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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】ターボ冷凍機
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/58 20060101AFI20230501BHJP
   F04D 29/058 20060101ALI20230501BHJP
   F25B 1/053 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
F04D29/58 Q
F04D29/058
F25B1/053
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019058633
(22)【出願日】2019-03-26
(65)【公開番号】P2020159263
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-12-24
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 泰士
(72)【発明者】
【氏名】八幡 直樹
(72)【発明者】
【氏名】金子 毅
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-506087(JP,A)
【文献】特開2000-002469(JP,A)
【文献】実開平03-019498(JP,U)
【文献】国際公開第2018/022343(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/188616(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/58
F04D 29/058
F25B 1/053
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮するターボ圧縮機と、前記ターボ圧縮機から吐出された冷媒を凝縮させる凝縮器と、前記凝縮器から導かれた液冷媒を膨張させる膨張弁と、前記膨張弁から導かれた冷媒を蒸発させる蒸発器と、を有する冷凍サイクルを備え、
前記ターボ圧縮機は、
羽根車と、
該羽根車を回転させる回転軸と、
該回転軸を支持する磁気軸受と、
前記膨張弁よりも前記冷凍サイクルの上流側の高圧部からガス冷媒を冷却媒体として前記磁気軸受に供給するガス冷媒供給経路と、
前記磁気軸受を通過した後のガス冷媒を前記膨張弁よりも前記冷凍サイクルの下流側の低圧部に導くガス冷媒返送経路と、
を備え
前記磁気軸受を保持する保持部と、
前記保持部に固定されるとともに、前記磁気軸受の側方に設けられた補助軸受と、
前記保持部、前記磁気軸受及び前記補助軸受に囲まれた空間に、前記ガス冷媒供給経路からガス冷媒が供給されるターボ冷凍機。
【請求項2】
前記ガス冷媒供給経路から供給されたガス冷媒は、前記磁気軸受と前記回転軸との間を通過する請求項1に記載のターボ冷凍機。
【請求項3】
前記ガス冷媒供給経路は、前記回転軸の軸線方向に形成された軸線方向ガス冷媒供給穴と、該軸線方向ガス冷媒供給穴に接続されるとともに前記磁気軸受側に向かって半径方向外側に形成された半径方向ガス冷媒供給穴と、を備えている請求項1又は2に記載のターボ冷凍機。
【請求項4】
前記ターボ圧縮機を収容するケーシングに対して冷却媒体が供給されるケーシング冷却部を備えている請求項1からのいずれかに記載のターボ冷凍機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気軸受によって支持される回転軸を有するターボ圧縮機を備えたターボ冷凍機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
