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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】弾性繊維用処理剤及び弾性繊維
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/643 20060101AFI20230501BHJP
   D06M 13/02 20060101ALI20230501BHJP
   D06M 13/292 20060101ALI20230501BHJP
   D06M 13/144 20060101ALI20230501BHJP
   D06M 13/188 20060101ALI20230501BHJP
   D06M 101/38 20060101ALN20230501BHJP
【FI】
D06M15/643
D06M13/02
D06M13/292
D06M13/144
D06M13/188
D06M101:38
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022191644
(22)【出願日】2022-11-30
【審査請求日】2022-12-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100202430
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 千香子
(72)【発明者】
【氏名】小田 康平
(72)【発明者】
【氏名】原田 美弥子
【審査官】大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-050442(JP,A)
【文献】特開2004-060135(JP,A)
【文献】特開2002-138373(JP,A)
【文献】特開2002-371467(JP,A)
【文献】特許第7098207(JP,B1)
【文献】特許第7098206(JP,B1)
【文献】国際公開第2022/065210(WO,A1)
【文献】特開2017-203222(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M13/00-15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジメチルシリコーン(A)、カルボン酸(B)、アルコール(C)及び下記のベース成分(D)を含有し、前記カルボン酸(B)が分子中に分岐アルキル基を有し、
ジメチルシリコーン(A)、カルボン酸(B)、アルコール(C)、ベース成分(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、カルボン酸(B)を0.1~27.0質量%の割合で含有することを特徴とする弾性繊維用処理剤。
ベース成分(D):鉱物油及びエステル油から選ばれる少なくとも1つ。
【請求項2】
前記アルコール(C)が、ゲルベアルコールを含むものである請求項1に記載の弾性繊維用処理剤。
【請求項3】
前記カルボン酸(B)が、炭素数が9以上のものを含むものである請求項1に記載の弾性繊維用処理剤。
【請求項4】
前記ジメチルシリコーン(A)、前記カルボン酸(B)、前記アルコール(C)、及び前記ベース成分(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記ジメチルシリコーン(A)を2.0~57.0質量%、前記カルボン酸(B)を0.1~27.0質量%、前記アルコール(C)を0.1~11.0質量%、及び前記ベース成分(D)を33.0~90.0質量%の割合で含有する請求項1に記載の弾性繊維用処理剤。
【請求項5】
更に、有機リン酸エステル及びそのアミン塩から選ばれる少なくとも1つの有機リン酸エステル(E)を含有する請求項1に記載の弾性繊維用処理剤。
【請求項6】
前記ジメチルシリコーン(A)、前記カルボン酸(B)、前記アルコール(C)、前記ベース成分(D)、及び前記有機リン酸エステル(E)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記ジメチルシリコーン(A)を2.0~57.0質量%、前記カルボン酸(B)を0.1~27.0質量%、前記アルコール(C)を0.1~11.0質量%、前記ベース成分(D)を33.0~90.0質量%、及び前記有機リン酸エステル(E)を0.1~10.0質量%の割合で含有する請求項5に記載の弾性繊維用処理剤。
【請求項7】
更に、シリコーンレジン(F)を含有する請求項1に記載の弾性繊維用処理剤。
【請求項8】
前記ジメチルシリコーン(A)、前記カルボン酸(B)、前記アルコール(C)、前記ベース成分(D)、及び前記シリコーンレジン(F)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記ジメチルシリコーン(A)を2.0~57.0質量%、前記カルボン酸(B)を0.1~27.0質量%、前記アルコール(C)を0.1~11.0質量%、前記ベース成分(D)を33.0~90.0質量%、及び前記シリコーンレジン(F)を0.1~10.0質量%の割合で含有する請求項7に記載の弾性繊維用処理剤。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の弾性繊維用処理剤が付着していることを特徴とする弾性繊維。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の化学構造を有するカルボン酸(B)を特定量含有する弾性繊維用処理剤及び、かかる弾性繊維用処理剤が付着している弾性繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン系弾性繊維等の弾性繊維は、他の合成繊維に比べて、繊維間の粘着性が強いため、弾性繊維を紡糸し、パッケージに巻き取った後、該パッケージから引き出して加工工程に供する際、パッケージから安定して解舒することが難しいだけでなく、紡糸した弾性繊維の形状保持性が低いと、パッケージの巻き糸が崩れるという問題があった。
