって、表面で分析物を濃縮した後にカウントした。
【0044】
図2は、分析物の効率的な表面捕捉および検出のための固相支持体(例えば、カバースリップ)の小さな範囲にわたる分析物リッチな相の集束を可能にするために、下にある基材との制限された接触領域(0.01~1mm
2)を作り出す特注のサンプルウェルの図面および写真を示す。
【0045】
図3は、平衡ポアソンサンプリングを介する単一分子認識(SiMREPS:single-molecule recognition through equilibrium Poisson sampling)または単一分子動的フィンガープリンティングを用いた、高い特異性および単一分子感度を有する分析物の検出を示す。
図3aは、DNA検出に適合した実験的SiMREPSアプローチを示す図である。相補的な分析物鎖の再アニーリングを不利にするために、高濃度の一本鎖dT
10担体の存在下で、二本鎖(二重鎖)DNAを短時間の熱変性によって一本鎖DNAに変換した。一本鎖標的DNAは、スライド表面上に固定化された標的遺伝子特異的なロックド核酸(locked nucleic acid)捕捉鎖によって捕捉され、そして残りの未結合DNAは、速い結合動態および解離動態を有するように最適化される変異体特異的蛍光プローブを用いた動的フィンガープリンティングの前に洗い流される。
図3bは、2つの変異体標的DNA対立遺伝子について、検出された分子の数(「カウント」として示される)に対するDNAストランドネス(strandedness)および短時間の熱変性の効果を示す。データは、n=3の独立した測定値の平均±標準誤差(s.e.m.)として提示される。
図3c~3dは、(c)EGFRエクソン19/欠失(c.2236_2250del15)および(d)EGFRエクソン20 T790/M(c.2369C>T)について、変異体DNA(MUT DNA)、野生型DNA(WT DNA)、またはDNAなし(DNAなし対照)を伴う変異体特異的蛍光プローブを用いた代表的な動的トレースを示す。実験中に記録された蛍光強度トレースはブラックで示され(「ノイズの多い」トレース)、隠れマルコフモデリングからの2状態理想化は灰色の線として示される(「ノイズの多い」トレースの平滑な平方フィット(squared fit))。(e)EGFRエクソン19欠失およびEGFRエクソン20 T790MについてのSiMREPSアッセイからの標準曲線。エラー加重線形フィット(Error-weighted linear fit)は、0のy切片に制約された;R
2=0.982(エクソン19の欠失)、0.999(T790M)。データは、n=3の独立した測定値の平均±標準誤差として示される。FOV(field of view)、視野。
【0046】
図4は、曇点濁度アッセイから収集したデータからプロットしたバイノーダル曲線(binodal curve)である。データは、2.8% w/w NaClの存在下で単一の水相(曲線より下)または2つの水相(曲線より上)を生成するクエン酸ナトリウム二水和物およびPEG-3350の濃度を示す。
【0047】
図5は、3つの異なるマトリックス中で1時間インキュベートした後の視野当たりのSiMREPS動的フィンガープリンティングによって検出された28ヌクレオチドDNAオリゴヌクレオチドの分子数(「受容カウント」)を示すプロットである;PBS(サンプル体積100μL)、PBS+PEG/クエン酸ナトリウム/NaCl ATPS(ATPS形成成分に添加する前のPBS中のサンプル体積100μL);PBS+PEG/クエン酸ナトリウム/NaCl ATPS(ATPS形成成分に添加する前のPBS中のサンプル体積20μL)。
【0048】
図6は、ヒト尿サンプルから単離され、次いでPEG3350(39% w/w)、クエン酸ナトリウム(1.2% w/w)、およびNaCl(2.8% w/w)から構成される水性二相系を用いたSiMREPS動的フィンガープリンティングによって分析された、EGFR遺伝子由来の内因性低分子量DNAフラグメントのPCRを行わない検出を示すプロットである。水性二相系は、野生型プローブ(WT)で野生型DNAを検出するのに十分な感度をもたらすが、変異体DNAはバックグラウンド(MUTプローブ)を超えるレベルでは検出されない。
【0049】
図7は、水性二相系における熱変性および濃縮後の二本鎖DNAの再ハイブリダイゼーションを防止するための相補的オリゴヌクレオチドを含むことによって提供されるアッセイ感度の増加を示すプロットである。28塩基対二本鎖DNAフラグメント(EGFR遺伝子の領域に対応する標的DNAの10fM)を、28塩基対二重鎖の標的鎖に部分的に相補的であるが残りの14塩基対(表面捕捉を妨げる)を覆い隠さない14塩基オリゴヌクレオチド(「タイル(Tile)」))の存在下(+タイル)または非存在下(-タイル)で熱変性させた。この混合物を熱変性後に冷却し、次いで凍結乾燥成分と十分に混合して、水性二相系(1.2% w/wクエン酸ナトリウム、2.8% w/w NaCl、39% w/w PEG3350)を形成し、28塩基対二重鎖の標的鎖に部分的に相補的であるLNA含有捕捉プローブで被覆されたカバースリップ上に固定化するためのDNAを濃縮する。
【0050】
図8は、相補的な短いオリゴヌクレオチド(例えば、14塩基対の長さ)、または「タイル」が、標的の2つの相補鎖の再ハイブリダイゼーションを防ぐために含まれる場合、より長い二本鎖DNA標的がより高い効率で捕捉されることを示すプロットである。T790M変異体を含むEGFR遺伝子の60bpおよび160bpフラグメントの捕捉を改善するためにタイルを用いた実験からデータを収集した。捕捉効率は、タイルオリゴを含めることによって約8倍から約9倍増加する。
【0051】
図9は、本明細書に記載の電気泳動サンプルセルの実施形態の概略図である。
【0052】
図10は、本明細書に記載の技術の実施形態の開発中に構築され、試験された電気泳動サンプルセルの実施形態の写真である。
【0053】
図11Aは、表面(例えば、カバースリップ)で分析物(例えば、DNA)を濃縮するための電気泳動サンプルセルの使用を記載する概略図である。
【0054】
図11Bは、本明細書に記載されるような電気泳動サンプルセルの実施形態に印加される電圧、および時間の関数としての表面における正規化DNA濃度を示すプロットである。電圧は、0Vと約170Vとの間で循環し、表面におけるDNA濃度は、DNAに付着した蛍光標識の表面における蛍光を測定することによって検出した。DNA濃度は、約0~50から約350(単位無し、正規化濃度)の間で変化し、約10~15分で高いピークを有するトレースによって示される。約50~100の濃度での平滑化された線は、表面での正規化されたDNA濃度の移動平均(running average)である。
【0055】
図12Aは、PEG/クエン酸ナトリウム/塩化ナトリウム水性二相系における28ヌクレオチド一本鎖DNAの分配を定量するポリアクリルアミド電気泳動ゲル実験の画像を示す。
【0056】
図12Bは、平衡後のPEGおよびクエン酸ナトリウム/塩化ナトリウム相中の28ヌクレオチド一本鎖DNAの量を測定するための、
図12Aからのゲルバンドの定量を示す棒グラフである。検出器を飽和させることなく、単一の機器上の2つのレーンにおけるDNAの同時定量を可能にするために、ゲルにロードする前に、クエン酸塩リッチ相をPEGリッチ相に対して500倍に希釈した。染色は、SYBR goldを用いて行った。
【0057】
図13は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、続いてSYBR gold染色によって測定した、2.8% w/w NaClの存在下または非存在下でのPEG/クエン酸ナトリウムATPS中の28ヌクレオチド一本鎖DNAオリゴヌクレオチドの分配の定量を示す棒グラフである。検出器を飽和させることなく単一の機器上の2つのレーンにおけるDNAの同時定量を可能にするために、ゲルにロードする前に、クエン酸塩リッチ相をPEGリッチ相に対して500倍に希釈した。エラーバーは、3つの独立した反復における+/-1標準偏差を表す。
【0058】
図14は、PEG/クエン酸ナトリウム/NaCl ATPSによる事前濃縮の有無における、SiMREPSによるマイクロRNAの定量を示す棒グラフである。このATPSの使用による感度の見かけ上の増加は約9倍である。エラーバーは、2つの独立した反復由来の1標準偏差を表す。
【0059】
図面は、必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではなく、または図面中の物体は必ずしも互いに関連付けながら一定の縮尺で描かれているわけでもないことを理解されたい。図面は本明細書で開示される装置、システム、および方法の種々の実施形態を明確にし、理解することを意図した描写である。同一の参照番号は可能な限り、同一または類似の構成を表すように図面の全体を通して使用される。さらに、図面は、本教示の範囲を決して限定することを意図していないことを理解されたい。
【0060】
[詳細な説明]
分析物の検出に関連する技術、特に、限定するものではないが、表面において分析物を濃縮するための(例えば、低存在量の分析物のイメージングおよび検出のための)組成物、方法、およびシステムが本明細書において提供される。
【0061】
非常に低い濃度(例えば、10-15Mまたは1フェムトモル濃度(fM)未満)の分析物(例えば、生体分子)の検出は、医学的診断(例えば、非侵襲性液体生検のための)、研究(例えば、単一細胞分析のための)、およびより広くは分析化学における大きな関心事であるが、大部分の分析物について達成が難しい。例えば、従来の酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)は、典型的には、10~1000fMの範囲で検出限界に達し得る(例えば、Rissin et al. (2010) "Single-molecule enzyme-linked immunosorbent assay detects serum proteins at subfemtomolar concentrations" Nat. Biotechnol. 28: 595-99を参照のこと)。核酸は増幅を用いて<10コピーの絶対量で検出され得るが(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を利用する方法によって)、そのような増幅は、コピーエラー、熱で導入される化学的損傷(例えば、ウラシルへのシトシン脱アミノ化)、および増幅におけるかまたはいくつかのプロトコルにおいて必要とされるアダプター配列のライゲーションにおける配列依存性バイアス(例えば、Thiel et al. (2011) "Nucleotide Bias Observed with a Short SELEX RNA Aptamer Library" Nucleic Acid Ther. 21: 253-63; Paweletz et al. (2016) "Bias-Corrected Targeted Next-Generation Sequencing for Rapid, Multiplexed Detection of Actionable Alterations in Cell-Free DNA from Advanced Lung Cancer Patients" Clin. Cancer Res. 22: 915-22を参照のこと)のようなアーチファクトを導入する(例えば、Potapov & Ong (2017)0 "Examining Sources of Error in PCR by Single-Molecule Sequencing" PLOS ONE 12: e0169774を参照のこと)。さらに、DNAまたはRNAの増幅は、典型的には、修飾塩基(例えば、5-メチルシトシン、5-ヒドロキシメチルシトシン、またはN6-メチルアデニン)のようなエピジェネティック修飾をコピーせず、修飾塩基と非修飾塩基とを区別するためにバイサルファイト処理が必要となる;しかし、バイサルファイト処理はDNAの80%までの断片化および損傷を導き(例えば、Grunau et al. (2001) "Bisulfite genomic sequencing: systematic investigation of critical experimental parameters" Nucleic Acids Res. 29: e65を参照のこと)、そして多くの型の生物学的に重要な修飾を区別することができない(例えば、5-メチルシトシンと5-ヒドロキシメチルシトシンとの区別;例えば、Huang et al. (2010) "The Behaviour of 5-Hydroxymethylcytosine in Bisulfite Sequencing" PLOS ONE 5: e8888を参照のこと)。最後に、尿の腎臓通過性DNAにおいて見出されるもののような核酸の短いフラグメント(<40塩基対)は、それらの小さなサイズおよびPCRプライマーの長さの要件に起因して、PCRによって直接増幅することが難しいかまたは不可能である。単一細胞から単離された多くの分析物の分析はまた、PCRに基づく方法を用いてさえ(核酸の場合)、非常に低い全体的なインプット材料、多くの分析物の低いコピー数、リガーゼの配列バイアス、およびそのような低いインプットにおける多くの処理酵素の低い効率に起因して、非効率的である。いくつかの超高感度の次世代方法は、低フェムトモル濃度およびフェムトモル濃度以下の検出限界と報告されているが、典型的には、分析物の単一コピーのレベルを数桁上回る検出限界を依然として有している(例えば、Rissin et al. (2010) "Single-molecule enzyme-linked immunosorbent assay detects serum proteins at subfemtomolar concentrations" Nat. Biotechnol. 28: 595-99 (2010); Cohen et al. (2017) "Digital direct detection of microRNAs using single molecule arrays" Nucleic Acids Res. 45: e137を参照のこと)。
【0062】
同時係属出願である米国特許出願第第14/589,467号;国際特許出願第PCT/US2015/044650号;国際特許出願第PCT/US2017/016977号;および米国仮特許出願第62/468,578号(その各々はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)は、理論的に無限の精度で単一の分析物(例えば、マイクロRNA分子)の存在を検出する「平衡ポアソンサンプリングを介する単一分子認識」(SiMREPS)と称する技術を記載する(例えば、Johnson-Buck et al. (2015) "Kinetic fingerprinting to identify and count single nucleic acids" Nat. Biotechnol. 33: 730-32も参照のこと)。このアプローチにおいて、目的の分析物は、安定に結合する捕捉プローブ(ロックド核酸プローブのような)を一般に使用して、固体支持体の分離した領域において捕捉され、次いで、分析物の第2のエピトープまたは結合領域がクエリープローブによって繰り返しプローブされる。いくつかの実施形態において、この技術は、一本鎖核酸のような分析物を検出し;さらに、いくつかの実施形態において、この技術はまた、表面捕捉の前に変性プロトコルを用いることによって、二本鎖核酸を検出し(例えば、
図3aを参照のこと)、そして、99.99998%超の点変異(EGFR T790M)に対する特異性を示す。しかし、このアプローチは単一分子を検出するが、データは、非常に低い検出限界(フェムトモル濃度以下、そして究極的にはPCRに基づく方法に匹敵する)の達成における制限因子が、検出のための固体支持体への分析物の効率的な質量輸送の達成にあることを示した。
【0063】
従って、本明細書に記載される技術は、固体支持体への分析物の質量輸送の効率を増加させること(例えば、固体支持体の領域上に捕捉される分析物の割合または量を増加させること、および/または合理的な量の測定時間で測定できること)に関する。本明細書において提供される技術の実施形態の開発の間に、以下を含むが、これらに限定されない、いくつかのストラテジーによって、固体支持体への分析物の質量輸送を増加させるために実験を行った:(1)例えば、pH、塩の組成または濃度を改変することによって、分析物と捕捉プローブまたは固体支持体との間の会合の速度定数を増加させること;(2)例えば、蒸発、電場の印加(荷電分析物のための)、またはポリエチレングリコール(PEG)もしくはデキストランのような分子密集化剤の導入によって、固体支持体の近傍における分析物の有効なまたは実際の濃度を増加させること;および/または(3)インキュベーション時間を増加させること(例えば、実施例10を参照のこと)。
【0064】
実験を行い、その中で、SiMREPS実験のための固定化された分析物を提供するためにこれらのストラテジーを試験し、そして、特に核酸を検出するための、SiMREPSアッセイの感度に対するこれらの方法の効果を説明するデータを収集した。データは、EGFR変異を含むDNAの28ヌクレオチドフラグメントについてのアッセイの感度における約2~5倍の改善を示した(例えば、実施例10を参照のこと)。これらのアッセイにおいて、示されたストラテジーを用いた後の視野(FOV)当たりの陽性検出事象を決定し、これを、標準的なインキュベーション条件(PBS緩衝液、1時間)を使用した視野FOV当たりの陽性検出事象で割り、そして最も近い整数に丸めることによって、相対的感度を決定した。驚くべきことに、捕捉インキュベーション時間の18倍の増加は、感度の約2倍のみの増加をもたらした。このことは、捕捉反応が18時間よりもずっと短い間に平衡に達すること、および捕捉プローブの限りのある親和性またはサンプルセル壁への非特異的な分析物吸着のいずれかが、捕捉され得る分析物の量を限定することを示す。ハイブリダイゼーション反応においてしばしば使用される添加物(例えば、ホルムアミド、Tween-20、硫酸デキストランなど)との様々な緩衝液中でのインキュベーションは、同様に、感度におけるわずかな改善をもたらした。捕捉面積の減少(25mm2の標準的な面積から<1mm2への)は、捕捉された分析物の密度を25倍まで増加させることが期待されたが、それどころか約3倍の改善をもたらした。>1mmの距離にわたるDNAの遅い拡散に起因する捕捉効率の限界を克服するために、シリンジポンプを使用した溶液の反復混合も試みた;しかし、これは感度の有意な改善をもたらさなかった。おそらく最も驚くべきことに、エタノール沈殿とそれに続くより小さな体積の溶液中での分析物の再懸濁について、有意な改善は見られなかった。これはおそらく、エタノール沈殿のプロセスが捕捉表面を損傷させたからである(例えば、沈殿結晶による表面の微小規模の摩耗、または有機溶媒の導入によって)。エタノール沈殿およびより小さな体積中の再懸濁は原則的に別個の容器中で実施され得るが、これは、非常に小さな体積(例えば、1μL)中に少量の物質を効率的に再懸濁し、そしてこの小さな体積を効率的に移すことに関して、実用上の課題を導入する。サンプルをサンプルウェルに分配した後の溶媒の50~99%の蒸発はうまくいったが、サンプル体積の5倍をはるかに超える減少であっても(例えば、サンプル体積の<5%を残す、ほぼ全部の蒸発)、緩衝液構成要素の濃度を10倍まで低下させて、溶媒蒸発の際の緩衝液および塩の結晶化の問題を補った場合であっても、感度の5倍以下の増加をもたらした。
【0065】
本明細書に記載される技術の実施形態の開発の間に行われた実験によって示されるように、SiMREPSアッセイの感度を改善するための成功したアプローチは、例えば、水性二相系(ATPS)または電気泳動サンプルセルを使用した分析物の事前濃縮とSiMREPSとを組み合わせることを含む。
【0066】
水性二相系、すなわちATPS(Iqbal et al. (2016) "Aqueous two-phase system (ATPS): an overview and advances in its applications" Biol. Proced. Online 18)は、2つの水溶性構成要素(例えば、2つのポリマー、またはポリマーおよび塩)が閾値濃度を超え、そして異なる組成を有する2つの水相に分離するときに生じる。いくつかの型のATPSは、生体分子(DNAおよびタンパク質を含む)を、2つの相のうちの1つに、時には相のうちの1つに対する>1000倍の優先性で、選択的に分配することができる(Alberts (1967) "Efficient Separation of Single-Stranded and Double-Stranded Deoxyribonucleic Acid in a Dextran-Polyethylene Glycol Two-Phase System" Biochemistry (Mosc.) 6: 2527-32)。2つのATPS構成要素のうちの一方が他方に比較して過剰に存在する場合、2つの得られる相は平衡状態において等しくない体積を有し得、従って、より小さな相の中に目的の生体分子を濃縮する(Iqbal et al. (2016) "Aqueous two-phase system (ATPS): an overview and advances in its applications" Biol. Proced. Online 18)。単一分子アッセイの感度の増強へのこのアプローチの1つの特定の実施形態として、技術は、分析物の迅速かつ効率的な捕捉のための、イメージング表面の小さな領域にわたるDNAの非常に希薄な(10fMとほぼ等しいかまたはそれ未満)溶液を濃縮するためのATPSの使用を含む(例えば、実施例1および
図1を参照のこと)。このアプローチにおいて、DNAサンプルは、熱変性され、ATPS形成成分とともに激しく混合され、次いで、手短かに遠心分離されて、DNAリッチな下相をイメージング表面の近くに配置する。この方法は数分のみで完了する簡単なプロセスであるが、しばしば遠心分離は10、30、60、または120分継続されて、分析物リッチ相と、それがその上に捕捉される固体支持体(カバーグラスなど)との間の接触時間の量を増加させる。あるいは、手短かな遠心分離(例えば、1分)を用いてATPSの相を分離し、分析物捕捉のために遠心分離なしに10、30、60、または120分(または24時間まで)のより長いインキュベーション期間を行ってもよい。
【0067】
ポリエチレングリコール(PEG)/クエン酸ナトリウム(SC)(例えば、Gomes et al. (2009) "Purification of plasmid DNA with aqueous two phase systems of PEG 600 and sodium citrate/ammonium sulfate" Sep. Purif. Technol. 65: 22-30を参照のこと)、PEG/硫酸ナトリウム(例えば、Nazer et al. (2017) "Partitioning of pyrimidine single stranded oligonucleotide using polyethylene glycol - sodium sulfate aqueous two-phase systems; experimental and modeling" Fluid Phase Equilibria 432: 45-53を参照のこと)、およびPEG/デキストラン(例えば、Alberts (1967) "Efficient Separation of Single-Stranded and Double-Stranded Deoxyribonucleic Acid in a Dextran-Polyethylene Glycol Two-Phase System" Biochemistry (Mosc.) 6: 2527-32を参照のこと)を含む、いくつかのATPS組成物は、選択的にDNAを分配することが示されている。プラスミドDNAは他方を上回って一方の相に対する100~1000倍もの高い選択性を示すことが示されており(例えば、Alberts、前出を参照のこと;例えば、Nazer、前出を参照のこと)、そして1つの研究は、PEG/硫酸ナトリウム系における長さ約20ヌクレオチドの一本鎖ポリピリミジンDNA分子の分配を検討したが(例えば、Nazer、前出を参照のこと)、ATPS技術が短い核酸フラグメント(例えば、生体液中に見出される二本鎖DNAフラグメント、miRNAのような短いRNA、または変動する配列のプリンおよびピリミジン両方の塩基を含む一本鎖DNA)を小さな体積に濃縮するかどうかは、以前に予測可能ではないかまたは知られていなかった。さらに、PEG/硫酸ナトリウムATPSの実用上の有用性は、硫酸ナトリウムの水中の低い溶解性によって限定され(しばしばATPSの形成時に沈殿を生じる)、これは、特に、表面に基づくアッセイのための適用性を限定する。
【0068】
さらに、電気泳動を使用してシーケンシングのためのDNAのナノグラム以下のインプットを捕捉するためのストラテジーが最近報告されているが(Larkin et al. (2017) "Length-independent DNA packing into nanopore zero-mode waveguides for low-input DNA sequencing" Nat. Nanotechnol.)、この技術は、センサーチップの下に配置された膜中にナノポアのアレイを生成するために電子ビームリソグラフィを必要とし(Larkin et al. (2014) "Reversible Positioning of Single Molecules inside Zero-Mode Waveguides" Nano Lett. 14: 6023-29)、これは、そのシーケンシングプラットフォームにおいて使用されるゼロモード導波路の製作の、既に少なからぬコストを付け加える。対照的に、本明細書に記載される電気泳動濃縮方法は、多くの型の希薄な分析物を含むサンプルの効率的な表面に基づく分析のための低コストかつ一般的なアプローチを提供する。
【0069】
分析物を検出するSiMREPSおよび他の実験の開発の間に収集されたデータに基づいて、SiMREPSおよび他の高感度分析物検出技術と共に使用するのに適切なATPSおよび電気泳動濃縮方法のための基準が確立された。ATPSおよび電気泳動濃縮方法の主な目的は、目的の分析物をより小さな体積に効率的に分配し、分析物の濃度の正味の増加をもたらすことである。さらに、この技術は、(1)分析物捕捉に必要とされる表面化学(例えば、ストレプトアビジン-ビオチン相互作用)を破壊せず;(2)固体支持体の不動態化(例えば、PEG、PEG-ビオチン、または疎水性分子のコーティングによる)に干渉せず(単一分子アッセイの間にクエリープローブの非特異的結合を禁止的なレベルまで増加させ得、偽陽性または偽陰性シグナルを生じさせる);そして(3)捕捉化学に干渉しない(例えば、固体支持体または捕捉プローブに対する分析物の親和性を減少させず、そして固体支持体への分析物の結合の反応速度論を減少させない)。
【0070】
さらに、適切なATPS技術は、好ましくは、分析物を2つの相のうちのより濃厚な方に分配し、重力または遠心分離によって分析物リッチ相と固相支持体との間の接触を可能にするが(例えば、
図1aを参照のこと)、気泡の蓄積が防止される限り、サンプルウェルおよび固相支持体の相対的方位を反転させることによって、より濃厚でない相における濃縮もまた利用され得る。
【0071】
本明細書において提供される技術の実施形態の開発の間に行われた実験の前には、水性二相系が、所定の分析物およびSiMREPSアッセイのための前記要件の全てを満たすことは知られていなかったかまたは予測可能でなかった;実際、これらの実験の間に収集されたデータは、PEG/デキストランATPSが短い一本鎖DNAを非常に効率的に分配することを示したが、PEG/デキストランATPS方法は、基材への分析物の送達の改善および/またはPEG/クエン酸ナトリウムに基づくATPSとしてのSiMREPSの感度の改善に成功しなかった(例えば、実施例10を参照のこと)。理論に縛られるものではないが、PEG/デキストランATPSの限界は、デキストランリッチおよびDNAリッチ相の高粘度(これは捕捉反応速度論を限定し得る)から生じ得る。
【0072】
短い一本鎖および二本鎖DNA(例えば、200未満、190、180、170、160、150、140、130、120、110、100、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、または10未満のntもしくはbp)へのATPSの適用については、本明細書に記載される技術の実施形態の開発の間に収集されたデータは、PEG3350、クエン酸ナトリウム、および塩化ナトリウムの混合物を含むATPSが、短い一本鎖または二本鎖DNA(例えば、20~30bp長ほど小さい)を効果的に分配および濃縮し、EGFRT790MについてのSiMREPSアッセイの感度を約80倍増加させたことを示した(
図1b;
図1c)。これは、約100分子コピーの検出を示し、従って、PCRに基づく分析の感度に近づいていることを示す。本明細書に記載される技術の実施形態の開発の間に収集された分光光度測定データは、PEG3350、クエン酸ナトリウム、および塩化ナトリウムの混合物を含むATPSが、8ヌクレオチド長ほど小さなDNAをクエン酸塩リッチ相に優先的に(20ヌクレオチドDNA鎖よりも低い分配係数を有するが)、そしてDNAの化学修飾によって容易に混乱させられる様式で分配する能力をさらに示した(例えば、有機フルオロフォアCy5の8ヌクレオチドDNA一本鎖DNA分子への結合は、DNAを、クエン酸リッチ相ではなくPEGリッチ相に優先的に分配させた;このような反転は、20ヌクレオチドより長いDNA分子については観察されなかった)。
【0073】
いくつかの実施形態において、このアッセイの感度は、分析物捕捉のための、狭く、十分に規定された面積にわたって固体支持体と接触させるカスタムサンプルセルの使用によって改善される(例えば、
図2;実施例2を参照のこと)。そのようなサンプルセルは、底部の近くでの溶液または気泡の潜在的なトラップを回避しながら、ピペットまたは他の混合および分配器具の接近を可能にするように最適に構築される(例えば、下にある固体支持体とサンプルセルの内壁との間の>45°の接触角(垂線に対して規定される)を確実にすることによって)。本明細書中に記載されるATPS系の実施形態を使用する場合、二相形成試薬(例えば、PEGおよびクエン酸ナトリウム)の全体の濃度を、2つの水相を形成するために必要とされる閾値より上に維持することが特に重要である。例えば、PEG-3350/クエン酸ナトリウム/NaCl系において、NaClの濃度を一定に保持して、いわゆるバイノーダル線によって分離される、1相または2相挙動を生じる混合物組成物を同定するための曇り点アッセイを使用して、実験を行った(例えば、実施例4および
図4を参照のこと)。
【0074】
さらに、クエン酸ナトリウムの存在量がPEG-3350よりもずっと少なく(例えば、1~5%クエン酸ナトリウム(例えば、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、または5%クエン酸ナトリウム)および30~45%PEG-3350(例えば、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、または45%PEG-3350)、その結果、DNAリッチクエン酸相が系の質量および体積の少数(例えば、<5%)を含み、従って、DNAがその元の濃度に比較して>10倍濃縮される組成物を選択することが重要である。本明細書において提供される技術の実施形態の開発の間に収集されたデータは、1~15%(例えば、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、または15%)の塩化ナトリウムの添加が短い核酸(特に、10~40ヌクレオチドの範囲)のクエン酸ナトリウム相への分配を増強することを示した(例えば、実施例5を参照のこと)。NaClは、いくつかのタンパク質の分配を変化させ、そしてPEG/クエン酸ナトリウム混合物の相挙動を変化させることが文献において以前に報告されているが(例えば、Azevedo et al. (2009) "Partitioning of human antibodies in polyethylene glycol-sodium citrate aqueous two-phase systems" Sep. Purif. Technol. 65: 14-21)、NaClの添加がPEG/クエン酸ATPSにおける核酸(特に、短いオリゴヌクレオチド)の分配を増強することは、以前に知られておらず、または予測可能でなかった。さらに、本明細書に記載される技術の実施形態の開発の間に行われた実験から収集されたデータは、蛍光標識および非標識DNAオリゴヌクレオチド、一本鎖および二本鎖DNAオリゴヌクレオチド、ならびに蛍光標識および非標識両方のマイクロRNAについての類似の分配を示した(例えば、実施例9を参照のこと)。
【0075】
ATPSは一般に、相構成要素の濃縮水性ストックを混合することによって形成されるが、本明細書において提供される技術の実施形態の開発の間に行われた実験は、表面に基づく測定において感度を増加させるために、希薄な分析物を最大限に濃縮するために、ストック混合物から可能な限り多くの水を除くことが重要であることを示した。しかし、高濃縮倍率に必要とされるいくつかの構成要素の低質量分率(例えば、クエン酸塩とPEGとの間の<1:10の比)、および多くの適用の小さなインプット体積(例えば、<100マイクロリットル)を考慮すると、再現可能な挙動(例えば、反復測定間の変動係数<25%)および感度に必要とされる精度で、PEG-3350、クエン酸ナトリウム、およびNaClのような固体試薬をアリコートすることは困難である。技術の実施形態の開発の間に行われた実験の間に収集されたデータは、このアプローチが時には2つの相の可変体積をもたらし、そして時には2つの相を形成することができないことを示している。より多量の固体粉末またはニートの液体(例えば、PEG-600(時にはATPSにおいてPEG-3350の代わりに使用された)の場合)の予備混合は、おそらく固体の固有の粒度および離散性の故に、同様に低い再現性をもたらした。対照的に、本明細書において提供される技術の実施形態の開発の間に行われた実験は、正確な割合の構成要素(例えば、6.934グラムのPEG-3350、0.498グラムのNaCl、0.208グラムのクエン酸ナトリウム、および30mLの脱イオン水)を含む単相マスターミックスを調製し、この混合物をアリコートし、そして凍結乾燥して、既知の質量の組成的に十分に規定されたペレットを達成し、次いで、これらの凍結乾燥されたペレットに設定体積の分析物溶液または混合物を添加することが、ずっと再現性の高い結果をもたらしたことを示した(例えば、実施例5および表1を参照のこと)。これらの実験の間に収集されたデータは、この凍結乾燥された混合物内でのクエン酸ナトリウム濃度を変動させることが、DNAリッチ相の分率体積を変化させ、従って、最終混合物内でのDNAの濃度を変化させることを示した。
【0076】