遠心圧縮機の機械損失低減や潤滑油系統を無くすために、磁気軸受が適用される。ターボ冷凍機においても、上述のメリットに加え、定期メンテナンス項目の削減によるライフサイクルコスト低減のために適用されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-33348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
磁気軸受は電流を流すコイル部を備え、電流が流れることによってコイル部が発熱する。また、磁気軸受は、高速回転する回転軸を微小隙間で支持するため、この微小隙間部で攪拌損失として風損が発生する。コイル部の過熱防止のために冷却することが望まれる。冷却のために熱容量の大きい液冷媒を用いる方が冷却効率は高い。しかし、微小隙間に密度が大きい液体が供給されると、風損が増大して結果的にターボ冷凍機の効率低下を招いたり、磁気軸受の安定支持を妨げるといった問題がある。
【0005】
なお、特許文献1では、セラミック材製軸受に液冷媒を供給して冷却を行っているが、磁気軸受はセラミック材製軸受のように摺動摩擦による発熱がないため、磁気軸受の冷却については開示されていない。また、ガス冷媒をセラミック材製軸受に供給することが開示されているが、蒸発器で蒸発した低圧ガス冷媒を用いることとしているので、冷却のために必要な量のガス冷媒を供給することができないおそれがある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、ターボ圧縮機の回転軸に発生する風損を抑制するとともに、回転軸を支持する磁気軸受を冷却するために必要な冷却量を得ることができるターボ冷凍機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るターボ冷凍機は、冷媒を圧縮するターボ圧縮機と、前記ターボ圧縮機から吐出された冷媒を凝縮させる凝縮器と、前記凝縮器から導かれた液冷媒を膨張させる膨張弁と、前記膨張弁から導かれた冷媒を蒸発させる蒸発器と、を有する冷凍サイクルを備え、前記ターボ圧縮機は、羽根車と、該羽根車を回転させる回転軸と、該回転軸を支持する磁気軸受と、前記膨張弁よりも前記冷凍サイクルの上流側の高圧部からガス冷媒を冷却媒体として前記磁気軸受に供給するガス冷媒供給経路と、前記磁気軸受を通過した後のガス冷媒を前記膨張弁よりも前記冷凍サイクルの下流側の低圧部に導くガス冷媒返送経路と、を備えている。
【0008】
ガス冷媒供給経路から冷却媒体として電動機等の他の発熱体部で加熱されない状態でガス冷媒を磁気軸受に供給するので、磁気軸受を効果的に冷却することができる。また、冷却媒体として液冷媒ではなくガス冷媒を用いるので、回転軸で生じる風損を抑制することができる。
ガス冷媒返送経路によって、冷却媒体としてのガス冷媒を、膨張弁よりも上流側の高圧部から磁気軸受に導き、膨張弁よりも下流側の低圧部に返送することとした。これにより、冷凍サイクルの高低圧差を有効に利用して冷却冷媒ガスを供給することができるので、ガス冷媒を容易に冷却媒体として用いることができる。
【0009】
さらに、本発明の一態様に係るターボ冷凍機では、前記ガス冷媒供給経路から供給されたガス冷媒は、前記磁気軸受と前記回転軸との間を通過する。
【0010】
ガス冷媒供給経路から供給されたガス冷媒が磁気軸受と回転軸との間を通過するので、磁気軸受と回転軸との間の風損を抑制することができる。
【0011】
さらに、本発明の一態様に係るターボ冷凍機では、前記ガス冷媒供給経路は、前記回転軸の軸線方向に形成された軸線方向ガス冷媒供給穴と、該軸線方向ガス冷媒供給穴に接続されるとともに前記磁気軸受側に向かって半径方向外側に形成された半径方向ガス冷媒供給穴と、を備えている。
【0012】
軸線方向ガス冷媒供給穴によって回転軸の軸線方向にガス冷媒を流すとともに、半径方向ガス冷媒供給穴によって磁気軸受側に向かって半径方向外側にガス冷媒を流すこととした。このように、回転軸側からガス冷媒を供給することで、構成を簡素化することができる。また、半径方向ガス冷媒供給穴からは、回転軸の遠心力を利用してガス冷媒を供給することができる。これにより、ターボ冷凍機の高低差圧が低い運転条件であったとしても、確実にガス冷媒を供給することが出来る。
【0013】
