(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】中空ペダル及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G05G 1/50 20080401AFI20230501BHJP
B60T 7/06 20060101ALI20230501BHJP
G05G 1/30 20080401ALN20230501BHJP
B60K 23/02 20060101ALN20230501BHJP
【FI】
G05G1/50
B60T7/06 B
G05G1/30 E
B60K23/02 A
(21)【出願番号】P 2019002391
(22)【出願日】2019-01-10
【審査請求日】2021-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000241496
【氏名又は名称】豊田鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】足立 康雄
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-018116(JP,A)
【文献】特開平08-258860(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0243234(US,A1)
【文献】特開2012-035755(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05G 1/50
B60T 7/06
G05G 1/30
B60K 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空構造を成した骨格部材の外表面を樹脂製外皮で覆って長尺に形成された中空ペダルであって、
前記骨格部材は、長手方向に交差する方向の断面形状がコ字状断面とされた一対の分割体が、各開放側を対向させて組み合わせることにより形成された閉断面構造を備え、
前記閉断面構造において互いに当接される前記各分割体の当接端縁部に
は、前記閉断面構造が形成された状態で、前記閉断面構造の外側から内側に渡って樹脂が被せられて形成された樹脂製当接部を備え、
該各樹脂製当接部は、互いが当接されることにより前記閉断面構造の外側から内側へ向けて前記樹脂製外皮の成形時の樹脂が流入するのを抑制する閉鎖構造を形成されている中空ペダル。
【請求項2】
請求項1において、
前記分割体には前記閉断面構造の内外を貫通する貫通孔が形成されており、
前記樹脂製当接部の樹脂は、前記貫通孔を形成した前記分割体の孔端縁部及び前記分割体の当接端縁部に係合した状態で、前記閉断面構造の内側となる前記分割体の内壁面に沿って設けられている中空ペダル。
【請求項3】
請求項2において、
前記樹脂製当接部の樹脂は、前記閉断面構造の内側となる前記分割体の内壁面、及び前記閉断面構造の外側となる前記分割体の外壁面の表面を経由して、前記分割体の前記貫通孔より前記当接端縁部側を環状に包囲している中空ペダル。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかにおいて、
前記閉断面構造の内側となる前記分割体の内壁面上に補強リブを備え、
該補強リブは、前記閉断面構造の断面
形状の変形を起こすような前記分割体の変形を抑制するように、一つの前記分割体の互いに隣接する前記樹脂製当接部同士を一体に連結している中空ペダル。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかにおいて、
ペダル操作時の操作面に対応する前記分割体の端部であり、前記閉断面構造とされた状態で形成される開口に、前記樹脂製当接部の樹脂により一体に形成され、前記開口を閉鎖する蓋を備える中空ペダル。
【請求項6】
請求項5において、
前記樹脂製外皮の樹脂により前記蓋の表面側にペダル操作時の操作面を成すペダルシートが形成されている中空ペダル。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかにおいて、
前記各分割体の互いに対向する面に、互いに正面で対向して貫通された対向孔をそれぞれ備え、