本明細書に記載される技術の実施形態の開発の間に行われた実験は、単一分子の、かつ表面に基づくアッセイ(例えば、短い二本鎖DNAのためのSiMREPSアッセイ)の感度を増加させるためのATPSの使用に関するいくつかの態様を示した。第1に、高い塩濃度に起因して、PEG/クエン酸ナトリウム/NaCl系は、分析物(例えば、脱イオン水、PBS、TE、TBE、または生体液(例えば、尿上清))または添加剤(例えば、SDS(例えば、2%)、プロテイナーゼK)を含む広範囲のインプット組成物についてしっかりと作用する。第2に、凍結乾燥混合物の産生において使用されるクエン酸ナトリウム/クエン酸のpHは、SiMREPSアッセイの感度に対する影響を最小にしながら6.5~8.5の間で変動され得るが、約7.0のpHより下ではカウントのわずかな低下が見られる(例えば、実施例11を参照のこと)。興味深いことに、pH5.91において1つの相のみが見られるが、PEG/クエン酸ナトリウム混合物は、同じPEG/クエン酸ナトリウム組成物の水性二相系ほどではないが、PBS単独と比較して、アッセイの感度を有意になお増加させる。第3に、DNA溶液のインプット体積は、比例した感度の低下なしに、100μLから20μLに減少され得る。このことは、より高い感度(検出された分析物の全コピーの割合に関して)が、捕捉のための固体支持体への小さな体積の下相を通る分析物の迅速な拡散を可能にする低いインプット体積で提供されることを示唆する。表面捕捉を増強するためにPEG/クエン酸ナトリウム/NaCl ATPSを使用した、臨床的に関連する検体への適用を実証するために、本明細書において提供される技術の開発の間に行われた実験は、技術が、ヒト尿から単離され、そして低分子量(<500bp)DNAについて選択された(尿路の上皮由来のDNAから腎臓通過性DNAを分離することを意図した方法)DNA中のEGFR遺伝子のフラグメントについて有意な陽性シグナルを検出したことを示した(例えば、
図6および実施例7を参照のこと)。対照的に、T790M変異(MUT)についての統計的に有意な正のシグナルは、健常尿DNAサンプルにおいて検出されなかった。このことは、ATPSが特異性に干渉しないことを示す(例えば、
図6および実施例7を参照のこと)。さらに、低い、統計学的に有意でないMUTシグナルは、脱アミノ化シトシン(ウラシル)(これは、T790Mのようなシトシンからチミンへの変異についての生物学的アッセイにおける偽陽性の一般的な供給源である)を除去するためのウラシル-DNAグリコシラーゼでの処理によってさらに低下した。
【0077】
捕捉の前に結合パートナーから解離されなければならない二本鎖DNAまたは他の分析物についてのATPSの使用のための別の重要な点は、ATPS構成要素(しばしば、分子密集化剤または塩)の使用が、再結合または再ハイブリダイゼーションを意図しないで促進し得ることであり、これは、表面捕捉の効率を低下させ得る。例えば、高濃度(例えば、>0.1M)の塩(クエン酸ナトリウムおよびNaClのような)は、DNAハイブリダイゼーションの反応速度論を、しばしば数桁、増大させ得る(例えば、Dupuis et al. (2013) "Single-Molecule Kinetics Reveal Cation-Promoted DNA Duplex Formation Through Ordering of Single-Stranded Helices" Biophys. J. 105: 756-66を参照のこと)。会合速度論はほとんど常に試薬濃度に比例するので、このような材料をより小さな相に濃縮することは、再結合に対する同様の効果を、またはより強い効果さえ有し得る。分析物のその結合パートナーへの再結合は、表面におけるその捕捉に依存するアッセイの感度に対して有害な効果を有し得る。この問題を回避するために、本明細書において提供される技術の開発の間に実験を行った。その中で、短い相補的オリゴヌクレオチドを分析物に対して過剰に導入して、一旦DNAがクエン酸塩相において濃縮されると、相補鎖の再ハイブリダイゼーションが防止される。オリゴヌクレオチドを、二重鎖DNAの熱変性の前に、または変性の直後に導入した。これらの実験の間に収集されたデータは、T790MについてのSiMREPSアッセイの感度が、このオリゴヌクレオチドの添加に際して約6倍増加したことを示した(例えば、
図7および実施例8を参照のこと)。同様に、これらの実験の間に収集されたデータは、短い相補的オリゴヌクレオチドをサンプルに添加することが、より長い(例えば、60または160塩基対)DNA鎖の変性(例えば、
図8および実施例8を参照のこと)、および/または表面における分析物の捕捉またはクエリープローブによるプロービングに干渉し得る二次構造の隔離を促進することを示した。
【0078】
要約すると、本明細書に記載される技術の実施形態は、水性二相系を使用して、分析物を事前濃縮し、そして表面におけるその捕捉効率を改善し、次いで単一分子感度アッセイ(例えば、SiMREPS)を用いて分析物を検出することによって、増幅なしに非常に低いコピー数(例えば、約100)の分析物を検出することに関する。いくつかの実施形態において、ATPSは、分析物の効率的な濃縮を促進し、そして効率的な捕捉を促進するために選択される。いくつかの実施形態において、ATPSは、表面化学およびプローブ結合に対する不動態化のような下流アッセイ要件に適合する。濃縮はさらなる感度の課題を導入し得るが、技術の実施形態の開発の間に行われた実験は、これらが、適切な担体または再結合の非特異的阻害物(例えば、dT10)または特異的競合物(例えば、相補的タイルオリゴヌクレオチド)の導入によって克服され得ることを示した。方法は、生体液(例えば、尿)から単離された低存在量かつ低分子量のDNAフラグメントの検出のような、臨床的および生物医学的適用における使用を見出す。界面活性剤および酵素の添加に対するその感度および強固さは、それをさらに、単一細胞分析(希少なマイクロRNA、DNA配列、およびタンパク質のような低存在量の構成要素の多重分析を含む)のための魅力的な選択肢とする。
【0079】
説明の目的のための、種々の実施形態のこの詳細な説明において、開示される実施形態の完全な理解を提供するために、多数の特定の詳細が記載される。しかし、当業者は、これらの種々の実施形態が、これらの特定の詳細が有ってもまたは無くても実施され得ることを理解するのであろう。他の場合、構造およびデバイスはブロック図形式で示される。さらに、当業者は、方法が提示されそして実行される特定の配列が例示的なものであり、そして配列が変動し得、そしてなお、本明細書において開示される種々の実施形態の精神および範囲内にあることが意図されることを容易に理解することができる。
【0080】
特許、特許出願、論文、書籍、専門書、およびインターネットウェブページを含むが、これらに限定されない、本出願において引用される全ての文献および類似の資料は、任意の目的のために、それらの全体が参照により明示的に組み込まれる。別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本明細書に記載される種々の実施形態が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。組み込まれた参考文献における用語の定義が、本教示において提供される定義と異なるように見える場合、本教示において提供される定義が支配するものとする。本明細書で使用される節の表題は、構成目的のためのみのものであり、いかにしても記載される主題を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0081】
[説明]
本明細書に記載されるように、技術は、表面において分析物を移動および/または濃縮するための(例えば、低存在量の分析物のイメージングおよび検出のための)、組成物、方法、およびシステムを提供する。例えば、いくつかの実施形態において、分析物は、電気泳動セルを使用して(例えば、表面において分析物を移動および濃縮するために電圧を使用することによって)表面において濃縮される。さらに、他の例示的な実施形態において、分析物(例えば、核酸(例えば、DNA)、タンパク質など)は、水性二相系の2つの相のうちの1つに優先的に分配される。水性二相系に関するいくつかの実施形態において、分析物リッチ相の体積は、元の分析物混合物よりも小さく、これは新たな分析物リッチ相における分析物のより高い濃度を生じさせる。
【0082】
例えば、本明細書において提供される技術の実施形態の開発の間に実験を行い、その中で、PEG3350、クエン酸ナトリウム、および塩化ナトリウムを含むATPSを使用して、DNAを10倍超濃縮し、その後、濃縮されたDNAを、後の分析のために表面上に捕捉した。いくつかの実施形態において、分析物リッチ相は、後の分析のために(例えば、蛍光顕微鏡法、SiMREPSなど(ただし、これらに限定されない)のような方法による)、表面に曝露される(例えば、表面と接触させられる)。
【0083】
さらに、例えば、本明細書において提供される技術の実施形態の開発の間に実験を行い、その中で、電気泳動セルを使用して、DNAを表面において10倍超濃縮した。いくつかの実施形態において、分析物を含む溶液は、後の分析のために(例えば、蛍光顕微鏡法、SiMREPSなど(ただし、これらに限定されない)のような方法による)、表面に暴露される(例えば、表面と接触させられる)。
【0084】
いくつかの実施形態において、表面は、カバーグラス、顕微鏡スライド、コロイド粒子、または相境界である。いくつかの実施形態において、分析物は、分析の前に表面上に捕捉される(例えば、親和性試薬を使用して)。いくつかの実施形態において、分析物は、分析前に表面上に捕捉されない。
【0085】
いくつかの実施形態において、技術は、単一分子検出アッセイ(例えば、米国特許出願第14/589,467号;国際特許出願第PCT/US2015/044650号;国際特許出願第PCT/US2017/016977号;および米国仮特許出願第62/468,578号(その各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと))での使用を見出す。Johnson-Buck et al. (2015) "Kinetic fingerprinting to identify and count single nucleic acids" Nature Biotechnology 33: 730-32(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)も参照のこと。
【0086】
いくつかの実施形態において、技術は、分析物の定性的検出(例えば、存在の決定)における使用を見出す。いくつかの実施形態において、技術は、分析物の量、濃度、存在量などの定量的測定(例えば、計数)における使用を見出す。例えば、いくつかの実施形態において、技術は、生体液中に存在する低存在量の核酸分析物を濃縮するための使用を見出す(例えば、血漿、尿、唾液、または他の体液由来の腫瘍DNAの、分析のために、より小さな体積への)。
【0087】
(定義)
本技術の理解を容易にするために、いくつかの用語および語句を以下に定義する。さらなる定義は、詳細な説明の全体にわたって記述される。
【0088】
明細書及び特許請求の範囲の全体を通して、以下の用語は、文脈が他に明確に指示しない限り、本明細書において明示的に関連付けられる意味をとる。本明細書で使用される「一実施形態において」という語句は、必ずしも同じ実施形態を指さないが、同じ実施形態を指してもよい。さらに、本明細書で使用される「別の実施形態において」という語句は、必ずしも異なる実施形態を指さないが、異なる実施形態を指してもよい。従って、下記のように、本発明の範囲または精神から逸脱することなく、本発明の種々の実施形態を容易に組み合わせ得る。
【0089】
さらに、本明細書で使用される場合、用語「または」は包含的な「または」記号であり、文脈が他に明確に指示しない限り、用語「および/または」と同等である。用語「に基づく」は文脈が他に明確に指示しない限り、排他的ではなく、そして記載されていない追加の因子に基づくことを許容する。さらに、明細書の全体を通して、「a」、「an」および「the」の意味は複数の言及を含む。「おける」の意味は、「中」および「上」を含む。
【0090】
本明細書で使用される場合、用語「約」、「ほぼ」、「実質的に」、および「有意に」は、当業者によって理解され、そしてそれらが使用される文脈である程度変動する。それらが使用される文脈を考慮して、当業者に明らかでないこれらの用語の使用が存在する場合、「約」および「ほぼ」は、特定の用語の10%以下のプラスまたはマイナスを意味し、そして「実質的に」および「有意に」は、特定の用語の10%超のプラス又はマイナスを意味する。
【0091】
本明細書で使用される場合、用語「対象」および「患者」は、植物、微生物、および動物(例えば、イヌ、ネコ、家畜、およびヒトのような哺乳動物)を含む任意の生物を指す。
【0092】
本明細書で使用される場合、用語「分析物」は、試験、アッセイ、検出、イメージング、特徴付け、および/または定量しようとする物質を指す。例示的な分析物としては、生体分子(例えば、核酸(例えば、DNA、RNA、メチル化および他の修飾がなされた核酸塩基)、ポリペプチド(例えば、ペプチド、タンパク質、糖タンパク質)、炭水化物、脂質、翻訳後修飾、アミノ酸、および代謝物)、小分子(薬物、生物活性剤、毒素)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0093】
本明細書および特許請求の範囲における用語「サンプル」は、その最も広い意味で使用される。いくつかの実施形態において、サンプルは、動物細胞または組織であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態において、サンプルは、任意の供給源から得られた検体または培養物(例えば、微生物学的培養物)、ならびに生物学的サンプルおよび環境サンプルを含む。生物学的サンプルは、植物または動物(ヒトを含む)から得られ得、そして流体、固体、組織、および気体を包含する。環境サンプルは、表面物質、土壌、水、および工業サンプルのような環境物質を含む。これらの例は、本技術に適用可能なサンプルの型を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0094】
本明細書で使用される場合、「生物学的サンプル」は、生物学的組織または流体のサンプルを指す。例えば、生物学的サンプルは、動物(ヒトを含む);流体、固体、または組織サンプル;ならびに液体および固体の食品および飼料製品および構成要素(例えば、乳製品、野菜、肉および肉副産物、ならびに廃棄物)から得られるサンプルであり得る。生物学的サンプルは、家畜ならびに自然動物または野生動物(有蹄動物、クマ、魚、ウサギ類、げっ歯類などのような動物を含むがこれらに限定されない)の種々の科の全てから得られ得る。生物学的サンプルの例としては、組織の切片、血液、血液画分、血漿、血清、尿、または他の末梢供給源もしくは細胞培養物、細胞コロニー、単一細胞、または単一細胞の収集物由来のサンプルが挙げられる。さらに、生物学的サンプルは、前記のサンプルのプールまたは混合物を含む。生物学的サンプルは、対象から細胞のサンプルを取り出すことによって提供され得るが、以前に単離されたサンプルを使用することによっても提供され得る。例えば、組織サンプルは、従来の生検技術によって、疾患を有する疑いのある対象から取り出され得る。いくつかの実施形態において、血液サンプルは、対象から採取される。患者由来の生物学的サンプルとは、疾患に罹患している疑いのある対象由来のサンプルを意味する。
【0095】
環境サンプルは、表面物質、土壌、水、および工業サンプルのような環境物質、ならびに食品および乳製品加工器械、装置、設備、用具、使い捨て品および非使い捨て品から得られるサンプルを含む。これらの例は、本発明に適用可能なサンプルの型を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0096】
本明細書で使用される場合、用語「生体液」は、生物学的流体(例えば、体液、身体の液体)を指す。例えば、いくつかの実施形態において、生体液は排出物(例えば、尿、汗、浸出液(例えば、植物侵出液を含む))であり、そしていくつかの実施形態において、生体液は、分泌物である(例えば、母乳、胆汁)。いくつかの実施形態において、生体液は、針を使用して得られる(例えば、血液、脳脊髄液、リンパ液)。いくつかの実施形態において、生体液は、病理学的プロセスの結果として産生される(例えば、水疱、嚢胞液)。いくつかの実施形態において、生体液は、別の生体液に由来する(例えば、血漿、血清)。例示的な生体液としては、羊水、房水、硝子体液、胆汁、血液、血漿、血清、母乳、脳脊髄液、耳垢、乳び、粥状物、内リンパ、外リンパ、滲出液、糞便、女性射精液、胃酸、胃液、リンパ液、粘液(例えば、鼻ドレナージ、痰)、心膜液、腹水、胸水、膿、粘膜分泌物、唾液、皮脂(例えば、皮膚油)、漿液、精液、垢脂、痰、滑液、汗、涙、尿、膣分泌物、および嘔吐物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0097】
本明細書中で使用される用語「標識」は、検出可能な(好ましくは定量可能な)効果を提供するために使用され得、そして核酸またはタンパク質に結合され得る、任意の原子、分子、分子複合体(例えば、金属キレート)、またはコロイド粒子(例えば、量子ドット、ナノ粒子、微粒子など)を指す。標識としては、色素(例えば、光学的に検出可能な標識、蛍光色素または部分など);32Pのような放射性標識;ビオチンのような結合部分;ジゴキシゲニンのようなハプテン;発光性、リン光性、光学的に検出可能、または蛍光発生性部分;マスタグ;および蛍光色素単独または、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)によって発光スペクトルを抑制またはシフトできる部分との組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。標識は、蛍光、発光、放射能、比色、重量測定、X線回折または吸収、磁性、酵素活性、質量によって影響される挙動または質量の特徴(例えば、MALDI飛行時間型質量分析;蛍光偏光)などによって検出可能なシグナルを提供し得る。標識は、荷電部分(正または負の電荷)であってもよく、あるいは、電荷的中性であってもよい。標識を含む配列が検出可能である限り、標識は、核酸またはタンパク質配列を含み得るか、またはそれからなり得る。
【0098】
本明細書で使用される「支持体」または「固体支持体」は、分析物(例えば、生体分子(例えば、核酸(例えば、DNA、RNA、メチル化および他の修飾がなされた核酸塩基)、ポリペプチド(例えば、ペプチド、タンパク質、糖タンパク質)、炭水化物、脂質、翻訳後修飾、アミノ酸、代謝物)、小分子など)がその上または中に濃縮および/または固定化され得る表面またはマトリックス(例えば、分析物が共有結合または非共有結合され得るか、またはその中もしくはその上に分析物が部分的もしくは完全に包埋され得、その結果、分析物は、互いに対して自由に拡散するかまたは移動することが大部分または完全に防止される表面)を指す。
【0099】
本明細書で使用される場合、「部分」は、例えば、オリゴヌクレオチド、分子、化学基、ドメイン、プローブなどの種々の部分のような、何かがそれに分割され得る2つ以上の部分のうちの1つを指す。
【0100】
本明細書で使用される場合、「核酸」または「核酸配列」は、ピリミジンおよび/またはプリン塩基、好ましくはそれぞれシトシン、チミン、およびウラシル、ならびにアデニンおよびグアニンのポリマーまたはオリゴマーを指す(Albert L. Lehninger, Principles of Biochemistry, 793-800 (Worth Pub. 1982)を参照のこと)。本技術は、任意のデオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、またはペプチド核酸構成要素、およびその任意の化学的改変体、例えば、これらの塩基のメチル化、ヒドロキシメチル化、またはグリコシル化形態などを意図する。ポリマーまたはオリゴマーは、組成が不均一または均一であってもよく、そして天然に生じる供給源から単離されてもよく、または人工的もしくは合成的に産生されてもよい。さらに、核酸は、DNAもしくはRNA、またはそれらの混合物であってもよく、そして一本鎖または二本鎖の形態で(ホモ二重鎖、ヘテロ二重鎖、およびハイブリッド状態を含む)永久的にまたは一過性に存在してもよい。いくつかの実施形態において、核酸または核酸配列は、例えば、DNA/RNAヘリックス、ペプチド核酸(PNA)、モルホリノ、ロックド核酸(LNA)、および/またはリボザイムのような、他の種類の核酸構造を含む。従って、用語「核酸」または「核酸配列」はまた、天然ヌクレオチドと同じ機能を示し得る非天然ヌクレオチド、修飾ヌクレオチド、および/または非ヌクレオチド構築ブロックを含む鎖を包含し得(例えば、「ヌクレオチドアナログ」);さらに、本明細書で使用される用語「核酸配列」は、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチドまたはポリヌクレオチド、およびそれらのフラグメントまたは部分、およびゲノム起源または合成起源のDNAまたはRNA(これらは一本鎖または二本鎖であり得、そしてセンス鎖またはアンチセンス鎖を表し得る)を指す。
【0101】
本明細書で使用される用語「ヌクレオチドアナログ」は、7-デアザプリン(すなわち、7-デアザ-dATPおよび7-デアザ-dGTP)のような変化した積み重なり相互作用を有するアナログ;代替的な水素結合配置を有する塩基アナログ(例えば、Iso-CおよびIso-G、ならびにS. Bennerに対する米国特許第6,001,983号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載される他の非標準的塩基対);非水素結合アナログ(例えば、B. A. Schweitzer and E. T. Kool, J. Org. Chem., 1994, 59, 7238-7242、B. A. Schweitzer and E. T. Kool, J. Am. Chem. Soc., 1995, 117, 1863-1872(これらの各々は参照により本明細書に組み込まれる)によって記載される2,4-ジフルオロトルエンのような非極性芳香族ヌクレオシドアナログ);5-ニトロインドールおよび3-ニトロピロールのような「ユニバーサル」塩基;ならびにユニバーサルプリンおよびピリミジン(それぞれ、「K」および「P」ヌクレオチドなど;P. Kong, et al., Nucleic Acids Res., 1989, 17, 10373-10383, P. Kong et al., Nucleic Acids Res., 1992, 20, 5149-5152)を含むが、これらに限定されない、修飾されたかまたは天然に存在しないヌクレオチドを指す。。ヌクレオチドアナログとしては、糖部分に修飾を有するヌクレオチド、例えばジデオキシヌクレオチドおよび2’-O-メチルヌクレオチドが挙げられる。ヌクレオチドアナログとしては、デオキシリボヌクレオチドならびにリボヌクレオチドの修飾形態が挙げられる。
【0102】
「ペプチド核酸」は、ペプチド様ポリアミド骨格を組み込むDNA模倣物を意味する。
【0103】
本明細書で使用される場合、用語「相補的」または「相補性」は、塩基対合規則によって関連付けられるポリヌクレオチド(例えば、オリゴヌクレオチド捕捉プローブ、クエリープローブ、または核酸である標的分析物のようなヌクレオチドの配列)の関連で使用される。例えば、配列「5’-A-G-T-3’」については配列「3’-T-C-A-5’」に相補的である。相補性は「部分的」であり得る。ここで、核酸の塩基のいくつかのみが塩基対合規則に従ってマッチする。または、核酸間に「完全」または「全体的」な相補性が存在し得る。核酸鎖間の相補性の程度は、核酸鎖間のハイブリダイゼーションの効率および強度に対して有意な効果を有する。これは、増幅反応、ならびに核酸間の結合に依存する検出方法において特に重要である。いずれの用語も、特にポリヌクレオチドの文脈内で、個々のヌクレオチドに関しても使用され得る。例えば、オリゴヌクレオチド内の特定のヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの残りと核酸鎖との間の相補性との対照または比較で、別の核酸鎖内のヌクレオチドに対するその相補性またはその欠如について記され得る。
【0104】
いくつかの文脈において、用語「相補性」および関連する用語(例えば、「相補的」、「相補物」)は、水素結合を介して別の核酸配列に結合し得る核酸配列のヌクレオチド、例えば、塩基対合(例えば、ワトソン-クリック塩基対合または他の塩基対合による)をすることができるヌクレオチドを指す。塩基対を形成することができるヌクレオチド(例えば、互いに相補的である)は、以下の対である:シトシンおよびグアニン、チミンおよびアデニン、アデニンおよびウラシル、ならびにグアニンおよびウラシル。相補性百分率は、核酸配列の全長にわたって算出される必要はない。相補性の百分率は、塩基対合される核酸配列の特定の領域に限定され得る(例えば、最初の塩基対合されるヌクレオチドから開始し、そして最後の塩基対合されるヌクレオチドで終了する)。本明細書で使用される核酸配列の相補物は、一方の配列の5’末端が他方の3’末端と対合するように核酸配列と整列させた場合に「逆平行の関連」にあるオリゴヌクレオチドを指す。天然核酸において一般的に見出されない特定の塩基が、本発明の核酸中に含まれ得、そしてそれには、例えば、イノシンおよび7-デザグアニンを含まれる。相補性は完全である必要はなく;安定な二重鎖は、ミスマッチ塩基対または非マッチ塩基を含み得る。核酸技術の当業者は、例えば、オリゴヌクレオチドの長さ、オリゴヌクレオチドの塩基組成および配列、イオン強度、ならびにミスマッチ塩基対の発生率を含む、いくつかの変数を考慮して、二重鎖安定性を経験的に決定することができる。
【0105】
従って、いくつかの実施形態において、「相補的」は、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、またはそれより多くの核酸塩基の領域にわたって、第2の核酸塩基配列の相補物と、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%同一である第1の核酸塩基配列を指すか、またはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で2つの配列がハイブリダイズすることを指す。「完全に相補的」とは、第1の核酸の各々の核酸塩基が、第2の核酸における対応する位置における各々の核酸塩基と対合することができることを意味する。例えば、特定の実施形態において、各々の核酸塩基が核酸に対して相補性を有するオリゴヌクレオチドは、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、またはそれより多くの核酸塩基の領域にわたって核酸の相補物と同一である核酸塩基配列を有する。
【0106】
「ミスマッチ」は、第2の核酸の対応する位置における核酸塩基と対合することができない第1の核酸の核酸塩基を意味する。
【0107】
用語「ドメイン」は、ポリペプチドに関して使用される場合、特有の構造的および/または機能的特徴を保有するポリペプチドの小区分を指す;典型的には、この特徴は、多様なポリペプチドにわたって類似する。小区分は、典型的には、連続するアミノ酸を含むが、それは、協調して作用するか、または折り畳みもしくは他の配置に起因して近接しているアミノ酸も含み得る。タンパク質ドメインの例としては、膜貫通ドメイン、グリコシル化部位などが挙げられる。
【0108】
用語「遺伝子」は、RNA、またはポリペプチドもしくはその前駆体(例えば、プロインスリン)の産生に必要なコード配列を含む核酸(例えば、DNAまたはRNA)配列を指す。機能的なポリペプチドは、ポリペプチドの所望の活性または機能的特性(例えば、酵素活性、リガンド結合、シグナル伝達など)が保持される限り、完全長コード配列によって、またはコード配列の任意の部分によってコードされ得る。遺伝子に関して使用される場合、用語「部分」は、その遺伝子のフラグメントを指す。フラグメントは、数ヌクレオチドから、遺伝子配列全体から1ヌクレオチドを引いたものまでのサイズの範囲であり得る。従って、「遺伝子の少なくとも一部を含むヌクレオチド」は、遺伝子のフラグメントまたは遺伝子全体を含み得る。
【0109】
用語「遺伝子」はまた、構造遺伝子のコード領域を包含し、そして、遺伝子が完全長mRNAの長さに対応するように、5’末端および3’末端の両方の、いずれもの末端の約1kbの距離にわたる、コード領域に隣接して位置する配列を含む。コード領域の5’側に位置し、そしてmRNA上に存在する配列は、5’非翻訳配列といわれる。コード領域の3’側または下流に位置し、そしてmRNA上に存在する配列は、3’非翻訳配列といわれる。用語「遺伝子」は、遺伝子のcDNAおよびゲノム形態の両方を包含する。遺伝子のゲノム形態またはクローニングは、「イントロン」または「介在領域」または「介在配列」と呼ばれる非コード配列で中断されたコード領域を含む。イントロンは、核RNA(hnRNA)に転写される遺伝子のセグメントである;イントロンは、エンハンサーのような調節エレメントを含み得る。イントロンは、核または一次転写物から除去されるか、「スプライスアウト」される;それゆえ、イントロンは、メッセンジャーRNA(mRNA)転写物中に存在しない。mRNAは、新生ポリペプチドにおけるアミノ酸の配列または順序を特定するように翻訳の間に機能する。
【0110】
イントロンを含むことに加えて、遺伝子のゲノム形態はまた、RNA転写物上に存在する配列の5’末端および3’末端の両方に位置する配列を含み得る。これらの配列は、「フランキング」配列または領域と呼ばれる(これらのフランキング配列は、mRNA転写物上に存在する非翻訳配列の5’側または3’側に位置する)。5’フランキング領域は、遺伝子の転写を制御するかまたはそれに影響を及ぼす、プロモーターおよびエンハンサーのような調節配列を含み得る。3’フランキング領域は、転写の終結、転写後切断およびポリアデニル化を指示する配列を含み得る。
【0111】
用語「野生型」は、天然に生じる供給源から単離された場合に、その遺伝子または遺伝子産物の特徴を有する遺伝子または遺伝子産物を指す。野生型遺伝子は、集団において最も頻繁に観察され、従って遺伝子の「正常」または「野生型」形態と任意に称される。対照的に、「改変」、「変異」または「多型」は、野生型遺伝子または遺伝子産物と比較した場合に、配列および/または機能的特性における改変(すなわち、変化した特徴)を示す遺伝子または遺伝子産物を指す。天然に生じる変異体が単離され得ることに留意される;これらは、野生型遺伝子または遺伝子産物と比較した場合に、変化した特徴を有するという事実によって同定される。従って、ヌクレオチド配列に関して使用される場合、用語「改変体」および「変異体」は、別の、通常関連するヌクレオチド酸配列と、1つ以上のヌクレオチドが異なる核酸配列を指す。「改変」は、2つの異なるヌクレオチド配列間の差異である;いくつかの実施形態において、1つの配列は参照配列である。
【0112】
用語「対立遺伝子」は、遺伝子における様々な改変を指す;改変は、改変体および変異体、多型遺伝子座および一塩基多型遺伝子座、フレームシフトおよびスプライス変異を含むが、これらに限定されない。対立遺伝子は、集団において天然に生じ得、または、集団の任意の特定の個体の生涯の間に生じ得る。
【0113】
本明細書で使用される場合、用語「ハイブリダイゼーション」は、相補的核酸の対合に関連して用いられる。ハイブリダイゼーションおよびハイブリダイゼーションの強さ(例えば、核酸間の結合の強さ)は、核酸間の相補性の程度、関与する条件のストリンジェンシー、および形成されるハイブリッドのTmのような因子によって影響される。「ハイブリダイゼーション」方法は、1つの核酸の、別の相補的な核酸(例えば、相補的ヌクレオチド配列を有する核酸)へのアニーリングを含む。相補的配列を含む核酸の2つのポリマーが、互いを見出し、そして塩基対合相互作用を介してアニーリングする能力は、よく認識された現象である。Marmur and Lane, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 46:453 (1960)およびDoty et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 46:461 (1960)による「ハイブリダイゼーション」プロセスの最初の観察の後、このプロセスは、現代生物学の必須ツールに洗練されている。
【0114】
本明細書で使用される場合、用語「Tm」は、「溶解温度」に関して使用される。溶解温度は、二本鎖核酸分子の集団が一本鎖に半分解離されるようになる温度である。核酸のTmを算出するためのいくつかの式が、当該技術分野においてよく知られている。標準的な参考文献によって示されるように、Tm値の簡単な概算は、核酸が1M NaClの水溶液中にある場合、式:Tm=81.5+0.41*(%G+C)によって算出され得る(例えば、Anderson and Young, Quantitative Filter Hybridization, in Nucleic Acid Hybridization (1985)を参照のこと)。他の参考文献(例えば、Allawi and SantaLucia, Biochemistry 36: 10581-94 (1997))は、Tmを算出するための構造、環境、および配列の特徴を説明する、より洗練された計算を含む。例えば、いくつかの実施形態において、これらの計算は、短い核酸プローブおよび標的(例えば、実施例において使用されるような)についてのTmの改善された概算を提供する。
【0115】
用語「タンパク質」および「ポリペプチド」は、ペプチド結合を介して連結されたアミノ酸を含む化合物を指し、そして互換的に使用される。遺伝子によってコードされる「タンパク質」または「ポリペプチド」は、遺伝子によってコードされるアミノ酸配列に限定されず、タンパク質の翻訳後修飾を含む。本明細書において用語「アミノ酸配列」がタンパク質分子のアミノ酸配列に言及するために記載される場合、「アミノ酸配列」および類似の用語、例えば「ポリペプチド」または「タンパク質」は、アミノ酸配列を、記載されるタンパク質分子に関連する完全なネイティブのアミノ酸配列に限定することを意味しない。さらに、「アミノ酸配列」は、タンパク質をコードする核酸配列から推定され得る。以下のように従来の1文字および3文字アミノ酸コードが本明細書中で使用される:アラニン:Ala、A;アルギニン:Arg、R;アスパラギン:Asn、N;アスパラギン酸:Asp、D;システイン:Cys、C;グルタミン酸:Glu、E;グルタミン:Gln、Q;グリシン:Gly、G;ヒスチジン:His、H;イソロイシン:Ile、I;ロイシン:Leu、L;リジン:Lys、K;メチオニン:Met、M;フェニルアラニン:Phe、F;プロリン:Pro、P;セリン:Ser、S;スレオニン:Thr、T;トリプトファン:Trp、W;チロシン:Tyr、Y;バリン:Val、V。本明細書で使用される場合、コードXaaおよびXは任意のアミノ酸を指す。
【0116】
用語「改変体」および「変異体」は、ポリペプチドに関して使用される場合、別の通常関連するポリペプチドと、1つ以上のアミノ酸が異なるアミノ酸配列を指す。
【0117】
本明細書で使用される場合、用語「溶解」は、核酸に関して使用される場合、二本鎖核酸または核酸の領域の、一本鎖核酸または核酸の領域への解離を指す。
【0118】
本明細書で使用される場合、「クエリープローブ」または「リーダープローブ」は、分析物を認識(例えば、分析物に結合、例えば、分析物に特異的に結合)する任意の物体(例えば、分子、生体分子など)である。例示的な実施形態において、クエリープローブは、分析物を認識するタンパク質である。いくつかの他の例示的な実施形態において、クエリープローブは、分析物(例えば、DNA、RNA、DNAおよびRNAを含む核酸、修飾塩基および/または塩基間の修飾連結を含む核酸;例えば、本明細書中前記のような核酸、核酸アプタマー)を認識する核酸である。いくつかの実施形態において、クエリープローブは、例えば、本明細書に記載されるような蛍光部分などの検出可能な標識で、標識される。いくつかの実施形態において、クエリープローブは、1つより多い型の分子(例えば、タンパク質、核酸、化学リンカー、または化学部分の1つより多く)を含む。
