(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】中空構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 3/12 20060101AFI20230501BHJP
【FI】
B32B3/12 B
(21)【出願番号】P 2021193219
(22)【出願日】2021-11-29
(62)【分割の表示】P 2018053194の分割
【原出願日】2018-03-20
【審査請求日】2021-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000010054
【氏名又は名称】岐阜プラスチック工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】青木 規洋
【審査官】青木 太一
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-520456(JP,A)
【文献】特開2007-301865(JP,A)
【文献】国際公開第2016/181745(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/031479(WO,A1)
【文献】特開2010-247447(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B29C 49/00-49/46;
49/58-49/68;
49/72-51/28;
51/42;
51/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に複数のセルが並設されたコア層と、前記コア層の少なくともいずれかの面に接合されたスキン層を備えてなる樹脂製の中空構造体
の製造方法であって、
塑性を有する1枚のシートを所定の形状に成形してなるシート材を折り畳んで、厚み方向に立設されて前記セルを区画する側壁部と、前記側壁部の上端縁に設けられた上壁部と、前記側壁部の下端縁に設けられた下壁部を備える
前記コア層
を形成する折り畳み工程と、
前記コア層
の前記上壁部及び前記下壁部の少なくともいずれか
を取り除
いて、前記側壁部
に、前記上壁部及び前記下壁部の少なくともいずれかが設けられていない除去後端縁
を形成
する除去工程と、
前記コア層の少なくともいずれかの面
の前記除去後端縁に前記スキン層
を接合
する接合工程と
を備え、
前記折り畳み工程では、第1側壁部と第2側壁部を
有する2層構造
の前記側壁部を備えるとともに、前記第1側壁部と前記第2側壁部が接合されない非接合部が設けられている
前記コア層を形成し、
前記除去工程では、前記上壁部及び前記下壁部の少なくともいずれかの一部を取り除いて、前記除去後端縁が形成されているとともに相対的に厚みが薄い薄肉部を形成する中空構造体
の製造方法。
【請求項2】
内部に複数のセルが並設されたコア層と、前記コア層の
一方の面に接合されたスキン層を備えてなる
熱可塑性樹脂製の中空構造体
の製造方法であって、
塑性を有する1枚のシートを所定の形状に成形してなるシート材を折り畳んで、厚み方向に立設されて前記セルを区画する側壁部と、前記側壁部の上端縁に設けられた上壁部と、前記側壁部の下端縁に設けられた下壁部を備える
前記コア層
を形成する折り畳み工程と、
前記コア層
の前記上壁
部のみを取り除
いて、前記側壁部
に、前記上壁
部が設けられていない除去後端縁
を形成
する除去工程と、
前記コア層
の前記除去後端縁に前記スキン層
を接合
する接合工程と
を備え、
前記折り畳み工程では、第1側壁部と第2側壁部を
有する2層構造
の前記側壁部を備えるとともに、前記第1側壁部と前記第2側壁部が接合されない非接合部が設けられている
前記コア層を形成し、
前記接合工程では、前記スキン層を構成する熱可塑性樹脂より低融点の樹脂からなる接着層で前記スキン層を接合する中空構造体
の製造方法。
【請求項3】
前記除去工程では、前記上壁部の一部を取り除いて、前記除去後端縁が形成されているとともに相対的に厚みが薄い薄肉部を形成する請求項
2に記載の中空構造体
の製造方法。
【請求項4】
前記接合工程では、熱溶着或いは接着によって前記コア層に
前記スキン層を接合
する請求項
1~3のいずれか一項に記載の中空構造体
の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中空構造体は軽量でありながら適度な強度を備えており、各種車両の構成部材や建材等に使用する場合がある。特許文献1には、中空構造体のハニカムコア構造に係る発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図10(a)に示すように、特許文献1に記載されるハニカムコア構造200は、波状に屈折させた複数のシートをその厚さ方向に重ね合わせて形成されている。シートは、底辺部201と頂辺部202とが斜辺部203を介して連設されて形成されており、ハニカムコア構造200は、隣り合うシートの底辺部201と頂辺部202とが接着層204を介して接合一体化されて形成されている。
図10(b)に示すように、こうしたハニカムコア構造200を所定厚さに切断して板状とし、その両面に一対のスキン層300を接合したものを中空構造体400として使用することができる。中空構造体400では、ハニカムコア構造200の底辺部201、頂辺部202、及び斜辺部203が、六角柱状の複数のセルCを区画する側壁部となり、一対のスキン層300がセルCの上端及び下端を封止している。
【0005】
特許文献1に記載されるハニカムコア構造200を使用した中空構造体400では、セルCの側壁部の一部が、接着層204を介して底辺部201及び頂辺部202が強固に接合された2層構造であるため、強度に優れている。しかし、その一方で、耐衝撃性に関しては十分とは言えないものであった。
【0006】