前記樹脂製当接部の樹脂により一体に形成され、前記各対向孔を形成した前記各分割体の孔端縁部に筒形状の一方の端部を沿わせて筒体をそれぞれ備え、
前記各筒体の他方の端部は、前記閉断面構造の内部で互いに当接されて、その当接部には、前記閉鎖構造が形成されており、
前記各筒体の中空部内には、前記樹脂製外皮の樹脂が充填されて支柱が構成されている中空ペダル。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかにおいて、
前記閉鎖構造は、前記各分割体の樹脂製当接部を前記対向方向で互いに嵌合させる嵌合構造により構成されている中空ペダル。
【請求項9】
中空構造を成した骨格部材の外表面を樹脂製外皮で覆って長尺に形成される中空ペダルの製造方法であって、
前記骨格部材として、長手方向に交差する方向の断面形状がコ字状断面とされた一対の分割体を用意する第1工程と、
前記各分割体の各開放側を対向させて組み合わせることにより閉断面構造を成すようにされ、この閉断面構造とされた前記分割体をインサート材として、樹脂のインサート成形を行い、前記分割体が閉断面構造を維持するように前記分割体の閉断面構造の外周を樹脂製外皮で覆う第2工程と、
前記第2工程において、前記分割体が閉断面構造
を成すように組み合わせられるのに先立って、前記各分割体をそれぞれインサート材として、樹脂のインサート成形を行い、前記閉断面構造において互いに当接される前記各分割体の当接端縁部に前記閉断面構造の外側から内側に渡って樹脂が被せられた樹脂製当接部を形成する第3工程と、
前記樹脂製当接部は、前記閉断面構造の外側から内側へ向けて前記第2工程の成形時の樹脂が流入するのを抑制する閉鎖構造とされている中空ペダルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の操作に用いられる中空ペダル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2枚の板材を面合せ方向に重ねて、両者間に空間を挟んだ状態で、外縁となるフランジ部を接合して閉断面構造とされた中空ペダルが開発されている(特許文献1参照)。この場合、フランジ部の接合は、接合部を樹脂で覆うことにより行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来技術では、フランジ部を備えるため、ペダルとしての強度確保に必要な閉断面構造を確保すると、ペダルの断面形状は、閉断面構造+フランジ部となって、断面形状が大きくなってしまう問題がある。
【0005】
本発明の課題は、中空ペダルにおいて、フランジ部を備えることなく閉断面構造を構成することにより、ペダルとしての強度を確保した上で、ペダルの断面形状の大きさを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1発明は、中空構造を成した骨格部材の外表面を樹脂製外皮で覆って長尺に形成された中空ペダルであって、前記骨格部材は、長手方向に交差する方向の断面形状がコ字状断面とされた一対の分割体が、各開放側を対向させて組み合わせることにより形成された閉断面構造を備え、前記閉断面構造において互いに当接される前記各分割体の当接端縁部に樹脂が被せられて形成された樹脂製当接部を備え、該各樹脂製当接部は、互いが当接されることにより前記閉断面構造の外側から内側へ向けて前記樹脂製外皮の成形時の樹脂が流入するのを抑制する閉鎖構造を形成されている。
【0007】
第1発明において、分割体は、鋼板の他、繊維強化樹脂によって構成することができる。閉鎖構造は、成形時の樹脂が流入する経路が曲げられ、その結果、曲げられない場合に比べて経路長が延長されているものであればよく各種構造を採用することができる。
【0008】
本発明の第2発明は、上記第1発明において、前記分割体には前記閉断面構造の内外を貫通する貫通孔が形成されており、前記樹脂製当接部の樹脂は、前記貫通孔を形成した前記分割体の孔端縁部及び前記分割体の当接端縁部に係合した状態で、前記閉断面構造の内側となる前記分割体の内壁面に沿って設けられている。
【0009】
本発明の第3発明は、上記第2発明において、前記樹脂製当接部の樹脂は、前記閉断面構造の内側となる前記分割体の内壁面、及び前記閉断面構造の外側となる前記分割体の外壁面の表面を経由して、前記分割体の前記貫通孔より前記当接端縁部側を環状に包囲している。
