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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】ペースト状調味組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20230501BHJP
   A23L 29/10 20160101ALI20230501BHJP
   A23L 23/10 20160101ALN20230501BHJP
【FI】
A23L27/00 C
A23L29/10
A23L23/10
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019037965
(22)【出願日】2019-03-01
(65)【公開番号】P2020137502
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】390010674
【氏名又は名称】理研ビタミン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】須藤 兼二
【審査官】澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-106935(JP,A)
【文献】特開2001-069912(JP,A)
【文献】特開2011-193756(JP,A)
【文献】特開平08-149950(JP,A)
【文献】油化学,1986年,35(2),pp.71-79
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D,A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(a)及び(b)を含む油脂組成物と、粉末食材とを含有するスープ類用ペースト状調味組成物。
(a)主構成脂肪酸がベヘン酸であり且つエステル化度が50%以上であるポリグリセリン脂肪酸エステル
(b)主構成脂肪酸がオレイン酸であり且つエステル化度が50%以下であるポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又は主構成脂肪酸が炭素数14~18の飽和脂肪酸であり且つエステル化度が50%以下であるジグリセリン脂肪酸エステル
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペースト状調味組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、常温で半固体状の油脂と、食塩、砂糖等の粉末食材とを混合し、ペースト状に練り合わせた調味組成物が市販されている。このようなペースト状調味組成物は、他の調味料と併用しなくても、それ単体で食品に油脂由来の風味やコクと粉末食材由来の呈味とを同時に付与することができ、その手軽さから消費者に好まれている。
【0003】
ペースト状調味組成物の製造においては、配合する成分の種類や配合量もさることながら、ベースとなる油脂の粘度調整が極めて重要となる。即ち、油脂の粘度が高すぎれば、組成物の物性が固くなりすぎて使用時に適量を取り分けづらくなり、油脂の粘度が低すぎれば、粉末食材を十分に保持することができず、輸送中や保存中に分離を生じるおそれがあるため、このような問題が生じない範囲に油脂の粘度を調整しなければならない。
【0004】
ペースト状調味組成物の製造に使用する油脂の粘度を適切な範囲に調整する方法としては、例えば、該油脂に主構成脂肪酸がベヘン酸であり且つエステル化度が50%以上であるポリグリセリン脂肪酸エステルを有効成分とすることを特徴とする油脂の増粘剤を添加する方法(特許文献1)が知られている。この方法によれば油脂に適度な粘性を付与することができ、良好な物性のペースト状調味組成物を製造することができる。しかし、この方法により得られたペースト状調味組成物は、これを湯等に溶解した際、液面に浮いた油脂分(浮油)が粘稠なゲル状の凝集を形成し、これが食器、調理器具、歯等に付着して、喫食時や食器類の洗浄時に不快感を伴うことがあった。
【0005】