また、弾性繊維用処理剤の制電性が低いと、糸切れが発生する他、弾性繊維用処理剤の製剤安定性の課題もあった。
これらの問題を解決するために、弾性繊維の平滑性を向上させる炭化水素油等の平滑剤を含有する弾性繊維用処理剤が提案されている。例えば、ベース成分、HLBが3~15のノニオン界面活性剤を0.01~30質量%含有する弾性繊維用処理剤(特許文献1)、ベース成分と、水、炭素数1~15の炭化水素基を有する低級アルコール、又は該低級アルコールのアルキレンオキサイド付加物を0.1~20質量%、乳化剤を0.1~30質量%含有する弾性繊維用処理剤(特許文献2)、ポリオキシエチレン骨格の含有量が分子中に20~80質量%であるポリオキシアルキレンエーテル変性ポリシロキサンを含有する弾性繊維用油剤(特許文献3)などであるが、上記の問題を全て解決する弾性繊維用処理剤は、未だ提案されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-100291号公報
【文献】特開2003-147675号公報
【文献】特開平09-268477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、長期間保管した際の製剤安定性に優れ、紡糸時の巻き形状保持性が良好であり、巻き取り後の解舒性及び弾性繊維に優れた制電性を付与する弾性繊維用処理剤及び、かかる弾性繊維用処理剤が付着している弾性繊維を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ジメチルシリコーン(A)、特定の化学構造を有するカルボン酸(B)、アルコール(C)及び、鉱物油及びエステル油から選ばれる少なくとも1つのベース成分(D)を含有し、前記カルボン酸(B)を特定量含有することにより、製剤安定性、巻き形状の保持性、制電性及び解舒性の全てに優れた弾性繊維用処理剤とし得ることを見出し、上記課題を解決するに至ったものである。
【0006】
本発明は、具体的には次の事項を要旨とする。
1.ジメチルシリコーン(A)、カルボン酸(B)、アルコール(C)及び下記のベース成分(D)を含有し、前記カルボン酸(B)が分子中に分岐アルキル基を有し、
ジメチルシリコーン(A)、カルボン酸(B)、アルコール(C)、ベース成分(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、カルボン酸(B)を0.1~27.0質量%の割合で含有することを特徴とする弾性繊維用処理剤。
ベース成分(D):鉱物油及びエステル油から選ばれる少なくとも1つ。
2.前記アルコール(C)が、ゲルベアルコールを含むものである1.に記載の弾性繊維用処理剤。
3.前記カルボン酸(B)が、炭素数が9以上のものを含むものである1.に記載の弾性繊維用処理剤。
4.前記ジメチルシリコーン(A)、前記カルボン酸(B)、前記アルコール(C)、及び前記ベース成分(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記ジメチルシリコーン(A)を2.0~57.0質量%、前記カルボン酸(B)を0.1~27.0質量%、前記アルコール(C)を0.1~11.0質量%、及び前記ベース成分(D)を33.0~90.0質量%の割合で含有する1.に記載の弾性繊維用処理剤。
5.更に、有機リン酸エステル及びそのアミン塩から選ばれる少なくとも1つの有機リン酸エステル(E)を含有する1.に記載の弾性繊維用処理剤。
6.前記ジメチルシリコーン(A)、前記カルボン酸(B)、前記アルコール(C)、前記ベース成分(D)、及び前記有機リン酸エステル(E)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記ジメチルシリコーン(A)を2.0~57.0質量%、前記カルボン酸(B)を0.1~27.0質量%、前記アルコール(C)を0.1~11.0質量%、前記ベース成分(D)を33.0~90.0質量%、及び前記有機リン酸エステル(E)を0.1~10.0質量%の割合で含有する5.に記載の弾性繊維用処理剤。
7.更に、シリコーンレジン(F)を含有する1.に記載の弾性繊維用処理剤。
8.前記ジメチルシリコーン(A)、前記カルボン酸(B)、前記アルコール(C)、前記ベース成分(D)、及び前記シリコーンレジン(F)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記ジメチルシリコーン(A)を2.0~57.0質量%、前記カルボン酸(B)を0.1~27.0質量%、前記アルコール(C)を0.1~11.0質量%、前記ベース成分(D)を33.0~90.0質量%、及び前記シリコーンレジン(F)を0.1~10.0質量%の割合で含有する7.に記載の弾性繊維用処理剤。
9.1.~8.のいずれか1項に記載の弾性繊維用処理剤が付着していることを特徴とする弾性繊維。
【発明の効果】
【0007】
本発明の弾性繊維用処理剤は、弾性繊維に優れた制電性を付与できるため、糸切れが発生することが無く有用である。
また、本発明の弾性繊維用処理剤は、解舒性及び巻き形状の保持性に優れているため、パッケージからの糸の引き出しに抵抗がなく、糸切れ等の問題も生じず安定に解舒することが出来るほか、パッケージに巻き取った後の巻き糸が崩れることが無い。
