(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】X線検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 23/18 20180101AFI20230501BHJP
G01N 23/04 20180101ALI20230501BHJP
【FI】
G01N23/18
G01N23/04
(21)【出願番号】P 2018247090
(22)【出願日】2018-12-28
【審査請求日】2021-07-16
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】515242467
【氏名又は名称】株式会社ティーアンドエス
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(72)【発明者】
【氏名】小林 裕信
(72)【発明者】
【氏名】住川 健
(72)【発明者】
【氏名】水谷 博成
(72)【発明者】
【氏名】笛木 豊
(72)【発明者】
【氏名】崔 成民
(72)【発明者】
【氏名】横島 伸
(72)【発明者】
【氏名】二階堂 羊司
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-173093(JP,A)
【文献】特開2018-185151(JP,A)
【文献】特開2015-102446(JP,A)
【文献】特開2009-014514(JP,A)
【文献】特開2017-133835(JP,A)
【文献】特開2011-052968(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106442578(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 15/00 - G01B 15/08
G01N 23/00 - G01N 23/2276
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象の配管の外周面に設置され、前記配管にX線を照射して当該配管の状態を検査するX線検査装置であって、
前記配管に対してX線を照射するX線照射ユニットと、
前記X線照射ユニットに対して回動可能に連結され
、円筒形状の筐体部を有する一対の設置補助ユニットと、を具備し、
前記X線照射ユニットには、前記X線照射ユニットの中心と前記配管の中心とを通る仮想線上に、前記配管側に向けてX線を照射する照射部が形成され、
前記一対の設置補助ユニットは、前記仮想線を基準に線対称に配置され、
前記X線照射ユニットに連結された一端側に回動支点、及び、それぞれの前記設置補助ユニットの前記回動支点を中心に配置され、互いに噛合する一対の連結ギアを有し、当該回動支点を中心に他端側の外周部が前記配管の外周面に向けてそれぞれの前記設置補助ユニットが前記仮想線との間で
前記一対の連結ギアを介して連動することにより同一の角度を維持しながら回動して、前記X線照射ユニットを前記設置補助ユニットの中央に配置した状態で前記一対の設置補助ユニットを前記配管の外周面に接触させることを特徴とするX線検査装置。
【請求項2】
前記設置補助ユニットは、2つの筐体部を有し、前記一対の設置補助ユニットは、初期状態から前記2つの筐体部を互いに接近させるように回動可能に構成することを特徴とする請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項3】
前記配管を透過した前記X線を受像する受像面を有し、前記受像面が前記仮想線に対して直交するように配置されたX線受像ユニットを更に具備することを特徴とする請求項1
または請求項
2に記載のX線検査装置。
【請求項4】
前記配管に対する前記X線照射ユニット及び前記一対の設置補助ユニットの設置状態を保持する保持部材を更に具備することを特徴とする請求項1から請求項
3のいずれかに記載のX線検査装置。
【請求項5】
前記設置補助ユニットに、前記X線照射ユニットの駆動電源及び/又は前記X線照射ユニットの制御装置を収容することを特徴とする請求項1から請求項
4のいずれかに記載のX線検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ガス管や水道管等、日常生活の根幹ラインとして種々の配管が混在して地中に埋設されている。このような配管には、使用状況により配管内面や溶接箇所に摩耗や腐食が生じ得る。配管の磨耗や腐食は、配管内部を流れる流体やガスの漏えいにより大事故に繋がる危険性がある。このため、配管の内面又は形状の検査や、溶接箇所における溶接不良などの検査を定期的に実施する必要がある。
