(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】車両灯具用光源ユニット及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
F21S 41/19 20180101AFI20230501BHJP
F21S 45/47 20180101ALI20230501BHJP
F21V 29/76 20150101ALI20230501BHJP
F21V 29/503 20150101ALI20230501BHJP
F21V 19/00 20060101ALI20230501BHJP
F21S 45/10 20180101ALI20230501BHJP
F21V 15/00 20150101ALI20230501BHJP
F21V 23/00 20150101ALI20230501BHJP
B29C 45/14 20060101ALI20230501BHJP
B29C 33/14 20060101ALI20230501BHJP
B29C 45/33 20060101ALI20230501BHJP
B29C 45/44 20060101ALI20230501BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20230501BHJP
【FI】
F21S41/19
F21S45/47
F21V29/76
F21V29/503 100
F21V19/00 150
F21V19/00 170
F21S45/10
F21V19/00 212
F21V15/00 100
F21V19/00 450
F21V23/00 150
B29C45/14
B29C33/14
B29C45/33
B29C45/44
F21Y115:10 500
(21)【出願番号】P 2019051918
(22)【出願日】2019-03-19
【審査請求日】2022-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100186060
【氏名又は名称】吉澤 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100145458
【氏名又は名称】秋元 正哉
(72)【発明者】
【氏名】阿野 浩一郎
(72)【発明者】
【氏名】嘉藤 修央
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-004688(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/19
F21S 45/47
F21V 29/76
F21V 29/503
F21V 19/00
F21S 45/10
F21V 15/00
F21V 23/00
B29C 45/14
B29C 33/14
B29C 45/33
B29C 45/44
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の給電端子と樹脂製のベースとが一体形成されてなる給電側端子ベースと、金属製のヒートシンクとを、第1のフィラーを含有した第1の樹脂でインサート成形して一体化することにより一次成形品を形成する一次成形工程と、
前記一次成形品を、第2のフィラーを含有した第2の樹脂でインサート成形して一体化することにより二次成形品を形成する二次成形工程と、
前記二次成形品の前記第2の樹脂で形成された部分から露出した前記ヒートシンク上にLED実装基板を載設する工程と、
を有
し、
前記二次成形品において、前記給電側端子ベースのベースに設けられたフランジ部が、前記第1の樹脂による成形部と前記第2の樹脂による成形部とで挟まれた位置に位置
することを特徴とする車両灯具用光源ユニットの製造方法。
【請求項2】
前記第1のフィラーは前記第1の樹脂を前記第2の樹脂よりも固くし、
前記第2のフィラーは前記第2の樹脂を前記第1の樹脂よりも熱伝導性を高くする、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両灯具用光源ユニットの製造方法。
【請求項3】
前記第1のフィラーはセラミックであり、前記第1の樹脂は絶縁性の熱伝導性白色樹脂であり、
前記第2のフィラーはカーボンであり、前記第2の樹脂は導電性の熱伝導性黒色樹脂であることを特徴とする請求項2に記載の車両灯具用光源ユニットの製造方法。
【請求項4】
前記一次成形品はアンダーカット部を有し、前記二次成形工程で前記一次成形品のアンダーカット部にスライドコアを挿嵌して前記一次成形品を二次成形用金型にセットすることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれかに記載の車両灯具用光源ユニットの製造方法。
【請求項5】