本発明は、従来のこうした問題を解決するためになされたものであり、その目的は、耐衝撃性に優れた中空構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明は、内部に複数のセルが並設されたコア層と、前記コア層の少なくともいずれかの面に接合されたスキン層を備えてなる樹脂製の中空構造体であって、前記コア層は、厚み方向に立設されて前記セルを区画する側壁部と、前記側壁部の上端縁に設けられた上壁部と、前記側壁部の下端縁に設けられた下壁部を備えるように、塑性を有する1枚のシートが所定の形状に成形されたシート材から成形されてなり、前記コア層は、前記上壁部及び前記下壁部の少なくともいずれかが取り除かれて、前記側壁部には、前記上壁部及び前記下壁部の少なくともいずれかが設けられていない除去後端縁が形成されており、前記コア層の少なくともいずれかの面では、前記除去後端縁に前記スキン層が接合されており、前記側壁部は、第1側壁部と第2側壁部を備えた2層構造をなし、前記側壁部には、前記第1側壁部と前記第2側壁部が接合されない非接合部が設けられている。
【0008】
上記の構成によれば、コア層の側壁部の上端部及び下端部の少なくともいずれかには壁部が設けられておらず、側壁部の端縁(除去後端縁)が形成されている。そして、コア層の少なくともいずれかの面では、除去後端縁にスキン層が接合されている。そのため、中空構造体の少なくともいずれかの面では、除去後端縁とスキン層とが線状に接合されていることになる。例えば、中空構造体の一方の面に衝撃が加わると、その面で受けた衝撃は中空構造体の内部に伝わる。コア層の除去後端縁とスキン層とが線状に接合されていると、コア層の壁部とスキン層とが面状に接合されている場合に比べて、コア層の側壁部やスキン層が変形しやすくなる。その結果、衝撃が分散しやすくなり中空構造体に掛かる衝撃が吸収される。
【0009】
また、コア層の2層構造の側壁部(第1側壁部と第2側壁部)には、2層構造の側壁部が互いに接合されていない非接合部を有している。そのため、中空構造体の一方の面に加わった衝撃は、第1側壁部及び第2側壁部のずれによっても吸収される。
【0010】
このように、中空構造体に衝撃が加わったときに、コア層の側壁部やスキン層の変形と、コア層の2層構造の側壁部におけるずれとにより、衝撃吸収性が高まり、中空構造体の表面に割れ等が生じることが抑制される。
【0011】
上記の発明において、前記コア層には、前記上壁部及び前記下壁部の少なくともいずれかの一部が取り除かれて相対的に厚みが薄い薄肉部が形成されており、前記除去後端縁は、前記薄肉部に形成されていることが好ましい。
【0012】
上記の発明において、前記スキン層は、熱溶着或いは接着によって前記コア層に接合されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、耐衝撃性に優れた中空構造体が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】(a)~(d)は第1実施形態の中空構造体を製造する方法について説明する図。
【
図4】(a)は除去前コア層を構成するシート材の斜視図、(b)は同シート材の折り畳み途中の状態を示す斜視図、(c)は同シート材を折り畳んだ状態を示す斜視図。
【
図5】(a)は除去前コア層の斜視図、(b)は(a)のβ-β線断面図、(c)は(a)のγ-γ線断面図。
【
図7】(a)は第2実施形態の中空構造体の斜視図、(b)は(a)のσ-σ線断面図。
【
図8】(a)~(c)は第2実施形態の中空構造体を製造する方法について説明する図。
【
図9】(a)は第2実施形態の中空構造体の断面図、(b)、(c)は従来の中空構造体の断面図。
【
図10】(a)は従来のハニカムコア構造の上面図、(b)は従来のハニカムコア構造を使用した中空構造体の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体化した実施形態について説明する。本実施形態の中空構造体は、例えば、畳の芯材等に適用される。
(第1実施形態)
第1実施形態の中空構造体10について、
図1及び
図2を参照して説明する。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の中空構造体10は、内部に複数のセルSが並設されたコア層20と、コア層20の上面20aに接合されたスキン層30と、コア層20の下面20bに接合されたスキン層40を備えた板状部材として構成されている。コア層20、スキン層30及びスキン層40は、熱可塑性樹脂製である。また、コア層20、スキン層30及びスキン層40は、図示しない熱可塑性樹脂製の接着層を介して接合されている。(なお、
図6(a)及び
図6(b)では、接着層30aとして示している。)
コア層20、スキン層30及びスキン層40を構成する熱可塑性樹脂は、従来周知のものであってその材質は特に限定されない。例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン共重合体樹脂、アクリル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等が挙げられる。コア層20、スキン層30及びスキン層40を構成する熱可塑性樹脂は、いずれも同じ材質であることが好ましい。本実施形態では、いずれもポリプロピレン樹脂製とされている。
【0017】
また、コア層20とスキン層30、40を接合する接着層を構成する熱可塑性樹脂も従来周知のものであってその材質は特に限定されない。例えば、オレフィン系、ポリエステル系、ウレタン系のものが挙げられる。接着層は、コア層20、スキン層30及びスキン層40を構成する熱可塑性樹脂より低融点の樹脂であることが好ましい。本実施形態では、官能基をポリオレフィンに導入して接着性を付与した変性ポリエチレン、変性ポリプロピレン等の変性ポリオレフィン系樹脂(変性樹脂)で構成されている。
【0018】
接着層の厚さは、0.1~0.5mmであることが好ましく、0.2~0.3mmであることがより好ましい。接着層の厚さがこの範囲であると、コア層20とスキン層30、40との十分な接着強度を得ることができる。また、中空構造体10の成形性に優れるとともに、コスト面からも好ましい。
【0019】
なお、後に説明する除去前スキン層60も、スキン層30、40と同じ材質の熱可塑性樹脂製である。除去前スキン層60の一方の面には、スキン層30、40と同じ構成の熱可塑性樹脂製の接着層が塗布されており、接着層を介して、後に説明する除去前コア層50に接合されている。
【0020】
図2に示すように、コア層20には、中空構造体10の厚み方向に直交する方向に並設されるように複数のセルSが区画形成されている。コア層20は、複数のセルSを区画する側壁部23と、側壁部23の下端縁に接合されてセルSの下端を閉塞するように設けられた下壁部22を備えている。側壁部23の上端縁には壁部が設けられておらず、セルSの上端は上方に向かって開口している。そのため、
