(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】半導体表面状態のキャリア寿命のテスト方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20230501BHJP
G01N 29/04 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
H01L21/66 M
G01N29/04
(21)【出願番号】P 2021549890
(86)(22)【出願日】2020-07-06
(86)【国際出願番号】 CN2020100429
(87)【国際公開番号】W WO2021004430
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2021-08-25
(31)【優先権主張番号】201910615736.2
(32)【優先日】2019-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】513059401
【氏名又は名称】同▲済▼大学
(74)【代理人】
【識別番号】100205936
【氏名又は名称】崔 海龍
(74)【代理人】
【識別番号】100132805
【氏名又は名称】河合 貴之
(72)【発明者】
【氏名】程 茜
(72)【発明者】
【氏名】解 維▲あ▼
(72)【発明者】
【氏名】高 雅
(72)【発明者】
【氏名】陳 一銘
(72)【発明者】
【氏名】陳 盈娜
(72)【発明者】
【氏名】張 夢嬌
(72)【発明者】
【氏名】張 浩南
(72)【発明者】
【氏名】呉 詩穎
【審査官】平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-197179(JP,A)
【文献】特開平07-302823(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
G01N 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光子エネルギが半導体禁制帯幅よりも高い狭パルス光源を採用して光パルスを発射し、光路コリメートを介して近接場光学プローブにカップリングし、近接場光学プローブは、測定対象半導体材料の表面で励起して光発生キャリアを生成するステップ1)と、
励起された光発生キャリアが半導体材料の表面に集中され、表面状態を
再結合中心として
再結合が絶えず発生し、この
再結合レートは、キャリア濃度、キャリア寿命に比例するステップ2)と、
ステップ1)とステップ2)のキャリア励起と
再結合プロセスにおいて、電子体積効果にいずれも格子定数の変化が発生し、且つ応力波が発生するため、高周波広帯域超音波検出方式によってこの応力波信号を検出するステップ3)と、
応力波信号に対してフィッティング計算を行い、表面状態のキャリア寿命τ
cを得るステップ4)と、
を含
み、
前記ステップ4)において、半導体材料の表面に近接場光の励起により発生した応力波信号のテール部分に対してフィッティングを行って表面状態のキャリア寿命τ
c
を取得し、具体的なフィッティング公式は、以下の通りであり、
【数1】
そのうち、cは、格子定数であり、dE
G
/dPは、バンドキャップ圧力係数であり、nは、電子-正孔対濃度であり、Qは、定数係数であり、tは、時間である、ことを特徴とする半導体表面状態のキャリア寿命のテスト方法。
【請求項2】
前記ステップ1)において、狭パルス光源によって発射される光パルス幅は、フェムト秒からナノ秒オーダであり、且つ5ナノ秒を超えない、ことを特徴とする請求項1に記載の半導体表面状態のキャリア寿命のテスト方法。
【請求項3】
前記ステップ1)において、近接場光学プローブは、有孔近接場光学プローブ又は無孔近接場光学プローブであり、光パルスは、コリメートを介して有孔近接場光学プローブ又は無孔近接場光学プローブの表面にカップリングする、ことを特徴とする請求項1
または2に記載の半導体表面状態のキャリア寿命のテスト方法。
【請求項4】
前記ステップ1)において、近接場光学プローブと測定対象半導体材料の表面との距離は、光パルス波長の1/10を超えない、ことを特徴とする請求項1
~3のいずれか一項に記載の半導体表面状態のキャリア寿命のテスト方法。
【請求項5】
前記ステップ1)において、近接場光学プローブによって励起される光発生キャリアは、測定対象半導体の表面とサブ表面に位置する、ことを特徴とする請求項1
