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特許7271109タイヤ保守管理装置およびタイヤ保守システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】タイヤ保守管理装置およびタイヤ保守システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/20 20230101AFI20230501BHJP
【FI】
G06Q10/20
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018152358
(22)【出願日】2018-08-13
(65)【公開番号】P2020027471
(43)【公開日】2020-02-20
【審査請求日】2021-06-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】下村 哲生
(72)【発明者】
【氏名】中島 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】桑原 正
(72)【発明者】
【氏名】関 桂子
(72)【発明者】
【氏名】三田村 修吾
(72)【発明者】
【氏名】森田 学
(72)【発明者】
【氏名】吉成 昭夫
【審査官】山内 裕史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/071993(WO,A1)
【文献】特開2008-002907(JP,A)
【文献】特開2018-048545(JP,A)
【文献】特開2013-251686(JP,A)
【文献】特開2002-132994(JP,A)
【文献】特開2005-138738(JP,A)
【文献】特開2002-131191(JP,A)
【文献】特許第6283142(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行環境を取得する走行環境取得部と、
前記走行環境取得部により取得した走行環境に基づいて車両のタイヤの摩耗状況を推定し、タイヤの保守時期を判定する保守時期判定部と、
前記保守時期判定部により推定した前記摩耗状況、および前記保守時期判定部による判定結果である前記保守時期を、保守のメリットとともにユーザへ報知するべく報知情報を生成する報知情報生成部と、を備え、
前記保守のメリットは、現時点で保守した場合におけるタイヤの保守による改善程度を含み、
前記報知情報生成部は、タイヤの保守による改善程度として、摩耗状況に応じた燃費、制動距離、タイヤ寿命、タイヤ故障率および車両稼働率の改善程度の少なくとも1つを算出することを特徴とするタイヤ保守管理装置。
【請求項2】
前記走行環境は車両の荷重に関する情報を含み、
前記保守時期判定部は、タイヤの保守時期を予測し、前記荷重が大きいほど保守時期が早くなるように予測することを特徴とする請求項1に記載のタイヤ保守管理装置。
【請求項3】
前記走行環境は車両が走行した路面に関する情報を含み、
前記保守時期判定部は、タイヤの保守時期を予測し、前記路面がタイヤにとって過酷なほど保守時期が早くなるように予測することを特徴とする請求項1に記載のタイヤ保守管理装置。
【請求項4】
前記保守時期判定部は、タイヤにバーストのリスクがある場合には、即時にタイヤ交換の保守をすべきであると判定することを特徴とする請求項1に記載のタイヤ保守管理装置。
【請求項5】
保守により回収したタイヤの状態に基づいて、前記保守時期判定部における保守時期の判定方法が調整されることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のタイヤ保守管理装置。
【請求項6】
車両が走行したルート情報を取得するルート情報取得部と、
前記ルート情報取得部により取得したルート情報と異なり、タイヤの保守時期が延びる方向に改善されるルート情報を生成する走行改善案生成部と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のタイヤ保守管理装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のタイヤ保守管理装置と、
前記タイヤ保守管理装置による判定結果に基づいてタイヤの生産計画を生成するタイヤ生産計画装置と、
を備えることを特徴とするタイヤ保守システム。
【請求項8】
車両のタイヤごとの利用履歴を記憶する利用履歴記憶部と、
前記利用履歴記憶部により記録したタイヤごとの利用履歴に基づいて、タイヤの保守時期を判定する保守時期判定部と、
前記保守時期判定部による判定結果である保守時期を、保守のメリットとともにユーザへ報知するべく報知情報を生成する報知情報生成部と、を備え、
前記保守のメリットは、現時点で保守した場合におけるタイヤの保守による改善程度を含み、
前記報知情報生成部は、タイヤの保守による改善程度として、燃費、制動距離、タイヤ寿命、タイヤ故障率および車両稼働率の改善程度の少なくとも1つを算出することを特徴とするタイヤ保守管理装置。
【請求項9】
前記利用履歴は、タイヤの走行距離、運用期間および掛かっていた荷重のいずれかを含むことを特徴とする請求項8に記載のタイヤ保守管理装置。
【請求項10】
保守により回収したタイヤの状態に基づいて、前記保守時期判定部における保守時期の判定方法が調整されることを特徴とする請求項8または9に記載のタイヤ保守管理装置。
【請求項11】
請求項8から10のいずれか1項に記載のタイヤ保守管理装置と、
前記タイヤ保守管理装置による判定結果に基づいてタイヤの生産計画を生成するタイヤ生産計画装置と、
を備えることを特徴とするタイヤ保守システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ保守管理装置およびタイヤ保守システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に装着されたタイヤは、車両の運行等によって摩耗や損傷を受け、タイヤの摩耗状況等によって、タイヤ交換やタイヤローテーションによる保守が必要となる。例えば、定期的に実施されるタイヤ検査では、タイヤのトレッドにおける溝深さなどが検査され、検査結果に応じて、タイヤ交換やタイヤローテーションによる保守が実施される。
【0003】
特許文献1には、タイヤのトレッド摩耗を監視する監視システムが開示されている。この監視システムは、タイヤ摩耗を示す深さにおいてタイヤのトレッドに埋め込まれたRFID(Radio Frequency Identifier)タグを利用し、該RFIDからの信号を監視する。監視システムは、RFIDからの信号の有無によってトレッド摩耗を監視する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-060488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の監視システムでは、個々のタイヤのトレッドにRFIDを埋め込む製造工程や、RFIDの正常動作を確認する検査工程が必要であり、タイヤのコストが増加するという問題点があった。また、RFIDの故障に対応するために冗長構成を採用すると、さらにコストが増加してしまう。