【0003】
従来、微線量の放射線で高速に診断部位の撮像を行って安全に腐食診断を行う配管診断方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この配管診断方法では、放射線を照射する照射手段と、放射線を光線に変換する変換手段と、変換手段が変換した光線を撮像する撮像手段と、撮像手段が撮像した画像を画面表示する表示手段とを用いて配管を診断する方法において、配管の診断部位に放射線を照射し、診断部位を通過した放射線を光線に変換する。そして、その光線を撮像手段で撮像し、撮像した画像を表示手段に画面表示する。これにより、診断時間を短くすると共に、安全に腐食診断を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の配管診断方法では、配管に対して照射手段を位置決めすることが困難であり、所望の診断部位に対して適切に放射線を照射することができない事態が発生し得る。特に、診断対象となる配管は、様々な形状や寸法を有しており、このような配管に対して現場で迅速に照射手段を位置決めすることは極めて困難である。この結果、放射線を所望の位置に照射することができず、配管を適切に診断することができない事態が発生し得る。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、配管に対する複雑な設置作業を必要とすることなく、適切に配管の状態を検査することができるX線検査装置を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態のX線検査装置は、検査対象の配管の外周面に設置され、前記配管にX線を照射して当該配管の状態を検査するX線検査装置であって、前記配管に対してX線を照射するX線照射ユニットと、前記X線照射ユニットに対して回動可能に連結され、円筒形状の筐体部を有する一対の設置補助ユニットと、を具備し、前記X線照射ユニットには、前記X線照射ユニットの中心と前記配管の中心とを通る仮想線上に、前記配管側に向けてX線を照射する照射部が形成され、前記一対の設置補助ユニットは、前記仮想線を基準に線対称に配置され、前記X線照射ユニットに連結された一端側に回動支点、及び、それぞれの前記設置補助ユニットの前記回動支点を中心に配置され、互いに噛合する一対の連結ギアを有し、当該回動支点を中心に他端側の外周部が前記配管の外周面に向けてそれぞれの前記設置補助ユニットが前記仮想線との間で前記一対の連結ギアを介して連動することにより同一の角度を維持しながら回動して、前記X線照射ユニットを前記設置補助ユニットの中央に配置した状態で前記一対の設置補助ユニットを前記配管の外周面に接触させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、配管に対する複雑な設置作業を必要とすることなく、適切に配管の状態を検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施の形態に係るX線検査装置の外観を模式的に示す斜視図である。
【
図2】本実施の形態に係るX線検査装置が有するX線発生ユニットの正面図である。
【
図3】本実施の形態に係るX線検査装置を配管の外周面に設置した状態の説明図である。
【
図4】本実施の形態に係るX線検査装置を配管の外周面に設置した状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
日常生活の根幹ラインとして地中に埋設されたガス管や水道管には、使用状況により配管内面や溶接箇所に摩耗や腐食が生じ得る。配管の磨耗や腐食は、配管内部を流れる流体やガスの漏えいにより大事故に繋がる危険性がある。このため、配管の内面又は形状の検査や、溶接箇所における溶接不良などの検査を定期的に実施する必要がある。このような配管を検査する方法として、配管に対して照射装置からX線を照射する一方、配管を透過したX線を受像装置で受像し、その受像画像から配管の状態を検査する方法が知られている。
【0011】
しかしながら、このような配管検査方法において、検査対象となる配管は、様々な形状や寸法を有している。このような配管の外周面に対して現場で迅速に照射装置を設置することは困難である。例えば、配管に検査専用の治具を取り付け、この治具を介して配管に照射装置を設置することが行われる。この場合には、治具自体を取り付ける作業が必要となり、検査方法全体の作業が煩雑になる。特に、取り付けた後に所望の位置にX線が照射されない場合には、位置調整作業が必要となり、更に検査方法全体の作業が煩雑になる。従来、このような配管に対する複雑な設置作業を必要とすることなく、適切に配管の状態を検査することが要請されている。
