(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】電子タグ貼付装置
(51)【国際特許分類】
B65C 9/42 20060101AFI20230501BHJP
B65C 9/08 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
B65C9/42
B65C9/08
(21)【出願番号】P 2019131967
(22)【出願日】2019-07-17
【審査請求日】2021-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592094519
【氏名又は名称】ダイオーエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大内 博英
(72)【発明者】
【氏名】日吉 健治
(72)【発明者】
【氏名】高橋 亮人
【審査官】西塚 祐斗
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-522356(JP,A)
【文献】特開2005-008227(JP,A)
【文献】特開2007-153346(JP,A)
【文献】特開2009-154903(JP,A)
【文献】特開2012-136283(JP,A)
【文献】特開2013-001436(JP,A)
【文献】特開2016-145068(JP,A)
【文献】特開2010-280390(JP,A)
【文献】特開2012-030830(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65C 1/00 - 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着部を有する電子タグを所定のタグ供給位置に供給するタグ供給装置と、
前記電子タグを保持するタグ保持部と、
前記タグ供給位置、及び電子タグの貼付を待機する待機位置に、前記タグ保持部を移動させる移動装置と、
前記タグ保持部に保持された前記電子タグが、所定の接触位置で作業員が保持する対象物に貼付されたことを検出する貼付検出装置とを備え、
前記移動装置により前記タグ保持部を前記タグ供給位置に位置させるとともに、前記タグ供給装置から供給される前記電子タグを前記タグ保持部に保持させた後、前記電子タグを保持したタグ保持部を、前記待機位置に移動させて、前記粘着部を対象物に対する押し付け方向に向けて待機する、準備動作を行い、
前記貼付検出装置により、前記電子タグが前記対象物に貼付されたことを検出したときに、前記タグ保持部から前記電子タグを解放した後、前記準備動作を行い、
前記待機位置における前記電子タグの位置は、前記電子タグを前記対象物に貼付する接触位置であり、
前記貼付検出装置は、前記接触位置に対象物が配置されたことを検出するものであり、
前記貼付検出装置により、前記接触位置に対象物が配置されたことを検出したときに、前記タグ保持部から前記電子タグが解放される、
ことを特徴とする、電子タグ貼付装置。
【請求項2】
前記接触位置の周囲に、前記対象物を押し当てて前記対象物を前記接触位置に位置決めするための位置決め体が設けられ、
前記位置決め体に対し、前記待機
位置の前記電子タグの前記粘着部に向かう方向に前記対象物が押し当てられたときに、前記対象物が前記接触位置に位置決めされるように構成された、
請求項1記載の電子タグ貼付装置。
【請求項3】
前記対象物における所望の部位に前記電子タグの接触位置を合わせるための照準器を備えた、
請求項1
又は2記載の電子タグ貼付装置。
【請求項4】
粘着部を有する電子タグを所定のタグ供給位置に供給するタグ供給装置と、
前記電子タグを保持するタグ保持部と、
前記タグ供給位置、及び電子タグの貼付を待機する待機位置に、前記タグ保持部を移動させる移動装置と、
前記タグ保持部に保持された前記電子タグが、所定の接触位置で作業員が保持する対象物に貼付されたことを検出する貼付検出装置とを備え、
前記移動装置により前記タグ保持部を前記タグ供給位置に位置させるとともに、前記タグ供給装置から供給される前記電子タグを前記タグ保持部に保持させた後、前記電子タグを保持したタグ保持部を、前記待機位置に移動させて、前記粘着部を対象物に対する押し付け方向に向けて待機する、準備動作を行い、
前記貼付検出装置により、前記電子タグが前記対象物に貼付されたことを検出したときに、前記タグ保持部から前記電子タグを解放した後、前記準備動作を行い、
前記待機位置及び接触位置では、前記粘着部が下向きとなるように前記電子タグが前記タグ保持部に保持されており、
作業員が、前記対象物を前記電子タグの下から前記接触位置に上昇させて貼付を行うものである、
