前記膜通過ドメインは、CD99由来膜通過ドメインを含むことを特徴とする、キメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor;CAR)。
前記CD99由来細胞外ドメインは、配列番号5又は配列番号5のアミノ酸配列のうち、連続する20~70個のアミノ酸残基を含むアミノ酸配列で表示されることを特徴とする、請求項
前記細胞内信号伝達ドメイン(intracellular signaling domain)は、CD3ゼータ(ζ)、CD3ガンマ(γ)、CD3デルタ(δ)、CD3エプシロン(ε)、FcRガンマ、FcRベータ、CD5、CD22、CD79a、CD79b及びCD66dからなる群から選ばれる細胞内信号伝達ドメイン;及び/又は
CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、4-1BB(CD137)、OX40(CD134)、ICOS、LFA-1、GITR、MyD88、DAP1、PD-1、LIGHT、NKG2C、B7-H3及びCD83と特異的に結合するリガンドからなる群から選ばれる共同刺激(co-stimulatory)ドメイン;
前記抗原結合ドメインは、下記の群から選ばれる抗原に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片(antigen binding fragment)を含むことを特徴とする、請求項1に記載のキメラ抗原受容体:
4-1BB、BCMA、BAFF、B7-H3、B7-H6、CA9、CTAG1B、CEA、サイクリン、サイクリンA2、サイクリンB1、CCL-l、CCR4、CD3、CD4、CD19、CD20、CD22、CD23、CD24、CD30、CD33、CD38、CD40、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD52、CD58、CD62、CD79A、CD79B、CD80、CD123、CD133、CD138、CD171、CSPG4、CLDN18、CLDN6、CTLA-4、c-Met、DLL3、EGFR、tEGFR、EGFRvIII、EPG-2、EPG-40、エフリンB2、EPHA2、エストロゲン受容体、Fc受容体、FCRL5、FGF23、FBP、FOLR1、FOLR2、GD2、ガングリオシドGD3、gp100、GPC3、GPCR5D、GM-CSF、Her2/neu、Her3、Her4、erbBダイマー(dimers)、HMW-MAA、HBsAg、HLA-A1、HLA-A2、IL-22Ra、IL-13Ra2、ICOS、IGF-1受容体、インテグリンαvβ6、インターフェロン受容体、IFNγ、IL-2R、IL-4R、IL-5R、IL-6R、IL-17RA、IL-31R、IL-36R、kdr、L1-CAM、L1-CAMのCE7エピトープ、LRRC8A、Lewis Y、LAG3、MAGEAl、MAGEA3、MAGEA6、MAGEAlO、MSLN、CMV、MUC1、NKG2Dリガンド、MART-l、NGF、NCAM、NRP-1、NRP-2、胎児性癌抗原、PD-L1、PRAME、プロゲステロン受容体、前立腺特異抗原、PSCA、PSMA、RANKL、ROR1、SLAMF7、サバイビン(survivin)、TPBG、TAG72、TRP1、TRP2及びウィルムス腫瘍1(WT1)。
前記抗原結合断片は、抗体の一本鎖可変断片(single chain variable fragment;scFv)又はナノボディー(nanobody)であることを特徴とする、請求項
前記キメラ抗原受容体は、配列番号27、配列番号29、配列番号31又は配列番号33で表示されるアミノ酸配列を含むことを特徴とする、請求項1に記載のキメラ抗原受容体。
本発明は、免疫シナプス安定化に参入するCD99部位を、キメラ抗原受容体のバックボーン(backbone)として用いる、新しいキメラ抗原受容体、これを含む免疫細胞及びその用途に関する。
免疫細胞を用いた抗癌治療法の開発は、T細胞を中心に発展しており、腫瘍抗原特異的T細胞の体外培養及び増殖が可能になりながら、抗癌T細胞治療法も可視的な成果を上げている(Gattinoni L,et al.,Nat Rev Immunol.2006;6(5):383-93)。しかしながら、患者の体内に存在する腫瘍抗原特異的T細胞の数は非常に少ないため、これらのT細胞を体外増殖させて十分のT細胞を確保するまでには1ケ月以上の長い期間がかかるという不具合があった。
そこで、治療用抗体分野で蓄積された組換え抗体作製技術に基づき、癌細胞表面に発現する腫瘍抗原を認知する組換え抗体と、T細胞活性化を誘導する信号伝達ドメインとを連結したキメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor;CAR)遺伝子をT細胞に導入することによって短い期間で腫瘍特異的T細胞を多量確保する技術を開発しており、これらのT細胞は、CAR-T細胞と名付けられた(Kershaw MH,et al.,Nat Rev Immunol.2005;5(12):928-40;Restifo NP,et al.,Nat Rev Immunol.2012;12(4):269-81)。
CAR-T細胞治療剤は、特に、血液腫瘍を対象にした臨床試験において劇的な効果を示すことから注目し始められた。すなわち、Bリンパ球系血液腫瘍抗原であるCD19を認知する抗体を用いたCAR-T細胞治療では、既存のいかなる治療にも不応した急性リンパ球性白血病患者を対象にした初期臨床試験において90%の患者(30名中の27人)が1ケ月以内に完全寛解をなし、6ケ月全体生存率が78%に達する、驚くべき治療効果を示した(Maude SL,et al.,N Engl J Med.2014;371(16):1507-17.)。このような結果に基づき、2017年末に2種のCD19 CAR-T細胞治療剤がFDA承認下に商業化に成功した。
現在CAR-T細胞治療の成功事例は、CD19陽性急性白血病に限定されており、固形腫瘍ではその治療効率が劣ると報告されている。その理由の一部は、固形腫瘍が免疫抑制力を保有した腫瘍微細環境をより強固に構築したためと理解される(Springuel L,et al.,BioDrugs.2019;33(5):515-37)。一例として、CD19陽性血液腫瘍も、腫瘍細胞が主に血液中に増殖する白血病に比べて、固形腫瘍を形成するリンパ腫において、CAR-T細胞治療効率が遥かに劣ることが知られている(Sadelain M,et al.,Nature.2017;545(7655):423-31)。このため、CAR-T細胞の機能をより向上させる努力が切実な状況である(Mardiana S,et al.,Sci Transl Med.2019;11(495))。
CARタンパク質は、癌抗原を認知する抗体の可変領域(一本鎖可変断片;scFv)がバックボーン(backbone)を介して細胞内信号伝達ドメイン(intracellular signaling domain)に連結された形態でデザインされている(Dotti G,et al.,Immunol Rev.2014;257(1):107-26)。細胞内信号伝達ドメインは、主に、T細胞受容体の信号伝達サブユニットであるCD3ゼータ(ζ)鎖の細胞内信号伝達ドメインを基本としており(1世代CAR)、ここにT細胞の成長及び分化を促進する共同刺激分子(co-stimulatory molecule)の細胞内信号伝達ドメインを追加する形態で進化してきた。
現在までCARタンパク質の変調(modification)によってCAR-T細胞の機能を向上させようとする努力が続いており、その大部分は、共同刺激分子の信号伝達ドメインを交替したり追加する形式で行われてきた。例えば、現在市販中の2種のCAR-T細胞治療剤はそれぞれ、CD28と4-1BB共同刺激分子の細胞内信号伝達ドメインを使用しており(2世代CAR)、以降、CD28と4-1BB細胞内信号伝達ドメインを同時に含むCAR(3世代CAR)などが試みられている(van der Stegen SJ,et al.,Nat Rev Drug Discov.2015;14(7):499-509)。しかし、相対的に、膜通過ドメイン(transmembrane domain)を含むバックボーン(backbone)は、現在までscFvと細胞内信号伝達ドメインとを連結する物理的な機能のためにしか用いられておらず、この部位に機能性が与えられたCARデザインは殆ど報告されたたことがない。
本発明では、CD99という膜タンパク質が免疫シナプス安定化という新しい機序によってT細胞機能を向上させることを確認し、CD99の一部の部位をCARタンパク質のバックボーン(backbone)として用いることにより、CAR-T細胞の機能を向上させることができることを確認し、これを用いた新しいCAR-T細胞治療法を開発した。
本背景技術の部分に記載された前記情報は、単に本発明の背景に関する理解を向上させるためのものであり、よって、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者にとって既に知らされている先行技術を形成する情報を含まなくてもよい。
本発明の目的は、免疫細胞とターゲット細胞との接触部位に形成される免疫シナプスを安定化させることにより、向上した腫瘍治療効果を示すキメラ抗原受容体及びこれを含む免疫細胞を提供することにある。
本発明の他の目的は、前記キメラ抗原受容体をコードする核酸、該核酸を含む発現ベクター及び該発現ベクターを含むウイルスを提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、前記免疫細胞を含む癌治療用組成物、前記免疫細胞を用いた癌治療方法、癌治療のための前記免疫細胞の用途、及び癌治療用薬剤の製造のための前記免疫細胞の使用を提供することにある。
上記の目的を達成するために、本発明は、CD99タンパク質由来膜通過ドメインを含むキメラ抗原受容体を提供する。
本発明は、また、前記キメラ抗原受容体をコードする核酸、該核酸を含む発現ベクター、該発現ベクターを含むウイルス、及び前記キメラ抗原受容体を発現する免疫細胞を提供する。
本発明は、また、前記免疫細胞を含む癌治療用組成物、前記免疫細胞を用いた癌治療方法、癌治療のための前記免疫細胞の用途、及び癌治療用薬剤の製造のための前記免疫細胞の使用を提供する。