さらに、本発明の弾性繊維用処理剤は、製剤安定性に優れているため、弾性繊維用処理剤の運搬や保管の際に分離や沈殿が生じることが無く有用である。
本発明の弾性繊維用処理剤は、製剤安定性、巻き形状の保持性、制電性及び解舒性の全てにおいて優れており、非常に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<ジメチルシリコーン(A)>
本発明の弾性繊維用処理剤は、ジメチルシリコーン(A)を必須成分として含有するものである。
本発明の弾性繊維用処理剤は、ジメチルシリコーン(A)を、後述するベース成分(D)と併用することにより、弾性繊維用処理剤の低温安定性を好適に向上させることができるほか、後述するカルボン酸(B)との併用により、本発明の弾性繊維用処理剤を付与した弾性繊維が、長期間保存後の解舒性を良好なものとすることが出来る。
本発明におけるジメチルシリコーン(A)は、動粘度等によって規定される市販品を適宜採用してもよい。動粘度は、適宜設定されるが、25℃における動粘度が2~100mm/sの範囲であることが好ましく、5~70mm/sがより好ましく、5~50mm/sがさらに好ましい。該粘度が2mm/s未満であるとジメチルシリコーンが揮発する場合があり、100mm/sを超えると、弾性繊維用処理剤に配合される他成分の溶解性が悪くなることがある。25℃における動粘度は、JIS Z 8803に準拠して測定される数値を意味する。
本発明の弾性繊維用処理剤は、処理剤の全質量に対して、ジメチルシリコーン(A)を1~80.0質量%の範囲で含有することが好ましく、1~60.0質量%の範囲で含有することがより好ましく、2~57.0質量%の範囲で含有することがさらに好ましい。ジメチルシリコーン(A)を前記範囲で含有することが、弾性繊維の巻き形状の保持性と解舒性が向上する点において好ましい。
本発明の弾性繊維用処理剤は、1種類のジメチルシリコーン(A)を単独で使用してもよいし、又は2種以上のジメチルシリコーン(A)を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0009】
<分岐アルキル基を有するカルボン酸(B)>
本発明の弾性繊維用処理剤は、上記ジメチルシリコーン(A)と共に、分岐アルキル基を有するカルボン酸(B)を必須成分として含有するものであり、その含有量は、処理剤の全質量に対して、カルボン酸(B)を0.1~27.0質量%の範囲で含有するものである。
本発明におけるカルボン酸(B)は、カルボン酸のフリー体を意味し、カルボン酸塩は含まない。
本発明の弾性繊維用処理剤は、カルボン酸(B)を特定量含有することにより、弾性繊維用処理剤の製剤安定性、紡糸時の巻き形状の保持性、制電性及び解舒性それぞれを良好なものとする効果を発揮する。
本発明におけるカルボン酸(B)が有する分岐アルキル基は、特に制限はなく、例えば、α位が分岐したアルキル基であってもよいし、β位が分岐したアルキル基であってもよい。
カルボン酸(B)の炭素数は、特に制限はないが、例えば、4~40であることが好ましく、6~30であることがより好ましく、8~20であることがさらに好ましい。中でも、炭素数9以上のカルボン酸(B)を含むことが、弾性繊維の解舒性が向上する点において好ましい。
本発明におけるカルボン酸(B)としては、例えば、イソブタン酸、イソペンタン酸、イソヘキサン酸、2-エチルヘキシル酸、イソオクタン酸、イソノナン酸、イソデカン酸、イソトリデカン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、イソアラキン酸、イソヘキサコ酸等が挙げられる。
本発明の弾性繊維用処理剤は、1種類のカルボン酸(B)を単独で使用してもよいし、又は2種以上のカルボン酸(B)を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0010】
<アルコール(C)>
本発明の弾性繊維用処理剤は、上記ジメチルシリコーン(A)、分岐アルキル基を有するカルボン酸(B)と共に、アルコール(C)を必須成分として含有するものである。
本発明の弾性繊維用処理剤は、カルボン酸(B)とアルコール(C)の併用により、弾性繊維用処理剤の製剤安定性を向上させるほか、後述するベース成分(D)を加えての併用により、紡糸時の弾性繊維の巻き形状の保持性を向上させることができる。
本発明におけるアルコール(C)としては、ゲルベアルコール、すなわち、アルキル鎖のβ位に分岐鎖を有する1価脂肪族アルコールを用いることが、製剤安定性が向上する点において好ましい。中でも、炭素数6~24のゲルベアルコールがより好ましく、炭素数12~24のゲルベアルコールがさらに好ましい。
ゲルベアルコールの具体例としては、例えば2-エチル-1-プロパノール、2-エチル-1-ブタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、2-エチル-1-オクタノール、2-エチル-デカノール、2-ブチル-1-ヘキサノール、2-ブチル-1-オクタノール、2-ブチル-1-デカノール、2-ヘキシル-1-オクタノール、2-ヘキシル-1-デカノール、2-オクチル-1-デカノール、2-オクチル-1-ドデカノール、2-ヘキシル-1-オクタノール、2-ヘキシル-1-ドデカノール、2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチル-1-オクタノール、2-(4-メチルヘキシル)-8-メチル-1-デカノール、2-(1,5-ジメチルヘキシル)-5,9-ジメチル-1-デカノール等が挙げられる。