そこで、湯等に溶解した際に浮油が粘稠なゲル状に凝集しないペースト状調味組成物が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-69912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、湯等に溶解した際に浮油が粘稠なゲル状に凝集しないペースト状調味組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、主構成脂肪酸がベヘン酸であり且つエステル化度が50%以上であるポリグリセリン脂肪酸エステルを添加して増粘した油脂組成物に、さらに特定の食品用乳化剤を加えることにより、該油脂組成物を使用して製造したペースト状調味組成物を湯等に溶解した際に浮油がゲル化しにくくなることを見出し、この知見に基づきさらに研究を重ね、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、下記成分(a)及び(b)を含む油脂組成物と、粉末食材とを含有するペースト状調味組成物、からなっている。
(a)主構成脂肪酸がベヘン酸であり且つエステル化度が50%以上であるポリグリセリン脂肪酸エステル
(b)主構成脂肪酸がオレイン酸であるポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又は主構成脂肪酸が炭素数14~18の飽和脂肪酸であるジグリセリン脂肪酸エステル
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るペースト状調味組成物は、これを湯等に溶解した際、浮油が粘稠なゲル状に凝集しにくい。そのため、該浮油が食器等に付着しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施例の調味組成物1を熱湯に溶解した試験液1について、浮油の外観を撮影した写真である。
図2図2は、比較例の調味組成物22を熱湯に溶解した試験液22について、浮油の外観を撮影した写真である。
図3図3は、実施例の調味組成物1を熱湯に溶解した試験液1について、浮油のべたつきを評価した際に使用したスプーンの外観を撮影した写真である。
図4図4は、比較例の調味組成物22を熱湯に溶解した試験液22について、浮油のべたつきを評価した際に使用したスプーンの外観を撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係るペースト状調味組成物(以下「本発明の調味組成物」ともいう)は、油相中に固体相が分散した構造をとるペースト状の組成物であって、該油相として以下に述べる成分(a)及び(b)を含む油脂組成物、該固体相として粉末食材を含有することを特徴とする。
【0013】
本発明の調味組成物の油相を構成する油脂は、食用可能な油脂であれば特に制限はなく、例えば、大豆油、菜種油、綿実油、サフラワー油、ヒマワリ油、米糠油、コーン油、椰子油、パーム油、パーム核油、落花生油、オリーブ油、ゴマ油、ハイオレイック菜種油、ハイオレイックサフラワー油、ハイオレイックコーン油、ハイオレイックヒマワリ油等の植物油脂、牛脂、ラード、魚油、乳脂等の動物油脂、これら動植物油脂に分別、水素添加、エステル交換等の処理を施した加工油脂、あるいは中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)等が挙げられる他、グリセリンジ脂肪酸エステル及びプロピレングリコールジ脂肪酸エステルもこれらに含まれる。また、これら油脂に香味を付与した香味油等を用いてもよい。これら油脂は、いずれか1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を任意に組み合わせて用いてもよいが、後述する成分(a)及び(b)を加えた後の粘度を良好な範囲に調整するため、常温(15~25℃)で液状である油脂(例えば、大豆油、菜種油、綿実油、サフラワー油、ヒマワリ油、米糠油、コーン油、落花生油、オリーブ油、ゴマ油、ハイオレイック菜種油、ハイオレイックサフラワー油、ハイオレイックコーン油、ハイオレイックヒマワリ油等)と、常温(15~25℃)で固体状である油脂(例えば、牛脂、ラード、パーム油、パーム核油等)を組み合わせて用いることが好ましい。
【0014】
