(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】データ監視システム、データ監視方法およびデータ監視プログラム
(51)【国際特許分類】
H04L 12/22 20060101AFI20230501BHJP
G05B 23/02 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
H04L12/22
G05B23/02 Z
(21)【出願番号】P 2019086180
(22)【出願日】2019-04-26
【審査請求日】2022-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(74)【代理人】
【識別番号】100120385
【氏名又は名称】鈴木 健之
(72)【発明者】
【氏名】浦吉 大輝
(72)【発明者】
【氏名】石坂 智成
(72)【発明者】
【氏名】力石 健司
(72)【発明者】
【氏名】塩崎 和也
(72)【発明者】
【氏名】大滝 裕樹
【審査官】大石 博見
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-084173(JP,A)
【文献】特開2006-180330(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/22
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワーク上に配置され、対象装置の制御指令を出力する監視制御装置と、
前記ネットワーク上に配置され、前記制御指令に応じてメモリの第1領域内に前記対象装置の制御内容を示すプロセスデータを保持し、前記プロセスデータに基づいて前記対象装置を制御する制御装置と、
前記ネットワークを経由して前記制御装置に通信接続される監視装置と、を備え、
前記制御装置は、前記制御指令および前記対象装置の動作状態を考慮した動作の正誤を示す正誤信号を入力値とした演算処理により、前記対象装置を制御するための動作指令を算出すると共に、前記制御指令、前記正誤信号、および前記動作指令を前記プロセスデータとして保持し、
前記制御装置は、
前記制御指令の保持、前記正誤信号の保持、前記動作指令の算出、および前記動作指令の保持を前記対象装置の制御のための演算の周期
とする前記周期ごとに、前記メモリの第2領域内に前記第1領域内のプロセスデータをコピーし、前記第1領域内のプロセスデータに基づいた前記演算と並行して、前記コピーされたプロセスデータの圧縮および前記圧縮されたプロセスデータの前記監視装置への送信を行い、
前記監視装置は、前記制御装置から送信された前記圧縮されたプロセスデータを解凍し、前記解凍されたプロセスデータを出力する、データ監視システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記コピーされたプロセスデータの圧縮および前記圧縮されたプロセスデータの送信を実行するためのトリガ条件が満足された場合に、前記トリガ条件が満足された時点の前後に前記第2領域内にコピーされた、設定された演算周期分のプロセスデータをまとめて圧縮し、前記まとめて圧縮されたプロセスデータを前記監視装置に送信する、請求項1に記載のデータ監視システム。
【請求項3】
前記ネットワーク上に配置され、前記プロセスデータに基づいて前記対象装置の制御内容を図示するための図面データを前記監視装置に送信する保守装置を更に備え、
前記監視装置は、前記解凍されたプロセスデータと前記送信された図面データとに基づいて前記対象装置の制御内容を表示部に図示することで、前記解凍されたプロセスデータを出力する、請求項1または2に記載のデータ監視システム。
【請求項4】
前記監視装置は、第2のネットワーク上に配置され、
前記データ監視システムは、
前記ネットワーク上に配置され、前記ネットワークから前記第2のネットワークに向かう方向の通信が可能であり、前記監視装置に前記制御装置からの前記圧縮されたプロセスデータを送信する送信装置と、
