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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】食品包装用シート
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/02 20060101AFI20230501BHJP
   B32B 7/14 20060101ALI20230501BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20230501BHJP
   B32B 29/04 20060101ALI20230501BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20230501BHJP
   B65D 81/24 20060101ALI20230501BHJP
   B65D 81/26 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
B65D65/02 E
B32B7/14
B32B9/00 A
B32B29/04
B65D65/40 D
B65D81/24 G
B65D81/26 J
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019014081
(22)【出願日】2019-01-30
(65)【公開番号】P2020121746
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000222141
【氏名又は名称】東洋アルミエコープロダクツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 雅也
【審査官】吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】特許第2882591(JP,B2)
【文献】特開平08-052841(JP,A)
【文献】特開平08-151037(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/02
B65D 81/24
B65D 81/26
B32B 7/14
B32B 9/00
B32B 29/04
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートと、
前記基材シートの片面に積層された紙と、
前記紙の基材シートへの積層面とは逆側の面に積層された無機系の抗菌剤を含む抗菌層と、を備え、
前記基材シートと紙とは、接着部と非接着部により部分的に接着されており、かつ非接着部の基材シートと紙との間には、食品から発生した水分や油分が侵入可能な隙間が形成されている食品包装用シートであって、
前記抗菌層は、ワックスに前記無機系の抗菌剤が添加されてなり、
前記抗菌層の、前記紙に対する乾燥後の塗布量は、0.1g/m ~1.0g/m であり、
前記ワックスは、天然ワックスである、食品包装用シート
【請求項2】
前記基材シートと紙との非接着部は、基材シートを縦断または横断する方向に連通している請求項1に記載の食品包装用シート。
【請求項3】
前記無機系の抗菌剤は、リン酸カルシウムに金属銀を担持した微粒子からなる、請求項1または2に記載の食品包装用シート。
【請求項4】
前記紙は、グラシン紙である、請求項1から3のいずれかに記載の食品包装用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品を包む食品包装用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
食品包装用シートとして、特許文献1および2のように、アルミニウム箔からなる基材シートの片面に、グラシン紙などの紙を積層したものが知られている。特許文献1においては、基材シートと紙とは、接着部と非接着部により部分的に接着されている。
このような食品包装用シートの紙を内側にして、おにぎりや揚げ物などの食品を包むと、食品から生じる余分な水分ないし油分が紙に吸収されることになるので、食品のべたつきを抑制することが可能となる。
【0003】
また、食品包装用シートとして、特許文献3および4のように、アルミニウム箔や樹脂フィルムなどの基材シートの少なくとも片面に、グレープフルーツ種子抽出物などの有機系の抗菌剤からなる抗菌層を設けてなる食品包装用シートも知られている。
このような食品包装用シートの抗菌層を内側にして、食品を包むと、抗菌層の抗菌作用により、食品の衛生状態を保つことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平3-215028号公報