本発明の成分(a)は、主構成脂肪酸がベヘン酸であり且つエステル化度が50%以上であるポリグリセリン脂肪酸エステル(以下「成分(a)のポリグリセリン脂肪酸エステル」ともいう)である。なお、ポリグリセリン脂肪酸エステルとは、グリセリン2分子以上が縮合してなる化合物であるポリグリセリンと脂肪酸とのエステルであり、ベヘン酸とは、炭素数22の飽和脂肪酸である。
【0015】
成分(a)のポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するポリグリセリンの平均重合度に特に制限はないが、例えば、平均重合度2~10のもの、具体的には、ジグリセリン(平均重合度2)、トリグリセリン(平均重合度3)、テトラグリセリン(平均重合度4)、ペンタグリセリン(平均重合度5)、ヘキサグリセリン(平均重合度6)、ヘプタグリセリン(平均重合度7)、オクタグリセリン(平均重合度8)、デカグリセリン(平均重合度10)等が挙げられる。
【0016】
成分(a)のポリグリセリン脂肪酸エステルの「主構成脂肪酸」とは、ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸100質量%中、通常50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは75質量%以上を占める脂肪酸をいう。即ち、成分(a)のポリグリセリン脂肪酸エステルは、該エステルを構成する脂肪酸100質量%中、50質量%以上をベヘン酸が占めていれば、残部にその他の脂肪酸を含んでいてもよい。なお、後述の成分(b)として用いられるポリグリセリン脂肪酸エステル及びジグリセリン脂肪酸エステルについての「主構成脂肪酸」の定義もこれと同様である。
【0017】
成分(a)のポリグリセリン脂肪酸エステルは、エステル化度が50%以上、好ましくは50~90%である。該エステル化度(%)は、下記式により算出される。なお、下記式中のエステル価及び水酸基価は、「基準油脂分析試験法(I)」(社団法人 日本油化学会編)の[2.3.3-1996 エステル価]及び[2.3.6-1996 ヒドロキシル価]に準じて測定される。
【0018】
【数1】
【0019】
成分(a)のポリグリセリン脂肪酸エステルの製造方法に特に制限はなく、エステル化反応等、自体公知の方法で製造することができる。
【0020】
成分(a)のポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、リョートーポリグリエステルB-70D(商品名;デカグリセリンベヘン酸エステル;エステル化度:約58%;三菱ケミカルフーズ社製)、リョートーポリグリエステルB-100D(商品名;デカグリセリンベヘン酸エステル;エステル化度:約83%;三菱ケミカルフーズ社製)、ポエムJ-46B(商品名;テトラグリセリンベヘン酸エステル;エステル化度:約90%;理研ビタミン社製)、ポエムTR-FB(商品名;トリグリセリンベヘン酸エステル;エステル化度:約85%;理研ビタミン社製)等が商業的に販売されており、本発明ではこれを用いることができる。
【0021】
なお、本発明において成分(a)のポリグリセリン脂肪酸エステルは、本発明の調味組成物の油相に適度な粘性を付与するための増粘剤として作用するものである。
【0022】
本発明の成分(b)は、主構成脂肪酸がオレイン酸であるポリグリセリン脂肪酸エステル(以下、「成分(b)のポリグリセリン脂肪酸エステル」ともいう)及び/又は主構成脂肪酸が炭素数14~18の飽和脂肪酸であるジグリセリン脂肪酸エステル(以下「成分(b)のジグリセリン脂肪酸エステル」ともいう)である。なお、ジグリセリン脂肪酸エステルとは、ポリグリセリン脂肪酸エステルの一種であり、該エステルを構成するポリグリセリンが平均重合度2のジグリセリンであるものをいう。
【0023】
成分(b)のポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するポリグリセリンの平均重合度に特に制限はないが、例えば、平均重合度2~10のもの、具体的には、ジグリセリン(平均重合度2)、トリグリセリン(平均重合度3)、テトラグリセリン(平均重合度4)、ペンタグリセリン(平均重合度5)、ヘキサグリセリン(平均重合度6)、ヘプタグリセリン(平均重合度7)、オクタグリセリン(平均重合度8)、デカグリセリン(平均重合度10)等が挙げられる。これらの中でも、平均重合度2のジグリセリンが好ましい。
【0024】