~4のいずれか一項に記載の半導体表面状態のキャリア寿命のテスト方法。
【請求項6】
前記ステップ2)において、近接場光学プローブによって励起される光測定対象半導体表面の光発生キャリアが
再結合する時、表面状態を中心として間接
再結合を行う、ことを特徴とする請求項1
~5のいずれか一項に記載の半導体表面状態のキャリア寿命のテスト方法。
【請求項7】
前記ステップ2)において、前記光発生キャリアは、光パルス照射が終了した後、半導体材料内のキャリアバランス状態に回復するまで、
再結合し続ける、ことを特徴とする請求項1
~6のいずれか一項に記載の半導体表面状態のキャリア寿命のテスト方法。
【請求項8】
前記ステップ3)において、高周波広帯域超音波検出器によって半導体材料の表面応力波信号の検出を行い、前記高周波広帯域超音波検出器は、ナノ秒解像度を有する超音波トランスデューサと、レーザドップラ振動測定と、レーザ干渉器とを含む、ことを特徴とする請求項1
~7のいずれか一項に記載の半導体表面状態のキャリア寿命のテスト方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体材料テストの技術分野に関し、特に半導体表面状態のキャリア寿命のテスト方法に関する。
【背景技術】
【0002】
キャリア寿命は、半導体材料の一つの重要パラメータとして、デバイス性能、太陽電池効率を特徴づける重要な参照根拠としている。シリコンのようなIV族元素半導体に対して、キャリアの再結合(recombination)プロセスのほとんどは、禁制帯中間の再結合中心によって行われる。実際の半導体デバイスにおいて、半導体材料の表面上の理想的な格子の周期性が突然中断し、周期ポテンシャル関数の破壊により、禁制帯に電子エネルギ状態、すなわち表面状態が現れる。表面状態は、半導体デバイスの特性に対して非常重要な影響を与え、特に太陽電池の性能に対して大きな影響を与える。
【0003】
よく使われるキャリア寿命のテスト方法は多く、例えば直流光伝導減衰法、マイクロ波光伝導減衰法、表面光圧電法などであり、これらの方法は、いずれもバルク再結合時のキャリア寿命をテストするものである。実際の半導体デバイスにおいて、半導体材料の表面上の理想的な格子の周期性が突然中断し、周期ポテンシャル関数の破壊により、禁制帯に電子エネルギ状態、すなわち表面状態が現れる。表面状態は、半導体デバイスの特性に対して非常重要な影響を与え、特に太陽電池の性能に対して大きな影響を与える。現在では、表面状態のキャリア寿命をテストする比較的に良い方法がまだない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、上記従来の技術に存在している欠陥を克服するために、半導体表面状態のキャリア寿命のテスト方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、以下の技術案よって実現されてもよい。
【0006】
半導体表面状態のキャリア寿命のテスト方法であって、
光子エネルギが半導体禁制帯幅よりも高い狭パルス光源を採用して光パルスを発射し、光路コリメートを介して近接場光学プローブにカップリングし、近接場光学プローブは、測定対象半導体材料の表面で励起して光発生キャリアを生成するステップ1)と、
励起された光発生キャリアが半導体材料の表面に集中され、表面状態を再結合中心として再結合が絶えず発生し、この再結合レートは、キャリア濃度、キャリア寿命に比例するステップ2)と、
ステップ1)とステップ2)のキャリア励起と再結合プロセスにおいて、電子体積効果にいずれも格子定数の変化が発生し、且つ応力波が発生するため、高周波広帯域超音波検出方式によってこの応力波信号を検出するステップ3)と、
応力波信号に対してフィッティング計算を行い、表面状態のキャリア寿命τcを得るステップ4)とを含む。
【0007】
前記ステップ1)において、狭パルス光源によって発射される光パルス幅は、フェムト秒からナノ秒オーダであり、且つ5ナノ秒を超えない。
【0008】
前記ステップ1)において、近接場光学プローブは、有孔近接場光学プローブ又は無孔近接場光学プローブであり、光パルスは、コリメートを介して有孔近接場光学プローブ又は無孔近接場光学プローブの表面にカップリングする。
【0009】
前記ステップ1)において、近接場光学プローブと測定対象半導体材料の表面との距離は、光パルス波長の1/10を超えない。
【0010】