【0010】
本発明の第4発明は、上記第1~第3発明のいずれかにおいて、前記閉断面構造の内側となる前記分割体の内壁面上に補強リブを備え、該補強リブは、前記閉断面構造の断面崩れを起こすような前記分割体の変形を抑制するように、一つの前記分割体の互いに隣接する前記樹脂製当接部同士を一体に連結している。
【0011】
本発明の第5発明は、上記第1~第4発明のいずれかにおいて、ペダル操作時の操作面に対応する前記分割体の端部であり、前記閉断面構造とされた状態で形成される開口に、前記樹脂製当接部の樹脂により一体に形成され、前記開口を閉鎖する蓋を備える。
【0012】
本発明の第6発明は、上記第5発明において、前記樹脂製外皮の樹脂により前記蓋の表面側にペダル操作時の操作面を成すペダルシートが形成されている。
【0013】
本発明の第7発明は、上記第1~第6発明のいずれかにおいて、前記各分割体の互いに対向する面に、互いに正面で対向して貫通された対向孔をそれぞれ備え、前記樹脂製当接部の樹脂により一体に形成され、前記各対向孔を形成した前記各分割体の孔端縁部に筒形状の一方の端部を沿わせて筒体をそれぞれ備え、前記各筒体の他方の端部は、前記閉断面構造の内部で互いに当接されて、その当接部には、前記閉鎖構造が形成されており、前記各筒体の中空部内には、前記樹脂製外皮の樹脂が充填されて支柱が構成されている。
【0014】
本発明の第8発明は、上記第1~第7発明のいずれかにおいて、前記閉鎖構造は、前記各分割体の樹脂製当接部を前記対向方向で互いに嵌合させる嵌合構造により構成されている。
【0015】
本発明の第9発明は、中空構造を成した骨格部材の外表面を樹脂製外皮で覆って長尺に形成される中空ペダルの製造方法であって、前記骨格部材として、長手方向に交差する方向の断面形状がコ字状断面とされた一対の分割体を用意する第1工程と、前記各分割体の各開放側を対向させて組み合わせることにより閉断面構造を成すようにされ、この閉断面構造とされた前記分割体をインサート材として、樹脂のインサート成形を行い、前記分割体が閉断面構造を維持するように前記分割体の閉断面構造の外周を樹脂製外皮で覆う第2工程と、前記第2工程において、前記分割体が閉断面構造とされる際に互いに当接される前記分割体の各当接端縁部を樹脂により覆って樹脂製当接部を形成し、該樹脂製当接部は、前記閉断面構造の外側から内側へ向けて前記第2工程の成形時の樹脂が流入するのを抑制する閉鎖構造とされている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、コ字状断面の分割体により閉断面構造を構成したため、フランジ部を備えることなく閉断面構造を構成することができ、ペダルとしての強度を確保した上で、ペダルの断面形状の大きさを抑制することができる。また、樹脂製当接部の閉鎖構造により、閉断面構造の外周を樹脂製外皮で覆う際に、樹脂製外皮の樹脂が閉断面構造の内部に入るのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1実施形態としての中空ペダルを示す斜視図である。
【
図3】上記中空ペダルの骨格部材である一対の分割体の斜視図である。
【
図4】上記一対の分割体に樹脂製当接部を設けた状態の斜視図である。
【
図5】上記一対の分割体を組み合わせて閉断面構造とした状態の斜視図である。
【
図6】
図2のVI-VI線断面矢視図であり、一対の分割体の一方のみを示す。
【
図7】
図2のVII-VII線断面矢視図であり、一対の分割体の一方のみを示す。
【
図8】
図2のVIII-VIII線断面矢視図である。
【
図12】
図2のXII-XII線断面矢視図である。
【
図13】本発明の第2実施形態の
図8に対応する断面図である。
【
図14】本発明の第3実施形態の
図2に対応する正面図である。
【
図18】
図14のXVIII-XVIII線断面矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1、2は、本発明の第1実施形態としての中空ペダル1を示す。第1実施形態は、車両のブレーキペダルに本発明を適用した例である。中空ペダル1は、一端にボス3が嵌合固定され、車体側のペダルブラケット(図示略)に対して、ボス3に挿通されたボルト等により揺動自在に結合されている。中空ペダル1の他端には、ペダル操作時の操作面を成すペダルシート2が形成されている。また、ボス3とペダルシート2との中間位置よりややボス3側位置には、ブレーキ操作用プッシュロッド(図示略)に連結されたクレビス継手(図示略)のクレビスピン(図示略)が回転自在に挿入される軸受部24L(、24R)が形成されている。