前記第2のネットワーク上に配置され、前記ネットワークから前記第2のネットワークに向かう方向の通信が可能であり、前記送信装置から送信された前記圧縮されたプロセスデータを受信して前記監視装置に転送する受信装置と、を更に備える、請求項1~3のいずれか1項に記載のデータ監視システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記圧縮されたプロセスデータを、前記監視装置からの応答を要求しない送信方式で前記監視装置に送信する、請求項1~4のいずれか1項に記載のデータ監視システム。
【請求項6】
ネットワーク上に配置された監視制御装置が、対象装置の制御指令を出力する工程と、
前記ネットワーク上に配置された制御装置が、前記制御指令に応じてメモリの第1領域内に前記対象装置の制御内容を示すプロセスデータを保持し、前記プロセスデータに基づいて前記対象装置を制御する工程
であって、前記制御装置が、前記制御指令および前記対象装置の動作状態を考慮した動作の正誤を示す正誤信号を入力値とした演算処理により、前記対象装置を制御するための動作指令を算出すると共に、前記制御指令、前記正誤信号、および前記動作指令を前記プロセスデータとして保持することを含む工程と、
前記制御装置が、
前記制御指令の保持、前記正誤信号の保持、前記動作指令の算出、および前記動作指令の保持を前記対象装置の制御のための演算の周期
とする前記周期ごとに、前記メモリの第2領域内に前記第1領域内のプロセスデータをコピーする工程と、
前記制御装置が、前記第1領域内のプロセスデータに基づいた前記演算と並行して、前記コピーされたプロセスデータの圧縮および前記圧縮されたプロセスデータの前記ネットワークを経由した監視装置への送信を行う工程と、
前記監視装置が、前記制御装置から送信された前記圧縮されたプロセスデータを解凍し、前記解凍されたプロセスデータを出力する工程と、を備えるデータ監視方法。
【請求項7】
コンピュータを、
ネットワーク上に配置された監視制御装置からの対象装置の制御指令に応じてメモリの第1領域内に前記対象装置の制御内容を示すプロセスデータを保持し、前記プロセスデータに基づいて前記対象装置を制御する手段
であって、前記制御指令および前記対象装置の動作状態を考慮した動作の正誤を示す正誤信号を入力値とした演算処理により、前記対象装置を制御するための動作指令を算出すると共に、前記制御指令、前記正誤信号、および前記動作指令を前記プロセスデータとして保持する手段、
前記制御指令の保持、前記正誤信号の保持、前記動作指令の算出、および前記動作指令の保持を前記対象装置の制御のための演算の周期
とする前記周期ごとに、前記メモリの第2領域内に前記第1領域内のプロセスデータをコピーする手段、および
前記第1領域内のプロセスデータに基づいた前記演算と並行して、前記コピーされたプロセスデータの圧縮および前記圧縮されたプロセスデータの前記ネットワークを経由した監視装置への送信を行う手段、
として機能させるための、データ監視プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明による実施形態は、データ監視システム、データ監視方法およびデータ監視プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発電所における監視制御ネットワークのデータを活用するために、監視制御ネットワークを外部ネットワークに接続する要求が高まっている。このような要求に応じて、監視制御ネットワークと外部ネットワークとの間に一方向伝送装置を設置し、一方向伝送装置を介して監視制御ネットワークから外部ネットワークにデータを送信したり、あるいは、外部ネットワーク上の端末で遠隔地から監視制御ネットワークのデータを監視したりすることが可能となった。一方向伝送装置を用いることで、安全性を確保しつつ、監視制御ネットワーク上のデータを外部ネットワーク側で監視することができる。
【0003】
一方向伝送装置が適用されたシステムにおいては、監視制御ネットワークから外部ネットワークへのデータ送信のみが許容され、外部ネットワークから監視制御ネットワークへのデータ送信はブロックされる。そのため、監視制御ネットワーク上の制御装置に対する外部ネットワークからのデータ読み出し指示はブロックされ、外部ネットワークから積極的に制御装置内のデータを参照することはできない。