ゲルベアルコール以外のアルコール(C)の具体例としては、例えば、11-メチル-1-ドデカノール、1-デカノール、ステアリルアルコール、2-ドデカノール等が挙げられる。
本発明の弾性繊維用処理剤は、アルコール(C)を、処理剤の全質量に対して0.1~30質量%の範囲で含有することが好ましく、0.1~20質量%の範囲で含有することがより好ましく、0.1~11.0質量%の範囲で含有することがさらに好ましい。
本発明の弾性繊維用処理剤は、1種類のアルコール(C)を単独で使用してもよいし、又は2種以上のアルコール(C)を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0011】
<ベース成分(D)>
本発明の弾性繊維用処理剤は、上記ジメチルシリコーン(A)、分岐アルキル基を有するカルボン酸(B)、アルコール(C)と共に、鉱物油及びエステル油から選ばれる少なくとも1つをベース成分(D)として、必須に含有するものである。
本発明の弾性繊維用処理剤は、カルボン酸(B)、アルコール(C)及びベース成分(D)の併用により、紡糸時の弾性繊維の巻き形状の保持性を向上させることができる。
本発明の弾性繊維用処理剤は、ベース成分(D)を、処理剤の全質量に対して10~90.0質量%の範囲で含有することが好ましく、20~90.0質量%の範囲で含有することがより好ましく、33.0~90.0質量%の範囲で含有することがさらに好ましい。
(鉱物油)
鉱物油としては、例えば芳香族系炭化水素、パラフィン系炭化水素、ナフテン系炭化水素等が挙げられる。より具体的には、例えば、スピンドル油、流動パラフィン等が挙げられる。
本発明における鉱物油は、動粘度等によって規定される市販品を適宜採用してもよい。動粘度は、適宜設定されるが、30℃における動粘度が2cst(mm/s)以上100cst(mm/s)以下であることが好ましく、2cst(mm/s)以上50cst(mm/s)以下であることがより好ましい。なお、30℃における粘度は、キャノンフェンスケ粘度計を用いて測定される。また、複数種類の鉱物油が適用される場合は、全ての鉱物油を混合した際の動粘度の値が採用される。
本発明の弾性繊維用処理剤は、1種類の鉱物油を単独で使用してもよいし、又は2種以上の鉱物油を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0012】
(エステル油)
本発明の弾性繊維用処理剤におけるベース成分(D)として使用できるエステル油は、脂肪酸とアルコールとから製造されるエステル油である。
本発明におけるエステル油、エステル結合を1つ有する化学構造であれば、1価又は多価の脂肪族カルボン酸が、分岐鎖状や直鎖状の脂肪酸であっても、環状のシクロ環を有する脂肪酸であってもよく、芳香族環を有する脂肪酸であってもよく、置換基の有無等に特に制限はない。置換基を有してもよいとは、1価又は多価の脂肪族カルボン酸が、他に任意の結合や置換基を有してもよいという意味であり、例えば、アミド結合、エーテル結合、スルフィド結合、ジスルフィド結合、ウレタン結合などの結合や、エポキシ基、ニトロ基、シアノ基、ケトン基、ホルミル基、アセタール基、チオアセタール基、スルホニル基などの基などを有していてもよい。
エステル油の具体例としては、例えば(1)オクチルパルミタート、オレイルラウラート、オレイルオレアート、イソトリデシルステアラート、イソテトラコシルオレアート等の脂肪族モノアルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、(2)1,6-ヘキサンジオールジデカナート、グリセリントリオレアート、トリメチロールプロパントリラウラート、ペンタエリスリトールテトラオクタナート等の脂肪族多価アルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、(3)ジオレイルアゼラート、チオジプロピオン酸ジオレイル、チオジプロピオン酸ジイソセチル、チオジプロピオン酸ジイソステアリル等の脂肪族モノアルコールと脂肪族多価カルボン酸とのエステル化合物、(4)ベンジルオレアート、ベンジルラウラート等の芳香族モノアルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、(5)ビスフェノールAジラウラート等の芳香族多価アルコールと脂肪族モノカルボン酸との完全エステル化合物、(6)ビス2-エチルヘキシルフタラート、ジイソステアリルイソフタラート、トリオクチルトリメリタート等の脂肪族モノアルコールと芳香族多価カルボン酸との完全エステル化合物、(7)ヤシ油、ナタネ油、ヒマワリ油、大豆油、ヒマシ油、ゴマ油、魚油及び牛脂等の天然油脂等が挙げられる。
本発明の弾性繊維用処理剤は、1種類のエステル油を単独で使用してもよいし、又は2種以上のエステル油を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0013】
本発明の弾性繊維用処理剤は、上記ジメチルシリコーン(A)、分岐アルキル基を有するカルボン酸(B)、アルコール(C)及び、鉱物油及びエステル油から選ばれる少なくとも1つからなるベース成分(D)を必須成分とするものであり、成分(A)~(D)の合計を100質量%とすると、前記ジメチルシリコーン(A)を2.0~57.0質量%、前記カルボン酸(B)を0.1~27.0質量%、前記アルコール(C)を0.1~11.0質量%、及び前記ベース成分(D)を33.0~90.0質量%の割合で含有することが好ましく、前記ジメチルシリコーン(A)を5.0~46.0質量%、前記カルボン酸(B)を0.1~26.8質量%、前記アルコール(C)を0.1~10.5質量%、及び前記ベース成分(D)を33.0~87.0質量%の割合で含有することが更に好ましい。