さらに、本発明の一態様に係るターボ冷凍機では、前記磁気軸受を保持する保持部と、前記保持部に固定されるとともに、前記磁気軸受の側方に設けられた補助軸受と、前記保持部、前記磁気軸受及び前記補助軸受に囲まれた空間に、前記ガス冷媒供給経路からガス冷媒が供給される。
【0014】
磁気軸受を保持する保持部、磁気軸受及び補助軸受に囲まれた空間に、ガス冷媒供給経路からガス冷媒を供給することとした。このように囲まれた空間にガス冷媒を供給することで、磁気軸受の側方に先ずガス冷媒を供給し、その後にガス冷媒を磁気軸受と回転軸との間に流すことができる。これにより、磁気軸受の周囲にガス冷媒を確実に供給することができ、冷却効率を向上させることができる。
なお、補助軸受は、トラブル等によって磁気軸受が駆動しなくなった場合に回転軸に接触して回転軸を回転自在に支持するものである。補助軸受としては、例えば玉軸受を用いることができる。
【0015】
さらに、本発明の一態様に係るターボ冷凍機では、前記ターボ圧縮機を収容するケーシングに対して冷却媒体が供給されるケーシング冷却部を備えている。
【0016】
ターボ圧縮機のケーシングは、冷却媒体が供給されるケーシング冷却部によって冷却される。磁気軸受の発熱は、ケーシングに熱伝導し、ケーシング冷却部によって冷却される。このようにケーシングをヒートシンクとして使用することで、磁気軸受の冷却能力を増大させることができる。
ケーシング冷却部に供給される冷却媒体としては、例えば、冷媒サイクルから導かれる液冷媒や、外部から供給される冷却水を用いることができる。
【発明の効果】
【0017】
ガス冷媒で磁気軸受を冷却することとしたので、ターボ圧縮機の回転軸に発生する風損を抑制するとともに、回転軸を支持する磁気軸受を冷却するために必要な冷却量を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施形態に係るターボ冷凍機の概略構成図である。
図2図1のターボ圧縮機の縦断面図である。
図3図1の変形例を示した概略構成図である。
図4】本発明の第2実施形態に係るターボ冷凍機のターボ圧縮機を示した縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明に係る実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
【0020】
以下に、本発明に係る一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1には、ターボ冷凍機1の概略構成が示されている。
ターボ冷凍機1は、冷媒を圧縮するターボ圧縮機3と、ターボ圧縮機3によって圧縮された高温高圧のガス冷媒を凝縮する凝縮器5と、凝縮器5からの液冷媒を膨張させる膨張弁7と、膨張弁7によって膨張させられた液冷媒を蒸発させる蒸発器9とを備えている。
【0021】
ターボ圧縮機3は、2つの羽根車13a,13bを備えた遠心式の2段圧縮機であり、図示しないインバータ装置によって回転数制御された電動モータ10によって駆動される。インバータ装置は、図示しない制御部によってその出力が制御されている。なお、羽根車の数は限定されるものではなく、羽根車を1つとして1段圧縮機としても良い。
【0022】
ターボ圧縮機3の羽根車13a,13bの冷媒吸入口には、吸入冷媒流量を制御するインレットガイドベーン(図示せず)が設けられており、ターボ冷凍機1の容量制御が可能となっている。
【0023】
ターボ圧縮機3及び電動モータ10は、密閉状態とされたケーシング12内に収容されている。ケーシング12は、熱伝導率の高い金属製、例えばアルミ系合金等の金属製とされている。
【0024】
電動モータ10は、中心軸周りに回転するロータ20と、このロータ20の周囲に所定のギャップを有して設けられた概略円筒形状のステータ22とを備えている。ロータ20の回転出力は、回転シャフト(回転軸)24を介して羽根車13a,13bへと伝達される。
【0025】
