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特許7271056柔軟な長尺物を挿通したロープのアイスプライスの構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】柔軟な長尺物を挿通したロープのアイスプライスの構造
(51)【国際特許分類】
   D07B 9/00 20060101AFI20230501BHJP
【FI】
D07B9/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018214063
(22)【出願日】2018-11-14
(65)【公開番号】P2020079468
(43)【公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-10-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000117135
【氏名又は名称】芦森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082027
【弁理士】
【氏名又は名称】竹安 英雄
(72)【発明者】
【氏名】小阪 俊之
【審査官】松浦 裕介
(56)【参考文献】
【文献】実開平07-002498(JP,U)
【文献】実開昭52-115743(JP,U)
【文献】実開平04-069493(JP,U)
【文献】実開昭50-145855(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2018/0011044(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105256622(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC D07B 1/00 - 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロープ本体(2)の中心軸に沿って柔軟な長尺物を挿通してなるロープ(1)において、前記ロープ本体(2)と同一の構造を有するアイスプライス用ロープ(7)の一端にアイスプライス(6)を形成し、当該アイスプライス用ロープの他端を個々のストランド(5)に分解し、当該分解したストランド(5)を前記ロープ(1)の途中からロープ本体(2)に組み込んでなることを特徴とする、柔軟な長尺物を挿通したロープのアイスプライスの構造
【請求項2】
ロープ本体(2)の中心軸に沿って柔軟な長尺物を挿通してなるロープ(1)において、前記ロープ本体(2)と同一の構造を有するアイスプライス用ロープ(8)の両端を個々のストランド(5)に分解し、当該分解したストランド(5)を前記ロープ(1)の途中からロープ本体(2)に組み込み、当該アイスプライス用ロープ(8)の中間部分においてアイスプライス(6)を形成してなることを特徴とする、柔軟な長尺物を挿通したロープのアイスプライスの構造
【請求項3】
前記長尺物が、チューブ(3)内に金属線(4)を挿通してなるものであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の柔軟な長尺物を挿通したロープのアイスプライスの構造
【請求項4】
前記金属線(4)が、通信線又は電力供給線であることを特徴とする、請求項3に記載の柔軟なチューブを挿通したロープのアイスプライスの構造
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組紐構造のロープであって、その中心軸に沿って柔軟なチューブや金属線などの長尺物を挿通してなるロープにおいて、当該ロープの端末にアイスプライスを形成してなるロープの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
前述のような組紐構造のロープの中心軸に沿って何らかの長尺物を挿通したロープとしては、金属線を挿通した特開平10-168772号公報などに示されるものが知られている。かかるロープは当該ロープの両端において前記金属線を介して通信を行ったり、前記金属線を通じて電力を送ったりするために使用されるものである。
【0003】
しかしながらかかるロープにおいては、金属線の周囲が繊維で覆われており、このロープにテンションをかけて引っ張ったときには、繊維のロープ本体は伸張するものの、その中心に挿通された金属線は伸張することができず、またその周囲が繊維で覆われていて摩擦抵抗が大きいため、金属線にのみ大きな張力が作用することとなり、金属線が破断することも有り得る。
【0004】
そのためロープにテンションが作用したときに、ロープ本体のみが伸張することがなく、ロープ本体と金属線とが互いに滑ることができるように、図1に示すように、多数のストランド5を組んでなる組紐構造のロープ本体2の中心軸に沿って、柔軟なプラスチックのチューブ3を挿通し、当該チューブ3内に金属線4を挿通してなるロープ1が使用されている。
【0005】