【0006】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、走行環境に基づいてタイヤの保守時期を判定することができるタイヤ保守管理装置およびタイヤ保守システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様はタイヤ保守管理装置である。タイヤ保守管理装置は、車両の走行環境を取得する走行環境取得部と、前記走行環境取得部により取得した走行環境に基づいて、車両のタイヤの保守時期を判定する保守時期判定部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また本発明の別の態様はタイヤ保守システムである。タイヤ保守システムは、複数車両を所有するユーザの車両情報装置と、それら複数車両のタイヤの保守者の保守情報装置と、を備え、前記車両情報装置は、前記保守情報装置へ複数車両の走行環境を提供し、前記保守情報装置は、走行環境に基づいて複数車両のタイヤの保守時期を判定し、前記車両情報装置へ伝えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、走行環境に基づいてタイヤの保守時期を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】タイヤ保守システムの概要を説明するための模式図である。
図2】実施形態1に係るタイヤ保守管理装置を含むタイヤ保守システムの構成を示すブロック図である。
図3】走行環境記憶装置で記憶する走行環境情報の例を示す図表である。
図4】保守時期の判定について説明するための模式図である。
図5図5(a)および図5(b)はタイヤの偏摩耗の一例について説明するための模式図である。
図6】報知情報の内容を示す図表である。
図7】タイヤの保守時期の判定処理手順を示すフローチャートである。
図8】処理部において走行改善案生成部を設けた構成を示すブロック図である。
図9】実施形態2に係るタイヤ保守管理装置を含むタイヤ保守システムの構成を示すブロック図である。
図10】記憶されるタイヤごとの利用履歴の例を示す図表である。
図11】実施形態3に係るタイヤ保守管理装置を含むタイヤ保守システムの構成を示すブロック図である。
図12】報知情報の内容を示す図表である。
図13】実施形態4に係るタイヤ保守管理装置を含むタイヤ保守システムの構成を示すブロック図である。
図14】車両の運行予定の一例を示す図表である。
図15】保守計画の一例を示す図表である。
図16】実施形態5に係るタイヤ保守管理装置を含むタイヤ保守システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図1から図16を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0012】
図1は、タイヤ保守システム100の概要を説明するための模式図である。タイヤ保守システム100は、車両に搭載された走行環境記憶装置1と、走行環境情報に基づいて保守時期を判定するタイヤ保守管理装置3と、1または複数の車両の運行を管理する運行管理装置4とを備える。また、タイヤ保守システム100は、タイヤを検査するタイヤ検査装置2を備えていてもよい。
【0013】
タイヤの保守時期の判定では、現時点においてタイヤの保守が必要となっているか否かの判定、および将来における保守時期を判定することが含まれる。タイヤの保守は、例えばタイヤ交換およびタイヤローテーションである。タイヤ保守管理装置3で判定されたタイヤの保守時期に基づいて、タイヤの生産計画やタイヤ保守計画が生成される。
【0014】
走行環境記憶装置1で取得された車両の走行環境情報に基づいて、タイヤごとの利用履歴を記憶し、タイヤの保守時期を判定することができる。個々のタイヤを識別するためにRFIDを用いてもよい。
【0015】
タイヤの保守は、車両について予め定められた保守条件および当該保守条件を満たす場合にタイヤへ施すべき保守の内容によって、決定されるようにしてもよい。ここで保守の内容には、車両に関してタイヤ交換およびタイヤローテーションを行うことと、回収された使用済タイヤに関して再生処理および廃棄処分とすることとが含まれる。
【0016】
また、タイヤ保守管理装置3は、運行管理装置4から取得した車両の運行予定を利用してタイヤの保守計画を立てるようにしてもよい。さらに、タイヤ保守管理装置3は、運行管理装置4から取得した運行予定に保守予定を組み込んで、運行管理装置4へ共有可能に提供するようにしてもよい。
【0017】
また、タイヤ保守管理装置3は、期間的に幅のある保守時期を判定し、早期の時点での保守の要望または指示をユーザから受け付けた場合に、該ユーザに特典を付与するようにしてもよい。付与される特典は、例えば将来における保守費用の割引や、交換した後の新品タイヤに対する期限付き無償保証などとする。
【0018】
(実施形態1)
図2は、実施形態1に係るタイヤ保守管理装置3を含むタイヤ保守システム100の構成を示すブロック図である。タイヤ保守システム100は、走行環境記憶装置1、タイヤ検査装置2、タイヤ保守管理装置3、運行管理装置4、タイヤ生産計画装置5およびタイヤ保守計画装置6等を備える。
【0019】
走行環境記憶装置1は、例えばデジタルタコグラフやドライブレコーダ等であり、車両に搭載されて車両の走行環境を計測し記憶する装置である。走行環境記憶装置1は、例えば車両の荷重や路面等の走行環境に関する情報(以下、走行環境情報という。)を記憶する。
【0020】
図3は、走行環境記憶装置1で記憶する走行環境情報の例を示す図表である。走行環境情報には、車両自体の物理量である車重や軸重、並びに車両の運用情報である走行速度、走行距離および加速度などが含まれる。車重は車両の積載物を含む重量であり、軸重は各車軸におけるタイヤの地面に対する圧力であり、これらはタイヤに対する負荷となる。走行速度、および走行距離等の情報は、運用時にタコメーターにより取得されるものとする。また加速度は、前後、左右、上下の各方向における加速度である。前後方向の加速度はタコメーターの情報から算出し得るところ、前後方向も含めて左右および上下方向の加速度は、各方向の加速度を計測する加速度ピックアップ等の計測器によって取得することができる。
【0021】
また走行環境情報は、外気温、降雨の有無、降雨量、並びに走行した路面に関する情報などの外部環境に関する情報を含む。降雨の有無および降雨量は、例えば雨滴感知センサによって感知される情報に基づいて取得される。また、路面に関する情報(以下、「路面情報」と表す。)は、路面の凹凸の程度、カーブの多寡および路面温度などの路面状態の情報であり、さらには路面のすべり摩擦係数などの路面の特性を表す物理量を含んでいてもよい。路面情報における物理量に関しては、例えば、車両の運動データをもとにリアルタイムで摩擦係数を推定するなど、公知の技術を用いて計測することができる。
【0022】
また走行環境情報は、タイヤ温度およびタイヤ空気圧等のタイヤに関する情報を含む。タイヤ温度およびタイヤ空気圧は、例えばタイヤのエアバルブに取り付けられたセンサにより計測される。タイヤ温度およびタイヤ空気圧は、無線通信等によりセンサから送信され、走行環境記憶装置1で受信して記憶される。
【0023】
タイヤ検査装置2は、タイヤのトレッドに設けられた溝の深さ、タイヤの損傷状況、およびタイヤのゴム硬度などを検査する装置である。タイヤのゴム硬度は、一般的な硬さ検査方法に基づいて測定される。作業者が計測器具やカメラ、目視等によって、溝の深さ、タイヤの損傷状況、およびタイヤのゴム硬度等の検査データを計測し、タイヤ検査装置2は、作業者が入力する検査データを記憶するものであってもよい。また、タイヤ検査装置2は、機械的あるいは光学的な方法によって各検査データを計測し記憶する専用の計測装置であってもよい。