特に断りのない限り、本明細書で使われる技術的及び科学的用語はいずれも、本発明の属する技術の分野における熟練したた専門家によって通常理解されるのと同じ意味を有する。一般に、本明細書における命名法は、本技術分野でよく知られており、通常用いられるものである。
CD99は、T細胞をはじめとする種々の細胞群で発現する膜タンパク質であって、細胞間接着(cell adhesion)、細胞の移動(cell migration)、タンパク質の細胞内移動(protein trafficking)などに関与するものと知らされてきた(Pasello M,et al.,J Cell Commun Signal.2018;12(1):55-68))。T細胞では共同刺激分子(co-stimulatory molecule)としてT細胞活性化を促進する役割を有することが報告され(Oh KI,et al.,Exp Mol Med.2007;39(2):176-84)、また、MHC I、TCRなどの細胞膜タンパク質の細胞表面発現を促進することが報告された(Sohn HW,et al.,J Immunol.2001;166(2):787-94)。このようなT細胞活性化過程の機序により、CD99が脂質ラフト(lipid raft)に移動してT細胞内部のアクチン細胞骨格再配列(cytoskeleton rearrangement)を調節する可能性が提示されたが、その具体的な分子機序は研究されたことがない(Yoon SS,et al.,FEBS Lett.2003;540(1-3):217-22)。
T細胞は、樹状細胞のような抗原提示細胞と接触すると、抗原提示細胞の提示するペプチド抗原をTCR(T cell receptor)から認知し、TCR信号を内部に伝達して活性化される。このとき、T細胞の細胞膜部位は抗原提示細胞の細胞膜部位と強い接触を相当期間持続するが、この接触部位を免疫シナプス(immune synapse)と通称している(Grakoui A,et al.,Science.1999;285(5425):221-7)。免疫シナプスの形成は、T細胞活性化信号伝達に重要な役割を担い、免疫シナプスの形成にはT細胞内部のアクチン細胞骨格再配列(cytoskeletal rearrangement)が必須であることがよく知られている(Dustin ML,Cooper JA,Nat Immunol.2000;1(1):23-9)。また、最近ではアクチンの他に微小管細胞骨格も免疫シナプスに関与することが知られたが、その相互関係については明確に研究されたことがない(Martin-Cofreces NB,Sanchez-Madrid F,Front Immunol.2018;9:1174;Dogterom M,Koenderink GH,Nat Rev Mol Cell Biol.2019;20(1):38-54)。
本発明では、CD99が免疫シナプス形成に重要な役割を担い、これは、CD99が細胞内部の細胞骨格再配列を媒介するためであることを証明した。また、具体的な機序として、CD99がアクチン細胞骨格と既存にあまり研究されていない微小管細胞骨格とをつなぐブリッジ分子として作用することを究明した。
また、CD99分子の膜通過ドメインと細胞内膜近接ドメイン(intracellular juxtamembrane domain)がそれぞれ、微小管とアクチンとの結合に独立した役割を果たしていることを究明した。
CAR-T細胞の場合、CARタンパク質の抗体部位を用いて腫瘍細胞表面の抗原に接触すると、正常T細胞と抗原提示細胞とが接触する時と類似の免疫シナプスが形成されることが知られており、免疫シナプスの形成がCAR-T細胞の活性に関連していることが報告された(Davenport AJ,et al.,Proc Natl Acad Sci U S A.2018;115(9):E2068-E76)。したがって、免疫シナプス形成が促進されるCARタンパク質デザインは、CAR-T細胞の活性を大きく増加させることができる。
CD99が細胞骨格再配列と免疫シナプス形成において重要な役割を担うという実験結果に基づき、現CARタンパク質の構造のうち、膜通過ドメインを含むCARバックボーン(backbone)を、CD99の膜通過ドメインを含む構造に置換する場合に、CAR-T細胞の機能が向上するかどうかテストした。その結果、CD99の一部の細胞外ドメイン、膜通過ドメイン、細胞内膜近接ドメインを含むCARタンパク質を発現したCAR-T細胞が、既存CD8タンパク質部位を用いたCAR-T細胞に比べて抜群の腫瘍治療効率を示すことを確認した。また、CD99由来バックボーン(backbone)を含むCAR-T細胞が、既存CD8バックボーン(backbone)CAR-T細胞に比べて抜群の免疫シナプス形成能を保有することが確認された。
結果的に、本発明では、CD99部位の移入されたCARタンパク質を導入することにより、免疫シナプス形成の強化によって機能の向上したCAR-T細胞という新しい概念を提示しようとする。
したがって、本発明は、一観点において、
(a)抗原結合ドメイン(antigen binding domain);
(b)細胞外連結部及び膜通過ドメイン(transmembrane domain)を含むバックボーン(backbone);及び
(c)細胞内信号伝達ドメイン(intracellular signaling domain);
を含むキメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor;CAR)であって、前記膜通過ドメインは、CD99由来膜通過ドメインを含むことを特徴とするキメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor;CAR)に関する。
本発明において、“バックボーン(backbone)”とは、細胞外連結部(extracellular spacer domain)及び膜通過ドメイン(transmembrane domain)を含む部位を意味する。
本発明において、“細胞外連結部(extracellular spacer domain)”とは、抗原結合ドメインと膜通過ドメインとを連結する部位を意味する。
本発明において、前記膜通過ドメイン(transmembrane domain;TM)は、CD99由来膜通過ドメインの全体又は一部を含むものでよく、前記CD99は、配列番号1の配列を有するヒトのCD99であることが好ましいが、これに限定されるものではない。
前記配列番号1の配列を有するヒトCD99は、配列番号2のヌクレオチド配列又はその縮退性(degenerative)配列によってコードされてよいが、これに限定されるものではない。
【表1】
前記配列番号1のアミノ酸配列を有するヒトCD99において、D23~D122番までのアミノ酸配列が、CD99の細胞外ドメイン(extracellular domain)であり、A123~A147までのアミノ酸配列が、CD99の膜通過ドメインであり、Y148~N158までのアミノ酸配列が、CD99の膜近接ドメイン(juxtamembrane domain)に相当する。
前記“D23”のように、アミノ酸の1文字コード(one-letter code)と数字が結合した表現は、当該数字の位置のアミノ酸残基を意味する。すなわち、D23は、23番目のアミノ酸がアスパラギン酸(Aspartic acid:D)であることを意味する。
好ましくは、前記CD99由来膜通過ドメインは、配列番号3で表示されるアミノ酸配列を含むことを特徴とし得るが、これに制限されるものではない。前記配列番号3の配列を有するヒトCD99由来膜通過ドメインは。配列番号4のヌクレオチド配列又はその縮退性(degenerative)配列によってコードされてよいが、これに限定されるものではない。
本発明において、前記細胞外連結部は、CD99由来及び/又はCD8由来細胞外ドメイン(extracellular domain)、好ましくは、ヒトCD99由来細胞外ドメイン(extracellular domain)を含むことを特徴とし得る。
前記CD99由来細胞外ドメインは、配列番号5で表示されるアミノ酸配列の全部又は一部を含むことを特徴とし得るが、これに制限されるものではない。前記配列番号5の配列を有するヒトCD99由来細胞外ドメインは、配列番号6のヌクレオチド配列又はその縮退性配列によってコードされてよいが、これに限定されるものではない。
本発明において、前記CD99由来細胞外ドメインは、配列番号5又は配列番号5で表示されるアミノ酸配列のうち、連続する20~70個、好ましくは30~60個のアミノ酸残基を含むアミノ酸配列で表示されることを特徴とし、
より好ましくは、前記CD99由来細胞外ドメインは、配列番号5、配列番号7、配列番号9又は配列番号11で表示されるアミノ酸配列を含むことを特徴とし得るが、これに制限されるものではない。
また、本発明において、前記キメラ抗原受容体は、CD99由来細胞内膜近接ドメイン(intracellular juxtamembrane domain)をさらに含むことを特徴とし得る。
本発明において、前記“細胞内膜近接ドメイン”は、キメラ抗原受容体の膜通過ドメインと細胞内信号伝達ドメインとの間に位置することを特徴とし得る。本発明の一実施例において、前記CD99由来細胞内膜近接ドメインは、アクチンとの相互作用を媒介することによって免疫シナプス形成の安定化に寄与することが確認された。
前記CD99由来細胞内膜近接ドメインは、CD99由来細胞内膜近接ドメインの全体又は一部を含むものでよく、好ましくは、配列番号13で表示されるアミノ酸配列を含むことを特徴とし得る。
【表2】
本発明において、前記細胞外連結部は、ヒンジ(hinge)ドメインをさらに含むことを特徴とし得る。
前記ヒンジドメインは、任意のオリゴペプチド又はポリペプチドからなり、1~100個のアミノ酸残基、好ましくは、10~70アミノ酸残基を含むことを特徴とし、好ましくは、配列番号15で表示されるアミノ酸配列を含むCD8由来ヒンジドメインの全体又は一部を含むものでよいが、これに制限されるものではない。