【0014】
本発明の弾性繊維用処理剤は、有機リン酸エステル(E)として、有機リン酸エステル及びそのアミン塩から選ばれる少なくとも1つを含むことが、弾性繊維に制電性を付与する点において好ましい。
有機リン酸エステル(E)としては、アルキル基を分子中に有するリン酸エステルまたはそのアミン塩及び、オキシアルキレン基から構成されるポリオキシアルキレン基とアルキル基とを分子中に有するリン酸エステルまたはそのアミン塩から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
アルキル基の炭素数は、特に限定されないが、炭素数1~32が好ましく、炭素数8~22がより好ましい。また、分岐アルキル基であることが好ましい。アルキル基の具体例としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、イコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、イソペンチル基、イソヘキシル基、イソヘプチル基、イソオクチル基、イソデシル基、イソウンデシル基、イソドデシル基、イソトリデシル基、イソテトラデシル基、イソペンタデシル基、イソヘキサデシル基、イソヘプタデシル基、イソオクタデシル基、イソイコシル基等が挙げられる。
オキシアルキレン基を付加した化合物が用いられる場合、炭素数2~4のオキシアルキレン基が好ましい。アルキレンオキサイドの具体例としては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等が挙げられる。リン酸1モルに対するアルキレンオキサイドの付加モル数は、好ましくは1~50モル、より好ましくは1~30モル、さらに好ましくは1~10モルである。
有機リン酸エステル(E)を構成するリン酸は、特に制限はなく、オルトリン酸であってもよいし、二リン酸等のポリリン酸であってもよい。
アミン塩を構成するアミンは、1級アミン、2級アミン、及び3級アミンのいずれであってもよい。アミン塩を構成するアミンの具体例としては、例えば、(1)メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、N-N-ジイソプロピルエチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、2-メチルブチルアミン、トリブチルアミン、オクチルアミン、ジメチルラウリルアミン等の脂肪族アミン、(2)アニリン、N-メチルベンジルアミン、ピリジン、モルホリン、ピペラジン、これらの誘導体等の芳香族アミン類又は複素環アミン、(3)モノエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジブチルエタノールアミン、ブチルジエタノールアミン、オクチルジエタノールアミン、ラウリルジエタノールアミン等のアルカノールアミン、(4)N-メチルベンジルアミン等のアリールアミン、(5)ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンステリルアミノエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、(6)アンモニア等が挙げられる。
【0015】
有機リン酸エステル(E)の具体例としては、2-エチル-1-ヘキシルリン酸エステルオクチルアミン塩、2-ヘキシル-1-デシルリン酸エステルオクチルアミン塩、2-エチル-1-ヘキシルリン酸エステルジオクチルアミン塩、2-ヘキシル-1-デシルリン酸エステルジオクチルアミン塩、2-エチル-1-ヘキシルリン酸エステルジメチルドデシルアミン塩、2-ヘキシル-1-デシルリン酸エステルジメチルドデシルアミン塩、2-エチル-1-ヘキシルリン酸エステルジブチルエタノールアミン塩、6-メチル-1-ヘキシルリン酸エステルジブチルエタノールアミン塩、7-メチル-1-へプチルリン酸エステルジブチルエタノールアミン塩、2,6-ジメチル-4-ヘプチルリン酸エステルジブチルエタノールアミン塩、2-プロピル-1-へプチルリン酸エステルジブチルエタノールアミン塩、10-メチル-1-デシルリン酸エステルジブチルエタノールアミン塩、2-ブチル-1-オクチルリン酸エステルジブチルエタノールアミン塩、2-ブチル-1-デシルリン酸エステルジブチルエタノールアミン塩、11-メチル-1-ドデシルリン酸エステルジブチルエタノールアミン塩、2-ヘキシル-1-オクチルリン酸エステルジブチルエタノールアミン塩、2-ヘキシル-1-デシルリン酸エステルジブチルエタノールアミン塩、2-ヘキシル-1-ドデシルリン酸エステルジブチルエタノールアミン塩、2-オクチル-1-デシルリン酸エステルジブチルエタノールアミン塩、2-オクチル-1-ドデシルリン酸エステルジブチルエタノールアミン塩、2-デシル-1-テトラデシルリン酸エステルジブチルエタノールアミン塩、2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチル-1-オクチルリン酸エステルジブチルエタノールアミン塩、2-(4-メチルヘキシル)-8-メチル-1-デシルリン酸エステルジブチルエタノールアミン塩、2-(1,5-ジメチルヘキシル)-5,9-ジメチル-1-デシルリン酸エステルジブチルエタノールアミン塩、2-エチル-1-ヘキシルリン酸エステルドデシルジエタノールアミン塩、2-ヘキシル-1-デシルリン酸エステルドデシルジエタノールアミン塩等の、有機アルコールが分岐アルコールである場合のリン酸エステルアミン塩、オクチルリン酸エステルオクチルアミン塩、オクタデシルリン酸エステルオクチルアミン塩、オクチルリン酸エステルジオクチルアミン塩、オクタデシルリン酸エステルジオクチルアミン塩、オクチルリン酸エステルジメチルドデシルアミン塩、オクタデシルリン酸エステルジメチルドデシルアミン塩、オクチルリン酸エステルジブチルエタノールアミン塩、ドデシルリン酸エステルジブチルエタノールアミン塩、ヘキサデシルリン酸エステルジブチルエタノールアミン塩、オクタデシルリン酸エステルジブチルエタノールアミン塩、オクタデセニルリン酸エステルジブチルエタノールアミン塩、オクチルリン酸エステルドデシルジエタノールアミン塩、オクタデシルリン酸エステルドデシルジエタノールアミン塩等の、有機アルコールが直鎖アルコールである場合のリン酸エステルアミン塩、等が挙げられる。
