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  • 特許-電子混合水栓 図1
  • 特許-電子混合水栓 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】電子混合水栓
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/044 20060101AFI20230501BHJP
   E03C 1/05 20060101ALI20230501BHJP
   F16L 55/045 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
E03C1/044
E03C1/05
F16L55/045
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019144605
(22)【出願日】2019-08-06
(65)【公開番号】P2021025328
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000100562
【氏名又は名称】アール・ビー・コントロールズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】393030534
【氏名又は名称】リンナイ精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106105
【弁理士】
【氏名又は名称】打揚 洋次
(72)【発明者】
【氏名】武内 伊久磨
(72)【発明者】
【氏名】江川 凌太
(72)【発明者】
【氏名】梅村 鎮基
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 久之
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-2158(JP,A)
【文献】特開平5-165533(JP,A)
【文献】特開2012-13243(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/00- 1/10
F16L 51/00-55/045
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温水の流量を増減する第1の電動式水量バルブ(以下、水量サーボという)と冷水の流量を増減する第2の水量サーボとを備え、両水量サーボを通過した温水と冷水とを混合して電磁式の開閉弁を介して吐出口に供給する電子混合水栓において、上記開閉弁の上流に第3の水量サーボを設け、この第3の水量サーボを通して上記温水と冷水とが混合された状態の水流が開閉弁に流入するように構成し、上記開閉弁を閉弁する際に、先行して第3の水量サーボの開度を絞ることによって開閉弁の閉弁時に発生するウォータハンマを低減させることを特徴とする電子混合水栓。
【請求項2】
上記開閉弁を閉弁する際に上記第3の水量サーボの開度が所定の開度まで絞られ、完全に閉弁しない状態で開閉弁を閉弁することを特徴とする請求項1に記載の電子混合水栓。
【請求項3】
上記開閉弁が閉弁した状態で上記第3の水量サーボの開度を増加させ、その第3の水量サーボの開度が所定の基準開度に到達するまで開閉弁の開弁を禁止することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子混合水栓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室などの水栓やシャワーからの出湯を制御する電子混合水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば浴室などでは、蛇口の水栓やシャワーその他の出湯口が複数設けられている。従来は、これら出湯口の開閉は手動で行われ、例えば、出湯状態の蛇口を閉める際には、手動による操作によって出湯を停止させていた。このように、手動操作によって出湯を停止させる場合には、湯水の通る通路の開度を手動により狭めるので、瞬間的に通路の開度が閉められるのではなく、連続してある程度の速度で狭められる。そのため、出湯中の湯水の流速は急激に減速されることがない。そのため、ウォータハンマは低減される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、湯水の通る通路に電磁式の開閉弁を設け、この開閉弁を閉じることによって湯水の吐出を停止する場合、湯水の流速が開閉弁の閉弁によって急激に減速するので、ウォータハンマが発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-13243号公報(図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年では、温水と冷水とを混合して所望する水温の湯水を生成し、さらにその混合された湯水の通路に上記のような電磁式の開閉弁を設け、別所に設けたスイッチを操作することによって、このような開閉弁を開閉させて湯水の吐出状態を切り換える、いわゆる電子混合水栓が提案されつつある。ところが、開閉弁を開弁する際にはウォータハンマは発生しづらいが、上記のように、開閉弁を閉弁する際にはウォータハンマが発生し、電子混合水栓が破損するおそれが大きい。