成分(b)のポリグリセリン脂肪酸エステルの主構成脂肪酸であるオレイン酸とは、炭素数18の一価不飽和脂肪酸である。
【0025】
成分(b)のポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化度に特に制限はないが、例えば、50%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましい。
【0026】
成分(b)のポリグリセリン脂肪酸エステルの製造方法に特に制限はなく、エステル化反応等、自体公知の方法で製造することができる。
【0027】
成分(b)のポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、ポエムDO-100V(商品名;ジグリセリンオレイン酸エステル;理研ビタミン社製)、SYグリスターMO-3S(商品名;テトラグリセリンオレイン酸エステル;阪本薬品工業社製)、サンソフトA-171E(商品名;ペンタグリセリンオレイン酸エステル;太陽化学社製)、SYグリスターMO-5S(商品名;ヘキサグリセリンオレイン酸エステル;阪本薬品工業社製)、ポエムJ-0381V(商品名;デカグリセリンオレイン酸エステル;理研ビタミン社製)等が商業的に販売されており、本発明ではこれらを用いることができる。
【0028】
成分(b)のジグリセリン脂肪酸エステルの主構成脂肪酸である炭素数14~18の飽和脂肪酸としては、具体的には、例えば、ミリスチン酸(炭素数14)、パルミチン酸(炭素数16)、ステアリン酸(炭素数18)等が挙げられる。
【0029】
成分(b)のジグリセリン脂肪酸エステルのエステル化度に特に制限はないが、例えば、50%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましい。言い換えれば、成分(b)のジグリセリン脂肪酸エステルとしてはモノエステル体の含有量の高いものが好ましく、例えば、モノエステル体の含有量が50質量%以上であるものが好ましく、70質量%以上であるものがより好ましい。
【0030】
成分(b)のジグリセリン脂肪酸エステルの製造方法に特に制限はなく、エステル化反応等、自体公知の方法で製造することができる。
【0031】
成分(b)のジグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、ポエムDM-100(商品名;ジグリセリンミリスチン酸エステル;理研ビタミン社製)、ポエムDP-95RF(商品名;ジグリセリンパルミチン酸エステル;理研ビタミン社製)、ポエムDS-100A(商品名;ジグリセリンステアリン酸エステル;理研ビタミン社製)等が商業的に販売されており、本発明ではこれらを用いることができる。
【0032】
なお、本発明の成分(b)としては、前記成分(b)のポリグリセリン脂肪酸エステルと成分(b)のジグリセリン脂肪酸エステルのいずれか1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を任意に組み合わせて用いてもよいが、少なくともジグリセリンオレイン酸エステルを用いることが好ましい。本発明の成分(b)としてジグリセリンオレイン酸エステルを用いた場合には、本発明の調味組成物を湯等に溶解した際の浮油が極めて細かい粒状の油滴となって液面全体に均一に分散しやすくなり、且つ、該湯等が例えば30℃以下まで冷めた場合であっても、浮油のゲル化を抑制することができる。
【0033】
本発明の調味組成物の油相中における前記油脂並びに成分(a)及び(b)の含有量に特に制限はないが、例えば、該油相100質量%中、油脂が80~99.8質量%、好ましくは94~99質量%、成分(a)が0.1~10質量%、好ましくは0.5~3.0質量%、成分(b)が0.1~10質量%、好ましくは0.5~3.0質量%である。
【0034】
本発明の調味組成物の油相は、前記油脂並びに成分(a)及び(b)以外に、本発明の効果を阻害しない範囲で他の任意の成分を含有していてもよい。そのような成分としては、例えば、成分(a)及び(b)以外の食品用乳化剤、酸化防止剤(抽出トコフェロール、L-アスコルビン酸パルミチン酸エステル等)等が挙げられる。
【0035】