前記第1の樹脂による成形部に、車両用灯具に係止する係止爪が形成されていることを特徴とする請求項1~請求項
4のいずれかに記載の車両灯具用光源ユニットの製造方法。
【請求項6】
前記第2の樹脂による成形部に、放熱フィンが形成されていることを特徴とする請求項1~請求項
5のいずれかに記載の車両灯具用光源ユニットの製造方法。
【請求項7】
金属製の給電端子と樹脂製のベースとが一体形成されてなる給電側端子ベースと、
第1のフィラーを含有した第1の樹脂で形成された本体ハウジング部と、
金属製のヒートシンクと、
第2のフィラーを含有した第2の樹脂で形成されたソケット部と、
前記本体ハウジング部から露出した前記ヒートシンク上に載設されたLED実装基板と、
を有
し、
前記第1のフィラーはセラミックであり、前記第1の樹脂を前記第2の樹脂よりも固くし、
前記第2のフィラーはカーボンであり、前記第2の樹脂を前記第1の樹脂よりも熱伝導性を高くし、
前記第1の樹脂は絶縁性の熱伝導性白色樹脂であり、前記第2の樹脂は導電性の熱伝導性黒色樹脂である
ことを特徴とする車両灯具用光源ユニット。
【請求項8】
金属製の給電端子と樹脂製のベースとが一体形成されてなる給電側端子ベースと、
第1のフィラーを含有した第1の樹脂で形成された本体ハウジング部と、
金属製のヒートシンクと、
第2のフィラーを含有した第2の樹脂で形成されたソケット部と、
前記本体ハウジング部から露出した前記ヒートシンク上に載設されたLED実装基板と、を有し、
前記給電側端子ベースのベースに設けられたフランジ部が、前記本体ハウジング部と前記ソケット部とで挟まれた位置に位置することを特徴とす
る車両灯具用光源ユニット。
【請求項9】
前記本体ハウジング部に、車両用灯具に係止する係止爪が形成されていることを特徴とする請求項
7又は請求項
8に記載の車両灯具用光源ユニット。
【請求項10】
前記ソケット部に、放熱フィンが形成されていることを特徴とする請求項
7~請求項
9のいずれかに記載の車両灯具用光源ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具の光源に用いる光源ユニット及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用灯具に用いる光源ユニットとしては、例えば特許文献1に光源ユニットとして開示されたものがある。
【0003】
開示された光源ユニットは、熱伝導性の高い金属材料からなり、第1の放熱部、第2の放熱部、第3の放熱部及び第4の放熱部の4つの放熱部を有する放熱板と、熱伝導性に優れた樹脂材料からなる樹脂成形部とがインサート成形により一体化されてソケットハウジングが形成され、ソケットハウジングの樹脂成形部から露出した放熱板の第1の放熱部に、基板上に発光素子及び各種の制御素子が実装されてなる光源モジュールが載設されている。
【0004】
これにより、発光素子の点灯時の発熱が、熱伝導性の高い金属材料からなる放熱板と熱伝導性に優れた樹脂材料からなる樹脂成形部に伝わり発光素子の発熱に対する放熱効果の向上が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記構成からなる光源ユニットは、樹脂成形部に優れた熱伝導性を持たせるためにカーボン等が含有された樹脂材料で形成されている。樹脂成形部にカーボン等が含有されているために樹脂成形部が脆い性質を有するものとなり、光源ユニットを車両用灯具に係止して取り付ける際に樹脂成形部に設けた係止爪が係止時の擦れによって削られて車両用灯具内に異物が混入する可能性がある。
【0007】
そこで、本発明は上記問題に鑑みて創案なされたもので、その目的とするところは、車両用灯具の光源に用いたときに車両用灯具に係止爪を介して取り付ける際に係止爪の擦れによる塵が発生することがない光源ユニット及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載された発明は、金属製の給電端子と樹脂製のベースとが一体形成されてなる給電側端子ベースと、金属製のヒートシンクとを、第1のフィラーを含有した第1の樹脂でインサート成形して一体化することにより一次成形品を形成する一次成形工程と、前記一次成形品を、第2のフィラーを含有した第2の樹脂でインサート成形して一体化することにより二次成形品を形成する二次成形工程と、前記二次成形品の前記第2の樹脂で形成された部分から露出した前記ヒートシンク上にLED実装基板を載設する工程と、を有し、前記二次成形品において、前記給電側端子ベースのベースに設けられたフランジ部が、前記第1の樹脂による成形部と前記第2の樹脂による成形部とで挟まれた位置に位置、することを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の請求項2に記載された発明は、請求項1において、前記第1のフィラーは前記第1の樹脂を前記第2の樹脂よりも