ことを特徴とする、電子タグ貼付装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着部を有する電子タグ貼付装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のように、電子タグ(RFタグ、ICタグ、RFラベル等ともいわれる)は、情報の記憶及び読み出しを近距離無線通信により非接触で行うためにICチップとこれに接続されたアンテナとを有するものである。また、電子タグは対象物に貼付するために裏面が粘着面となっているものが一般的である。RFID(Radio frequency identification)は、このような電子タグを利用し、電子タグに対する対象物の個別情報の書き込み、及び電子タグに記憶された対象物の個別情報の読取りを、無線通信により行う自動認識システムである。
【0003】
電子タグは、様々な検討及び提案がなされており、実現しているものもあれば、実現していないものもある。例えば、電子タグは、バーコード等の光学的に読取可能なタグに代わるものとして商品の個品管理への応用が期待されているが、コンビニエンスストア等のように単価の安い小売業での利用は、わが国では実現に至っていない。この主な原因は、電子タグの単価が高いことにあるが、読み取り精度の問題(商品の内容物に含まれる水や金属製商品容器等による電波の遮断)や、個別商品に対する電子タグの貼付技術の未完成等も、普及の足かせになっている。
【0004】
このうち、個別商品に対する電子タグの貼付技術については、一定の商品に対して、一定の情報(例えば、製造情報、トラック積載情報、在庫情報、販売情報、ロス情報、配送情報、消費期限情報、消費情報)が書き込まれた電子タグを貼付する技術は提案されている(例えば特許文献1~5参照)。
【0005】
しかし、一定の情報が書き込まれた電子タグを貼付する手法を用いて、商品の個品管理を実現するには、ほぼすべての商品でソースタギング(メーカーが商品に電子タグを付けること)がなされる必要があり、その環境整備には多大な時間が必要である。
【0006】
したがって、現状では、小売店側で個々の商品に電子タグを貼付することが望まれている。小売店に適した電子タグ貼付装置としては、例えば特許文献6記載のものが提案されている。
【0007】
しかし、小売店で電子タグを貼付する場合、大きさや形状、包装の異なる商品に対して、適切な位置に確実に電子タグを貼付する必要があるが、これを完全に自動化するのは困難であり、ある程度の自動化を実現するだけでも装置の複雑化及び高価格化は避けることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2005-104521号公報
【文献】特開2007-091246号公報
【文献】特開2007-091298号公報
【文献】特開2008-044661号公報
【文献】特開2008-62965号公報
【文献】特許6484379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の主たる課題は、多種多様な商品に対して、適切な位置に確実に電子タグを貼付できる電子タグ貼付装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
<第1の態様>
粘着部を有する電子タグを所定のタグ供給位置に供給するタグ供給装置と、
前記電子タグを保持するタグ保持部と、
前記タグ供給位置、及び電子タグの貼付を待機する待機位置に、前記タグ保持部を移動させる移動装置と、
前記タグ保持部に保持された前記電子タグが、所定の接触位置で作業員が保持する対象物に貼付されたことを検出する貼付検出装置とを備え、
前記移動装置により前記タグ保持部を前記タグ供給位置に位置させるとともに、前記タグ供給装置から供給される前記電子タグを前記タグ保持部に保持させた後、前記電子タグを保持したタグ保持部を、前記待機位置に移動させて、前記粘着部を対象物に対する押し付け方向に向けて待機する、準備動作を行い、
前記貼付検出装置により、前記電子タグが前記対象物に貼付されたことを検出したときに、前記タグ保持部から前記電子タグを解放した後、前記準備動作を行う、
ことを特徴とする、電子タグ貼付装置。
【0011】
(作用効果)
本電子タグ貼付装置では、タグ供給装置から供給される電子タグは、タグ保持部に受け渡された後、待機位置に移動され、粘着部が対象物の押し付け方向に向く状態で待機する。そして、タグ保持部に保持された電子タグが、作業員が保持する対象物に貼付されたことが貼付検出装置により検出されると、タグ保持部から電子タグが解放されて、電子タグの貼付が完了する。このように、本電子タグ貼付装置は、電子タグを貼付に適した状態にするまでを自動化し、作業軽減を図りつつ、貼付の位置決めを作業員に委ねることにより、多種多様な商品に対して、適切な位置に確実に電子タグを貼付できるものである。特に小売店では、商品搬入時に作業員が商品を手で取り扱うことが多いため、このような部分的な自動化に適しているともいうことができる。