【0006】
一方、上記温水と冷水とを混合させる際に、所望する温度の湯水を生成するためには温水と冷水との混合比を調節する必要がある。そのため、温水の通路と冷水の通路とに各々電動式水量バルブ(以下、水量サーボという)と呼ばれる開度を連続して調節できる調節機構を介在させる必要がある。このように水量サーボを備えている場合には、上記開閉弁を閉弁する際に先行して両水量サーボの開度を絞って開閉弁を通過する湯水の流速を遅くした状態で開閉弁を閉弁させれば、ウォータハンマの発生を低減させることができる。
【0007】
しかしながら、開閉弁の閉弁毎に水量サーボの開度を絞っていたのでは、温水と冷水との流量調節の他に、開閉弁の開閉毎に水量サーボの開度を変更しなければならず、水量サーボの寿命が短くなるという不具合が生じる。また、両水量サーボを絞ると再び元の開度に復帰させた後でなければ開閉弁を開弁させることができないが、正確に元の開度に戻すためには一旦水量サーボの開度をゼロにして原点出しをする必要があり、再度開閉弁を開弁させるまでに長時間を有して使い勝手が悪くなるという不具合も生じる。
【0008】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、開閉弁を閉弁する際にウォータハンマが発生しづらく、かつ水量サーボの寿命を延ばし、さらに素早く開閉弁を再度開弁させることのできる電子混合水栓を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明による電子混合水栓は、温水の流量を増減する第1の水量サーボと冷水の流量を増減する第2の水量サーボとを備え、両水量サーボを通過した温水と冷水とを混合して電磁式の開閉弁を介して吐出口に供給する電子混合水栓において、上記開閉弁の上流に第3の水量サーボを設け、この第3の水量サーボを通して上記温水と冷水とが混合された状態の水流が開閉弁に流入するように構成し、上記開閉弁を閉弁する際に、先行して第3の水量サーボの開度を絞ることによって開閉弁の閉弁時に発生するウォータハンマを低減させることを特徴とする。
【0010】
開閉弁を閉弁する際に上記第3の水量サーボを絞ることによって開閉弁が閉弁する際の水量を遅くしてウォータハンマを低減させる。なお、第3の水量サーボのみを絞るのでその他の第1の水量サーボおよび第2の水量サーボの開度を変更する必要が無い。
【0011】
なお、ウォータハンマを低減させるためには開閉弁を閉弁する際の流速を完全にゼロにする必要は無い。そこで、上記開閉弁を閉弁する際に上記第3の水量サーボの開度が所定の開度まで絞られ、完全に閉弁しない状態で開閉弁を閉弁してもよい。
【0012】
また、開閉弁を開弁する際には閉弁する直前の水量まで完全に戻っている必要は無く、ある程度水量が確保できれば、開閉弁が開弁した後で流量が元に戻っても良い。そこで、上記開閉弁が閉弁した状態で上記第3の水量サーボの開度を増加させ、その第3の水量サーボの開度が所定の基準開度に到達するまで開閉弁の開弁を禁止するように構成してもよい。
【発明の効果】
【0013】
以上の説明から明らかなように、本発明は、電子混合水栓に電磁式の開閉弁を設けても、その開閉弁の閉弁時におけるウォータハンマの発生を可及的に低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施の形態の構成を示す図
図2】電子混合水栓の開閉弁の開閉タイミングを示すフロー図
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1を参照して、1は本発明による電子混合水栓の一例を示す。この電子混合水栓12は上水管2からの冷水の流量を増減制御する第1水量サーボ11と、給湯装置3からの温水の流量を増減制御する第2水量サーボ12とが設けられている。なお、これら2つの第1および第2水量サーボ11,12は連続して開度を増減することができ、更に開度を絞っていくと完全に回動を閉じる閉弁機能を有している。第1および第2水量サーボ11,12を通過した冷水と温水とは混合槽13内に流入し、この混合槽13内で混合される。なお、この混合槽13には図示しない温度センサが設けられており、混合された後の水温が後述するリモコン4によって設定された水温になるように、第1および第2水量サーボ11,12の開度が制御装置5によって制御される。
【0016】
混合槽13内で所定の温度に混合された温水は、混合槽13の下流に設けられた第3の水量サーボ10を通過した後、互いに並列に設けられた複数の分岐管141,142,143,144に分岐される。なお、本実施の形態では4本の分岐管を示したが、分岐管の本数は4本に限定されるものではなく、必要に応じて更に増設してもよい。
【0017】