固くし、前記第2のフィラーは前記第2の樹脂を前記第1の樹脂よりも熱伝導性を高くする、ことを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の請求項3に記載された発明は、請求項2において、前記第1のフィラーはセラミックであり、前記第1の樹脂は絶縁性の熱伝導性白色樹脂であり、前記第2のフィラーはカーボンであり、前記第2の樹脂は導電性の熱伝導性黒色樹脂であることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の請求項4に記載された発明は、請求項1~請求項3のいずれかにおいて、前記一次成形品はアンダーカット部を有し、前記二次成形工程で前記一次成形品のアンダーカット部にスライドコアを挿嵌して前記一次成形品を二次成形用金型にセットすることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の請求項5に記載された発明は、請求項1~請求項4のいずれかにおいて、前記第1の樹脂による成形部に、車両用灯具に係止する係止爪が形成されていることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の請求項6に記載された発明は、請求項1~請求項5のいずれかにおいて、前記第2の樹脂による成形部に、放熱フィンが形成されていることを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の請求項7に記載された発明は、金属製の給電端子と樹脂製のベースとが一体形成されてなる給電側端子ベースと、第1のフィラーを含有した第1の樹脂で形成された本体ハウジング部と、金属製のヒートシンクと、第2のフィラーを含有した第2の樹脂で形成されたソケット部と、前記本体ハウジング部から露出した前記ヒートシンク上に載設されたLED実装基板と、を有し、前記第1のフィラーはセラミックであり、前記第1の樹脂を前記第2の樹脂よりも固くし、前記第2のフィラーはカーボンであり、前記第2の樹脂を前記第1の樹脂よりも熱伝導性を高くし、前記第1の樹脂は絶縁性の熱伝導性白色樹脂であり、前記第2の樹脂は導電性の熱伝導性黒色樹脂であることを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明の請求項8に記載された発明は、金属製の給電端子と樹脂製のベースとが一体形成されてなる給電側端子ベースと、第1のフィラーを含有した第1の樹脂で形成された本体ハウジング部と、金属製のヒートシンクと、第2のフィラーを含有した第2の樹脂で形成されたソケット部と、前記本体ハウジング部から露出した前記ヒートシンク上に載設されたLED実装基板と、を有し、前記給電側端子ベースのベースに設けられたフランジ部が、前記本体ハウジング部と前記ソケット部とで挟まれた位置に位置することを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明の請求項9に記載された発明は、請求項7又は請求項8において、前記本体ハウジング部に、車両用灯具に係止する係止爪が形成されていることを特徴とするものである。
【0020】
また、本発明の請求項10に記載された発明は、請求項7~請求項9のいずれかにおいて、前記ソケット部に、放熱フィンが形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、給電側端子ベースと固定側端子ベースとヒートシンクとを白色樹脂によりインサート成形して一次成形品を形成し、一次成形品を黒色樹脂によりインサート成形して二次成形品を形成し、二次成形品の前記白色樹脂で形成された部分から露出したヒートシンク上にLED実装基板を載設して車両灯具用光源ユニットを形成した。
【0022】
その結果、車両用灯具の光源に用いても外からの外観上の見栄えに違和感を与えることがなく、車両用灯具への嵌合取付けに際して嵌合による塵が発生することがなく、製造工程においてメンテナンス性の高い成形金型を用いることが可能な光源ユニットが実現した。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の車両灯具用光源ユニットの分解斜視図である。
【
図2】車両灯具用光源ユニットを斜め上方から見た斜視図である。
【
図8】ヒートシンクを斜め上方から見た斜視図である。
【
図10】一次成形用金型に溶融成形樹脂を充填した状態のX-X方向断面図である。
【
図13】二次成形用金型のX-X方向断面図である。
【
図14】二次成形用金型に溶融成形樹脂を充填した状態のX-X方向断面図である。
【
図18】従来の端子ベースを用いた二次成形品のY-Y方向断面図である。
【
図19】本発明に係る端子ベースを用いた二次成形品のY-Y方向断面図である。
【