【0024】
タイヤ保守管理装置3は、例えばPC(パーソナルコンピュータ)等の情報処理装置であり、処理部30、記憶部35および通信部36を備える。処理部30は、走行環境取得部30a、検査結果取得部30b、保守時期判定部30c、報知情報生成部30dを有し、タイヤの保守に関わる情報の取得および送出や各種の演算処理等を行う。処理部30における各部は、ハードウェア的には、コンピュータのCPUをはじめとする電子素子や機械部品などで実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラムなどによって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろな形態で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0025】
記憶部35は、例えばSSD(Solid State Drive)、ハードディスク、CD-ROM、DVD等によって構成される記憶装置である。通信部36は、走行環境記憶装置1、タイヤ検査装置2、運行管理装置4およびタイヤ生産計画装置5等との間で無線または有線によって通信接続され、これらの装置との間で各種データを送受信する。
【0026】
処理部30の走行環境取得部30aは、走行環境記憶装置1から上述の走行環境情報を取得する。走行環境情報は、定期的に取得されて記憶部35に蓄積される。車両の使用頻度が高く、交換やローテーションなどのタイヤ保守作業の周期が短い場合には、例えば毎日あるいは毎週のように頻繁に走行環境情報を取得する。車両の使用頻度が低く、交換やローテーションなどのタイヤ保守作業の周期が長い場合には、例えば毎月あるいは数か月毎に走行環境情報を取得する。
【0027】
検査結果取得部30bは、定期的に実施されるタイヤの検査で計測された検査データを取得する。タイヤ検査装置2で取得された検査データは、当該検査装置をタイヤ保守管理装置3に通信接続し、通信部36を介して検査結果取得部30bで取得されるようにするとよい。また、作業者がタイヤの検査で取得した検査データを、タイヤ保守管理装置3の入力手段(図示略)、例えばキーボード等を用いて入力するようにしてもよい。タイヤ検査の結果、タイヤの表面に損傷が生じている場合、タイヤのバーストにつながる虞があり、即座にタイヤ交換による保守の必要性がある場合もある。またタイヤの表面における損傷が軽微であり、将来におけるタイヤ交換による保守の時期を判定するようにしてもよい。
【0028】
保守時期判定部30cは、走行環境情報および検査データに基づいて、タイヤの交換やローテーション等のタイヤの保守時期を判定する。図4は、保守時期の判定について説明するための模式図である。保守時期判定部30cは、保守時期の判定において、現時点で保守すべき否かを判定し、また現時点でのタイヤの状況から将来におけるタイヤの保守時期を判定する。保守時期判定部30cは、走行環境情報に基づいて、タイヤを摩耗させる負荷となる物理量からタイヤの摩耗状況を推定する。また、保守時期判定部30cは、検査データにおける溝深さ等のデータに基づいて、摩耗状況および損傷状況を取得する。保守時期判定部30cは、摩耗状況として、タイヤの摩耗量や、摩耗した後のタイヤの溝深さの残量等を推定または取得する。また、保守時期判定部30cは、損傷状況として、タイヤが受けた損傷の大きさや深さ等を取得する。
【0029】
また保守時期判定部30cは、摩耗および損傷の進行速度を算出する。摩耗および損傷の進行速度は、前回取得された摩耗状況および損傷状況と、現時点で取得された摩耗状況および損傷状況との差分を、前回と現時点との間の時間で除算して得られる。保守時期判定部30cは、摩耗および損傷の進行速度に基づいて、将来におけるタイヤの保守時期を判定する。タイヤの損傷の場合、バーストのリスクがあるためにすぐにタイヤ交換する必要がある損傷と、状況を見て交換する必要がある損傷とがある。保守時期判定部30cは、バーストのリスクがあるためにすぐにタイヤ交換する必要がある損傷がタイヤに生じている場合には、現時点において即時にタイヤ交換の保守をすべきと判定する。実際に、このような即時交換の判定がされたタイヤは、最寄りの保守者において、交換スケジュールが組まれて、早期に交換される。尚、タイヤの保守者には、タイヤメーカーの保守部門や、専門の保守事業者、ユーザにおける保守業者や保守部門などが含まれる。
【0030】
走行環境情報に基づくタイヤの摩耗状況の推定について説明する。車重および軸重はタイヤに対する負荷となり、これらの物理量が大きいほどタイヤの摩耗量も大きくなる。また、車両の加速度の変化に基づいて、車重および軸重を補正して摩耗状況を推定することができる。例えば、前後方向の加速度が生じると、前輪または後輪における軸重が変化し、左右方向の加速度が生じると、車両の左側と右側とで軸重が変化する。さらに、上下方向の加速度によって全体的に軸重が変化する。例えば、車両の加減速や左右へのハンドル操作の頻度が大きい走行環境では、タイヤの摩耗量も大きくなる傾向にある。
【0031】
タイヤの摩耗量は、走行距離が長くなるほど大きくなる。また走行速度が速くなるほど、タイヤの回転速度が速くなってタイヤの接地面の動きが大きくなり、発熱が大きくなるため、タイヤの摩耗量が大きくなる。また、タイヤの摩耗量は、路面状態によっても影響を受ける。路面状態は、例えば個々の道路における路面のすべり摩擦係数などの物理係数を考慮すべきであるが、平均的あるいは典型的な物理係数を用いてもよい。また、晴天時の乾いた路面状態と、雨天時の濡れた路面状態とで、物理係数を変えてタイヤの摩耗量が推定され得る。なお、路面が乾いているか濡れているかが直接検知できない場合でも雨滴感知センサによって感知される情報によって、路面が乾いているか濡れているかを推定することができる。
【0032】
また、タイヤやリムに取り付けられたセンサにより計測されるタイヤ温度およびタイヤ空気圧などの物理量を加味して、タイヤの摩耗量を推定することができる。タイヤ温度によってタイヤのゴム硬度が変化すること、および、タイヤ空気圧の大小によってタイヤのトレッドと路面との接触面積が変化することが、タイヤの摩耗量の推定に加味される。タイヤの温度は、直接検知されない場合にも、外気温および路面温度などの情報を代替的に用いることもできる。なお、タイヤのゴム硬度は、経年劣化やタイヤ検査における測定データにより、ベースとなる通常温度での値を適宜更新していくとよい。
【0033】
このように、タイヤの摩耗量は、車重や軸重、加速度、走行速度、走行距離などの走行環境情報を変数とし、理論的あるいは実験的に得られる関数に基づいて推定することができる。タイヤの摩耗量を推定する関数は、定式化されていてもよいし、関数表のように各パラメータとタイヤの摩耗量との関係を示すデータとして用意され、データを補完して摩耗量が推定されるものであってもよい。また、保守により回収したタイヤの状態(実際の摩耗量や偏摩耗量など)に基づいて、タイヤの摩耗量を推定する関数を修正し、タイヤの保守時期の判定方法を調整するようにしてもよい。
【0034】
また、タイヤの摩耗状況として、タイヤの偏摩耗量を推定する。図5(a)および図5(b)はタイヤの偏摩耗の一例について説明するための模式図である。図5(a)はタイヤの外観斜視図に相当しており、図5(b)はタイヤの側面図におけるトレッドの一部の拡大図に相当している。タイヤの偏摩耗は、図5(a)および図5(b)に示す例に限られるものではない。偏摩耗は、図5(a)に示すタイヤの肩部分Aにおいて摩耗が特に進むことで発生する。この偏摩耗は、特に操舵軸となる前輪側で発生し易く、車両内で前後のタイヤを入れ替えるタイヤローテーションによって、各タイヤの偏摩耗を平均化する。