図1に示すように、中空構造体10では、コア層20の上面20aに接合されたスキン層30は、コア層20の側壁部23の上端縁に対して、接着層を介して接合されていることになる。一方、コア層20の下面20bに接合されたスキン層40は、コア層20の下壁部22に対して、接着層を介して接合されている。なお、側壁部23の上端縁は、後に説明する除去後端縁23aである。
【0021】
次に、中空構造体10の製造方法について、
図3~
図6を参照して説明する。中空構造体10の製造方法は、成形工程と、折り畳み工程と、第1接合工程と、除去工程と、第2接合工程を備えている。各工程の具体的内容について以下に説明する。
図3では、中空構造体10の製造方法を一連の工程として示し、
図4では、折り畳み工程について示している。
【0022】
図4(a)に示すように、成形工程では、1枚の熱可塑性樹脂製のシートを所定の形状に加熱成形することによりシート材100が形成される。
図4(a)に示すように、成形工程により形成されたシート材100には、帯状をなす平面領域110及び膨出領域120がその幅方向(X方向)に交互に配置されている。膨出領域120には、上面と一対の側面とからなる断面下向溝状をなす第1膨出部121が膨出領域120の延びる方向(Y方向)の全体にわたって形成されている。なお、第1膨出部121の上面と側面とのなす角は90度であることが好ましく、その結果として、第1膨出部121の断面形状は下向コ字状となる。また、第1膨出部121の幅(上面の短手方向の長さ)は平面領域110の幅と等しく、かつ第1膨出部121の膨出高さ(側面の短手方向の長さ)の2倍の長さとなるように設定されている。
【0023】
また、膨出領域120には、その断面形状が正六角形を最も長い対角線で二分して得られる台形状をなす複数の第2膨出部122が、第1膨出部121に直交するように形成されている。第2膨出部122の膨出高さは第1膨出部121の膨出高さと等しくなるように設定されている。また、隣り合う第2膨出部122間の間隔は、第2膨出部122の上面の幅と等しくなっている。
【0024】
なお、こうした第1膨出部121及び第2膨出部122は、シートの塑性を利用してシートを部分的に上方に膨出させることにより形成されている。また、シート材100は、真空成形法や圧縮成形法等の周知の成形方法によって1枚のシートから成形することができる。
【0025】
図4(b)及び
図4(c)に示すように、折り畳み工程では、上述のように構成されたシート材100を、境界線P、Qに沿って折り畳むことで除去前コア層50が形成される。具体的には、シート材100を、平面領域110と膨出領域120との境界線Pにて谷折りするとともに、第1膨出部121の上面と側面との境界線Qにて山折りしてX方向に圧縮する。そして、
図4(b)及び
図4(c)に示すように、第1膨出部121の上面と側面とが折り重なるとともに、第2膨出部122の端面と平面領域110とが折り重なることによって、一つの膨出領域120に対して一つのY方向に延びる角柱状の区画体130が形成される。こうした区画体130がX方向に連続して形成されていくことにより中空板状の除去前コア層50が形成される。
【0026】
なお、除去前コア層50を形成するシート材100の厚みは、スキン層30、40や、除去前スキン層60の厚みより薄く形成されている。
図4(c)に示すように、シート材100を圧縮するとき、第1膨出部121の上面と側面とによって除去前コア層50の上壁部21が形成されるとともに、第2膨出部122の端面と平面領域110とによって除去前コア層50の下壁部22が形成される。
【0027】
図5(a)に示すように、折り畳み工程によって形成された除去前コア層50の内部に区画形成されるセルSには、構成の異なる第1セルS1及び第2セルS2が存在する。
図5(b)に示すように、第1セルS1においては、側壁部23の上部に2層構造の上壁部21が設けられている。この2層構造の上壁部21の各層は互いに接合されている。また、2層構造の上壁部21には、除去前コア層50成形時の熱可塑性樹脂の熱収縮により、図示しない開口部が形成されている。第1セルS1においては、側壁部23の下部に1層構造の下壁部22が設けられている。
【0028】
図5(b)の部分拡大図に示すように、第1セルS1の側壁部23と上壁部21との境界部分は、微視的には、直線状に上方へ延びる側壁部23から湾曲しながら上壁部21に繋がった状態となっている。つまり、側壁部23と上壁部21との間には湾曲部分23eが形成されている。
【0029】
一方、
図5(c)に示すように、第2セルS2においては、側壁部23の上部に1層構造の上壁部21が設けられている。また、第2セルS2においては、側壁部23の下部に2層構造の下壁部22が設けられている。この2層構造の下壁部22の各層は互いに接合されている。2層構造の下壁部22には、除去前コア層50成形時の熱可塑性樹脂の熱収縮により、図示しない開口部が形成されている。
【0030】
図5(c)の部分拡大図に示すように、第1セルS1の側壁部23と上壁部21との境界部分は、微視的には、直線状に上方へ延びる側壁部23から湾曲しながら上壁部21に繋がった状態となっている。つまり、側壁部23と上壁部21との間には湾曲部分23eが形成されている。
【0031】
なお、
図4(c)に示すように、上壁部21における第1膨出部121の上面と側面とが折り重なって2層構造を形成する部分、及び下壁部22における第2膨出部122の端面と平面領域110とが折り重なって2層構造を形成する部分がそれぞれ重ね合わせ部131となる。
【0032】
また、第2膨出部122が折り畳まれて区画形成される六角柱形状の領域が第2セルS2となるとともに、隣り合う一対の区画体130間に区画形成される六角柱形状の領域が第1セルS1となる。本実施形態では、第2膨出部122の上面及び側面が第2セルS2の側壁部23を構成するとともに、第2膨出部122の側面と、膨出領域120における第2膨出部122間に位置する平面部分とが第1セルS1の側壁部23を構成する。そして、第2膨出部122の上面同士の当接部位、及び膨出領域120における上記平面部分同士の当接部位が、第1側壁部23bと第2側壁部23cとからなる2層構造をなす側壁部23となる。なお、こうした折り畳み工程を実施するに際して、シート材100を加熱処理して軟化させた状態としておくことが好ましい。