【0119】
技術の実施形態は、分析物に一過性にそして反復して結合するクエリープローブ(例えば、検出可能に標識されたクエリープローブ)、例えば、観察窓当たり数回(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上を超える回数)標的分析物に結合し、そしてそれから解離するクエリープローブを含む。いくつかの実施形態において、クエリープローブは、アッセイ条件下で、約1ナノモル濃度超(例えば、0.5ナノモル濃度超、0.6ナノモル濃度、0.7ナノモル濃度、0.8ナノモル濃度、0.9ナノモル濃度、1.0ナノモル濃度、1.1ナノモル濃度、1.2ナノモル濃度、1.3ナノモル濃度、1.4ナノモル濃度、1.5ナノモル濃度、1.6ナノモル濃度、1.7ナノモル濃度、1.8ナノモル濃度、1.9ナノモル濃度、2.0ナノモル濃度、2.1ナノモル濃度、2.2ナノモル濃度、2.3ナノモル濃度、2.4ナノモル濃度、2.5ナノモル濃度、2.6ナノモル濃度、2.7ナノモル濃度、2.8ナノモル濃度、2.9ナノモル濃度、3.0ナノモル濃度、3.1ナノモル濃度、3.2ナノモル濃度、3.3ナノモル濃度、3.4ナノモル濃度、3.5ナノモル濃度、3.6ナノモル濃度、3.7ナノモル濃度、3.8ナノモル濃度、3.9ナノモル濃度、4.0ナノモル濃度、4.1ナノモル濃度、4.2ナノモル濃度、4.3ナノモル濃度、4.4ナノモル濃度、4.5ナノモル濃度、4.6ナノモル濃度、4.7ナノモル濃度、4.8ナノモル濃度、4.9ナノモル濃度、または5.0ナノモル濃度、またはそれより多いナノモル濃度)の分析物についての解離定数(KD)を有する。いくつかの実施形態において、クエリープローブは、約1分-1超(例えば、0.5分-1超、0.6分-1、0.7分-1、0.8分-1、0.9分-1、1.0分-1、1.1分-1、1.2分-1、1.3分-1、1.4分-1、1.5分-1、1.6分-1、1.7分-1、1.8分-1、1.9分-1、2.0分-1、2.1分-1、2.2分-1、2.3分-1、2.4分-1、2.5分-1、2.6分-1、2.7分-1、2.8分-1、2.9分-1、3.0分-1、3.1分-1、3.2分-1、3.3分-1、3.4分-1、3.5分-1、3.6分-1、3.7分-1、3.8分-1、3.9分-1、4.0分-1、4.1分-1、4.2分-1、4.3分-1、4.4分-1、4.5分-1、4.6分-1、4.7分-1、4.8分-1、4.9分-1、または5.0分-1、またはそれより多い分-1)である分析物に対する結合および/または解離定数を有する。
【0120】
技術は、クエリープローブに限定されない。いくつかの実施形態において、クエリープローブは、抗体または抗体フラグメントである。いくつかの実施形態において、クエリープローブは、低親和性抗体または抗体フラグメントである。いくつかの実施形態において、クエリープローブは、ナノボディ、DNA結合タンパク質またはタンパク質ドメイン、メチル化結合ドメイン(MBD)、キナーゼ、ホスファターゼ、アセチラーゼ、デアセチラーゼ、酵素、またはポリペプチドである。いくつかの実施形態において、クエリープローブは、標的分析物と相互作用するオリゴヌクレオチドである。例えば、いくつかの実施形態において、クエリープローブは、標的分析物にハイブリダイズして、観察が行われる温度の約10℃以内である溶解温度を有する二重鎖を形成するオリゴヌクレオチドである(例えば、室温で行われる観察のために約7~12ヌクレオチド)。いくつかの実施形態において、クエリープローブはモノヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、クエリープローブは、小有機分子(例えば、約2000ダルトン未満、例えば、2100ダルトン未満、2050ダルトン、2000ダルトン、1950ダルトン、1900ダルトン、1850ダルトン、1800ダルトン、1750ダルトン、1700ダルトン、1650ダルトン、1600ダルトン、1550ダルトン、1500ダルトン、またはそれより小さな分子量を有する分子)である。いくつかの実施形態において、クエリープローブは、医薬剤、例えば、薬物または他の生物活性分子である。いくつかの実施形態において、クエリープローブは、金属イオン錯体である。いくつかの実施形態において、クエリープローブは、メチル結合ドメイン(例えば、MBD1)である。いくつかの実施形態において、クエリープローブは、本明細書に記載されるように、検出可能な標識で標識される。いくつかの実施形態において、クエリープローブは、検出可能な標識に共有結合される。いくつかの実施形態において、クエリープローブは、検出可能な標識と間接的および/または非共有的に連結および/または会合される。いくつかの実施形態において、検出可能な標識は蛍光性である。
【0121】
いくつかの実施形態において、クエリープローブは、マウスモノクローナル抗体である。
【0122】
分析物が炭水化物または多糖類を含むいくつかの実施形態において、クエリープローブは、レクチンまたは炭水化物結合抗体のような炭水化物結合タンパク質を含む。
【0123】
本明細書で使用される場合、「事象」は、分析物へのクエリープローブの結合の事例または分析物からのクエリープローブの解離の事例(例えば、分析物へのクエリープローブの結合および/または分析物からのクエリープローブの解離を示す検出可能な特性をモニターすることによって測定される)を指す。
【0124】
本明細書で使用される場合、「捕捉プローブ」は、分析物を認識(例えば、分析物に結合、例えば、分析物に特異的に結合)し、そして分析物を固体支持体に連結する任意の物体(例えば、分子、生体分子など)である。例示的な実施形態において、捕捉プローブは、分析物を認識するタンパク質である。いくつかの他の例示的な実施形態において、捕捉プローブは、分析物(例えば、DNA、RNA、DNAおよびRNAを含む核酸、修飾塩基および/または塩基間の修飾連結を含む核酸;例えば、本明細書中前記のような核酸、核酸アプタマー)を認識する核酸である。いくつかの実施形態において、捕捉プローブは、例えば、検出可能な標識、例えば、本明細書に記載のような蛍光部分で標識される。いくつかの実施形態において、捕捉プローブは、1つより多い型の分子(例えば、タンパク質、核酸、化学リンカー、または化学部分の1つより多く)を含む。技術の実施形態は、分析物の捕捉を含む。いくつかの実施形態において、分析物は、捕捉されそして固定化される。いくつかの実施形態において、分析物は、固体支持体に安定に付着される。いくつかの実施形態において、固体支持体は、固体支持体に接触するバルク液相に対して不動である。いくつかの実施形態において、固体支持体は、固体支持体に接触するバルク液相内で拡散可能である。
【0125】
いくつかの実施形態において、表面または他の固体基材への標的分析物の安定な付着が、高親和性または不可逆的相互作用によって提供される(例えば、本明細書で使用される場合、「不可逆的相互作用」は、観察時間よりも長い解離半減期、例えば、いくつかの実施形態において1~10分である時間(例えば、60秒、70秒、80秒、90秒、100秒、110秒、120秒、130秒、140秒、150秒、160秒、170秒、180秒、190秒、200秒、210秒、220秒、230秒、240秒、250秒、260秒、270秒、280秒、290秒、300秒、310秒、320秒、330秒、340秒、350秒、360秒、370秒、380秒、390秒、400秒、410秒、420秒、430秒、440秒、450秒、460秒、470秒、480秒、490秒、500秒、510秒、520秒、530秒、540秒、550秒、560秒、570秒、580秒、590秒、または600秒、またはそれより長い)を有する相互作用を指す)。技術は、分析物の捕捉のために使用される構成要素および/または方法に限定されない。例えば、安定な付着は、以下の1つ以上を含むがこれらに限定されない、種々の方法によって提供される。
【0126】
いくつかの実施形態において、分析物は、約1ナノモル濃度(nM)より小さな(例えば、1.5ナノモル濃度未満、1.4ナノモル濃度、1.3ナノモル濃度、1.2ナノモル濃度、1.1ナノモル濃度、1.0ナノモル濃度、0.9ナノモル濃度、0.8ナノモル濃度、0.7ナノモル濃度、0.6ナノモル濃度、0.5ナノモル濃度)分析物についての解離定数(KD)および約1分-1より小さな(例えば、約1.5分-1未満、1.4分-1、1.3分-1、1.2分-1、1.1分-1、1.0分-1、0.9分-1、0.8分-1、0.7分-1、0.6分-1、0.5分-1)分析物についての解離速度定数を有する表面結合捕捉プローブによって固定化される。例示的な表面結合捕捉プローブとしては、例えば、抗体、抗体フラグメント、ナノボディ、または他のタンパク質;高親和性DNA結合タンパク質またはリボ核タンパク質複合体、例えば、Cas9、dCas9、Cpf1、転写因子、または転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN);オリゴヌクレオチド;小有機分子;または金属イオン錯体が挙げられる。
【0127】
いくつかの実施形態において、分析物は、表面への直接的な非共有結合によって(例えば、分析物と表面(例えば、ガラス表面またはナイロン、ニトロセルロース、またはポリビニリデンジフルオリド膜)との間の相互作用によって)固定化される。
【0128】
いくつかの実施形態において、分析物は、分析物の固体支持体への化学的連結によって(例えば、共有結合によって)固定化される。いくつかの実施形態において、分析物は、例えば、カルボジイミド、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHS)エステル、マレイミド、ハロアセチル基、ヒドラジド、またはアルコキシアミンによって、固体支持体に化学的に連結される。いくつかの実施形態において、分析物は、表面へのおよび/または表面に付着した捕捉プローブへの標的分析物の照射(例えば、紫外線)誘導架橋によって固定化される。いくつかの実施形態において、捕捉プローブは、ウサギモノクローナル抗体である。分析物が炭水化物または多糖類を含むいくつかの実施形態において、捕捉プローブは、レクチンまたは炭水化物結合抗体のような炭水化物結合タンパク質を含む。
【0129】
あるいは、前記のように、固体支持体に接触するバルク相に対して相対的に静止している固体支持体に標的分析物を固定化する代わりに、いくつかの実施形態は、標的分析物が、自由に拡散する粒子に接触しているバルク流体相内で拡散する自由に拡散する粒子と会合することを提供する。従って、いくつかの実施形態において、標的分析物は、自由に拡散する基材に共有結合または非共有結合される。いくつかの実施形態において、自由に拡散する基材は、例えば、コロイド粒子(例えば、約10~1000nm(例えば、10nm、20nm、30nm、40nm、50nm、60nm、70nm、80nm、90nm、100nm、110nm、120nm、130nm、140nm、150nm、200nm、250nm、300nm、350nm、400nm、450nm、500nm、550nm、600nm、650nm、700nm、750nm、800nm、850nm、900nm、950nm、または1000nm)の直径を有する粒子)である。いくつかの実施形態において、自由に拡散する基材は、例えば、ポリスチレン、シリカ、デキストラン、金、またはDNAオリガミを含み、そして/またはそれらから作製される。いくつかの実施形態において、標的分析物は、クエリープローブの拡散に比較してゆっくりと拡散する自由に拡散する粒子と結合し、例えば、標的分析物は、クエリープローブの拡散係数の約10%未満(例えば、15%未満、14%、13%、12%、11%、10.5%、10.4%、10.3%、10.2%、10.1%、10.0%、9.9%、9.8%、9.7%、9.6%、9.5%、または9.0%またはそれより小さい)の拡散係数を有する。
【0130】
さらに、いくつかの実施形態において、標的分析物は、自由に拡散する粒子と結合させられ、そして標的分析物の位置は、クエリープローブ結合の観察および/または記録とは独立して観察可能および/または記録可能である。例えば、いくつかの実施形態において、検出可能な標識(例えば、フルオロフォア、蛍光タンパク質、量子ドット)は、例えば、標的分析物の検出および局在化のために、標的分析物に共有結合または非共有結合される。従って、いくつかの実施形態において、標的分析物の位置およびクエリープローブ結合事象の位置が、同時にそして独立して測定される。
【0131】
本明細書で使用される場合、用語「感度」は、サンプルが分析物を含む場合にアッセイが分析物について陽性の結果を与える蓋然性を指す。感度は、真陽性結果の数を、真陽性および偽陰性の合計で割ったものとして算出される。感度は、アッセイがいかに良好に分析物を検出するかの尺度である。
【0132】
本明細書で使用される場合、用語「特異性」は、サンプルが分析物を含まない場合にアッセイが陰性の結果を与える蓋然性を指す。特異性は、真陰性結果の数を、真陰性および偽陽性の合計で割ったものとして算出される。特異性は、本発明の方法が、分析物を含まないサンプルを、分析物を含むサンプルからいかに良好に排除するかの尺度である。
【0133】
本明細書で使用される場合、「平衡定数」(Keq)、「平衡会合定数」(Ka)、および「会合結合定数」(または「結合定数」(KB))は、平衡状態にあるAおよびBの以下の結合反応について互換的に使用される:
【0134】
【0135】
ここで、AおよびBは、互いに会合する2つの物体であり(例えば、捕捉プローブおよび分析物、クエリープローブおよび分析物)、そしてKeq=[AB]/([A]×[B])である。解離定数KD=1/KBである。KDは、それが会合するパートナーBに対する1つの結合パートナーAの親和性を記述するのに有用な方法である。例えば、数値KDは、有意な量のAB生じるために必要とされるAまたはBの濃度を表す。Keq=koff/kon;KD=koff/kon。
【0136】
本明細書で使用される場合、互いに会合する2つの物体の生成物(例えば、前記の式に従ったAおよびBからのABの形成)の「有意な量」は、AまたはBの遊離濃度(いずれか小さい方)と等しいかそれより高いABの濃度を指す。
【0137】
本明細書で使用される場合、「ナノモル濃度親和性範囲」は、ナノモル範囲の平衡解離定数KD(例えば、koff/konの比)(例えば、1×10-10~1×10-5Mの解離定数(KD)(例えば、いくつかの実施形態において、1×10-9~1×10-6M))を有する2つの構成要素の会合を指す。解離定数は、モル濃度単位(M)を有する。解離定数が小さければ小さいほど、2つの構成要素(例えば、捕捉プローブおよび分析物;クエリープローブおよび分析物)の間の親和性は高くなる。
【0138】
本明細書で使用される場合、「弱い親和性」または「弱い結合」または「弱い会合」は、約100ナノモル濃度(例えば、約10ナノモル濃度、20ナノモル濃度、30ナノモル濃度、40ナノモル濃度、50ナノモル濃度、60ナノモル濃度、70ナノモル濃度、80ナノモル濃度、90ナノモル濃度、100ナノモル濃度、110ナノモル濃度、120ナノモル濃度、130ナノモル濃度、140ナノモル濃度、150ナノモル濃度、160ナノモル濃度、170ナノモル濃度、180ナノモル濃度、190ナノモル濃度、200ナノモル濃度、300ナノモル濃度、400ナノモル濃度、または500ナノモル濃度)および/または、いくつかの実施形態において、1ナノモル濃度~10マイクロモル濃度の範囲のKDを有する会合を指す。
【0139】
用語「特異的結合」または「特異的に結合」は、互いに会合する2つの構成要素AおよびBの相互作用に関連して使用される場合、溶液中の他の類似の構成要素(例えば、AまたはBではない溶液中の少なくとも1つの他の分子種)とのAまたはBの相互作用についてのKDより小さなKDを有するAおよびBの会合を指す。
【0140】
本明細書で使用される場合、単語「存在」または「不在」(あるいは、「存在する」または「存在しない」)は、特定の物体(例えば、分析物)の量またはレベルを記述するために相対的な意味で使用される。例えば、分析物がサンプル中に「存在」と言われる場合、この分析物のレベルまたは量は、事前に決定された閾値を上回っていることを意味し;逆に、分析物がサンプル中に「存在しない」と言われる場合、この分析物のレベルまたは量は、事前に決定された閾値を下回っていることを意味する。事前に決定された閾値は、分析物を検出するために使用される特定の試験に関連する検出可能性についての閾値、または任意の他の閾値であり得る。分析物がサンプルにおいて「検出」されるる場合、それはサンプル中に「存在」し;分析物が「検出されない」場合、それはサンプルに「存在しない」。さらに、分析物が「検出される」かまたは分析物が「存在する」サンプルは、分析物について陽性であるサンプルである。分析物が「検出されない」かまたは分析物が「存在しない」サンプルは、分析物について陰性であるサンプルである。
【0141】
本明細書で使用される場合、「増加」または「減少」は、変数の事前に測定された値に対する、事前に確立された値に対する、および/または標準対照の値に対する、変数の値の検出可能な(例えば、測定された)正または負の変化を指す。増加は、変数の事前に測定された値、事前に確立された値、および/または標準対照の値に対して、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは50%、さらにより好ましくは2倍、なおより好ましくは少なくとも5倍、そして最も好ましくは少なくとも10倍の正の変化である。同様に、低下は、変数の以前に測定された値、事前に確立された値、および/または標準対照の値の、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは50%、さらにより好ましくは少なくとも80%、そして最も好ましくは少なくとも90%の負の変化である。「より多い」または「より少ない」のような、定量的な変化または差異を示す他の用語は、本明細書において、前記と同じ様式で使用される。
【0142】
用語「検出アッセイ」は、分析物の存在もしくは不在、または分析物の活性もしくは効果を検出するための、あるいは分析物の改変体の存在もしくは不在を検出するためのアッセイを指す。
【0143】
「システム」は、各々の構成要素が全体内の少なくとも1つの他の構成要素と相互作用するか、またはそれに関係付けられる全体を含む、実在のまたは抽象的な、構成要素のセットを示す。
【0144】
いくつかの実施形態において、技術は、抗体構成要素または部分、例えば、抗体またはそのフラグメントもしくは誘導体を含む。本明細書で使用される場合、「抗体」(「免疫グロブリン」(例えば、IgG、IgM、IgA、IgD、IgE)としても知られる)は、ジスルフィド結合によって互いに連結された2つの重鎖、およびその各々がジスルフィド結合によって重鎖に連結された2つの軽鎖を含む。抗体の特異性は、抗体の抗原結合部位(またはパラトープ)と抗原決定基(またはエピトープ)との間の構造的相補性にある。抗原結合部位は、主に超可変または相補性決定領域(CDR)由来の残基から構成される。時折、非超可変領域またはフレームワーク領域由来の残基が、全体的なドメイン構造に、従って、結合部位に影響を及ぼす。いくつかの実施形態は、抗体のフラグメント、例えば、免疫グロブリン分子の少なくとも一部を含んで、例えば、前記分子と抗原との間の特異的相互作用を可能にする、任意のタンパク質またはポリペプチド含有分子を含む。免疫グロブリン分子の部分は、重鎖または軽鎖またはそのリガンド結合部分の少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)、重鎖または軽鎖可変領域、重鎖または軽鎖定常領域、フレームワーク領域、またはその任意の部分を含み得るが、これらに限定されない。そのようなフラグメントは、当該分野で知られているように、そして/または本明細書に記載されるように、酵素切断、合成または組換え技術によって産生され得る。抗体はまた、1つ以上の終止コドンが、天然の終止部位の上流に導入されている抗体遺伝子を使用して、種々の切断形態で産生され得る。抗体の種々の部分は、従来の技術によって化学的に一緒に連結され得るか、または遺伝子工学技術を使用して連続的なタンパク質として調製され得る。
【0145】
抗体のフラグメントとしては、Fab(例えば、パパイン消化による)、F(ab’)2(例えば、ペプシン消化による)、Fab’(例えば、ペプシン消化および部分還元による)、およびFvまたはscFv(例えば、分子生物学的技術による)フラグメントが挙げられるが、これらに限定されない。
【0146】
Fabフラグメントを、抗体をプロテアーゼパパインで処理することによって得ることができる。また、原核発現系または真核発現系のためのベクター中に抗体のFabをコードするDNAを挿入し、そして原核生物または真核生物中にベクターを導入してFabを発現させることによって、Fabを産生してもよい。F(ab’)2を、抗体をプロテアーゼペプシンで処理することによって得てもよい。また、F(ab’)2を、チオエーテル結合またはジスルフィド結合を介してFab’を結合することによって産生することができる。Fabを、F(ab’)2を還元剤、例えばジチオトレイトールで処理することによって得てもよい。また、Fab’を、抗体のFab’フラグメントをコードするDNAを原核生物のための発現ベクターまたは真核生物のための発現ベクター中に挿入し、そしてベクターをその発現のために原核生物または真核生物中に導入することによって産生することができる。Fvフラグメントを、ペプシンによる制限された切断(例えば、4℃およびpH4.0)によって産生してもよい(「冷ペプシン消化」と称する方法)。Fvフラグメントは、強い非共有相互作用によって一緒に保持された重鎖可変ドメイン(VH)および軽鎖可変ドメイン(VL)からなる。scFvフラグメントを、前述のように、VHおよびVLドメインをコードするcDNAを得、scFvをコードするDNAを構築し、原核生物のための発現ベクターまたは真核生物のための発現ベクター中にDNAを挿入し、次いで、発現ベクターを原核生物または真核生物中に導入してscFvを発現させることによって産生してもよい。
【0147】
一般に、抗体を、通常、当該技術分野で現在よく知られている多くの従来の技術を使用して、任意の抗原に対して惹起させることができる。
【0148】
本明細書で使用される場合、用語「結合」は、1つの分子または薬剤が、別の分子または薬剤に、物理的または化学的に結合または接着されている場合を指す。結合の例としては、共有結合および静電複合体化が挙げられる。用語「複合体化される」、「と複合体化される」、および「結合される」は、本明細書において互換的に使用される。
【0149】
本明細書で使用される場合、「安定な相互作用」または「安定に結合した」相互作用への言及は、相互作用の熱力学的平衡条件下で比較的持続的である会合を指す。いくつかの実施形態において、「安定な相互作用」は、約10-9Mより小さなKD、いくつかの実施形態において約10-8Mより小さなKDを有する2つの構成要素間の相互作用である。いくつかの実施形態において、「安定な相互作用」は、1時間あたり1より小さはな解離速度定数koff、いくつかの実施形態において、1分あたり1より小さな解離速度定数koffを有する。いくつかの実施形態において、「安定な相互作用」は、「一過性の相互作用」ではないと定義される。いくつかの実施形態において、「安定な相互作用」は、典型的にはKD値によっては記載されないが、各相互作用当たり約1分より長い(例えば、30秒、35秒、40秒、45秒、50秒、55秒、60秒、65秒、70秒、75秒、80秒、85秒、90秒、95秒、100秒、105秒、110秒、115秒、120秒、125秒、130秒、135秒、140秒、145秒、150秒、155秒、160秒、165秒、170秒、175秒、または180秒)2つの物体間の平均会合期間を含む、共有結合および他の相互作用によって媒介される相互作用を含む。
【0150】
いくつかの実施形態において、「安定な相互作用」と「一過性の相互作用」との区別は、KDおよび/またはkoffおよび/または会合を記載する別の動力学的または熱力学的値のカットオフ値によって決定される。ここで、カットオフは、KDおよび/またはkoffまたは会合を記載する別の動力学的または熱力学的値の絶対的な用語で記載される場合、そうでなければ異なって特徴付けられ得る安定な相互作用と一過性の相互作用とを区別するために使用される。例えば、KD値によって特徴付けられる「安定な相互作用」はまた、さらにより安定である別の相互作用の文脈において「一過性の相互作用」として特徴付けられ得る。当業者は、安定な相互作用および一過性の相互作用の他の相対的な比較、例えば、KD値によって特徴付けられる「一過性の相互作用」はまた、さらにより一過性である(より安定でない)別の相互作用の文脈において「安定な相互作用」として特徴づけられ得ることを理解する。
【0151】
本明細書で使用される場合、「部分」は、例えば、オリゴヌクレオチド、分子、化学基、ドメイン、プローブ、「R」基、ポリペプチドなどの種々の部分のような、何かがそれに分割され得る2つ以上の部分のうちの1つを指す。
【0152】
本明細書で使用される場合、いくつかの実施形態において、「シグナル」は、アッセイされるサンプルの1つ以上の特性(例えば、分析物へのクエリープローブの結合および/または分析物からのクエリープローブの解離)に関連する時間的に変動する量である。シグナルは、時間領域で連続的であり得、または時間領域で不連続であり得る。数学的抽象概念として、連続的時間シグナルの領域は、一組の実数(またはその間隔)であり、そして不連続時間シグナルの領域は、一組の整数(またはその間隔)である。不連続シグナルはしばしば、連続的なシグナルの「デジタルサンプリング」を介して生じる。例えば、音声シグナルは、規則的な間隔(例えば50マイクロ秒毎)で線上の電圧レベルを読み取ることによってデジタル化され得る線上の断続的に変動する電圧からなる。結果として得られる数のストリームは、不連続時間デジタルシグナルとして貯蔵される。いくつかの実施形態において、シグナルは、空間の位置(例えば、x、y座標;例えば、x、y、z座標)の関数として記録される。いくつかの実施形態において、シグナルは、時間の関数として記録される。いくつかの実施形態において、シグナルは、時間および位置の関数として記録される。
【0153】
本明細書で使用される用語「実質的」は、広義の用語であり、そしてその通常の意味(大部分は特定されるものではあるが、必ずしも完全にそうではないことを含むが、これに限定されない)で使用される。
【0154】
本明細書で使用される用語「アルゴリズム」は、広義の用語であり、そしてその通常の意味(例えば、コンピュータ処理を使用して、情報を1つの状態から別の状態に変換することに関与する計算プロセス(例えば、プログラム)を含むが、これに限定されない)で使用される。
【0155】
本明細書で使用される場合、用語「多孔質媒体」または「多孔質材料」は、細孔または空隙を含む材料を指す。多孔質材料は、細孔サイズよりも小さな特定の物質のみを通過させ、一方、細孔サイズよりも大きな他の物質をブロックする特性を有する。多孔質媒体は、分子、原子、および/またはイオン性ふるいとして機能する。
【0156】
本明細書で使用される場合、用語「ナノ孔質」は、100ナノメートルまたはそれより小さなサイズを有する細孔を含む材料を指す。
【0157】
本明細書で使用される場合、用語「微孔質」は、0.2~2nmのサイズを有する細孔を含む材料を指す。
【0158】
本明細書で使用される場合、用語「メソ孔質」は、2~50nmのサイズを有する細孔を含む材料を指す。
【0159】
本明細書で使用される場合、用語「マクロ孔質」は、50~1000nmのサイズを有する細孔を含む材料を指す。
【0160】
(水性二相系)
技術の実施形態は、分析物を濃縮するための水性二相系(ATPS)の使用に関する。ATPSは、1955年のAlbertssonのパイオニア研究以来(例えば、Walter, H. Partitioning In Aqueous Two - Phase System: Theory, Methods, Uses, and Applications To Biotechnology. (Elsevier, 2012)(参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと)、例えば、タンパク質、核酸、ウイルス、オルガネラ、および細胞を含む種々の調製用および分析用手順のために、研究されている。それ以来、多くの型のATPSが記載されている。例えば、2つの有機ポリマー(ポリマー-ポリマー系)、ポリマーおよび1つ以上の塩(ポリマー-塩系)、イオン性液体、短鎖アルコール、イオン性または非イオン性界面活性剤を含むミセルまたは逆ミセル(例えば、Iqbal, M. et al. Aqueous two-phase system (ATPS): an overview and advances in its applications. Biol Proced Online 18, (2016)(参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと)、およびコアセルベート(例えば、Jia, Hentrich, & Szostak, Rapid RNA Exchange in Aqueous Two-Phase System and Coacervate Droplets. Origins of Life and Evolution of Biospheres 44, 1-12 (2014)(参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。
【0161】
最も一般的なポリマー-ポリマー系は、ポリエチレングリコール(PEG)およびデキストラン、またはPEGおよび硫酸デキストラン塩(例えば、硫酸デキストランナトリウム)を含むが、いくつかの他のものが記載されている。例えば、熱分離性ポリマーを含むATPSが報告されている(例えば、Persson, et al. Aqueous polymer two-phase systems formed by new thermoseparating polymers. Bioseparation 9, 105-116 (2000)(参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと)、例えば、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのコポリマー(EO-PO)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(ポリ-NIPAM)、ポリビニルカプロラクタム(ポリ-VCL)、およびN-イソプロピルアクリルアミドおよびビニルカプロラクタムとビニルイミダゾールとのコポリマー(それぞれ、ポリ(NIPAM-VI)およびポリ(VCL-VI))。ポリマー-塩系の例としては、例えば、以下が挙げられる:PEG及び塩、例えば、リン酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、クエン酸ナトリウム(例えば、Iqbal、前出を参照のこと)、または硫酸マグネシウム(例えば、Mattiasson, B. Applications of aqueous two-phase systems in biotechnology. Trends in Biotechnology 1, 16-20 (1983)(参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと)、時として、塩化ナトリウム又は塩化カリウムのような他の付加塩を含む(例えば、Gunduz & Korkmaz Bovine serum albumin partitioning in an aqueous two-phase system: Effect of pH and sodium chloride concentration. Journal of Chromatography B: Biomedical Sciences and Applications 743, 255-258 (2000)(参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。コアセルベートの一例は、ATP/ポリ-L-リジンコアセルベート系であり、これは、短いRNA分子を分配することが示されている(例えば、Jia and Szostak、前出を参照のこと)。2より多い相を含む系もまた記載されている(例えば、Hatti-Kaul, R. Aqueous two-phase systems. Mol Biotechnol 19, 269-277 (2001)(参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。
【0162】
PEG-デキストランまたはPEG-塩系のようなポリマー含有ATPSにおいては、相分離挙動(1つまたは2つの相を生じさせる組成間の境界を示すバイノーダル線の形状および位置によって反映される)は、pHおよびポリマー分子量(例えば、Alves et al. Aqueous Two-Phase Systems of Poly(ethylene glycol) and Sodium Citrate: Experimental Results and Modeling. J. Chem. Eng. Data 53, 1587-1594 (2008)(参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと)、ポリマーまたは塩の濃度(例えば、Azevedo et al. Partitioning of human antibodies in polyethylene glycol-sodium citrate aqueous two-phase systems. Separation and Purification Technology 65, 14-21 (2009)(参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと)、および温度(例えば、Persson、前出を参照のこと)のような因子によって影響され得る。
【0163】
一般に、所定のATPS中に溶解または懸濁された生体分子または生体分子複合体(核酸、炭水化物、タンパク質、ペプチド、ウイルスを含む)は、一方の相において他方の相とは異なる化学ポテンシャルを示し、平衡状態にある2つの相のうちの1つにおいてより高い濃度の生体分子を生じる(例えば、1より大きいかまたは小さい分配係数;例えば、Iqbal、前出を参照のこと)。混合物内の生体分子が、同じ混合物中の不純物よりもATPSの2つの相のうちの1つにより強く分配する場合、ATPSは、不純物からの生体分子の精製のために使用され得る。例えば、PEG/デキストラン、PEG/クエン酸ナトリウム、およびPEG/硫酸アンモニウム系は、複合的な混合物からのプラスミドDNAの分離のために(例えば、Gomes et al. Purification of plasmid DNA with aqueous two phase systems of PEG 600 and sodium citrate/ammonium sulfate. Separation and Purification Technology 65, 22-30 (2009)(参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと)、または一本鎖および二本鎖プラスミドDNAの分離のために(例えば、Alberts, B. M. Efficient Separation of Single-Stranded and Double-Stranded Deoxyribonucleic Acid in a Dextran-Polyethylene Glycol Two-Phase System. Biochemistry 6, 2527-2532 (1967)(参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと)利用されている。