【0012】
本発明者らは、X線検査装置を配管に設置する際、X線検査装置とは別の構造である治具を介在させることで、その設置作業が煩雑化し、更なる位置調整作業が必要になっている点に着目した。更に、検査対象となる配管には、様々な形状や寸法が存在することも、その設置作業を煩雑化させている点に着目した。そして、X線検査装置の一部に、様々な形状や寸法を有する配管に対する設置機能を持たせることが、複雑な設置作業を必要とすることなく、適切に配管の状態を検査することに寄与することを見出し、本発明に想到した。
【0013】
すなわち、本発明の骨子は、配管に対してX線を照射するX線照射ユニットの中心と配管の中心とを通る仮想線上に、配管側に向けてX線を照射する照射部をX線照射ユニットに形成する一方、当該X線照射ユニットに回動可能に連結される一対の設置補助ユニットを、上記仮想線を基準に線対称に配置し、それぞれの設置補助ユニットを上記仮想線との間で同一の角度を維持しながら回動させるようにしたことである。
【0014】
本発明によれば、X線照射ユニット及び配管の中心を通る仮想線を基準に線対称に配置された各設置補助ユニットが、上記仮想線との間で同一の角度を維持しながら回動することから、配管の外形寸法に関わらず、中央にX線照射ユニットを配置した状態で一対の設置補助ユニットを配管の外周面に接触させることができる。一方、X線照射ユニットには、X線照射ユニット及び配管の中心を通る仮想線上に照射部が形成されている。このため、中央にX線照射ユニットを配置した状態で一対の設置補助ユニットを配管の外周面に接触させることにより、配管の中心に向けてX線が照射されるようにX線照射ユニットが設置される。これにより、照射部から常に配管の中心に向けてX線を照射することができる。この結果、配管に対する複雑な設置作業を必要とすることなく、適切に配管の状態を検査することができる。
【0015】
以下、本実施の形態に係るX線検査装置の構成について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施の形態に係るX線検査装置100の外観を模式的に示す斜視図である。以下においては、
図1に示す上下方向、左右方向及び前後方向を、X線検査装置100の上下方向、左右方向及び前後方向として説明する。
【0016】
図1においては、本実施の形態に係るX線検査装置100による配管のX線検査時の状態について示している。なお、
図1においては、説明の便宜上、検査対象となる配管を省略している。また、
図1においては、X線検査装置100が有するX線照射ユニットから照射されるX線を破線にて示している。
図1においては、説明の便宜上、X線検査装置100の構成を一部省略している。
図1において、
図2以降の図面の示す内容と異なる部分は、
図2以降の図面に示す内容を参照されたい。
【0017】
図1に示すように、X線検査装置100は、X線発生ユニット101を有している。X線発生ユニット101は、X線照射ユニット(以下、単に「照射ユニット」という)1及び一対の設置補助ユニット(以下、単に「補助ユニット」という)2、3を含んで構成される。なお、X線発生ユニット101の構成については、これに限定されず、適宜変更が可能である。
【0018】
照射ユニット1は、検査対象となる配管に対してX線を照射する。照射ユニット1は、概して円筒形状を有する本体部10を有している。本体部10は、
図1に示す前後方向に延在して配置される。本体部10の内部には、X線を発生させる線源を有し、配管にX線を照射するX線照射部(以下、単に「照射部」という)11が収容されている。照射部11は、
図1に示す下方側にX線を照射する。本体部10の上部には、把持部12が設けられている。把持部12は、照射ユニット1を持ち運ぶ際に利用される。本体部10の前後には、補助ユニット2、3の一部を固定するためのカバー10a、10bが取り付けられている。これらのカバー10a、10bは、固定ねじにより本体部10に固定される(
図3B参照)。
【0019】
照射ユニット1には、一対の補助ユニット2、3が連結されている。補助ユニット2、3は、X線発生ユニット101を配管に対する設置を補助する役割を果たす。それぞれの補助ユニット2、3は、後述する筐体部20、30内の構成を除き、同一の構成を有している。補助ユニット2(3)は、概して円筒形状を有する筐体部20(30)を有している。筐体部20、30は、照射ユニット1の本体部10と平行に延在して配置されている。筐体部20(30)の前後方向の端部近傍には、リンク21、22(31、32)が設けられている。補助ユニット2(3)は、これらのリンク21、22(31、32)を介して照射ユニット1に回動可能に連結される。なお、補助ユニット2、3の詳細な構成については後述する。