【0004】
特許文献1には、発電プラントのプロセスデータを収集して制御装置内のプロセスデータ登録部に登録したうえで、登録されたデータを、一方向伝送装置を介して外部ネットワークに送信する制御装置が記載されている。特許文献1では、監視制御ネットワークの負荷上昇を回避するために、特定のデータのみを登録および送信するようになっている。このように、従来は、一方向伝送装置を介して制御装置内のデータを外部ネットワークに送信する際に、送信できるデータが限定的なものとなることから、外部ネットワークで監視できるデータが制限されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述した課題を解決するためになされたものであり、ネットワークの負荷に影響を与えずにネットワークの外部で監視できるネットワーク上のデータの制限を緩和することができるデータ監視システム、データ監視方法およびデータ監視プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態によるデータ監視システムは、
ネットワーク上に配置され、対象装置の制御指令を出力する監視制御装置と、
前記ネットワーク上に配置され、前記制御指令に応じてメモリの第1領域内に前記対象装置の制御内容を示すプロセスデータを保持し、前記プロセスデータに基づいて前記対象装置を制御する制御装置と、
前記ネットワークを経由して前記制御装置に通信接続される監視装置と、を備え、
前記制御装置は、前記対象装置の制御のための演算の周期ごとに、前記メモリの第2領域内に前記第1領域内のプロセスデータをコピーし、前記第1領域内のプロセスデータに基づいた前記演算と並行して、前記コピーされたプロセスデータの圧縮および前記圧縮されたプロセスデータの前記監視装置への送信を行い、
前記監視装置は、前記制御装置から送信された前記圧縮されたプロセスデータを解凍し、前記解凍されたプロセスデータを出力する。
【0008】
本実施形態によるデータ監視方法は、
ネットワーク上に配置された監視制御装置が、対象装置の制御指令を出力する工程と、
前記ネットワーク上に配置された制御装置が、前記制御指令に応じてメモリの第1領域内に前記対象装置の制御内容を示すプロセスデータを保持し、前記プロセスデータに基づいて前記対象装置を制御する工程と、
前記制御装置が、前記対象装置の制御のための演算の周期ごとに、前記メモリの第2領域内に前記第1領域内のプロセスデータをコピーする工程と、
前記制御装置が、前記第1領域内のプロセスデータに基づいた前記演算と並行して、前記コピーされたプロセスデータの圧縮および前記圧縮されたプロセスデータの前記ネットワークを経由した監視装置への送信を行う工程と、
前記監視装置が、前記制御装置から送信された前記圧縮されたプロセスデータを解凍し、前記解凍されたプロセスデータを出力する工程と、を備える。
【0009】
本実施形態によるデータ監視プログラムは、
コンピュータを、
ネットワーク上に配置された監視制御装置からの対象装置の制御指令に応じてメモリの第1領域内に前記対象装置の制御内容を示すプロセスデータを保持し、前記プロセスデータに基づいて前記対象装置を制御する手段、
前記対象装置の制御のための演算の周期ごとに、前記メモリの第2領域内に前記第1領域内のプロセスデータをコピーする手段、および
前記第1領域内のプロセスデータに基づいた前記演算と並行して、前記コピーされたプロセスデータの圧縮および前記圧縮されたプロセスデータの前記ネットワークを経由した監視装置への送信を行う手段、
として機能させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ネットワークの負荷に影響を与えずにネットワークの外部で監視できるネットワーク上のデータの制限を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施形態によるデータ監視システムを示すブロック図である。
【
図2】第1の実施形態によるデータ監視システムの動作例を示すフローチャートである。
【