本発明において、前記細胞内信号伝達ドメイン(intracellular signaling domain)は、免疫細胞の細胞膜内側、すなわち、細胞質に位置する部分であり、細胞外ドメインに含まれた抗原結合ドメインが標的抗原に結合した時、細胞内に信号を伝達して免疫細胞の免疫反応を活性化させる部位を意味する。
本発明において、前記細胞内信号伝達ドメインは、CD3ゼータ(ζ)、CD3ガンマ(γ)、CD3デルタ(δ)、CD3エプシロン(ε)、FcRガンマ、FcRベータ、CD5、CD22、CD79a、CD79b及びCD66dからなる群から選ばれる一つ以上の細胞内信号伝達ドメインであることが好ましいが、これに限定されず、より好ましくは、CD3ゼータ(ζ)であってもよい。本発明に係るCD3ゼータ(ζ)の細胞内信号伝達ドメインは、配列番号17又は配列番号17の配列において14番目のアミノ酸残基であるグルタミン(Q)がリジン(K)に置換された配列番号19のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列を有し得るが、これに限定されるものではない。
また、本発明に係る前記細胞内信号伝達ドメインは、さらに共同刺激(co-stimulatory)ドメインを含むことを特徴とし得るが、これに制限されるものではない。本発明に係る共同刺激(co-stimulatory)ドメインは、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、4-1BB(CD137)、OX40(CD134)、ICOS、LFA-1、GITR、MyD88、DAP1、PD-1、LIGHT、NKG2C、B7-H3及びCD83と特異的に結合するリガンドからなる群から選ばれる一つ以上の共同刺激ドメインが好ましいが、、これに制限されるものではない。
好ましくは、本発明に係る細胞内信号伝達ドメインは、配列番号17又は配列番号19のアミノ酸配列を含むCD3ゼータ(ζ)の細胞内信号伝達ドメインと、配列番号21で表示されるアミノ酸配列とを含む4-1BBの共同刺激ドメインを含むことを特徴とし得るが、これに制限されるものではない。
【表3】
特に、本発明に係るキメラ抗原受容体は、一つ以上の細胞内信号伝達ドメインと、一つ以上の共同刺激ドメインとを含むことを特徴とし得る。
本発明に係るキメラ抗原受容体に一つ以上の細胞内信号伝達ドメインと、一つ以上の共同刺激ドメインとが含まれる場合には、一つ以上の共同刺激ドメインと一つ以上の細胞内信号伝達ドメインとが直列に連結されてよい。この場合、各ドメインは、直接連結されているか、選択的に又は2~10個のアミノ酸残基からなるオリゴペプチドリンカー又はポリペプチドリンカーを介して連結されていてよく、好ましくは、このようなリンカー配列としてグリシン-セリン連続配列を挙げることができる。
本発明において、前記キメラ抗原受容体は、T細胞の免疫機能促進因子をさらに含むことができ、前記T細胞の免疫機能促進因子としては、IL-7(interleukin7)、IL-12、IL-15、IL-18、IL-21又はCCL19を挙げることができるが、これに制限されるものではない。T細胞の免疫機能促進因子と関連してWO2016/056228Aを参照することができる。
本発明において、前記キメラ抗原受容体は、JAK結合モチーフ及びSTAT3/5会合モチーフを含むインターロイキン受容体鎖(interleukin receptor chain)をさらに含むことができ、例としてIL-2Rβを挙げることができるが、これに制限されるものではない。これと関連して、WO2016/127257Aを参照することができる。
1世代CARでは、癌細胞から特異的に発現する抗原認識部位を含む細胞外ドメイン、膜通過ドメイン及び細胞内信号伝達ドメインを含み、信号伝達ドメインとしてCD3ζだけを用いたが、癌に対する治療効果がわずかであり、持続時間が短いという問題があった。このような1世代CARは、米国登録特許第6,319,494号に具体的に記載されており、本発明に参照によって組み込まれる。
免疫細胞に対する反応性向上のために、共同刺激ドメイン(CD28又はCD137/4-1BB)とCD3ζとを結合した2世代CARが製造されたが、1世代CARと比較して、体内に残存する含CAR免疫細胞の数が顕著に増加した。2世代CARは一つの共同刺激ドメインを用いたのに対し、3世代CARでは2種類以上の共同刺激ドメインを用いた。生体内CARを含む免疫細胞の拡張及び持続性達成のために、共同刺激ドメインを4-1BB、CD28又はOX40などと結合させることができる。2世代CARは米国登録特許第7,741,465号、第7,446,190号又は第9,212,229号に具体的に記載されており、3世代CARは米国登録特許第8,822,647号に具体的に記載されており、本発明に参照によって組み込まれる。
4世代CARでは、IL-12又はIL-15のようなサイトカインを暗号化する追加の遺伝子を含み、サイトカインのCARベースの免疫タンパク質をさらに発現させており、5世代CARは、免疫細胞強化のために、インターロイキンレセプター鎖、例えば、IL-2Rβをさらに含む。4世代CARは、米国登録特許第10,316,102号、5世代CARは米国登録特許第10,336,810号に具体的に記載されており、本発明に参照によって組み込まれる。
本発明において、前記抗原結合ドメインは、下記の群から選ばれる抗原に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片(antigen binding fragment)を含むことを特徴とし得るが、これに制限されるものではない:
4-1BB、BCMA(B cell maturation antigen)、BAFF(B-cell activating factor)、B7-H3、B7-H6、CA9(carbonic anhydrase9,CAIX又はG250とも知られている。)、CTAG1B(cancer/testis antigen 1B,NY-ESO-1又はLAGE2Bとも知られている。)、CEA(carcinoembryonic antigen)、サイクリン(cyclin)、サイクリンA2、サイクリンB1、CCL-l(C-C Motif Chemokine Ligand 1)、CCR4、CD3、CD4、CD19、CD20、CD22、CD23、CD24、CD30、CD33、CD38、CD40、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD52、CD58、CD62、CD79A、CD79B、CD80、CD123、CD133、CD138、CD171、CSPG4(chondroitin sulfate proteoglycan 4)、CLDN18(claudin-18)、CLDN6、CTLA-4(cytotoxic T-lymphocyte-associated protein 4)、c-Met(tyrosine-protein kinase Met)、DLL3、EGFR(epidermal growth factor receptor)、tEGFR(truncated epidermal growth factor receptor)、EGFRvIII(type III epidermal growth factor receptor mutation)、EPG-2(epithelial glycoprotein 2)、EPG-40(epithelial glycoprotein 40)、エフリン(ephrin)B2、EPHA2(ephrin receptor A2)、エストロゲン受容体(estrogen receptor)、Fc受容体(Fc receptor)、FCRL5(Fc receptor like 5,Fe receptor homolog 5又はFCRH5とも知られている。)、FGF23(fibroblast growth factor 23)、FBP(folate binding protein)、FOLR1(folate receptor alpha)、FOLR2(folate receptor beta)、GD2(ganglioside GD2、O-acetylated GD2(OGD2))、ガングリオシド(ganglioside)GD3、gp100(glycoprotein 100)、glypican-3(GPC3)、GPCR5D(G Protein Coupled Receptor 5D)、GM-CSF(granulocyte-macrophage colony-stimulating factor)、receptor tyrosine kinase erb-B2(Her2/neu)、Her3(erb-B3)、Her4(erb-B4)、erbB dimers、HMW-MAA(Human high molecular weight melanoma-associated antigen)、HBsAg(hepatitis B surface antigen)、HLA-A1(Human leukocyte antigen A1)、HLA-A2(Human leukocyte antigen A2)、IL-22Ra(IL-22receptor alpha)、IL-13Ra2(IL-13receptor alpha 2)、ICOS(inducible T-cell costimulator)、IGF-1受容体(insulin-like growth factor1receptor)、インテグリン(integrin)αvβ6、インターフェロン受容体(interferon receptor)、IFNγ、IL-2R(interleukin-2 receptor)、IL-4R(interleukin-4 receptor)、IL-5R(interleukin-5 receptor)、IL-6R(interleukin-6 receptor)、IL-17RA(interleukin-17 receptor A)、IL-31R(interleukin-31 receptor)、IL-36R(interleukin-36 receptor)、kdr(kinase insert domain receptor)、L1-CAM(L1 cell adhesion molecule)、L1-CAMのCE7エピトープ(CE7 epitope of L1-CAM)、LRRC8A(Leucine Rich Repeat Containing 