【0012】
<第2の態様>
前記待機位置における前記電子タグの位置は、前記電子タグを前記対象物に貼付する接触位置であり、
前記貼付検出装置は、前記接触位置に対象物が配置されたことを検出するものであり、
前記貼付検出装置により、前記接触位置に対象物が配置されたことを検出したときに、前記タグ保持部から前記電子タグが解放される、
第1の態様の電子タグ貼付装置。
【0013】
(作用効果)
本電子タグ貼付装置は、作業員が待機位置にある電子タグに対象物を押し付けることにより、電子タグを対象物に貼付するものである。この場合、待機位置にある電子タグに対象物を押し付けると、接触位置に対象物が配置されたことになるため、これを貼付検出装置で検出することにより、電子タグがタグ保持部から解放される。本電子タグ貼付装置では、貼付動作のすべてを作業員が行うため、多種多様な製品に対して適切な位置に確実に電子タグを貼付することができる。
【0014】
<第3の態様>
前記待機位置における前記電子タグの位置は、前記電子タグを前記対象物に貼付する接触位置から離間しており、
前記接触位置に対象物が配置されたことを検出する対象物検出装置を有し、
前記貼付検出装置は、前記接触位置に前記電子タグが移動したことを検出するものであり、
前記対象物検出装置により、前記接触位置に対象物が配置されたことを検出したときに、前記タグ保持部を前記移動装置により移動させて、前記タグ保持部に保持された前記電子タグを前記接触位置に移動させ、
前記貼付検出装置により、前記接触位置に前記電子タグが移動したことを検出したときに、前記タグ保持部から前記電子タグが解放される、
第1の態様の電子タグ貼付装置。
【0015】
(作用効果)
本電子タグ貼付装置は、作業員が接触位置に対象物を配置すると、これを検出し、待機位置にある電子タグを接触位置まで移動させ、対象物に押し付けて貼付するものである。この場合、接触位置に電子タグが移動したことを検出すると、貼付が完了するため、これを貼付検出装置で検出することにより、電子タグがタグ保持部から解放される。本電子タグ貼付装置では、電子タグの押し付けを移動装置が行い、作業員は対象物の支持を行うため、作業員の労力はより少ないものとなる。
【0016】
<第4の態様>
前記接触位置の周囲に、前記対象物を押し当てて前記対象物を前記接触位置に位置決めするための位置決め体が設けられている、
第1~3のいずれか1つの態様の電子タグ貼付装置。
【0017】
(作用効果)
本電子タグ貼付装置は、作業員が対象物を手で持って電子タグを貼付するものであるため、対象物を電子タグとの接触位置に合わせるとき、何の支持もないと、対象物を電子タグとの接触位置に配置する又はその配置で保持する作業が困難になるおそれがある。これに対して、本電子タグ貼付装置では、位置決め体に対象物を押し当てるだけで、意識せずに対象物を電子タグとの接触位置に配置する又はその配置で保持することができ、貼付作業が容易になる。
【0018】
<第5の態様>
前記対象物における所望の部位に前記電子タグの接触位置を合わせるための照準器を備えた、
第1~4のいずれか1つの態様の電子タグ貼付装置。
【0019】
(作用効果)
本電子タグ貼付装置は、作業員が対象物を手で持って電子タグを貼付するものであり、作業員が対象物における電子タグの貼付位置を自由に調節できるとはいえ、何の目安もないと、対象物における所望の部位に電子タグの接触位置を合わせる作業が困難になるおそれがある。これに対して、本電子タグ貼付装置では照準器を備えているため、対象物における所望の部位に電子タグの接触位置を合わせる作業が容易となる。
【0020】
<第6の態様>
前記待機位置及び接触位置では、前記粘着部が下向きとなるように前記電子タグが前記タグ保持部に保持されており、
作業員が、前記対象物を前記電子タグの下から前記接触位置に上昇させて貼付を行うものである、
第1~5のいずれか1つの態様の電子タグ貼付装置。
【0021】
(作用効果)
このような配置で貼付作業を行うことにより、作業員が電子タグ及び対象物の両方を視認しやすくなるため、作業性が向上する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、多種多様な商品に対して、適切な位置に確実に電子タグを貼付できるようになる、等の利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図5】電子タグの例を示す(a)平面図、(b)側面図、(c)底面図である。