【文献】特開2013-1406号公報
【文献】特開2000-43952号公報
【文献】特開2010-253852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、基材シートの片面に紙を積層してなる食品包装用シートにおいて、抗菌層をさらに設けたものは知られていなかった。
【0006】
また、特許文献3および4のように、食品包装用シートの抗菌層に有機系の抗菌剤を用いた場合には、抗菌剤成分の分解または劣化が懸念される。
特に、グレープフルーツ種子抽出物からなる抗菌剤は、耐熱温度が100℃前後であるため、揚げたての天ぷらやフライのような高温の食品を、このような抗菌剤を含む食品包装用シートで包んだときには、抗菌剤が耐熱温度を超える環境下にさらされることになる。したがって、食品を包んだ際に、短時間で抗菌剤の構造が破壊され、抗菌作用が奏されなくなってしまうおそれがある。
【0007】
食品包装用シートの用途としては、包装してから短時間で喫食するというよりも、むしろ弁当のように、包装した状態で持ち運び、長時間経過した後に喫食することが主に想定されるため、抗菌作用の喪失や低下は衛生面から好ましくない。
【0008】
そこで、本発明の解決すべき課題は、食品包装用シートにおいて、食品から生じる水分ないし油分の吸収作用と、抗菌作用とを両立させるとともに、その抗菌作用を長期にわたって持続させることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するため、発明にかかる食品包装用シートを、基材シートと、前記基材シートの片面に積層された紙と、前記紙の基材シートへの積層面とは逆側の面に積層された無機系の抗菌剤を含む抗菌層と、を備え、前記基材シートと紙とは、接着部と非接着部により部分的に接着されており、かつ非接着部の基材シートと紙との間には、食品から生じた水分ないし油分が侵入可能な隙間が形成されている構成としたのである。
【0010】
発明にかかる食品包装用シートを以上のように構成したので、その抗菌層の側を内側にして食品を包むと、抗菌層の抗菌作用により、食品の衛生状態を保つことが可能となる。
抗菌層には、耐熱性の高い無機系の抗菌剤を用いるので、揚げたての天ぷらやフライのような高温の食品を包んだときのような、高温の環境下にさらされた状態でも、抗菌剤の構造が破壊されず抗菌作用が維持できる。
また、抗菌層は耐熱性が高いことから、食品包装用シートに食品を包んだ状態で、オーブントースター等により加熱調理する際にも、抗菌作用が失われることがない。
【0011】
食品から生じる余分な水分ないし油分は紙に吸収されるため、食品のべたつきを抑制することができる。このとき、隣接する抗菌層の抗菌作用により、水分を吸収した紙に雑菌等が繁殖することが抑制される。
また、水分や油分はその一部が紙を透過して、紙と基材シートとの非接着部に形成された隙間へと入り込むため、食品から紙の吸収性能を超えるような多量の水分や油分が発生した場合にも、食品包装用シートにその水分や油分を保持することが可能となる。このとき、非接着部の隙間に収容された水分や油分は、紙を通じて抗菌層と接触するため、雑菌等の繁殖が抑制されている。
【0012】
さらに、食品包装用シートを使用前に保管する場合にも、無機系の抗菌剤は安定性が高く、有機系の抗菌剤とは異なり分解等がしにくいため、抗菌層の抗菌作用が長期にわたって維持される。また抗菌剤の分解によって、紙や基材シートに影響を及ぼしうる物質が発生することもないため、紙や基材シートの変質も防ぐことができる。
【0013】
発明にかかる食品包装用シートにおいて、前記基材シートと紙との非接着部は、基材シートを縦断または横断する方向に連通している構成を採用することが好ましい。
【0014】
このように構成すると、食品から発生して紙を透過した水分や油分を、非接着部の紙と基材シートの間に形成された隙間を通じて、食品包装用シートの外部へと逃がすことができるため、食品のべたつきや雑菌の繁殖等を一層抑制することが可能となる。
【0015】
発明にかかる食品包装用シートにおいて、前記抗菌層は、ワックスに無機系の抗菌剤が添加されてなる構成を採用することが好ましい。
【0016】
このように構成すると、紙面の全体に均一に抗菌層を積層することが容易となるため、食品包装用シートの抗菌作用に偏りが生じることが防止される。
また、ワックスには剥離効果があるため、食品を密着状態に包装したときや長期間包装した後にも、食品包装用シートから剥がすことが容易となり、食品が割れたりその一部がシートにへばりついたりすることが抑制される。
また、ワックスの遮断効果により、紙に吸収された水分や非接着部に収容された水分が、再度、食品の側に戻ることが防止され、食品のべたつきが一層抑制される。
【0017】