本発明の調味組成物の固体相を構成する粉末食材は、粉末状(顆粒状、粒状等を含む)の食品素材であれば特に制限はなく、例えば、元来粉末状の形態をとる食品素材をそのまま用いてもよく、元来粉末状ではない食品素材を粉末状に精製又は加工したものを用いてもよい。具体的には、例えば、基礎調味料(食塩、砂糖、粉末醤油、粉末魚醤、粉末酢、粉末ソース等)、うま味調味料(グルタミン酸ナトリウム、核酸系調味料等)、香辛料(コショウ、オールスパイス、オルガノ、カルダモン、クミン、唐辛子、コリアンダー等)、香味野菜(オニオンパウダー、ガーリックパウダー、ジンジャーパウダー等)、風味原料(鰹節粉末、鯖節粉末、鰯節粉末、鯵節粉末、煮干粉末、昆布粉末、椎茸粉末、貝柱粉末等)、畜肉エキス(ビーフエキスパウダー、ポークエキスパウダー、チキンエキスパウダー等)、甘味料(ステビア末等)、着色料(カラメル色素等)、酸味料(クエン酸、乳酸等)、賦形剤(デキストリン、澱粉等)等が挙げられる。
【0036】
本発明の調味組成物中における前記油相と固体相の含有量の比率に特に制限はないが、例えば、油相:固体相(質量比)が25:75~75:25の範囲であることが好ましく、30:70~50:50であることがより好ましい。油相と固体相の含有量の比率がこのような範囲であると、得られる調味組成物が扱いやすい物性になる。
【0037】
本発明の調味組成物の製造方法に特に制限はないが、例えば、その好ましい一例は以下のとおりである。即ち、油脂に成分(a)及び(b)を加え、所望により加熱して溶融混合し、油相となる油脂組成物を調製する。その後、該油脂組成物に粉末食材を加え、所望により冷却しながら攪拌混合することにより、油相中に粉末食材が分散した状態のペースト状調味組成物を得ることができる。
【0038】
本発明の調味組成物の使用方法に特に制限はなく、従来のペースト状調味組成物と同様、これを湯等に溶解してそのままスープ等として喫食してもよく、各種食品の調理工程においてペースト状のまま、又は湯等に溶解してから添加して該食品の味付けに使用してもよい。特に、本発明の調味組成物は湯等に溶解した際に浮油が粘稠なゲル状に凝集しにくい点に特徴を有することから、湯等に溶解して使用することが好ましい。
【0039】
本発明の調味組成物の使用対象となる食品に特に制限はないが、例えば、中華スープ、ラーメンスープ(例えば、豚骨スープ等)、そばつゆ、うどんつゆ、鍋つゆ、味噌汁、野菜スープ、豆スープ、コンソメスープ、ポタージュスープ、チキンスープ、トムヤムクンスープ等のつゆ・スープ類、中華あんかけソース、和風あんかけソース、パスタソース、カレー、シチュー等のタレ・ソース類、餃子、中華まん、春巻等の包餡食品の中種、炒飯、野菜炒め、生姜焼き、ソテー、ハンバーグ、メンチカツ、コロッケ、から揚げ、麻婆豆腐等が挙げられる。
【0040】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例
【0041】
[ペースト状調味組成物の調製1]
(1)原材料
1)油脂
1-1)菜種油(商品名:ナタネサラダ油;ボーソー油脂社製)
1-2)ラード(商品名:純正ラード;ミヨシ油脂社製)
2)食品用乳化剤
<成分(a)の食品用乳化剤>
2-1)デカグリセリンベヘン酸エステル(商品名:リョートーポリグリエステルB-70D;エステル化度:約58%;三菱ケミカルフーズ社製)
2-2)テトラグリセリンベヘン酸エステル(商品名:ポエムJ-46B;エステル化度:約90%;理研ビタミン社製)
2-3)トリグリセリンベヘン酸エステル(商品名:ポエムTR-FB;エステル化度:約85%;理研ビタミン社製)
<成分(b)の食品用乳化剤>
2-4)ジグリセリンオレイン酸エステル(商品名:ポエムDO-100V;理研ビタミン社製)
2-5)テトラグリセリンオレイン酸エステル(商品名:SYグリスターMO-3S;阪本薬品工業社製)
2-6)ペンタグリセリンオレイン酸エステル(商品名:サンソフトA-171E;太陽化学社製)
2-7)ヘキサグリセリンオレイン酸エステル(商品名:SYグリスターMO-5S;阪本薬品工業社製)
2-8)デカグリセリンオレイン酸エステル(商品名:ポエムJ-0381V;理研ビタミン社製)
2-9)ジグリセリンミリスチン酸エステル(商品名:ポエムDM-100;理研ビタミン社製)
2-10)ジグリセリンパルミチン酸エステル(商品名:ポエムDP-95RF;理研ビタミン社製)
2-11)ジグリセリンステアリン酸エステル(商品名:ポエムDS-100A;理研ビタミン社製)