凝縮器5では、ターボ圧縮機3から導かれた高温高圧の冷媒が凝縮する。凝縮器5には、冷媒を冷却するための冷却水が流れる冷却伝熱管26が挿通されている。冷却水は、図示しない冷却塔において外部へと排熱された後に、再び凝縮器5へと導かれるようになっている。
【0026】
蒸発器9には、膨張弁7で絞られた冷媒が導かれ、内部で蒸発する。蒸発器9において吸熱されることによって定格温度(例えば7℃)の冷水が得られる。蒸発器9には、外部負荷へ供給される冷水を冷却するための冷水伝熱管28が挿通されている。
【0027】
凝縮器5の下部(例えば底部)とケーシング12との間には、液冷媒供給配管14が設けられている。液冷媒供給配管14を介して、凝縮器5内の下部に貯留された液冷媒がケーシング12側に導かれる。なお、図示していないが、液冷媒の流量を調整する流量調整弁を液冷媒供給配管14に設けても良い。
【0028】
図1に示すように、凝縮器5の上部とケーシング12との間には、ガス冷媒供給配管(ガス冷媒供給経路)16が設けられている。ガス冷媒供給配管16を介して、凝縮器5内の上部に存在するガス冷媒がケーシング12側に導かれる。なお、なお、図示していないが、ガス冷媒の流量を調整する流量調整弁をガス冷媒供給配管16に設けても良い。ガス冷媒供給配管16の下流端は、羽根車13a,13bとは反対側のケーシング12の端部(図1において右端部)に接続されている。
【0029】
蒸発器9の上部とケーシング12との間には、冷媒返送配管(ガス冷媒返送経路)18が設けられている。冷媒返送配管18を介して、ケーシング12内の冷媒が蒸発器9の上部へと導かれる。
【0030】
図2には、ターボ圧縮機3の具体的構成が示されている。ターボ圧縮機3の回転シャフト24は、磁気軸受30によって回転自在に支持されている。
【0031】
電動モータ10の羽根車13a,13b側には、磁気軸受30の第1ラジアル磁気軸受コイル30aが設けられ、電動モータ10の羽根車13a,13bとは反対側には、磁気軸受30の第2ラジアル磁気軸受コイル30bが設けられている。第1ラジアル磁気軸受コイル30a及び第2ラジアル磁気軸受コイル30bによって、回転シャフト24のラジアル方向が支持されている。
【0032】
第1ラジアル磁気軸受コイル30aは、ケーシング12に固定された第1保持部44aの内周側に固定されて保持されている。第1保持部44aは、熱伝導率の良い金属製、例えばアルミ系合金等の金属製とされている。
第2ラジアル磁気軸受コイル30bは、ケーシング12に固定された第2保持部44bの内周側に固定されて保持されている。第2保持部44bは、熱伝導率の良い金属製、例えばアルミ系合金等の金属製とされている。
【0033】
第1ラジアル磁気軸受コイル30aの電動モータ10側には、回転シャフト24と第1ラジアル磁気軸受コイル30aとの間の間隔(ギャップ)を計測する第1ギャップセンサG1が設けられている。第1ギャップセンサG1の出力は、制御部へと送られる。
第2ラジアル磁気軸受コイル30bの電動モータ10側には、回転シャフト24と第2ラジアル磁気軸受コイル30bとの間の間隔(ギャップ)を計測する第2ギャップセンサG2が設けられている。第2ギャップセンサG2の出力は、制御部へと送られる。
【0034】
第1ラジアル磁気軸受コイル30aと羽根車13a,13bとの間には、第1補助ベアリング(補助軸受)32aが設けられている。第2ラジアル磁気軸受コイル30bの羽根車13a,13bとは反対側には、第2補助ベアリング32b(補助軸受)が設けられている。第1補助ベアリング32a及び第2補助ベアリング32bは、例えば玉軸受とされており、磁気軸受30が正常に駆動されている場合には回転シャフト24に対して所定のクリアランスが設けられている。これら補助ベアリング32a,32bは、トラブル等によって磁気軸受30が駆動しなくなった場合に回転シャフト24に接触して回転自在に支持するものである。
【0035】
第1補助ベアリング32aは、第1保持部44aの内周側に固定されて保持されている。第1補助ベアリング32aと第1ラジアル磁気軸受コイル30aとの間は離間しており、第1保持部44aの内周側には第1空間S1が形成されている。