8 Family Member A)、Lewis Y、LAG3(lymphocyte-activation gene 3)、MAGE(Melanoma-associated antigen)Al、MAGEA3、MAGEA6、MAGEAlO、MSLN(mesothelin)、CMV(murine cytomegalovirus)、MUC1(mucin 1)、NKG2D(natural killer group 2 member D)リガンド(ligands)、MART-l(melan A)、NGF(nerve growth factor)、NCAM(neural cell adhesion molecule)、NRP-1(neuropilin-1)、NRP-2(neuropilin-2)、胎児性癌抗原(oncofetal antigen)、PD-L1、PRAME(Preferentially expressed antigen of melanoma)、プロゲステロン受容体(progesterone receptor)、前立腺特異抗原(prostate specific antigen)、PSCA(prostate stem cell antigen)、PSMA(prostate specific membrane antigen)、RANKL(receptor activator of nuclear factor kappa-Β ligand)、ROR1(receptor tyrosine kinase like orphan receptor 1)、SLAMF7(SLAM family member 7)、サバイビン(survivin)、TPBG(trophoblast glycoprotein,5T4とも知られている。)、TAG72(tumor-associated glycoprotein 72)、TRP1(tyrosine related protein 1,TYRP1又はgp75とも知られている。)、TRP2(tyrosine related protein 2)(dopachrome tautomerase、dopachrome delta-isomerase又はDCTとも知られている。)、及びウィルムス腫瘍(Wilms Tumor 1;WT1)。
本発明において、抗体の“断片”は、抗原結合機能を保有している断片を意味し、scFv、Fab、F(ab’)
2、Fv及びナノボディー(nanobody)断片などを含む意味で使われる。
“一本鎖Fv”又は“scFv”抗体断片は、抗体のVH及びVLドメインを含むが、これらのドメインは、単一ポリペプチド鎖内に存在する。Fvポリペプチドは、scFvが抗原結合のために目的とする構造を形成可能にさせるVHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーをさらに含むことができる。
“Fv”断片は、完全な抗体認識及び結合部位を含有する抗体断片である。このような領域は、1個の重鎖可変ドメインと1個の軽鎖可変ドメインとが、例えば、scFvと強固に事実上共有して連合した二量体からなる。
“Fab”断片は、軽鎖の可変及び定常ドメインと、重鎖の可変及び第1定常ドメイン(CH1)を含有する。“F(ab’)
2”抗体断片は、一般にそれらの間にヒンジシステインによってそれらのカルボキシ末端の近傍に共有して連結される一対のFab断片を含む。
“ナノボディー(nanobody)”とは、単量体可変抗体ドメイン(monomeric variable antibody domain)を含有する断片である。主に、単量体重鎖だけで標的特異性を示すラクダなどの抗体ドメインから由来した低分子量の断片からなる。
本発明において、前記抗原結合断片は、抗体の一本鎖可変断片(single chain variable fragment;scFv)又はナノボディー(nanobody)であることを特徴とし得る。
本発明において、前記抗原結合ドメインは、好ましくは、抗CD19抗体又はそのscFvを含むことを特徴とし、前記抗CD19抗体のscFvは、配列番号23で表示されるアミノ酸配列を含むことを特徴とし得るが、これに制限されるものではない。
【表4】
本発明において、前記抗原結合ドメインのN末端部に、さらに信号ペプチド(signal peptide;SP)を含むことを特徴とし得る。本発明において、前記信号ペプチドは、CD8α、GM-CSF受容体α、Ig-kappa及びIgG1重鎖からなる群から選ばれる分子から由来することを特徴とし得るが、これに制限されず、好ましくはCD8α信号ペプチドでよく、前記CD8α信号ペプチドは、配列番号25で表示されるアミノ酸配列を含むことを特徴とし得る。
【表5】
好ましい例示として、本発明に係るキメラ抗原受容体は、
配列番号5、配列番号7、配列番号9又は配列番号11で表示されることを特徴とするCD99由来細胞外ドメイン;
配列番号3で表示されることを特徴とするCD99由来膜通過ドメイン;及び
配列番号13で表示されることを特徴とするCD99由来細胞内膜近接ドメイン;
を含むことを特徴とする。
また、さらに、
配列番号21で表示されることを特徴とする4-1BB共同刺激ドメイン;
配列番号17又は配列番号19で表示されることを特徴とするCD3ゼータ(ζ)の細胞内信号伝達ドメイン;及び/又は
配列番号25で表示されることを特徴とするCD8信号ペプチドを含むことができるが、これに制限されるものではない。
本発明において、例示的に、CD19に対する抗原結合部位を含むキメラ抗原受容体は、配列番号27、配列番号29、配列番号31又は配列番号33で表示されるアミノ酸配列、又は前記アミノ酸配列と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、最も好ましくは99%以上の配列同一性を有するその変異体を含むことができる。
【表6】
本発明は、他の観点において、前記キメラ抗原受容体をコードする核酸に関する。
本発明に係るキメラ抗原受容体をコードする核酸(ポリヌクレオチド)は、コドン最適化によって変形されてよく、これは、コドンの縮退性(degeneracy)に起因するものであって、ポリペプチド又はその変異体断片をコードする多くのヌクレオチド配列が存在するということは、通常の技術者にはよく理解できよう。これらのポリヌクレオチド(核酸)の一部は、任意の自然発生型遺伝子のヌクレオチド配列と最小相同性を保有する。
特に、コドン活用法の相違により、可変的なポリヌクレオチド(核酸)、例えば、ヒト、霊長類及び/又は哺乳動物のコドン選択に最適化されたポリヌクレオチド(核酸)が好ましい。
本発明において、前記キメラ抗原受容体をコードする核酸は、
配列番号6、配列番号8、配列番号10又は配列番号12で表示されることを特徴とするCD99由来細胞外ドメインをコードするヌクレオチド配列;
配列番号4で表示されることを特徴とするCD99由来膜通過ドメインをコードするヌクレオチド配列;及び
配列番号14で表示されることを特徴とするCD99由来細胞内膜近接ドメインをコードするヌクレオチド配列;
を含み、
さらに、配列番号22で表示されることを特徴とする4-1BB共同刺激ドメインをコードするヌクレオチド配列;
配列番号18又は配列番号20で表示されることを特徴とするCD3ゼータ(ζ)の細胞内信号伝達ドメインをコードするヌクレオチド配列;及び/又は
配列番号26で表示されることを特徴とするCD8信号ペプチドをコードするヌクレオチド配列;を含むことができるが、これに限定されるものではない。
好ましくは、配列番号24で表示されることを特徴とする抗CD19抗体の一本鎖可変断片(scFv)をコードするヌクレオチド配列をさらに含むことができる。
好ましい例示として、本発明に係るキメラ抗原受容体をコードする核酸配列は、配列番号28、配列番号30、配列番号32又は配列番号34で表示されるヌクレオチド配列、又は前記ヌクレオチド配列と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、最も好ましくは99%以上の配列同一性を有する変異体を含むものでよい。
本発明は、さらに他の観点において、前記核酸を含む発現ベクター及び該発現ベクターを含むウイルスに関する。
本発明における用語“ベクター”とは、他の核酸分子を転移させたり或いは輸送できる核酸分子を意味する。転移された核酸は、一般に、ベクター核酸分子に連結されるが、例えば、ベクター核酸分子内に挿入される。ベクターは、細胞における自律的複製を指示する配列を含んでもよく、宿主細胞DNA内への統合を可能にするのに十分な配列を含んでもよい。。前記ベクターは、DNA、RNA、プラスミド、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター及びレトロウイルスベクターからなる群から選ばれるものであることを特徴とし得るが、これに制限されるものではない。
本発明において、前記核酸又は前記ベクターは、ウイルス生産細胞(packaging cell line)に形質注入又はトランスフェクション(transfection)される。“形質注入”又は“トランスフェクション”させるために、原核又は真核宿主細胞内に外因性核酸(DNA又はRNA)を導入するために通常用いられる様々な技術、例えば、電気泳動法、リン酸カルシウム沈殿法、DEAE-デキストラントランスフェクション又はリポフェクション(lipofection)などを用いることができる。
本発明において、ウイルス生産細胞から生産されたウイルスは、免疫細胞に形質導入(transduction)される。細胞内に“形質導入”されたウイルスの核酸は、細胞のゲノムに挿入されたり或いは挿入されないまま、キメラ抗原受容体タンパク質を生産するために用いられる。
本発明は、さらに他の観点において、前記キメラ抗原受容体を表面に発現させる免疫細胞に関する。
本発明において、前記免疫細胞は、T細胞、NK細胞、NKT細胞又は大食細胞であることを特徴とし得るが、これに制限されず、好ましくは、T細胞であることを特徴とし得る。
本発明に係るキメラ抗原受容体を発現させる免疫細胞は、CAR-T細胞(Chimeric Antigen Receptor T Cell)、CAR-NK細胞(Chimeric Antigen Receptor Natural Killer Cell)、CAR-NKT細胞(Chimeric Antigen Receptor Natural killer T Cell)又はCAR-大食細胞(Chimeric Antigen Receptor Macrophage)であることを特徴とし得る。