【0020】
筐体部20の内部には、照射ユニット1を制御するための不図示の制御装置が収容されている。また、筐体部20の外周面には、この制御装置を操作するための不図示の操作部が設けられている。操作部は、配管の状態を検査する作業者からの指示を受け付ける。照射ユニット1は、操作部からの指示に基づく制御装置の制御に応じてX線を発生し、配管に照射する。例えば、制御装置と照射ユニット1とは有線接続されるが、これに限定されず無線接続される構成であってもよい。
【0021】
筐体部30の内部には、照射ユニット1に電源を供給するための不図示の電池(駆動電源)が収容されている。筐体部30は、不図示の開閉カバーを介して電池を交換可能に構成される。照射ユニット1は、筐体部30内に収容された電池から電源供給を受けて駆動し、X線を発生させる。筐体部30内の電池からの電源供給は、例えば、リンク31、32内に配置された配線を介して行われるが、これに限定されない。
【0022】
X線検査装置100は、X線受像ユニット(以下、単に「受像ユニット」という)102を有している。受像ユニット102の上面には、受像面102aが設けられている。受像面102aは、照射ユニット1から配管に向けて照射され、配管を透過したX線を受像する。受像ユニット102は、例えば、PC(Personal Computer)に有線又は無線で接続される。なお、受像ユニット102が接続される対象には、表示手段を有することを前提として任意の端末を適用することができる。
【0023】
PCは、受像ユニット102で受像したX線画像をディスプレイに表示する。配管の状態を検査する作業者は、ディスプレイに表示されたX線画像を確認することで配管の状態を判定することができる。なお、PCは、受像ユニット102で受像した複数のX線画像を合成し、動画を生成してもよい。例えば、配管における異なる位置に設置されたX線検査装置100で得た複数のX線画像を合成することで、配管全体の状態を判定することができる。
【0024】
ここで、本実施の形態に係るX線発生ユニット101の構成について、
図2を参照して説明する。
図2は、本実施の形態に係るX線検査装置100が有するX線発生ユニット101の正面図である。
図2においては、X線発生ユニット101を
図1に示す前方側から示している。なお、
図2においては、説明の便宜上、照射ユニット1の把持部12と、リンク21、31よりも前方側に配置される構成(リンク21よりも前方側に配置されるカバー10a)とを省略している(
図1参照)。また、
図2においては、説明の便宜上、検査対象の配管の中心C2を示している。
【0025】
図2Aにおいては、一対の補助ユニット2、3を最大限に開いた状態を示している。本実施の形態に係るX線発生ユニット101では、
図2に示す状態が初期状態であるものとする。
図2Bにおいては、
図2Aに示す状態(初期状態)から一対の補助ユニット2、3を僅かに閉じた状態を示している。
図2Bに示すように、一対の補助ユニット2、3は、初期状態から筐体部20及び筐体部30を互いに接近させるように回動可能に構成されている。
【0026】
図2に示すように、一方の補助ユニット2は、リンク21の一端側(右端側、基端側)に配置された連結軸24の中心を回動支点として回動可能に照射ユニット1に連結されている。連結軸24は、本体部10の中心C1よりも下方側であって、本体部10の左方側の外周部近傍に配置されている。連結軸24には、連結ギア23が取り付けられている。連結ギア23は、連結軸24の中心を回転支点として回転可能に構成されている。リンク21は、連結ギア23を介して本体部10に取り付けられる。リンク21は、連結ギア23に固定され、連結ギア23と一緒に回転する。筐体部20は、リンク21の他端側(左端側、先端側)に固定されている。補助ユニット2は、正面視にて、リンク21が左下方側に向けて延びるように本体部10に連結されている。
【0027】