本発明の弾性繊維用処理剤は、有機リン酸エステル(E)を、処理剤の全質量に対して0~30質量%の範囲で含有することが好ましく、0.01~25質量%の範囲で含有することがより好ましく、0.1~20質量%の範囲で含有することがさらに好ましい。
本発明の弾性繊維用処理剤は、1種類の有機リン酸エステル(E)を単独で使用してもよいし、又は2種以上の有機リン酸エステル(E)を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0016】
本発明の弾性繊維用処理剤は、ジメチルシリコーン(A)、分岐アルキル基を有するカルボン酸(B)、アルコール(C)、鉱物油及びエステル油から選ばれる少なくとも1つからなるベース成分(D)及び有機リン酸エステル(E)を含有する場合は、成分(A)~(E)の合計を100質量%とすると、前記ジメチルシリコーン(A)を2.0~57.0質量%、前記カルボン酸(B)を0.1~27.0質量%、前記アルコール(C)を0.1~11.0質量%、前記ベース成分(D)を33.0~90.0質量%及び前記有機リン酸エステル(E)を0.1~10.0質量%の割合で含有することが好ましく、前記ジメチルシリコーン(A)を5.0~46.0質量%、前記カルボン酸(B)を0.1~26.8質量%、前記アルコール(C)を0.1~10.5質量%、前記ベース成分(D)を33.0~87.0質量%及び前記有機リン酸エステル(E)を0.1~9.0質量%の割合で含有することが更に好ましい。
【0017】
<シリコーンレジン(F)>
本発明の弾性繊維用処理剤は、シリコーンレジン(F)を含有することが、巻き取り後の解舒性を向上させる点において好ましい。
シリコーンレジン(F)として、MQシリコーンレジン、MDQシリコーンレジン、Tシリコーンレジン及びMTQシリコーンレジンから選ばれる少なくとも1つであることが好ましく、M/Q比が0.5~1.5である場合のものが最も好ましい。尚、シリコーンレジンに冠したM、D、T、Qはシリコーンレジンを構成するシロキサン単位の表記方法として一般的に使用されているもので、Mは一般式がRSiO1/2で示される1官能性シロキサン単位、Dは一般式がRSiO2/2で示される2官能性シロキサン単位、Tは一般式がRSiO3/2で示される3官能性シロキサン単位、Qは一般式がSiO4/2で示される4官能性シロキサン単位である。ここで、R~Rは炭素数1~24の炭化水素基、一般式が-RNHRNH(R及びRは炭素数2又は3の炭化水素基)や-RNH(Rは炭素数2又は3の炭化水素基)等で示される有機アミノ基、ビニル基、カルビノール基等である。
本発明の弾性繊維用処理剤は、シリコーンレジン(F)を、処理剤の全質量に対して0~12質量%の範囲で含有することが好ましく、0.01~11質量%の範囲で含有することがより好ましく、0.1~10質量%の範囲で含有することがさらに好ましい。
本発明の弾性繊維用処理剤は、1種類のシリコーンレジン(F)を単独で使用してもよいし、又は2種以上のシリコーンレジン(F)を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0018】
本発明の弾性繊維用処理剤は、ジメチルシリコーン(A)、分岐アルキル基を有するカルボン酸(B)、アルコール(C)、鉱物油及びエステル油から選ばれる少なくとも1つからなるベース成分(D)及びシリコーンレジン(F)を含有する場合は、成分(A)、(B)、(C)、(D)、(F)の合計を100質量%とすると、前記ジメチルシリコーン(A)を2.0~57.0質量%、前記カルボン酸(B)を0.1~27.0質量%、前記アルコール(C)を0.1~11.0質量%、前記ベース成分(D)を33.0~90.0質量%及び前記シリコーンレジン(F)を0.1~10.0質量%の割合で含有することが好ましく、前記ジメチルシリコーン(A)を5.0~46.0質量%、前記カルボン酸(B)を0.1~26.8質量%、前記アルコール(C)を0.1~10.5質量%、前記ベース成分(D)を33.0~87.0質量%及び前記シリコーンレジン(F)を0.1~9.0質量%の割合で含有することが更に好ましい。
本発明の弾性繊維用処理剤は、ジメチルシリコーン(A)、分岐アルキル基を有するカルボン酸(B)、アルコール(C)、鉱物油及びエステル油から選ばれる少なくとも1つからなるベース成分(D)、有機リン酸エステル(E)及びシリコーンレジン(F)を含有する場合は、成分(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)の合計を100質量%とすると、前記ジメチルシリコーン(A)を2.0~57.0質量%、前記カルボン酸(B)を0.1~27.0質量%、前記アルコール(C)を0.1~11.0質量%、前記ベース成分(D)を33.0~90.0質量%、前記有機リン酸エステル(E)を0.1~10.0質量%及び前記シリコーンレジン(F)を0.1~10.0質量%の割合で含有することが好ましく、前記ジメチルシリコーン(A)を5.0~46.0質量%、前記カルボン酸(B)を0.1~26.8質量%、前記アルコール(C)を0.1~10.5質量%、前記ベース成分(D)を33.0~87.0質量%、前記有機リン酸エステル(E)を0.1~9.0質量%及び前記シリコーンレジン(F)を0.1~9.0質量%の割合で含有することが更に好ましい。