【0019】
図3~5は、第1実施形態の中空ペダル1の製造工程を示す。
図3には、中空ペダル1の骨格部材となる一対のコ字状断面の分割体10L、10Rを示す。分割体10L、10Rは、それぞれ開放側を対向させて組み合わせることにより閉断面構造となる形状とされている。係る分割体10L、10Rを用意する工程が本発明の第1工程に相当する。各分割体10L、10Rは、鋼板、若しくはカーボン繊維強化樹脂(CFRP)、ガラス繊維強化樹脂(GFRP)のプリプレグにより形成されている。なお、以下の説明では、各分割体10L、10Rにおいて、閉断面構造とされた状態で内側となる側を内側といい、外側となる側を外側という。
【0020】
図3、4のように、分割体10L、10Rの当接端縁部11L、11Rには、それぞれ樹脂製当接部20L、20Rがインサート成形により一体に設けられている。その後、
図5のように、各分割体10L、10Rの樹脂製当接部20L、20Rが互いに当接されて、各分割体10L、10Rの対向面間に空間を持った閉断面構造が形成される。
【0021】
このように各分割体10L、10Rが組み合わされて閉断面構造とされた状態で、各分割体10L、10Rをインサート材としてインサート成形が行われ、
図1のように各分割体10L、10Rの外周を樹脂により包囲して樹脂製外皮4が形成される。樹脂製外皮4により各分割体10L、10Rが閉断面構造とされた状態に維持されている。このように閉断面構造とされた分割体10L、10Rを樹脂製外皮4で覆う工程が本発明の第2工程に相当する。各分割体10L、10Rの表面に樹脂製当接部20L、20R及び樹脂製外皮4を密着させるため、インサート成形の前工程で、各分割体10L、10Rの表面を粗面とする表面処理を行うことができる。なお、樹脂製当接部20L、20R及び樹脂製外皮4の樹脂は、例えばPPS(ポリフェニレンスルフィド)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)、或いはそれらの繊維強化複合材料など、比較的剛性が高い種々の合成樹脂材料を用いることができる。
【0022】
図3のように、各分割体10L、10Rには、ボス3が挿通される貫通孔13L、13Rがそれぞれ形成されている。また、貫通孔13L、13Rに接近した位置、及びペダルシート2に対応する位置、並びに貫通孔13L、13R及びペダルシート2に対応する位置に挟まれた中間位置には、貫通孔13L、13Rより小径の複数個の貫通孔14L、14Rが形成されている。貫通孔13L、13Rに接近した位置、及びペダルシート2に対応する位置に比べて、それらに挟まれた中間位置には、多数の貫通孔14L、14Rが形成されている。具体的には、貫通孔13L、13Rに接近した位置及びペダルシート2に対応する位置には、各2組ずつの貫通孔14L、14Rが形成されているのに対し、それらに挟まれた中間位置には、9組の貫通孔14L、14Rが形成されている。
【0023】
図6、7は、
図4のように一方の分割体10Lに樹脂製当接部20Lがインサート成形により形成された状態を示す。
図6は、
図2のVI-VI線断面矢視図であり、分割体10Lの当接端縁部11Lには、樹脂製当接部20Lが一体に形成されている。樹脂製当接部20Lは、ここに当接される分割体10Rの樹脂製当接部20Rに対して嵌合可能な凹部31Lとされている。また、貫通孔14Lに隣接する樹脂製当接部20Lは、インサート成形時の樹脂が貫通孔14Lを分割体10Lの内側から埋設するように形成されている。そのため、樹脂製当接部20Lから貫通孔14Lまで延びる樹脂は、延設部22Lを形成し、延設部22Lの樹脂は、貫通孔14Lの孔端縁部14Laに係合した状態とされている。一方、樹脂製当接部20Lの樹脂も、分割体10Lの当接端縁部11Lに係合しているため、樹脂製当接部20Lは、分割体10Lに機械的に強固に結合されている。
【0024】
また、
図7は、
図2のVII-VII線断面矢視図であり、分割体10Lの当接端縁部11Lには、