同様に、他方の補助ユニット3は、リンク31の一端側(左端側)に配置された連結軸34の中心を回動支点として回動可能に照射ユニット1に連結されている。連結軸34は、本体部10の中心Cよりも下方側であって、本体部10の右方側の外周部近傍に配置されている。連結軸34には、連結ギア33が取り付けられている。連結ギア33は、連結軸34の中心を回転支点として回転可能に構成されている。リンク31は、連結ギア33を介して本体部10に取り付けられている。リンク31は、連結ギア33に固定され、連結ギア33と一緒に回転する。筐体部30は、リンク31の他端側(右端側)に固定されている。補助ユニット3は、正面視にて、リンク31が右下方側に向けて延びるように本体部10に連結されている。
【0028】
これらの補助ユニット2、3は、連結ギア23、33の歯の部分を除き、照射ユニット1の本体部10の中心C1と、検査対象の配管の中心C2とを通る仮想線Lを基準に線対称に配置されている。すなわち、補助ユニット2は、仮想線Lを基準に180度折り返した場合に、連結ギア23の歯の部分を除き、補助ユニット3に重なって配置される。
【0029】
図2に示すように、補助ユニット2の連結ギア23と補助ユニット3の連結ギア33とは、本体部10の中央付近で互いに噛合している。すなわち、連結ギア23と連結ギア33とは連動して回転可能に構成されている。連結ギア23、33には、それぞれリンク21、31が固定されている。このため、これらのリンク21、31及び補助ユニット2、3も連動して回転する。補助ユニット2は、
図2Aに示す初期状態から連結軸24の中心を回転支点として反時計回転方向に回動する。一方、補助ユニット3は、
図2Aに示す初期状態から連結軸34の中心を回転支点として時計回転方向に回動する。
【0030】
補助ユニット2、3は、仮想線Lとの間で同一の角度を維持しながら回動するように構成されている。言い換えると、補助ユニット2、3は、
図2Aに示す初期状態からそれぞれ同一角度だけ回動するように構成されている。例えば、初期状態において、補助ユニット2(リンク21)の中心線と仮想線Lとの間の角度、並びに、補助ユニット3(リンク31)の中心線と仮想線Lとの間の角度がθ1であるものとする。初期状態から補助ユニット2が
図2Bに示す位置まで下方側に回動し、補助ユニット2の中心線と仮想線Lとの間の角度がθ2になると、補助ユニット3の中心線と仮想線Lとの間の角度もθ2になる。このように回動する任意の位置にて、補助ユニット2、3は、仮想線Lを基準に線対称の位置に配置される。
【0031】
照射ユニット1の本体部10内には、仮想線L上に、照射部11が配置されている。照射部11は、仮想線Lに沿って下方側に配置された配管側に向けてX線を照射可能に構成されている。照射部11から照射されたX線は、下方側に向けて拡散しながら進む(
図1参照)。詳細について後述するように、配管の外周面に設置された状態において、照射部11からのX線は、その中心が配管の中心を通るように照射される。
【0032】
次に、上記構成を有するX線検査装置100を検査対象となる配管200の外周面に設置した状態について、
図3及び
図4を参照して説明する。
図3及び
図4は、本実施の形態に係るX線検査装置100を配管200の外周面に設置した状態の説明図である。
図3においては、相対的に口径の大きい配管200(200A)に設置された場合について示し、
図4においては、相対的に口径の小さい配管200(200B)に設置された場合について示している。
【0033】
図3A及び
図4Aにおいては、配管200に設置した状態のX線検査装置100を前方側から示している。また、
図3A及び
図4Aにおいては、
図2と同様に、把持部12及びリンク21、31よりも前方側に配置される構成を省略している。
図3B及び
図4Bにおいては、配管200に設置した状態のX線検査装置100を上方側から示している。なお、ここでは、X線発生ユニット101を配管200の上方側から設置する場合について説明するが、配管200に対する設置位置については、これに限定されず、任意の位置に設置することができる。
【0034】
また、
図3A及び
図4Aにおいては、受像ユニット102を示している。受像ユニット102は、受像面102aが仮想線Lに直交して配置されることを前提として任意の設置方法を適用することができる。例えば、後述する保持ベルト103でX線発生ユニット101と一緒に保持することで配管200の外周面に設置することができる。受像面102aが仮想線Lに直交するように配置されることをサポートする構造をX線発生ユニット101に追加することは実施の形態として好ましい。
【0035】
図3A、
図4Aに示すように、X線発生ユニット101は、配管200の外周面に設置される。X線発生ユニット101は、照射ユニット1の本体部10の下面を配管200の外周面に接触させると共に、補助ユニット2、3の筐体部20、30の外周部を配管200の外周面に接触させた状態で設置される。この場合において、本体部10及び筐体部20、30は、円筒形状を有している。このため、X線発生ユニット101は、配管200の外周面に対して3点の位置で接触した状態で配管200に設置される。