【
図6】電子タグの例を示す(a)平面図、(b)側面図、(c)底面図である。
【
図7】電子タグを貼付した対象物を示す斜視図である。
【
図8】電子タグを貼付した対象物を示す斜視図である。
【
図9】電子タグの貼付装置の要部を拡大して示す斜視図である。
【
図10】電子タグの貼付装置の要部を拡大して示す斜視図である。
【
図11】電子タグの貼付装置の要部を拡大して示す斜視図である。
【
図12】電子タグの貼付装置の要部を拡大して示す側面図である。
【
図13】電子タグの貼付装置の要部を拡大して示す側面図である。
【
図14】電子タグの貼付装置の要部を拡大して示す側面図である。
【
図15】電子タグの貼付装置の要部を拡大して示す側面図である。
【
図16】電子タグの貼付装置の要部を拡大して示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、電子タグ貼付装置1の例について説明する。
図1~
図4は、電子タグ貼付装置1の一例を示している。この電子タグ貼付装置1は、粘着部11を有する電子タグ10を所定のタグ供給位置P1に供給するタグ供給装置20と、電子タグ10を保持するタグ保持部30と、タグ供給位置P1、及び電子タグ10の貼付を待機する待機位置P2に、タグ保持部30を移動させる移動装置40と、タグ保持部30に保持された電子タグ10が、所定の接触位置P3で作業員が保持する対象物50に貼付されたことを検出する貼付検出装置60とを備える。使用時には、移動装置40によりタグ保持部30をタグ供給位置P1に位置させるとともに、タグ供給装置20から供給される電子タグ10をタグ保持部30に保持させた後、電子タグ10を保持したタグ保持部30を、待機位置P2に移動させて、粘着部11を対象物50に対する押し付け方向に向けて待機する、準備動作を行い、貼付検出装置60により、電子タグ10が対象物50に貼付されたことを検出したときに、タグ保持部30から電子タグ10を解放した後、準備動作を行うものである。
以下、各部について順に説明する。
【0025】
(対象物)
対象物は、電子タグの貼付対象である限り、その形状、素材等、特に限定されるものではない。例えば、対象物は、店頭陳列される個々の商品等の、個々に取り扱われる物品(箱、袋、容器等により包装されていてもよいし、包装されていなくてもよい)であってもよいし、一つ又は複数の同一又は異なる物品を輸送用に段ボール箱等の梱包材で梱包した状態のものであってもよい。
【0026】
(電子タグ)
電子タグ10は粘着部11を有し、この粘着部11により対象物50に貼付するものであれば、その形状、構造は特に限定されるものではなく、公知の電子タグ10を適宜使用することができる。例えば、電子タグ10の形状は、
図5(a)~(c)示す例や、
図6(a)~(c)示す例のように角をとった長方形のものが一般的であるが、これに限定されるものではない。また、電子タグ10の代表的なものの一つは、例えば
図5(c)及び
図6(c)に示すように、インレット10a,10iとしてICチップ10iとこれに接続されたアンテナ10aとを有するパッシブタイプの電子タグ10であるが、これに限定されるものでもない。
【0027】
電子タグ10は、通信品質の低下を防止するために、少なくともアンテナ10aの一部を対象物50から離間させることが望ましい。例えば、裏面が粘着部11となっている電子タグ10の場合、
図6(a)~(c)に示すように、電子タグ10のアンテナ10aを含む一部分を折り位置10pで折り畳み、粘着部11同士を貼り合わせた粘着不能化部分12と、粘着部11が露出する残粘着部分13とを形成し、
図7及び
図8に示すように、残粘着部分13の粘着部11により対象物50に貼付することができる。このような電子タグ10の折り畳みは、タグ供給装置内の機構により行ってもよい(例えば特許文献5参照)し、予め一部が折り畳まれた電子タグ10をタグ供給装置に供給してもよい。
【0028】
(タグ供給装置)
タグ供給装置20は、電子タグ10を一枚ずつ所定のタグ供給位置P1(排出口)に供給し、粘着部11が露出した状態で後述するタグ保持部30に、受け渡すことができるものであれば特に限定なく用いることができる。タグ供給装置20としては、例えば特許文献6記載のものを用いることもできるが、市販の装置を用いることもできる。市販の装置としては、例えば株式会社サトーホールディングス製のラベルプリンタ「スキャントロニクスCL4NX-Jシリーズ」等のように、剥離シート(台紙)から一枚だけ電子タグ10(ラベル)を剥離し、剥離した電子タグ10を装置正面等から前方等の所定方向に突出させて待機し、この突出する電子タグ10を取り除くたびに、次の電子タグ10を一枚だけ突出させて待機するものを好適に用いることができる。