図6と同様に樹脂製当接部20Lが一体に形成されている。貫通孔14Lに隣接する樹脂製当接部20Lは、インサート成形時の樹脂が貫通孔14Lを埋設して分割体10Lの当接端縁部11Lの内外両側面を覆うように形成されている。そのため、貫通孔14Lより当接端縁部11L側の分割体10Lは、樹脂の環状部23Lにより覆われている。従って、樹脂製当接部20Lは、環状部23Lにより分割体10Lに機械的に強固に結合されている。
【0025】
また、軸受部24Lは、樹脂製当接部20Lと一体に形成されており、軸受部24Lに対応する貫通孔15Lより当接端縁部11L側の分割体10Lは、樹脂の環状部23Lにより覆われている。従って、樹脂製当接部20Lは、環状部23Lにより分割体10Lに機械的に強固に結合されている。軸受部24Lは、貫通孔15Lの孔端縁部15Laに沿って円筒状に形成されている。環状部23Lは、軸受部24Lのプッシュロッド側の面に固めて複数個(ここでは3個)設けられている。そのため、軸受部24Lのプッシュロッド側の強度が高められている。なお、
図6、7では、分割体10Lを示したが、分割体10Rも分割体10Lと概ね対称形に構成されており、図中、分割体10Rにおいて分割体10Lに対応する構成部材には、対応する符号の「L」を「R」に代えて付与している。
【0026】
図8は、
図2のVIII-VIII線断面矢視図であり、一対の分割体10L、10Rが樹脂製当接部20L、20Rで当接されて閉断面構造を構成した状態を、
図6に対応する部位で示している。このとき、樹脂製当接部20L、20Rは、凹部31Lに凸部31Rが嵌合して結合されている。そして、一対の分割体10L、10Rの外側面に樹脂製外皮4が被せられ、樹脂製外皮4が閉断面構造の外周を覆っている。樹脂製外皮4をインサート成形により一対の分割体10L、10Rの外側面に被せるとき、樹脂製当接部20L、20Rは凹部31Lに凸部31Rが嵌合されて、閉断面構造の外側から内側に樹脂が流入しないようにされている。このとき、凹部31Lと凸部31Rとにより嵌合構造(本発明の閉鎖構造に相当)30が構成されている。
【0027】
図9は、
図2のIX-IX線断面矢視図であり、分割体10L、10Rが樹脂製当接部20L、20Rで当接されて閉断面構造を構成した状態を、
図7に対応する部位で示している。ここでも、
図8で説明したのと同様に、閉断面構造とされた一対の分割体10L、10Rの外側面が樹脂製外皮4で覆われている。この状態では、軸受部24L、24Rが対向して配置され、両軸受部24L、24Rにクレビスピン(図示略)が挿通可能とされている。
【0028】
図10は、
図2のX-X線断面矢視図であり、分割体10L、10Rが樹脂製当接部20L、20Rで当接されて閉断面構造を構成した状態を示す。この部位では、一対の分割体10L、10Rの内壁面に補強リブ25L、25Rが形成されている。各補強リブ25L、25Rは、各分割体10L、10Rの隣接する樹脂製当接部20L同士、また、樹脂製当接部20R同士と一体に形成されている。そのため、各補強リブ25L、25Rは、各分割体10L、10Rが閉断面構造の断面崩れを起こす変形をしないように補強することができる。
【0029】
図11は、
図2のXI-XI線断面矢視図であり、分割体10L、10Rが樹脂製当接部20L、20Rで当接されて閉断面構造を構成した状態を示す。この状態では、分割体10Lの貫通孔13Lと分割体10Rの貫通孔13Rとは対向する位置にあり、両貫通孔13L、13Rにボス3が挿通されている。ボス3が各分割体10L、10Rの両外側に突出する部位で、その外周上には、複数個(この場合は、8個)の結合部41L、41Rが分散して一体に設けられている。結合部41L、41Rは、樹脂製外皮4と一体に形成されており、樹脂製外皮4により結合部41L、41Rを介してボス3を固定している。
【0030】
図12は、
図2のXII-XII線断面矢視図であり、分割体10L、10Rが樹脂製当接部20L、20Rで当接されて閉断面構造を構成した状態を示す。この部位では、各分割体10L、10Rは、
図3、12のように、ペダルシート2の踏面2a側に開口12L、12Rが形成されており、この開口12L、12Rは、