各分岐管141,142,143,144には各々電磁式の開閉弁151,152,153,154が設けられている。これら開閉弁はラッチ弁と呼ばれるものであり、開閉弁状態が切り替えられる際に制御部5からパルス状の信号を受信し、開閉弁状態が切り替えられた後は、制御部5からの信号が停止していても、切り替えられた後の開閉弁状態を保持するように構成されている。そして、各分岐管141,142,143,144の出口には、各々吐出口A1,A2,A3,A4が設けられている。これら吐出口は特定の形態に限定されるものではなく、例えば、本実施の形態ではA1をカランとし、A2をハンドシャワーとし、A3を残水や冷水を排出するための排出口とし、A4を追加の吐出口に設定している。
【0018】
そして、これら4つの吐出口A1,A2,A3,A4から温水などを吐出させるために各電磁弁151,152,153,154の開閉は、リモコン4に設けられた操作スイッチ401,402,403,404が押し操作され、その押し操作によって制御部5が行うように構成されている。なお、このリモコン4にはその他に2個の温度設定用のスイッチ41が設けられ、その温度設定用のスイッチ41を操作することによって、上述の2個の第1および第2水量サーボ11,12の開度が調節される。また、両スイッチ41によって設定される温度は、表示部42に表示され、その表示された湯温に到達するまではLED43が青色に点灯し、湯温が設定温度に到達すると、そのLED43の点灯色が青色からオレンジ色に切り替わる。なお、混合槽13内の水温が低い状態では、カラン(A1)やハンドシャワー(A2)から低温の温水を吐出させない。そのため、第2水量サーボ12を開けても、給湯装置3からの新たな温水が混合槽13内に流入しない。そのような場合には、制御部5は電磁弁153を開弁させ、混合槽13内の水温が設定された水温に達するまで混合槽13内の低温の温水を吐出口A3から排出するように制御する。
【0019】
制御部5によって上記構成の電子混合水栓1の制御を行う内容を図2を参照して説明する。最初の状態は、すべての電磁弁が閉弁しており、いずれの吐出口からも温水が吐出していない状態である。その状態で、リモコン4のいずれかの操作スイッチが押し操作されると(S1)、制御部5は押し操作された操作スイッチに対応する開閉弁を開弁させる(S2)。
【0020】
次に、先に押し操作された操作スイッチ以外の操作スイッチが押し操作されると、その新たに押し操作された操作スイッチに対応する開閉弁を開弁させる(S3,S4)。なお、先に押し操作された操作スイッチが再び押し操作され、その操作スイッチに対応している開弁状態の電磁弁を閉弁させる際には、直ちにその電磁弁を閉弁させるのではなく、第3水量サーボ10の開度を絞り、開弁状態の電磁弁を通過している温水の流速を減速させ(S6,S7)、十分に流速が遅くなった状態で開弁状態の電磁弁を閉弁させる(S8)。なおこの時、第3水量サーボ10の開度は完全に流量がゼロになるまで絞る必要は無く、実用上問題となる大きさのウォータハンマが生じないであろう流速まで第3水量サーボ10の開度が絞られた時点で開閉弁を閉弁させればよい。そして、開閉弁が閉弁されると第3水量サーボ10の開度を元に戻し、いずれかの開閉弁が開弁された時点で十分な水量が確保されるようにする(S9)。ただし、水量が完全に回復するまでいずれの開閉弁の開弁を禁止するのではなく、予め設定された開度まで第3水量サーボ10の開度が戻れば、それ以降開閉弁の開弁を許可するように制御する。
【0021】
上記S4で新たな開閉弁が開弁した後に、最初に開弁され、その時点で既に開弁している電磁弁を閉弁させる(S5)。この時点で、最初に開弁した電磁弁は閉弁し、そのあとに新たな電磁弁が開弁している状態になるが、S3に戻った時点で新たな開閉弁として開弁している電磁弁は図2における所定の開閉弁となり、更にそのあとで、すなわち3番目に開弁操作された電磁弁が新たな電磁弁になる。従って、例えば図においてNo.1(401)の操作スイッチが最初に押し操作され、開閉弁151が開弁している状態で例えばNo.2(402)の操作スイッチが押し操作されると、開閉弁152が開弁した後に開閉弁151が閉弁することになる。そして、開閉弁152が開弁している状態で他の操作スイッチが押し操作されると、その押し操作された操作スイッチに対応する電磁弁が開弁した後で開閉弁152が閉弁されることになる。このように、いずれかの電磁弁を閉弁する際に他の開閉弁が開弁されている状態ではウォータハンマが生じたとしても開弁している開閉弁からウォータハンマによる異常圧力が解放されるので、第3水量サーボ10の開度を絞る必要は無い。従って、開閉弁152が開弁している状態で操作スイッチ402が押し操作された場合には、他の開閉弁が開弁していないので電磁弁152が閉弁する前に第3水量サーボ10の開度を絞ることになる。
【0022】
なお、本発明は上記した形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもかまわない。
【符号の説明】
【0023】
1 電子混合水栓
2 上水管
3 給湯装置
4 リモコン
5 制御部
図1
図2