本発明において、前記T細胞は、CD4陽性T細胞;CD8陽性細胞毒性Tリンパ球(Cytotoxic T lymphocyte;CTL);ガンマ-デルタT細胞;腫瘍浸潤リンパ球(Tumor infiltrating lymphocyte;TIL)及び末梢血液単核細胞(Peripheral blood mononuclear cell;PBMC)から分離したT細胞からなる群から選ばれることを特徴とし得る。
本発明は、さらに他の観点において、前記キメラ抗原受容体を発現させる免疫細胞(例えば、T細胞)を含む癌治療用組成物に関する。
本発明において、“癌”と“腫瘍”は同じ意味で使われ、典型的に、調節されない細胞成長/増殖を特徴とする哺乳動物の生理学的状態のことを指したり意味する。
本発明のCARで治療可能な癌は、血管生成された腫瘍の他、血管が生成されないか或いはまだ実質的に血管が生成されていない腫瘍も含む。前記癌は非固形腫瘍(例えば、血液学的腫瘍、例えば、白血病及びリンパ腫)を含んでもよく、固形腫瘍を含んでもよい。本発明のCARで治療可能な癌の類型には、癌腫、芽細胞腫、及び肉腫、及び特定白血病又はリンパ性悪性腫瘍、陽性及び悪性腫瘍、例えば、肉腫、癌腫及び黒色腫を挙げることができるが、これに制限されない。成人性腫瘍/癌及び小児性腫瘍/癌も含まれる。
血液癌は、血液又は骨髄の癌である。血液(又は、造血性)癌の例には、急性白血病(例えば、急性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病及び骨髄芽細胞性、前リンパ球性、骨髄単球性、単球性及び赤白血病)、慢性白血病(例えば、慢性リンパ球性(顆粒球性)白血病、慢性骨髄性白血病、及び慢性リンパ球性白血病)、真性赤血球増加症、リンパ腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(遅延型及び高い段階の形態)、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症(Waldenstrom’s macroglobulinemia)、重鎖疾患、骨髄異形性症候群、毛髪細胞白血病及び骨髄異形性症を含む白血病を挙げることができる。
固形腫瘍は、一般に、皮嚢又は液体区域を含まない異常組織塊りである。固形腫瘍は、陽性又は悪性であり得る。異なる類型の固形腫瘍は、それら(例えば、肉腫、癌腫及びリンパ腫)を形成する細胞の類型に対して名付けられている。肉腫及び癌腫のような固形腫瘍の例には、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、及びその他肉腫、滑膜腫(synovioma)、中皮腫(mesothelioma)、ユーイング(Ewing)腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、直腸癌腫、リンパ性悪性腫瘍、大腸癌、胃癌、膵癌、乳癌、肺癌、卵巣癌、前立腺癌、咽喉頭癌、肝細胞性癌腫、扁平細胞癌腫、基底細胞癌腫、腺癌、汗腺癌腫、髄質甲状腺癌腫、乳頭状甲状腺癌腫、褐色細胞腫、皮脂腺癌腫、乳頭状癌腫、乳頭状腺癌、髄質癌腫、気管支癌腫、腎臓細胞癌腫、肝腫瘍、胆管癌腫、 絨毛膜癌腫、ウィルムス腫瘍(Wilms’ tumor)、子宮頸癌、睾丸腫瘍、精上皮腫(seminoma)、膀胱癌、黒色腫、及びCNS腫瘍(例えば、神経膠腫(例えば、脳幹神経膠腫及び混合型神経膠腫)、膠芽細胞腫(多形成膠芽細胞腫とも周知されている)、星状細胞腫、CNSリンパ腫、胚細胞腫、髄節芽細胞腫、神経鞘腫頭蓋咽頭腫(Schwannoma craniopharyogioma)、上衣細胞腫(ependymoma)、松果体腫(pinealoma)、血管芽細胞腫、聴神経腫(acoustic neuroma)、稀突起膠細胞腫(oligodendroglioma)、髓膜腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫及び脳転移)を挙げることができる。
本発明の治療用組成物は、癌の予防又は治療のための組成物であり、本発明の用語、“予防”は、本発明の組成物の投与で癌を抑制させたり進行を遅延させるあらゆる行為を意味し、“治療”とは、癌の発展の抑制、症状の軽減又は除去を意味する。
本発明に係るキメラ抗原受容体を発現させる免疫細胞を含む薬学組成物には、薬剤学的に許容される賦形剤がさらに含まれてよい。このような賦形剤の例には、界面活性剤、好ましくはポリソルベート系の非イオン性界面活性剤;中性緩衝塩水、リン酸塩緩衝塩水などの緩衝剤;グルコース、マンノース、スクロース又はデキストラン、マンニトールなどの糖又は糖アルコール類;グリシン、ヒスチジンなどのアミノ酸やタンパク質又はポリペプチド;抗酸化剤;EDTA又はグルタチオンなどのキレート剤、例えば;浸透剤;補助剤;及び保存剤が含まれてよいが、これに限定されるものではない。
本発明の組成物は、ヒト以外の哺乳動物に投与された後、活性成分の迅速、持続又は遅れた放出を提供できるように、当業界に公知の方法を用いて剤形化できる。剤形は、粉末、顆粒、錠剤、エマルジョン、シロップ、エアゾール、軟質又は硬質ゼラチンカプセル、滅菌注射溶液、滅菌粉末の形態であってよい。
本発明は、さらに他の観点において、前記キメラ抗原受容体を発現させる免疫細胞を対象体に投与する段階を含む癌治療方法に関する。
本発明は、また、癌治療のための前記免疫細胞の用途に関する。
本発明は、また、癌治療用薬剤製造のための前記免疫細胞の使用に関する。
前記対象体は、腫瘍を持つ哺乳類でよく、具体的にはヒトでよいが、これに限定されるものではない。
本発明に係るキメラ抗原受容体を発現させる免疫細胞又はこれを含む組成物は、経口投与、注入(infusion)、静脈内投与(intravenous injection)、筋肉内投与(intramuscular injection)、皮下投与(subcutaneous injection)、腹腔内投与(intraperitoneal injection)、直腸内投与(Intrarectal administration)、局所投与(topical administration)、鼻内投与(intranasal injection)などで投与されてよいが、これに限定されるものではない。
活性成分の投与量は、投与経路、患者の年齢、性別、体重及び患者の重症度などの種々の因子によって適宜選択されてよく、本発明に係る治療用組成物は、癌症状を予防、改善又は治療する効果を有する公知の化合物と併用投与できる。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は、単に本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されると解釈されないことは、当業界における通常の知識を有する者にとって明らかであろう。
実施例1:CD99由来膜通過タンパク質の機能究明研究
実施例1-1:マウス及び細胞株
CD99-ノックアウトマウス(B6.Cd99
Gt(pU-21T)44Imeg)は、Kumamoto大学のInstitute of Resource Development and Analysisから購入し、H60類遺伝子マウス(congenic mice)(B6.CH60)は、米国Jackson laboratoryのDr.Derry Roopenianから提供してもらった。免疫欠乏NSGマウスは、Jackson laboratoryから購入した。Rajiリンパ腫細胞は、ATCCから購入した。
実施例1-2:WT、CD99-KOマウスCD8 T細胞株の確立
CD99正常(WT)B6マウスとCD99欠乏(CD99-KO)B6マウスに、B6.CH60マウスから分離した脾臓細胞を、2×10
7cells/300μlずつ腹腔注射した後、30日目に各マウスから取り出した脾臓細胞(2.5×10
6cells/ml)と放射線照射(2000rad)したB6.CH60脾臓細胞(3.5×10
6cells/ml)を、ヒトIL-2(50U/ml、Sigma-Aldrich)存在下に共に培養し、WTとCD99-KO H60特異的CD8T細胞を増殖させた。これらのT細胞を1週の周期で、放射線照射したB6.CH60脾臓細胞とヒトIL-2(50U/ml)存在下で共に培養して再活性化を誘導することにより、H60特異的正常CD8T細胞株とCD99欠乏CD8T細胞株を確立した。
実施例1-3:マウスCD99正常タンパク質と変異タンパク質発現用レトロウイルスベクター(retrovirus vector)の作製
マウスCD99正常タンパク質(WT)及び膜通過ドメイン(TM)、細胞内信号伝達ドメイン(Cyt)変異タンパク質をコードするcDNAをPCRで作製して、pcDNA3-YFPプラスミド(Addgene #13033)のEcoRI制限酵素部位にクローニングした。このプラスミドからCD99-YFP DNA部分をHindIII/XbaI制限酵素で切断して抽出し、MSCV Puroプラスミド(Addgene #68469)はXhoI制限酵素で切断した後、それぞれクレノウ(klenow)酵素を処理し、平滑末端クローニング(blunt-end cloning)でpMSCV-CD99-YFP、pMSCV-CD99TM-YFP、pMSCV-CD99Cyto-YFPベクターを作製した。各CD99タンパク質のアミノ酸配列は、下記の表7に示す。
【表7】
実施例1-4:CD99発現用レトロウイルスの生産及びマウスT細胞への形質導入(transduction)
各WT又は変異CD99-YFP発現用レトロウイルスプラスミド(retroviral plasmid)をポリエチレンイミン(Polysciences)を用いてレトロウイルスのパッケージング細胞株(retroviral packaging cell line)であるプラチナム-E(Platinum-E)細胞(Cell Biolabs)にトランスフェクションした後、24~48時間分泌されたレトロウイルスが含まれた培養上清液を収穫しフィルターした(0.45μmフィルター)。この培養上清液をポリブレン(4μg/ml,Santa Cruz)存在下で、活性化されたCD99-KO CD8T細胞株に加えてレトロウイルスを形質導入した。次いで、これらの細胞にピューロマイシン(1mg/ml,Georgiachem)を処理し、形質導入された細胞だけを選別させた。その後、YFP融合タンパク質を発現させる細胞を流細胞分離器(FACS-Aria II,BD Biosciences)で分離して各T細胞株を確立し、周期的な活性化によって細胞株を維持した。