図3】第1の実施形態によるデータ監視システムの動作例において、圧縮/送信スレッドの実行処理を示すフローチャートである。
【
図4】第1の実施形態によるデータ監視システムの動作例を示す模式図である。
【
図5】第2の実施形態によるデータ監視システムの動作例を示すフローチャートである。
【
図6】第2の実施形態によるデータ監視システムの動作例において、圧縮/送信スレッドの実行処理を示すフローチャートである。
【
図7】第3の実施形態によるデータ監視システムを示すブロック図である。
【
図8】第3の実施形態によるデータ監視システムの動作例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態によるデータ監視システム1を示すブロック図である。第1の実施形態のデータ監視システム1は、例えば、発電所において対象装置を監視するために用いることができる。
【0014】
図1に示すように、データ監視システム1は、監視制御装置の一例である監視制御端末2と、制御装置3と、監視装置の一例である監視端末4と、送信装置の一例である一方向送信装置5と、受信装置の一例である一方向受信装置6とを備える。以下、これらのデータ監視システム1の構成部について詳しく説明する。
【0015】
(監視制御端末2)
監視制御端末2は、対象装置の一例である操作端9の監視および制御に用いられる端末である。監視制御端末2は、ネットワークの一例である監視制御ネットワーク8上に配置すなわち接続されている。監視制御端末2は、監視制御ネットワーク8経由で制御装置3に操作端9の制御指令を出力する。監視制御端末2は、例えば、パーソナルコンピュータである。監視制御ネットワーク8は、例えば、イーサネット(LAN)である。
【0016】
操作端9は、例えば、発電所において制御装置3からの信号を受けて発電プロセスを制御する装置である。操作端9は、例えば、発電所に備えられたポンプのバルブを開閉する開閉装置などであってもよい。
【0017】
(制御装置3)
制御装置3は、操作端9を制御する装置である。制御装置3は、監視制御ネットワーク8上に配置されている。制御装置3は、監視制御端末2からの操作端9の制御指令に応じて、制御装置3の制御ロジックにしたがった演算を行い、演算結果にしたがって操作端9を制御する。制御装置3の制御ロジックは、例えば、アルゴリズムなどで体現されるソフトウェア(プログラム)上のロジックである。
【0018】
操作端9を制御するため、制御装置3は、第1領域の一例である制御装置3のメモリのユーザエリア内に、操作端9の制御内容を示すプロセスデータD1を保持する。そして、制御装置3は、ユーザエリア内のプロセスデータD1に基づいて操作端9を制御する。すなわち、制御装置3は、プロセスデータD1を用いて制御ロジックにしたがった演算を実行することで、操作端9を制御する。
【0019】
プロセスデータD1は、例えば、監視制御端末2からの制御指令(すなわち、入力値)、制御指令に応じた操作端9への動作指令(すなわち、出力値)、監視制御端末2からの制御指令に対して操作端9が応答した情報、および操作端9への動作指令が決定されるまでの制御装置3の演算処理過程における途中計算の結果の少なくとも1つを含んでもよい。
【0020】
また、制御装置3は、操作端9の制御のための演算の周期ごとに、第2領域の一例である制御装置3のメモリの圧縮/送信エリア内に、ユーザエリア内のプロセスデータD1をコピーする。
【0021】
制御装置3は、ユーザエリア内のプロセスデータD1に基づいた操作端9の制御のための演算と並行して、圧縮/送信エリア内にコピーされたプロセスデータD1の圧縮および圧縮されたプロセスデータD1(以下、圧縮プロセスデータとも呼ぶ)の監視端末4への送信を行う。制御装置3は、監視端末4への圧縮プロセスデータD1の送信を、監視端末4からの応答を要求しない送信方式で行う。このプロセスデータD1の送信方式は、例えば、UDP(User Datagram Protocol)マルチキャストまたはブロードキャストであってもよい。UDPマルチキャストおよびブロードキャストは、複数の送信先を指定した当該送信先からの応答を要しない送信方式として知られている。
【0022】