発明にかかる食品包装用シートにおいて、前記無機系の抗菌剤は、リン酸カルシウムに金属銀を担持した微粒子からなる構成を採用することが好ましい。
【0018】
非常に高い耐熱性を備え、高温条件下で使用しても化学的安定性に優れる、リン酸カルシウムに金属銀を担持した微粒子を用いると、抗菌効果を長期にわたって維持することが可能となる。
【0019】
発明にかかる食品包装用シートにおいて、前記紙は、グラシン紙である構成を採用することが好ましい。
【0020】
グラシン紙は、紙の密度が高いため、抗菌層の成分が紙の内部に浸透したり埋没したりすることが抑制され、抗菌効果が低下することが防止される。また、基材シートとの接着部に用いる接着剤の紙内部への浸透も抑えられるため、接着剤が食品に接触することが防止され、接着剤の使用量も抑制することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明を以上のように構成したので、食品包装用シートにおいて、食品から生じる水分ないし油分の吸収作用と、抗菌作用とを両立させるとともに、その抗菌作用を長期にわたって持続させることが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態にかかる食品包装用シートの、(a)は平面図、(b)は断面図
図2】実施形態にかかる食品包装用シートの使用状態を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
実施形態の食品包装用シート10は、おにぎりや揚げ物などの食品を包むのに用いられ、抗菌作用によりその食品の衛生状態を維持するとともに、食品から発生する水分や油分を吸収等することで食品のべたつきも抑制するものである。
【0024】
図1のように、実施形態の食品包装用シート10は、基材シート11と、紙12と、抗菌層13とを備える。食品包装用シート10の平面視形状は特に限定されず、たとえばロール状に巻き取られて、使用時に所望の大きさにカットすることも考えられるが、図では平面視略正方形のものを例示している。
【0025】
図1のように、基材シート11の片面には、意匠性を付与するために印刷層11aが設けられている。
基材シート11の種類は限定されないが、耐熱性が高いシートであることが好ましく、食品用ラップフィルムや金属箔が例示できる。
食品用ラップフィルムの素材としては、特に限定されないが、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、ポリオレフィンが例示できる。金属箔の素材としては、特に限定されないが、アルミニウム、銅、鉄が例示できる。
基材シート11の特に好ましい例としては、加工が容易で比較的安価であるアルミニウム箔が挙げられる。
基材シート11として、複数種の食品用ラップフィルムや金属箔を積層してもよい。
基材シート11の厚みも特に限定されないが、アルミニウム箔である場合には、5μm~30μmであることが好ましい。厚みが5μmを下回ると、薄すぎて破れやすくなり、30μmを上回ると、厚すぎて食品の外面に沿うように変形させにくくなる。
【0026】
図1のように、紙12は、基材シート11の片面であって、印刷層11aとは逆側の面に積層されている。紙12は、食品から発生する水分や油分を吸収ないし透過できるようになっている。
紙12の種類は限定されないが、耐熱性が高いことが好ましく、グラシン紙や模造紙が例示できる。紙12の特に好ましい例としては、高密度で平滑性を有し、食品から発生する水蒸気や油などを程よく透過吸収できるグラシン紙が挙げられる。紙12として、複数種の原紙を積層してもよい。
紙12の厚みも特に限定されないが、破れにくくかつ嵩高でもないものとして、好ましくは10μm~170μm、より好ましくは20μm~40μm、坪量換算で好ましくは10g/m~120g/m、より好ましくは20g/m~40g/mであることが例示できる。
【0027】
図1のように、紙12は、基材シート11に対して接着部12aでもって部分的に接着されており、その余の非接着部12bにおいては接着されていない。非接着部12bの紙12と基材シート11の間には、食品から発生する水分や油分を収容可能な隙間が形成されている。
紙12の基材シート11に対する接着の方法は限定されないが、接着剤を用いて、ドライラミ、ウェットラミなどの公知の方法により貼り合せることが例示できる。
紙12を基材シート11に接着するための接着剤の種類も限定されないが、ドライラミであれば、エーテル系やエステル系の接着剤が例示され、経口安全性の面から、エステル系ウレタン接着剤が好ましい。
紙12の基材シート11との接着割合も特に限定されないが、(接着部の平面視面積/接着部および非接着部の平面視面積)×100(%換算)で、5~50%であるのが好ましい。接着割合が5%を下回ると、紙12が基材シート11からはがれやすくなり、50%を上回ると、非接着部12bの割合が少なすぎて、食品から発生する水分や油分を紙12と基材シート11の間に収容することが困難となる。