【0029】
タグ供給装置20は、図示例では、架台70の天板上に載せるデスクトップタイプのものとなっているが、これに限定されるものではない。
【0030】
(書き込み情報)
本電子タグ貼付装置1は、情報が書き込まれていない電子タグ10を対象物50に貼付するものであっても、情報が書き込まれた電子タグ10を対象物50に貼付するものであってもよい。後者の場合、情報が予め書き込まれた電子タグ10をタグ供給装置20にセットしてもよいし、特許文献6記載のものに倣って、本電子タグ貼付装置1における適宜の段階、例えばタグ供給装置20内で、又は後述する待機位置P2までの移動段階で電子タグ10に情報を書き込むこともできる。後者の場合、特許文献6記載のものに倣って、電子タグ10と紐づけされる対象物50に関する書き込み情報を取得する情報取得部と、この情報取得部により取得した書き込み情報を、電子タグ10に対し書き込む書き込み装置とを備えることができる。この場合、電子タグ10の書き込み情報の一部又は全部を、対象物50から取得可能な一次情報(例えば一次元コードや二次元コードとして、又はそのままの文字や絵等として対象物50に印刷等により付加されている情報)とすることができる。
【0031】
電子タグ10の書き込み情報は、特に限定されないが、例えば電子タグ10と紐づけされる対象物50に関する情報であって、対象物50に応じて異なる情報を含むことができる。この場合、書き込み情報は、対象物50の個別情報の一部又は全部を含むのは好ましい。個別情報は、対象物50を他の物と識別するための識別情報の他、その対象物50を他の物と識別することはできないが、その対象物50の特徴や性質等を表す属性情報の両方を含む。識別情報としては、JAN(EAN)、UPC、ISBN、GTIN、又はASINのような商品コードや、シリアルナンバー、型番、ロット番号等を例示することができる。また、属性情報としては、出荷順、製造年月日、消費期限、商品名等の商標の他、商品や包装の色、さらには商品重量等を例示することができる。また、書き込み情報は、識別情報や属性情報以外の付属情報を含むことができる。付属情報としては、製造に要した時間等の時間情報、製造時の気温等の温度情報、製造時の湿度等の湿度情報、占いやくじの当り外れ等に関する乱数情報等を例示することができる。
【0032】
(タグ保持部)
タグ保持部30は、電子タグ10を移動可能に保持し、かつ電子タグ10を対象物50に貼付した後に保持を解放できるものであれば、非粘着部を機械的に掴む構造等であってもよいが、空気の吸引により物を吸着する吸着部であると、電子タグ10の保持及び解放が確実となるため好ましい。なお、図示例のタグ保持部30はラバーカップ31とこのラバーカップ31内を吸引する図示しない吸引装置とを有する吸着装置であり、ラバーカップ31を電子タグ10の非粘着面に接触させつつ、ラバーカップ31内の空気を吸引することにより吸着を行うものであるが、これに限定されず、公知の構造・素材を採用することができる。なお、この吸着装置における電子タグ10の解放には、吸引を停止すること、逆に空気を吐出させること、及び吸引を弱めて電子タグ10を剥離可能にすることのすべてを含む。
【0033】
(タグ保持検出装置)
タグ保持部30における電子タグ10の保持及び非保持を検出するタグ保持検出装置32(
図9、
図12等参照)を有するのは好ましい。例えば、タグ保持部30に、タグ保持検出装置32として透過型センサや反射型センサ(図示例)等の公知の非接触型センサの他、公知の接触型センサを取り付けて、電子タグ10自体を検出することができる。また、タグ保持部30が前述の吸着装置の場合、空気吸引系統にタグ保持検出装置32として圧力センサを設け、この圧力センサの計測結果に応じて、圧力値が所定の吸着圧以上であるときには電子タグ10保持状態として検出し、圧力値が吸着圧未満(例えば大気圧)である場合には電子タグ10非保持状態として検出することができる。もちろん、前者のセンサと後者のセンサを組み合わせてもよい。
【0034】
(移動装置)
移動装置40は、タグ供給位置P1、及び電子タグ10の貼付を待機する待機位置P2に、タグ保持部30を移動するものである。後述するように、電子タグ10を対象物50に貼付するときにタグ保持部30を対象物50に向けて移動させる場合には、その移動も可能である必要がある。このような移動装置40としては、特許文献6記載のような各種ロボットを用いるほか、より安価なものとして図示例の移動装置40も好ましい。
【0035】