このように、ユーザエリア内のプロセスデータD1に基づいた演算と並行して、圧縮/送信エリア内にコピーされたプロセスデータD1の圧縮および圧縮プロセスデータD1の監視端末4への送信を行うことで、監視制御ネットワーク8の負荷を上昇させることなく、かつ、操作端9の制御の進行を妨げることなく、監視端末4で監視できる監視制御ネットワーク8上のデータの制限を緩和することができる。また、監視端末4への圧縮プロセスデータD1の送信を、監視端末4からの応答を要求しない送信方式で行うことで、監視端末4からの応答を要することなく監視端末4にプロセスデータD1を迅速に送信することができる。
【0023】
なお、制御装置3は、監視端末4にプロセスデータD1を送信するのと同時に、監視制御端末2にもプロセスデータD1を送信してもよい。
【0024】
(一方向送信装置5)
一方向送信装置5は、監視制御ネットワーク8上に配置された、一方向への通信が可能な送信装置である。一方向送信装置5は、監視制御ネットワーク8から外部ネットワーク10に向かう方向の通信が可能であり、外部ネットワーク10から監視制御ネットワーク8に向かう方向の通信が不可能である。一方向送信装置5は、一方向ネットワーク11を介して一方向受信装置6に接続されている。一方向ネットワーク11は、例えば、光ケーブルである。一方向送信装置5は、一方向ネットワーク11を経由して、制御装置3からの圧縮プロセスデータD1を監視端末4に送信する。
【0025】
一方向送信装置5は、例えば、メモリやCPUなどを備えたハードウェア基板と、ハードウェア基板上に設けられたイーサネット基板および発光素子基板とを備えていてもよい。イーサネット基板は、監視端末4に宛てた制御装置3からの圧縮プロセスデータD1を受信する。ハードウェア基板のCPUは、イーサネット基板が受信した圧縮プロセスデータD1をハードウェア基板のメモリにコピーする。発光素子基板は、一方向ネットワーク11に向けてハードウェア基板のメモリにコピーされた圧縮プロセスデータD1を光信号として送信する。発光素子基板は、一方向ネットワーク11からデータを受信する機能を有しない。このため、一方向ネットワーク11から制御ネットワーク8に向かう方向の通信を防止できる。
【0026】
一方向送信装置5によれば、監視制御ネットワーク8から一方向ネットワーク11に向かう一方向通信を行うことで、外部ネットワーク10から監視制御ネットワーク8への侵入すなわち不正アクセスを防止しつつ、外部ネットワーク10上の監視端末4に宛てて監視に必要なプロセスデータD1を送信できる。
【0027】
(一方向受信装置6)
一方向受信装置6は、外部ネットワーク10上に配置された、一方向への通信が可能な受信装置である。外部ネットワーク10は、例えば、イーサネットである。一方向受信装置6は、監視制御ネットワーク8から外部ネットワーク10に向かう方向の通信が可能であり、外部ネットワーク10から監視制御ネットワーク8に向かう方向の通信が不可能である。一方向受信装置6は、一方向ネットワーク11を経由して、一方向送信装置5から送信された圧縮プロセスデータD1を受信し、受信された圧縮プロセスデータD1を監視端末4に転送する。
【0028】
一方向受信装置6は、例えば、メモリやCPUなどを備えたハードウェア基板と、ハードウェア基板上に設けられた受光素子基板およびイーサネット基板とを備えていてもよい。受光素子基板は、一方向ネットワーク11を経由して、一方向送信装置5の発光素子基板から送信された圧縮プロセスデータD1を受信(受光)する。ハードウェア基板のCPUは、受光素子基板で受信された圧縮プロセスデータD1をハードウェア基板のメモリにコピーする。イーサネット基板は、ハードウェア基板のメモリにコピーされた圧縮プロセスデータD1を監視端末4に転送(送信)する。受光素子基板は、一方向ネットワーク11にデータを送信する機能を有しない。このため、外部ネットワーク10から一方向ネットワーク11に向かう方向の通信を防止できる。
【0029】
一方向受信装置6によれば、一方向ネットワーク11から外部ネットワーク10に向かう一方向通信を行うことで、一方向送信装置5と相まって、外部ネットワーク10から監視制御ネットワーク8への侵入すなわち不正アクセスを防止しつつ、外部ネットワーク10上の監視端末4に宛てて監視に必要なプロセスデータD1を送信できる。