図20】本発明に係る車両灯具用光源ユニットを用いた車両用灯具の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、この発明の好適な実施形態を
図1~
図20を参照しながら、詳細に説明する(同一部分については同じ符号を付す)。尚、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの実施形態に限られるものではない。
【0025】
図1は本発明の車両灯具用光源ユニットの分解斜視図、
図2は車両灯具用光源ユニットを斜め上方から見た斜視図、
図3は車両灯具用光源ユニットの上面図、
図4は
図3のA-A(X-X方向)断面図、
図5は
図3のB-B(Y-Y方向)断面図、
図6は端子ベースの上面図、
図7は端子ベースの側面図、
図8はヒートシンクを斜め上方から見た斜視図である。
【0026】
車両灯具用光源ユニット(以下、「光源ユニット」と略称する)1は、LED実装基板10、端子ベース20、本体ハウジング部30、ヒートシンク40及びソケット部50を有しており、そのうち、端子ベース20は給電側端子ベース21と固定側端子ベース25とで構成され、更に、端子ベース20と本体ハウジング部30とヒートシンク40とが一体形成されて本体部2が形成され、前記本体部2とソケット部50とが一体形成されて光源ユニットハウジング部3が形成され、前記光源ユニットハウジング部3にLED実装基板10が載設されて光源ユニット1が形成されている。
【0027】
LED実装基板10は、回路基板11上に光源のLED12及びその点灯制御部品13等が実装されている。
【0028】
端子ベース20は、互いに平行に直線状に延設された一対の給電端子22と樹脂材料からなるベース23とが一体形成されてなる給電側端子ベース21と、直線状に延設された一本の固定端子26と樹脂材料からなるベース27とが一体形成されてなる固定側端子べース25とが並設されている。
【0029】
給電側端子ベース21のベース23は、一対の給電端子22が貫通すると共にその貫通方向に沿って略平板状に延設された立設部23a及び立設部23aから垂直方向に略平板状に延設されたフランジ部23bを有している。同様に、固定側端子ベース25のベース27は、一本の固定端子26が貫通すると共にその貫通方向に沿って略平板状に延設された立設部27a及び立設部27aから垂直方向に略平板状に延設されたフランジ部27bを有している。
【0030】
本体ハウジング部30は、セラミックフィラーを含有した絶縁性の熱伝導性白色樹脂で形成され、略筒状体の外観を有し、内部に該内部を塞ぐように仕切挟持部31が設けられていると共に側壁外面には該外面から突出する係止爪32及び突起部33が設けられている。本体ハウジング部30を形成する樹脂のフィラーはセラミックに限られないが、後述するソケット部50を形成する樹脂よりも擦れに対して削れが生じにくい樹脂(=固い樹脂)となるようなものを選択する。
【0031】
ヒートシンク40は、突出して盛り上がると共に天面41を平坦面とする隆起部42を設けた所定の幅の基台部43と、基台部43の両端側の夫々から前記隆起部42の突出方向と反対方向に延びて外側に折曲した一対の連接部44と、夫々の連接部44の両端側から前記隆起部42の突出方向と反対方向に延びる一対の脚部45を有している。ヒートシンク40は各部分で厚みが異なり全体としてブロック状に形成されている。
【0032】
ソケット部50は、カーボンフィラーを含有した導電性の熱伝導性黒色樹脂で形成され、台座部51の一方の側に窪み52を有すると共に台座部51の他方の側に、互いに同一方向に延びる複数の放熱フィン53が平行に並設されている。ソケット部50を形成する樹脂のフィラーはカーボンに限られないが、前述の本体ハウジング部30を形成する樹脂よりも熱伝導性が高い樹脂となるようなものを選択する。
【0033】
次に、上記構成からなる光源ユニットの製造方法について説明する。
【0034】
第1の工程(
図6及び
図7参照)において、一対の給電端子22を絶縁性樹脂でインサート成形することにより給電端子22とベース23とが一体化されてなる給電側端子ベース21を形成し、同様に、一本の固定端子26を絶縁性樹脂でインサート成形することにより固定端子26とベース27とが一体化されてなる固定側端子ベース25を形成する。
【0035】
次に、第2の工程(
図9(X-X方向断面図)参照)において、給電側端子ベース(図示せず)、固定側端子ベース(図示せず)及びヒートシンク40を、上金型61、下金型62及びスライドコア63からなるインサート成形用金型(以下、「一次成形用金型」と呼称する)60にセットする。給電側端子ベース、固定側端子ベース及びヒートシンク40がセットされた一次成形用金型60内には、本体ハウジング部を形成するキャビティ64が設けられている。
【0036】
次に、第3の工程(