すなわち、この移動装置40は、粘着部11が下向きとなるようにタグ供給位置P1に対して電子タグ10を横向きに突出させるタグ供給装置20を架台70上に設置し、待機位置P2を架台70側方の十分に高い位置とする場合を想定したものであり、タグ保持部30を上下方向VDに昇降自在に支持する昇降シリンダ41と、この昇降シリンダ41を水平方向に往復自在に支持する横移動シリンダ42とを有し、横移動シリンダ42が架台70上に設けられたフレーム43により支持されているものである。
【0036】
横移動シリンダ42によるタグ保持部30の一方の移動端では、
図9に示すように、タグ保持部30はタグ供給位置P1上に位置するようになっており、この位置で昇降シリンダ41によりタグ保持部30を所定高さまで下降させることにより、タグ保持部30(図示例では下向きのラバーカップ31)をタグ供給位置P1の電子タグ10に接触させ、タグ保持部30に電子タグ10を保持させることができる。続いて、
図12に示すように、昇降シリンダ41により、電子タグ10を保持したタグ保持部30を上昇させると、タグ供給装置20から電子タグ10を完全に剥離し、タグ保持部30に対する受け渡しが完了する。続いて、タグ保持部30は、
図10に示すように、横移動シリンダ42により他方の移動端に向けて移動され、横移動シリンダ42によるタグ保持部30の他方の移動端では、
図11に示すように、タグ保持部30は待機位置P2及び接触位置P3の上方に位置するようになっており、この位置で昇降シリンダ41によりタグ保持部30を所定高さまで下降させることにより、タグ保持部30を待機位置P2に移動させることができる。昇降シリンダ41を下降させない位置を待機位置P2とすることもできる。いずれにせよ、待機位置P2及び接触位置P3では、粘着部11が下向きとなるように前記電子タグ10が前記タグ保持部30に保持される。電子タグ10を対象物50に貼付した後は、逆の動作によりタグ保持部30をタグ供給位置P1に戻すことができる。
【0037】
(押し付け方向)
電子タグ10及び対象物50の押し付け方向、つまり貼付時における粘着部11の向きは特に限定されるものではない。図示例では、待機位置P2で電子タグ10の粘着部11が下向きとなり、これに対し、作業員が対象物50を上方に持ち上げつつ電子タグ10に押し付けるにせよ、昇降シリンダ41の下降により電子タグ10を対象物50に押し付けるにせよ、押し付け方向は上下方向VDとなる。しかし、待機位置P2で電子タグ10の粘着部11が横向きや上向きとなるように移動装置40を構成すれば、押し付け方向を横向きや下向きにすることも可能である。
【0038】
(待機位置及び接触位置)
タグ保持部30が待機位置P2にあるときの電子タグ10の位置、及び電子タグ10を対象物50に貼付する接触位置P3は同じであっても、異なっていてもよい。
【0039】
図13に示すように、タグ保持部30が待機位置P2にあるときの電子タグ10の位置を接触位置P3とする場合、作業員が待機位置P2にある電子タグ10に対象物50を押し付けることにより、電子タグ10を対象物50に貼付する。この場合、貼付動作のすべてを作業員が行うため、多種多様な製品に対して適切な位置に確実に電子タグ10を貼付することができる。
【0040】
図15に示すように、タグ保持部30が待機位置P2にあるときの電子タグ10の位置を、電子タグ10を対象物50に貼付する接触位置P3から離間させる場合、
図16に示すように、待機位置P2にあるタグ保持部30を移動装置40により移動させて、タグ保持部30に保持された電子タグ10を接触位置P3に移動させ、対象物50に押し付けて貼付する。例えば、図示例で接触位置P3よりも待機位置P2を若干上方とする場合、待機位置P2にあるタグ保持部30を昇降シリンダ41により下降させて、電子タグ10を接触位置P3まで移動させ、対象物50に押し付けて貼付することができる。このように、電子タグ10の押し付けを移動装置40が行い、作業員は対象物50の支持を行うと、作業員の労力はより少ないものとなる。
【0041】
具体的な待機位置P2、及び電子タグ10を対象物50に貼付する接触位置P3は適宜定めることができる。図示例では、タグ供給装置20及び移動装置40が架台70上に設置されており、待機位置P2は架台70側方となっているが、架台70上方や、架台70内部であってもよい。
【0042】
(貼付検出装置)