【0164】
硫酸デキストランナトリウム、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、およびポリエチレングリコールを含むATPSは、ウイルス粒子の精製および濃縮において有用であることが報告されている(例えば、Philipson et al. The purification and concentration of viruses by aqueous polymer phase systems. Virology 11, 553-571 (1960)(参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。いくつかの場合において、添加物(例えば、塩または親和性リガンド)のpHまたは濃度が、2つの相のうちの1つへの生体分子の分配に影響を及ぼすことが示されている。例えば、pHおよび塩化ナトリウム濃度は、PEG/クエン酸ナトリウム系におけるウシ血清アルブミンの分配に影響を及ぼす(例えば、Gundus、前出を参照のこと)。PEG/硫酸ナトリウム系において、pH、PEG分子量、および塩(例えば、リン酸ナトリウムおよび塩化カリウム)の濃度が、一本鎖蛍光ピリミジンDNAオリゴヌクレオチドの分割に有意に影響を及ぼすことが見出された(例えば、Nazer et al. Partitioning of pyrimidine single stranded oligonucleotide using polyethylene glycol - sodium sulfate aqueous two-phase systems; experimental and modeling. Fluid Phase Equilibria 432, 45-53 (2017)(参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。親和性リガンドでの、ATPS形成成分(PEGまたはデキストランポリマーのような)の1つの共有結合性修飾もまた、生体分子の1つの相への分配を誘導または増強するために用いられている(親和性分配と称するストラテジー)(例えば、Walter & Krob Hydrophobic affinity partition in aqueous two-phase systems containing polyethylene glycol)-palmitate of rightside-out and inside-out vesicles from human erythrocyte membranes. FEBS Letters 61, 290-293(参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。
【0165】
ATPSは天然産物の精製および単離のような調製適用のために広範に研究されていたが、それらは表面に基づく分析適用のためにはめったに用いられていない。1つの例外は、多重化ELISAにおける交差反応性を防止するための、表面の分離した領域上に検出試薬をトラップするためのPEG-デキストラン系の使用の報告である(例えば、Frampton, J. P. et al. Aqueous two-phase system patterning of detection antibody solutions for cross-reaction-free multiplex ELISA. Scientific Reports 4, 4878 (2014); Simon, A., Frampton, J., White, J. & Takayama, S. Systems and methods for multiplex solution assays. (2014)(参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。PEG/デキストランATPSは、核酸分析物とは異なる相にPCR阻害剤を分配することによって、ソフトチーズにおけるListeria monocytogenesについてのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)アッセイの感度を増加させることが報告された(例えば、Lantz et al. Enhanced sensitivity in PCR detection of Listeria monocytogenes in soft cheese through use of an aqueous two-phase system as a sample preparation method. Appl. Environ. Microbiol. 60, 3416-3418 (1994)(参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと);類似の結果が、ヒト糞便におけるHelicobacter pyloriのPCR検出のための調製工程としてのPEG/デキストラン系の使用について報告された(例えば、前出を参照のこと)。他の報告された分析適用としては、タンパク質の不均一性、タンパク質間またはタンパク質と低分子量化合物との間の相互作用、およびタンパク質の物理化学的特性に対するpHの効果の研究が挙げられる(例えば、Walter, H. Partitioning In Aqueous Two - Phase System: Theory, Methods, Uses, and Applications To Biotechnology. (Elsevier, 2012)(参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。
【0166】
生体分子、細胞、ウイルス粒子、またはオルガネラを2つの相のうちの1つ(典型的には、より小さな体積の相)に濃縮するATPSの能力は、本明細書中に記載される技術の開発の前に記述されていたが(Iqbal、前出)、ATPSが一般に生体分子分析物について、または特に核酸について、有意な倍数で(例えば、10倍超)、表面に基づく生体分子アッセイの感度を増加させるために有効なストラテジーを提供するかどうかは不明であった。例えば、高イオン強度(例えば、10重量%超のクエン酸ナトリウム)またはポリマーリッチ相の高粘度(例えば、10重量%超のPEGまたは5重量%超のデキストラン)の効果が、例えば、分析物捕捉に関与する生化学構成要素を変性させることによって、分析物の凝集を誘導することによって、捕捉リガンドに対する分析物の親和性を低下させることによって、または捕捉のための表面への分析物の拡散を遅延させることによって、表面に基づくアッセイにおける分析物の表面捕捉に負に影響を及ぼし得るかどうかは不明であった。
【0167】
以前の技術とは対照的に、本明細書において提供される技術の実施形態の開発の間に行われた実験は、特に、分析物溶液が、最終混合物の全体積を制限するために、ATPS形成成分の凍結乾燥(乾燥)混合物に添加され、従って、分析物が元の混合物と比較して濃縮される倍数が増加する場合に、分析物リッチ相を分析物捕捉のための表面と接触させるATPSを使用する事前濃縮工程を使用することによって、表面に基づく単一分子アッセイの感度が、1桁超(例えば、約10~50倍)改善されることを示した。さらに、これらの実験の間に収集されたデータは、PEG、クエン酸ナトリウム、および塩化ナトリウムを含むATPSが、それらの高い分配係数(例えば、>1000)、分析物リッチ相の相対的に低い粘度、および効率的な表面捕捉との適合性に起因して、マイクロRNAおよび短いDNAフラグメント(例えば、160塩基対と等しいかそれ未満)を含む小核酸についての表面に基づくアッセイの感度を増加させるために特に有効であることを示した。技術の実施形態の開発の間に行われた実験によって、記載されている種々のATPS、およびATPSを使用して分配され得る分析物の多様性を考慮すれば、技術が、表面に基づくアッセイに有用であるいくつかの他のATPS組成物を意図していることが示された。従って、ATPSは、所定の分析物の分配および表面捕捉を最大にするように、以前に記載された系から選択され得る。本明細書に記載される技術内に含まれる有用なATPS系の共通の特徴は、目的の分析物について0.1未満または10超の分配係数を生じるATPSである。これは、例えば、それらが分析物について最大の潜在的濃縮倍率を生じるからである。
【0168】
上述のように、ポリエチレングリコール(PEG)/クエン酸ナトリウム(SC)(例えば、Gomes et al. (2009) "Purification of plasmid DNA with aqueous two phase systems of PEG 600 and sodium citrate/ammonium sulfate" Sep. Purif. Technol. 65: 22-30(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと)、PEG/硫酸ナトリウム(例えば、Nazer et al. (2017) “Partitioning of pyrimidine single stranded oligonucleotide using polyethylene glycol - sodium sulfate aqueous two-phase systems; experimental and modeling" Fluid Phase Equilibria 432: 45-53を参照のこと)、およびPEG/デキストラン(例えば、Alberts、前出(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと)を含むATPS組成物は、DNAを選択的に分配することが示されている。プラスミドDNAは、一方の相に対して他方の相よりも100倍~1000倍ほど大きな選択性を示すことが示されているが(例えば、Alberts、前出を参照のこと;例えば、Nazer、前出を参照のこと(これらの各々はその全体が参照により本明細書に組み込まれる))、短い核酸(例えば、生体液において見出されるDNAフラグメント)は、ATPSの相への等しく高い分配係数を示すとは予想されなかった。
【0169】
水性二相系は以前に記載されているが、本明細書に記載される技術は、バルク生体液(例えば、尿)中の稀なおよび/または希薄な分析物(例えば、腫瘍DNA)を分析するためのATPSの使用に関する。さらに、技術は、固定化および分析のために非常に希薄な分析物を表面に輸送するためにATPSを使用することに関する(例えば、SiMREPSのような単一分子技術によって)。特に、技術の実施形態は、PEG/クエン酸ナトリウムATPSにおける塩化ナトリウムの使用を提供して、核酸(例えば、低分子量DNA(例えば、200未満の塩基対またはヌクレオチド(例えば、200未満、190、180、170、160、150、140、130、120、110、100、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、または10未満のntまたはbp)を含むDNAフラグメント))の塩リッチ相(例えば、100超の分配係数を有する)への分配を増強する。本明細書に記載の技術の開発の間に実験を行い、技術が、分析物の少なくとも50%を保持して、DNAの約100倍の濃縮を提供することが示された。さらに、技術の実施形態は、5分未満のうちのATPSによる分析物(例えば、核酸)の濃縮を提供する。
【0170】
比較すると、DNAのアルコール媒介(例えば、エタノールまたはブタノール媒介)沈殿は、より労働集約的であり、そして時間がかかる。特に、DNAの標準的なエタノール沈殿は、2時間超を含み(DNAの沈殿、遠心分離、および再懸濁のために)、そして水溶液中での使用のために意図される多くの表面化学に適合性でない有機溶媒の使用を必要とすることに加えて、摩耗によって固体支持体を損傷し得る結晶性固体を生じる。さらに、尿から腫瘍DNAを分析するために、カラム法(例えば、Q-SEPHAROSE樹脂への結合およびそれからの溶出)を使用したDNAの抽出が使用されているが、これらの既存のカラム技術は、本明細書に記載されるATPS技術よりも労働集約的であり、そして時間がかかり、そしてわずか数マイクロリットルの体積への分析物の濃縮を容易には可能にしない。
【0171】
いくつかの実施形態において、技術は、2017年12月14日に出願された米国仮特許出願第62/598,802号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるようなATPSの使用を含む。
【0172】
(SiMREPS)
本明細書中で使用される場合、用語「平衡ポアソンサンプリングを介する単一分子認識」およびその略語「SiMREPS」は、動的フィンガープリンティングによって生体液中の個々のマイクロRNA分子を同定およびカウントするための、増幅を行わない単一分子検出アプローチをいう。その技術は、例えば、米国特許出願シリアルNo.14/589,467;国際特許出願No.PCT/US2015/044650;国際特許出願No.PCT/US2017/016977;および米国仮出願シリアルNo.62/468,578に記載されており、それぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。Johnson-Buck et al. (2015) “Kinetic fingerprinting to identify and count single nucleic acids” Nature Biotechnology 33: 730-32も参照されたい(これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0173】
手短に言えば、SiMREPS技術は、表面捕捉された分析物(例えば、核酸、タンパク質等)への蛍光プローブの反復結合を直接観察することを含み、これは、特異的な(例えば、核酸、配列特異的な)動的フィンガープリントを生成する。動的フィンガープリントは、単一分子分解能で、高い信頼性で分析物を同定する。動的フィンガープリントは、熱力学的特異性バリアによって制限されるこれまでの技術を克服し、それによって偽陽性を最小化および/または排除する。したがって、SiMREPS技術は、例えば、希少なまたは低存在量の変異体DNA対立遺伝子のような希少な分析物を検出する際に使用される、非常に高い特異性を提供する。以前の研究は、SiMREPSが単一ヌクレオチド識別が可能であることを示している(例えば、Johnson-Buck et al. (2015) “Kinetic fingerprinting to identify and count single nucleic acids” Nat. Biotechnol. 33: 730-32;Su et al. (2017) “Single-Molecule Counting of Point Mutations by Transient DNA Binding” Sci Rep 7: 43824を参照のこと(これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる))。
【0174】
この技術は、例えば、類似の分析物の存在下での、およびいくつかの実施形態において、バックグラウンドノイズの存在下での、標的分析物の検出を提供する。いくつかの実施形態において、標的分析物へのクエリープローブの一過性の結合から生じるシグナルは、非結合クエリープローブによって生成されるシグナルと区別可能である(例えば、結合事象の間のシグナル強度の局所的変化を観察、モニタリング、および/または記録することによって)。いくつかの実施形態において、クエリープローブ(例えば、蛍光標識クエリープローブ)の標的分析物への一過性の結合の観察は、例えば、全反射蛍光(TIRF:total internal reflection fluorescence)または近TIRF顕微鏡法、ゼロモード導波路(ZMW:zero-mode waveguide)、光学シート顕微鏡法、誘導放出抑制(STED:stimulated emission depletion)顕微鏡法、または共焦点顕微鏡法等の技術によって提供される。いくつかの実施形態において、本明細書で提供される技術は、標的分析物に結合していないときに消光される蛍光発光、および/または標的分析物に結合しているときに脱消光(dequench)される蛍光発光を有するクエリープローブを使用する。
【0175】
この技術は、例えば、平面または体積内の特定の空間座標において観察される、面積の個々の領域および/または体積の個々の領域内の分析物へのクエリープローブの一時的な結合の位置を特定することおよび/または観察することを含む。いくつかの実施形態において、(例えば、限定されたシグナル、検出器ノイズ、または検出器における空間ビニングによる)結合または解離事象の空間座標を決定する際のエラーは、固定化された(例えば、表面結合した)標的分析物間の平均間隔に対して小さい(例えば、最小化される、排除される)。広視野蛍光顕微鏡法の使用を含むいくつかの実施形態において、固定化された(例えば、表面結合した)標的分析物間の平均距離よりも大きくない検体平面において有効な検出器ピクセル寸法を使用することによって、測定エラーが最小化されるおよび/または排除され、多くの蛍光光子(いくつかの実施形態において100超、例えば、80超、85、90、95、100、105、110、115、120、125、もしくは130またはそれより多く)が検出の時点ごとに収集される。
【0176】
いくつかの実施形態において、検出可能な(例えば、蛍光)クエリープローブは、それが固体支持体の表面に近い場合に(例えば、固体支持体の表面の約100nm以内)、蛍光発光シグナルを生成する。結合していない場合、クエリープローブは迅速に拡散し、その結果個々に検出されない;したがって、結合していない状態にある場合、クエリープローブは、低レベルの拡散バックグラウンド蛍光を生成する。その結果、いくつかの実施形態において、結合クエリープローブの検出は、全反射照明蛍光顕微鏡法(TIRF:total internal reflection fluorescence microscopy)、HiLo顕微鏡法(例えば、US20090084980、EP2300983 B1、WO2014018584 A1、WO2014018584 A1を参照のこと、これらは、参照により本明細書に組み込まれる)、共焦点走査顕微鏡法、または固体支持体の表面付近または表面上のそれらのクエリープローブ分子のみを照射する(例えば、励起する)照明スキームを含む他の技術の使用を含む。したがって、いくつかの実施形態において、表面付近または表面上で固定化された標的に結合したクエリープローブのみが、単一分子に由来するものとして確認することができる点様発光シグナル(例えば、「スポット」)を生成する。
【0177】
いくつかの実施形態において、クエリープローブは、発光波長を有する蛍光標識を含む。蛍光標識の発光波長での蛍光発光の検出は、クエリープローブが固定化された標的分析物に結合していることを示す。クエリープローブの標的分析物への結合は、「結合事象」である。本技術のいくつかの実施形態において、結合事象は、規定された閾値よりも大きい測定強度を有する蛍光発光を有する。例えば、いくつかの実施形態において、結合事象は、バックグラウンドの蛍光強度(例えば、標的分析物の非存在下で観察される蛍光強度)を超える蛍光強度を有する。いくつかの実施形態において、結合事象は、バックグラウンドの蛍光強度(例えば、標的分析物の非存在下で観察される蛍光強度)を少なくとも1、2、3、4またはそれより多い標準偏差である蛍光強度を有する。いくつかの実施形態において、結合事象は、バックグラウンドの蛍光強度(例えば、標的分析物の非存在下で観察される蛍光強度)を少なくとも2標準偏差上回る蛍光強度を有する。いくつかの実施形態において、結合事象は、バックグラウンドの蛍光強度(例えば、標的分析物の非存在下で観察される平均蛍光強度)の少なくとも1.5倍、2倍、3倍、4倍、または5倍である蛍光強度を有する。
【0178】
したがって、いくつかの実施形態において、規定された閾値を超える強度(例えば、バックグラウンドの強度よりも少なくとも2標準偏差大きい)を有するクエリープローブの発光波長で蛍光を検出することは、結合事象が(例えば、標的分析物が固定化されている固体支持体上の別個の位置で)起こったことを示す。また、いくつかの実施形態において、規定された閾値を超える強度(例えば、バックグラウンドの強度よりも少なくとも2標準偏差大きい)を有するクエリープローブの発光波長で蛍光を検出することは、結合事象が開始したことを示す。したがって、いくつかの実施形態において、規定された閾値を超える強度(例えば、バックグラウンドの強度よりも少なくとも2標準偏差大きい)を有するクエリープローブの発光波長での蛍光の欠如を検出することは、結合事象が終了した(例えば、クエリープローブが標的分析物から解離した)ことを示す。結合事象が開始した時点と結合事象が終了した時点との間の時間の長さ(例えば、規定された閾値を超える強度(例えば、バックグラウンドの強度よりも少なくとも2標準偏差大きい)を有する蛍光プローブの発光波長での蛍光が検出される時間の長さ)は、結合事象の滞留時間(dwell time)である。「遷移」とは、クエリープローブの標的分析物への結合と解離(例えば、オン/オフ事象)、例えば、結合された状態から解離するクエリープローブまたは結合していない状態から標的分析物と結合するクエリープローブをいう。
【0179】
本技術による方法は、規定された時間間隔中に、固体支持体上の各別個の位置(例えば、x、y座標によって同定される位置)で生じるクエリープローブの結合事象の数をカウントすることを含み、前記規定された時間間隔は、「獲得時間(acquisition time)」(例えば、数十秒~数百秒~数千秒、例えば、5秒、10秒、15秒、20秒、25秒、30秒、35秒、40秒、45秒、50秒、55秒、または60秒;例えば、5分、10分、15分、20分、25分、30分、35分、40分、45分、50分、55分、または0分;例えば、1時間、1.5時間、2時間、2.5時間、または3時間である、時間間隔)である。いくつかの実施形態において、獲得時間は、約1秒~10秒~1分~10分(例えば、約1秒~100秒、例えば、1秒、2秒、3秒、4秒、5秒、6秒、7秒、8秒、9秒、10秒、11秒、12秒、13秒、14秒、15秒、16秒、17秒、18秒、19秒、20秒、30秒、40秒、50秒、60秒、70秒、80秒、90秒、または100秒、例えば、1分~100分、例えば、1分、2分、3分、4分、5分、6分、7分、8分、9分、10分、11分、12分、13分、14分、15分、16分、17分、18分、19分、20分、30分、40分、50分、60分、70分、80分、90分、または100分)である。
【0180】
さらに、結合事象の間にクエリープローブが標的分析物に結合したままである時間の長さは、結合事象の「滞留時間」である。獲得時間中に検出された結合事象の数および/または結合事象について記録された滞留時間の長さは、標的分析物に結合しているクエリープローブの特徴であり、したがって、標的分析物が前記別個の位置で固定化され、その結果、標的分析物がサンプル中に存在するという指標を提供する。
【0181】
クエリープローブの固定化された標的分析物への結合および/またはクエリープローブの固定化された標的分析物からの解離は、(例えば、蛍光プローブを励起するために光源を使用して、および結合クエリープローブからの蛍光発光を例えば、蛍光顕微鏡を使用して検出して)モニターされ、および/または規定された時間間隔中(例えば、獲得時間中)に記録される。獲得時間中にクエリープローブが核酸に結合する回数、並びに/または各結合事象中にクエリープローブが核酸に結合したままである時間の長さおよび各結合事象の間でクエリープローブが核酸に結合しないままである時間の長さ(例えば、結合状態および非結合状態それぞれにおける「滞留時間」)は、(例えば、隠れマルコフモデルおよびポアソン統計を使用してデータを分析するために)例えば、コンピュータおよびソフトウェアの使用によって決定される。
【0182】
いくつかの実施形態において、陽性対照サンプルおよび/または陰性対照サンプルが測定される(例えば、標的を含むまたは含まないことが知られている対照サンプル)。陰性対照サンプルにおいて検出される蛍光は、「バックグラウンド蛍光」または「バックグラウンド(蛍光)強度」または「ベースライン」である。
【0183】
いくつかの実施形態において、クエリープローブの発光波長での蛍光強度の測定値を含むデータは、時間の関数として記録される。いくつかの実施形態において、結合事象の数および結合事象の滞留時間(例えば、各固定化された分析物についての)は、データから決定される(例えば、蛍光強度が閾値バックグラウンド蛍光強度を超える回数および時間の長さを決定することによって)。いくつかの実施形態において、遷移(例えば、1つ以上のクエリープローブの結合および解離)は、標的分析物が固定化される固体支持体上の各別個の位置についてカウントされる。いくつかの実施形態において、遷移の閾値数が、固体支持体上の別個の位置における標的分析物の存在を、バックグラウンドシグナル、非標的分析物、および/またはクエリープローブの偽結合と区別するために使用される。
【0184】
いくつかの実施形態において、各固定化標的についての遷移の数の分布が決定され、例えば、観察される各固定化分析物について遷移の数がカウントされる。いくつかの実施形態において、ヒストグラムが生成される。いくつかの実施形態において、分布の特徴的なパラメータが決定され、例えば、分布の平均、中央値、ピーク、形状等が決定される。いくつかの実施形態において、データおよび/またはパラメータ(例えば、蛍光データ(例えば、時間領域における蛍光データ)、動態学的データ、分布の特性パラメータ等)は、例えば、人工知能、パターン認識、機械学習、統計的推論、神経網等を使用して、データにおけるパターンおよび規則性を認識するアルゴリズムによって分析される。いくつかの実施形態において、前記分析は頻度分析の使用を含み、いくつかの実施形態において、前記分析はベイズ分析の使用を含む。いくつかの実施形態において、パターン認識システムは、既知の「訓練」データを使用して(例えば、教師あり学習を使用して)訓練され、いくつかの実施形態において、アルゴリズムは、今まで知られていなかったパターンを発見するために使用される(例えば、教師なし学習)。例えば、Duda, et al. (2001) Pattern classification (2nd edition), Wiley, New York;Bishop (2006) Pattern Recognition and Machine Learning, Springerを参照されたい。
【0185】
特定のパターンが、分析物の検出、定量化、および同定における使用を見出す特定の分析物の「フィンガープリント」を提供するように、パターン認識(例えば、訓練セット、教師あり学習、教師なし学習、および未知のサンプルの分析を使用する)は、同定されたパターンを分析物と関連付ける。
【0186】
いくつかの実施形態において、標的分析物から生成される分布は、非標的分析物から生成される分布、または標的分析物の非存在下で生成される分布とは有意に異なる。いくつかの実施形態において、遷移の平均数が、複数の固定化された標的分析物について決定される。いくつかの実施形態において、標的分析物を含むサンプルについて観察される遷移の平均数が、時間の関数としてほぼ直線的に関連付けられ、正の勾配を有する(例えば、遷移の平均数は、時間の関数としてほぼ直線的に増加する)。
【0187】
いくつかの実施形態において、固体支持体上の各別個の位置における時間の関数として生じる遷移の確率を決定するために、データは、統計(例えば、ポアソン統計)を使用して処理される。いくつかの特定の実施形態において、固体支持体上の別個の位置における時間の関数として生じる比較的一定の確率の遷移事象は、固体支持体上の前記別個の位置における標的分析物の存在を示す。いくつかの実施形態において、事象数および経過時間に関連する相関係数は、固体支持体上の別個の位置における時間の関数として生じる遷移事象の確率から計算される。いくつかの実施形態において、固体支持体上の別個の位置における時間の関数として起こる遷移事象の確率から計算される場合に0.95を上回る事象数および経過時間に関連する相関係数は、固体支持体上の前記別個の位置における標的分析物の存在を示す。
【0188】
いくつかの実施形態において、結合クエリープローブ(τon)および非結合クエリープローブ(τoff)の滞留時間は、サンプル中の標的分析物の存在を同定するために、並びに/あるいは標的分析物を含むサンプルを、非標的分析物を含むサンプルおよび/または標的分析物を含まないサンプルから区別するために、使用される。例えば、標的分析物についのτonは非標的分析物についのτonよりも大きく、標的分析物についのτoffは非標的分析物についのτoffよりも小さい。いくつかの実施形態において、陰性対照およびサンプルについのτonとτoffとを測定することは、サンプル中の標的分析物の有無を示す。いくつかの実施形態において、例えば、対照(例えば、陽性および/または陰性対照)および標的分析物を含むことが疑われるサンプルについて、固相支持体上にイメージングされた複数のスポットのそれぞれについての複数のτonおよびτoff値が決定される。いくつかの実施形態において、例えば、対照(例えば、陽性および/または陰性対照)および標的分析物を含むと疑われるサンプルについて、固相支持体上にイメージングされた複数のスポットのそれぞれについての平均τonおよび/またはτoffが決定される。いくつかの実施形態において、全てのイメージングされたスポットについてのτon対τoffのプロット(例えば、平均τonおよびτoff、時間平均τonおよびτoff等)は、サンプル中の標的分析物の有無を示す。
【0189】
本明細書中に記載されるように、この技術は、動態学的検出技術によって分析物を検出する。したがって、本技術の特定の実施形態は、クエリープローブと検出されるべき分析物との相互作用の反応速度論を分析することによって分析物を検出することに関する。クエリープローブQ(例えば、平衡濃度[Q]における)と標的分析物T(例えば、平衡濃度[T]における)との相互作用について、反応速度定数konは、分析物TにハイブリダイズしたプローブQを含む複合体QTの時間依存的な形成を説明する。特定の実施形態において、QT複合体の形成は、クエリープローブの濃度に依存し且つM-1分-1(または同様のもの)の単位を有する二次反応速度定数に関連するが、QT複合体の形成は、QT複合体の形成に関連する擬似一次反応速度定数であるkonによって十分に説明される。したがって、本明細書中で使用される場合、konは、見かけ上の(「擬似」)一次反応速度定数である。
【0190】
同様に、反応速度定数kOFFは、複合体QTのプローブQおよび分析物Tへの時間依存的な解離を説明する。反応速度(Kinetic rate)は、本明細書中では通常、分-1または秒-1の単位において提供される。結合状態(τon)におけるクエリープローブQの「滞留時間」は、分析物Tに結合してQT複合体を形成するクエリープローブQの各事例の間に、分析物TにプローブQがハイブリダイズされる時間間隔(例えば、時間の長さ)である。非結合状態(τoff)におけるクエリープローブQの「滞留時間」は、分析物に結合してQT複合体を形成するクエリープローブQの各事例の間に、分析物TにプローブQがハイブリダイズされない時間間隔(例えば、時間の長さ)である(例えば、クエリープローブQの標的分析物Tへの連続的な結合事象の間に、標的分析物TからクエリープローブQが解離される時間)。滞留時間は、多数の結合事象および非結合事象にわたって積分する平均または加重平均として提供されてもよい。
【0191】
さらに、いくつかの実施形態において、プローブ(例えば、検出可能に標識されたクエリープローブ(例えば、蛍光プローブ))の標的分析物への反復の確率論的結合は、単位時間当たり一定の確率で起こるポアソンプロセスとしてモデル化され、単位時間当たりの結合事象および解離事象の回数における標準偏差(Nb+d)は、(Nb+d)1/2として増加する。したがって、統計的ノイズは、観測時間が増加すると、より小さい割合のNb+dになる。したがって、標的結合と標的外結合との間の識別を達成するために、いくつかの実施形態において、観察は必要に応じて延長される。また、捕捉時間が増加するにつれて、Nb+dヒストグラム中のシグナルピークとバックグランドピークとはますます分離され、シグナル分布の幅は、Nb+dの平方根として増加し、速度論的モンテカルロシミュレーション(kinetic Monte Carlo simulation)と一致する。
【0192】
さらに、いくつかの実施形態において、アッセイ条件は、バックグラウンド結合から標的分析物へのクエリープローブ結合事象を識別することを改善するために、動態挙動を合わせるように制御される。例えば、いくつかの実施形態において、本技術は、例えば、標的分析物と弱く相互作用するように設計されたクエリープローブを使用すること(例えば、ナノモル濃度の親和性レンジで);クエリープローブが標的分析物と弱く相互作用するように温度を制御すること;溶液条件、例えば、イオン強度、イオン組成、カオトロピック剤の添加、および競合プローブの添加を制御すること等のアッセイ条件の制御を含む。
【0193】
いくつかの実施形態は、反復性のクエリープローブ結合によって分析物を同定する方法を提供する。いくつかの実施形態において、方法は、分析物を固体支持体に固定化することを含む。いくつかの実施形態において、固体支持体は、表面(例えば、実質的に平坦な表面、丸い表面)、例えば、バルク溶液(例えば、分析物を含むバルク溶液)と接触する表面である。いくつかの実施形態において、固体支持体は、自由に拡散可能な固体支持体(例えば、ビーズ、コロイド粒子、例えば、約10~1000nm(例えば、10nm、20nm、30nm、40nm、50nm、60nm、70nm、80nm、90nm、100nm、110nm、120nm、130nm、140nm、150nm、200nm、250nm、300nm、350nm、400nm、450nm、500nm、550nm、600nm、650nm、700nm、750nm、800nm、850nm、900nm、950nm、または1000nm)の直径を有するコロイド粒子)であり、当該固体支持体は、例えば、バルク溶液(例えば、分析物を含むバルク溶液)内で自由に拡散する。いくつかの実施形態において、分析物を固体支持体に固定化することは、固体支持体と分析物との間の共有結合性の相互作用を含む。いくつかの実施形態において、分析物を固体支持体に固定化することは、固体支持体と分析物との間の非共有結合性の相互作用を含む。いくつかの実施形態において、分析物(例えば、分子、例えば、タンパク質、ペプチド、核酸、小分子、脂質、代謝物、薬物等の分子)は表面に安定に固定化され、方法は、クエリープローブの標的分析物への反復性の(例えば、一過性、低親和性の)結合を含む。いくつかの実施形態において、方法は、クエリープローブの標的分析物への反復性の(例えば、一過性、低親和性の)結合を検出することを含む。いくつかの実施形態において、方法は、分析物に結合するクエリープローブから生成されるシグナル(例えば、時間の関数としてのクエリープローブシグナルのデータセット)および分析物に結合するクエリープローブの表面上の空間位置を説明する情報(例えば、座標、例えば、x座標、y座標)を含むデータセットを生成することを含む。いくつかの実施形態において、前記データセットは、例えば、クエリープローブの結合事象の空間分解能を改善するために、処理される(例えば、操作される、変換される、視覚化される等)。例えば、特定の実施形態において、前記データセット(例えば、時間の関数としてのクエリープローブシグナルおよび分析物に結合するクエリープローブの表面上の空間位置を説明する情報(例えば、座標、例えば、x座標、y座標)を含む)は、処理に供される。いくつかの実施形態において、処理は、時系列データの各フレーム内のクエリープローブの結合事象または解離事象を示す示差強度プロファイル(differential intensity profile)を生成するためのフレーム毎の減算プロセスを含む。本明細書に記載される技術の開発中に収集されたデータは、示差強度プロファイルがクエリープローブ結合シグナル対位置マップよりも高い分解能を有することを示す。いくつかの実施形態において、各クエリープローブの結合事象および/または解離事象の空間位置(例えば、x座標、y座標)を決定した後、複数の事象を空間位置に従ってクラスタ化し、各クラスタ内の事象の動態を統計的分析に供して、事象のクラスタが所与の標的分析物に由来するかどうかを決定する。