第2補助ベアリング32bは、第2保持部44bに固定されて保持されている。第2補助ベアリング32bと第2ラジアル磁気軸受コイル30bとの間は離間しており、第2保持部44bの内周側には第2空間S2が形成されている。
【0036】
回転シャフト24の羽根車13a,13bとは反対側の端部(図2において左端)には、円板24aが固定されている。円板24aの両側には、複数対のスラスト磁気軸受コイル30cが設けられている。複数対のスラスト磁気軸受コイル30cによって円板24aが浮上した状態でスラスト方向の位置決めがなされる。これにより、回転シャフト24及び羽根車13a,13bのスラスト方向の位置が正確に決められるようになっている。
【0037】
図2に示すように、ガス冷媒供給配管16から供給されたガス冷媒は、回転シャフト24の中心軸線方向に形成された軸線方向ガス冷媒供給穴17aに導かれる。軸線方向ガス冷媒供給穴17aは、回転シャフト24の後端(図2において右端)から羽根車13a,13bの手前(より具体的には第1ラジアル磁気軸受コイル30aと第1補助ベアリング32aとの間に対応する位置)にかけて形成されている。
【0038】
軸線方向ガス冷媒供給穴17aには、回転シャフト24の半径方向外側に向けて形成された半径方向ガス冷媒供給穴17b1,17b2が接続されている。
【0039】
電動モータ10よりも羽根車13a,13b側に形成された第1半径方向ガス冷媒供給穴17b1は、第1ラジアル磁気軸受コイル30aに対応する位置に設けられている。具体的には、第1半径方向ガス冷媒供給穴17b1の出口は、第1ラジアル磁気軸受コイル30a、第1保持部44a及び第1補助ベアリング保持部45aによって囲まれた第1空間S1内に開口している。これにより、第1半径方向ガス冷媒供給穴17b1からガス冷媒が第1空間S1内に供給され、第1ラジアル磁気軸受コイル30aの側面を冷却するとともに、第1ラジアル磁気軸受コイル30aと回転シャフト24との間をガス冷媒が通過しながら第1ラジアル磁気軸受コイル30aを冷却するようになっている。冷却後のガス冷媒は、冷媒返送配管(ガス冷媒返送経路)18aからケーシング12の外部へと排出される。
【0040】
電動モータ10よりも羽根車13a,13bとは反対側に形成された第2半径方向ガス冷媒供給穴17b2は、第2ラジアル磁気軸受コイル30bに対応する位置に設けられている。具体的には、第2半径方向ガス冷媒供給穴17b2の出口は、第2ラジアル磁気軸受コイル30b、第2保持部44b及び第2補助ベアリング32bによって囲まれた第2空間S2内に開口している。これにより、第2半径方向ガス冷媒供給穴17b2からガス冷媒が第2空間S2内に供給され、第2ラジアル磁気軸受コイル30bの側面を冷却するとともに、第2ラジアル磁気軸受コイル30bと回転シャフト24との間をガス冷媒が通過しながら第2ラジアル磁気軸受コイル30bを冷却するようになっている。冷却後のガス冷媒は、冷媒返送配管18aからケーシング12の外部へと排出される。
【0041】
液冷媒供給配管14の下流端は、ケーシング12に設けられた冷却ジャケット(ケーシング冷却部)15に接続されている。冷却ジャケット15は、ステータ22の周囲に設けられ、液冷媒が流通する空間を有している。冷却ジャケット15は、ステータ22の軸線方向にわたって設けられている。冷却ジャケット15によって、ステータ22だけでなく、冷却ジャケット15近傍のケーシング12も熱伝導によって冷却される。
冷却ジャケット15内を流れてステータ22を冷却した後の冷媒は、第2冷媒返送配管18bからケーシング12の外部へ排出される。
【0042】
制御部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体等から構成されている。そして、各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記憶媒体等に記憶されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。なお、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
【0043】