【0035】
また偏摩耗は、図5(b)に示すタイヤのトレッドにおけるブロックの周方向における蹴り出し側の角部分Bにおいて摩耗が特に進むことで発生する。この偏摩耗は、トー・ヒール摩耗と呼ばれることがあるが、状況に応じて車両の左右でタイヤを入れ替えたり、前後でタイヤを入れ替えるタイヤローテーションによって、各タイヤの偏摩耗を平均化する。
【0036】
タイヤの偏摩耗は、左右へのハンドル操作、および車両の加減速などが繰り返されることで進行する。保守時期判定部30cは、走行環境情報における車重、軸重、加速度(左右、前後、上下の各方向における加速度)などに基づいてタイヤの偏摩耗量を推定することができる。
【0037】
一方、タイヤ検査により計測される溝深さのデータは、現時点におけるタイヤの摩耗状況を示している。タイヤ検査では、タイヤのトレッドにおける溝に設けられたスリップサインが表われるまでに摩耗が進んでいるか否かが判定される。定期的に実施されるタイヤ検査によって、おおよその摩耗の進行速度が分かり、将来におけるタイヤの交換時期が推定され得る。また、タイヤ検査によりタイヤの偏摩耗の状況が判明し、現時点においてタイヤローテーションをすべきか否かが判定される。定期的に実施されるタイヤ検査によって、おおよその偏摩耗の進行速度が分かり、将来におけるタイヤローテーションの時期が推定され得る。
【0038】
報知情報生成部30dは、車両およびタイヤの識別番号とともに、タイヤの摩耗状況などを示す報知情報を生成する。図6は、報知情報の内容を示す図表である。車両識別情報は車両に固有である。摩耗状況は、車両に取り付けられているタイヤの識別情報、位置および摩耗状況等を含む。損傷状況は、タイヤの識別情報、位置および損傷状況を含む。保守情報は、現時点における保守の要否、および保守内容(タイヤ交換またはタイヤローテーション)を含む。また、報知情報には、タイヤに対する保守が必要であると推定される保守推定時期が含まれる。
【0039】
さらに報知情報には、現時点で保守した場合におけるメリットを示す保守メリット情報が含まれる。保守メリット情報は、例えばタイヤ交換やタイヤローテーションによる燃費、制動距離、タイヤ寿命、タイヤ故障率および車両稼働率の改善程度などが含まれる。保守メリット情報は、車両のユーザにとってタイヤ保守によって受けられる様々なメリットに関する情報が含まれる。報知情報生成部30dは、タイヤの摩耗状況、損傷状況、保守の要否および保守推定時期などの各情報を保守時期判定部30cから取得し、保守メリット情報を加えて報知情報を生成する。報知情報生成部30dは、摩耗状況および損傷状況に応じた燃費、制動距離、タイヤ寿命、タイヤ故障率および車両稼働率などを求め、例えば新品タイヤと交換した場合に、これらの量が改善される改善程度を算出する。
【0040】
運行管理装置4は、ユーザが保有する自車両の運行を管理するために用いるPC等の情報処理装置である。運行管理装置4では、自車両の日毎の行先や車庫への帰還予定などの運行計画が作成され、管理されている。運行管理装置4は、タイヤ保守管理装置3から受信した報知情報に基づき、自車両の保守に関わる情報を取り込み、運行計画への反映および運行計画の修正が行われる。
【0041】
運行管理装置4は、或る一車両のタイヤ交換およびタイヤローテーション等の保守が現時点で必要である場合に、当該車両の運行計画の策定において、タイヤの保守が必要である旨をユーザに提供する。また、運行管理装置4は、或る一車両のタイヤ交換およびタイヤローテーション等の保守が将来における或る時点で必要である場合に、当該車両の運行計画の策定において、タイヤの保守が必要となる時点をユーザに提供する。ユーザは、運行管理装置4を用いて自車両の運行を計画する際に、提供される保守に関する情報をもとに、運行計画に保守計画を加える。
【0042】
タイヤ生産計画装置5は、タイヤの生産を管理するために用いるPC等の情報処理装置である。タイヤ生産計画装置5では、新品タイヤの生産および使用済タイヤの再生に関する計画が作成され、管理されている。タイヤ生産計画装置5は、タイヤ保守管理装置3から受信した報知情報におけるタイヤ交換に関する情報に基づき、タイヤの供給時期や供給数量が割り出され、生産計画を生成する。
【0043】
またタイヤ生産計画装置5は、使用済タイヤの回収時期および回収数量に基づき、使用済タイヤの再生処理計画、再生タイヤの供給時期などが策定される。回収したタイヤの再生方法には、タイヤの溝が浅くなった時点で、さらに溝を掘りなおして新品状態の排水性やグリップ力を維持させるリグループするやり方と、使用済タイヤを更生するプレキュア方式とリモールド方式の2種類の更生方法が用いられる。プレキュア方式は、あらかじめ加硫したパターンを刻まれたトレッドゴムを貼り付け、加硫缶の中で低温で加硫接着する。プレキュア方式は、供給するタイヤが多種類に亘り、タイヤの各種類毎の更生が少量である場合に適する。尚、再生タイヤとは、リグループの方法、並びにプレキュア方式およびリモールド方式の2種類の更生方法によって再生されたタイヤを云うものとする。また、プレキュア方式およびリモールド方式の2種類の更生方法によって更生されたタイヤは、更生タイヤというものとする。
【0044】
リモールド方式は、加硫していないトレッドゴムを貼り付け、パターンを刻んだ金型に入れて高温で加硫する。リモールド方式は、使用済タイヤの更生が大量である場合に適している。
【0045】
タイヤ生産計画装置5では、再生タイヤの供給を受けるユーザとの再生タイヤに関わる契約条件や、需要見通しなどを考慮して、使用済タイヤに対する再生方法が決定される。使用済タイヤは、タイヤ生産計画装置5で策定された再生計画に基づいて、再生された後、再生タイヤとして供給される。
【0046】
タイヤ保守計画装置6は、運行管理装置4において運行計画に加えられた保守計画に基づいて、タイヤ交換およびタイヤローテーション等の保守作業の時期、保守業者の選定、保守費用などを決定し、タイヤ保守作業見積りを立案する。タイヤ保守計画装置6は、立案されたタイヤ保守作業見積りを運行管理装置4へ提供する。運行管理装置4側では、提供されたタイヤ保守作業見積りに対して発注するか否かが決定され、発注を依頼するか否かの返答をタイヤ保守計画装置6へ送出する。
【0047】
次にタイヤ保守システム100のタイヤ保守管理装置3における動作について説明する。図7は、タイヤの保守時期の判定処理手順を示すフローチャートである。タイヤ保守管理装置3の処理部30は、走行環境取得部30aにより対象車両の走行環境情報を取得する(S1)。保守時期判定部30cは、取得した走行環境情報に基づいて対象車両の全てのタイヤの摩耗状況を推定する(S2)。タイヤの摩耗状況は、上述のように車重、軸重、走行速度、走行距離等の走行環境情報を変数とし、理論的あるいは実験的に得られる関数に基づいて推定することができる。また現時点でのタイヤの摩耗状況は、前回の時点におけるタイヤの摩耗状況に、前回の時点から現時点までの走行環境情報によって算出されるタイヤの摩耗を加えることによって推定される。
【0048】
保守時期判定部30cは、全てのタイヤの摩耗が所定値以内であるか否かを判定し(S3)、所定値以内ではないと判定した場合(S3:NO)、現時点でタイヤ交換の保守をすべきであると判定する(S4)。ここで、所定値は、例えばタイヤのトレッドにおける溝深さについて、新品タイヤのトレッド面からスリップラインまでの溝深さであるとする。また、所定値は、新品タイヤのトレッド面からスリップラインまでの溝深さに1未満の係数を乗算し、安全サイドに設定される値であってもよい。