貼付検出装置60は、タグ保持部30に保持された電子タグ10が、所定の接触位置P3で作業員が保持する対象物50に貼付されたことを検出するものであれば、特に限定されるものではない。タグ保持部30が待機位置P2にあるときの電子タグ10の位置を接触位置P3とする場合、貼付検出装置60は、接触位置P3に対象物50が配置されたことを検出するものとすることができる。すなわち、待機位置P2にある電子タグ10に対象物50を押し付けると、接触位置P3に対象物50が配置されたことになるため、これを貼付検出装置60で貼付完了として検出することにより、電子タグ10がタグ保持部30から解放される。この場合における貼付検出装置60としては、対象物50を検出する、透過型センサや反射型センサ(図示例)等の公知の非接触型センサの他、リミットスイッチ等の公知の接触型センサを架台70に対して取り付けることができる。
【0043】
図15及び
図16に示すように、タグ保持部30が待機位置P2にあるときの電子タグ10の位置を、電子タグ10を対象物50に貼付する接触位置P3から離間させる場合、接触位置P3に対象物50が配置されたことを検出する対象物検出装置61を設けるとともに、貼付検出装置は、接触位置P3に電子タグ10が移動したことを検出するものとし、対象物検出装置61により、接触位置P3に対象物50が配置されたことを検出したときに、タグ保持部30を移動装置40により移動させて、タグ保持部30に保持された電子タグ10を接触位置P3に移動させ、貼付検出装置により、接触位置P3に電子タグ10が移動したことを検出したときに、貼付完了として、タグ保持部30から電子タグ10が解放されるようにするとよい。この場合における対象物検出装置61としては、対象物50を検出する、透過型センサや反射型センサ(図示例)等の公知の非接触型センサの他、リミットスイッチ等の公知の接触型センサを架台70に対して取り付けることができる。また、この場合における貼付検出装置は、対象物検出装置61と同様の各種センサを用い、電子タグ10やタグ保持部30の位置を検出するものとするほか、移動装置40による移動制御をソフトウェア又はハードウェア的に検出するもの(図示例)とすることもできる。
【0044】
(動作の流れ)
本電子タグ貼付装置1では、タグ供給装置20から供給される電子タグ10は、タグ保持部30に受け渡された後、待機位置P2に移動され、粘着部11が対象物50の押し付け方向に向く状態で待機する。そして、タグ保持部30に保持された電子タグ10が、作業員が保持する対象物50に貼付されたことが貼付検出装置60により検出されると、タグ保持部30から電子タグ10が解放されて、電子タグ10の貼付が完了する。このように、本電子タグ貼付装置1は、電子タグ10を貼付に適した状態にするまでを自動化し、作業軽減を図りつつ、貼付の位置決めを作業員に委ねることにより、多種多様な商品に対して、適切な位置に確実に電子タグ10を貼付できるものである。特に小売店では、商品搬入時に作業員が商品を手で取り扱うことが多いため、このような部分的な自動化に適しているともいうことができる。
【0045】
図示例についてより詳細に説明すると、次のようになる。すなわち、
図2及び
図4に示すように、架台70上に設置されたタグ供給装置20は、電子タグ10を一枚だけタグ供給位置P1に横向きに突出させて待機する。その後、移動装置40が駆動され、横移動シリンダ42による横移動及び続く昇降シリンダ41の所定高さまでの下降により、
図9に示すように、タグ保持部30をタグ供給位置P1にある電子タグ10に接触させ、吸引によりタグ保持部30先端に電子タグ10を吸着させる。この電子タグ10の保持を、タグ保持検出装置32により検出すると、吸着系統において吸引を停止し、吸着静止状態となった後に、移動装置40が駆動され、
図12に示すように、昇降シリンダ41の所定高さまでの上昇により、タグ供給装置20から電子タグ10を完全に剥離した後、
図10に示すように、横移動シリンダ42による横移動により、タグ保持部30が架台70側方の待機位置P2の上方に移動され、続いて昇降シリンダ41の所定高さまでの下降により、
図11に示すようにタグ保持部30が待機位置P2に移動し、準備動作が完了する。タグ供給装置20は、タグ保持部30に電子タグ10を受け渡した時点で、次の電子タグ10をタグ供給位置P1に供給し、次の準備動作に備える。
【0046】
待機位置P2では、架台70の側方で、粘着部11が下向きとなるように電子タグ10がタグ保持部30に保持される。したがって、作業員は、
図13に示すように、対象物50を電子タグ10の下から接触位置P3まで白抜き矢印で示すように持ち上げて押し付けることにより、電子タグ10を対象物50に貼付することができる。このような配置で貼付作業を行うことにより、作業員が電子タグ10及び対象物50の両方を視認しやすくなるため、作業性が向上する。
【0047】