図4、5、12のように樹脂製当接部20L、20Rと一体の蓋21L、21Rにより閉じられている。蓋21Lと蓋21Rとの当接部も嵌合構造30とされている。そのため、樹脂製外皮4の成形と同時に蓋21L、21Rの表面側にペダルシート2が成形されるときに、ペダルシート2を形成する樹脂が分割体10L、10Rによる閉断面構造の内部に流入しないようにされている。蓋21Lと蓋21Rがない場合には、閉断面構造内に樹脂製外皮4の樹脂が流入しないようにするために、インサート成形時にスライドコアや入れ子等の特別な金型が必要となるが、それらの金型の機能を蓋21Lと蓋21Rにより代替させることができる。ペダルシート2は、踏面2aをゴムカバー(図示略)により覆ってもよい。
【0031】
以上の第1実施形態によれば、コ字状断面の分割体10L、10Rを樹脂製当接部20L、20Rを介して閉断面構造を構成したため、フランジ部無しで当接端縁部11L、11Rを当接させて閉断面構造を構成することができる。その結果、ペダルとしての強度を確保した上で、ペダルの断面形状の大きさを抑制することができる。また、樹脂製当接部20L、20R間に嵌合構造30を構成したことにより、閉断面構造の外周を樹脂製外皮4で覆う際に、樹脂製外皮4の樹脂が閉断面構造の内部に入るのを抑制することができる。
【0032】
図13は、本発明の第2実施形態を示す。第2実施形態が第1実施形態に対して特徴とする点は、嵌合構造30を変更した点である。その他の構成は、第2実施形態でも第1実施形態と同一であり、同一部分についての再度の説明は省略する。
【0033】
図13は、
図8に対応しており、ここでは、嵌合構造(本発明の閉鎖構造に相当)30が、山形断面形状の凸部32RがV字谷形断面形状の凹部32Lに嵌合する構成とされている。この嵌合構造30でも、樹脂製外皮4をインサート成形により一対の分割体10L、10Rの外側面に被せるとき、樹脂製当接部20L、20Rは凹部32Lに凸部32Rが嵌合されて、閉断面構造の外側から内側に樹脂が流入しないようにされている。
【0034】
図14~18は、本発明の第3実施形態を示す。第3実施形態が第1実施形態に対して特徴とする点は、閉断面構造内に支柱26L、26Rを設けた点である。その他の構成は、第3実施形態でも第1実施形態と同一であり、同一部分についての再度の説明は省略する。但し、第3実施形態では、第1実施形態に対し、本質的な変更ではないが、貫通孔14L、14Rの配置等を含めて若干の形状、構造の変更が施されている。例えば、第3実施形態では、貫通孔14L、14Rが20組設けられている。
【0035】
第3実施形態では、
図15、17、18のように、分割体10L、10Rの内壁面全体に樹脂製当接部20L、20Rと一体の樹脂により延設部27L、27Rが一体に設けられている。延設部27L、27Rにより分割体10L、10Rに対して樹脂製当接部20L、20Rの一体化をより確実にしている。
【0036】
第3実施形態では、
図15のように、分割体10L、10Rが互いに嵌合された状態で分割体10L、10Rの対向面に互いに正面で対向して対向孔16L、16Rが穿設されている。対向孔16L、16Rの各孔端縁部16La、16Raには、それぞれ筒体26L、26Rが樹脂製当接部20L、20Rと一体の樹脂により形成されている。各筒体26L、26Rの当接部には、樹脂製当接部20L、20Rと同様の嵌合構造30が形成されている。各筒体26L、26Rは、互いに当接された状態で、一つの円筒形状を成しており、その円筒の内部には、樹脂製外皮4と一体の樹脂により貫通部42が充填されている。従って、対向孔16L、16Rの間には、筒体26L、26Rと貫通部42により、互いに嵌合された状態の分割体10L、10Rが外周側からの圧力により潰されないように支持する支柱が形成されている。また、貫通部42が樹脂製外皮4と一体の樹脂により形成されているため、分割体10L、10Rの接合強度を高めることができる。
【0037】
第3実施形態では、
図14、16のように、軸受部24L、24Rが分割体10L、10Rの貫通孔15L、15Rの孔端縁部15La、15Raに樹脂製当接部20L、20Rと一体の樹脂により円筒状に形成されている。第1実施形態の軸受部24L、24Rと構造は違うが、軸受部24L、24Rが果たす機能は、両者間で相違はない。
【0038】
第3実施形態では、