実施例1-5:T細胞分裂とサイトカイン生成能確認
正常マウスとCD99欠乏マウスのリンパ節から得た細胞をCFSE(5μM,eBioscience)で標識した後、抗CD3抗体(145-2C11、1μg/ml、BD Pharmigen)がコートされた96ウェルプレートに加えた後(5×10
5cells/well)、抗CD28抗体(37.51、0.5μg/ml、BD Pharmigen)と共に培養してT細胞を活性化させた。活性化させて24時間、48時間、72時間後に細胞を収穫し、抗CD8抗体(53-6.7,eBioscience)で細胞表面を染色した後、流細胞測定法(flow cytometry)(FACS-LSRII,BD Bioscience)を用いて、CD8T細胞に染色されたCFSEの希釈された程度を測定することによって細胞分裂を確認した。
T細胞のサイトカイン生成能を確認するために、活性化後の各時間帯別に、収穫前4時間にブレフェルジンA(3μg/ml、eBioscience)を処理した細胞を収穫し、パラホルムアルデヒド(4%,CellNest)で室温で20分間固定させた。次いで、トリトン-X100(0.5%、Amresco)とBSA(0.1%、Bovogen)を入れたPBSを加えて、透過処理(permeabilize)した後、抗CD8抗体、抗IL-2抗体(JES6-5H4、eBioscience)、抗IFN-γ抗体(XMG1.2、eBioscience)で染色し、流細胞測定法により、染色された細胞の
分率及び平均蛍光強度を測定した。
実施例1-6:免疫シナプス形成確認のためのT細胞共焦点顕微鏡分析
T細胞と抗原提示細胞間の免疫シナプス形成を観察するために、H60抗原を発現させたDC2.4細胞株をCMTMR(10μM、Invitrogen)や抗ICAM-1抗体(YN1/1.7.4、eBioscience)で染色し、B6.CH60脾臓細胞と混合培養によって活性化されて4日目のWT又はCD99-KO CD8T細胞株を、抗TCRβ抗体(H57-597、eBioscience)、抗LFA-1抗体(2D7、BD Pharmigen)で染色した。その後、両細胞群をそれぞれ1×10
5cells/200μlずつ混合し、ポリエルリジン(poly-L-lysine)のコートされたカバースリップ(coverslip)上で30分又は1時間共同培養した。その後、暖かいPBSで洗浄し、4%パラホルムアルデヒドを加えて室温で20分間固定(fix)した後、カバースリップをガラススライドに移してマウンティング(mounting)した。F-アクチンをイメージング(imaging)しようとする場合、固定後、トリトン-X100(0.25%)を含有したPBSで10分間透過処理(permeabilize)した。その後、Phalloidin-Alexa Fluor 647(Invitrogen)で室温で30分染色し、PBSで洗浄した後、ガラススライドに移してマウンティングした。
T細胞の免疫シナプス断面をイメージングするために、7日間活性化したT細胞を分離し、抗CD3抗体(10μg/ml)のコートされたカバースリップ上で(1×10
5cells/200μl)15分間培養した後、固定及び透過処理(permeabilzation)を行った。その後、Phalloidin-Alexa Fluor 647と抗α-チューブリン抗体(DM1A、Millipore)で染色し、F-アクチンと微小管ネットワークを観察した。
F-アクチン及び微小管再配列(rearrangement)を実時間でイメージングするために、WT又はCD99-KO T細胞株にLifeAct-mCherryベクターを電気穿孔法(electroporation,Amaxa)を用いてトランスフェクションし、チューブリン力動性測定のためにSiR-チューブリンキット(Cytoskeleton)でチューブリン染色プローブを細胞に浸透させた後、抗CD3抗体(10μg/ml)がコートされたカバースリップ上で培養しながら、T細胞が免疫シナプスを作る間のF-アクチンと微小管の再配列を毎20秒ごとに実時間で共焦点顕微鏡を用いて撮影した。全ての顕微鏡撮影は、FluoView1000又はFluoView3000共焦点顕微鏡(Olympus)を用い、イメージ分析は、FluoViewソフトウェア(Olympus)、cellSensソフトウェア(Olympus)又はImage J(NIH)を用いた。
実施例1-7:免疫沈殿(immunoprecipitation)及び免疫ブロッティング(immunoblotting)
4日間活性化されたCD99正常又は欠乏T細胞株を、Ficoll-Paque(GE healthcare)を用いて、生きているCTLだけを収穫し、抗CD3抗体(10μg/ml)で37℃で15分間培養することによって活性化を誘導した。その後、冷たいPBSで洗浄して刺激を停止させ、細胞を収穫して、NP-40(1%、Biosesang)を含有した抽出緩衝液(lysis buffer)で4℃で20分間細胞を溶解させた後、100μgの細胞抽出液(cell lysate)をタンパク質Gセファロースビーズ(protein G-sepharose bead)(35μl、BioVision)と混ぜて、4℃で1時間前洗浄(preclearing)を行った。次いで、4℃で抗α-チューブリン抗体、マウスIgGアイソタイプ抗体又は抗CD99抗体(EJ2)、ラットIgGアイソタイプ抗体を処理した後、タンパク質Gセファロースビーズを用いて免疫沈殿を行った。免疫沈殿物をSDS-PAGEし、PVDF膜(membrane)に移した後、抗β-アクチン(4C2、Sigma-Aldrich)、抗α-チューブリン、抗CD99抗体及び抗マウスIgG-HRP抗体で染色し、West-Femto試薬(Thermo Fisher)を用いて発光させた。LAS-4000mini(GE Healthcare)を用いて、当該タンパク質のバンド(band)を検出した。
実施例1-8:CAR発現用レトロウイルスのベクター(retroviral vector)の作製
CD19標的CD8バックボーンCAR(h19BBz)ORF cDNAは、既存に公開された配列の通り(米国特許2013/0287748A)にDNA合成を依頼して作製した(Integrated DNA Technologies)。CD19標的CD99バックボーンCAR ORF cDNA(F58BBz、F45BBz、F35BBz、F35BBz-1)は、NCBIデータベースのヒトCD99 ORF配列(NM_002414.4)からCD99細胞外ドメイン、膜通過ドメイン及び膜近接ドメインの配列を抜萃し、抗CD19scFv(clone FMC63)及びヒト4-1BB細胞内信号伝達ドメイン、ヒトCD3ゼータ鎖細胞内信号伝達ドメインと、DNA合成(Integrated DNA Technologies)及びPCRを用いて連結して作製した。F8TJBBzは、CD19scFv及びヒトCD8細胞外ドメインをヒトCD99膜通過ドメイン及び膜近接ドメイン、ヒト4-1BB細胞内信号伝達ドメイン、ヒトCD3ゼータ鎖細胞内信号伝達ドメインとPCRを用いて連結して作製した。各CAR発現用レトロウイルスのベクターは、MSCV Hu受容体レトロウイルスプラスミド(MSCV Hu Acceptor retroviral plasmid)(Addgene #64269)のインサート(insert)を除去した後、各CAR ORF cDNAをHindIII/SalI制限酵素部位にクローニングして作製した。
本実施例に係るCAR製造に用いられたドメインの配列情報は、前記表2~表5に記載の通りであり、各CARタンパク質のアミノ酸配列及び核酸配列は、表6及び表8に記載の通りである。
【表8】
実施例1-9:CAR発現用レトロウイルスの生産
各レトロウイルスプラスミドをリポフェクタミン3000(Invitrogen)を用いてPhoenix ECO細胞株(ATCC)にトランスフェクションした後、24~48時間分泌されたエコトロピックレトロウイルス(ecotropic retrovirus)が含まれた培養上清液を、PG13レトロウイルスのパッケージング細胞株(ATCC)に加えてスピン感染(spin infection)した(2500rpm、90分)。こうにして作製されたPG13レトロウイルス生産細胞株の培養上清液を収穫しフィルタリング(0.45μmフィルター)して細胞残存粒子を除去し、遠心分離型フィルター装置(centrifugal filtration device,Millipore Amicon 100KD cut-off)を用いて4倍濃縮した後、CAR-T細胞作製のためのレトロウイルス濃縮液として使用した。
実施例1-10:CAR-T細胞の作製
正常人から白血球成分採血(leukapheresis)により得られた白血球を、抗CD3抗体(OKT3、10μg/ml、BioXcell)がコートされた24ウェルプレートに、抗CD28抗体(CD28.2、2μg/ml、BD Biosciences)と共に加えた後、48時間培養してT細胞を活性化させた。活性化されたT細胞を2回洗浄した後、レトロウイルス形質導入(transduction)に使用した。RetroNectin(20μg/ml、TaKaRa)を4℃で一晩コートした後、洗浄した24ウェルプレートに2% BSA-DPBSを加えて37℃で30分間ブロッキング及び洗浄した後、レトロウイルス濃縮液1mlを加えて2000xg、32℃で2時間遠心分離し、レトロウイルスをウェル底面に付着させた。ウイルス濃縮液を除去してウェルを洗浄後、活性化されたT細胞(1×10