【0049】
保守時期判定部30cは、ステップS3において全てのタイヤの摩耗が所定値以内であると判定した場合(S3:YES)、全てのタイヤについて摩耗の進行速度を算出する(S5)。保守時期判定部30cは、算出した摩耗の進行速度に基づいて摩耗が所定値以上となる時期を判定する(S6)。尚、摩耗の進行速度は、前回取得された摩耗状況と、現時点で取得された摩耗状況との差分を、前回と現時点との間の時間で除算して得られる。
【0050】
保守時期判定部30cは、ステップS4およびS6の後、全てのタイヤについて摩耗のばらつきが所定値以内であるか否かを判定し(S7)、所定値以内ではないと判定した場合(S7:NO)、現時点でタイヤローテーションの保守をすべきであると判定する(S8)。ここで、所定値は、例えばタイヤのトレッドにおける溝深さの10%~20%程度とし、新品タイヤが使用済みとなるまでに数回のタイヤローテーションが行われるようにすればよい。
【0051】
保守時期判定部30cは、ステップS7においてタイヤの摩耗のばらつきが所定値以内であると判定した場合(S7:YES)、タイヤの摩耗のばらつきの進行速度を算出する(S9)。保守時期判定部30cは、算出した摩耗の進行速度に基づいて摩耗のばらつきが所定値以上となる時期を判定する(S10)。尚、摩耗のばらつきの進行速度は、前回取得された摩耗状況におけるばらつきと、現時点で取得された摩耗状況におけるばらつきとの差分を、前回と現時点との間の時間で除算して得られる。
【0052】
タイヤ保守管理装置3は、保守時期判定部30cにおけるタイヤの保守時期の判定処理によって、タイヤ交換およびタイヤローテーションの保守時期を判定し、ユーザへ提供することができる。タイヤ保守管理装置3は、車両から走行環境情報を任意のタイミングに取得し、保守時期を判定してユーザに提供することができる。
【0053】
図7に示すタイヤの保守時期の判定処理手順は、タイヤの偏摩耗に対するタイヤ交換およびタイヤローテーションによる保守にも、同様に適用できる。この場合、保守時期判定部30cは、取得した走行環境情報に基づいて、ステップS2においてタイヤの摩耗状況として偏摩耗量を推定し、ステップS3においてタイヤの偏摩耗量が所定値以上であるか否かを判定する。保守時期判定部30cは、ステップS3からS10までの各処理において偏摩耗量を対象として、演算および判定処理を実行することで、タイヤの偏摩耗に対する保守時期を判定する。
【0054】
また図7に示すタイヤの保守時期の判定処理手順は、タイヤ検査装置2から取得した検査データに基づく保守時期の判定処理にも同様に適用できる。この場合、ステップS1において検査結果取得部30bによってタイヤの検査データを取得する。保守時期判定部30cは、ステップS2において、タイヤの摩耗状況として取得した検査データを用い、ステップS3においてタイヤの摩耗が所定値以上であるか否かを判定する。保守時期判定部30cは、ステップS3からS10までの各処理において検査データに基づいて、演算および判定処理を実行することで、タイヤの保守時期を判定する。また、保守時期判定部30cは、タイヤ検査装置2から偏摩耗に関する検査データを取得し、タイヤの偏摩耗に対する保守時期を判定することができる。
【0055】
また図7に示すタイヤの保守時期の判定処理手順は、タイヤ検査装置2から取得したタイヤの損傷状況に関する検査データに基づく保守時期の判定処理にも同様に適用できる。この場合、ステップS1において検査結果取得部30bによってタイヤの検査データを取得する。保守時期判定部30cは、ステップS2において、タイヤの損傷状況として取得した検査データを用い、ステップS3においてタイヤの損傷が所定量以上であるか否かを判定する。保守時期判定部30cは、ステップS3からS10までの各処理において検査データに基づいて、演算および判定処理を実行することで、タイヤの保守時期を判定する。
【0056】
タイヤ保守管理装置3の保守時期判定部30cは、保守により回収したタイヤの状態(実際の摩耗量や偏摩耗量など)に基づいて、タイヤの摩耗量を推定する関数を修正し、タイヤの保守時期の判定方法を調整することで、判定の精度を高めることができる。
【0057】
運行管理装置4側では、タイヤの保守に関する報知情報を取得し、報知情報に基づいて、車両の運行計画に保守計画を反映させることができる。運行管理装置4は、報知情報に現時点でのタイヤ交換やタイヤローテーションの保守が必要であるとの情報が含まれている場合には、ユーザへ当該情報を提示するなどして、運行計画の見直しを促すことができる。また、運行管理装置4は、報知情報に将来におけるタイヤ交換やタイヤローテーションの保守時期等の情報が含まれている場合には、ユーザへ当該情報を提示するなどして、運行計画への保守計画の反映を早い段階で行うことができる。
【0058】
また、運行管理装置4側では、報知情報に含まれる保守メリット情報に基づいてタイヤの保守計画を立案することができる。例えば、タイヤの保守によって燃費の向上が期待できる場合、車両の運行が繁忙期に入る前にタイヤの保守を済ませて、車両の運行効率を高めつつ、燃費を抑制するような計画を立てることができる。また、タイヤの保守によってタイヤ故障率の低下が期待できる場合、車両の故障リスクを低減すべく早期(タイヤ寿命まで余裕がある状態)にタイヤを保守することをユーザに知得させることができる。
【0059】
走行環境記憶装置1および運行管理装置4は、1または複数の車両を所有するユーザ側における車両情報装置を構成する。また、タイヤ保守管理装置3はタイヤのメーカーを含む保守者側における保守情報装置に相当する。ユーザ側の車両情報装置である走行環境記憶装置1から、保守者側の保守情報装置であるタイヤ保守管理装置3へ車両の走行記録である走行環境情報が提供される。保守者側のタイヤ保守管理装置3では、走行環境情報に基づいて、1または複数の車両におけるタイヤの保守時期を判定し、ユーザ側の車両情報装置である運行管理装置4へ伝える。これにより、タイヤ保守システム100は、ユーザ側における車両情報装置と保守者側における保守情報装置とで、車両の走行記録である走行環境情報およびタイヤの保守時期を共有し活用することができる。
【0060】
タイヤ生産計画装置5では、タイヤ保守管理装置3での保守時期の判定結果に基づいて、新品タイヤが必要となる時期および必要数などを予測し、新品タイヤの生産計画を生成することができる。また、タイヤ生産計画装置5では、使用済タイヤが発生する時期および発生数などを予測することができ、タイヤの再生計画を生成することができる。
【0061】
タイヤ保守計画装置6では、運行管理装置4において運行計画に加えられた保守計画に基づいて、タイヤ交換およびタイヤローテーション等の保守作業の時期、保守者の選定、保守費用などを決定し、タイヤ保守作業見積りを立案することができる。運行管理装置4側では、タイヤ保守計画装置6から提供されたタイヤ保守作業見積りに対して発注するか否かを決定し、発注を依頼するか否かの返答をタイヤ保守計画装置6へ送出することができる。
【0062】
図8は、処理部30において走行改善案生成部32を設けた構成を示すブロック図である。図8に示す構成では、処理部30にルート情報取得部31および走行改善案生成部32を備える。ルート情報取得部31は、運行管理装置4から車両が走行したルート情報を取得する。走行改善案生成部32は、運行管理装置4から取得したルート情報に対応する走行環境情報に基づいて推定されたタイヤの摩耗状況を保守時期判定部30cから取得する。