<ターボ冷凍機1の動作>
次に、上記構成のターボ冷凍機1の動作について説明する。
ターボ圧縮機3は、蒸発器9からのガス冷媒を吸い込み、羽根車13a,13bにて圧縮を行う。圧縮されたガス冷媒は、凝縮器5へと送られ、冷却伝熱管26によって凝縮熱が除去されることによって凝縮する。凝縮後の液冷媒は、膨張弁7へと流れる。
膨張弁7へと流れた液冷媒は、膨張弁7にて膨張した後、蒸発器9へと送られる。蒸発器9にて、液冷媒は、冷水伝熱管28内を流れる冷水から蒸発潜熱を奪うことによって蒸発気化する。このように冷却された冷水は、図示しない外部負荷へと送られる。蒸発器9にて気化したガス冷媒は、再びターボ圧縮機3へと送られる。
【0044】
<ガス冷媒冷却>
ガス冷媒供給配管16からターボ圧縮機3に導かれたガス冷媒による冷却は、以下のように行われる。
ガス冷媒供給配管16を介して、凝縮器5から高圧のガス冷媒が回転シャフト24に形成した軸線方向ガス冷媒供給穴17aへと送られる。軸線方向ガス冷媒供給穴17aを流れたガス冷媒は、第1半径方向ガス冷媒供給穴17b1を介して第1空間S1へと導かれ、また、第2半径方向ガス冷媒供給穴17b2を介して第2空間S2へと導かれる。ガス冷媒は、第1空間S1を通り第1ラジアル磁気軸受コイル30aと回転シャフト24との間を通過することによって、第1ラジアル磁気軸受コイル30aを冷却する。また、ガス冷媒は、第2空間S2を通り第2ラジアル磁気軸受コイル30bと回転シャフト24との間を通過することによって、第2ラジアル磁気軸受コイル30bを冷却する。
磁気軸受コイル30a,30bの冷却を終えたガス冷媒は、第1冷媒返送配管18aを介して、低圧とされている蒸発器9へと返送される。
【0045】
<液冷媒冷却>
液冷媒供給配管14からターボ圧縮機3に導かれた液冷媒による冷却は、以下のように行われる。
液冷媒供給配管14を介して、凝縮器5から高圧の液冷媒がケーシング12に設けた冷却ジャケット15へと送られる。冷却ジャケット15内へと流れ込んだ液冷媒は、ステータ22の熱を奪い、電動モータ10の冷却を行う。これと同時にケーシング12も冷媒によって冷却されるので、第1保持部44aに保持された第1ラジアル磁気軸受コイル30a及び第2保持部44bに保持された第2ラジアル磁気軸受コイル30bも冷却される。
冷却ジャケット15にて冷却を終えた冷媒は、第2冷媒返送配管18bを介して、低圧とされている蒸発器9へと返送される。
【0046】
本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
ガス冷媒供給配管16から冷却媒体としてガス冷媒を磁気軸受コイル30a,30bに供給するので、磁気軸受コイル30a,30bを効果的に冷却することができる。また、冷却媒体として液冷媒ではなくガス冷媒を用いるので、回転シャフト24で生じる風損を抑制することができる。
第1冷媒返送配管18aによって、冷却媒体としてのガス冷媒を、膨張弁7よりも上流側の高圧部である凝縮器5から磁気軸受コイル30a,30bに導き、膨張弁7よりも下流側の低圧部である蒸発器9に返送することとした。これにより、冷凍サイクルの高低圧差を有効に利用することができるので、ガス冷媒を容易に冷却媒体として用いることができる。
【0047】
ガス冷媒供給配管16から供給されたガス冷媒が磁気軸受コイル30a,30bと回転シャフト24との間を通過するので、磁気軸受コイル30a,30bと回転シャフト24との間の風損を抑制することができる。
【0048】
軸線方向ガス冷媒供給穴17aによって回転シャフト24の軸線方向にガス冷媒を流すとともに、半径方向ガス冷媒供給穴17b1,17b2によって磁気軸受コイル30a,30b側に向かって半径方向外側にガス冷媒を流すこととした。このように、回転シャフト24側からガス冷媒を供給することで、構成を簡素化することができる。また、半径方向ガス冷媒供給穴17b1,17b2からは、回転シャフト24の遠心力を利用してガス冷媒を供給することができる。これにより、ターボ冷凍機の高低差圧が低い運転条件であったとしても、確実にガス冷媒を供給することが出来る。
【0049】