このようにすることにより、プラスチックのチューブ3の内面が滑らかであるために、当該チューブ3と金属線4とは比較的簡単に滑ることができ、ロープ1にテンションが掛かったときにロープ本体2とチューブ3のみが伸張し、金属線4は伸張しないことができ、金属線4が破断することがないのである。
【0006】
かかるロープ1において単純なテンションがかかったときには、金属線4は破断することはないのであるが、このロープ1にアイスプライスを形成したときには、当該アイスプライスの部分において金属線4が破断する可能性が生じるのである。
【0007】
すなわち図2に示すようにロープ1にアイスプライス6を形成する場合には、ロープ本体2の途中からストランド5の間を通して、ロープ本体2の外にチューブ3及び金属線4を引き出し、当該ロープ本体2の先端部をループ状に湾曲させ、ロープ本体2の先端を各ストランド5に分解し、当該分解されたストランド5をチューブ3及び金属線4を引き出した際からロープ本体2のストランド5に挿入して、アイスプライス6を形成することとなる。
【0008】
ところがかかる構造においてアイスプライス6を支持部材に引っ掛けてロープ1に大きなテンションを作用させると、チューブ3及び金属線4を引き出した部分のストランド5がチューブ3を強く押圧し、当該チューブ3を押し潰して金属線4に押し付け、この状態でさらにテンションを作用させることとなるので、チューブ3が局部的に金属線4に押し付けられた状態でロープ本体2が伸張し、伸度の小さい金属線4がその伸張に追従することができず、破断する可能性が生じるのである。
【0009】
また前記図1と同様のロープ本体2の中心軸に沿って、プラスチックの柔軟なチューブ3のみを挿通し、当該チューブ3を透して潜水夫などに空気を送ることができる、潜水夫用ロープも使用されているが、かかるロープ1においてもその端末にアイスプライス6を形成し、ロープ1に大きなテンションが作用したときには、アイスプライス6の箇所において前記チューブ3が押し潰されて、潜水夫に十分な空気を送ることができなくなる可能性も指摘されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開平10-168772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明はかかる事情に鑑みなされたものであって、組紐構造のロープ本体2の中心軸に沿って柔軟なチューブ3や金属線などの長尺物を挿通してなるロープ1において、その端部にアイスプライス6を形成して、そのロープ1にテンションがかかったときに前記チューブ3が押しつぶされることがなく、また前記長尺物が切断されることがないようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
而して本願第一の発明は、ロープ本体の中心軸に沿って柔軟な長尺物を挿通してなるロープにおいて、前記ロープ本体と同一の構造を有するアイスプライス用ロープの一端にアイスプライスを形成し、当該アイスプライス用ロープの他端を個々のストランドに分解し、当該分解したストランドを前記ロープの途中からロープ本体に組み込んでなることを特徴とするものである。
【0013】
また本願第二の発明は、ロープ本体の中心軸に沿って柔軟な長尺物を挿通してなるロープにおいて、前記ロープ本体と同一の構造を有するアイスプライス用ロープの両端を個々のストランドに分解し、当該分解したストランドを前記ロープの途中からロープ本体に組み込み、当該アイスプライス用ロープの中間部分においてアイスプライスを形成してなることを特徴とするものである。
【0014】
本発明においては、前記長尺物が、チューブ内に金属線を挿通してなるものであることが好ましい。また当該長尺物においては、前記金属線が、通信線又は電力供給線であることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明において使用するロープを示すものであって、(a)は正面図、(b)は横断面図である。
図2】従来の方法においてアイスプライスを形成したロープの正面図
図3】本願第一の発明においてアイスプライスを形成する前の状態を示す正面図
図4】本願第一の発明のロープにアイスプライスを形成した状態を示す正面図
図5】本願第二の発明においてアイスプライスを形成する前の状態を示す正面図
図6】本願第二の発明のロープにアイスプライスを形成した状態を示す正面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下本発明を図面に基づいて説明する。図3は第一の発明のロープ1にアイスプライス6を形成する前の状態を示すものである。当該ロープ1のロープ本体2は図1に示すように、八本のストランド5を角八つ打ちの組紐構造に組んだクロスロープであって、当該ロープ本体2の中心軸に沿って柔軟なチューブ3が挿通されており、当該チューブ3内に金属線4が挿通されている。
【0017】
なお本発明におけるロープ本体2は、必ずしも角八つ打ちのクロスロープである必要はなく、偶数のストランド5を筒状の組紐構造に組んだ構造を有しておれば足り、八つ打ち、十二打ちなどの構造であってもよい。さらに三つ打ちなどの撚りロープであっても差し支えない。