【0036】
このように設置された状態でX線発生ユニット101は、保持部材の一例を構成する保持ベルト103により配管200に固定される。保持ベルト103は、
図3B、
図4Bに示すように、X線発生ユニット101の前方側端部及び後方側端部に巻回される。例えば、保持ベルト103は、長尺体で構成され、その両端部に配置された面ファスナーにより固定される。X線発生ユニット101及び配管200に巻回された状態にて面ファスナーで固定されることにより、配管200の寸法に関わらず、X線発生ユニット101を配管200の外周面に密着するように設置することができる。
【0037】
口径の大きい配管200Aの外周面に設置する場合には、まず、照射ユニット1の本体部10の外周面(より具体的には、補助ユニット2、3の間に配置される外周面)を配管200Aに載置する。そして、補助ユニット2、3を配管200A側に向けて回動させ、筐体部20、30を配管200Aの外周面に接触させる(
図3Aに示す状態)。この場合、補助ユニット2、3は、仮想線Lとの間で同一の角度を維持しながら回動する。そして、補助ユニット2、3は、仮想線Lを基準として均等に開いた状態で筐体部20、30の一部が配管200Aの外周面に接触する。このため、照射ユニット1が補助ユニット2、3の中央に配置されると共に、本体部10内に設けられた照射部11が仮想線L上であって、配管200Aの中心C2に向けてX線を照射する位置に設置される。
【0038】
このように設置された状態で照射部11からX線を照射すると、X線は、配管200Aに照射される。配管200Aを透過したX線は、受像ユニット102の受像面102aに受像される。この場合において、照射部11からのX線は、配管200Aの中心C2に向けて照射されることから、所望の角度で配管200Aを透過したX線画像を受像ユニット102で受像することができる。受像ユニット102で受像したX線画像は、作業者の指示又は初期設定により、不図示のPCに出力される。PCのディスレプイで当該X線画像を表示することにより、作業者は、配管200Aの状態を判定することができる。
【0039】
一方、口径の小さい配管200の外周面に設置する場合においても、まず、照射ユニット1の本体部10の外周面(より具体的には、補助ユニット2、3の間に配置される外周面)を配管200Bに載置する。そして、補助ユニット2、3を配管200B側に向けて回動させ、筐体部20、30を配管200Bの外周面に接触させる(
図4Aに示す状態)。この場合においても、補助ユニット2、3は、仮想線Lとの間で同一の角度を維持しながら回動する。そして、補助ユニット2、3は、仮想線Lを基準として均等に開いた状態で筐体部20、30の一部が配管200Bの外周面に接触する。このため、照射ユニット1が補助ユニット2、3の中央に配置されると共に、本体部10内に設けられた照射部11が仮想線L上であって、配管200Bの中心C2に向けてX線を照射する位置に設置される。
【0040】
このように設置された状態で照射部11からX線を照射すると、X線は、配管200Bに照射される。配管200Bを透過したX線は、受像ユニット102の受像面102aに受像される。この場合において、照射部11からのX線は、配管200Bの中心C2に向けて照射されることから、所望の角度で配管200Bを透過したX線画像を受像ユニット102で受像することができる。受像ユニット102で受像したX線画像は、作業者の指示又は初期設定により、不図示のPCに出力される。PCのディスレプイで当該X線画像を表示することにより、作業者は、配管200Bの状態を判定することができる。
【0041】
以上説明したように、本実施の形態に係るX線検査装置100においては、照射ユニット1及び配管200の中心を通る仮想線Lを基準に線対称に配置された各補助ユニット2、3が、当該仮想線Lとの間で同一の角度を維持しながら回動することから、配管200の外形寸法に関わらず、中央に照射ユニット1を配置した状態で補助ユニット2、3を配管200の外周面に接触させることができる。一方、照射ユニット1には、仮想線L上に照射部11が形成されている。このため、中央に照射ユニット1を配置した状態で一対の補助ユニット2、3を配管200の外周面に接触させることにより、配管200の中心C2に向けてX線が照射されるように照射ユニット1を設置することができる。この結果、配管200に対する複雑な設置作業を必要とすることなく、適切に配管200の状態を検査することができる。