<成分(a)及び(b)以外の食品用乳化剤>
2-12)グリセリンオレイン酸エステル(商品名:エマルジーOL-100H;理研ビタミン社製)
2-13)ソルビタンオレイン酸エステル(商品名:ポエムO-80V;理研ビタミン社製)
2-14)プロピレングリコールオレイン酸エステル(商品名:リケマールPO-100V;理研ビタミン社製)
2-15)ジグリセリンラウリン酸エステル(商品名:ポエムDL-100;理研ビタミン社製)
2-16)ジグリセリンカプリル酸エステル(商品名:SYグリスターMCA150;阪本薬品工業社製)
2-17)グリセリンステアリン酸エステル(商品名:エマルジーMS;理研ビタミン社製)
2-18)デカグリセリンミリスチン酸エステル(商品名:SYグリスターMM-750;阪本薬品工業社製)
3)粉末食材
3-1)デキストリン(商品名:パインデックス♯2;松谷化学工業社製)
3-2)グルタミン酸ナトリウム(商品名:グルエース;MCフードスペシャリティーズ社製)
【0042】
(2)原材料の配合
前記原材料を用いて調製した調味組成物1~22の配合組成を表1及び2に示した。このうち、調味組成物1~14は本発明の実施例であり、調味組成物15~22はそれらに対する比較例である。なお、後述する目視評価を行いやすくするため、前記原材料の菜種油は、予め食品用着色料(商品名:リケカラーパプリカ240RG;トウガラシ色素製剤;理研ビタミン社製)を0.1%加えて橙色に着色したものを使用した。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
(3)調味組成物の調製方法
前記原材料のうち、油脂及び食品用乳化剤を2L容量のステンレス製ジョッキに入れ、湯煎にて80℃に加温して溶融混合し、油相となる油脂組成物を得た。該油脂組成物を湯煎から外した後、ここに粉末食材を加え、50℃まで冷却しながら低速混合機(型式:ラボラトリーハイパワーミキサーSM-103;アズワン社製)を用いて60rpmで5分間混合し、ペースト状の調味組成物1~22を各1000g得た。
【0046】
[熱湯への溶解試験]
(1)浮油の外観の目視評価
前記調味組成物1~22を100ml容量のビーカーに各1g入れ、ここに熱湯99gを加え、スプーンで攪拌して溶解し、これを試験液とした。該試験液について、液面に浮いた浮油の状態が安定するまで10分間静置した後、浮油の外観(油滴の形状・大きさ、液面への拡散状態)を目視により観察した。結果を表3に示す。
【0047】
(2)浮油のべたつきの目視評価
前記試験液1~22をスプーンで浮油ごとすくった後、該スプーンをゆっくりと90°傾けて、すくった試験液を流し落とした。その後、スプーンの表面を目視により観察し、流れ落ちずスプーンに付着した浮油の有無を確認した。ここで、スプーンへの浮油の付着が多いほど、浮油がべたついていたことを示す。結果は下記の基準に従って記号化し、表3に示す。
〔記号化基準〕
○:良好 スプーンへの浮油の付着がほとんどない
△:やや悪い スプーンのつぼ部分への付着がやや目立つ
×:悪い スプーンのつぼから柄にかけて多量の付着が見られる
【0048】
【表3】
【0049】
表3の結果から明らかなように、本発明の成分(a)及び(b)を含有する油脂組成物を油相として使用した調味組成物1~14は、熱湯に溶解した際に浮油が細かい粒状の油滴となっており、これをスプーンですくっても該スプーンに付着するような不快なべたつきはなかった。即ち、いずれも浮油が粘稠なゲル状に凝集していなかった。とりわけ、調味組成物1、9~13については浮油が極めて細かい粒状の油滴となって液面全体にほぼ均一に拡散しており、極めて良好であった。
一方、比較例の調味組成物15~22は、熱湯に溶解した際に浮油が不均一に凝集していることが外観からも明らかであり、さらに、該浮油はスプーンですくうと該スプーンに付着するようなべたつきを呈していた。
【0050】
[放冷後の評価試験]
(1)浮油の外観の目視評価
前記熱湯への溶解試験において評価が極めて良好であった調味組成物のうち、調味組成物1、9又は10を溶解した試験液1、9及び10について、さらに室温にて60分間静置して放冷した。放冷後の液温は25℃であった。放冷後の試験液1について、浮油の外観(油滴の形状・大きさ、液面への拡散状態)を目視により観察した。結果を表4に示す。
【0051】
(2)浮油のべたつきの評価