【0018】
また以下の説明においては、ロープ本体2の中心軸に沿ってチューブ3が挿通され、さらにそのチューブ3内に金属線4が挿通された構造について述べるが、前記チューブ3内に金属線4が挿通されていることは必ずしも必要ではなく、ロープ本体2の中心軸に沿って何らかの長尺物が挿通されているものも、本発明に含まれる。
【0019】
7はアイスプライス用ロープであって、前記ロープ1のロープ本体2と同一の組紐構造を有する短尺のロープである。そしてこのアイスプライス用ロープ7の一端にアイスプライス6を形成し、当該アイスプライス用ロープ7の他端を個々のストランド5に分解している。
【0020】
そしてこのロープ1とアイスプライス用ロープ7とを図4に示すように、アイスプライス用ロープ7の分解したストランド5を、ロープ1の途中から、ロープ本体2のストランド5の間に挿入して組み込んでいる。
【0021】
また図5は第二の発明のロープ1のアイスプライス6を形成する前の状態を示すものであって、ロープ1のロープ本体2は第一の発明のおけると同様であり、またそのロープ本体2の中心軸に沿って柔軟なチューブ3が挿通されており、当該チューブ3内に金属線4が挿通されている。
【0022】
8はアイスプライス用ロープであって、前記ロープ1のロープ本体2と同一の組紐構造を有する短尺のロープである。そしてこのアイスプライス用ロープ8の両端が個々のストランド5に分解されている。
【0023】
そしてこのロープ1とアイスプライス用ロープ8とを図6に示すように、アイスプライス用ロープ8の両端の分解したストランド5を、ロープ1の途中から、ロープ本体2のストランド5の間に挿入して組み込み、当該アイスプライス用ロープの中間部分により、アイスプライス6を形成している。
【0024】
本発明によれば、アイスプライス用ロープ7、8の端部の分解したストランド5を、ロープ1の途中からストランド5の間に挿入して組み込むことにより、ロープ1の端部にアイスプライス6を形成することができるのである。
【0025】
そしてロープ1の端末部はロープ1とアイスプライス用ロープ7、8との接続部から突出しており、当該ロープ1の端末からチューブ3及び金属線4が突出し、その金属線4を適宜通信線として、又は電力線として、必要なところに接続して使用することができるのである。
【0026】
而して前記アイスプライス用ロープ7、8のアイスプライス6を支持部材に引っ掛けてロープ1に大きなテンションを作用させたときには、当該アイスプライス用ロープ7、8に作用するテンションは、アイスプライス用ロープ7、8の端末においてロープ1のロープ本体2に組み込まれており、前記アイスプライス6に作用したテンションはロープ1に伝達されて作用することとなる。
【0027】
従って前記アイスプライス用ロープ7、8及びロープ1にかかるテンションが、チューブ3を圧迫するような方向に作用することはなく、チューブ3が押し潰されて金属線4に押し付けられることはない。
【0028】
従って前記テンションが作用することによりロープ1のロープ本体2が伸縮することがあっても、そのロープ本体2内に挿入された金属線4はロープ本体2に対して自由に滑ることができるので、伸縮性に乏しい金属線4とは無関係に、ロープ本体2のみが伸縮することができ、金属線4がロープ本体2の伸張により無理に引き伸ばされて不用意に破断するようなことがない。
【0029】
従って本発明によれば、アイスプライス用ロープ7、8の端部の分解されたストランド5が、ロープ1のロープ本体2内に組み込まれてロープ1と連続し、且つそのアイスプライス用ロープ7、8が組み込まれた際から突出したロープ1には過度にテンションがかかることがなく、かかるテンションによりチューブ3が押し潰されて、金属線4に押し付けられるようなことがなく、金属線4に過度のテンションが掛かって破断するようなことがないのである。
【産業上の利用可能性】
【0030】
また前述のようにチューブ3内に金属線4が挿通されていない場合には、ロープ本体2におけるストランド5を分解した箇所からチューブ3が突出し、当該チューブ3を潜水夫などへの空気供給管として使用することができる。
【0031】
この場合においても、アイスプライス用ロープ7、8に作用するテンションは、当該アイスプライス用ロープ7、8の端部において分解されたストランド5がロープ本体2に組み込まれることにより、チューブ3はテンションにより押し潰されることがなく、潜水夫への空気の供給が途絶えるようなことはない。
【0032】
また前記特開平10-168772号公報に示されたように、ロープ本体2の中心軸に沿って金属線4のみが挿通された構造のロープ1においても、当該ロープ1に本発明を適用することが可能であり、金属線4が切断することがなくアイスプライス6に大きなテンションを作用させることができる。
【符号の説明】
【0033】
1 ロープ
2 ロープ本体
3 チューブ
4 金属線
5 ストランド
6 アイスプライス
7,8 アイスプライス用ロープ
図1
図2
図3
図4
図5
図6