6cells/ml)1mlをウェルに加え、10分間の遠心分離(1000xg、32℃)により細胞をレトロウイルスに付着させた。次いで、ヒトIL-2(300IU/ml、Proleukin、Novartis)存在下で48時間培養した。このようにレトロウイルス形質導入されたT細胞を2回洗浄した後、ヒトIL-2(200IU/ml)が含まれた新鮮な培養液を加えて3~6日間増殖させ、CAR-T細胞として使用した。細胞表面のCARタンパク質の発現は、レトロウイルス形質導入後に3日間増殖されたCAR-T細胞をCD19-Ckタンパク質(CD19細胞外部位とヒト免疫グロブリンカッパ鎖定常部位(Ck)の融合タンパク質)及びAPCの標識された抗Ck抗体(anti-Ck-APC,BioLegend)で染色した後、流細胞測定法(FACS-Calibur,BD Biosciences)で測定した。
実施例1-11:ルシフェラーゼ発現Raji細胞(Raji-Luc)の作製
ルシフェラーゼを細胞内に人為的に発現させるために、ルシフェラーゼとGFPを同時に発現できるレンチウイルスベクター(lentiviral vector)を作製した。EF1αプロモータ下に多酵素切断部位(multi-cloning site)を保有すると同時に、CMVプロモータ下にGFPがクローニングされているビシストロニックレンチウイルスベクター(biscistronic lentiviral vector)(pLECE3)(Lee SH,et al.,PLoS One.2020;15(1):e0223814)の多酵素切断部位に、pGL3ベースのプラスミド(Promega)から切断して抽出したホタルルシフェラーゼORF cDNAをクローニングし、pLECE3-Lucベクターを作製した。pLECE3-lucプラスミドを3種のレンチウイルスパッケージングプラスミド(pMDLg/pRRE、pRSVrev、pMD.G)と共にレンチウイルスパッケージング細胞株(293FT cell,Invitrogen)にリポフェクタミン2000試薬を用いてトランスフェクションし、24~48時間後、分泌されたレンチウイルスが含まれた培養上清液を収穫し、遠心分離型フィルター装置を用いて10倍濃縮した。レンチウイルス濃縮液をRaji細胞に加え、ポリブレン(6μg/ml、Sigma-Aldrich)存在下で、常温で2500rpm、90分間遠心分離して形質導入した。形質導入されたRaji細胞のうち、GFP陽性細胞を流細胞分離器(FACS-Aria II,BD Biosciences)を用いて分離精製し、Raji-Luc細胞として使用した。
実施例1-12:CAR-T細胞の腫瘍殺傷能及び活性化測定
レトロウイルス形質導入して3日間増殖したCAR-T細胞(1.2×10
3~7.5×10
5cells/100μl/well)を、Raji-Luc細胞(3×10
4cells/50μl/well)に様々な比率(0.04~25:1)で加え、96ウェルプレートで一晩共同培養(co-culture)した後、D-ルシフェリン(600μg/ml、Promega)50μlを加えて37℃で10分間培養し、その時まで生存したRaji-Luc細胞でのルシフェラーゼ酵素作用を誘発した。これらの細胞の発光度をミノメーター(Tecan)を用いて測定して、CAR-T細胞を非処理したRaji-Luc細胞の発光度と比較して腫瘍細胞の生存率を計算することによって、CAR-T細胞の腫瘍殺傷能を計測した。
CAR-T細胞の活性化程度を測定するために、CAR-T細胞とRaji細胞を同数(3×10
4cells)で混合して96ウェルプレートで24時間共同培養した後、培養上清液を収穫した。上清液に分泌されたIFN-γの量を、ELISA法(human IFN-γ ELISA kit,BD Biosciences)で測定した。
実施例1-13:CAR-T細胞の生体内効能評価
免疫欠乏NSGマウスにRaji-Luc細胞(マウス当たりに5×10
5cells)を静脈注射して7日後、レトロウイルス形質導入して8日間増殖されたCAR-T細胞(マウス当たりに5×10
6cells)を静脈注射した。その後、周期的にD-ルシフェリン(マウス当たりに2mg、Promega)を腹腔注射した後、生物発光イメージング(bioluminescence imaging)装備(IVIS,Perkin Elmer)で生体内発光度を測定することによって腫瘍量(tumor burden)の変化を観察した。
実施例1-14:CAR-T細胞のRaji細胞との免疫シナプス形成能評価
CAR-T細胞と腫瘍細胞(Raji)間の免疫シナプス形成を観察するために、CMTMR(10μM、Invitrogen)で37℃で30分間染色したRaji細胞(1×10
5cells/200μl)とCAR-T細胞(2×10
5cells/200μl)を、ポリエルリジン(Poly-L-Lysine)のコートされたカバースリップ上で共同培養し、15分、30分、1時間、3時間目に固定した。前述した共焦点顕微鏡撮影方法と同一にF-アクチンを染色した後、FlowView3000共焦点顕微鏡(Olympus)で撮影し、mage J(NIH)を用いて分析した。
実施例2:CD99欠乏によるT細胞免疫シナプス形成障害確認
T細胞においてCD99刺激がT細胞の活性化を増加させ、CD99が、アクチン細胞骨格の含まれた脂質ラフト分画に存在するという既存研究に基づき(Wingett D,et al.,Cell Immunol.1999;193(1):17-23)、CD99の免疫シナプス形成における役割を検証するために、CD99欠乏したT細胞の、TCR刺激による活性化及び免疫シナプス形成過程を分析した。CD99ノックアウトマウスから分離したT細胞の抗CD3/CD28抗体刺激による細胞分裂を分析した結果、正常CD8T細胞に比べて初期細胞分裂がだいぶ遅延される現象が観察された。また、CD99欠乏したT細胞の初期サイトカイン生成能も、正常T細胞に比べて減少することが確認された。したがって、CD99がTCR刺激によるT細胞活性化過程に関与することが確認された(
図2のA、B)。
その具体的な機序を調べるために、T細胞と抗原提示細胞の共同培養(co-culture)によって免疫シナプス形成過程を観察した結果、免疫シナプスを構成するTCRとLFA-1の抗原提示細胞接触部位への密集現象が、CD99欠乏したT細胞において正常T細胞に比べて顕著に減少していることが確認された(
図3のA)。これに相まって、免疫シナプス形成の細胞骨格を提供するアクチンのシナプス密集現象も、CD99欠乏によって著しく減少していることが観察された(
図3のB)。免疫シナプスにおけるアクチン細胞骨格の再配列をより詳しく観察するために、抗CD3抗体のコートされたスライド表面を抗原提示細胞の表面として仮装し、T細胞のスライド接触部位を免疫シナプスと想定した実験システムにおいて、T細胞がスライド表面に接触した時間によるアクチン再配列を実時間共焦点顕微鏡(real-time confocal microscopy)で観察した結果、CD99欠乏によってアクチン重合反応によるT細胞接触面形成が遅延され、T細胞接触面の面積も大きく減少していることが確認された(
図3のC~E)。また、CD99欠乏したT細胞では、細胞の拡散(spreading)に関連した葉状仮足(lamellipodia)部分の厚さが大きく減少し、アクチンマイクロクラスターの位置が免疫シナプスの近接部ではなく周辺部に位置するなど、免疫シナプスの構造的異常も共に観察されることから(
図3のF、G)、CD99が免疫シナプス形成に中枢的な役割を担うことが確認された。
実施例3:CD99欠乏によるアクチン-微小管相互作用の障害確認
免疫シナプス形成においてアクチン細胞骨格再配列と共に微小管ネットワーク(microtubule network)の形成が重要な役割を担っていることが近年注目され出したが、アクチン-微小管相互作用についてはあまり知られたところがない。そこで、CD99欠乏時にT細胞免疫シナプスにおける微小管ネットワークの形成過程を追跡した結果、微小管ネットワーク形成の不安定性が観察された。すなわち、T細胞活性化時に、微小管は、微小管形成中心(microtubule organizing center,MTOC)から新しく生成され成長する微小管が細胞膜に向けて放射状に伸びるが、CD99欠乏時にはこのような放射形微小管の形成が円滑でなく、早く萎縮することが観察された(
図4のA、B)。また、T細胞活性化時に観察されるMTOCの免疫シナプス中心部位への位置移動も、CD99欠乏したT細胞では観察されなかった。特に、一部の微小管は、アクチンに富んだ葉状仮足(actin-rich lamellipodia)の内部に直角で伸びて行き、細胞膜に存在するアクチンとの相互作用により細胞膜に固定されるが、CD99欠乏時に葉状仮足に進入する微小管が顕著に減少することによって、アクチン-微小管相互作用が阻害される可能性が見られた(
図4のC、D)。これを裏付けるかのように、正常細胞の細胞抽出液(cell lysate)ではアクチンとチューブリンが共同免疫沈殿(co-immunoprecipitation)されることによって相互結合が観察されるのに対し、CD99欠乏細胞ではこのような共同免疫沈殿現象が観察されておらず(
図4のE)、CD99がアクチンと微小管の物理的相互結合に寄与していることが証明された。
実施例4:CD99のアクチン及び微小管との相互作用分析
前記結果に基づき、CD99が実際に免疫シナプスに位置してアクチンとチューブリンとの結合を媒介するかどうか確認するために、CD99の免疫シナプスにおける存在を共焦点顕微鏡で観察した結果、T細胞活性化時に、CD99が免疫シナプス部位に移動することが観察され、特に、アクチン豊富領域(actin-rich area)に分布するLFA-1と共局在化する(co-localize)ことが観察された(
図5のA)。細胞骨格との位置関係を調べた結果、CD99がアクチン及び微小管のそれぞれと共局在化する部位があることが観察された(
図5B)。また、活性化されたT細胞抽出液においてCD99はアクチン及びチューブリンのいずれとも共同免疫沈殿することが確認された(
図5のC)。したがって、CD99は、長い間証明されなかった、アクチンと微小管との相互結合を媒介するブリッジ分子の役割を担う膜タンパク質であると解釈された。
実施例5:CD99とアクチン及び微小管相互作用におけるCD99膜通過ドメイン及び細胞質ドメインの役割