【0063】
走行改善案生成部32は、運行管理装置4から取得したルート情報と異なり、タイヤの摩耗状況が良くなり、タイヤの保守時期が延びる方向に改善されるルートをサーチする。走行改善案生成部32は、タイヤの摩耗状況が良くなるルートが見つかった場合、そのルート情報を走行改善案として生成し、運行管理装置4へ通知する。タイヤ保守管理装置3は、タイヤの摩耗状況の推定方法を保守時期の判定に用いるだけでなく、ユーザにとって保守時期が延びてメリットとなるルート情報を提供することができる。また、走行改善案生成部32は、ルート情報に例えばルートの走行時間などの情報を含めて運行管理装置4に通知するようにしてもよい。
【0064】
(実施形態2)
図9は実施形態2に係るタイヤ保守管理装置3を含むタイヤ保守システム100の構成を示すブロック図である。実施形態2に係るタイヤ保守管理装置3は、タイヤ毎に利用履歴を記憶し、記憶した利用履歴に基づいて保守時期を判定する。個々のタイヤには、タイヤの識別情報と利用履歴とを確実に対応させるためにRFIDタグ11が取り付けられていることが好ましい。実施形態2に係るタイヤ保守システム100について以下に特に説明する以外の構成および動作は、実施形態1において説明した構成および動作と同様であり、記載の簡潔のため説明を省略する。
【0065】
個々のタイヤに取り付けられたRFIDタグ11は、各タイヤに固有の識別情報を与えており、該識別情報が走行環境記憶装置1に読み込まれる。また、タイヤの識別情報に対応して各タイヤの位置(右前、左前、右後、左後など)も走行環境記憶装置1で取得されている。走行環境記憶装置1は、車両の運行に伴って走行環境情報を取得し記憶する。
【0066】
タイヤ保守管理装置3の走行環境取得部30aは、タイヤの識別情報、タイヤの位置を付加した走行環境情報を走行環境記憶装置1から取得する。図10は、記憶されるタイヤごとの利用履歴の例を示す図表である。走行環境取得部30aは、タイヤの識別情報に対応させて、車両の1回または複数回の運行ごとのタイヤ位置、走行環境情報をタイヤごとの利用履歴として記憶部35に記憶する。尚、車両における各タイヤの位置は、対応する各タイヤの識別情報とともに、車両に関する情報として走行環境情報に含まれていてもよい。また、記憶部35は、本発明における利用履歴記憶部に相当する。
【0067】
タイヤ保守管理装置3の保守時期判定部30cは、記憶部35から読み出したタイヤごとの利用履歴に基づいて、タイヤの保守時期を判定する。保守時期判定部30cは、記憶部35から読み出したタイヤごとの利用履歴における走行環境情報に基づいて、実施形態1と同様に、タイヤの保守時期を判定することができる。
【0068】
また、タイヤごとの利用履歴には、タイヤの運用期間の情報が含まれていてもよい。タイヤの摩耗状況が軽微である場合でも、運用期間が長くゴムが経年劣化していることもある。保守時期判定部30cは、運用期間がゴムの経年劣化に基づく耐用年数を超えている場合にタイヤ交換の保守が必要であると判定する。また、保守時期判定部30cは、将来におけるゴムの経年劣化に基づく耐用年数に到達する時期を判定する。
【0069】
車両の運行時にタイヤに掛かっていた荷重は、走行環境情報の車重、軸重および加速度(前後、左右および上下方向の各加速度)に基づいて分析することができる。タイヤごとの利用履歴として、分析後の荷重データを含むようにしてもよい。保守時期判定部30cは、車重や軸重などの車両の情報を用いずに、分析後の荷重データを用いてタイヤの保守時期を判定することができる。
【0070】
運行管理装置4は、保守メリット情報を含む報知情報をタイヤ保守管理装置3から受信し、運行計画に保守計画を反映させることができる。また、タイヤ生産計画装置5では、タイヤ保守管理装置3での保守時期の判定結果に基づいて、新品タイヤの生産計画や使用済タイヤの再生計画を生成することができる。
【0071】
タイヤ保守計画装置6では、運行管理装置4において運行計画に加えられた保守計画に基づいて、タイヤ交換およびタイヤローテーション等の保守作業の時期、保守者の選定、保守費用などを決定し、タイヤ保守作業見積りを立案することができる。運行管理装置4側では、タイヤ保守計画装置6から提供されたタイヤ保守作業見積りに対して発注するか否かを決定し、発注を依頼するか否かの返答をタイヤ保守計画装置6へ送出することができる。
【0072】
走行環境記憶装置1および運行管理装置4は、1または複数の車両を所有するユーザ側における車両情報装置を構成する。また、タイヤ保守管理装置3はタイヤのメーカーを含む保守者側における保守情報装置に相当する。ユーザ側の車両情報装置である走行環境記憶装置1から、保守者側の保守情報装置であるタイヤ保守管理装置3へタイヤごとの利用履歴を形成する走行環境情報が提供される。走行環境情報が提供されることによってタイヤごとの利用履歴が得られることを考慮すると、ユーザ側の車両情報装置から保守業者側の保守情報装置へタイヤごとの利用履歴が提供されているといえる。タイヤ保守管理装置3では、タイヤごとの利用履歴に基づいて、1または複数の車両におけるタイヤの保守時期を判定し、ユーザ側の車両情報装置である運行管理装置4へ伝える。これにより、タイヤ保守システム100は、ユーザ側における車両情報装置と保守業者側における保守情報装置とで、車両の走行記録である走行環境情報およびタイヤの保守時期を共有し活用することができる。
【0073】
(実施形態3)
図11は実施形態3に係るタイヤ保守管理装置3を含むタイヤ保守システム100の構成を示すブロック図である。実施形態3に係るタイヤ保守管理装置3における処理部30は、走行環境取得部30a、保守内容決定部30eおよび報知情報生成部30dを備える。また、個々のタイヤには、タイヤの識別情報と利用履歴とを確実に対応させるためにRFIDタグ11が取り付けられていることが好ましい。実施形態3に係るタイヤ保守システム100について以下に特に説明する以外の構成および動作は、実施形態1および2において説明した構成および動作と同様であり、記載の簡潔のため説明を省略する。
【0074】
実施形態2において説明したように、個々のタイヤに取り付けられたRFIDタグ11によって各タイヤに固有の識別情報を与えられる。また走行環境取得部30aは、タイヤの識別情報に対応させて、車両の1回または複数回の運行ごとのタイヤ位置、走行環境情報をタイヤごとの利用履歴として記憶部35に記憶される。また、記憶部35に記憶されるタイヤごとの利用履歴にはタイヤの運用期間、タイヤの再生回数などの情報が含まれている。尚、車両における各タイヤの位置は、対応する各タイヤの識別情報とともに、車両に関する情報として走行環境情報に含まれていてもよい。また、記憶部35は、本発明における利用履歴記憶部に相当する。
【0075】
保守内容決定部30eは、記憶部35から読み出したタイヤごとの利用履歴を用いて、タイヤの摩耗状況を推定し、走行距離および運用期間をタイヤごとの利用履歴から取得する。保守内容決定部30eが取得するタイヤの走行距離は、利用履歴に基づいて算出される、当該タイヤの運用開始から現時点までに走行した距離である。再生タイヤの走行距離は、タイヤが再生された後の最初の運用開始から現時点までに走行した距離とする。また、保守内容決定部30eが取得するタイヤの運用期間は、当該タイヤが生産されてから現時点までに経過した期間である。
【0076】