【0194】
例えば、1つ以上の表面固定化されたまたは拡散している標的分析物を定量するための方法のいくつかの実施形態は、例えば、単一分子感度で、固定化標的分析物に対する1つ以上の一時的に結合するクエリープローブのシグナルを測定することを含む、1つ以上のステップを包含する。いくつかの実施形態において、方法は、クエリープローブ結合とは独立して標的分析物を追跡すること(例えば、その位置を検出および/または記録すること)を含む。いくつかの実施形態において、方法は、位置(例えば、x位置、y位置)の関数として、表面での時間依存性のプローブ結合シグナル強度変化を計算することをさらに含む。いくつかの実施形態において、位置(例えば、x位置、y位置)の関数として、表面での時間依存性のクエリープローブ結合シグナル強度変化を計算することにより、分析物へのクエリープローブ結合についての「示差強度プロファイル」を生成する。いくつかの実施形態において、前記方法は、各クエリープローブの結合事象および解離事象(「事象」)の位置(例えば、x位置、y位置)を、示差強度プロファイルからサブピクセル精度で決定することを含む。いくつかの実施形態において、方法は、例えば、単一の固定化標的分析物についての事象を関連付けるために、表面上の位置(例えば、x位置、y位置)によって、事象をローカルクラスターにグループ化することを含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、クラスタが特定の分析物、例えば、特定の分析物への一過性のプローブ結合に由来するかどうかを決定するために、事象の各局所クラスタからの動態学的パラメータを計算することを含む。
【0195】
方法の実施形態は、検出される分析物に限定されない。例えば、いくつかの実施形態において、分析物はポリペプチド、例えばタンパク質またはペプチドである。いくつかの実施形態において、標的分析物は核酸である。いくつかの実施形態において、標的分析物は小分子である。
【0196】
いくつかの実施形態において、標的分析物とクエリープローブとの間の相互作用は、標的分析物の共有結合性修飾によって区別可能に影響される。例えば、いくつかの実施形態において、分析物は、翻訳後修飾を含むポリペプチド、例えば、翻訳後修飾を含むタンパク質またはペプチドである。いくつかの実施形態において、ポリペプチドの翻訳後修飾は、クエリープローブと分析物との一過性の結合に影響を及ぼし、例えば、クエリープローブシグナルはポリペプチドにおける翻訳後修飾の有無の関数である。例えば、いくつかの実施形態において、分析物は、エピジェネティック修飾を含む核酸(例えば、メチル化塩基を含む核酸)である。いくつかの実施形態において、分析物は、標的分析物の核酸塩基、リボース、またはデオキシリボース部分に対する共有結合性修飾を含む核酸である。
【0197】
いくつかの実施形態において、核酸の修飾は、クエリープローブと分析物との一過性の結合に影響を及ぼし、例えば、クエリープローブシグナルは核酸における修飾の有無の関数である。
【0198】
いくつかの実施形態において、翻訳後修飾とクエリープローブとの間の一過性の相互作用は、化学的親和性タグ、例えば核酸を含む化学的親和性タグによって媒介される。
【0199】
いくつかの実施形態において、クエリープローブは、核酸またはアプタマーである。
【0200】
いくつかの実施形態において、クエリープローブは、低親和性抗体、抗体フラグメント、またはナノボディである。
【0201】
いくつかの実施形態において、クエリープローブは、DNA結合タンパク質、RNA結合タンパク質、またはDNA結合リボ核タンパク質複合体である。
【0202】
いくつかの実施形態において、各結合事象または解離事象の位置、例えば(x,y)位置は、示差強度プロファイルを、重心決定(centroid determination)、ガウス関数への最小二乗フィッティング、エアリーディスク関数への最小二乗フィッティング、多項式関数(例えば、放物線)への最小二乗フィッティング、または最尤推定に供することによって決定される。
【0203】
いくつかの実施形態において、捕捉プローブは、高親和性抗体、抗体フラグメント、またはナノボディである。いくつかの実施形態において、捕捉プローブは、核酸である。いくつかの実施形態において、捕捉は、標的分析物を表面に架橋する共有結合によって媒介される。いくつかの実施形態において、標的分析物は、表面固定化の前に、担体の存在下で熱変性に供される。いくつかの実施形態において、分析物は、表面固定化の前に担体の存在下で化学変性に供され、例えば、分析物は、尿素、ホルムアミド、塩化グアニジニウム、高イオン強度、低イオン強度、高pH、低pH、またはドデシル硫酸ナトリウム(SDS)等の変性剤で変性される。
【0204】
(ATPS方法および組成物)
いくつかの実施形態において、本技術は、例えば、生物学的に由来する混合物(例えば、生体液または他のサンプル)からの分析物(例えば、生体分子分析物)の分析のための方法を提供する。例えば、いくつかの実施形態において、本技術は、分析物含有組成物(例えば、生体液またはサンプル)を水性二相系(ATPS)(例えば、混合時に水性二相系を形成する材料の混合物)に添加することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、ATPSは固相ATPSである。いくつかの実施形態において、ATPSはニートである。いくつかの実施形態において、分析物は、ATPSの2つの相のうちの1つに濃縮される。例えば、いくつかの実施形態において、分析物は、ATPSの形成前のその濃度に対して、少なくとも10倍(例えば、少なくとも10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、35倍、40倍、45倍、50倍、55倍、60倍、65倍、70倍、75倍、80倍、85倍、90倍、100倍、150倍、200倍、250倍、300倍、350倍、400倍、450倍、500倍、550倍、600倍、650倍、700倍、750倍、800倍、850倍、900倍、950倍、もしくは100倍またはそれを上回る)で濃縮される。いくつかの実施形態において、2つの相は異なる体積を有し、例えば、いくつかの実施形態において、1つの相は、系の第2の相の体積の2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、20倍、30倍、40倍、50倍、もしくは100倍、またはそれを上回る体積を有する。
【0205】
いくつかの実施形態において、分析物は、より小さい体積を有する相に優先的に分配され、その結果、いくつかの実施形態において、分析物は、より小さい体積を有する相に濃縮される。いくつかの実施形態において、方法は、(例えば、力(例えば、重力または遠心分離)をATPSに加えることによって)2つの相を分離することを含む。いくつかの実施形態において、遠心分離は、約1000×gで10~120分間行われ;いくつかの実施形態において、遠心分離は、約1000×gで約1分間行われる。いくつかの実施形態において、遠心分離は、約1000×g(例えば、500×g、600×g、700×g、800×g、850×g、900×g、925×g、950×g、1000×g、1025×g、1050×g、1075×g、1100×g、1150×g、1200×g、1250×g、1300×g、1400×g、または1500×g)で、約1~120分間(例えば、0.5分間、0.75分間、1分間、1.25分間、1.5分間、1.75分間、2分間、2.25分間、2.5分間、3.0分間、3.25分間、3.5分間、3.75分間、4分間、4.25分間、4.5分間、4.75分間、5分間、5.5分間、6分間、6.5分間、7分間、7.5分間、8分間、8.5分間、9分間、9.5分間、10分間、11分間、12分間、13分間、14分間、15分間、16分間、17分間、18分間、19分間、20分間、25分間、30分間、35分間、40分間、45分間、50分間、55分間、60分間、65分間、70分間、75分間、85分間、90分間、95分間、100分間、105分間、110分間、115分間、または120分間)行われる。
【0206】
いくつかの実施形態において、方法は、分析物リッチ相を表面に接触させることによって、分析物リッチ相から分析物を捕捉することを含む。例えば、いくつかの実施形態において、本技術は、1分超の間(例えば、1分超の間、2分間、3分間、4分間、5分間、6分間、7分間、8分間、9分間、10分間、20分間、30分間、40分間、60分間、または120分間)、表面を分析物リッチ相と接触させることを含む。いくつかの実施形態において、分析物リッチ相が生成されて(例えば、分析物に乏しい相から分離されて)、表面に接触するように、力をATPSに加えて相を分離しながら、表面をATPSと接触させることによって、接触が分析物リッチ相と表面との間で維持される。すなわち、いくつかの実施形態において、表面は、重力による相の遠心分離または分離の間、ATPSと接触する(例えば、ATPSの分析物リッチ相と接触する)。いくつかの実施形態において、方法は、固相基材で分析物を検出することを含む。いくつかの実施形態において、分析物を検出することは、単一分子検出方法の使用を含む。いくつかの実施形態において、分析物を検出することは、単一分子感度で、検出可能なラベルを付したクエリープローブの分析物への結合および解離の動態を分析することを含む(例えば、米国特許出願シリアルNo.14/589,467;国際特許出願No.PCT/US2015/044650;国際特許出願No.PCT/US2017/016977;および米国仮出願シリアルNo.62/468,578を参照のこと;それぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。Johnson-Buck et al. (2015) “Kinetic fingerprinting to identify and count single nucleic acids” Nature Biotechnology 33: 730-32も参照されたい。これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0207】
いくつかの実施形態において、本技術は、核酸の分析のための方法を提供する。いくつかの実施形態において、本技術は、200未満の塩基対またはヌクレオチド(例えば、200未満、190、180、170、160、150、140、130、120、110、100、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、または10未満のntもしくはbp)を含む核酸の分析のための方法を提供する。いくつかの実施形態において、本技術は、サンプル(例えば、生物学的サンプル(例えば、生体液))中またはサンプル由来の核酸を分析するための方法を提供する。いくつかの実施形態において、本技術は、生体液、細胞溶解物、単一細胞の溶解物、単一細胞内区画の溶解物に由来する核酸を分析するための方法を提供する。例えば、いくつかの実施形態において、方法は、核酸を含むサンプル(例えば、生物学的サンプル(例えば、生体液))を、水性二相系(ATPS)に添加することを含む(例えば、混合時に水性二相系を形成する材料の混合物(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、クエン酸ナトリウム/クエン酸、および第二塩(second salt)(例えば、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化リチウム、塩化カリウム、または塩化マグネシウム)を含む組成物))。いくつかの実施形態において、第二塩は、第二塩が無い場合のクエン酸リッチ相への核酸の分配係数に比べて、クエン酸リッチ相への核酸の分配係数を改善する。さらに、実施形態は、ATPS組成物を混合すること(例えば、いくつかの実施形態において、固体混合物を完全に溶解するために)、および2つの水相を形成することを含む。
【0208】
いくつかの実施形態において、方法は、2つの相のうちの1つに核酸を濃縮するために、2つの相を分離すること(例えば、重力、遠心分離、または同様の力によって)を含む。いくつかの実施形態において、核酸は、クエン酸ナトリウムリッチ相中に濃縮される。いくつかの実施形態において、核酸は、ATPSの相の1つにおいて少なくとも10倍(例えば、少なくとも10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、35倍、40倍、45倍、50倍、55倍、60倍、65倍、70倍、75倍、80倍、85倍、90倍、90倍、100倍、150倍、200倍、250倍、300倍、350倍、400倍、450倍、500倍、550倍、600倍、650倍、700倍、750倍、800倍、850倍、900倍、950倍、もしくは1000倍またはそれを上回る)濃縮される。いくつかの実施形態において、2つの相は異なる体積を有し、例えば、いくつかの実施形態において、1つの相は系の第2相の体積の2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、20倍、30倍、40倍、50倍、もしくは100倍またはそれを上回る体積を有する。いくつかの実施形態において、核酸は、より小さい体積を有する相に優先的に分配され、その結果、いくつかの実施形態において、核酸は、より小さい体積を有する相に濃縮される。さらに、いくつかの実施形態において、方法は、固相基材の表面でATPSの相(例えば、クエン酸塩リッチ相、より小さい体積を有する相)から核酸を捕捉することを含む。いくつかの実施形態において、方法は、(例えば、力(例えば、重力または遠心分離)をATPSに加えることによって)2つの相を分離することを含む。いくつかの実施形態において、方法は、核酸リッチ相(例えば、クエン酸塩リッチ相)を表面に接触させることによって、核酸リッチ相(例えば、クエン酸塩リッチ相)から核酸を捕捉することを含む。例えば、いくつかの実施形態において、本技術は、1分超の間(例えば、1分超の間、2分間、3分間、4分間、5分間、6分間、7分間、8分間、9分間、10分間、20分間、30分間、60分間、または120分間)、表面を核酸リッチ相(例えば、クエン酸塩リッチ相)と接触させることを含む。いくつかの実施形態において、核酸リッチ相(例えば、クエン酸塩リッチ相)が生成されて(例えば、核酸に乏しい相から分離されて)、表面に接触するように、力をATPSに加えて相を分離しながら、表面をATPSと接触させることによって、接触が核酸リッチ相(例えば、クエン酸塩リッチ相)と表面との間で維持される。すなわち、いくつかの実施形態において、表面は、重力による相の遠心分離または分離の間、ATPSと接触する(例えば、ATPSの核酸リッチ相(例えば、クエン酸塩リッチ相)と接触する)。いくつかの実施形態において、方法は、固相基材で核酸を検出することを含む。いくつかの実施形態において、核酸を検出することは、単一分子検出方法の使用を含む。いくつかの実施形態において、核酸を検出することは、単一分子感度で、検出可能なラベルを付したクエリープローブの核酸への結合および解離の動態を分析することを含む(例えば、米国特許出願シリアルNo.14/589,467;国際特許出願No.PCT/US2015/044650;国際特許出願No.PCT/US2017/016977;および米国仮出願シリアルNo.62/468,578を参照のこと;それぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。Johnson-Buck et al. (2015) “Kinetic fingerprinting to identify and count single nucleic acids” Nature Biotechnology 33: 730-32も参照されたい。これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0209】
いくつかの実施形態において、本技術は、変性ステップを含む。例えば、本方法のいくつかの実施形態において、サンプルは、サンプル中の生体分子分析物を変性させる温度まで加熱される。いくつかの実施形態において、変性ステップは、サンプルをATPSと混合するステップの前に起こる。いくつかの実施形態において、変性ステップは、サンプルをATPSと混合するステップの後に起こる。いくつかの実施形態において、変性ステップは、サンプルを加熱すること(例えば、少なくとも40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、100℃、105℃、または110℃の温度に加熱すること)を含む。いくつかの実施形態において、サンプルは、化学変性剤で処理される。
【0210】
いくつかの実施形態において、変性すること(例えば、熱変性すること)は、二次構造の形成または混合物中の他の核酸への標的の他のハイブリダイゼーションを妨げる担体オリゴヌクレオチドまたは1つ以上のオリゴヌクレオチドの存在下で起こる。したがって、いくつかの実施形態は、例えば、二次構造の形成または混合物中の他の核酸への標的の他のハイブリダイゼーションを妨げるために、担体オリゴヌクレオチドまたは1つ以上のオリゴヌクレオチドを添加することを含む。いくつかの実施形態において、二次構造の形成または混合物中の他の核酸への標的の他のハイブリダイゼーションを妨げる担体オリゴヌクレオチドまたは1つ以上のオリゴヌクレオチドは、サンプルに添加され;いくつかの実施形態において、二次構造の形成または混合物中の他の核酸への標的の他のハイブリダイゼーションを妨げる担体オリゴヌクレオチドまたは1つ以上のオリゴヌクレオチドは、ATPSに添加され;いくつかの実施形態において、二次構造の形成または混合物中の他の核酸への標的の他のハイブリダイゼーションを妨げる担体オリゴヌクレオチドまたは1つ以上のオリゴヌクレオチドは、サンプルおよびATPSを含む組成物に添加される。
【0211】
いくつかの実施形態において、酵素(例えば、プロテアーゼ(例えば、プロテイナーゼK、ペプチドヒドロラーゼ)、リパーゼ)は、変性の前に(例えば、熱変性の前に)添加される。いくつかの実施形態において、酵素は、サンプルに添加され;いくつかの実施形態において、酵素は、ATPSに添加され;いくつかの実施形態において、酵素は、サンプルおよびATPSを含む組成物に添加される。
【0212】
いくつかの実施形態において、界面活性剤は、変性の前に添加される(例えば、限定されないが、SDS(例えば、0~5%)、Triton X-100、Triton X-114、デオキシコール酸塩、Brij-35、Brij-58、Tween 20、Tween 80、オクチルグルコシド、オクチルチオグルコシド、CHAPS、CHAPSO等を含む界面活性剤)。いくつかの実施形態において、界面活性剤は、サンプルに添加され;いくつかの実施形態において、界面活性剤は、ATPSに添加され;いくつかの実施形態において、界面活性剤は、サンプルおよびATPSを含む組成物に添加される。
【0213】
いくつかの実施形態において、サンプルは、細胞(例えば、単離された単一細胞)または細胞内構成要素(例えば、単離された細胞内構成要素)、例えば、ミトコンドリア、核、エキソソーム、細胞外小胞等を含む。いくつかの実施形態において、細胞または細胞内構成要素は、マイクロ流体技術、液-液エマルジョン技術(liquid-in-liquid emulsion technique)、マイクロピペットマニピュレーション技術、または当技術分野で公知の他の技術によって単離される。
【0214】
いくつかの実施形態において、本技術は、例えば、2つ以上の水溶液が混合される場合に、ATPSを形成する2つ以上の水溶液を含む組成物に関する。いくつかの実施形態において、本技術は、PEGおよびクエン酸塩緩衝液(例えば、クエン酸およびクエン酸塩)を含む組成物に関する。いくつかの実施形態において、本技術は、PEG、クエン酸塩緩衝液(例えば、クエン酸およびクエン酸塩)、および第二塩(例えば、塩化ナトリウム)を含む組成物に関する。いくつかの実施形態において、本技術は、30%超(例えば、30%超、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、70%、71%、72%、73%、74%、または75%)組成物中の質量分率を有しているPEGを含む組成物を提供する。いくつかの実施形態において、本技術は、2.5%未満(例えば、1.00%未満、1.25%、1.50%、1.75%、2.00%、2.25%、または2.50%)の組成物中の質量分率を有しているクエン酸塩を含む組成物を提供する。いくつかの実施形態において、本技術は、0.25M超の(例えば、0.25M超、0.3M、0.35M、0.4M、0.45M、0.5M、0.55M、0.6M、0.65M、0.7M、0.75M、0.8M、0.85M、0.9M、1.0M、1.1M、1.2M、1.3M、1.4M、または1.5M超)濃度で塩化ナトリウムを含む組成物を提供する。いくつかの実施形態において、PEGは、600Daと8000Daとの間(例えば、600Da、700Da、800Da、900Da、1000Da、1100Da、1200Da、1300Da、1400Da、1500Da、1600Da、1700Da、1800Da、1900Da、2000Da、2100Da、2200Da、2300Da、2400Da、2500Da、2600Da、2700Da、2800Da、2900Da、3000Da、3100Da、3200Da、3300Da、3400Da、3500Da、3600Da、3700Da、3800Da、3900Da、4000Da、4100Da、4200Da、4300Da、4400Da、4500Da、4600Da、4700Da、4800Da、4900Da、5000Da、5100Da、5200Da、5300Da、5400Da、5500Da、5600Da、5700Da、5800Da、5900Da、6000Da、7000Da、または8000Da)の組成物中の平均分子量を有する。いくつかの実施形態において、組成物中のクエン酸ナトリウムに対するクエン酸の比率は、5.5と8.5との間のpH(例えば、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、または8.5のpH)を提供する。
【0215】
いくつかの実施形態において、本技術は、2017年12月14日に出願され、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国仮出願シリアルNo.62/598,802に記載される方法でのATPSの使用を含む。
【0216】
(電気泳動セル)
いくつかの実施形態において、本技術は、例えば、適切な技術(例えば、本明細書に記載される、平衡ポアソンサンプリングを介する単一分子認識、SiMREPS:single molecule recognition by equilibrium Poisson sampling)によるその後の固定化および分析のために、小さい表面積にわたって正味の正または負の電子電荷を含む分析物(例えば、希薄な分析物)(限定されないが、核酸、タンパク質、代謝物、および脂質等の荷電生体分子を含む)を濃縮するための方法、装置、およびシステムに関する。この方法は、例えば、非常に低濃度の分析物の高感度検出のための用途における使用を見出すが、ここでは、イメージング表面の限定された領域のみが同時に分析され得る。
【0217】
いくつかの実施形態において、分析物は、表面に送達され、表面に接触され、表面で濃縮され、および/または電気泳動セルを使用して表面に固定化される。いくつかの実施形態において、電気泳動セル(10)は、内側チャンバ(11)および外側チャンバ(12)を含む(例えば、
図9を参照のこと)。内側チャンバは、分析物(13)を含む溶液を保持することができる。外側チャンバは、緩衝液(16)(例えば、電解質(例えば、イオン(例えば、カチオン、アニオン))を含む溶液)を保持することができる。内側チャンバ(11)は、内部体積を取り囲む壁を備える。壁は、外側チャンバ(12)内の緩衝液から内部体積を物理的および電気的に分離する。したがって、いくつかの実施形態において、壁は、絶縁体(例えば、非導体)である。いくつかの実施形態において、内側チャンバ(11)は、分析物を含む溶液を表面(14)と接触させる開口部(15)を備える。いくつかの実施形態において、内側チャンバ(11)の開口部(15)は、およそ10mm未満、9mm、8mm、7mm、6mm、5mm、4mm、3mm、2mm、または1mm(例えば、10000μm未満、9500μm、9000μm、8500μm、8000μm、7500μm、7000μm、6500μm、6000μm、5500μm、5000μm、4500μm、4000μm、3500μm、3000μm、2500μm、2000μm、1500μm、1000μm、950μm、900μm、850μm、800μm、750μm、700μm、650μm、600μm、550μm、500μm、450μm、400μm、350μm、300μm、250μm、200μm、150μm、または100μm)の幅を有している。したがって、いくつかの実施形態において、分析物(13)を含む組成物は、およそ10mm未満、9mm、8mm、7mm、6mm、5mm、4mm、3mm、2mm、または1mm(例えば、10000μm未満、9500μm、9000μm、8500μm、8000μm、7500μm、7000μm、6500μm、6000μm、5500μm、5000μm、4500μm、4000μm、3500μm、3000μm、2500μm、2000μm、1500μm、1000μm、950μm、900μm、850μm、800μm、750μm、700μm、650μm、600μm、550μm、500μm、450μm、400μm、350μm、300μm、250μm、200μm、150μm、または100μm;例えば、約100mm
2未満、例えば、100mm
2未満、95mm
2、90mm
2、85mm
2、80mm
2、75mm
2、70mm
2、65mm
2、60mm
2、55mm
2、50mm
2、45mm
2、40mm
2、35mm
2、30mm
2、25mm
2、20mm
2、18mm
2、16mm
2、14mm
2、12mm
2、10mm
2、9mm
2、8mm
2、7mm
2、6mm
2、5mm
2、4mm
2、3mm
2、2mm
2、1mm
2、0.8mm
2、0.7mm
2、0.6mm
2、0.5mm
2、0.4mm
2、0.3mm
2、0.2mm
2、0.1mm
2、0.08mm
2、0.06mm
2、0.05mm
2、0.02mm
2、または0.01mm
2未満の面積にわたって)の幅を有する面積にわたって、表面(14)に接触する。
【0218】
いくつかの実施形態において、外側チャンバ(12)は、底部(17)を備える。いくつかの実施形態において、底部(17)は、内側チャンバ(11)と外側チャンバ(12)との間の電解質の通過を可能にして、内側チャンバ(11)と外側チャンバ(12)との間の分析物の流動を最小化するおよび/または排除する多孔質材料(例えば、ナノ多孔質、ミクロ多孔質、メソ多孔質)を含む。いくつかの実施態様において、底部(17)は、ポリマーである多孔質材料を含む。いくつかの実施態様において、底部(17)は、ポリアクリルアミドである多孔質材料を含む。任意選択的に、いくつかの実施形態において、底部(17)の細孔は、外側チャンバ底部(17)への分析物の移動を最小化するか、または排除するために、適切な材料(例えば、分岐ポリマー(例えば、硫酸デキストラン))でブロックされる。本技術は、分析物を排除するのには十分に小さいが、内側チャンバ(11)と外側チャンバ(12)との間の電流(例えば、電解質)の流動を可能にするのには十分に大きく且つ連続している細孔サイズを含む多孔質材料であるならば、底部(17)のための任意の特定の材料に限定されない。
【0219】
いくつかの実施形態において、内側チャンバ(11)の壁は、表面(14)に接触しない。したがって、いくつかの実施形態において、電気泳動セル(10)は、内側チャンバ(11)の壁と表面(14)との間にギャップ(18)を備える。いくつかの実施形態において、内側チャンバ(11)の壁は、約10~100μm(例えば、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、35μm、40μm、45μm、50μm、55μm、60μm、65μm、70μm、75μm、80μm、85μm、90μm、95μm、または100μm)の距離だけ表面(14)から離されて、内側チャンバ(11)の壁と表面(14)との間にギャップ(18)を提供する(例えば、
図9を参照のこと)。いくつかの実施形態において、ギャップ(18)は、内側チャンバ(11)と外側チャンバ(12)との間に電流が流れることを可能にする(例えば、
図9を参照のこと)。いくつかの実施形態において、ギャップ(18)は、底部(17)と同じ材料を含む。
【0220】
いくつかの実施形態において、電気泳動セル(10)は、アノードおよびカソードを含む。いくつかの実施形態において、アノードおよびカソードは、内側チャンバ(11)および外側チャンバー(12)を横切る電圧(例えば、電位)(19)を提供する。いくつかの実施形態において、アノードは内側チャンバ(11)に電気的に接続され、カソードは外側チャンバ(12)に電気的に接続される(例えば、負に帯電した分析物を表面(14)に移動させるために)。いくつかの実施形態において、カソードは内側チャンバ(11)に電気的に接続され、アノードは外側チャンバ(12)に電気的に接続される(例えば、正に帯電した分析物を表面(14)に移動させるために)。
【0221】
関連する実施形態は、分析物を表面に移動させるための、および/または分析物を表面に濃縮するための方法を提供する。例えば、方法は、以下のような1つ以上のステップを含む:本明細書に記載されるような電気泳動セルを提供すること、表面(例えば、分析物を固定化および/または濃縮するためのもの)を提供すること、分析物を含む溶液(例えば、サンプル)を提供すること、分析物を含む溶液を電気泳動セルの内側チャンバ内に配置すること、分析物を含む溶液を表面に接触させること、電解質を含む緩衝液を提供すること、電気泳動セルの外側チャンバ内に電解質を含む緩衝液を配置すること、および内側チャンバおよび外側チャンバを横切る電圧(例えば、電位)を提供すること。いくつかの実施形態は、直流(DC)電源を使用して電圧を提供することを含む。いくつかの実施形態は、交流(AC)電源を使用して電圧を提供することを含む。いくつかの実施形態において、電圧は、約0~200Vの間(例えば、0~10V、0~20V、0~30V、0~40V、0~50V、0~60V、0~70V、0~80V、0~90V、0~100V、0~110V、0~120V、0~130V、0~140V、0~150V、0~160V、0~170V、0~180V、0~190V、または0~200V)で交番する。いくつかの実施形態において、電圧は一定であり、10~200V(例えば、10V、20V、30V、40V、50V、60V、70V、80V、90V、100V、110V、120V、130V、140V、150V、160V、170V、180V、190V、または200V)の範囲である。いくつかの実施形態において、電圧は、約0.1~10分間(例えば、0.1分間、0.2分間、0.3分間、0.4分間、0.5分間、0.6分間、0.7分間、0.8分間、0.9分間、1.0分間、1.1分間、1.2分間、1.3分間、1.4分間、1.5分間、1.6分間、1.7分間、1.8分間、1.9分間、2.0分間、2.1分間、2.2分間、2.3分間、2.4分間、2.5分間、3.0分間、3.1分間、3.2分間、3.3分間、3.4分間、3.5分間、3.6分間、3.7分間、3.8分間、3.9分間、4.0分間、4.5分間、5.0分間、5.5分間、6.0分間、6.5分間、7.0分間、7.5分間、8.0分間、8.5分間、9.0分間、9.5分間、または10.0分間の周期で変化する。さらに、いくつかの実施形態は表面で分析物をイメージングすること、表面で分析物を定量すること(例えば、本明細書に記載されるような反応速度論的検出方法によって)、または表面での分析物の濃度を決定することを含む。いくつかの実施形態において、分析物は、本明細書に記載されるように表面に固定化される(例えば、本明細書に記載されるように捕捉プローブで捕捉することによって)。いくつかの実施形態は、例えば、押出成型、三次元印刷、熱硬化性成型等によって、内側チャンバおよび/または外側チャンバを製造することを含む。いくつかの実施形態は、外側チャンバの底部を提供すること、例えば、外側チャンバの底部を提供するためにポリマーを提供することを含む。したがって、いくつかの実施形態は、例えば、外側チャンバの底部を提供するために、組成物を重合することを含む。
【0222】
いくつかの実施形態において、分析物は表面で濃縮される。電気泳動による濃縮前の濃度に対して少なくとも10倍(例えば、少なくとも、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、35倍、40倍、45倍、50倍、55倍、60倍、65倍、70倍、75倍、80倍、85倍、90倍、90倍、100倍、150倍、200倍、250倍、300倍、350倍、400倍、450倍、500倍、550倍、600倍、650倍、700倍、750倍、800倍、850倍、900倍、950倍、または100倍)。
【0223】
電気泳動セル技術は、本明細書に記載されるアッセイおよび検出技術における使用を見出す。例えば、本技術は、感度が良く且つ特異的な分子分析法によるその後の分析のための、生物学的サンプル(例えば、血漿、尿、唾液、または他の体液)からの核酸(例えば、腫瘍由来のDNAまたはRNA)の濃縮および/または表面固定化のための使用を見出す。例えば、本技術は、感度が良く且つ特異的な分子分析法によるその後の分析のための、生物学的サンプル(例えば、血漿、尿、唾液、または他の体液)からのタンパク質(例えば、タンパク質バイオマーカー)の濃縮および表面固定化における使用を見出す。特に、本技術は、本明細書中に記載されるように、平衡ポアソンサンプリングを介する単一分子認識(SiMREPS)による分析のために、分析物を表面で濃縮することにおける使用を見出す。
【0224】