図10(X-X方向断面図)参照)において、一次成形用金型60に設けられたキャビティ64内に、セラミックフィラーを含有した絶縁性の熱伝導性白色樹脂からなる溶融成形樹脂65を充填して固化し、固化した成形品(一次成形品)を一次成形用金型60から取り出してインサート成形による一体成形品の本体部2を得る。
【0037】
本体部2は、
図11(X-X方向断面図)及び
図12(Y-Y方向断面図)に示すように、ヒートシンク40を挟んだ両側に給電側端子ベース21及び固定側端子ベース25が位置すると共に、前記給電側端子ベース21及び固定側端子ベース25とヒートシンク40の隆起部42、基台部43、連接部44を覆うように本体ハウジング部30が位置している。
【0038】
次に、第4の工程(
図13(X-X方向断面図)参照)において、端子ベース(図示せず)、ヒートシンク40及び本体ハウジング部30からなる一次成形品の本体部2を上金型71、下金型72及びスライドコア73からなるインサート成形用金型(以下、「二次成形用金型」と呼称する)70にセットする。本体部2がセットされた二次成形用金型70内には、ソケット部を形成するキャビティ74が設けられている。
【0039】
次に、第5の工程(
図14(X-X方向断面図)参照)において、二次成形用金型70に設けられたキャビティ74内に、カーボンフィラーを含有した導電性の熱伝導性黒色樹脂からなる溶融成形樹脂75を充填して固化し、固化した成形品(二次成形品)を二次成形用金型70から取り出してインサート成形による一体成形品の光源ユニットハウジング部3を得る。
【0040】
光源ユニットハウジング部3は、
図15(X-X方向断面図)及び
図16(Y-Y方向断面図)に示すように、ヒートシンク40を挟んだ両側に給電側端子ベース21及び固定側端子ベース25が位置すると共に、前記給電側端子ベース21及び固定側端子ベース25とヒートシンク40の隆起部42、基台部43、連接部44を覆うように本体ハウジング部30が位置してなる本体部2の、ヒートトシンク40の脚部45を覆うようにソケット部50が位置している。
【0041】
次に、第6の工程において、二次成形品の光源ユニットハウジング部3から露出した、ヒートシンク40の隆起部42の天面41にLED実装基板10を載設し、給電側端子ベース21の給電端子22及び固定側端子ベース25の固定端子26をLED実装基板10の回路基板11に機械的・電気的に接続(例えば、はんだ接合)して光源ユニットハウジング部3にLED実装基板10が搭載されてなる光源ユニット1(
図4及び
図5参照)が形成される。LED実装基板10はヒートシンク40上に熱伝導性グリスを介して実装されている。
【0042】
ところで、一次成形品の本体部2は、一次成形時の一次成形用金型60を構成するスライドコア63によって突起部33にアンダーカット部34が形成されており(
図11参照)、インサート成形による二次成形において二次成形用金型70に一次成形品の本体部2をセットする際に、二次成形用金型70を構成するスライドコア73が本体部2のアンダーカット部34に挿嵌されることにより該スライドコア73によって二次成形用金型70内に本体部2が保持される(
図13参照)。
【0043】
したがって、二次成形用金型70内にセットされた本体部2は、その下端(具体的には、ヒートシンク40の脚部45の下端45a)が二次成形用金型70内のキャビティ74の内面74aに当接することがなく、キャビティ74内へ充填された溶融成形樹脂75が脚部45の全面に亘って被覆する(
図14参照)。
【0044】
つまり、成形工程(一次成形工程及び二次成形工程)において、上記の背景技術で示したような移動型を設けて溶融成形樹脂の充填途中に移動して更に引き続き溶融成形樹脂を充填するような必要性がなく、メンテナンス性の高い成形金型を用いてインサート成形を行うことが可能になる。
【0045】
また、
図17(断面図)で示すような従来形状の端子ベース80(給電側端子ベース81及び固定側端子ベース85)、具体的には、一対の給電端子82と、該給電端子82が貫通すると共にその貫通方向に沿って略平板状に延設されたベース83とが一体形成されてなる給電側端子ベース81及び一本の固定端子86と、該固定端子86が貫通すると共にその貫通方向に沿って略平板状に延設されたベース87とが一体形成されてなる固定側端子ベース85とを用いて一次成形を行う場合、
図18(Y-Y方向断面図)に示すように一次成形品の本体部2の本体ハウジング部30には厚肉部分(肉厚α1及び肉厚α2)が生じる。
【0046】
そこで、一次成形用金型60を用いた一次成形によって厚肉部分を有する本体部2を形成する場合、厚肉部分の厚みが厚すぎると該厚肉部分を形成するキャビティ64の容積が大きくなって溶融成形樹脂65の冷却固化時の収縮率が高くなり、厚肉部分にボイド(巣)が発生する恐れがある。
【0047】
それに対し、
図6及び
図7に示す形状の端子ベース20(給電側端子ベース21及び固定側端子ベース25)を用いて一次成形を行う場合、