保守内容決定部30eは、車両ないし車両を保有するユーザについて予め定められた保守条件からタイヤに施すべき保守の内容を決定する。ここで保守条件は、タイヤの摩耗状況、走行距離および運用期間等について定められる条件である。保守の内容は、予め定められた保守条件を満たす場合にどのようにタイヤを保守するかを示す。例えばタイヤの摩耗状況について、スリップラインまで摩耗が進んでいるとの条件を満たす場合に、保守の内容を「タイヤ交換」とすることが予め定められる。また、車両の各タイヤの摩耗量のばらつきが所定値以上であるとの条件を満たす場合に、保守の内容を「タイヤローテーション」とすることなどが予め定められる。保守内容決定部30eは、保守の内容を「タイヤ交換」とする保守条件を満たすか否か判定することにより、タイヤの交換時期を判定している。
【0077】
また、タイヤの走行距離について、所定値(例えば1万km)を超えたとの条件を満たす場合に、保守の内容を「タイヤローテーション」とし、別の所定値(例えば2万km)を超えたとの条件を満たす場合に、保守の内容を「タイヤ交換」とすることなどが予め定められる。また、タイヤの運用期間について、所定値(例えば2年)を超えたとの条件を満たす場合に、保守の内容を「タイヤ交換」とすることなどが予め定められる。
【0078】
また、保守の内容には、使用済タイヤを再生処理または廃棄処分のいずれとするかについても定めるものであってもよい。例えば、再生タイヤの運用期間が再生前の運用期間を含めて所定値(例えば5年)を超えたとの条件を満たす場合に、保守の内容を「タイヤ交換かつタイヤを廃棄処分とする」ことなどが予め定められる。
【0079】
また、保守条件は、タイヤの再生処理の許容回数について定める条件であってもよい。例えば、タイヤの再生処理の回数が許容回数(例えば3回)に達していないとの条件を満たす場合に、タイヤ交換時における保守の内容を「再生処理」とすることが予め定められる。また、タイヤの再生処理の回数が許容回数(例えば3回)に達しているとの条件を満たす場合に、タイヤ交換時における保守の内容を「廃棄処分」とすることが予め定められる。
【0080】
図12は、報知情報の内容を示す図表である。報知情報には、車両識別情報、各タイヤの位置および識別情報が含まれる。また、報知情報には、保守情報として現時点における保守の要否、および保守の内容が含まれる。保守の内容には、実施する保守がタイヤ交換またはタイヤローテーションのいずれであるかの情報、使用済タイヤの処置が再生処理または廃棄処分のいずれであるかの情報が含まれる。
【0081】
タイヤ保守管理装置3は、タイヤごとの利用履歴を用いて保守の内容を決定し、ユーザへ提供することができる。タイヤ保守管理装置3は、タイヤごとの利用履歴を任意のタイミングに取得し、保守時期を判定してユーザに提供することができる。保守の内容にはタイヤの交換が含まれており、保守内容決定部30eは、タイヤの交換時期を判定してユーザへ提供することができる。
【0082】
また、タイヤ保守管理装置3は、タイヤごとの利用履歴に含まれる再生処理の回数が許容回数に達していない場合には再生処理する旨を決定し、許容回数に達している場合には廃棄処分する旨を決定する。これにより、タイヤ保守管理装置3は、許容回数に達していないタイヤの再生処理を促し、許容回数に達しているタイヤを確実に廃棄処分することができる。
【0083】
運行管理装置4は、報知情報をタイヤ保守管理装置3から受信し、運行計画に保守計画を反映させることができる。また、タイヤ生産計画装置5では、タイヤ保守管理装置3での保守時期の判定結果に基づいて、新品タイヤの生産計画や使用済タイヤの再生計画を生成することができる。
【0084】
タイヤ保守計画装置6では、運行管理装置4において運行計画に加えられた保守計画に基づいて、タイヤ交換およびタイヤローテーション等の保守作業の時期、保守者の選定、保守費用などを決定し、タイヤ保守作業見積りを立案することができる。運行管理装置4側では、タイヤ保守計画装置6から提供されたタイヤ保守作業見積りに対して発注するか否かを決定し、発注を依頼するか否かの返答をタイヤ保守計画装置6へ送出することができる。
【0085】
走行環境記憶装置1および運行管理装置4は、1または複数の車両を所有するユーザ側における車両情報装置を構成する。また、タイヤ保守管理装置3はタイヤのメーカーを含む保守者側における保守情報装置に相当する。ユーザ側の車両情報装置である走行環境記憶装置1から、保守者側の保守情報装置であるタイヤ保守管理装置3へタイヤごとの利用履歴を形成する走行環境情報が提供される。タイヤ保守管理装置3では、タイヤごとの利用履歴に基づいて、1または複数の車両におけるタイヤの保守の内容を決定し、ユーザ側の車両情報装置である運行管理装置4へ伝える。これにより、タイヤ保守システム100は、ユーザ側における車両情報装置と保守業者側における保守情報装置とで、タイヤの保守の内容を共有し活用することができる。
【0086】
(実施形態4)
図13は実施形態4に係るタイヤ保守管理装置3を含むタイヤ保守システム100の構成を示すブロック図である。実施形態4に係るタイヤ保守管理装置3における処理部30は、走行環境取得部30a、タイヤ状態推定部30f、運行予定取得部30gおよび保守計画生成部30hを備える。実施形態4に係るタイヤ保守システム100について以下に特に説明する以外の構成および動作は、実施形態1ないし3において説明した構成および動作と同様であり、記載の簡潔のため説明を省略する。
【0087】
タイヤ状態推定部30fは、タイヤの摩耗状況および利用状況を含むタイヤの状態を推定する。タイヤ状態推定部30fは、実施形態1と同様に車両の走行環境情報に基づいてタイヤの摩耗状況を推定する。また、タイヤ状態推定部30fは、実施形態2と同様に記憶部35に記憶したタイヤごとの利用履歴に基づいて、タイヤの摩耗状況を推定することができる。
【0088】
タイヤの利用状況は、例えば、ある期間内(1日や1週間など)に占める車両の運行によってタイヤが利用されている期間の割合を示すデューティ比である。デューティ比が高いほど、車両の運行が過密となっており、タイヤを保守する時間の余裕がない。一方、デューティ比が低いほど、車両の運行が過疎となっており、タイヤを保守する時間の余裕がある。
【0089】
運行予定取得部30gは、運行管理装置4から車両の運行予定を取得する。図14は車両の運行予定の一例を示す図表である。車両の運行予定は、車両識別情報、車両の運行日、当該運行日における出発場所、行先および帰着場所などの情報を含む。車両の運行予定には、経由地の情報なども含まれ、さらに適宜、出発場所、行先および帰着場所における発着時刻の情報なども含まれる。
【0090】
保守計画生成部30hは、タイヤの状態(タイヤの摩耗状況)に基づいて保守時期を判定する。保守の内容には、タイヤ交換およびタイヤローテーションが含まれる。保守計画生成部30hは、車両の運行予定において、予定が入っていない空き時間をサーチし、空き時間にタイヤを保守する予定を入れるようにしてタイヤの保守計画を立てる。また、保守計画生成部30hは、タイヤの利用状況を示すデューティ比が比較的に低い時期(例えば曜日や、1月のうちの初旬、中旬および下旬など)をサーチし、タイヤの保守予定を入れるようにする。
【0091】
また、保守計画生成部30hは、車両またはタイヤごとの保守作業者の割り振りが含まれた保守計画を生成するようにしてもよい。図15は、保守計画の一例を示す図表である。図15に示す保守計画では、図14に示す車両(識別番号12345)の運行予定の空き時間となっている2018年9月2日にタイヤ交換の保守予定が入り、保守作業者が割り振られ、作業場所などの情報が設定されている。保守計画は、複数の車両についての保守を含んで生成される。