【0033】
図5(b)及び
図5(c)に示すように、隣接する第1セルS1同士の間、及び隣接する第2セルS2同士の間は、それぞれ2層構造の側壁部23(第1側壁部23b及び第2側壁部23c)によって区画されている。この2層構造の側壁部23は、除去前コア層50の厚み方向中央部に互いに熱溶着されていない部分である非接合部23dを有する。したがって、除去前コア層50の各セルSの内部空間は、第1側壁部23bと第2側壁部23cの間に非接合部23dを介して他のセルSの内部空間に連通している。非接合部23dは、除去前コア層50の厚み方向中央部、つまり、側壁部23の高さ方向の中央部に設けられており、側壁部23の上端部及び下端部では、2層構造の第1側壁部23b及び第2側壁部23cは互いに熱溶着されている。なお、
図5(b)、
図5(c)、
図6(a)及び
図6(b)以外の図では、上壁部21、下壁部22、及び側壁部23の2層構造を省略して示している。
【0034】
図5(a)に示すように、第1セルS1はX方向に沿って列を成すように並設されている。同様に、第2セルS2はX方向に沿って列を成すように並設されている。第1セルS1の列及び第2セルS2の列は、X方向に直交するY方向において交互に配列されている。そして、これら第1セルS1及び第2セルS2により、除去前コア層50は、全体としてハニカム構造をなしている。
【0035】
図3(a)に示すように、折り畳み工程により、上壁部21、下壁部22を備え、側壁部23によって複数のセルSが区画された除去前コア層50が得られる。なお、中空構造体10を構成するコア層20は、後に説明する除去工程において、除去前コア層50の上壁部21及び側壁部23の上端部が取り除かれたものである。そのため、除去前コア層50の側壁部23及び下壁部22と、コア層20の側壁部23及び下壁部22とを、ともに同じ部材番号で表すものとする。
【0036】
図3(b)に示すように、第1接合工程では、除去前コア層50の上面50aに除去前スキン層60を接合し、下面50bにスキン層40を接合する。第1接合工程では、除去前コア層50及びスキン層40として、二次加工(プレス成形)していない平坦なシートを接合する。これは、第2接合工程におけるスキン層30についても同様である。
【0037】
第1接合工程では、除去前コア層50、スキン層40及び除去前スキン層60を所定温度に加熱して行う。加熱温度は、スキン層40及び除去前スキン層60における接着層の融点よりも数℃~十数℃高い温度に設定される。具体的には、加熱温度は、接着層を構成する変性ポリオレフィン系接着剤(変性樹脂)の融点よりも数℃程度高く設定されている。この加熱温度は、除去前コア層50やスキン層40及び除去前スキン層60を構成するポリアミド樹脂を軟化せるための成形温度に対して十分に低く設定されている。また、スキン層40及び除去前スキン層60を除去前コア層50に熱溶着する際の加熱時間は数秒~十数秒に設定され、スキン層40及び除去前スキン層60の同じ箇所が過度に長時間加熱されないようになっている。したがって、除去前コア層50、スキン層40及び除去前スキン層60が軟化溶融するまでの高温には至らず、加熱温度を厳密に管理しなくとも、接着層のみを軟化溶融させることができる。
【0038】
除去前コア層50に対してスキン層40及び除去前スキン層60を位置合わせし、所定圧をかけて仮接合させた後冷却すると、除去前コア層50に対してスキン層40及び除去前スキン層60が熱溶着された第1中間体70が得られる。
【0039】
図3(b)及び
図3(c)に示すように、除去工程では、切断冶具Tを除去前コア層50の厚み方向に直交する方向に移動させて、第1中間体70における除去前コア層50の上端部を取り除く。具体的には、切断冶具Tを、除去前コア層50の側壁部23の上端部に向かって移動させる。切断冶具Tは、例えば、先端に鋸刃が設けられた薄板状に形成されており、必要に応じて加熱されている。除去工程によって、除去前コア層50の上端部(上壁部21と側壁部23の上端部)が取り除かれた第2中間体80が得られる。第2中間体80は、コア層20と、コア層20の下面20bには接合されたスキン層40からなる。
【0040】
図3(c)に示すように、側壁部23の上端部が取り除かれたコア層20では、側壁部23の上端縁に除去後端縁23aが形成される。切断冶具Tは、除去前コア層50の厚み方向に直交する方向に移動されるため、コア層20に形成された複数の側壁部23の高さは、すべてほぼ同一に形成されている。そのため、除去後端縁23aの高さ方向の位置は、すべてほぼ同一の位置に形成されている。第2中間体80では、除去後端縁23aにより、コア層20の上面20aが構成されている。
【0041】
また、セルSを区画する側壁部23の一部は、第1側壁部23bと第2側壁部23cからなる2層構造であり、除去前コア層50の厚み方向中央部には互いに熱溶着されていない部分である非接合部23dが設けられている。除去工程で取り除かれた側壁部23の上端部は、非接合部23dの近傍上方であるか、非接合部23dの部分である。
【0042】
なお、除去工程では切断冶具Tを側壁部23の上端部に向かって移動させて側壁部23の上端部を取り除くが、ここで言う側壁部23の上端部とは、側壁部23と上壁部21との間に形成された湾曲部分23eと側壁部23との境界部分である。この位置で切断することにより、除去後端縁23aは直線状になり、その後に形成された2層構造の第1側壁部23b及び第2側壁部23cが変形しやすい。
【0043】
図3(d)に示すように、第2接合工程では、第2中間体80におけるコア層20の上面20aにスキン層30を接合する。第2接合工程でも第1接合工程と同様、第2中間体80及びスキン層30を所定温度に加熱して行う。加熱温度、加熱時間は、第1接合工程と同様に管理する。第2中間体80及びスキン層30を加熱することにより、スキン層30の一方の面に形成された接着層が熱溶融し、第2中間体80に対してスキン層30が熱溶着された中空構造体10が得られる。
【0044】
次に、中空構造体10の作用について説明する。
中空構造体10は、コア層20の上面20aにスキン層30が接合されている。コア層20は、除去前コア層50における上壁部21及び側壁部23の上端部が取り除かれた形状であり、複数の側壁部23の上端縁に除去後端縁23aが形成されている。除去工程を経て形成された複数の除去後端縁23aの高さ方向の位置は、すべてほぼ同一の位置とされている。そのため、スキン層30と除去後端縁23aとは線状に接合している。