前記放冷後の試験液1、9又は10をスプーンで浮油ごとすくった後、該スプーンをゆっくりと90°傾けて、すくった試験液を流し落とした。その後、スプーンの表面を目視により観察し、流れ落ちずスプーンに付着した浮油の有無を確認した。ここで、スプーンへの浮油の付着が多いほど、浮油がべたついていたことを示す。結果は下記の基準に従って記号化し、表4に示す。
〔記号化基準〕
○:良好 スプーンへの浮油の付着がほとんどない
△:やや悪い スプーンのつぼ部分への付着がやや目立つ
×:悪い スプーンのつぼから柄にかけて多量の付着が見られる
【0052】
【表4】
【0053】
表4の結果から明らかなように、本発明の実施例である調味組成物1、9又は10を溶解した試験液1、9及び10はいずれも、液温が25℃まで低下しても浮油の外観が溶解した直後と同等であり、不快なべたつきも生じていなかった。
【0054】
[ペースト状調味組成物の調製2]
本発明の実用性を十分に確認するため、より実用的な中華風スープ用ペースト状調味組成物を想定した処方にて調味組成物を調製した。
【0055】
(1)原材料
1)油脂
1-1)菜種油(商品名:ナタネサラダ油;ボーソー油脂社製)
1-2)ラード(商品名:純正ラード;ミヨシ油脂社製)
2)食品用乳化剤
<成分(a)の食品用乳化剤>
2-1)デカグリセリンベヘン酸エステル(商品名:リョートーポリグリエステルB-70D;エステル化度:約58%;三菱ケミカルフーズ社製)
<成分(b)の食品用乳化剤>
2-2)ジグリセリンオレイン酸エステル(商品名:ポエムDO-100V;理研ビタミン社製)
3)粉末食材
3-1)デキストリン(商品名:パインデックス♯2;松谷化学工業社製)
3-2)食塩(ナイカイ塩業社製)
3-3)グルタミン酸ナトリウム(商品名:グルエース;MCフードスペシャリティーズ社製)
3-4)核酸系調味料(商品名:リボタイド;MCフードスペシャリティーズ社製)
3-5)ポークエキスパウダー(商品名:ポークエキスパウダーG;理研ビタミン社製)
3-6)チキンエキスパウダー(商品名:チキンパウダーCPR;理研ビタミン社製)
3-7)オニオンパウダー(商品名:オニオンパウダーSK-3760;日研フード社製)
3-8)ガーリックパウダー(商品名:ガーリックパウダーSK-3237;日研フード社製)
3-9)コショウ末(ヱスビー食品社製)
【0056】
(2)原材料の配合
前記原材料を用いて調製した調味組成物23の配合組成を表5に示した。
【0057】
【表5】
【0058】
(3)調味組成物の調製方法
前記原材料のうち、油脂及び食品用乳化剤を2L容量のステンレス製ジョッキに入れ、湯煎にて80℃に加温して溶融混合し、油相となる油脂組成物を得た。該油脂組成物を湯煎から外した後、ここに粉末食材を加え、50℃まで冷却しながら低速混合機(型式:ラボラトリーハイパワーミキサーSM-103;アズワン社製)を用いて60rpmで5分間混合し、ペースト状の調味組成物23を1000g得た。
【0059】
[熱湯への溶解試験]
(1)浮油の外観の目視評価
前記調味組成物23を100ml容量のビーカーに1g入れ、ここに熱湯99gを加え、スプーンで攪拌して溶解し、試験液23を得た。該試験液23について、液面に浮いた浮油の状態が安定するまで10分間静置した後、浮油の外観(油滴の形状・大きさ、液面への拡散状態)を目視により観察した。結果を表6に示す。
【0060】
(2)浮油のべたつきの目視評価
前記試験液23をスプーンで浮油ごとすくった後、該スプーンをゆっくりと90°傾けて、すくった試験液23を流し落とした。その後、スプーンの表面を目視により観察し、流れ落ちずスプーンに付着した浮油の有無を確認した。ここで、スプーンへの浮油の付着が多いほど、浮油の粘度が高く、べたついていたことを示す。結果は下記の基準に従って記号化し、表6に示す。
〔記号化基準〕
○:良好 スプーンへの浮油の付着がほとんどない
△:やや悪い スプーンのつぼ部分への付着がやや目立つ
×:悪い スプーンのつぼから柄にかけて多量の付着が見られる
【0061】
【表6】
【0062】
表6の結果から明らかなように、油相及び固体相に各種呈味成分を配合したより実用的な処方の調味組成物23においても、本発明の成分(a)及び(b)を含有する油脂組成物を油相として使用したことにより、熱湯に溶解した際に浮油が粘稠なゲル状に凝集しなかった。
図1
図2
図3
図4