【0019】
<その他の成分(G)>
本発明の弾性繊維用処理剤は、その他の成分(G)として、制電剤、消泡剤、酸化防止剤、防腐剤、防錆剤等を併用することができる。その他の成分(G)の併用量は、本発明の効果を損なわない範囲内において規定することができる。
【0020】
本発明の弾性繊維用処理剤は、ジメチルシリコーン(A)、特定量の分岐アルキル基を有するカルボン酸(B)、アルコール(C)、鉱物油及びエステル油から選ばれる少なくとも1つからなるベース成分(D)を必須成分として、必要に応じて、有機リン酸エステル(E)、シリコーンレジン(F)を含有することにより、製剤安定性、巻き形状の保持性、制電性及び解舒性の全てにおいて優れた効果を発揮するものである。
【0021】
<弾性繊維>
本発明の弾性繊維用処理剤を付着させる弾性繊維の具体例としては、特に制限はないが、例えばポリエステル系弾性繊維、ポリアミド系弾性繊維、ポリオレフィン系弾性繊維、ポリウレタン系弾性繊維等が挙げられる。これらの中でもポリウレタン系弾性繊維が好ましい。かかる場合に本発明の効果の発現をより高くすることができる。
本発明の弾性繊維用処理剤の弾性繊維に対する付着量は、特に制限はないが、本発明の効果をより向上させる観点から0.1質量%以上10質量%以下の範囲で付着させることが好ましい。
【0022】
本発明における弾性繊維の製造方法は、本発明の弾性繊維用処理剤を弾性繊維に給油することにより得られる。処理剤の給油方法としては、希釈することなくニート給油法により、弾性繊維の紡糸工程において弾性繊維に付着させる方法が好ましい。付着方法としては、例えばローラー給油法、ガイド給油法、スプレー給油法等の公知の方法が適用できる。給油ローラーは、通常口金から巻き取りトラバースまでの間に位置させることが一般的であり、本発明の製造方法にも適用できる。これらの中でも、延伸ローラーと延伸ローラーの間に位置する給油ローラーにて本発明の弾性繊維用処理剤を弾性繊維、例えばポリウレタン系弾性繊維に付着させることが、本発明の効果を顕著に発現させるために好ましい。
本発明に用いる弾性繊維自体の製造方法は、特に限定されず、公知の方法で製造が可能である。例えば湿式紡糸法、溶融紡糸法、乾式紡糸法等が挙げられる。これらの中でも、弾性繊維の品質及び製造効率が優れる観点から乾式紡糸法が好ましく適用される。
【実施例
【0023】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明の技術範囲はこれらにより限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0024】
<実施例1~21、比較例1~11の弾性繊維用処理剤>
実施例1~21の弾性繊維用処理剤は下記表1に、比較例1~11の弾性繊維用処理剤は下記表2に、それぞれ示された組成に基づいて、各成分をよく混合して均一にすることで各弾性繊維用処理剤を調製した。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】
表1、2に記載した各成分の詳細は以下のとおりである。
<ジメチルシリコーン(A)>
A-1:動粘度10mm/s(25℃)のジメチルシリコーン
A-2:動粘度20mm/s(25℃)のジメチルシリコーン
A-3:動粘度100mm/s(25℃)のジメチルシリコーン
【0028】
<分子中に分岐アルキル基を有するカルボン酸(B)>
B-1:イソアラキン酸
B-2:イソステアリン酸
B-3:イソパルミチン酸
B-4:イソオクチル酸
rB-1:ノナン酸
【0029】
<アルコール(C)>
C-1:2-ブチル-1-オクタノール
C-2:2-ヘキシル-1-デカノール
C-3:2-オクチル-1-ドデカノール
C-4:11-メチル-1-ドデカノール
C-5:1-デカノール
【0030】
<ベース成分(D)>
D-1:動粘度4.4mm/s(30℃)の鉱物油
D-2:動粘度11.4mm/s(30℃)の鉱物油
D-3:動粘度13.5mm/s(30℃)の鉱物油
D-4:動粘度9.8mm/s(30℃)の鉱物油
D-5:動粘度14.8mm/s(30℃)の鉱物油
D-6:オクチルパルミタート
【0031】
<有機リン酸エステル(E)>
E-1:イソオクタデシルアルコールのリン酸エステルのジブチルエタノールアミン塩
E-2:イソヘキサデシルアルコールのリン酸エステルのジブチルエタノールアミン塩
E-3:イソヘキサデシルアルコールのリン酸エステル
【0032】
<シリコーンレジン(F)>
F-1:アミノ変性シリコーンレジン
F-2:シリコーンレジン
【0033】
<その他の成分(G)>
G-1:ジメチルステアリルアミン
G-2:イソステアリン酸ナトリウム
G-3:ラウリルアミン
【0034】
<評価方法及び評価基準>
(1)製剤安定性に関する評価
[弾性繊維用処理剤の製剤安定性の評価方法]
弾性繊維用処理剤を5℃で1ヵ月静置して、下記の基準で安定性を評価した。なお、5℃で1ヵ月静置後、同じ条件で静置を継続しても更なる変調は認められなかった。
[弾性繊維用処理剤の製剤安定性の評価基準]
◎◎:沈殿や分離が無く、調製時と同様に均一な状態を保っている。
◎:ごくわずかに沈殿を生じるが、室温に静置すると調製時と同様に均一な状態に復元する。
〇:沈殿を生じるが、室温条件で攪拌することで調製時と同様に均一な状態に復元する。