【0045】
また、コア層20の側壁部23の一部は、2層構造の側壁部23(第1側壁部23b及び第2側壁部23c)を有しており、2層構造の側壁部23は、コア層20の厚み方向中央部に互いに熱溶着されていない非接合部23dを有している。そして、除去工程で取り除かれた側壁部23の上端部は、非接合部23dの近傍上方であるか、非接合部23dの部分である。
【0046】
中空構造体10の上面側に衝撃が加わると、上面で受けた衝撃が中空構造体10の内部に伝わることになる。本実施形態の中空構造体10は、スキン層30とコア層20の除去後端縁23aとの接合部分が線状となっているため、スキン層30がコア層20の上壁部21と面状に接合されている場合に比べて、コア層20の側壁部23やスキン層30が変形しやすくなる。その結果、衝撃が分散しやすくなり中空構造体10に掛かる衝撃が吸収される。
【0047】
また、コア層20の2層構造の側壁部23(第1側壁部23b及び第2側壁部23c)では、除去後端縁23aの近傍に非接合部23dが設けられているか、除去後端縁23aの部分に非接合部23dが設けられている。そのため、中空構造体10の上面側に衝撃が加わると、第1側壁部23b及び第2側壁部23cにずれが生じやすい。このずれによっても、衝撃が吸収される。
【0048】
このように、中空構造体10に衝撃が加わったときに、コア層20の側壁部23やスキン層30が変形と、コア層20の2層構造の側壁部23におけるずれとにより、衝撃吸収性が高まり、中空構造体10の表面に割れ等が生じることが抑制される。
【0049】
一方、中空構造体10の製造途中に得られた第1中間体70は、除去前コア層50の上壁部21に除去前スキン層60が熱溶着により接合されている。上壁部21は、除去前コア層50の上面全体を覆っており、除去前スキン層60は、上壁部21の表面全体に対して面で接合されている。第1中間体70の上面では、除去前コア層50と除去前スキン層60とが強固に接合されている。そのため、第1中間体70の上面側に衝撃が加わったような場合には、強固に接合された除去前コア層50の上壁部21と除去前スキン層60とで衝撃を受けることになるため、衝撃が吸収されにくく、第1中間体70の表面に割れ等が生じやすくなる。
【0050】
中空構造体10の側壁部23の上端部では、スキン層30を構成する熱可塑性樹脂より低融点の樹脂からなる接着層を介してスキン層30が接合されている。第2接合工程での加熱温度は、接着層を構成する変性ポリオレフィン系接着剤(変性樹脂)の融点よりも数℃程度高く設定されている。そのため、スキン層30を側壁部23に形成された除去後端縁23aに接合する際には、低融点の接着層は溶融状態とされている。第2接合工程によりスキン層30が接合された除去後端縁23aは、
図6(a)及び
図6(b)に示すように、その上端縁が、スキン層30の接着層30a内に入り込んだ状態で接合されることになる。この場合、
図6(a)に示すように、除去後端縁23aとスキン層30との間に接着層30aが介在していたり、
図6(b)に示すように、除去後端縁23aとスキン層30との間に接着層30aがほとんど介在していなかったりする状態となる。除去後端縁23aが接着層30a内に入り込むような状態で接合されていることにより、スキン層30と除去後端縁23aとが強固に接合される。これらの状態のうち、
図6(a)の状態で接合されている方が、
図6(b)の状態で接合されているよりも接合強度が強い。除去後端縁23aと接着層30aとの接合状態は、除去後端縁23aのすべてが
図6(a)に示される状態となっている場合、或いは除去後端縁23aのすべてが
図6(b)に示される状態となっている場合だけでなく、
図6(a)に示される状態の除去後端縁23aと
図6(b)に示される状態の除去後端縁23aとが混在していてもよい。このように、除去後端縁23aがスキン層30の接着層30aで強固に接合されていることによっても、コア層20の側壁部23やスキン層30が変形しやすくなる。なお、
図6(a)及び
図6(b)では、除去後端縁23aの接合状態をわかりやすく示すため、接着層30aをスキン層30に比べて肉厚にしている。
【0051】
中空構造体10は、1枚のシート材100を折り畳み成形した除去前コア層50の両面にスキン層40及び除去前スキン層60を接合してなる第1中間体70を経て製造される。1枚のシート材100を折り畳み成形した除去前コア層50では、上壁部21と側壁部23が連続しており、下壁部22と側壁部23が連続している。そのため、第1中間体70の上端部を取り除いた第2中間体80、つまり、除去前コア層50の上端部を取り除いたコア層20では、下壁部22と側壁部23の強度が保持されている。したがって、第1中間体70にスキン層30を接合してなる中空構造体10は、耐衝撃性に優れるだけでなく優れた強度を備えている。
【0052】
この点、例えば、折り畳み工程、第1接合工程、除去工程を経ることなく、第1中間体70の形状に形成した場合には、中空構造体としての十分な強度が得られない。例えば、
図10(a)に示すようなハニカムコア構造200の下面に下壁部22に相当する層及びスキン層40を接合し、上面にスキン層30を接合したような場合、下壁部22に相当する層とスキン層40の接合強度が弱くなり、十分な強度が得られない。また、
図10(a)に示すようなハニカムコア構造200では、側壁部23に相当する部分が、底辺部201と頂辺部202とが接着層204を介して接合一体化されて形成されているため、底辺部201と頂辺部202のずれが許容されず、耐衝撃性が低くなる。
【0053】
本実施形態の中空構造体10は、1枚のシート材100を折り畳み成形した除去前コア層50から、第1接合工程、除去工程、第2接合工程を経て形成されるため、耐衝撃性に優れ、強度にも優れている。
【0054】
本実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態の中空構造体10は、コア層20の側壁部23に除去後端縁23aが形成され、除去後端縁23aとスキン層30が線状に接合されている。そのため、中空構造体10の上面側から衝撃が加わった場合に、スキン層30がコア層20の上壁部21と面状に接合されている場合に比べて、コア層20の側壁部23やスキン層30が変形しやすくなる。その結果、衝撃が分散しやすくなり、中空構造体10の表面に割れ等が生じることが抑制される。耐衝撃性に優れた中空構造体10が得られる。