例えば、いくつかの実施形態において、本方法は、電気泳動セルを表面に接触させ、電気泳動セルの内側チャンバおよび外側チャンバを横切る電圧(例えば、0~120V(例えば、5V、10V、15V、20V、30V、40V、50V、60V、70V、80V、90V、100V、110V、または120V))を印加することによって、電気泳動セルの内側チャンバから分析物を捕捉することを含む。例えば、いくつかの実施態様において、本技術は、表面を電気泳動セルと接触させ、0~120V(例えば、5V、10V、15V、20V、30V、40V、50V、60V、70V、80V、90V、100V、110V、または120V)ACの電圧を、約1分間超の期間(例えば、1分間超、2分間、3分間、4分間、5分間、6分間、7分間、8分間、9分間、10分間、20分間、30分間、40分間、60分間、または120分間)、約1分間の周期で印加することを含む。いくつかの実施形態において、方法は、固相基材で分析物を検出することを含む。いくつかの実施形態において、分析物を検出することは、単一分子検出方法の使用を含む。いくつかの実施形態において、分析物を検出することは、単一分子感度で、検出可能なラベルを付したクエリープローブの分析物への結合および解離の動態を分析することを含む(例えば、米国特許出願シリアルNo.14/589,467;国際特許出願No.PCT/US2015/044650;国際特許出願No.PCT/US2017/016977;および米国仮出願シリアルNo.62/468,578を参照のこと;それぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。Johnson-Buck et al. (2015) “Kinetic fingerprinting to identify and count single nucleic acids” Nature Biotechnology 33: 730-32も参照されたい。これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0225】
いくつかの実施形態において、本技術は、核酸の分析のための方法を提供する。いくつかの実施形態において、本技術は、200未満の塩基対またはヌクレオチドを含む(例えば、200未満、190、180、170、160、150、140、130、120、110、100、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、または10未満のntもしくはbpを含む)核酸の分析のための方法を提供する。いくつかの実施形態において、本技術は、サンプル(例えば、生物学的サンプル(例えば、生体液))中またはサンプル由来の核酸を分析するための方法を提供する。いくつかの実施形態において、本技術は、生体液、細胞溶解物、単一細胞の溶解物、単一細胞内区画の溶解物に由来する核酸を分析するための方法を提供する。例えば、いくつかの実施形態において、方法は、核酸を含むサンプル(例えば、生物学的サンプル(例えば、生体液))を電気泳動セルに(例えば、電気泳動セルの内側チャンバに)添加すること、および本明細書に記載されるように電解セルの内側チャンバおよび外側チャンバを横切る電圧を印加することを含む。いくつかの実施形態において、方法は、外側チャンバに緩衝剤を添加することと、外側チャンバに多孔質底部(例えば、ポリマー)を提供することとを含む。さらに、いくつかの実施形態において、方法は、固相基材の表面で核酸を捕捉することを含む。
【0226】
いくつかの実施形態において、電気泳動セルの使用に関連する技術は、変性ステップを含む。例えば、本方法のいくつかの実施形態において、サンプルは、サンプル中の生体分子分析物を変性させる温度まで加熱される。いくつかの実施形態において、変性ステップは、内側チャンバと外側チャンバとの間に電圧を印加する前に起こる。いくつかの実施形態において、変性ステップは、内側チャンバおよび外側チャンバを横切る電圧を印加した後に起こる。いくつかの実施形態において、変性ステップは、サンプルを加熱すること(例えば、少なくとも、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、100℃、105℃、または110℃の温度に加熱すること)を含む。いくつかの実施形態において、サンプルは、化学変性剤で処理される。
【0227】
いくつかの実施形態において、変性すること(例えば、熱変性すること)は、二次構造の形成または混合物中の他の核酸への標的の他のハイブリダイゼーションを妨げる担体オリゴヌクレオチドまたは1つ以上のオリゴヌクレオチドの存在下で起こる。したがって、いくつかの実施形態は、例えば、二次構造の形成または混合物中の他の核酸への標的の他のハイブリダイゼーションを妨げるために、、担体オリゴヌクレオチドまたは1つ以上のオリゴヌクレオチドを添加することを含む。いくつかの実施形態において、二次構造の形成または混合物中の他の核酸への標的の他のハイブリダイゼーションを妨げる担体オリゴヌクレオチドまたは1つ以上のオリゴヌクレオチドは、サンプルに添加され;いくつかの実施形態において、二次構造の形成または混合物中の他の核酸への標的の他のハイブリダイゼーションを妨げる担体オリゴヌクレオチドまたは1つ以上のオリゴヌクレオチドは、電気泳動セルに添加される。
【0228】
いくつかの実施形態において、酵素(例えば、プロテアーゼ(例えば、プロテイナーゼK、ペプチドヒドロラーゼ)、リパーゼ)は、変性の前に(例えば、熱変性の前に)添加される。いくつかの実施形態において、酵素は、サンプルに添加され;いくつかの実施形態において、酵素は、電気泳動セルに添加され;いくつかの実施形態において、酵素は、サンプルを含む組成物に添加される。いくつかの実施形態において、酵素は、分析物の電荷と反対の電荷を有する。
【0229】
いくつかの実施形態において、界面活性剤は、変性の前に添加される(例えば、限定されないが、SDS(例えば、0~5%)、Triton X-100、Triton X-114、デオキシコール酸塩、Brij-35、Brij-58、Tween 20、Tween 80、オクチルグルコシド、オクチルチオグルコシド、CHAPS、CHAPSO等を含む界面活性剤)。いくつかの実施形態において、界面活性剤は、サンプルに添加され;いくつかの実施形態において、界面活性剤は、電気泳動セルに添加され;いくつかの実施形態において、界面活性剤は、サンプルを含む組成物に添加される。いくつかの実施形態において、界面活性剤は、非イオン性であるか、または帯電していない(例えば、帯電していない界面活性剤)。いくつかの実施形態において、界面活性剤は、分析物の電荷と反対の電荷を有する。
【0230】
いくつかの実施形態において、サンプルは、細胞(例えば、単離された単一細胞)または細胞内構成要素(例えば、単離された細胞内構成要素)、例えば、ミトコンドリア、核、エキソソーム、細胞外小胞等を含む。いくつかの実施形態において、細胞または細胞内構成要素は、マイクロ流体技術、液-液エマルジョン技術、マイクロピペットマニピュレーション技術、または当技術分野で公知の他の技術によって単離される。
【0231】
(システム)
本技術の実施形態は、分析物を検出するためのシステムに関する。例えば、いくつかの実施形態において、本技術は、1つ以上の標的分析物を定量するためのシステムを提供し、当該システムは、表面結合捕捉プローブまたは標的分析物を安定に結合する表面結合部分を含む。いくつかの実施形態において、表面結合捕捉プローブまたは表面結合部分は、結合部位、エピトープ、または認識部位(例えば、第1結合部位、第1エピトープ、または第1認識部位)を介して分析物を安定に結合する。いくつかの実施形態において、システムは、第2結合部位、第2エピトープ、または第2認識部位において低親和性で標的分析物を結合するクエリープローブをさらに含む。いくつかの実施形態において、クエリープローブは、システムの表面に接触するバルク溶液中で自由に拡散可能である。さらに、いくつかのシステム実施形態は、クエリープローブと標的分析物との相互作用からのシグナルを記録する検出構成要素を含む。例えば、いくつかの実施形態において、検出構成要素は、クエリープローブと標的分析物との相互作用から生成される時間の関数として、信号における変化を記録する。いくつかの実施形態において、検出構成要素は、空間位置(例えば、x座標、y座標ペアとして)と、クエリープローブの前記標的分析物への結合事象、およびクエリープローブの前記標的分析物からの解離事象の強度とを記録する。いくつかの実施形態において、検出構成要素は、空間位置(例えば、x座標、y座標ペアとして)と、クエリープローブの前記標的分析物への結合事象、およびクエリープローブの前記標的分析物からの解離事象の開始時間および/または終了時間とを記録する。いくつかの実施形態において、検出構成要素は、空間位置(例えば、x座標、y座標ペアとして)と、クエリープローブの前記標的分析物への結合事象、およびクエリープローブの前記標的分析物からの解離事象の時間の長さとを記録する。
【0232】
システムの実施形態は、例えば、システムの表面(例えば、表面結合捕捉プローブまたは標的分析物に安定に結合する表面結合部分を含む表面)への送達ために分析物を濃縮するために、本明細書に記載されるようなATPSまたは電気泳動セルをさらに含む。
【0233】
例えば、いくつかの実施形態において、システムの実施形態は、例えば、2つ以上の水溶液が混合される場合に、ATPSを形成する2つ以上の水溶液を含む組成物を含む。いくつかの実施形態において、システムは、PEGおよびクエン酸塩緩衝液(例えば、クエン酸およびクエン酸塩)を含む。いくつかの実施形態において、システムは、PEG、クエン酸塩緩衝液(例えば、クエン酸およびクエン酸塩)、および第二塩(例えば、塩化ナトリウム)を含む。いくつかの実施形態において、システムは、30%超(例えば、30%超、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、70%、71%、72%、73%、74%、または75%)組成物中の質量分率を有しているPEGを含む組成物を含む。いくつかの実施形態において、システムは、2.5%未満(例えば、1.00%未満、1.25%、1.50%、1.75%、2.00%、2.25%、または2.50%)の組成物中の質量分率を有しているクエン酸塩を含む組成物を含む。いくつかの実施形態において、システムは、0.25M超(例えば、0.25M超、0.3M、0.35M、0.4M、0.45M、0.5M、0.55M、0.6M、0.65M、0.7M、0.75M、0.8M、0.85M、0.9M、1.0M、1.1M、1.2M、1.3M、1.4M、または1.5M超)濃度の塩化ナトリウムを含む組成物を含む。いくつかの実施形態において、システムは、1000Daと6000Daとの間(例えば、1000Da、1100Da、1200Da、1300Da、1400Da、1500Da、1600Da、1700Da、1800Da、1900Da、2000Da、2100Da、2200Da、2300Da、2400Da、2500Da、2600Da、2700Da、2800Da、2900Da、3000Da、3100Da、3200Da、3300Da、3400Da、3500Da、3600Da、3700Da、3800Da、3900Da、4000Da、4100Da、4200Da、4300Da、4400Da、4500Da、4600Da、4700Da、4800Da、4900Da、5000Da、5100Da、5200Da、5300Da、5400Da、5500Da、5600Da、5700Da、5800Da、5900Da、または6000Da)の組成物中の平均分子量を有しているPEGを含む。いくつかの実施形態において、システムは、組成物中のクエン酸およびクエン酸ナトリウムを含み、組成物中のクエン酸ナトリウムに対するクエン酸の比率は、5.5と8.5との間のpH(例えば、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、または8.5のpH)を提供する。
【0234】
いくつかのシステムの実施形態は、本明細書に記載されたような電気泳動セルを含む。例えば、いくつかの実施形態において、システムは、内側チャンバ(11)および外側チャンバ(12)を備える電気泳動セル(10)を備える(例えば、
図9を参照のこと)。内側チャンバは、分析物(13)を含む溶液を保持することができる。外側チャンバは、緩衝液(16)(例えば、電解質(例えば、イオン(例えば、カチオン、アニオン))を含む溶液)を保持することができる。内側チャンバ(11)は、内部体積を取り囲む壁を備える。壁は、外側チャンバ(12)内の緩衝液から内部体積を物理的および電気的に分離する。したがって、いくつかのシステム実施形態において、電気泳動セルの壁は、絶縁体(例えば、非導体)である。いくつかの実施形態において、内側チャンバ(11)は、分析物を含む溶液をシステムの表面(14)と接触させる開口部(15)を備える。いくつかの実施形態において、内側チャンバ(11)の開口部(15)は、およそ、10mm未満、9mm、8mm、7mm、6mm、5mm、4mm、3mm、2mm、または1mm(例えば、10000μm未満、9500μm、9000μm、8500μm、8000μm、7500μm、7000μm、6500μm、6000μm、5500μm、5000μm、4500μm、4000μm、3500μm、3000μm、2500μm、2000μm、1500μm、1000μm、950μm、900μm、850μm、800μm、750μm、700μm、650μm、600μm、550μm、500μm、450μm、400μm、350μm、300μm、250μm、200μm、150μm、または100μm)。したがって、いくつかの実施形態において、分析物(13)を含む組成物は、およそ、10mm未満、9mm、8mm、7mm、6mm、5mm、4mm、3mm、2mm、または1mm(例えば、10000μm未満、9500μm、9000μm、8500μm、8000μm、7500μm、7000μm、6500μm、6000μm、5500μm、5000μm、4500μm、4000μm、3500μm、3000μm、2500μm、2000μm、1500μm、1000μm、950μm、900μm、850μm、800μm、750μm、700μm、650μm、600μm、550μm、500μm、450μm、400μm、350μm、300μm、250μm、200μm、150μm、または100μm;例えば、約100mm
2未満、例えば、100mm
2未満、95mm
2、90mm
2、85mm
2、80mm
2、75mm
2、70mm
2、65mm
2、60mm
2、55mm
2、50mm
2、45mm
2、40mm
2、35mm
2、30mm
2、25mm
2、20mm
2、18mm
2、16mm
2、14mm
2、12mm
2、10mm
2、9mm
2、8mm
2、7mm
2、6mm
2、5mm
2、4mm
2、3mm
2、2mm
2、1mm
2、0.8mm
2、0.7mm
2、0.6mm
2、0.5mm
2、0.4mm
2、0.3mm
2、0.2mm
2、0.1mm
2、0.08mm
2、0.06mm
2、0.05mm
2、0.02mm
2、または0.01mm
2の面積にわたって)の幅を有する面積にわたって、システムの表面(14)に接触する。
【0235】
いくつかの実施形態において、外側チャンバ(12)は、底部(17)を備える。いくつかの実施形態において、底部(17)は、内側チャンバ(11)と外側チャンバ(12)との間の電解質の通過を可能にして、内側チャンバ(11)と外側チャンバ(12)との間の分析物の流動を最小化するおよび/または排除する多孔質材料(例えば、ナノ多孔質、マイクロ孔質、メソ多孔質)を含む。いくつかの実施態様において、底部(17)は、ポリマーである多孔質材料を含む。いくつかの実施態様において、底部(17)は、ポリアクリルアミドである多孔質材料を含む。任意選択的に、いくつかの実施形態において、底部(17)の細孔は、外側チャンバ底部(17)への分析物の移動を最小化するか、または排除するために、適切な材料(例えば、分岐ポリマー(例えば、硫酸デキストラン))でブロックされる。本技術は、分析物を排除するのには十分に小さいが、内側チャンバ(11)と外側チャンバ(12)との間の電流(例えば、電解質)の流動を可能にするのには十分に大きく且つ連続している細孔サイズを含む多孔質材料であるならば、底部(17)のための任意の特定の材料に限定されない。したがって、いくつかのシステム実施形態は、外側チャンバのための底部を提供することにおける使用を見出す多孔質材料を含む。いくつかの実施形態において、システムは、外側チャンバのための底部を提供するために、多孔質材料(例えば、ポリマー)を製造するために使用される組成物(例えば、モノマーを含む組成物)を含む。
【0236】
いくつかの実施形態において、内側チャンバ(11)の壁は、システムの表面(14)に接触しない。したがって、いくつかの実施形態において、電気泳動セル(10)が内側チャンバ(11)の壁と表面(14)との間にギャップ(18)を備える。いくつかの実施形態において、内側チャンバ(11)の壁は、約10~100μm(例えば、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、35μm、40μm、45μm、50μm、55μm、60μm、65μm、70μm、75μm、80μm、85μm、90μm、95μm、または100μm)の距離だけ表面(14)から離されて、内側チャンバ(11)の壁と表面(14)との間にギャップ(18)を提供する(例えば、
図9を参照のこと)。いくつかの実施形態において、ギャップ(18)は、内側チャンバ(11)と外側チャンバ(12)との間に電流が流れることを可能にする(例えば、
図9を参照のこと)。いくつかの実施形態において、ギャップ(18)は、底部(17)と同じ材料を含む。
【0237】
いくつかの実施形態において、電気泳動セル(10)は、アノードおよびカソードを含む。いくつかの実施形態において、アノードおよびカソードは、内側チャンバ(11)および外側チャンバー(12)を横切る電圧(例えば、電位)(19)を提供する。いくつかの実施形態において、アノードは内側チャンバ(11)に電気的に接続され、カソードは外側チャンバ(12)に電気的に接続される(例えば、負に帯電した分析物を表面(14)に移動させるために)。いくつかの実施形態において、カソードは内側チャンバ(11)に電気的に接続され、アノードは外側チャンバ(12)に電気的に接続される(例えば、正に帯電した分析物を表面(14)に移動させるために)。
【0238】
いくつかのシステムの実施形態は、電圧電源をさらに備える。いくつかの実施形態において、電圧供給源は、直流の供給源であり、いくつかの実施形態において、電圧供給源は、交流の供給源である。いくつかの実施形態において、電圧供給は、0~120V(例えば、0V、5V、10V、20V、25V、30V、35V、40V、45V、50V、55V、60V、65V、70V、75V、80V、85V、90V、95V、100V、105V、110V、115V、120V)の間の電圧を提供する。いくつかの実施形態において、電圧電源は、約1分の周期で変化する電圧を提供する。
【0239】
システムの実施形態は、標的分析物の個々の分子を同定するための分析処理(例えば、分析処理を実行するようにマイクロプロセッサに命令する、例えば、ソフトウェアでコード化された一連の命令で具体化される)を含む。いくつかの実施形態において、分析プロセスは、入力データとして、標的分析物への反復性の結合事象および解離事象の空間位置データおよびタイミング(例えば、開始、終了、または時間の長さ)を使用する。
【0240】
装置の実施形態は、検出される分析物に限定されない。例えば、いくつかの実施形態において、分析物は、ポリペプチド、例えばタンパク質またはペプチドである。いくつかの実施形態において、標的分析物は核酸である。いくつかの実施形態において、標的分析物は小分子である。
【0241】
いくつかの実施形態において、標的分析物とクエリープローブとの間の相互作用は、標的分析物の共有結合性修飾によって区別可能に影響される。例えば、いくつかの実施形態において、分析物は、翻訳後修飾を含むポリペプチド、例えば、翻訳後修飾を含むタンパク質またはペプチドである。いくつかの実施形態において、ポリペプチドの翻訳後修飾は、クエリープローブと分析物との一過性の結合に影響を及ぼし、例えば、クエリープローブシグナルは、ポリペプチドにおける翻訳後修飾の有無の関数である。例えば、いくつかの実施形態において、分析物は、エピジェネティック修飾を含む核酸(例えば、メチル化塩基を含む核酸)である。いくつかの実施形態において、核酸の修飾は、クエリープローブと分析物との一過性の結合に影響を及ぼし、例えば、クエリープローブシグナルは、核酸における修飾の有無の関数である。
【0242】
いくつかの実施形態において、翻訳後修飾とクエリープローブとの間の一過性の相互作用は、化学的親和性タグ、例えば核酸を含む化学的親和性タグによって媒介される。
【0243】
いくつかの実施形態において、クエリープローブは、核酸またはアプタマーである。
【0244】
いくつかの実施形態において、クエリープローブは、低親和性抗体、抗体フラグメント、またはナノボディである。
【0245】
いくつかの実施形態において、クエリープローブは、DNA結合タンパク質、RNA結合タンパク質、またはDNA結合リボ核タンパク質複合体である。
【0246】
いくつかの実施形態において、分析物は、標的分析物の核酸塩基、リボース、またはデオキシリボース部分に対する共有結合性修飾を含む核酸である。
【0247】
いくつかの実施形態において、捕捉プローブは、高親和性抗体、抗体フラグメント、またはナノボディである。いくつかの実施形態において、捕捉プローブは核酸である。いくつかの実施形態において、捕捉は、標的分析物を表面に架橋する共有結合によって媒介される。いくつかの実施形態において、標的分析物は、表面固定化の前に、担体の存在下で熱変性に供される。いくつかの実施形態において、分析物は、表面固定化の前に担体の存在下で化学変性に供され、例えば、分析物は、尿素、ホルムアミド、塩化グアニジニウム、高イオン強度、低イオン強度、高pH、低pH、またはドデシル硫酸ナトリウム(SDS)等の変性剤で変性される。
【0248】
本技術のいくつかのシステムの実施形態は、標的分析物の検出および定量のための構成要素を含む。本技術によるシステムは、例えば、固体支持体(例えば、顕微鏡スライド、カバースリップ、アビジン(例えば、ストレプトアビジン)結合顕微鏡スライドまたはカバースリップ、ゼロモード導波路アレイを含む固体支持体等)、および本明細書に記載されたようなクエリープローブを含む。
【0249】
いくつかのシステムの実施形態は、束縛クエリープローブを刺激するための照明構成を備える蛍光顕微鏡(例えば、プリズム型全反射照明蛍光(TIRF:total internal reflection fluorescence)顕微鏡、対物型TIRF顕微鏡、近TIRFまたはHiLo顕微鏡、共焦点レーザ走査顕微鏡、ゼロモード導波路、および/または表面近傍の空間の小さい領域に照明を制限しつつ、スライドまたはカバースリップの広い領域(>100μm2)の並列監視が可能な照明構成)である検出構成要素を含む。いくつかの実施形態は、蛍光検出器、例えば、増強型電荷結合素子(ICCD:intensified charge coupled device)、電子増倍型電荷結合素子(EM-CCD:electron-multiplying charge coupled device)、相補型金属-酸化物-半導体(CMOS:complementary metal-oxide-semiconductor)、光電子増倍管(PMT:photomultiplier tube)、アバランシェフォトダイオード(APD:avalanche photodiode)、および/または単一発色団からの蛍光発光を検出することができる別の検出器を含む検出器を含む。いくつかの特定の実施形態は、レンズを使用しないイメージングのために構成された構成要素、例えば、レンズを使用しない顕微鏡、例えば、レンズを使用せずに検出器(例えば、CMOS)上に直接イメージングするための検出および/またはイメージング構成要素を備える。
【0250】
いくつかの実施形態は、実施するために、例えば、データを処理するためのデータ取得および/または分析プロセスを制御するために、コンピュータおよび当該コンピュータのための命令をコードしているソフトウェアを含む。
【0251】
いくつかの実施形態は、例えば、波長の特定の範囲内または波長の複数の範囲内で蛍光を選択的に検出するために、レンズ、ミラー、ダイクロイックミラー、光学フィルター等の光学素子を含む。
【0252】
例えば、いくつかの実施形態において、検出アッセイによって生成された生データ(例えば、時間および/または表面上の位置(例えば、x座標、y座標)の関数としての、1つ以上の分析物の存在、非存在、または量)を、臨床医の予測値のデータに変換するために、コンピュータに基づく分析ソフトウェアが使用される。臨床医は、任意の適切な手段を使用して予測データにアクセスすることができる。
【0253】
いくつかのシステム実施形態は、本技術の実施形態を実施することができるコンピュータシステムを含む。様々な実施形態において、コンピュータシステムは、情報を通信するためのバスまたは他の通信メカニズムと、情報を処理するためのバスに結合されたプロセッサとを含む。様々な実施形態において、コンピュータシステムは、ランダムアクセスメモリ(RAM:random access memory)または他の動的記憶装置とすることができ、バスに結合されたメモリと、プロセッサによって実行される命令とを含む。メモリは、プロセッサによって実行される命令の実行中に、テンポラリ変数または他の中間情報を保存するために使用することもできる。様々な実施形態において、コンピュータシステムは、プロセッサのための静的情報および命令を記憶するために、バスに結合された読み出し専用メモリ(ROM:read only memory)または他の静的記憶装置をさらに含むことができる。情報および命令を保存するために、磁気ディスクまたは光ディスク等の記憶装置を設け、バスに結合することができる。
【0254】
様々な実施形態において、コンピュータシステムは、コンピュータユーザに情報を表示するために、カソード線管(CRT:cathode ray tube)または液晶ディスプレイ(LCD:liquid crystal display)のようなディスプレイにバスを介して結合されている。情報およびコマンド選択をプロセッサに伝達するために、英数字および他のキーを含む入力装置は、バスに結合され得る。別のタイプのユーザ入力装置は、プロセッサに方向情報およびコマンド選択を通信し、ディスプレイ上のカーソル移動を制御するための、マウス、トラックボール、またはカーソル方向キー等のカーソル制御である。この入力装置は、通常、装置が平面内の位置を指定することを可能にする第1軸(例えば、x)および第2軸(例えば、y)の2つの軸における2つの自由度を有する。
【0255】
コンピュータシステムは、本技術の実施形態を実行することができる。本技術の特定の実装と一致して、結果は、メモリに含まれる1つ以上の命令の1つ以上のシークエンスを実行するプロセッサに応答して、コンピュータシステムによって提供され得る。このような命令は、記憶装置のような別のコンピュータ読み取り可能な媒体からメモリに読み込むことができる。メモリに含まれる命令のシーケンスの実行は、プロセッサに本明細書に記載する方法を実行させることができる。あるいは、本教示を実施するために、ハードワイヤード回路は、ソフトウェア命令の代わりに、またはソフトウェア命令と組み合わせてを使用され得る。したがって、本技術の実装は、ハードウェア回路およびソフトウェアの任意の特定の組合せに限定されない。
【0256】
本明細書で使用される場合、用語「コンピュータ読み取り可能な媒体」は、実行のためにプロセッサに命令を提供することに関与する任意の媒体をいう。このような媒体は、不これらに限定されないが、揮発性媒体、揮発性媒体、および伝送媒体を含む多くの形態をとることができる。不揮発性媒体の例は、これに限定されないが、記憶装置等の光ディスクまたは磁気ディスクを含むことができる。揮発性媒体の例は、これに限定されないが、ダイナミックメモリを含むことができる。伝送媒体の例は、これに限定されないが、バスを構成するワイヤを含む、同軸ケーブル、銅線、および光ファイバを含むことができる。
【0257】
コンピュータ読み取り可能な媒体の一般的な形態は、例えば、フロッピーディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、または任意の他の磁気媒体、CD-ROM、任意の他の光学媒体、パンチカード、紙テープ、穴のパターンを有する任意の他の物理媒体、RAM、PROM、およびEPROM、FLASH-EPROM、任意の他のメモリチップもしくはカートリッジ、またはコンピュータが読み取ることができる任意の他の有形媒体を含む。
【0258】
コンピュータ読み取り可能な媒体の種々の形態は、1つ以上の命令の1つ以上のシークエンスを実行のためにプロセッサに運ぶことに関与することができる。例えば、命令は、最初に、遠隔コンピュータの磁気ディスク上に搬送され得る。遠隔コンピュータは、命令をその動的メモリにロードし、命令をネットワーク接続(例えば、LAN、WAN、インターネット、電話回線)を介して送ることができる。ローカルコンピュータシステムは、データを受信し、それをバスに送信することができる。バスは、データをメモリに運ぶことができ、そこからプロセッサが命令を検索して実行する。メモリによって受信された命令は、プロセッサによって実行される前または後のいずれかで、任意選択的に記憶装置に保存され得る。
【0259】
様々な実施形態によれば、方法を実行するためにプロセッサによって実行されるように構成された命令は、コンピュータ読み取り可能な媒体に保存される。コンピュータ読み取り可能な媒体は、デジタル情報を記憶する装置であってもよい。例えば、コンピュータ読み取り可能な媒体は、ソフトウェアを保存するための当該技術分野で公知のコンパクトディスク読み出し専用メモリ(CD-ROM:compact disc read-only memory)を含む。コンピュータ読み取り可能な媒体は、実行されるように構成された命令を実行するのに適したプロセッサによってアクセスされる。
【0260】
そのようなコンピュータシステムによれば、本明細書で提供される技術のいくつかの実施形態は、データ(例えば、分析物の存在、非存在、濃度)を収集、保存、および/または分析するための機能をさらに備える。例えば、いくつかの実施形態は、例えば、命令を保存および実行し、蛍光、画像データを分析し、データを使用して計算を実行し、データを変換し、データを保存するための、プロセッサ、メモリ、および/またはデータベースを備えるシステムを検討する。いくつかの実施形態において、アルゴリズムは、統計モデル(例えば、ポアソンモデルまたは隠れマルコフモデル)をデータに適用する。
【0261】
多くの診断は、1つ以上の核酸の存在または1つ以上の核酸のヌクレオチド配列を決定することを含む。
【0262】
いくつかの実施形態において、1つ以上の分析物の存在、非存在、濃度、量、または配列特性を表す変数を含む式は、分析物の存在または質を診断または評価することにおける使用を見出す値を生成する。したがって、いくつかの実施形態において、この値は、デバイスによって、例えば、結果に関連するインジケータ(例えば、LED、ディスプレイ上のアイコン、サウンド等)によって提示される。いくつかの実施形態において、装置は、値を保存するか、値を送信するか、または追加の計算のために値を使用する。いくつかの実施形態において、式は、1つ以上の分析物の存在、非存在、濃度、量、または特性を表す変数を含む。
【0263】
したがって、いくつかの実施形態において、本技術は、分析アッセイにおいて訓練される可能性が低い臨床医は生データを理解する必要がないというさらなる利益を提供する。データは、最も有用な形態で臨床医に直接提示される。次いで、臨床医は、被験者のケアを最適化するために情報を利用することができる。本技術は、アッセイを行う研究所、情報提供者、医療個人、および/または被験者に、あるいはアッセイを行う研究所、情報提供者、医療個人、および/または被験者から情報を受信し、処理し、送信することができる任意の方法を検討する。例えば、本技術のいくつかの実施形態において、サンプルは、被験者から取得され、生データを生成するために、世界の任意の部分(例えば、被験者が居住する国または情報が最終的に使用される国とは異なる国)に位置するプロファイリングサービス(例えば、医療施設の臨床検査室、ゲノムプロファイリングビジネス等)に提出される。サンプルが組織または他の生物学的サンプルを含む場合、被験体は、サンプルを入手し、プロファイリングセンターに送るために医療センターを訪れてもよく、または被験体は、サンプル自体を収集し、それをプロファイリングセンターに直接送ってもよい。サンプルが以前に決定された生物学的情報を含む場合、情報は、被験者によってプロファイリングサービスに直接送信されてもよい(例えば、情報を含む情報カードは、コンピュータによってスキャンされてもよく、データは、電子通信システムを使用してプロファイリングセンターのコンピュータに送信されてもよい)。プロファイリングサービスによって受信されると、サンプルは処理され、被験者に望まれる診断または予後情報に特異的なプロファイルが生成される。次いで、プロフィールデータは、治療する臨床医による解釈に適したフォーマットで準備される。例えば、生の発現データを提供するよりもむしろ、準備したフォーマットは、特定の治療選択肢についての推奨と共に、被験体についての診断またはリスク評価を示すことができる。データは、任意の適切な方法によって臨床医に表示されてもよい。例えば、いくつかの実施形態において、プロファイリングサービスは、臨床医のために(例えば、治療の時点で)印刷され得るか、またはコンピュータモニタ上で臨床医に提示され得るレポートを生成する。いくつかの実施形態において、情報は、最初に、ケアの時点で、または地域施設で分析される。次いで、生データは、さらなる分析のために、および/または生データを臨床医または患者に有用な情報に変換するために、中央処理施設に送られる。中央処理施設は、プライバシー(全てのデータが均一なセキュリティプロトコルで中央施設に保存される)、速度、およびデータ分析の均一性の利点を提供する。次いで、中央処理施設は、被験者の治療後のデータの運命を制御することができる。例えば、電子通信システムを使用して、中央施設は、臨床医、被験者、または研究者にデータを提供することができる。いくつかの実施形態において、被験者は、電子通信システムを使用してデータにアクセスすることができる。被験者は、結果に基づいて、さらなる介入またはカウンセリングを選択することができる。いくつかの実施形態において、データは、研究用途に使用される。例えば、このデータは、疾患に関連する特定の状態の有用な指標としてのマーカーの含有または排除をさらに最適化するために使用され得る。
【0264】
本技術は、クエリープローブの分析物への一過性の結合によって生成されたシグナルを、分析物の同定、検出、定量化、および/または特徴付けに関する情報を提供するデータへと変換することに基づいて、分析物の超解像同定、検出、定量化、および/または特徴付けを提供する。いくつかの実施形態は、本明細書に記載されるような1つ以上のステップ、例えば、本明細書に記載されるような1つ以上の順序付けられたステップを含む。いくつかの実施形態において、1つ以上のステップは、1つ以上の他のステップに依存し、それに続くが、いくつかの実施形態は、任意の特定の順序に関係なく、記載されたステップの内の1つ以上を含む。
【0265】
本明細書で使用される場合、用語「データセット」または「ムービー」は、(例えば、CCD、増強型CCD、電子増倍型CCD、CMOSセンサ等からの)センサーアレイデータの時系列を含むデータに関し、センサーアレイデータ(または「フレーム」)の時系列の各時点は、センサーアレイ内の位置(例えば、x座標、y座標)の関数としての信号強度値のセットを含む。いくつかの実施形態において、例えば、動画データセットのフレームにおいて、(x、y)位置は、2次元センサーアレイ内の水平(x)方向および垂直(y)方向におけるセンサ素子の座標(例えば、ピクセル)をいう。
【0266】
いくつかの実施形態において、記載されるようなデータセットは、クエリープローブを含むサンプルから収集される(例えば、いくつかの実施形態は、クエリープローブを含むサンプルからデータセットを収集することを含む)。いくつかの実施形態において、サンプルは分析物を含む。いくつかの実施形態において、サンプルは分析物を含むと考えられる。いくつかの実施形態において、サンプルが分析物を含むかどうかは知られていない。