×:沈殿、分離が生じる。室温条件で攪拌しても、均一な状態に復元しない。
【0035】
(2)巻き形状保持性に関する評価方法
[巻き形状保持性の評価方法]
20デニールのポリウレタン系弾性繊維に処理剤をノズル給油法で5.0%付着させ、巻き取り速度550m/分で、長さ57mmの円筒状紙管に、巻き幅42mmを与えるトラバースガイドを介して、サーフェイスドライブの巻取機を用いて500g巻き取り、ポリウレタン系弾性繊維のパッケージを得た。
得られたポリウレタン系弾性繊維のパッケージ(500g巻き)について、巻き幅の最大値(Wmax)と最小幅(Wmin)を計測し、バルジ(双方の差「Wmax-Wmin」)を求め、下記の基準で評価した。
[巻き形状保持性の評価基準]
◎◎:バルジが3mm未満。(糸の巻き崩れがない。解舒時に張力斑が見られない。)
◎:バルジが3mm以上、4.5mm未満。(糸の巻き崩れがほとんどない。解舒時に張力斑が僅かにみられるが、操業に問題はない。)
○:バルジが4.5mm以上、6mm未満。(糸の巻き崩れがみられる。解舒時に張力斑がみられるが、操業に問題はない。)
×:バルジが6mm以上。(糸の巻き崩れがみられる。解舒時に張力斑がみられ、断糸が発生し操業時に問題となる。)
【0036】
(3)弾性繊維用処理剤の制電性に関する評価
[弾性繊維用処理剤の制電性の評価方法]
弾性繊維用処理剤を付与して得られた紡糸直後のポリウレタン系弾性繊維5gの電気抵抗値を、25℃×40%RHの雰囲気下で、電気抵抗測定器(東亜電波工業社製のSM-5E型)を用いて測定し、測定値を次の基準で評価した。
[制電性の評価基準]
◎◎:電気抵抗値1.0×10Ω未満の場合。(整経工程にて糸揺れが発生しない。)
◎:電気抵抗値1.0×10Ω以上且つ1.0×10Ω未満の場合。(整経工程にて僅かに糸揺れが生じるが、操業に問題はない。)
○:電気抵抗値1.0×10Ω以上且つ1.0×1010Ω未満の場合。(整経工程にて糸揺れが生じるが、操業に問題はない。)
×:電気抵抗値1.0×1010Ω以上の場合。(整経工程にて糸揺れが生じ、工程中で断糸が発生する為、操業時に問題となる。)
【0037】
(4)弾性繊維用処理剤の解舒性に関する評価
[解舒性の評価方法]
片側に第1駆動ローラーとこれに常時接する第1遊離ローラーとで送り出し部を構成し、また反対側に第2駆動ローラーとこれに常時接する第2遊離ローラーとで巻き取り部を構成して、該送り出し部に対し該巻き取り部を水平方向で20cm離して設置した。
第1駆動ローラーに各処理剤を付与した紡糸直後の乾式紡糸ポリウレタン系弾性繊維のパッケージを装着し、糸巻の厚さが2mmになるまで解舒して、第2駆動ローラーに巻き取った。
第1駆動ローラーからのポリウレタン系弾性繊維の送り出し速度を50m/分で固定する一方、第2駆動ローラーへのポリウレタン系弾性繊維の巻き取り速度を50m/分より徐々に上げて、ポリウレタン系弾性繊維をパッケージから強制解舒した。
この強制解舒時において、送り出し部分と巻き取り部分との間でポリウレタン系弾性繊維の踊りがなくなる時点での巻き取り速度V(m/分)を測定し、下記の算出式から解舒性(%)を求め、次の基準で評価した。
[算出式]
解舒性(%)=(V-50)÷50×100=(V-50)×2
[解舒性の評価基準]
◎◎:解舒性が150%未満(全く問題なく、安定に解舒できる)。
◎:解舒性が150%以上165%未満(糸の引き出しに僅かに抵抗があるが、糸切れは無く、操業に問題はない)。
○:解舒性が165%以上180%未満(糸の引き出しに抵抗があるが、糸切れは無く、操業に問題はない)。
×:解舒性が180%以上(糸の引き出しに抵抗がある。糸切れもあって、操業時に問題となる)。
【0038】
上記の(1)製剤安定性、(2)巻き形状保持性、(3)制電性、(4)解舒性、それぞれの評価結果を、実施例1~21の弾性繊維用処理剤は表3に、比較例1~11の弾性繊維用処理剤は表4にまとめて示す。
【0039】
【表3】
【0040】
【表4】
【0041】
表3に示すとおり、本発明の具体例である実施例1~21の弾性繊維用処理剤は、長期間保管した際の製剤安定性に優れ、紡糸時の巻き形状保持性が良好であり、制電性及び巻き取り後の解舒性に優れた効果を発揮することが明らかとなった。
一方、カルボン酸(B)の配合量が本発明の特定量より多い比較例1、2は、長期間保管した際の製剤安定性に劣ることが、ジメチルシリコーン(A)を含有しない比較例3は、製剤安定性に加えて解舒性に劣ることが、カルボン酸(B)を含有しない比較例4や、本発明のカルボン酸(B)とは相違する直鎖のカルボン酸を含有する比較例6は、製剤安定性、巻き形状の保持性、制電性及び解舒性の全てにおいて劣ることが確認された。
また、ベース成分(D)を含有しない比較例7や、アルコール(C)を含有しない比較例8~11も、製剤安定性、巻き形状の保持性において劣ることが確認された。
【要約】
【課題】長期間保管した際の製剤安定性に優れ、紡糸時の巻き形状保持性が良好であり、巻き取り後の解舒性及び弾性繊維に優れた制電性を付与する弾性繊維用処理剤及び、かかる弾性繊維用処理剤が付着している弾性繊維を提供する。
【解決手段】本発明の弾性繊維用処理剤は、ジメチルシリコーン(A)、分子中に分岐アルキル基を有するカルボン酸(B)、アルコール(C)及び、鉱物油及びエステル油から選ばれる少なくとも1つからなるベース成分(D)を含有し、
ジメチルシリコーン(A)、カルボン酸(B)、アルコール(C)、ベース成分(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、カルボン酸(B)を0.1~27.0質量%の割合で含有することを特徴とする。
【選択図】なし