CD99のアクチン及び微小管との結合部位を同定するために、CD99の膜通過ドメイン(transmembrane domain)或いは細胞質ドメイン(cytoplasmic domain)を、関連のないタンパク質であるCD4の該当の部位に置換した突然変異タンパク質(mutant proteins)をデザインした後、これらのタンパク質をCD99欠乏T細胞に発現させた。CD99膜通過ドメインがCD4の該当の部位に置換されたタンパク質を、“CD99TMミュータント”とし、CD99細胞質ドメインがCD4の細胞質ドメインに置換されたタンパク質を“CD99Cytミュータント”とした(
図6のA)。各突然変異タンパク質とアクチン及び微小管が共局在するかどうかを共焦点顕微鏡で観察した結果、CD99Cytミュータントは、微小管とは共局在されるが、拡張される葉状仮足内への微小管の成長が伴われず、プラズマ細胞膜(plasma membrane)へも固定されない特徴を示し、アクチンとは共局在がなされないことから、このような現象がCD99Cytミュータントとアクチンとの相互作用が消失したことによることが分かった。これに対し、CD99TMミュータントは、アクチンとの共局在は維持されたが、成長して伸びた微小管のテンション及び安定性(stability)が低下し、葉状仮足の退却及びカタストゥロフィー(catastrophe)が誘導されない特徴を示し、C99TMミュータントと微小管との共局在が消失していることが確認された(
図6のB)。その結果、CD99の細胞質ドメインは、アクチンとの相互作用に必須であって、アクチンと微小管の同伴成長を図る部位であり、膜通過ドメインは、微小管との相互作用に必須であって、アクチンと微小管の同伴収縮を図る部位であることが証明された。CD99膜通過ドメインのうち、特定細部部位(subregion)が微小管結合に決定的か否かを確認するために、TMミュータントのCD4膜通過ドメインに再びCD99膜通過ドメインの一部を導入したミュータントを作製して実験した結果、CD99膜通過ドメイン全体が微小管結合に必須であることが確認された。CD99細胞質ドメインの場合、細胞膜部位の膜遠位部(membrane distal region)が除去され、膜近接部位(膜近接領域)は保持されたミュータントを作製して実験した結果、正常CD99タンパク質と類似に、アクチン及び微小管との相互作用が維持されることが観察され、膜近接部位がアクチンとの相互作用に決定的であることが確認された(
図6のA、B)。要するに、CD99は、膜通過ドメインを用いてアクチン-微小管の同伴収縮に重要であり、細胞内膜近接部位を用いてアクチン-微小管の同伴成長に作用することによって、アクチンと微小管間の相互作用全般を媒介し、力学的不安定(dynamic instability)に寄与することが検証された。
実施例6:CD99部分を移入したCAR-T細胞の作製
近年、CAR-T細胞治療剤は、CD19陽性急性白血病に対する高い治療効率(70~80%の完全寛解率)から脚光を浴びているが、固形腫瘍として育つCD19陽性リンパ腫では治療効率が低いことが知られている(50%程度の完全寛解率)。したがって、CD19陽性リンパ腫をはじめとする固形腫瘍に対するCAR-T細胞の機能性は大きく向上する必要がある。
現在、主として用いられているCARタンパク質のT細胞活性化は、主に、細胞内信号伝達ドメインの活性化に依存しており、抗体部位と細胞内信号伝達ドメインを連結するバックボーンであるCD8細胞外及び膜通過ドメインは物理的な連結機能のみを行っている。上記の実施例2~5によれば、CD99の細胞膜及び細胞内膜近接部位は、アクチン及び微小管相互作用を媒介することによって、免疫シナプス形成の安定化に寄与することが証明された。したがって、既存のCARタンパク質デザインにCD99の細胞膜及び膜近接部位を導入する場合、既存信号伝達機能の他に免疫シナプス安定化という追加機能を付与することにより、より向上したCAR-T細胞の作製が可能であると予想できる。
そこで、本実施例では、CD19抗原を標的とするCARタンパク質に対して、CD99の一部細胞外ドメイン及び膜通過ドメインと膜近接部位を使用した種々のCARタンパク質をデザインし、これら新しいCARタンパク質を発現させるCAR-T細胞を作製した。特に、CARタンパク質の細胞外ドメインとして様々な長さ(それぞれ、58個、45個、35個アミノ酸残基)のCD99細胞外ドメイン(F58BBz、F45BBz、F35BBz、F35BBz-1)或いは既存CARタンパク質のCD8細胞外ドメインを使用したCARタンパク質(F8TJBBz)をそれぞれデザインした(表6及び表8、
図7のA)。その後、これらのタンパク質の遺伝子発現用レトロウイルスを作製し、ヒトT細胞に形質導入(transduction)することによってCAR-T細胞を作製した。
このように作製されたCAR-T細胞の表現型(phenotype)と試験管内(in vitro)機能を分析した結果、各CARタンパク質がT細胞表面で発現することが、流細胞分析(flow cytometry)から確認された(
図7のB)。CAR陽性細胞比率で測定される形質導入効率(transduction efficiency)、及び平均蛍光強度(mean fluorescent intensity,MFI)で測定される細胞当たりCAR発現量は、これらのCD99バックボーンベースのCAR-T細胞において、既存CD8バックボーンベースのCAR-T細胞(h19BBz)に比べて相対的に低かったが(
図7のB)、CD19陽性リンパ腫細胞(Raji cell)に対する細胞殺傷力テストでは、CD99バックボーンベースのCAR-T細胞の殺傷力が既存CAR-T細胞のそれに及ぶことが確認された(
図7C)。続いて行われたT細胞のサイトカイン分泌能実験では、F8TJBBz CAR-T細胞以外の全てのCD99バックボーンベースのCAR-T細胞が既存CAR-T細胞と類似であるか、より向上したIFN-γ分泌能を示した(
図7のD)。特に、細胞外ドメインの長さが最も短いF35BBz CAR-T細胞において、既存CAR-T細胞に比べて著しいIFN-γ生産力を示した。したがって、CD99バックボーンベースのCAR-T細胞は、低いCAR発現率にもかかわらず、既存CAR-T細胞に劣らない腫瘍殺傷力及び活性化機能性を保有していることが確認された。ただし、F8TJBBz CAR-T細胞は、顕著に低いCAR発現率とサイトカイン分泌能を示し、以降の実験で排除した。
実施例7:CD99バックボーンベースのCAR-T細胞の生体内抗癌効能改善効果確認
実施例6のCD99バックボーンベースのCAR-T細胞の生体内(in vivo)抗癌効能を確認するために、リンパ腫細胞が接種された免疫欠乏マウス(NSGマウス)にCAR-T細胞を投与した後、腫瘍の生体内増殖及びマウスの生存率を測定した。腫瘍の体内増殖を効率的に追跡するために、ルシフェラーゼを人為的に発現させたヒトリンパ腫細胞(Raji-Luc cells)を静脈注射し、発光程度を測定する生体発光イメージ法(Bioluminescence Imaging,BLI)を用いて腫瘍細胞群が放出する光の強度を周期的に測定した。
腫瘍を接種して7日後に治療的目的でCAR-T細胞を注入した時、既存h19BBz CAR-T細胞が腫瘍の成長を顕著に阻害することが観察された。しかし、時間の経過につれて、既存CAR-T細胞を投与した群では腫瘍の再成長が観察され、結局は、全ての個体が死亡し、治療効能に制限があることが観察された。しかし、CD99バックボーンベースのCAR-T細胞を投与した群では、このような腫瘍の再成長が顕著に遅延され、特に、F35BBz CAR-T細胞を投与した群では全ての腫瘍細胞が除去され、腫瘍の再発が観察されなかった(
図8のA、B)。その結果として、既存h19BBz CAR-T細胞を投与した群は、腫瘍接種後90日以内に全ての個体が死亡したが、F35BBz CAR-T細胞とF45BBz CAR-T細胞を投与したマウスは、腫瘍接種して140日以後にも死亡した個体が見られず、F35BBz CAR-T細胞治療群は、実験が終了する153日目までも全ての個体が生存した(
図8のC)。したがって、CD99バックボーンベースのCAR-T細胞、特に、F35BBz CAR-T細胞では、既存CAR-T細胞に比べて顕著に改善された治療効能を示すことが確認された。
実施例8:CD99部分を導入したCAR-T細胞の免疫シナプス形成能改善
前記観察されたF35BBz CAR-T細胞の生体内抗腫量効果がCD99バックボーン部位を通じた免疫シナプス強化効果による可能性をテストするために、腫瘍細胞(Raji cell)とCAR-T細胞の共同培養時(co-culture)に免疫シナプス形成能を、h19BBz CAR-T細胞と比較した。その結果、CAR-T細胞と免疫シナプスを形成する腫瘍細胞の比率が、CD8バックボーンを持つh19BBz CAR-T細胞処理群に比べてF35BBz CAR-T細胞処理群において顕著に増加することが観察された(
図9のA、B)。また、特に、F35BBz T細胞では、腫瘍細胞当たり結合するCAR-T細胞の数が、h19BBz CAR-T細胞に比べて顕著に多いことが確認された(
図9のC、D)。したがって、F35BBz CAR-T細胞の場合、腫瘍細胞とはるかに強化した免疫シナプスを形成することが検証された。したがって、CD99膜通過ドメイン及び膜近接部位の免疫シナプス形成媒介効果がCAR-T細胞でも再現されることから、CD99バックボーンベースのCAR-T細胞の効力増加が免疫シナプス安定化(stabilization)によって現れる効果であることを強く示唆した。
本発明では、既存のT細胞表面タンパク質のうち、CD99の免疫シナプス安定化機能を確認し、CD99の膜通過ドメインをバックボーン(backbone)として含む新しいキメラ抗原受容体を作製した。このようなCD99ベースのCAR-T細胞は、既存バックボーン(backbone)を保有したCAR-T細胞に比べて、腫瘍細胞と遥かに安定した免疫シナプスを形成し、向上した腫瘍治療効率を示すので、癌治療のための免疫細胞治療に有用に利用可能である。
以上、本発明内容の特定の部分を詳細に記述したところ、当業界における通常の知識を有する者にとって、このような具体的記述は単に好ましい実施様態であるだけで、これによって本発明の範囲が制限されるものでない点は明らかであろう。したがって、本発明の実質的な範囲は、添付する請求項及びそれらの等価物によって定義されるといえよう。