【0055】
(2)本実施形態の中空構造体10は、コア層20の側壁部23の一部が第1側壁部23b及び第2側壁部23cからなる2層構造とされ、第1側壁部23b及び第2側壁部23cは互いに熱溶着されていない非接合部23dを有している。そのため、中空構造体10の上面側から衝撃が加わった場合に、2層構造の側壁部23にもずれが生じやすい。このずれによっても中空構造体10の上面に加わった力が分散されて衝撃が吸収される。耐衝撃性に優れた中空構造体10が得られる。
【0056】
(3)本実施形態の中空構造体10は、第1中間体70、第2中間体80を経て製造される。第1中間体70は、1枚のシート材100を折り畳み成形して得られた除去前コア層50にスキン層40及び除去前スキン層60を接合して得られ、第2中間体80は、第1中間体70の上端部を取り除くことによって得られる。そのため、第1中間体70の除去前コア層50では、下壁部22と側壁部23が連続した形状に形成されている。側壁部23に対して下壁部22を接合して形成されたハニカムコア構造に比べて強度に優れている。第1中間体70、第2中間体80を経て中空構造体10を製造することにより、強度に優れた中空構造体10が得られる。
【0057】
(4)第1接合工程及び第2接合工程では、加熱温度及び加熱時間を、除去前コア層50、スキン層40及び除去前スキン層60が軟化溶融するまでの高温には至らず、接着層のみを軟化溶融させることができるように管理している。そのため、除去前コア層50とスキン層40、40が強固に接合され、コア層20とスキン層30が強固に接合される一方で、2度の接合工程を経ても、中空構造体10のセルSを区画する2重構造の側壁部23では、側壁部23の一部に接合していない部分を保持することができる。耐衝撃性に優れた中空構造体10が得られる。
【0058】
(5)除去工程では、例えば、先端に鋸刃が設けられた薄板状の切断冶具Tを、除去前コア層50の厚み方向に直交する方向に移動させて、第1中間体70における除去前コア層50の上端部を切断している。そのため、コア層20では、側壁部23の上端縁、つまり、除去後端縁23aの高さがほぼ同一となる。コア層20の除去後端縁23aとスキン層30とを好適に接合することができる。
【0059】
(6)除去工程では、切断冶具Tを側壁部23と上壁部21との間に形成された湾曲部分23eと側壁部23との境界部分に移動させて、側壁部23の上端部を取り除いている。そのため、除去後端縁23aは直線状になり、2層構造の第1側壁部23b及び第2側壁部23cが変形しやすい。強度に優れた中空構造体10が得られる。
【0060】
(7)コア層20とスキン層30、40を接着する接着層は、官能基をポリオレフィンに導入して接着性を付与した変性ポリエチレン、変性ポリプロピレン等の変性ポリオレフィン系接着剤(変性樹脂)で構成されている。そのため、コア層20とスキン層30、40の剥離強度が向上し、強度に優れた中空構造体10が得られる。
【0061】
(8)中空構造体10の下面側では、コア層20は、1層構造の下壁部22か、2層構造の下壁部22でセルSが閉塞されている。そのため、コア層20とスキン層40との接着面積が広く、剥離強度が優れている。
【0062】
(第2実施形態)
第2実施形態の中空構造体11について、
図7~
図9を参照して説明する。ここでは、第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0063】
第1実施形態の中空構造体10は、上面が平坦な構造のものとして説明した。第2実施形態の中空構造体11は、
図7(a)に示すように、その上面の一部に凹部12が形成されており、凹部12は、中空構造体11における他の部分に比べて厚みが薄い薄肉部を構成している。凹部12は、中空構造体11の上面側から略直方体形状に凹んでおり、略長方形状の底面12aと4つの側面12bで囲まれている。
【0064】
図7(b)に示すように、本実施形態の中空構造体11は、内部に複数のセルSが並設されたコア層90と、コア層90の上面90aに接合されたスキン層30及び除去前スキン層60と、コア層90の下面90bに接合されたスキン層40を備えた板状部材として構成されている。スキン層30及び除去前スキン層60は、図示しない接着層を介してコア層90の上面90aに接合されており、スキン層40は図示しない接着層を介してコア層90の下面90bに接合されている。スキン層30は、コア層90の上面90aに接合されて中空構造体11の凹部12の底面12a及び4つの側面12bに対応する部分を構成しており、除去前スキン層60は、凹部12以外のコア層90の上面90aに接合されている。コア層90、スキン層30、40及び除去前スキン層60の材質、及び接着層の材質は第1実施形態と同様である。
【0065】
図8(a)~
図8(c)に示す中空構造体11の製造方法とともに、中空構造体11の構造についてあわせて説明する。
中空構造体11の製造方法は、基本的には第1実施形態の中空構造体10と同様である。特に、中空構造体11の製造方法のうち、成形工程、折り畳み工程、及び第1接合工程は、第1実施形態の中空構造体10と同様であるため、以下では、第1接合工程で得られた第1中間体70から、凹部12に対応する部分を取り除く除去工程以降について説明する。
【0066】
図8(a)及び
図8(b)に示すように、除去工程では、第1中間体70において、中空構造体11の凹部12に対応する部分を、切断冶具Tにより取り除く。切断冶具Tとしては、第1実施形態と同様のものであってもよく、また、例えば、凹部を取り除きやすいようなドリル状のものであってもよい。切断冶具Tは、必要に応じて加熱して使用することができる。
【0067】
図8(b)に示すように、除去工程によって、第1中間体70における除去前コア層50の上壁部21の一部と側壁部23の一部の上端部が取り除かれてコア層90が形成されるとともに、取り除かれた上壁部21に接合されていた除去前スキン層60が取り除かれる。これにより、凹部81aがその上面側に形成された第2中間体81が得られる。第2中間体81は、上面側に上壁部21が残存したコア層90と、残存した上壁部21に接合された除去前スキン層60と、下面側に接合されたスキン層40を備えている。
【0068】
第2中間体81の凹部81aでは、側壁部23の上端部が取り除かれた部分に除去後端縁23aが形成されている。凹部81aの底面は除去後端縁23aで構成され、凹部81aの側面には、上壁部21の端縁、除去前スキン層60の端縁が露出した状態とされている。コア層90に形成された除去後端縁23aの高さ方向の位置は、すべてほぼ同一の位置に形成されている。