図19(Y-Y方向断面図)に示すように給電側端子ベース21のベース23のフランジ部23b及び固定側端子ベース25のベース27のフランジ部27bによって一次成形品の本体部2の本体ハウジング部30には厚肉部分の形成が阻止されて肉厚β1及び肉厚β2が、β1<α1、β2<α2に抑制される。
【0048】
これにより、一次成形用金型60を用いた一次成形によって本体部2を形成する場合、容積(厚み)の大きいキャビティ64が必要ないため溶融成形樹脂65の冷却固化時の収縮によるボイドの発生が防止される。
【0049】
また、一次成形品の本体部2を溶融成形樹脂75によるインサート成形によって一体化して二次成形品の光源ユニットハウジング部3を得る場合、一次成形品に厚みの薄すぎる部分が存在すると、二次成形時の溶融成形樹脂75の充填時の注入圧力によって薄肉部分が突き破られる恐れがある。
【0050】
この場合、一次成形品におよそ5mm程度以上の肉厚があれば上記不具合の発生を防止することができる。但し、ボイドの発生する肉厚以下の肉厚にして適宜な均一化された厚みに設定する必要がある。
【0051】
なお、
図19の矢印C部でもわかるように、一次成形品の本体部2と二次成形のインサート成形によるソケット部50との界面を凹凸形状に形成することにより、界面の面積を大きくして接合強度を高めることができる。
【0052】
更に、給電側端子ベース21のベース23及び固定側端子ベース25のベース27の夫々を、一次成形時の、セラミックフィラーを含有した絶縁性の熱伝導性白色樹脂からなる溶融成形樹脂65と同一の樹脂材料で形成することにより、互いの接着強度を高めることができる。
【0053】
また、二次成形時の成形機のシリンダー温度を一次成形時の成形機のシリンダー温度よりも高めに設定する。具体的には、例えば、一次成形樹脂の溶融温度を230℃とし、二次成形樹脂の溶融温度を280℃とする。これにより、二次成形時の溶融成形樹脂が一次成形品側の界面を溶融させることで互いの密着性を高めることができる。
【0054】
更に、上記構成の光源ユニット1は
図20(断面図)に示すように、例えば、ランプボディ91とアウターカバー92を有する車両用灯具90にランプボディ91を介して取り付けた場合、アウターカバー92を通して灯具内の光源ユニット1を見ると、白色樹脂で形成された本体ハウジング部30は視認されるが黒色樹脂で形成されたソケット部50はランプボディ91に遮蔽されて視認されない。
【0055】
そのため、外から見たときの外観上の見栄えに違和感を与えることがなく、商品性の高い車両用灯具が実現する。
【0056】
また、光源ユニット1のアウターカバー92への取り付けに際して、取り付けに係る係止爪32が硬い材質のセラミックフィラーを含有した絶縁性の熱伝導性白色樹脂で形成されており、車両用灯具に係止爪を介して取り付ける際に係止爪の擦れによる塵が発生することがなく、信頼性の高い車両用灯具90が実現する。
【0057】
なお、一次成形に用いる溶融成形樹脂及び二次成形に用いる溶融成形樹脂は、例えば、PET、PBT、ナイロン等の同一母材が用いられ、前記母材に対して一次成形に用いる溶融成形樹脂にはセラミックフィラーが含有され、二次成形に用いる溶融成形樹脂にはカーボンフィラーが含有されている。
【0058】
なお、上記実施形態においてはLED実装基板10の固定に固定端子26を用いたが、これに限られず、例えば熱伝導性接着材を用いて固定してもよい。この場合、固定端子26は省略される。
【符号の説明】
【0059】
1… 車両灯具用光源ユニット
2… 本体部
3… 光源ユニットハウジング部
10… LED実装基板
11… 回路基板
12… LED
13… 点灯制御部品
20… 端子ベース
21… 給電側端子ベース
22… 給電端子
23… ベース
23a… 立設部
23b… フランジ部
25… 固定側端子ベース
26… 固定端子
27… ベース
27a… 立設部
27b… フランジ部
30… 本体ハウジング部
31… 仕切挟持部
32… 係止爪
33… 突起部
34… アンダーカット部
40… ヒートシンク
41… 天面
42… 隆起部
43… 基台部
44… 連接部
45… 脚部
45a… 下端
50… ソケット部
51… 台座部
52… 窪み
53… 放熱フィン
60… インサート成形用金型(一次成形用金型)
61… 上金型
62… 下金型
63… スライドコア
64… キャビティ
65… 成形樹脂
70… インサート成形用金型(二次成形用金型)
71… 上金型
72… 下金型
73… スライドコア
74… キャビティ
74a… 内面
75… 成形樹脂
80… 端子ベース
81… 給電側端子ベース
82… 給電端子
83… ベース
85… 固定側端子ベース
86… 固定端子
87… ベース
90… 車両用灯具
91… ランプボディ
92… アウターカバー