【0042】
特に、補助ユニット2、3は、照射ユニット1に連結された一端側に配置された回動支点(連結軸24、34の中心点)を中心に、他端側に配置された筐体部20、30の外周部が配管200の外周面に向けて回動する。これにより、複雑な構成を必要とすることなく、中央に照射ユニット1を配置した状態で一対の補助ユニット2、3を配管200の外周面に接触させることができる。
【0043】
また、補助ユニット2、3は、回動支点を中心に配置され、互いに噛合する一対の連結ギア23、33を有しており、これらの連結ギア23、33を介して連動して回動可能に構成されている。このように連結ギア23、33を介して互いの補助ユニット2、3が連動することから、補助ユニット2、3の外周部と仮想線Lとの間に確実に同一の角度を維持しながら一対の補助ユニット2、3を回動させることができる。
【0044】
さらに、本実施の形態に係るX線検査装置100においては、配管200を透過したX線を受像する受像面102aを有し、この受像面102aが仮想線Lに対して直交するように配置された受像ユニット102を備えている。これにより、配管200を透過したX線を確実に受像できるので、適切に配管200の状態を検査することができる。
【0045】
さらに、本実施の形態に係るX線検査装置100においては、配管200に対する照射ユニット1及び一対の補助ユニット2、3の設置状態を保持する保持ベルト103を備えている。このような保持ベルト103により、配管200に対する照射ユニット1及び補助ユニット2、3の設置状態が保持されることから、検査過程で照射ユニット1がずれるのを防止できるので、適切に配管200の状態を検査することができる。
【0046】
さらに、本実施の形態に係るX線検査装置100においては、補助ユニット2(より具体的には筐体部20)に、照射ユニット1の電池(駆動電源)を収容する一方、補助ユニット3(より具体的には筐体部30)に照射ユニット1の制御装置を収容する。このように補助ユニット2、3にそれぞれ照射ユニット1の電池、制御装置が収容されることから、照射ユニット1の構成部品を削減することができるので、照射ユニット1自体をコンパクトにすることができる。なお、上記実施の形態では、補助ユニット2、3にそれぞれ照射ユニット1の電池、制御装置を収容する場合について説明しているが、補助ユニット2、3に収容する対象はこれに限定されない。照射ユニット1を小型化することを目的として任意の構成を収容することができる。
【0047】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている構成要素の大きさや形状、機能などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0048】
例えば、上記実施の形態においては、検査対象の配管200の断面が円筒形状を有する場合について説明している。しかしながら、本実施の形態に係るX線検査装置100による検査対象は、円筒形状を有する配管200に限定されない。任意の断面形状を有する配管を検査対象として配管の状態を検査することができる。
【0049】
また、上記実施の形態においては、連結ギア23、33を噛合させることにより、補助ユニット2、3を連動して回動可能に構成している。しかしながら、補助ユニット2、3が仮想線Lとの間で同一の角度を維持することを前提として、補助ユニット2、3の回動機構については、任意の構成を適用することができる。
【0050】
さらに、上記実施の形態においては、補助ユニット2、3を手動で回動させる場合について説明している。しかしながら、補助ユニット2、3の回動については、手動に限定されるものではなく、電動式の駆動機構を適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明のX線検査装置は、配管に対する複雑な設置作業を必要とすることなく、適切に配管の状態を検査することができるという効果を有し、地中に埋設された各種配管の検査に好適である。
【符号の説明】
【0052】
1 :X線照射ユニット(照射ユニット)
2、3 :設置補助ユニット(補助ユニット)
10 :本体部
10a、10b:カバー
11 :照射部
12 :把持部
20 :筐体部
21、22:リンク
23 :連結ギア
24 :連結軸
30 :筐体部
31、32:リンク
33 :連結ギア
34 :連結軸
100 :X線検査装置
101 :X線照射ユニット
102 :X線受像ユニット(受像ユニット)
102a :受像面
103 :保持ベルト
200、200A、200B:配管