【0069】
図8(c)に示すように、第2接合工程では、第2中間体81に形成された凹部81aにスキン層30を接合する。第2実施形態の第2接合工程では、加熱温度、加熱時間は、第1接合工程より少し高く、かつ長く設定することが好ましい。これにより、スキン層30の一方の面に形成された接着層が熱溶融して、スキン層30が凹部81aに接着層を介して熱溶着されるとともに、スキン層30と除去前スキン層60との繋ぎ目が熱溶融して一体化する。これにより、コア層90の上面90aにスキン層30及び除去前スキン層60が接合され、コア層90の下面90bにスキン層40が接合された中空構造体11が得られる。中空構造体11の上面側では、凹部12を覆うスキン層30と凹部12以外の部分を覆う除去前スキン層60が、連続して一体的に接合されている。
【0070】
次に、中空構造体11の作用について、中空構造体10と同様な作用以外の作用について説明する。
図9(a)に示すように、中空構造体11は、凹部12が形成されることにより厚みの薄い薄肉部を有している。そして、コア層90において中空構造体11の凹部12に対応する部分では、除去工程によって切断された側壁部23が形成されている。そのため、凹部12における側壁部23は、凹部12以外の他の部分における側壁部23よりその高さは低いものの、凹部12以外の他の部分と同様、中空構造体11の厚み方向に沿うように延びている。つまり、本実施形態の中空構造体11では、除去前コア層50の一部を取り除く態様で凹部12を形成しているため、コア層90は、側壁部23の形状がそのまま維持された状態とされている。
【0071】
一方、中空構造体11に凹部12を形成する方法として、除去前コア層50の両面にスキン層40及び除去前スキン層60を接合した第1中間体70を形成後、加熱冶具により一部を熱圧縮する方法が考えられる。この場合、
図9(b)に示すように、凹部12では、コア層90の側壁部23が圧縮されて斜め方向に倒れ込んだり、
図9(c)に示すように、側壁部23が圧縮されて座屈したりする場合がある。例えば、側壁部23が倒れ込んだりすると、厚み方向に延びている場合に比べて中空構造体11の強度が低下することが考えられる。また、倒れ込んだ側壁部23に起立しようとする力が作用し、凹部12の底面12aが上方に膨らむように変形することが考えられる。
【0072】
これに対して、本実施形態の中空構造体11では、側壁部23の形状が、凹部12と凹部12以外の部分で同様の形状に維持されているため、強度が低下することが抑制され、凹部12での変形が抑制される。
【0073】
本実施形態によれば、上記(1)~(8)に加えて以下のような効果を得ることができる。
(9)本実施形態の中空構造体11には、部分的に凹部12が形成されている。凹部12は、除去工程において、第1中間体70の一部を除去したものにスキン層30を接合することによって形成されている。そのため、凹部12では、コア層90の側壁部23が中空構造体11の厚み方向に沿うように延びている。凹部12以外の他の部分と側壁部23の形状が変化しないため、凹部12が変形したり、強度が低下したりすることが抑制される。
【0074】
(10)本実施形態の中空構造体11の凹部12は、第1中間体70の一部を除去することにより形成されている。そのため、除去前コア層50の側壁部23において取り除く部分を調整することにより、肉厚の異なる凹部12を容易に成形することができる。中空構造体11の形状を適宜変更することができる。汎用性に優れた中空構造体11が得られる。
【0075】
上記各実施形態は、次のように変更することができる。なお、上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて適用することができる。
・除去前コア層50は、本実施形態のような折り畳み工程によって製造されるものに限らない。1枚のシート材を折り畳んで複数のセルが形成されるものであれば、その折り畳み態様は特に限定されない。例えば、特許第4368399号に記載されるように、断面台形状の凸部が複数列設された三次元構造体を順次折り畳んでいくことにより、ハニカム構造体としての除去前コア層50を形成してもよい。
【0076】
・除去前コア層50は、折り畳み工程を経て形成されるものでなく、塑性を有するシート材を膨出させることによって形成してもよい。例えば、塑性を有するシート材を真空成形して、多角柱形状や円柱形状のセルが複数膨出されたような形状のものを除去前コア層50としてもよい。或いは、1枚のシートを折り曲げることにより膨出領域と平面領域とが交互に形成されたものを除去前コア層50として使用してもよい。これらの場合、除去前コア層50の側壁部23が非接合部を有する2層構造となっていればよい。第1接合工程では、膨出領域の上面に除去前スキン層60を接合し、平面領域の下面にスキン層40を接合し、得られた第1中間体70から、除去工程、第2接合工程を経て、中空構造体10、11を得ることができる。
【0077】
・上記実施形態では、コア層20、90(除去前コア層50)の内部に六角柱状のセルSが区画形成されていたが、セルSの形状は、特に限定されるものでなく、例えば、四角柱状、八角柱状等の多角形状や円柱状としてもよい。その際、異なる形状のセルSが混在していてもよい。また、各セルSは隣接していなくともよく、セルSとセルSとの間に隙間(空間)が存在していてもよい。
【0078】
・上記実施形態では、第1中間体70は、除去前コア層50の一方の面に除去前スキン層60が接合され、他方の面にスキン層40が接合されているが、少なくともいずれかが接合されていなくてもよい。除去前スキン層60が接合されていない場合、第1実施形態の中空構造体10を製造する場合、除去工程では、除去前コア層50の上壁部21及び側壁部23の上端部を取り除くことになる。また、第2実施形態の中空構造体11を製造する場合、除去工程では、除去前コア層50の上壁部21の一部及び側壁部23の一文上端部を取り除き、得られた第2中間体80の上面全体にスキン層30を接合することになる。また、中空構造体10、中空構造体11ともに、スキン層40が接合されていない場合は、それぞれの下面は、コア層20或いはコア層90の下壁部22により構成されていることになる。
【0079】