【0030】
(監視端末4)
監視端末4は、プロセスデータD1の監視に用いられる端末である。監視端末4は、第2のネットワークの一例である外部ネットワーク10上に配置されている。監視端末4は、監視制御ネットワーク8、一方向送信装置5、一方向ネットワーク11、一方向受信装置6および外部ネットワーク10を経由して、制御装置3に通信接続される。監視端末4は、例えば、パーソナルコンピュータである。
【0031】
監視端末4は、制御装置3から送信された圧縮プロセスデータD1を解凍し、解凍されたプロセスデータD1を出力する。すなわち、監視端末4は、解凍されたプロセスデータD1に応じた監視画面を表示部に出力する。これにより、監視端末4のユーザは、操作端9の動作状態を監視できる。
【0032】
(動作例)
次に、第1の実施形態によるデータ監視システム1の動作例について説明する。
図2は、第1の実施形態によるデータ監視システム1の動作例を示すフローチャートである。
【0033】
図2に示すように、制御装置3は、監視制御端末2からの操作端9の制御指令に応じて操作端9の制御を開始した後、制御装置3のメモリのユーザエリア内に保持されているプロセスデータD1を制御装置3のメモリの圧縮/送信エリアにコピーするコピー処理を実施する(ステップS1)。コピー処理において、制御装置3は、ユーザが予め設定した演算周期分のプロセスデータD1が圧縮/送信エリア内に確保された後は、圧縮/送信エリア内の最古のプロセスデータD1に、最新のプロセスデータD1を上書きする。
【0034】
コピー処理を実施した後、制御装置3は、ユーザエリア内に保持されているプロセスデータD1のうちの制御ロジックへの入力値(例えば、制御指令)を制御ロジックに入力する入力処理を実施する(ステップS2)。
【0035】
入力処理を実施した後、制御装置3は、制御ロジックにしたがって入力値に応じた出力値を算出する演算処理を実施する(ステップS3)。
【0036】
演算処理を実施した後、制御装置3は、圧縮/送信エリア内のプロセスデータD1の圧縮および送信の実行条件が満足されている(ON)か否かを判定する(ステップS4)。実行条件は、例えば、操作端9の制御に並行した圧縮/送信エリア内のプロセスデータD1の圧縮および送信を行うことがユーザによって設定されていることである。
【0037】
実行条件が満足されていない場合(ステップS4:No)、制御装置3は、演算処理によって得られた出力値(例えば、動作指令)の出力処理を実施する(ステップS5)。出力処理を実施した後、制御装置3は、制御ロジックの次周期に移行して、次周期のコピー処理を実施する(ステップS1)。
【0038】
一方、実行条件が満足されている場合(ステップS4:Yes)、制御装置3は、制御ロジックの1周期(すなわち、1ステップ)毎に圧縮/送信エリア内のプロセスデータD1の圧縮・送信を実行する旨の周期伝送がユーザによって設定されている(ON)か否かを判定する(ステップS6)。
【0039】
周期伝送が設定されている場合(ステップS6:Yes)、制御装置3は、圧縮/送信スレッドを起動して実行する(ステップS7)。圧縮/送信スレッドとは、制御装置3が実行するプログラムのうち、圧縮/送信エリアを用いて実行されるプログラムの実行単位であり、ユーザエリアを用いて実行される通常の演算処理のスレッドとは異なるスレッドである。
【0040】
一方、周期伝送が設定されていない場合(ステップS6:No)、制御装置3は、出力処理を実施する(ステップS5)。
【0041】
図3は、第1の実施形態によるデータ監視システムの動作例において、圧縮/送信スレッドの実行処理を示すフローチャートである。
図3に示すように、制御装置3は、圧縮/送信スレッドを開始した後、先ず、圧縮/送信エリア内にコピーされたプロセスデータD1の圧縮処理を実施する(ステップS71)。第1の実施形態における圧縮処理において、制御装置3は、圧縮/送信エリア内の最新のプロセスデータD1を圧縮する。
【0042】