【0028】
接着部12aにおける紙12の基材シート11に対する接着のパターンは特に限定されないが、食品包装用シート10の平面視において、ストライプ状、島状、格子状、文字状、描画状が例示できる。
図1では、ドット状の接着部12aが格子点状に並列したものが示されており、非接着部12bは、食品包装用シート10を縦断する方向および横断する方向に連通している。これにより、非接着部12bに収容された水分や油分は、食品包装用シート10の外部に放出可能となっている。
【0029】
図1のように、抗菌層13は、紙12の片面であって、基材シート11に積層された面とは逆側の面に積層されている。
抗菌層13は、ワックスに無機系の抗菌剤を添加することで形成されており、その無機系の抗菌剤の抗菌作用により、食品包装用シート10に包まれた食品の衛生状態を維持する。また、食品から生じて紙12に吸収されたり、非接着部12bに収容された水分や油分もこの無機系の抗菌剤により殺菌されるため、雑菌の繁殖が抑えられる。
さらに、食品と紙12の間に抗菌層13のワックスが介在することで、紙12に食品が貼りつくことが抑制され、食品を喫食する際の紙12からの剥離性にも優れる。
【0030】
抗菌層13の厚みは特に限定されないが、0.1μm~1.0μmであるのが好ましい。厚みが0.1μmを下回ると、薄すぎて紙12から剥落しやすくなり、1.0μmを上回ると、厚すぎてコストが嵩んでしまう。
抗菌層13の形成態様は特に限定されないが、ワックスに無機系の抗菌剤を添加してなる溶液を紙12に塗布し、乾燥させて形成することが例示できる。
その塗布量も特に限定されないが、乾燥後の塗布量として、0.1g/m~1.0g/mが例示できる。塗布量が0.1g/mを下回ると、量が少なすぎて抗菌作用が不十分となる可能性があり、1.0g/mを上回ると、量が多すぎてコストが嵩んでしまう。
【0031】
無機系の抗菌剤の種類は特に限定されないが、耐熱性が高いものが好ましく、銀や銅などの抗菌性を有する金属を含む無機物などが挙げられる。特に好ましい例として、耐熱性が約1000℃と非常に高く、抗菌効果の持続も長く、また微粒子であるので少量でも抗菌性を発現しやすい無機系の抗菌剤である、リン酸カルシウムに金属銀を担持させた微粒子が挙げられる。複数種の無機系の抗菌剤を併用することもできる。
この微粒子における金属銀の固着量は特に限定されないが、0.001g/m~0.03g/mが好ましい。固着量が0.001g/mを下回ると、抗菌性を有する金属銀の絶対量が不足して、抗菌作用を十分に発揮できない恐れがあり、0.03g/mを上回ると、コストが嵩んでしまう。
微粒子の粒子径も特に限定されないが、0.3μm~3μmが好ましい。粒子径が0.3μmを下回ると、微細粉状となって取り扱いにくく、3μmを上回ると微粒子の体積に占める表面積の割合が小さくなって、抗菌作用を十分に発揮できない恐れがある。
抗菌層13中の無機系の抗菌剤の含有量も特に限定されないが、0.25~6.0重量%であるのが好ましい。含有量が0.25重量%を下回ると、抗菌作用を十分に発揮できない恐れがあり、6.0重量%を上回ると、コストが嵩んでしまう。
【0032】
ワックスの種類としては、剥離性等の効果を発揮できるのであれば、その種類は限定されず、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックス、石油系ワックス、合成ワックスなど種々のものが使用できる。
ワックスの好ましい例としては、食品と接することによる経口安全性や衛生面から植物系ワックスが挙げられ、その中でもカルナバロウが天然ワックスの中でも融点が約82℃と最も高く、天ぷらなどの高温の食品が接する条件下での安定性が優れるため特に好ましい。複数種のワックスを併用することもできる。
【0033】
実施形態の食品包装用シート10の構成は以上のようであり、次に図2を参照してその使用方法について説明する。
【0034】
図中、食品としておにぎりFを示しており、いま図2(a)のように、食品包装用シート10を、紙12および抗菌層13の側が上側(おにぎりFに接触する側)になるようにキッチンのカウンターなどの上に置く。この食品包装用シート10の上におにぎりFを載せる。おにぎりFは、平面視で食品包装用シート10の中央部に位置するように位置が調整される。
【0035】
この状態から図2(a)の鎖線で示すように、三角形のおにぎりFの三辺に沿って食品包装用シート10を折り畳んでゆき、図2(b)のように折り畳まれた食品包装用シート10をおにぎりFの天面で重ね合わせることで包装が完了する。
食品包装用シート10に包まれたおにぎりFは、その状態で持ち運びされ、一定時間経過後に、包装の手順とは逆向きに食品包装用シート10を広げることで包装が解かれ、喫食される。