磁気軸受コイル30a,30bを保持する保持部44a,44b、磁気軸受コイル30a,30b及び補助ベアリング32a,32bに囲まれた空間S1,S2に、冷却用のガス冷媒を供給することとした。このように囲まれた空間S1,S2にガス冷媒を供給することで、磁気軸受コイル30a,30bの側方に先ずガス冷媒を供給し、その後にガス冷媒を磁気軸受コイル30a,30bと回転シャフト24との間に流すことができる。これにより、磁気軸受コイル30a,30bの周囲にガス冷媒を確実に供給することができ、冷却効率を向上させることができる。
【0050】
ターボ圧縮機3のケーシング12は、冷却媒体が供給される冷却ジャケット15によって冷却される。磁気軸受コイル30a,30bの発熱は、ケーシング12に熱伝導し、冷却ジャケット15によって冷却される。このようにケーシング12をヒートシンクとして使用することで、磁気軸受コイル30a,30bの冷却能力を増大させることができる。
【0051】
<変形例>
なお、本実施形態は、以下のように変形することができる。
図3に示すように、図1に示した構成に代えて、中間冷却器40を有する二段膨張の冷媒回路としても良い。中間冷却器40と凝縮器5との間には第1膨張弁7aが設けられ、中間冷却器40と蒸発器9との間には第2膨張弁7bが設けられている。中間冷却器40と2段目の羽根車13bの吸入側とを接続する中間圧ガス冷媒配管42が設けられている。本変形例では、液冷媒供給配管14’及びガス冷媒供給配管16’は、中間冷却器40からケーシング12へ導くようになっている。
【0052】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態で説明した磁気軸受コイル30a,30bを冷却するガス冷媒の経路が異なる。したがって、以下の説明では、第1実施形態に対して異なる部分を主として説明し、その他については第1実施形態と同様である。
【0053】
図4に示されているように、ガス冷媒供給配管16(図1参照)は、第1ガス冷媒供給配管16aと第2ガス冷媒供給配管16bに分岐する。第1ガス冷媒供給配管16aは、第1保持部44aに形成された第1ガス冷媒供給穴46aに接続されている。第1ガス冷媒供給穴46aの出口は、第1空間S1に開口している。第2ガス冷媒供給配管16bは、第2保持部44bに形成された第2ガス冷媒供給穴46bに接続されている。第2ガス冷媒供給穴46bの出口は、第2空間S2に開口している。
【0054】
本実施形態によれば、第1実施形態のように回転シャフト24に対して穴を形成せずに、保持部44a,44bにガス冷媒供給穴46a,46bを形成するだけで良いので加工が容易である。
【0055】
なお、上述した各実施形態では、冷却ジャケット15に供給される冷却媒体として液冷媒を用いることしたが、本発明はこれに限定されず、例えば、ターボ圧縮機3の外部から供給される冷却水を用いても良い。
【符号の説明】
【0056】
1 ターボ冷凍機
3 ターボ圧縮機
5 凝縮器
7 膨張弁
7a 第1膨張弁
7b 第2膨張弁
9 蒸発器
10 電動モータ
12 ケーシング
13a,13b 羽根車
14,14’ 液冷媒供給配管
15 冷却ジャケット(ケーシング冷却部)
16,16’ ガス冷媒供給配管(ガス冷媒供給経路)
16a 第1ガス冷媒供給配管
16b 第2ガス冷媒供給配管
17a 軸線方向ガス冷媒供給穴
17b1 第1半径方向ガス冷媒供給穴
17b2 第1半径方向ガス冷媒供給穴
18a 第1冷媒返送配管(ガス冷媒返送経路)
18b 第2冷媒返送配管
20 ロータ
22 ステータ
24 回転シャフト(回転軸)
24a 円板
26 冷却伝熱管
28 冷水伝熱管
30 磁気軸受
30a 第1ラジアル磁気軸受コイル
30b 第2ラジアル磁気軸受コイル
30c スラスト磁気軸受コイル
32a 第1補助ベアリング(補助軸受)
32b 第2補助ベアリング(補助軸受)
40 中間冷却器
42 中間圧ガス冷媒配管
44a 第1保持部
44b 第2保持部
G1 第1ギャップセンサ
G2 第2ギャップセンサ
S1 第1空間
S2 第2空間
図1
図2
図3
図4