圧縮処理を実施した後、制御装置3は、監視端末4を宛先とした最新の圧縮プロセスデータD1の送信処理を実施する(ステップS72)。
【0043】
送信処理を実施した後、制御装置3は、圧縮/送信スレッドを終了したうえで出力処理を実施する(ステップS5)。
【0044】
図4は、第1の実施形態によるデータ監視システム1の動作例を示す模式図である。
図4には、制御装置3の制御ロジックの簡単な例として、ユーザエリアA1上のANDゲートが示されている。ただし、制御装置3のロジックは、ANDゲートに限定されるものではなく、ANDゲートより複雑でよい。
【0045】
図4のANDゲートは、監視制御端末3からバルブ開閉装置に送信されたバルブ開放の指令を入力値Aとしている。また、ANDゲートは、バルブ開閉装置以外の操作端(他のバルブ開閉装置でもよい)の動作状態を考慮したバルブ開放の是非を示す信号を入力値Bとしている。入力値Bは、
図4のANDゲートより上位のロジックで算出された値であってもよい。また、ANDゲートは、入力値Aと入力値Bの論理積であるバルブ開閉装置への動作指令を出力値Cとしている。
【0046】
バルブ開閉装置にバルブ開放の指令が入力され(A=1)、バルブ開放が正しい(B=1)場合、バルブ開閉装置にバルブ開放の動作指令が出力される(C=1)。一方、バルブ開閉装置にバルブ開放の指令が入力された(A=1)場合でも、バルブ開放が正しくない(B=0)場合には、バルブ開閉装置にバルブ開放の動作指令は出力されない(C=0)。
【0047】
制御装置3は、ユーザエリアA1に
図4の入力値A、入力値B、出力値CをプロセスデータD1として保持し、プロセスデータD1に基づいて操作端9を制御する。制御装置3は、入力値Aの保持(すなわち、入力)と、入力値Bの保持(すなわち、入力)と、出力値Cの演算および保持(すなわち、出力)とを、制御ロジックの1周期として実行する。制御装置3は、制御ロジックの1周期毎に、ユーザエリアA1のプロセスデータD1を圧縮/送信エリアA2にコピーし、コピーされたプロセスデータD1を圧縮したうえで監視端末4に送信する。
【0048】
第1の実施形態によれば、ネットワークの負荷に影響を与えることなく、かつ、システムの安全性を確保したうえで、ネットワークの外部で監視できるネットワーク上のデータの制限を緩和することができる。
【0049】
(第2の実施形態)
次に、トリガ条件が満足された時点の前後のプロセスデータを圧縮および送信する第2の実施形態について、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0050】
第2の実施形態によるデータ監視システム1において、制御装置3は、圧縮/送信エリアにコピーされたプロセスデータD1の圧縮および圧縮プロセスデータD1の送信を実行するためのトリガ条件を保持する。
【0051】
トリガ条件は、例えば、発電所のタービンの停止を指示するトリップ信号が出力(ON)されたこと、プロセスデータが閾値を超え、または閾値以下となったこと等であってもよい。トリガ条件は、ユーザが手動で制御装置3に設定することができる。尚、プロセスデータが閾値を超え、または閾値以下となる変化としては、例えば、窒素酸化物の濃度が高くなったり、タービンの軸受メタル温度が高くなったり、復水器ホットウェルレベルが低くなったりすることが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0052】
制御装置3は、トリガ条件が満足された時点の前後に圧縮/送信エリア内にコピーされた、設定された演算周期分のプロセスデータD1をまとめて圧縮し、まとめて圧縮されたプロセスデータD1を、監視端末4からの応答を要求しない送信方式で監視端末4に送信する。
【0053】
第2の実施形態によるデータ監視システム1は、例えば、
図5および
図6に示されるフローチャートにしたがって動作する。
図5は、第2の実施形態によるデータ監視システム1の動作例を示すフローチャートである。
図6は、第2の実施形態によるデータ監視システム1の動作例において、圧縮/送信スレッドの実行処理を示すフローチャートである。
【0054】
図5に示すように、制御装置3は、実行条件が満足されている場合(ステップS4:Yes)、