【0092】
保守計画生成部30hは、生成した保守計画を運行管理装置4へ提供し、保守計画を共有する。また保守計画生成部30hは、運行管理装置4から取得した運行予定に生成した保守の予定を組み込んで運行管理装置4へ提供し、共有するようにしてもよい。
【0093】
タイヤ保守管理装置3は、取得した車両の運行予定、およびタイヤの状態に基づいて保守計画を生成し、ユーザへ提供することができる。タイヤ保守管理装置3は、車両の走行環境情報や、タイヤごとの利用履歴を取得することでタイヤの保守時期を判定し、保守計画を生成して、ユーザに提供することができる。
【0094】
タイヤ保守管理装置3は、車両またはタイヤごとの保守作業者を割り当てた保守計画を生成することで、保守計画の遂行性を高めることができる。また、タイヤ保守管理装置3は、タイヤ交換およびタイヤローテーションを含む保守計画を生成することができる。なお、タイヤ保守管理装置3は、ユーザへ複数の保守計画を提案し、ユーザに保守計画の時期を選択させるようにしてもよい。また、ユーザは、タイヤ保守管理装置3の提案した保守計画を変更することができ、その場合、変更された保守計画に基づき、タイヤ保守管理装置3は車両またはタイヤごとに保守作業者を割り当てる。
【0095】
走行環境記憶装置1および運行管理装置4は、1または複数の車両を所有するユーザ側における車両情報装置を構成する。また、タイヤ保守管理装置3はタイヤのメーカーを含む保守者側における保守情報装置に相当する。タイヤ保守管理装置3は、ユーザ側における車両情報装置である運行管理装置4から車両の運行予定を取得し、車両の空き時間をサーチするなどして、簡便に保守計画を立てることができる。また、タイヤ保守管理装置3は、生成した保守計画を共有可能な形式で運行管理装置4へ提供することで、互いに保守計画を一元的に扱うことができる。
【0096】
また、ユーザ側における車両情報装置である運行管理装置4は、保守者側における保守情報装置であるタイヤ保守管理装置3へ、複数車両の運行予定を提供する。タイヤ保守管理装置3は、複数車両のタイヤの保守時期を判定し、運行予定の中へ保守の予定を組み込んで、運行管理装置4との間で共有する。これにより、タイヤ保守システム100は、ユーザ側における車両情報装置と保守者側における保守情報装置との間で車両の運行予定と保守予定を共有し活用することができる。
【0097】
タイヤ生産計画装置5では、タイヤ保守管理装置3で生成された保守計画を取得し、新品タイヤの生産計画や使用済タイヤの再生計画を生成することができる。また、タイヤ保守計画装置6では、タイヤ保守管理装置3で生成された保守計画に基づいて、タイヤ交換およびタイヤローテーション等の保守作業の時期、保守作業者の選定、保守費用などを決定し、タイヤ保守作業見積りを立案することができる。運行管理装置4側では、タイヤ保守計画装置6から提供されたタイヤ保守作業見積りに対して発注するか否かを決定し、発注を依頼するか否かの返答をタイヤ保守計画装置6へ送出することができる。
【0098】
(実施形態5)
図16は実施形態5に係るタイヤ保守管理装置3を含むタイヤ保守システム100の構成を示すブロック図である。実施形態5に係るタイヤ保守管理装置3における処理部30は、走行環境取得部30a、保守時期判定部30c、報知情報生成部30d、保守時点受付部30jおよび特典付与部30kを備える。実施形態5に係るタイヤ保守システム100について以下に特に説明する以外の構成および動作は、実施形態1ないし4において説明した構成および動作と同様であり、記載の簡潔のため説明を省略する。
【0099】
処理部30における走行環境取得部30a、保守時期判定部30cおよび報知情報生成部30dは、実施形態1と同様に構成および動作するが、保守時期判定部30cは、車両のタイヤの状態に基づいて、期間的に幅のある保守時期を判定する。タイヤの状態は、タイヤの摩耗状況および利用状況を含み、実施形態4と同様に推定される。期間的に幅のある保守時期として、保守の時期としては早いがタイヤの摩耗状況が許容値に近づきつつある時期から、タイヤの摩耗状況が許容値まで進行し、直ぐに保守をすべき状況となる将来における限界的な時期までを考慮する。保守時期判定部30cは、例えば3月~6月分程度の期間的な幅のある保守時期を判定する。
【0100】
保守時点受付部30jは、期間的に幅のある保守時期のうちのどの時点で保守を受けたいかという要望または指示を受け付ける。特典付与部30kは、期間的に幅のある保守時期のうち、ユーザから早期の時点での保守を受け付けた場合に、該ユーザに対して特典を付与する。また特典付与部30kは、保守時期のうち、早期の時点での保守の要望または指示を受け付けた場合に特典を付与する旨を運行管理装置4へ通知する。特典は、例えば、将来における保守費用の割引や、交換した後の新品タイヤに対する期限付き無償保証などとする。尚、保守時点受付部30jにおいて、ユーザ側から自動発注の形態で保守を受け付けた場合や保守計画上前倒しとなる要望や指示を受け付けた場合にも、特典付与部30kは、ユーザへの特典付与の対象となるようにしてもよい。
【0101】
タイヤ保守管理装置3は、期間的に幅のある保守時期のうち早期の時点での保守に対して、ユーザに特典を付与することで、タイヤの保守時期が早めに設定される傾向とすることができる。ユーザにとっては、タイヤ交換やタイヤローテーションの保守が速くなることで支出が早期に生じてしまうものの、タイヤ故障率が低い段階で保守を受けられ、特典も受けられるメリットがある。
【0102】
タイヤのメーカーを含む保守業者にとっては、特典の付与による支出が発生するものの、タイヤ交換やタイヤローテーションの保守が速くなることで収入を早期に確保することができるメリットがある。
【0103】
走行環境記憶装置1および運行管理装置4は、1または複数の車両を所有するユーザ側における車両情報装置を構成する。また、タイヤ保守管理装置3はタイヤのメーカーを含む保守者側における保守情報装置に相当する。ユーザ側の車両情報装置である走行環境記憶装置1は、保守者側の保守情報装置であるタイヤ保守管理装置3へ、複数車両のタイヤの状態を把握するための情報として走行環境情報を提供する。タイヤ保守管理装置3は、複数車両のタイヤついて期間的に幅のある保守時期を判定して運行管理装置4へ報知する。タイヤ保守管理装置3は、保守時期における早期の時点での保守を受け付けた場合に、ユーザに特典を付与する旨を車両情報装置へ通知する。これにより、タイヤ保守システム100は、タイヤの保守時期が早めに設定される傾向とすることができる。
【0104】
以上、本発明の実施の形態をもとに説明した。これらの実施の形態は例示であり、いろいろな変形および変更が本発明の特許請求範囲内で可能なこと、またそうした変形例および変更も本発明の特許請求の範囲にあることは当業者に理解されるところである。従って、本明細書での記述および図面は限定的ではなく例証的に扱われるべきものである。
【符号の説明】
【0105】
3 タイヤ保守管理装置、 30a 走行環境取得部、 30b 検査結果取得部、
30c 保守時期判定部、 30d 報知情報生成部、 30e 保守内容決定部、
30f タイヤ状態推定部、 30g 運行予定取得部、
30h 保守計画生成部、 30j 保守時点受付部、 30k 特典付与部、
31 ルート情報取得部、 32 走行改善案生成部、
35 記憶部(利用履歴記憶部)、 5 タイヤ生産計画装置、
100 タイヤ保守システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16