電子タグ10に対象物50を押し付けると、接触位置P3に対象物50が配置されたことになり、これが貼付完了として貼付検出装置60で検出されると、タグ保持部30の吸引が解放(真空破壊)され、タグ保持部30から電子タグ10が解放される。これにより、作業員は貼付位置から対象物50を取り除き、次の対象物50の準備をすることができる。接触位置P3から対象物50を取り除くと、貼付検出装置60により対象物50が検出されなくなる(検出信号がオフになる)ため、これをトリガーとして、又は貼付検出装置60による対象物50の検出から一定時間経過後に、昇降装置によるタグ保持部30の上昇(
図14)に始まり、逆の動作によりタグ保持部30をタグ供給位置P1に戻して、再び準備動作が行われる。以降は、この繰り返しである。
【0048】
この方法では、貼付時の押し付け力を作業員に頼ることになる。よって、ほぼ同様の装置構成で、
図15に示すように、待機位置P2を接触位置P3の上方に離間させ、
図16に示すように貼付時の押し付けを移動装置40の駆動力を利用して行うこともできる。この場合、
図15に示すように、作業員が接触位置P3に対し下から白抜き矢印で示すように対象物50を配置し、これを対象物検出装置61が検出すると、
図16に白抜き矢印で示すように待機位置P2にあるタグ保持部30が昇降シリンダ41により下降して、電子タグ10が接触位置P3まで下降し、対象物50に押し付けられて貼付される。このとき、図示しない貼付検出装置により電子タグ10が接触位置P3まで下降したことが検出されると、タグ保持部30の吸引が解放(真空破壊)され、タグ保持部30から電子タグ10が解放される。作業員は貼付位置から対象物50を取り除き、次の対象物50の準備をすることができる。その他は、作業員が対象物50を待機中の電子タグ10に押し付ける場合と同様である。
【0049】
(位置決め体)
本電子タグ貼付装置1は、作業員が対象物50を手で持って電子タグ10を貼付するものであるため、対象物50を電子タグ10との接触位置P3に合わせるとき、何の支持もないと、対象物50を電子タグ10との接触位置P3に配置する又はその配置で保持する作業が困難になるおそれがある。そこで、接触位置P3の周囲に、前記対象物50を押し当てて前記対象物50を前記接触位置P3に位置決めするための位置決め体80が設けられているのは好ましい。この場合、位置決め体80に対象物50を押し当てるだけで、意識せずに対象物50を電子タグ10との接触位置P3に配置する又はその配置で保持することができ、貼付作業が容易になる。図示例では、接触位置P3の横に板状の位置決め体80が横向きに固定されており、この位置決め体80に対して下方から対象物50を押し当てることにより、接触位置P3に対象物50を位置決めすることができる。
【0050】
(照準器)
本電子タグ貼付装置1は、作業員が対象物50を手で持って電子タグ10を貼付するものであり、作業員が対象物50における電子タグ10の貼付位置を自由に調節できるとはいえ、何の目安もないと、対象物50における所望の部位に電子タグ10の接触位置P3を合わせる作業が困難になるおそれがある。そこで、本電子タグ貼付装置1は、対象物50における所望の部位に電子タグ10の接触位置P3を合わせるための照準器を備えていると好ましい。これにより、対象物50における所望の部位に電子タグ10の接触位置P3を合わせる作業が容易となる。照準器は特に限定されるものではないが、例えば
図13、
図15及び
図16に示すように、対象物50における電子タグ10との接触位置P3の目安となる位置(例えば接触位置P3の周囲の一部)にレーザー光を照射するレーザー照準器90とすることができる。
【0051】
(制御部)
電子タグ貼付装置1は、その動作のために、必要に応じて情報の入出力や演算を行いつつ各部の装置(タグ供給装置20、移動装置40、タグ保持部30等)や検出装置と通信を行い、それらの動作を制御する制御部(図示略)を有する。したがって、制御部は、入出力装置、演算装置、通信装置、記憶装置等を有するものとすることができる。このような制御部は、シーケンサ(PLC)やコンピュータ(PC、マイクロコントローラ)等の公知の産業用制御装置を単独で用いて、又は機能等に応じて複数組み合わせて構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、粘着部を有する電子タグを商品等の対象物に貼付するのに利用できるものである。
【符号の説明】
【0053】
P1…タグ供給位置、P2…待機位置、P3…接触位置、VD…上下方向、1…電子タグ貼付装置、10…電子タグ、10a,10i…インレット、10a…アンテナ、10i…ICチップ、11…粘着部、12…粘着不能化部分、13…残粘着部分、20…タグ供給装置、30…タグ保持部、31…ラバーカップ、32…タグ保持検出装置、40…移動装置、41…昇降シリンダ、42…横移動シリンダ、50…対象物、60…貼付検出装置、70…架台、80…位置決め体、90…レーザー照準器、61…対象物検出装置。