図2で説明した周期伝送の設定の有無の判定(ステップS6)の替わりに、トリガ条件が満足された(ON)か否かを判定する(ステップS8)。
【0055】
トリガ条件が満足された場合(ステップS8:Yes)、制御装置3は、
図2と同様に、圧縮/送信スレッドを起動して実行する(ステップS7)。
【0056】
一方、トリガ条件が満足されていない場合(ステップS8:No)、制御装置3は、出力処理を実施する(ステップS5)。
【0057】
図6に示すように、制御装置3は、圧縮/送信スレッドを開始した後、先ず、圧縮/送信エリア内にコピーされたプロセスデータD1の圧縮処理を実施する(ステップS71a)。第2の実施形態における圧縮処理において、制御装置3は、トリガ条件が満足された時点の前後に圧縮/送信エリア内にコピーされた、設定された演算周期分のプロセスデータD1をまとめて圧縮する。
【0058】
圧縮処理を実施した後、制御装置3は、監視端末4を宛先とした設定された演算周期分の圧縮プロセスデータD1の送信処理を実施する(ステップS72a)。
【0059】
送信処理を実施した後、制御装置3は、圧縮/送信スレッドを終了したうえで出力処理を実施する(ステップS5)。
【0060】
第2の実施形態によれば、発電所トリップ等の緊急事象が発生した場合に、事象発生時の前後の設定された演算周期分の圧縮プロセスデータD1を監視端末4に送信することで、監視端末4が、送信された圧縮プロセスデータD1を活用して事象発生原因を解析することができる。
【0061】
(第3の実施形態)
次に、操作端9の制御内容を図示する第3の実施形態について、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0062】
図7は、第3の実施形態によるデータ監視システム1を示すブロック図である。
図8は、第3の実施形態によるデータ監視システム1の動作例を示す模式図である。
【0063】
図7に示すように、第3の実施形態によるデータ監視システム1は、
図1の構成に加えて、更に、保守装置の一例である保守ツール14を備える。保守ツール14は、制御装置3を保守する装置である。保守ツール14は、監視制御ネットワーク8上に配置されている。
【0064】
保守ツール14は、プロセスデータD1に基づいて操作端9の制御内容を図示するためのロジック図データD2(図面データ)を、監視端末4からの応答を要求しない送信方式で監視端末4に送信する。
【0065】
監視端末4は、制御装置3から送信されて解凍されたプロセスデータD1と、保守ツール14から送信されたロジック図データD2とに基づいて、操作端9の制御内容を表示部に図示する。
図8に示される例において、監視端末4は、プロセスデータD1とロジック図データD2に基づいて、制御ロジックおよびその入力値、出力値を表示部4aに図示している。
【0066】
第3の実施形態によれば、操作端9の制御内容を図示することで、数値データのみを示す場合よりも、操作端9の異常が発生した場合の異常の原因を簡便に究明することが可能となる。
【0067】
本実施形態によるデータ監視システム1の少なくとも一部は、ハードウェアで構成してもよいし、ソフトウェアで構成してもよい。ソフトウェアで構成する場合には、データ監視システム1の少なくとも一部の機能を実現するプログラムをフレキシブルディスクやCD-ROM等の記録媒体に収納し、コンピュータに読み込ませて実行させてもよい。記録媒体は、磁気ディスクや光ディスク等の着脱可能なものに限定されず、ハードディスク装置やメモリなどの固定型の記録媒体でもよい。また、データ監視システム1の少なくとも一部の機能を実現するプログラムを、インターネット等の通信回線(無線通信も含む)を介して頒布してもよい。さらに、同プログラムを暗号化したり、変調をかけたり、圧縮した状態で、インターネット等の有線回線や無線回線を介して、あるいは記録媒体に収納して頒布してもよい。
【0068】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0069】
1 データ監視システム
2 監視制御端末
3 制御装置
4 監視端末
8 監視制御ネットワーク
9 操作端