・上記実施形態では、スキン層30、40及び除去前スキン層60を1層構造として構成しているが、2層以上の積層体として構成してもよい。この場合、2層以上の各層で、熱可塑性樹脂を異ならせるようにしてもよい。例えば、スキン層30、40及び除去前スキン層60の少なくともいずれかを3層構造としてもよい。この場合、中間層の硬度を相対的に高くし、中間層を挟む一対の表層の硬度を相対的に低くする。こうすることで、中空構造体10、11の耐衝撃性を調整することが可能となる。つまり、相対的に軟質の表層が衝撃を吸収し、相対的に硬質の中間層が、衝撃を面として受けるための剛性を付与することができる。
【0080】
なお、スキン層30、40及び除去前スキン層60を2層以上の積層体として構成する場合、それぞれの層構造を異ならせてもよい。また、スキン層30及び除去前スキン層60のみを1層構造としたり、スキン層40のみを1層構造としたりしてもよい。第2実施形態の中空構造体11の場合、スキン層30と除去前スキン層60は同じ層構成であることが好ましい。
【0081】
・スキン層30、スキン層40、除去前スキン層60の少なくともいずれかの厚みを異ならせてもよい。
・中空構造体10、11に、スキン層30、40及び除去前スキン層60とは材質の異なる他のシートを貼ってもよい。例えば、金属シート、繊維強化樹脂シート等を、スキン層30、40や除去前スキン層60の表面に貼ったり、コア層20、90との間に貼ったりしてもよい。
【0082】
・コア層20。90、スキン層30、40及び除去前スキン層60を構成する熱可塑性樹脂として、各種機能性樹脂を添加したものを使用してもよい。例えば、熱可塑性樹脂に難燃性の樹脂を添加することにより、難燃性を高めることが可能である。コア層20。90、スキン層30、40、及び除去前スキン層60のすべてに対して各種機能性樹脂を添加したものを使用することも可能であり、また、コア層20。90、スキン層30、40、及び除去前スキン層60の少なくともいずれかに対して使用することも可能である。
【0083】
・スキン層30、40及び除去前スキン層60は、コア層20、90に対して接着層を介して接合されているが、接着層を介して接合されていなくてもよい。第1接合工程、第2接合工程での加熱温度、加熱時間を適宜調整して、スキン層30、40及び除去前スキン層60や、コア層20、90を構成する熱可塑性樹脂を熱溶融させて、それぞれを熱溶着させてもよい。また、粘着剤によって互いに接合されていてもよい。
【0084】
・除去工程では、側壁部23と上壁部21との間に形成された湾曲部分23eと側壁部23との境界部分で側壁部23を切断した。これに限らず、湾曲部分23eを除去後端縁23a側に残した状態で切断してもよい。
【0085】
・第1実施形態の中空構造体10は、除去前スキン層60及び上壁部21が取り除かれて、コア層20の上面20aにスキン層30が接合されているが、これに限定されない。除去前スキン層60が除去前コア層50の下面50b側に接合されるとともに、除去前スキン層60及び下壁部22が取り除かれて、コア層20の下面20bにスキン層40が接合されてもよい。また、除去前スキン層60が除去前コア層50の上面50a及び下面50bに接合されるとともに、除去前スキン層60及び上壁部21、除去前スキン層60及び下壁部22が取り除かれて、コア層20の上面20a及び下面20bにスキン層30、40が接合されてもよい。
【0086】
・第1実施形態の中空構造体10は、除去工程では切断冶具Tを側壁部23の上端部に向かって、除去前コア層50の厚み方向に直交する方向、つまり、除去前コア層50の上面50aや下面50bに対して平行となるように移動させた。そのため、除去後端縁23aの高さ方向の位置は、すべてほぼ同一の位置に形成されている。これに限らず、例えば、切断冶具Tを除去前コア層50の上面50aや下面50bに対して傾斜する方向に移動させてもよい。この場合、除去後端縁23aの上端縁は一方向に傾斜して形成される。つまり、除去後端縁23aは、その高さが、中空構造体10の厚み方向と直交する方向に直線的に変化するように形成される。この除去後端縁23aにスキン層30を接合して、スキン層30がスキン層40に対して傾斜するような中空構造体10を形成してもよい。或いは、切断冶具Tを除去前コア層50の上面50aや下面50bに対して曲面を形成するように移動させてもよい。この場合、除去後端縁23aの上端縁の全体形状が上方や下方に湾曲する形状となる。つまり、除去後端縁23aは、その高さが、中空構造体10の厚み方向と直交する方向に曲線的に変化するように形成される。この除去後端縁23aにスキン層30を接合すると、上面が緩やかに湾曲した中空構造体10が得られる。
【0087】
第2実施形態の中空構造体11でも同様に、凹部12の上面が下面に対して斜め方向に傾斜したり、湾曲したりするように形成してもよい。
・第2実施形態の中空構造体11は、上面側に1箇所の凹部12が形成されていたが、これに限定されない。上面側に複数の凹部12が形成されていてもよく、下面側に凹部12が1乃至複数形成されていてもよく、両面に1乃至複数の凹部12が形成されていてもよい。複数の凹部12を形成する場合、それぞれの凹部12の深さ、形状、大きさ等は、同じであっても異なっていてもよい。
【0088】
・中空構造体として、一方の面が中空構造体11のスキン層30及び除去前スキン層60の構成とされ、他方の面が中空構造体10のスキン層30の構成とされていてもよい。つまり、第2中間体80として、一方の面には凹部が1乃至複数形成され、他方の面は、除去前スキン層60又はスキン層40全部と、除去前コア層50の上壁部21又は下壁部22の全部が取り除かれたものとしてもよい。
【0089】
・上記各実施形態では、コア層20、90や、除去前コア層50を形成するシート材100の厚みは、スキン層30、40や、除去前スキン層60の厚みより薄くされているが、これに限定されない。シート材100の厚みと、スキン層30、40や、除去前スキン層60の厚みが同じであってもよく、シート材100の厚みが、スキン層30、40や、除去前スキン層60の厚みより厚くされていてもよい。
【符号の説明】
【0090】
10、11…中空構造体、20、90…コア層、21……上壁部、22…下壁部、23…側壁部、23a…除去後端縁、23b…第1側壁部、23c…第2側壁部、23d…非接合部、30、40…スキン層、50…除去前コア層、60…除去前スキン層、100…シート材、S…セル、S1…第1セル、S2…第2セル。