前記ステップ1)において、近接場光学プローブによって励起される光発生キャリアは、測定対象半導体の表面とサブ表面に位置する。
【0011】
前記ステップ2)において、近接場光学プローブによって励起される光測定対象半導体表面の光発生キャリアが再結合する時、表面状態を中心として間接再結合を行う。
【0012】
前記ステップ2)において、前記光発生キャリアは、光パルス照射が終了した後、半導体材料内のキャリアバランス状態に回復するまで、再結合し続ける。
【0013】
前記ステップ3)において、高周波広帯域超音波検出器によって半導体材料の表面応力波信号の検出を行い、前記高周波広帯域超音波検出器は、ナノ秒解像度を有する超音波トランスデューサと、レーザドップラ振動測定と、レーザ干渉器とを含む。
【0014】
前記ステップ4)において、半導体材料の表面に近接場光の励起により発生した応力波信号のテール部分に対してフィッティングを行って表面状態のキャリア寿命τ
cを取得し、具体的なフィッティング公式は、以下の通りである。
【数1】
そのうち、cは、格子定数であり、dE
G/dPは、バンドキャップ圧力係数であり、nは、電子-正孔対濃度であり、Qは、定数係数であり、tは、時間である。
【発明の効果】
【0015】
従来技術に比べて、本発明は、以下の利点を有する。
本発明は、近接場光照射半導体材料の表面を採用し、主に表面の光発生キャリアを励起し、ナノ秒解像度の高周波超音波トランスデューサ、レーザドップラ振動測定とレーザ干渉器で表面で発生した応力波に対して検出を行い、フィッティング計算した後に半導体表面状態のキャリア寿命を得ることができ、半導体のバルク再結合の影響を排除することができ、太陽電池、集積回路チップ等に対して重要な意味を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の半導体表面状態のキャリア寿命のテスト方法のフローチャートである。
【
図2】実測で得られる半導体表面状態の光発生応力波信号とフィッティング結果である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面と具体的な実施例を参照しながら、本発明について詳細に説明する。
<実施例>
【0018】
図1と2に示すように、本発明は、半導体表面状態のキャリア寿命のテスト方法を提供し、半導体表面状態におけるキャリア動力学性質を特徴づける新たな方法を提供する。半導体のバルク
再結合の影響を排除し、表面状態のキャリア寿命の測定に集中することができ、太陽電池、集積回路チップ等に対して重要な意味を有する。
【0019】
具体的には、それは、
光子エネルギが半導体禁制帯幅よりも高い狭パルス光源を使用して光パルスを発射し、光路コリメートを介して近接場光学プローブにカップリングし、近接場光は、測定対象半導体材料の表面で電子正孔対を励起し、光発生キャリアとも呼ばれ、そのうち、狭パルス光源によって発射される光パルス幅は、フェムト秒からナノ秒オーダであるステップ1と、
ステップ1の中に励起された光発生キャリアが半導体材料の表面に集中され、表面状態を
再結合中心として
再結合が絶えず発生し、
再結合レートは、キャリア濃度、キャリア寿命に比例する。光パルス照射が終了した後、光発生キャリアは、半導体材料内のキャリアバランス状態に回復するまで、
再結合し続けるステップ2と、
ステップ1)とステップ2)のキャリア励起と
再結合プロセスにおいて、電子体積効果にいずれも格子定数cの変化が発生するため、その相対変化量は、電子-正孔対濃度nに比例する。
【数2】
そのうち、dE
G/dPは、バンドキャップ圧力係数であり、Qは、一つの定数係数である。シリコンに対して、バンドキャップ圧力係数は、負数の(-1.4)であり、これは、電子正孔対の濃度nが増大する時、シリコンの格子定数が小さくなり、シリコンに収縮が発生し、電子正孔対の濃度nが減少する時、シリコンの格子定数が大きくなり、シリコンに膨張、すなわち電子体積効果が発生することを意味する。そのため光パルスが半導体材料上に入射する時、半導体材料の固有吸收と電子体積効果のため、まず収縮が発生し、さらに膨張が発生し、パルス応力波が発生する。ナノ秒解像度の高周波超音波トランスデューサ又はレーザドップラ振動測定又はレーザ干渉器で半導体材料の表面で発生した応力波信号に対して検出を行うステップ3と、
【数3】
に基づき、ステップ3の中に受信された応力波信号のテール部分に対してフィッティング計算を行って表面状態のキャリア寿命τ
cを得ることができるステップ4とを含む。