【0267】
いくつかの実施形態は、示差強度マップ動画を生成することを含む。例えば、いくつかの実施態様は、動画の各フレームNにおける各ピクセルPの強度値を、動画の次のフレームN+1における同じピクセルPの対応する強度値から差し引くことを含む。これらの減算の結果は、元の動画よりも1つ少ないフレームを含む示差強度マップの時系列である。いくつかの実施態様は、動画の各フレームNにおけるの各ピクセルPの強度値を、動画のフレームN+2、N+3、N+4、N+nにおける同じピクセルPの対応する強度値から差し引いて、元の動画よりも2、3、4、またはn少ないフレームを含む示差強度マップの時系列を生成することを含む。
【0268】
いくつかの実施形態は、示差強度マップの各フレーム内の各強度最大値(例えば、クエリープローブ結合事象に対応する)の位置、強度、および/またはフレーム数のうちの1つ以上を記録することを含む。いくつかの実施形態において、位置は、例えば、2次元ガウスフィッティング、重心フィッティング、または、粒子の位置を決定するために使用される他の方法、例えば、いくつかの実施形態において、1ピクセル以下のエラーを有する、を含むデータの変換によって決定される。
【0269】
いくつかの実施形態は、示差強度マップの各フレーム内の各強度最小値(例えば、クエリープローブ解離事象に対応する)の位置、強度(例えば、強度の絶対値)、および/またはフレーム数のうちの1つ以上を記録することを含む。いくつかの実施形態において、位置は、例えば、2次元ガウスフィッティング、重心フィッティング、または粒子の位置を決定するために使用される他の方法、例えば、いくつかの実施形態において1ピクセル以下のエラーを有する、を含むデータの変換によって決定される。
【0270】
いくつかの実施形態は、強度最大値および/または強度最小値の(x、y)位置を組み合わせることを含む。いくつかの実施形態は、クエリープローブの結合事象および解離事象の高密度の領域を同定するために、強度最大値および/または強度最小値の(x、y)位置におけるクラスタリング分析(例えば、階層クラスタリング)を実行することをさらに含む。いくつかの実施形態において、クラスタリング分析は、クラスタを生成し、ここでは、各クラスタは、センサの限られた領域内で検出される1つ以上の結合事象および/または解離事象を含む。
【0271】
いくつかの実施形態は、これらに限定されないが、クエリープローブの結合事象および/または解離事象の数;所与の結合事象と次の解離事象との間のフレーム数の平均値、中央値、最大値、最小値、範囲、および標準偏差のうちの1つ以上;所与の解離事象と次の結合事象との間のフレーム数の平均値、中央値、最大値、最小値、範囲、および標準偏差のうちの1つ以上;クエリープローブの結合事象および解離事象の(x、y)位置の平均値、中央値、最大値、最小値、範囲、および標準偏差のうちの1つ以上;ならびに/または、クエリープローブの結合事象および解離事象に関連するシグナル強度変化の平均値、中央値、最大値、最小値、範囲、および標準偏差のうちの1つ以上を含む、各クラスタ内の事象についての1つ以上の統計的尺度を計算することを含む。
【0272】
いくつかの実施形態は、クエリープローブ結合事象の各クラスタについて前述のように測定された統計値を、標準参照物質(例えば、陽性対照)を使用して測定された統計値と比較することを含む。いくつかの実施形態は、クエリープローブ結合事象の各クラスタについて前述のように測定された統計値を、陰性対照(例えば、分析物を含まない、分析物に密接に関連する物質を含む、修飾を含むおよび/または修飾を含まない分析物を含む等)を使用して測定された統計値と比較することを含む。いくつかの実施形態において、クエリープローブ結合事象の各クラスタについて前述のように測定された統計値を、標準参照物質および/または陰性対照を使用して測定された統計値と比較することは、クエリープローブ結合事象のクラスタが、標的分析物の単一分子へのクエリープローブ結合から生じた可能性が高いかどうかを決定するために使用される。
【0273】
いくつかの実施形態は、標的分析物へのクエリープローブ結合を表すデータセット中のクラスタの数を計算することを含む。いくつかの実施形態において、標的分析物へのクエリープローブ結合を表すデータセット中のクラスタの数を計算することは、前述の統計的試験の1つ以上を使用することを含む。いくつかの実施形態において、標的分析物へのクエリープローブ結合を表すデータセット中のクラスタの数を計算することは、本方法によってアッセイされたイメージング表面の領域中に存在する分析物の数(例えば、分析物の見かけの数)の尺度を提供する。いくつかの実施形態において、標的分析物へのクエリープローブ結合を表すデータセット中のクラスタの数を計算することは、分析物の濃度の尺度を提供し、分析物がサンプル中に存在するか否かの指標を提供し、および/またはサンプル中の分析物の状態(例えば、修飾された、修飾されていない)の指標を提供する。
【0274】
いくつかの実施形態は、任意選択的に、前述のような分析物の見かけの数、濃度、状態、存在、または非存在を、既知の分析物濃度についての分析物の見かけの数、濃度、状態、存在、または非存在の前もって決定された値と比較することを含む。いくつかの実施形態は、サンプル中の標的分析物の濃度を決定するために、標準曲線(例えば、既知の濃度を有する標的分析物の標準参照物質を含む1つ以上の組成物を用いて生成される)の使用を含む。
【0275】
いくつかの実施形態において、説明された方法のステップは、ソフトウェアコード、例えば、前述のようにデータを生成および/または変換するためにコンピュータおよび/またはマイクロプロセッサに命令する一連の手順ステップにおいて実装される。ある実施形態において、ソフトウェア命令は、例えば、BASIC、C、C++、Java、MATLAB、Mathematica、Perl、Python、またはRのようなプログラミング言語で符号化される。
【0276】
いくつかの実施形態において、分析物の超解像同定、検出、定量化、および/または特徴付けの1つ以上のステップまたは構成要素は、モジュラーシステムに接続された個々のソフトウェアオブジェクトにおいて提供される。いくつかの実施形態において、ソフトウェアオブジェクトは、拡張可能であり、移植可能である。いくつかの実施形態において、前記オブジェクトは、当該オブジェクトデータを変換するデータ構造および操作を含む。いくつかの実施形態において、前記オブジェクトは、それらのデータを操作し、それらのメソッドを呼び出すことによって使用される。したがって、実施形態は、例えば、操作可能な数字、形状、データ構造について、具体的な物体を模倣する、モデル化する、または提供するソフトウェアオブジェクトを提供する。いくつかの実施形態において、ソフトウェアオブジェクトは、コンピュータまたはマイクロプロセッサにおいて動作可能である。いくつかの実施形態において、ソフトウェアオブジェクトは、コンピュータ読み取り可能な媒体上に保存される。
【0277】
いくつかの実施形態において、本明細書で説明される方法のステップは、オブジェクトメソッドとして提供される。いくつかの実施形態において、本明細書で説明されるデータおよび/またはデータ構造は、オブジェクトデータ構造として提供される。
【0278】
(分析物)
本技術は、検出、定量、同定、または他に特徴付けられる(例えば、存在、不在、量、濃度、状態)分析物に限定されない。本明細書で使用される場合、用語「分析物」は、広義の用語であり、その通常の意味で使用され、分析することができる生体液(例えば、血液、間質液、脳脊髄液、リンパ液または尿)等のサンプル中の物質または化学成分を指すことを含むが、これらに限定されない。分析物は、天然に生じる物質、人工的な物質、代謝物、および/または反応産物を含むことができる。いくつかの実施形態において、分析物は、塩、糖、タンパク質、脂肪、ビタミン、またはホルモンを含む。いくつかの実施形態において、分析物は、生物学的サンプル中に天然に存在し(例えば、「内因性」であり);例えば、いくつかの実施形態において、分析物は、代謝産物、ホルモン、抗原、抗体等である。あるいは、いくつかの実施形態において、分析物は、生物学的有機体(例えば、「外因性」である)、例えば、薬物、薬物代謝物、薬物前駆体(例えば、プロドラッグ)、イメージングのための造影剤、放射性同位体、化学物質等に導入される。薬物および薬学的組成物の代謝産物もまた、意図される分析物である。
【0279】
いくつかの実施形態(例えば、電気泳動セルに関連する実施形態)において、分析物は荷電される。例えば、いくつかの実施形態において、分析物は、負の電荷(例えば、正味の負の電荷)を有する。いくつかの実施形態において、分析物は、正の電荷(例えば、正味の正の電荷)を有する。いくつかの実施形態において、分析物は、部分電荷を有する(例えば、分析物は、部分的な負の電荷または部分的な正の電荷を有する)。いくつかの実施形態において、分析物の電荷状態は未知である。いくつかの実施形態において、分析物は、アノードまたはカソードに向かって移動することによって電位(例えば、電圧)に応答する。いくつかの実施形態において、分析物は、荷電分子(例えば、負に荷電した分子、正に荷電した分子、部分的に負に荷電した分子、部分的に正に荷電した分子)を生成する部分で誘導体化される(例えば、共有結合的に、非共有結合的に)。いくつかの実施形態において、分析物は、荷電した複合体(例えば、負に荷電した複合体、正に荷電した複合体、部分的に負に荷電した複合体、部分的に正に荷電した複合体)を生成する部分に結合する。したがって、いくつかの実施形態において、分子(例えば、部分で誘導体化された分析物)は、アノードまたはカソードに向かって移動することによって、電位(例えば、電圧)に応答する。いくつかの実施形態において、複合体(例えば、部分に結合した分析物)は、アノードまたはカソードに向かって移動することによって、電位(例えば、電圧)に応答する。
【0280】
いくつかの実施形態において、分析物は、ポリペプチド、核酸、小分子、脂質、炭水化物、多糖類、脂肪酸、リン脂質、糖脂質、スフィンゴ脂質、有機分子、無機分子、補因子、医薬、生物活性剤、細胞、組織、生物等である。いくつかの実施形態において、分析物は、ポリペプチド、核酸、小分子、脂質、炭水化物、多糖類、脂肪酸、リン脂質、糖脂質、スフィンゴ脂質、有機分子、無機分子、補因子、医薬、生物活性剤、細胞、組織、生物等を含む。いくつかの実施形態において、分析物は、ポリペプチド、核酸、小分子、脂質、炭水化物、多糖類、脂肪酸、リン脂質、糖脂質、スフィンゴ脂質、有機分子、無機分子、補因子、医薬、生物活性剤、細胞、組織、生物等の1つまたは複数の組み合わせを含む。
【0281】
いくつかの実施形態において、分析物は、多分子複合体、例えば、多タンパク質複合体、核酸/タンパク質複合体、分子機械(molecular machine)、オルガネラ(例えば、血漿中の無細胞ミトコンドリア;プラスチド;ゴルジ、小胞体、液胞、ペルオキシソーム、リソソーム、および/または核)、細胞、ウイルス粒子、組織、生物、または捕捉され得て、本明細書中に記載される技術による分析に従う任意の巨大分子複合体もしくは構造または他の物体(例えば、リボソーム、スプライソソーム、ヴォールト(vault)、プロテアソーム、DNAポリメラーゼIIIホロ酵素、RNAポリメラーゼIIホロ酵素、非対称ウイルスカプシド、GroEL/GroES;膜タンパク質複合体:光化学系I、ATP合成酵素、ヌクレオソーム、中心小体および微小管形成中心(MTOC:microtubule-organizing center)、細胞骨格、べん毛、核小体、ストレス顆粒、生殖細胞顆粒、または神経輸送顆粒)の一部である。例えば、いくつかの実施形態において、多分子複合体が単離され、本技術は、当該多分子複合体(例えば、その構成要素である)に関連する1つ以上の分子(分析物)の特徴付け、同定、定量化、および/または検出における使用を見出す。いくつかの実施形態において、細胞外小胞が単離され、本技術は、当該小胞に関連する1つ以上の分子(分析物)の特徴付け、同定、定量化、および/または検出における使用を見出す。いくつかの実施形態において、本技術は、当該小胞内に存在するタンパク質(例えば、表面タンパク質)および/または分析物(例えば、本明細書中に記載されるタンパク質、核酸、または他の分析物)の特徴付け、同定、定量化、および/または検出における使用を見出す。いくつかの実施形態において、小胞は、分析前に固定され、透過処理される。
【0282】
いくつかの実施形態において、分析物は、クエリープローブ結合のための部位を提供するために化学的に修飾される。例えば、いくつかの実施形態において、強塩基性条件下でのホスホセリンおよびホスホトレオニンのベータ脱離を使用してアルケンを導入し、続いて、求核試薬(例えば、ジチオール)をアルケンにマイケル付加(Michael addition)する。次いで、残りの遊離チオールを、オリゴヌクレオチドクエリープローブに相補的な配列を有するマレイミド含有オリゴヌクレオチドへの結合のために使用する。次いで、翻訳後修飾ホスホセリンおよびホスホトレオニンを、クエリープローブを用いてプローブし、本明細書に記載のように分析することができる。
【0283】
本明細書中で使用される場合、「分析物を検出する」または「物質を検出する」は、分析物自体の直接的な検出、またはその副産物を検出することによる分析物の間接的な検出を包含すると理解される。
【0284】
(サンプル)
いくつかの実施形態において、分析物は、生物学的サンプルから単離される。分析物は、動物、植物、細菌、古細菌、真菌、または任意の他の生物から得られる、任意の材料(例えば、細胞材料(生細胞または死細胞)、細胞外材料、ウイルス材料、環境サンプル(例えば、メタゲノムサンプル)、合成材料(例えば、PCRまたは他の増幅技術によって提供されるようなアンプリコン))から得ることができる。本技術において使用するための生物学的サンプルには、ウイルス粒子またはその調製物が含まれる。分析物は、生物から、または生物から得られる生物学的サンプルから、例えば、血液、尿、脳脊髄液、精液、唾液、痰、糞便、毛髪、汗、涙、皮膚、および組織から、直接得ることができる。例示的なサンプルとしては、全血、リンパ液、血清、血漿、頬側細胞、汗、涙、唾液、痰、毛髪、皮膚、生検、脳脊髄液(CSF:cerebrospinal fluid)、羊水、精液、膣排泄物、漿液、滑液、心膜液、腹水、胸膜液、滲出液、浸出液、嚢胞液、胆汁、尿、胃液、腸液、糞便サンプルおよび塗抹標本、吸引液(例えば、骨髄、細針等)、洗浄液(例えば、口腔、鼻咽頭、気管支、気管支肺胞、視神経、直腸、腸、膣、表皮等)、呼気凝縮液(breath condensate)、および/または他の検体を包含するが、これらに限定されない。
【0285】
法医学的検体、保管された検体、保存された検体、および/または長期間保存された検体(例えば、新鮮凍結、メタノール/酢酸固定、またはホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE:formalin-fixed paraffin embedded)検体およびサンプル)を含む、任意の組織または体液検体は、本技術において使用するための分析物の供給源として使用され得る。分析物はまた、初代細胞培養物または細胞株等の培養細胞から単離することもできる。分析物が得られる細胞または組織は、ウイルスまたは他の細胞内病原体に感染させることができる。サンプルはまた、生物学的検体、cDNAライブラリー、ウイルス、またはゲノムDNAから抽出された全RNAであり得る。サンプルはまた、非細胞起源から単離されたDNA、例えば、フリーザーに保存された増幅/単離されたDNAであってもよい。
【0286】
分析物(例えば、核酸分子、ポリペプチド、脂質)は、例えば、生物学的サンプルからの抽出によって、例えば、Maniatis, et al. (1982) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, N.Y.(例えば、280~281頁を参照のこと)によって記載されるような様々な技法によって得ることができる。
【0287】
いくつかの実施形態において、この技術は、例えば、標的分析物を含む分子の規定されたサイズ範囲を提供するために、分析物のサイズ選択を提供する。
【0288】
(使用)
種々の実施形態は、広範囲の分析物の検出に関する。例えば、いくつかの実施形態において、本技術は、核酸(例えば、DNAまたはRNA)の検出における使用を見出す。いくつかの実施形態において、本技術は、特定の標的配列を含む核酸の検出における使用を見出す。いくつかの実施形態において、本技術は、特定の変異(例えば、一塩基多型、挿入、欠失、ミスセンス変異、ナンセンス変異、遺伝子再編成、遺伝子融合等)を含む核酸の検出における使用を見出す。いくつかの実施形態において、本技術は、ポリペプチド(例えば、タンパク質、ペプチド)の検出における使用を見出す。いくつかの実施形態において、本技術は、突然変異を含む核酸によってコードされるポリペプチド(例えば、置換を含むポリペプチド、切断型ポリペプチド、変異体またはバリアントポリペプチド)の検出における使用を見出す。
【0289】
いくつかの実施形態において、本技術は、ポリペプチドに対する翻訳後修飾(例えば、リン酸化、メチル化、アセチル化、グリコシル化(例えば、O結合型グリコシル化、N結合型グリコシル化、ユビキチン化、官能基の付加(例えば、ミリストイル化、パルミトイル化、イソプレニル化、プレニル化、ファルネシル化、ゲラニル化、ゲラニルゲラニル化、グリピエーション(glypiation)、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI:glycosylphosphatidylinositol)アンカー形成)、ヒドロキシル化、ビオチン化、ペグ化、酸化、SUMO化(SUMOylation)、ジスルフィド架橋形成、ジスルフィド架橋切断、タンパク質切断、アミド化、硫酸化、ピロリドンカルボン酸形成の検出における使用を見出す。いくつかの実施形態において、本技術は、これらの特徴、例えば、脱リン酸化、脱メチル化、脱アセチル化、脱グリコシル化、脱アミド化、脱ヒドロキシル化、脱ユビキチン化等の欠失の検出における使用を見出す。いくつかの実施形態において、本技術は、DNAまたはRNAに対するエピジェネティック修飾(例えば、メチル化(例えば、CpG部位のメチル化)、ヒドロキシメチル化)の検出における使用を見出す。いくつかの実施形態において、本技術は、これらの特徴、例えば、DNAまたはRNAの脱メチル化等の欠失を検出する際に使用される。いくつかの実施形態において、本技術は、クロマチン構造、ヌクレオソーム構造、ヒストン修飾等の変化の検出、および核酸に対する損傷の検出における使用を見出す。
【0290】
いくつかの実施形態において、本技術は、例えば、少量の検体体積を有するサンプル(例えば、郵送サービスのための、例えば、血液の液滴)を分析するための、分子診断アッセイとしての使用を見出す。いくつかの実施形態において、本技術は、非常に低存在量の分析物バイオマーカーの高感度検出を使用して、癌または感染性疾患の早期検出を提供する。いくつかの実施形態において、本技術は、タンパク質バイオマーカーのエピジェネティック修飾(例えば、翻訳後修飾)を分析するための分子診断における使用を見出す。
【0291】
いくつかの実施形態において、本技術は、多分子複合体、例えば、多タンパク質複合体、核酸/タンパク質複合体、分子機械、オルガネラ(例えば、血漿中の無細胞ミトコンドリア)、細胞、ウイルス粒子、生物、組織、またはまたは捕捉され得て、本明細書中に記載される技術による分析に従う任意の巨大分子構造または物体の特徴付け(例えば、多分子複合体の1つ以上の構成要素の特徴付け)における使用を見出す。例えば、いくつかの実施形態において、多分子複合体が単離され、本技術は、当該多分子複合体に関連する1つ以上の分子(分析物)の特徴付け、同定、定量化、および/または検出における使用を見出す。いくつかの実施形態において、細胞外小胞が単離され、本技術は、当該小胞に関連する1つ以上の分子(分析物)の特徴付け、同定、定量化、および/または検出における使用を見出す。いくつかの実施形態において、本技術は、小胞内に存在するタンパク質(例えば、表面タンパク質)および/または分析物(例えば、本明細書中に記載されるタンパク質、核酸、または他の分析物)の特徴付け、同定、定量化、および/または検出における使用を見出す。いくつかの実施形態において、小胞は、分析前に固定され、透過処理される。
【0292】
いくつかの実施形態において、単一細胞(例えば、ヒト、哺乳類、脊椎動物、真核生物、または原核生物の細胞)、単一オルガネラ(例えば、ミトコンドリア、核、ゴルジ体)、細胞内小胞(例えば、エキソソーム)、および/または細胞内凝集粒子(例えば、無細胞膜オルガネラ(例えば、細胞内エキソソーム、タンパク質凝集体))が単離される(例えば、別個のウェル、マイクロウェル、マイクロ流体チャネル、サンプルチャンバ、試験管、マイクロ遠心分離管、または他の容器もしくは区画において、あるいは同じ区画の別個の領域において)。いくつかの実施形態において、単一の細胞、オルガネラ、細胞内小胞、および/または細胞内凝集粒子は、生きているまたは化学的に固定された細胞、組織、コロニー、または生体液から物理的抽出によって(例えば、吸引、流体力、または光学トラッピングを使用して)単離される。いくつかの実施形態において、単一の細胞、オルガネラ、細胞内小胞、および/または細胞内凝集粒子は、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織から単離される。いくつかの実施形態において、単一の細胞、オルガネラ、細胞内小胞、および/または細胞内凝集粒子は、流体操作(例えば、蛍光励起細胞分取、FACS:fluorescence-activated cell sorting)もしくはマイクロ流体操作によって、または培養皿、顕微鏡スライドもしくはカバースリップの別々のウェルもしくは領域への分離によって、または3D細胞培養培地もしくはマトリックスの異なる領域において、懸濁液から単離される。いくつかの実施形態において、電場および/または磁場を使用して、単一の細胞、オルガネラ、細胞内小胞、および/または細胞内凝集粒子を他の生物学的構成要素からの分離を達成する。すなわち、いくつかの実施形態において、電場および/または磁場は、単一の細胞、オルガネラ、細胞内小胞、および/または細胞内凝集粒子を単離するために使用される。
【0293】
いくつかの実施形態において、単一細胞(例えば、ヒト、哺乳類、脊椎動物、真核生物、または原核生物の細胞)、単一オルガネラ(例えば、ミトコンドリア、核、ゴルジ体)、細胞内小胞(例えば、エキソソーム)、および/または細胞内凝集粒子(例えば、無細胞膜オルガネラ(例えば、細胞内エキソソーム、タンパク質凝集体))は、(例えば、細胞溶解緩衝液;SDS、Triton X-100、またはデオキシコール酸等の界面活性剤;および/またはプロテアーゼ、リパーゼ、またはヌクレアーゼ等の酵素で)処理されて、各単一の細胞、オルガネラ、細胞内小胞、および/または細胞内凝集粒子から分析物を放出する。いくつかの実施形態において、単一の細胞、オルガネラ、細胞内小胞、および/または細胞内凝集粒子は、固体支持体の近くの領域で捕捉するために分析物を遊離させるために、固体支持体上またはその近くでin situで処理される。
【0294】
いくつかの実施形態において、分析物は、固体支持体の表面で捕捉される。いくつかの実施形態において、分析物は、固体支持体上に捕捉する前に、単一の細胞、オルガネラ、細胞内小胞、および/または細胞内凝集粒子の内容物を別の混合物と混合して、水性二相系を形成することによって濃縮される。
【0295】
いくつかの実施形態において、分析物は、単一分子検出方法(例えば、SiMREPS)によって検出される。
【0296】
ここでの開示は、特定の説明された実施形態について言及するが、これらの実施形態は、単なる例として与えられたものであって、制限する目的で与えられたものではないことを理解されたい。
【0297】
〔実施例〕
(方法)
この研究で使用した全ての未修飾DNAオリゴヌクレオチドは、標準的な脱塩精製を伴い、Integrated DNA Technologies(IDT)から購入した。蛍光プローブオリゴヌクレオチドは、5’または3’フルオロフォア修飾および高速液体クロマトグラフィー(HPLC)精製のいずれかを伴い、IDTから購入した。ビオチン化LNA捕捉プローブは、HPLC精製を伴い、Exiqonから購入した。二本鎖DNA塩基は、アニーリング緩衝液(10mM Tris-HCl[25℃でpH8.0]、50mM NaCl、1mM EDTA)中で相補的オリゴヌクレオチド(各鎖20μM)を組み合わせ、95℃で5分間加熱し、続いて室温で15分間ゆっくり冷却することによって調製した。
【0298】
SiMREPS実験を、Cell^TIRF及びz-ドリフト制御モジュールの両方を備えた60×油浸対物レンズ(APON 60XOTIRF、1.49 NA)と、EMCCDカメラ(IXon 897、Andor,EMゲイン150)とを備えたOlympus IX-81対物型TIRF顕微鏡で行った。いくつかの実験において、前述のようにサンプルセルを構築した(例えば、Johnson-Buck et al. (2015) “Kinetic fingerprinting to identify and count single nucleic acids” Nat. Biotechnol. 33: 730-32参照されたい。これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。簡単に述べると、ガラスカバースリップを、ビオチン-PEG-5000およびmPEG-5000(Laysan Bio, Inc.)の1:10混合物で不動態化し、窒素下で2週間まで暗所で保存した。単一分子実験の直前に、20μLピペットチップ(Eppendorf、低接着性)を1cmの全長に切断し、カットしていない底部をエポキシ(Double Bubble、ハードマン接着剤)を介してコーティングされたガラスカバースリップに接着させて、完成した耐水性サンプルセルを形成した。指示がある場合、制限された開口部を含むサンプルウェルおよびATPS濃度を使用して、分析物をサンプルセル上に堆積させた。
【0299】
本研究で用いたSiMREPSプロトコルは、以下の3つの主要な改変を伴って、先に述べた方法(例えば、Johnson-Buck et al. (2015) “Kinetic fingerprinting to identify and count single nucleic acids” Nat. Biotechnol. 33: 730-32を参照されたい(これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる))に基づいた:(1)LNA濃度を、表面コーティングの間に20nMから100nMに増加させた;(2)ここで使用される低ナノモル濃度およびサブナノモル濃度のDNA濃度に有効な熱変性工程を、標的DNA鎖へのアクセスを増加させるために、分析物捕捉の直前に追加した;および(3)T790Mサンプルをプローブするときに、LNAブロッカーおよび野生型競合物(WTC:wild-type competitor)を含む2つのさらなるオリゴヌクレオチドを、イメージング溶液に添加した。全てのDNAの取り扱いは、GeneMate低接着性1.7mLマイクロ遠心管中で行い、全ての希釈および変性工程は、2μMポリ-Tオリゴデオキシリボヌクレオチド(dT10)の存在下で行った。更新されたプロトコルは、以下のように実行した。最初に、サンプルセルをT50緩衝液(10mM Tris-HCl[25℃でpH8.0]、1mM EDTA)で洗浄し、次いで、40μLの1mg/mLストレプトアビジンと共に10分間インキュベートした。次いで、サンプルセルをT50緩衝液で洗浄して過剰のストレプトアビジンを除去し、40μLの100nMビオチン化LNAと共に10分間インキュベートし、1×PBSで洗浄した。次いで、標的DNAオリゴヌクレオチドを、サーモサイクラー中で95℃で3分間(特に明記しない限り)変性させ、室温の水中で5分間(部分的な浸漬を介して)冷却し、次いで直ちにLNA被覆表面に添加した。DNA捕捉は、加湿チャンバ中、室温で1時間行った。捕捉後、過剰のDNAを4×PBSで除去した。イメージングの直前に、25nM蛍光プローブ、4×PBS、5mM 3,4-ジヒドロキシベンゾエート、50nMプロトカテク酸ジオキシゲナーゼ、および1mM Troloxを含有するイメージング緩衝液をサンプルセルに添加した。T790Mを特異的にプローブする場合、25nM LNAブロッカーおよび1μM WTCもイメージング溶液に添加した)。蛍光プローブの一過性の結合を、500m秒露光時間(1200トータルフレームを取得)で640nMレーザ光によるTIRF照明下で10分間モニターした。
【0300】
本研究では、2つの異なる分析パイプラインを用いて動態データを調べた。「回折限界」と呼ばれる第1の分析パイプラインは、蛍光プローブ結合および解離の部位を同定し、強度対時間軌跡を計算するために、カスタムMatlabコードを使用する(例えば、Johnson-Buck et al. (2015) “Kinetic fingerprinting to identify and count single nucleic acids” Nat. Biotechnol. 33: 730-32を参照されたい(これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる))。次に、隠れマルコフモデリング(HMM:Hidden Markov modeling)を、QuBソフトウェアスイート(ニューヨーク州立大学バッファロー校)を使用して適用し、結合事象と解離事象との数(Nb+d)、およびそれぞれの候補分子についての蛍光プローブ結合時間(τbound)および非結合時間(τunbound)の中央値を決定する(Blanco & Walter (2010) “Analysis of complex single-molecule FRET time trajectories” Methods Enzymol. 472: 153-78(これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる))。(i)DNAなし、(ii)野生型DNAのみ、および(iii)変異体DNAのみの対照実験に基づき、真の変異体候補に対して高い感度を保持しつつ、名目上の偽陽性頻度を達成するための動的閾値を定義づけた。すべてのDNA標的に適用される閾値は、シグナル対ノイズ比>3、平均バックグラウンド強度を上回る、平均結合状態強度>500カウント、最大τbound中央値≦20秒、最大τunbound中央値≦30秒、およびNb+d≧20を含む。エクソン19欠失の定量化のために、最小τbound及びτunbound中央閾値は≧2.5秒に設定し、一方、T790M定量化のために、最小τboundおよびτunbound中央閾値は≧3秒に設定した。
【0301】
二本鎖DNA塩基は、化学的に合成したオリゴヌクレオチド(「合成」塩基、前記参照)をアニーリングすることによって、またはプラスミドDNA(「クローン化」塩基)の制限酵素消化によって調製した。使用したクローニングストラテジーは、得られたクローン化DNA塩基が、合成塩基と配列が同一であるようなものであった。この研究で使用したプラスミドはすべて、Addgene(www.addgene.org)から入手可能である。
【0302】
New England Biolabsから購入した酵素を用いて、標準的な分子生物学技術を用いて、所望の野生型または変異体フラグメントの4コピーを含有するプラスミドを調製した。簡単に述べると、部分的に相補的なフォワードオリゴヌクレオチドおよびリバースオリゴヌクレオチドをIDTから購入し、製造業者の推奨に従ってT4ポリヌクレオチドキナーゼ(#M0201S)を用いてリン酸化した。リン酸化オリゴヌクレオチドを、1:1の化学量論で相補鎖を組み合わせ、加熱し、サーモサイクラーを用いてゆっくり冷却することによってアニーリングした。次いで、アニールしたオリゴヌクレオチドを、T4 DNAポリメラーゼ(#M0203S)またはE.coli DNAポリメラーゼI(large Klenow fragment、#M0210S)のいずれかを用いて充填し、完全に相補的な、平滑末端化したフラグメントを作製し、その後、SmaIで線形化したpUC19ベクターにライゲーションし、E.coliのJM109株(Promega、P9751)に形質転換した。コロニーをPCRによってスクリーニングし、≧4コピーの挿入を含むクローンを選択した。全クローンのプラスミド配列をSanger配列決定により確認した。それぞれのマルチインサートプラズミド(pUC19_4xT790_28bpおよびpUC19_4xT790M_28bp)から、MlyIおよびZraI(#R0610Sおよび#R0659S)による消化によって、野生型T790および変異体T790Mクローン化塩基を調製した。ゲル電気泳動および20%ネイティブポリアクリルアミドゲル上でのSYBR gold染色後に、制限消化フラグメントの濃度を標準曲線との比較によって決定した。
【0303】
視野当たりの平均カウント間の差の統計的有意性は、両側の(2-tailed)、独立t検定(unpaired t test)(GraphPad QuickCalcs, www.graphpad.com)を用いて決定した。OriginPro 8ソフトウェアを用いて曲線あてはめ(curve fitting)を行い、線形回帰の間、それぞれのエラー値による計器的重み付け(instrumental weighting)を用いて値を重み付けした。
【0304】
実施例1
本明細書で提供される技術の実施形態の開発中に、分析のために小核酸を表面で濃縮するための実験を行った。実験は、本明細書に記載し、且つ
図1aに示した方法に従って行った。簡単に言えば、DNA分析物は、水性二相系のマイノリティ相中で濃縮され、次いで分析物は分析のためにマイノリティ相から表面で捕捉される(例えば、単一分子分析(例えば、本明細書中に記載されるようなSiMREPSによる))。この方法では、カバースリップ表面での分析物の高い捕捉効率を提供するために、典型的には、約1000×gで10~120分間遠心分離を行う。しかしながら、本明細書に提供される技術の開発中に行われた実験は、1000×gで約1分間の遠心分離が、相分離を提供するのに十分であることを示した。
【0305】
さらに、これらの実験の間に収集されたさらなるデータは、PEG3350、クエン酸ナトリウム、および塩化ナトリウムの混合物を含むATPSが、短い一本鎖または二本鎖DNA(例えば、10~100ntまたはbp(例えば、15~50ntまたはbp(例えば、20~30ntまたはbp)))を有効に分配および濃縮することを示した。特定の実施形態において、本明細書に記載されるATPS技術による核酸の濃縮は、上皮成長因子受容体(EGFR)変異体T790Mについてのアッセイの感度を約80倍まで増加させ(例えば、
図1bおよび
図1cを参照のこと)、これは、約100分子コピーの検出限界をもたらした。したがって、この技術は、PCR分析の感度と同様の感度を有する。
【0306】
実施例2
本明細書で提供される技術の実施形態の開発中に、ATPSの分析物リッチ相を捕捉基材に接触させるように設計したカスタムサンプルウェルを作製し、試験した。特に、ウェルの底部に制限された開口部(例えば、約0.01~1mm
2の面積を含む)を含むカスタムサンプルウェルを製造した(例えば、
図2参照)。制限された開口部を含むサンプルウェルは、ATPSの分析物リッチ相と下にある基材との間に、約0.01~1mm
2の接触面積を提供する。したがって、制限された開口部を含むサンプルウェルは、効率的な表面捕捉のために、およびいくつかの実施形態においては分析物の検知のために、分析物リッチ相を小さな範囲(例えば、約0.01~1mm
2)に集中させる。
【0307】
実施例3