図14、16、17のように、分割体10L、10Rの内壁面の適宜部位に樹脂製当接部20L、20Rと一体の樹脂により補強リブ28L、28Rが一体に設けられている。具体的には、補強リブ28L、28Rは、片側の分割体10L、10Rの対向する樹脂製当接部20L、20R同士を直線で結ぶ位置に設けられ、且つ対向孔16L、16Rを通過する位置、並びに軸受部24L、24Rを通過する位置に設けられている。その結果、補強リブ28L、28Rにより分割体10L、10Rの変形に対する強度を高めている。特に、
図16のように、補強リブ28L、28Rは、支柱を成す筒体26L、26Rと一体とされているため、補強効果を更に高めている。また、
図14、16のように、軸受部24L、24Rは、2つの補強リブ28L、28Rの交差する位置に設けられているため、軸受部24L、24Rの強度を高めることができる。
【0039】
以上、特定の実施形態について説明したが、本発明は、それらの外観、構成に限定されず、種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、中空ペダル1は、上述のブレーキペダル以外に、クラッチペダル、足踏み式パーキングブレーキペダル等の車両用操作ペダルに適用されてもよい。また、各実施形態では、中空ペダル1のペダルシート2以外の部位は、樹脂製外皮4により覆う構成としたが、軽量化又は意匠上の狙いにより、樹脂製外皮4により覆う領域を中空ペダル1の一部のみとしてもよい。
【0040】
最後に上述の「課題を解決するための手段」における第2発明以降の各発明に対応する上記実施形態の作用効果を付記しておく。
【0041】
第2発明によれば、樹脂製当接部の樹脂は、貫通孔の孔端縁部及び分割体の当接端縁部に係合した状態で設けられているため、分割体に対する樹脂製当接部の結合強度を高めることができる。
【0042】
第3発明によれば、樹脂製当接部の樹脂は、分割体の一部を環状に包囲しているため、分割体に対する樹脂製当接部の結合強度を更に高めることができる。
【0043】
第4発明によれば、分割体の内壁面に補強リブを備えるため、閉断面構造の断面崩れに対する強度を高めることができる。
【0044】
第5発明によれば、閉断面構造における開口が蓋により閉鎖されるため、樹脂製外皮により閉断面構造の外周を覆う際に、樹脂製外皮の樹脂が開口から閉断面構造内に入らないようにすることができる。しかも、樹脂製外皮の樹脂が閉断面構造内に入らないようにするために本来必要となるスライドコア等の金型を蓋により代替することができる。
【0045】
第6発明によれば、閉断面構造における開口を閉鎖する蓋の表面にペダルシートを形成するため、蓋を利用してペダルシートを形成することができる。
【0046】
第7発明によれば、閉断面構造内に支柱が設けられるため、閉断面構造を形成する分割体が樹脂製外皮を形成する際の成形圧により潰れて変形することを抑制することができる。また、支柱部分に樹脂製外皮の樹脂が充填されるため、閉断面構造を形成する一対の分割体の接合強度を高めることができる。
【0047】
第8発明によれば、閉鎖構造として嵌合構造を採用しているため、嵌合構造により樹脂製外皮の樹脂が閉断面構造の内部に入るのを抑制する他、嵌合構造を利用して分割体を嵌合させることで、分割体を当接させて閉断面構造とする際の作業性を良くすることができる。
【0048】
第9発明によれば、コ字状断面の分割体により閉断面構造が構成されるため、フランジ部を備えることなく閉断面構造を構成することができ、ペダルとしての強度を確保した上で、ペダルの断面形状の大きさを抑制することができる。また、樹脂製当接部の閉鎖構造により、閉断面構造の外周を樹脂製外皮で覆う際に、樹脂製外皮の樹脂が閉断面構造の内部に入るのが抑制することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 中空ペダル
2 ペダルシート
2a 踏面
3 ボス
4 樹脂製外皮
10L、10R 分割体
11L、11R 当接端縁部
12L、12R 開口
13L、13R、14L、14R、15L、15R 貫通孔
14La、15La、15Ra 孔端縁部
16L、16R 対向孔
16La、16Ra 孔端縁部
20L、20R 樹脂製当接部
21L、21R 蓋
22L、22R、27L、27R 延設部
23L 環状部
24L、24R 軸受部
25L、25R、28L、28R 補強リブ
26L、26R 筒体(支柱)
30 嵌合構造(閉鎖構造)
31L、32L 凹部
31R、32R 凸部
41L、41R 結合部
42 貫通部(支柱)