【実施例
【0036】
次に本発明の実施例および比較例を挙げて、本発明の内容を一層明確にする。
まず、次のようにして、実施例および比較例の食品包装用シートを準備した。
【0037】
(実施例1)
片面に印刷層を備えた基材シートとしてアルミニウム箔(厚み7μm)を準備した。
また、ワックスとしてのカルナバロウを溶剤で希釈するとともにこのカルナバロウ希釈溶液中に、無機系の抗菌剤としてのリン酸カルシウムに金属銀を担持させた微粒子(粒子径0.3μm:株式会社サンギ製のアパサイダー(登録商標))を配合して溶液を準備し、この溶液をグラシン紙(厚み27μm、坪量25.8g/m)に乾燥後の無機系の抗菌剤およびワックスの塗布量がそれぞれ0.00125g/mおよび0.49875g/mとなるように塗布した。その後に、ワックス溶液中の揮発成分を乾燥工程にて除去し、グラシン紙上に抗菌層を形成した。
前記アルミニウム箔の印刷層を備えた面とは逆側の面と、グラシン紙の抗菌層が形成された面とは逆側の面とを、エステル系ウレタン接着剤によるドライラミネーションにて接着した。
なお、接着にあたっては、アルミニウム箔とグラシン紙との接着面積が、完全に貼り合わせした場合を100%とした場合と比較して7%となるように、接着剤の塗布を行うことで、接着部と非接着部とを設けた。
以上のようにして、実施例1の食品包装用シートを得た。
【0038】
(実施例2~5)
乾燥後の無機系の抗菌剤およびワックスの塗布量をそれぞれ、実施例2では、0.00250g/mおよび0.49750g/m、実施例3では、0.00750g/mおよび0.49250g/m、実施例4では、0.01000g/mおよび0.49000g/m、実施例5では、0.02500g/mおよび0.47500g/mに変えた以外は、実施例1と同様にして実施例2~5の食品包装用シートを得た。
(実施例6)
無機系の抗菌剤の種類を銀ゼオライトに変えた以外は、実施例5と同様にして実施例6の食品包装用シートを得た。
【0039】
(比較例1)
無機系の抗菌剤に代えてグレープフルーツ種子抽出物からなる有機系の抗菌剤を用い、その乾燥後の有機系の抗菌剤およびワックスの塗布量を0.01500g/mおよび0.50000g/mとした以外は、実施例1と同様にして比較例1の食品包装用シートを得た。
(比較例2)
ワックスはそのままで無機系の抗菌剤を取り除いた以外(ワックスの塗布量は0.50000g/m)は、実施例1と同様にして比較例2の食品包装用シートを得た。
【0040】
次に、これら実施例および比較例の食品包装用シートにつき、JIS Z 2801(抗菌加工製品-抗菌性試験方法・抗菌効果)に基づく、抗菌試験をおこなって、抗菌性の評価をおこなった。結果を表1に示す。
なお、試験対象の菌は、黄色ブドウ球菌および大腸菌であり、表中試験1は、実施例および比較例の食品包装用シートを、そのまま常温で抗菌性試験に供することにより、また表中試験2は、実施例および比較例の食品包装用シートを、180℃の雰囲気下に5分間保持後に抗菌性試験に供することによった。
表中○は、抗菌活性値が3以上であることを、表中△は、抗菌活性値が3未満2以上であることを、表中×は、抗菌活性値が2未満であることをそれぞれ示す。
【0041】
【表1】
【0042】
表から、実施例1から5のいずれにおいても、抗菌性、とりわけ高温における抗菌性が良好であることが判る。これに対し、比較例1では、高温における抗菌性が不十分であり、比較例2では、常温および高温のいずれにおいても、抗菌性が発揮されていないことが判る。
【0043】
今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲内およびこれと均等の意味でのすべての修正と変形を含む。
【0044】
実施形態では、食品包装用シート10の基材シート11の片面に、印刷層11aを設けているが、印刷層11aは省略することができる。また、基材シート11の両面に印刷層11aを設けたり、紙12にも印刷層を設けることもできる。
実施形態では、非接着部12bは、食品包装用シート10の縦断方向および横断方向の二方向に連通しているが、一方向のみに連通していてもよい。
実施形態では、食品包装用シート10の紙12の側の外面のみに抗菌層13を設けているが、基材シート11の側の外面にも抗菌層を設けてもよい。
発明にかかる食品包装用シート10は、基材シート11、紙12および抗菌層13以外の要素を含んでいてもよく、その要素を食品包装用シート10の外面に設けたり、基材シート11、紙12および抗菌層13の間に設けてもよい。たとえば滑り止め層を食品包装用シート10の外面に設けてもよい。
【符号の説明】
【0045】
10 実施形態の食品包装用シート
11 基材シート
11a 印刷層
12 紙
12a 接着部
12b 非接着部
13 抗菌層
F おにぎり
図1
図2