本明細書で提供される技術の実施形態の開発中に、平衡ポアソンサンプリングを介する単一分子認識(SiMREPS)または単一分子動的フィンガープリンティングを使用して、高い特異性および単一分子感度で分析物を検出するための実験を行った(
図3a~
図3e)。
【0308】
検出方法は、サンプルを加熱して二本鎖(二重鎖)DNAを変性させ、それを一本鎖DNAに変換することを含んだ。相補的な分析物鎖の再アニーリングを阻害するために、高濃度の一本鎖dT10担体の存在下で短時間の熱変性ステップを行った。次に、一本鎖標的DNAを、スライド表面に固定化した標的遺伝子特異的LNA捕捉プローブによって捕捉した。残存する非結合DNAを、本明細書に記載の動力学的フィンガープリンティング法を使用する分析の前に洗浄した。これらの実験では、迅速な結合動態および解離動態を有するように最適化される変異体特異的蛍光プローブを使用した。
【0309】
本技術の実施形態の開発中に、2つの変異体標的DNA対立遺伝子について、検出された(例えば、定量化された)分子に対するDNAストランドネスおよび熱変性の影響を試験するために実験を行った(
図3b~
図3e)。
図3bに示すように、変性二本鎖DNAは、一本鎖DNAの検出と同様のレベルまで標的DNAの検出を増加させた。変性二本鎖DNAは、サンプル中の未変性二本鎖DNA標的の検出と比較して、標的DNAの検出を大幅に増加させた。
【0310】
また、本明細書に記載の技術の実施形態の開発中に、変異体DNA(MUT DNA)、野生型DNA(WT DNA)、またはDNAなし(DNAなし対照)を伴う変異体特異的蛍光プローブを使用して、動的トレースを記録するために実験を行った(例えば、SiMREPSを使用して)(
図3cおよび
図3d)。EGFRエクソン19/欠失(c.2236_2250del15)およびEGFRエクソン20 T790/M(c.2369C>T)を検出するためのプローブを使用した(それぞれ、
図3cおよび
図3d)。動的トレースデータを用いて、EGFRエクソン19欠失およびEGFRエクソン20 T790MについてのSiMREPSアッセイからの標準曲線を構築した(
図3e)。
【0311】
実施例4
本明細書に記載の技術の実施形態の開発中に、単一の水相または2つの水相を生成するPEG、クエン酸塩、およびNaClの濃度を決定するために実験を行った。曇点濁度アッセイデータを収集し、バイノーダル曲線を作成した(
図4)。データは、PEG-3350とクエン酸ナトリウム脱水物(sodium citrate dehydrate)との組み合わせが、2.8% w/wのNaClの存在下で単一の水相または2つの水相を生成することを示す。
【0312】
実施例5
本明細書で提供される技術の実施形態の開発中に、ATPSの下位相への分析物の分配に対するNaClの効果を試験する実験を行った。データは、Cy5標識34ヌクレオチド一本鎖DNA分子の分配を、異なる水性系で測定した実験から収集した。各実験について、100μLのCy5-オリゴヌクレオチドの1μM溶液を以下の系で試験した:
(1)水対照
(2)300μLの60%PEG3350+25μLの33%クエン酸ナトリウム
(3)300μLの60%PEG3350+25μLの33%クエン酸ナトリウム+25μLの5M NaCl
(4)300μLの60%PEG3350+25μLの33%クエン酸ナトリウム+50μLの5M NaCl
(5)300μLの60%PEG3350+15μLの33%クエン酸ナトリウム+50μLの5M NaCl
(6)300μLの60%PEG3350+25μLの33%クエン酸ナトリウム+100μLの5M NaCl。
【0313】
収集したデータは、混合物(2)および(5)は、同様の体積の低クエン酸塩およびDNAリッチ相を示したが、混合物(5)は、混合物(5)について観察したより強い青色によって示されるように、より高い濃度のDNAを含んだことを示した。したがって、データは、NaClを加えることでDNAオリゴヌクレオチドの下位相への分配が改善されることを示した。
【0314】
さらに、Cy5標識34ヌクレオチドDNAの1μM溶液をクエン酸ナトリウム、NaClおよびPEG3350の凍結乾燥混合物に添加して、ATPS混合物中のDNAの濃度を試験する実験を行った。成分の最終濃度を以下の表1に示す:
【0315】
【0316】
下位相中のDNA濃度をUV-可視分光光度測定によって測定した。データは、ATPSがPEG3350およびNaCl濃度を一定に保ちながら、系中のクエン酸ナトリウムの質量分率を減少させることによって、下位相中のDNA濃度の増加を提供することを示す。
【0317】
実施例6
本明細書で提供される技術の実施形態の開発中に、3つの異なるマトリックス:PBS(100μLサンプル体積)、PEG/クエン酸ナトリウム/NaCl ATPS(100μLサンプル体積)、およびPEG/クエン酸ナトリウム/NaCl ATPS(20μLサンプル体積)中でのDNAの1時間のインキュベーション後に、視野あたりのSiMREPS動的フィンガープリンティングによるDNAの検出を試験するための実験を行った。指示されたサンプル体積をPBSまたはATPSに添加し、固定化およびSiMREPSによるアッセイのために下位相を表面に接触させた。収集されたデータは、本技術が半分を上回るATPSの感度改善を維持しながら、DNAの投入体積の5倍の減少を提供したことを示した(
図5)。
【0318】
実施例7
本明細書で提供される技術の実施形態の開発中に、ATPSを用いてSiMREPSによるPCRフリー検出を試験するための実験を行った。詳細には、EGFR遺伝子由来の内因性低分子量DNAフラグメントをヒト尿サンプルから単離し、次いでPEG3350(39% w/w)、クエン酸ナトリウム(1.2% w/w)、およびNaCl(2.8% w/w)を含む水性二相系を用いてSiMREPS動的フィンガープリンティングによって分析した実験からデータを収集した。DNAを、担体オリゴ(dT)
10鎖の存在下で、95℃で3分間変性させ、次いで室温に冷却した後に、PEG3350、クエン酸ナトリウム、およびNaClの凍結乾燥固体混合物と混合した。SiMREPSは、ATPSなしで約1fMの検出限界を有するが、ここでのATPSの使用は、DNAのサブフェムトモル濃度の検出を可能にする。水性二相系は、野生型DNAを検出するのに十分な感度をもたらすが、変異体DNAはバックグラウンドを超えるレベルでは検出されない(
図6)。
【0319】
実施例8
本明細書で提供される技術の実施形態の開発中に、熱変性および水性二相系における濃縮後の二本鎖DNAの再ハイブリダイゼーションを防止するために、相補的オリゴヌクレオチドを使用することを試験するための実験を行った。この一連の実験では、28塩基対二本鎖DNAフラグメント(EGFR遺伝子の領域に対応する)を、28塩基対二重鎖の標的鎖に部分的に相補的であるが残りの14塩基対(表面捕捉を妨げる)を覆い隠さない14塩基オリゴヌクレオチド(「タイル」)の存在下または非存在下にて、1×PBS中で95℃で熱変性させた。混合物を熱変性後に冷却し、次いで凍結乾燥成分と十分に混合して、水性二相系(1.2% w/wクエン酸ナトリウム、2.8% w/w NaCl、39% w/w PEG3350)を形成した。下相でDNAを濃縮した後、濃縮DNAを含むATPSの下相を、28塩基対二重鎖の標的鎖の一部に相補的なLNA含有捕捉プローブでコーティングしたカバースリップに接触させた。
【0320】
収集されたデータは、「タイル」オリゴヌクレオチドを含むことが、SiMREPS動的フィンガープリンティングアッセイにおける感度を約6倍増加させたことを示した(受容カウント(Accepted Count)によって判断されるように、
図7)。標的DNAは、10fM(10
-14M)の名目上の濃度で存在し、ATPS形成成分の添加前に10μLの体積で調製した。これらの濃度は、混合物中の約60,000個の分析物分子の総コピー数に相当した。したがって、イメージング効率は視野当たり約6.7%(4000カウント/60,000分析物分子)であり、分析物の全体的な捕捉効率は33%と推定される(単一のウェルは直径約300μmであり、約5つの視野に相当する領域を含み、カバースリップのイメージング可能な領域全体にわたって推定20,000分子が固定化されるため)。
【0321】
さらに、相補的な短いオリゴヌクレオチド(例えば、14塩基対の長さ)または「タイル」が、標的の2つの相補鎖の再ハイブリダイゼーションを妨げるか、または遅くするために含まれる場合に、より長い二本鎖DNA標的がより高い効率で捕捉される。T790M突然変異を含むEGFR遺伝子の60bpおよび160bpフラグメントの捕捉を改善するためにタイルを用いた実験からデータを収集した。捕捉効率は、タイルオリゴを含めることによって約8~9倍増加する(
図8)。
【0322】
実施例9
本明細書に記載される技術の実施形態の開発中に、ATPSがRNA分析物を濃縮するために使用され得るかどうかを試験するために、実験を行った。これらの実験の間に収集されたデータは、RNA分析物が本明細書中に記載される技術にしたがって、より小さい体積の相において濃縮されることを示した。これらの実験では、約22ヌクレオチド長の2つの蛍光標識マイクロRNAを使用した(例えば、miR-21およびmiR-200a)。収集されたデータは、フルオロフォア標識miR-21およびmiR-200aが、底部、すなわち、PEG3350(16% w/w)、クエン酸ナトリウム(6% w/w)、およびNaCl(2.8% w/w)を含む水性二相系の底部のクエン酸リッチ相に隔離されたことを示した。
【0323】
実施例10
本明細書で提供される技術の実施形態の開発中に、DNAに対するTIRFに基づくSiMREPSアッセイの感度を増加させるために、様々な濃度ストラテジーを試験した。前濃縮、延長されたインキュベーション、印加された外部電圧、または減少された捕捉面積を含むいくつかのストラテジーを試みた(表2)。しかし、10倍より高い感度を生じる唯一のストラテジーは、PEG3350、クエン酸ナトリウム、およびNaClを含有する水性二相系であった。このATPSと組み合わせて、カスタムサンプルウェル形状(
図2を参照のこと)を使用する捕捉領域の制限は、50倍を超える感度の再現可能な改善を提供した。
【0324】
【0325】
実施例11
本明細書で提供される技術の実施形態の開発中に、単一分子アッセイの感度に対するATPS中のサンプルpHおよびクエン酸塩pHの効果を試験するために実験を行った。DNA分析物を含むPBS緩衝液のpHを変化させ、その効果をSiMREPS実験で分析した。さらに、PEG/クエン酸塩/NaCl ATPS中のクエン酸塩のpHを変化させ、効果を測定した。
【0326】
サンプルのpHを変化させた場合(pH8.74、pH8.54、およびpH7.92)、8.04のPBSの標準pHからpHが減少するにつれて、受容カウントは非常にわずかに減少した。ATPSのクエン酸塩はATPSの緩衝能を支配し、したがって、PBSのpH変動は、本明細書に記載されるように、ATPSによる分析物の濃度において無視できる。
【0327】
ATPS構成要素のpHを変化させるために、クエン酸塩/クエン酸比またはHClの添加を用いてATPSのpHを低下させた(pH7.58、pH6.37、およびpH5.91を試験した)。データは、ATPSクエン酸塩緩衝液のpHを低下させると、許容カウントが減少することを示した。
【0328】
したがって、データは、ATPSに添加されたDNAサンプルのpHは、SiMREPSカウントに有意に影響しないようであることを示した。データは、ATPSシステムのpHを低下させるとカウントが減少するようであることを示した。
【0329】
実施例12
本明細書で提供される技術の実施形態の開発中に、表面14における分析物の電気泳動送達および濃縮のためのサンプルセルを設計および作製するために、実験を行った(例えば、
図9を参照のこと)。サンプルセル10は、内側チャンバ11と外側チャンバ12とを含む。内側チャンバ11は、分析物を含む組成物(例えば、分析物を含むサンプル)13を保持し、分析物を含む組成物13と表面との接触を提供し、分析物を表面上に沈着させるように設計される。したがって、内側チャンバ11は表面14に接触する開口部15を備え、分析物を含む組成物はこれを介して表面14に接触する。いくつかの実施形態において、内側チャンバの開口部15は、約10mm未満、9mm、8mm、7mm、6mm、5mm、4mm、3mm、2mm、または1mm(例えば、10000μm未満、9500μm、9000μm、8500μm、8000μm、7500μm、7000μm、6500μm、6000μm、5500μm、5000μm、4500μm、4000μm、3500μm、3000μm、2500μm、2000μm、1500μm、1000μm、950μm、900μm、850μm、800μm、750μm、700μm、650μm、600μm、550μm、500μm、450μm、400μm、350μm、300μm、250μm、200μm、150μm、または100μm)の幅を有する。したがって、いくつかの実施形態において、分析物を含む組成物13は、約10mm未満、9mm、8mm、7mm、6mm、5mm、4mm、3mm、2mm、または1mm(例えば、10000μm未満、9500μm、9000μm、8500μm、8000μm、7500μm、7000μm、6500μm、6000μm、5500μm、5000μm、4500、4000μm、3500μm、3000μm、2500μm、2000μm、1500μm、1000μm、950μm、900μm、850μm、800μm、750μm、700μm、650μm、600μm、550μm、500μm、450μm、400μm、350μm、300μm、250μm、200μm、150μm、または100μm;例えば、約100mm
2未満の面積にわたって、例えば、100mm
2未満、95mm
2、90mm
2、85mm
2、80mm
2、75mm
2、70mm
2、65mm
2、60mm
2、55mm
2、50mm
2、45mm
2、40mm
2、35mm
2、30mm
2、25mm
2、20mm
2、18mm
2、16mm
2、14mm
2、12mm
2、10mm
2、9mm
2、8mm
2、7mm
2、6mm
2、5mm
2、4mm
2、3mm
2、2mm
2、1mm
2、0.8mm
2、0.7mm
2、0.6mm
2、0.5mm
2、0.4mm
2、0.3mm
2、0.2mm
2、0.1mm
2、0.08mm
2、0.06mm
2、0.05mm
2、0.02mm
2、または0.01mm
2)の幅を有する面積にわたって表面14に接触する。
【0330】
外側チャンバ12は(例えば、小さな電解質(例えば、イオン(例えば、カチオン、アニオン))を含む)緩衝液16を保持し、内側チャンバ11を取り囲む。外側チャンバ12は、内側チャンバ11の外への分析物の移動を防止しながら、小さい電解質(例えば、緩衝液成分(例えば、イオン(例えば、カチオン、アニオン)))の自由な流動を可能にする、ナノ多孔質、メソ多孔質、またはミクロ多孔質材料を含む基部17を備える(例えば、
図9を参照のこと)。いくつかの実施形態において、ナノ多孔質、メソ多孔質、またはミクロ多孔質材料は、ポリマー(例えば、アガロース、ポリアクリルアミド等)である。
【0331】
いくつかの実施形態において、内側チャンバ壁は表面14に接触しない。いくつかの実施形態において、内側チャンバ壁は、約10~100μm(例えば、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、35μm、40μm、45μm、50μm、55μm、60μm、65μm、70μm、75μm、80μm、85μm、90μm、95μm、または100μm)の距離だけ表面から分離されて、内側チャンバ11と表面14との間にギャップ18を提供する(例えば、
図9を参照のこと)。いくつかの実施形態において、ギャップ18は、電流が内側チャンバ11と外側チャンバ12との間を流れることを可能にする(例えば、
図9を参照のこと)。
【0332】
いくつかの実施形態において、表面14は、ガラス顕微鏡カバースリップである。
【0333】
いくつかの実施形態において、電圧19は、内側チャンバ11および外側チャンバ12横切って印加されて、帯電した分析物(例えば、負に帯電したDNA)を表面14に向かって移動させる。
図9は、外側チャンバに配置された正端子と、内側チャンバに配置された負端子とを示すが、本技術はこの構成に限定されず、内側チャンバに配置された正端子と、外側チャンバに配置された負端子とを有する実施形態を含む。いくつかの実施形態において、外側チャンバ底部17(例えば、アガロースまたはポリアクリルアミドマトリックスを含む)は、内側チャンバ11と外側チャンバ12との間の水性緩衝溶液の流動を防止し、内側チャンバ壁の底部の外への分析物の移動を最小化するかまたは排除する。任意選択的に、いくつかの実施形態において、底部17の細孔(例えば、アガロースまたはポリアクリルアミド)は、適切な材料(例えば、分岐ポリマー(例えば、硫酸デキストラン))でブロックされて、外側チャンバ底部17の外への分析物の移動を最小化するかまたは排除する。本技術の実施形態の開発中に、蛍光標識DNAを使用して、硫酸デキストランが内側チャンバから外へのDNAの移動を妨げたことを確認した。
【0334】
本技術の実施形態の開発中に、三次元印刷技術を使用して、電気泳動送達および表面での分析物の濃縮のためのサンプルセルを作製した(例えば、
図10を参照のこと)。
【0335】
本技術の実施形態の開発中に、本明細書に記載されるようなサンプルセルを構築し、これを使用して、表面でDNAを濃縮した。蛍光標識DNAをイメージング表面付近に濃縮するための電気泳動の使用を実証するために実験を行った。蛍光標識DNAの溶液を電気泳動セルの内側チャンバに添加し、交流電圧(約0Vおよび60V~200V)を約1分間の振動周期で印加して、表面に向かうDNAの移動をもたらし、その結果、表面でDNAを濃縮した(例えば、
図11Aを参照のこと)。DNA不透過性の多孔質材料(例えば、硫酸デキストランで予めブロックしたポリアクリルアミド)は、ウェルから外へのDNAの移動を防止する。
【0336】
蛍光顕微鏡法(全反射照明蛍光、TIRF:total internal reflection fluorescence)データを収集して、交流電圧下で表面におけるDNA濃度を定量した(
図11B)。収集されたデータによって示されるように、電気泳動電圧の存在下でのバルク溶液中のDNAの時間平均濃度は、電気泳動電圧の非存在下でのバルク溶液中のDNAの時間平均濃度よりも、表面において50倍~100倍高かった。
【0337】
さらに、実験の間に収集されたデータは、5~50mg/mLの硫酸デキストランで予めブロックした32%ポリアクリルアミドマトリックスは、短いDNAフラグメント(例えば、約30塩基対)の内側チャンバから外への移動を防ぐのに十分であったことを示した。
【0338】
特に、ポリアクリルアミド多孔質底部を、5mg/mLの硫酸デキストランで予めブロッキングして、および予めブロッキングせずに調製した。目に見えるように染色した34ヌクレオチドオリゴヌクレオチドを実験に使用して、多孔質底部を通る核酸の電気泳動を評価した。電気泳動後、硫酸デキストランを含む多孔質底部、および硫酸デキストランを含まない多孔質底部の写真を撮った。写真は、34ヌクレオチドオリゴヌクレオチドが、電気泳動後に内側チャンバから外へ、および多孔質底部(32%ポリアクリルアミド)中に移動したが、多孔質底部中への移動は、5mg/mL硫酸デキストランによってブロックしたポリアクリルアミドによって阻害されたことを示した。いくつかの実施形態において、硫酸デキストランは、DNAを内側チャンバ中へと導入する前に、内側チャンバからポリアクリルアミド中へと電気泳動された。
【0339】
実験は硫酸デキストランでブロックしたポリアクリルアミドの使用を試験したが、この技術はこの特定の材料に限定されない。例えば、多孔質シリカ、再生セルロース、および他のマトリックスを使用することもでき、これらは分析物を排除するのに十分に小さいが、電流の流れを可能にするのに十分に大きく且つ連続している細孔径を有する。さらに、実施形態は、ブロッキング剤(例えば、硫酸デキストラン)を例えば濃度1mg/mL、2mg/mL、3mg/mL、4mg/mL、5mg/mL、6mg/mL、7mg/mL、8mg/mL、9mg/mL、10mg/mL、12mg/mL、15mg/mL、20mg/mL、22mg/mL、25mg/mL、30mg/mL、35mg/mL、40mg/mL、45mg/mL、または50mg/mLの濃度で予めブロッキングすることを含む。
【0340】
いくつかの実施形態において、交流電圧の使用が、表面に向かう分析物の移動を引き起こし、電圧の周期的な低下は、表面での効率的かつ均一な捕捉のために、分析物が表面にわたって自由に拡散することを可能にする。
【0341】
この技術は、高濃度因子(例えば、元の溶液に対して表面で少なくとも50倍~100倍の濃度)を提供する。さらに、この技術は、タンパク質および核酸を含む多種多様な分析物と適合性があるが、ただし、それらはそれらの安定性と適合可能なpHで荷電され得ることを条件とする。この技術は、その後の溶液のピペッティングまたは操作を必要とせずに、非常に小さい捕捉領域(<1mm)にわたって非常に大きい体積の溶液(例えば、数ミリリットル)から分析物を濃縮する際における使用を見出す。
【0342】
実施例13-核酸についてのATPS分配係数の決定
本明細書に記載の技術の実施形態の開発中に、PEG/クエン酸ナトリウム/塩化ナトリウム水性二相系中の28ヌクレオチド一本鎖DNA分子(例えば、GTCCAGGAGGCAGCTAATACTTGTTGCG;配列番号1)についての分配係数を決定するために実験を行った。PEG/クエン酸ナトリウム/塩化ナトリウムのATPSをストック溶液から生成し、28ヌクレオチド一本鎖DNA分子をATPSに添加した。2つの相の間で核酸を平衡化した後、各相からサンプルを採取した。サンプルを変性ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動して、下のクエン酸塩リッチ相および上のPEGリッチ相へのDNAの分配を特徴づけた(
図12A)。クエン酸塩リッチ相をPEGリッチ相に対して500倍に希釈した後、ゲルにロードして、検出器を飽和させることなく、単一の機器上の2つのレーンにおけるDNAの同時定量を可能にした。染色は、SYBR goldで行った。ゲル上のバンドの強度を、染色したゲルをイメージングすることによって定量して、分配係数を決定した(
図12B)。各相で定量したDNAの量を、クエン酸塩リッチ相の500倍希釈係数について補正した。このDNAオリゴヌクレオチドの見かけの分配係数は、1590であると決定された。
【0343】
次に、2.8% w/w NaClの存在下または非存在下で、PEG/クエン酸ナトリウムATPS中の28ヌクレオチド一本鎖DNAオリゴヌクレオチド(例えば、GTCCAGGAGGCAGCTAATACTTGTTGCG;配列番号1)の分配を測定するために、本明細書中で提供される技術の実施形態の開発中に実験を行った。2つの相の間の分配を、例えば、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、続いてSYBR gold染色、およびゲル上のバンドを定量するためのデンシトメトリーを使用して、前記の実験の場合のように定量した。クエン酸塩リッチ相をPEGリッチ相に対して500倍に希釈した後、ゲルにロードして、検出器を飽和させることなく、単一の機器上の2つのレーンにおけるDNAの同時定量を可能にした。算出した分配係数は、NaClの存在下および非存在下で、それぞれ2030および249であった(
図13)。エラーバーは、3つの独立した反復に基づく+/-1標準偏差を表す。
【0344】
最後に、本明細書中に提供される技術の実施形態の開発の間に、SiMREPSアッセイのためのサンプルを提供するために、核酸のATPS濃縮の使用を試験するための実験を行った。特に、マイクロRNAのサンプルを濃縮するために、PEG/クエン酸ナトリウム/NaCl ATPSを事前に使用して、および使用せずに、マイクロRNA miR-16を検出するために、SiMREPSアッセイからデータを収集した。核酸を濃縮するためのこのATPSの使用によるSiMREPSの感度における見かけの増加は、約9倍であった(
図14)。エラーバーは、2つの独立した反復からの1つの標準偏差を表す。
【0345】
前記明細書に記載された全ての刊行物および特許は、全ての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。記載された組成物、方法、および技術の使用の種々の改変およびバリエーションは、記載された技術の範囲および精神から逸脱することなく、当業者に明らかである。本技術は特定の例示的な実施形態に関連して説明されてきたが、特許請求される本発明は、そのような特定の実施形態に過度に限定されるべきではないことを理解されたい。実際に、当業者に明らかな、本発明を実施するための記載された態様の種々の改変は、以下の特許請求の範囲の範囲内であることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0346】
【
図1】
図1a、1b、1cは、二本鎖変異DNAのためのSiMREPSアッセイにおいて検出された分子を増加させることによって実証されるように、捕捉効率およびアッセイ感度を高めるために、DNAバイオマーカーを表面近くに濃縮するための水性二相系の使用を示している。
図1aは、捕捉効率およびアッセイ感度を高めるために、バイオマーカーを表面近くに濃縮するために水性二相系を使用する本技術の実施形態の工程を示す図である。
図1aにおいて、DNA分析物は、水性二相系のマイノリティ相(例えば、より小さい体積を有する相)中で濃縮され、そして分析物は続いて、分析のために表面において前記マイノリティ相から捕捉される(例えば、単一分子分析によって(例えば、本明細書中に記載されるようなSiMREPSによって))。遠心分離は、典型的にはカバースリップ表面での分析物の高い捕捉効率を提供するために、約1000×gで10~120分間行われる。しかしながら、本明細書において提供される技術の開発中に行われた実験は、1000×gで約1分間の遠心分離が相分離を提供するのに十分であることを示した。
【0347】
図1bは、本明細書において提供されるATPS技術に従って濃縮していない(「-ATPS」)、および本明細書において提供されるAPTS技術に従って濃縮した後(「+ATPS」)に、表面上に捕捉され、そしてイメージングされた分析物の2つの写真を示す。それぞれの写真は、約52×52μm
2の顕微鏡視野を示す。
図1bにおいて、分析物は、非小細胞肺癌において治療抵抗性を引き起こす臨床的に重要なEGFR突然変異であるEGFRのT790M置換をコードするDNAの28塩基対フラグメントである。
【0348】
図1cは、水性二相系(例えば、PEG3350(例えば、約39% w/w)、クエン酸ナトリウム(例えば、約1.2w/w)、および塩化ナトリウム(例えば、約2.8% w/w)を含む)を使用して、EGFR変異体T790Mについての動的フィンガープリンティング(kinetic fingerprinting)の感度が80倍超増加することを示すプロットである。表面捕捉されたEGFR変異体T790M分析物をイメージングし、画像分析によってカウントした。約118×118μm
2の面積あたりの表面に固定化された25の分析物の密度を、本明細書において提供されるATPS技術にしたがって、濃度がない状態でカウントした。対照的に、同じ約118×118μm
2の面積あたりの表面に固定化された2001分析物の密度を、本明細書において提供されるATPS技術にしたがって、表面で分析物を濃縮した後にカウントした。
【
図2】
図2は、分析物の効率的な表面捕捉および検出のための固相支持体(例えば、カバースリップ)の小さな範囲にわたる分析物リッチな相の集束を可能にするために、下にある基材との制限された接触領域(0.01~1mm
2)を作り出す特注のサンプルウェルの図面および写真を示す。
【
図3】
図3は、平衡ポアソンサンプリングを介する単一分子認識(SiMREPS:single-molecule recognition through equilibrium Poisson sampling)または単一分子動的フィンガープリンティングを用いた、高い特異性および単一分子感度を有する分析物の検出を示す。
図3aは、DNA検出に適合した実験的SiMREPSアプローチを示す図である。相補的な分析物鎖の再アニーリングを不利にするために、高濃度の一本鎖dT
10担体の存在下で、二本鎖(二重鎖)DNAを短時間の熱変性によって一本鎖DNAに変換した。一本鎖標的DNAは、スライド表面上に固定化された標的遺伝子特異的なロックド核酸(locked nucleic acid)捕捉鎖によって捕捉され、そして残りの未結合DNAは、速い結合動態および解離動態を有するように最適化される変異体特異的蛍光プローブを用いた動的フィンガープリンティングの前に洗い流される。
図3bは、2つの変異体標的DNA対立遺伝子について、検出された分子の数(「カウント」として示される)に対するDNAストランドネス(strandedness)および短時間の熱変性の効果を示す。データは、n=3の独立した測定値の平均±標準誤差(s.e.m.)として提示される。
図3c~3dは、(c)EGFRエクソン19/欠失(c.2236_2250del15)および(d)EGFRエクソン20 T790/M(c.2369C>T)について、変異体DNA(MUT DNA)、野生型DNA(WT DNA)、またはDNAなし(DNAなし対照)を伴う変異体特異的蛍光プローブを用いた代表的な動的トレースを示す。実験中に記録された蛍光強度トレースはブラックで示され(「ノイズの多い」トレース)、隠れマルコフモデリングからの2状態理想化は灰色の線として示される(「ノイズの多い」トレースの平滑な平方フィット(squared fit))。(e)EGFRエクソン19欠失およびEGFRエクソン20 T790MについてのSiMREPSアッセイからの標準曲線。エラー加重線形フィット(Error-weighted linear fit)は、0のy切片に制約された;R
2=0.982(エクソン19の欠失)、0.999(T790M)。データは、n=3の独立した測定値の平均±標準誤差として示される。FOV(field of view)、視野。
【
図4】
図4は、曇点濁度アッセイから収集したデータからプロットしたバイノーダル曲線(binodal curve)である。データは、2.8% w/w NaClの存在下で単一の水相(曲線より下)または2つの水相(曲線より上)を生成するクエン酸ナトリウム二水和物およびPEG-3350の濃度を示す。
【
図5】
図5は、3つの異なるマトリックス中で1時間インキュベートした後の視野当たりのSiMREPS動的フィンガープリンティングによって検出された28ヌクレオチドDNAオリゴヌクレオチドの分子数(「受容カウント」)を示すプロットである;PBS(サンプル体積100μL)、PBS+PEG/クエン酸ナトリウム/NaCl ATPS(ATPS形成成分に添加する前のPBS中のサンプル体積100μL);PBS+PEG/クエン酸ナトリウム/NaCl ATPS(ATPS形成成分に添加する前のPBS中のサンプル体積20μL)。
【
図6】
図6は、ヒト尿サンプルから単離され、次いでPEG3350(39% w/w)、クエン酸ナトリウム(1.2% w/w)、およびNaCl(2.8% w/w)から構成される水性二相系を用いたSiMREPS動的フィンガープリンティングによって分析された、EGFR遺伝子由来の内因性低分子量DNAフラグメントのPCRを行わない検出を示すプロットである。水性二相系は、野生型プローブ(WT)で野生型DNAを検出するのに十分な感度をもたらすが、変異体DNAはバックグラウンド(MUTプローブ)を超えるレベルでは検出されない。
【
図7】
図7は、水性二相系における熱変性および濃縮後の二本鎖DNAの再ハイブリダイゼーションを防止するための相補的オリゴヌクレオチドを含むことによって提供されるアッセイ感度の増加を示すプロットである。28塩基対二本鎖DNAフラグメント(EGFR遺伝子の領域に対応する標的DNAの10fM)を、28塩基対二重鎖の標的鎖に部分的に相補的であるが残りの14塩基対(表面捕捉を妨げる)を覆い隠さない14塩基オリゴヌクレオチド(「タイル(Tile)」))の存在下(+タイル)または非存在下(-タイル)で熱変性させた。この混合物を熱変性後に冷却し、次いで凍結乾燥成分と十分に混合して、水性二相系(1.2% w/wクエン酸ナトリウム、2.8% w/w NaCl、39% w/w PEG3350)を形成し、28塩基対二重鎖の標的鎖に部分的に相補的であるLNA含有捕捉プローブで被覆されたカバースリップ上に固定化するためのDNAを濃縮する。
【
図8】
図8は、相補的な短いオリゴヌクレオチド(例えば、14塩基対の長さ)、または「タイル」が、標的の2つの相補鎖の再ハイブリダイゼーションを防ぐために含まれる場合、より長い二本鎖DNA標的がより高い効率で捕捉されることを示すプロットである。T790M変異体を含むEGFR遺伝子の60bpおよび160bpフラグメントの捕捉を改善するためにタイルを用いた実験からデータを収集した。捕捉効率は、タイルオリゴを含めることによって約8倍から約9倍増加する。
【
図9】
図9は、本明細書に記載の電気泳動サンプルセルの実施形態の概略図である。
【
図10】
図10は、本明細書に記載の技術の実施形態の開発中に構築され、試験された電気泳動サンプルセルの実施形態の写真である。
【
図11A】
図11Aは、表面(例えば、カバースリップ)で分析物(例えば、DNA)を濃縮するための電気泳動サンプルセルの使用を記載する概略図である。
【
図11B】
図11Bは、本明細書に記載されるような電気泳動サンプルセルの実施形態に印加される電圧、および時間の関数としての表面における正規化DNA濃度を示すプロットである。電圧は、0Vと約170Vとの間で循環し、表面におけるDNA濃度は、DNAに付着した蛍光標識の表面における蛍光を測定することによって検出した。DNA濃度は、約0~50から約350(単位無し、正規化濃度)の間で変化し、約10~15分で高いピークを有するトレースによって示される。約50~100の濃度での平滑化された線は、表面での正規化されたDNA濃度の移動平均(running average)である。
【
図12A】
図12Aは、PEG/クエン酸ナトリウム/塩化ナトリウム水性二相系における28ヌクレオチド一本鎖DNAの分配を定量するポリアクリルアミド電気泳動ゲル実験の画像を示す。
【
図12B】
図12Bは、平衡後のPEGおよびクエン酸ナトリウム/塩化ナトリウム相中の28ヌクレオチド一本鎖DNAの量を測定するための、
図12Aからのゲルバンドの定量を示す棒グラフである。検出器を飽和させることなく、単一の機器上の2つのレーンにおけるDNAの同時定量を可能にするために、ゲルにロードする前に、クエン酸塩リッチ相をPEGリッチ相に対して500倍に希釈した。染色は、SYBR goldを用いて行った。
【
図13】
図13は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、続いてSYBR gold染色によって測定した、2.8% w/w NaClの存在下または非存在下でのPEG/クエン酸ナトリウムATPS中の28ヌクレオチド一本鎖DNAオリゴヌクレオチドの分配の定量を示す棒グラフである。検出器を飽和させることなく単一の機器上の2つのレーンにおけるDNAの同時定量を可能にするために、ゲルにロードする前に、クエン酸塩リッチ相をPEGリッチ相に対して500倍に希釈した。エラーバーは、3つの独立した反復における+/-1標準偏差を表す。
【
図14】
図14は、PEG/クエン酸ナトリウム/NaCl ATPSによる事前濃縮の有無における、SiMREPSによるマイクロRNAの定量を示す棒グラフである。このATPSの使用による感度の見かけ上の増加は約9倍である。エラーバーは、2つの独立した反復由来の1標準偏差を表す。
【配列表】