IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シチズンホールディングス株式会社の特許一覧 ▶ シチズンTIC株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-標準電波配信装置 図1
  • 特許-標準電波配信装置 図2
  • 特許-標準電波配信装置 図3
  • 特許-標準電波配信装置 図4
  • 特許-標準電波配信装置 図5
  • 特許-標準電波配信装置 図6
  • 特許-標準電波配信装置 図7
  • 特許-標準電波配信装置 図8
  • 特許-標準電波配信装置 図9
  • 特許-標準電波配信装置 図10
  • 特許-標準電波配信装置 図11
  • 特許-標準電波配信装置 図12
  • 特許-標準電波配信装置 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】標準電波配信装置
(51)【国際特許分類】
   G04R 20/08 20130101AFI20230501BHJP
   G04R 20/20 20130101ALI20230501BHJP
   G04G 5/00 20130101ALI20230501BHJP
   G04G 7/00 20060101ALI20230501BHJP
   H01Q 7/08 20060101ALI20230501BHJP
   H01Q 1/22 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
G04R20/08
G04R20/20
G04G5/00 J
G04G7/00 301
H01Q7/08
H01Q1/22 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019147937
(22)【出願日】2019-08-09
(65)【公開番号】P2021028610
(43)【公開日】2021-02-25
【審査請求日】2022-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000133711
【氏名又は名称】シチズンTIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内野 浩
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-304001(JP,A)
【文献】特開2004-20218(JP,A)
【文献】特開2001-159691(JP,A)
【文献】特開2006-304202(JP,A)
【文献】特開2005-9686(JP,A)
【文献】特開2006-129378(JP,A)
【文献】特開2017-49009(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04G 3/00-99/00
G04R 20/00-60/14
H01Q 1/22、7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
親時計モジュールにて時刻情報を受信し、当該親時計モジュールと伝送線で接続された送信モジュールから標準電波を模した模擬標準電波を送信する標準電波配信装置であって、
前記親時計モジュールは、前記時刻情報に基づいて前記標準電波に使用される形式のタイムコードを生成し、当該タイムコードを表すパルス信号のハイレベルに対応して第1の電圧状態となりローレベルに対応して第2の電圧状態となる電圧信号を生成し、
前記伝送線は、対をなして配線された電線であり、当該両電線間に印加された前記電圧信号を伝送し、
前記送信モジュールは、前記伝送線に接続され前記電圧信号を印加される一対の入力端子を備え、当該入力端子間の電圧を電源にして動作すると共に、前記模擬標準電波として、標準周波数の電波を前記電圧信号の前記電圧状態に応じて振幅を切り替えて送信し、
前記第1の電圧状態は前記送信モジュールが動作する閾値以上の電圧であり、前記第2の電圧状態は前記閾値未満の電圧であり、
前記送信モジュールは、前記電圧信号が前記第1の電圧状態である場合に動作して前記標準周波数の電波を送信する一方、前記第2の電圧状態である場合には動作を停止し、
前記送信モジュールは、前記第1の電圧状態にて、第1の前記入力端子が第2の前記入力端子より高電位である場合には前記標準周波数が第1の標準周波数である電波を送信し、一方、前記第2の入力端子が前記第1の入力端子より高電位である場合には第2の標準周波数である電波を送信すること、
を特徴とする標準電波配信装置。
【請求項2】
請求項に記載の標準電波配信装置において、
前記送信モジュールは、
前記第1の標準周波数の発振信号を生成する第1発振回路と、
前記第2の標準周波数の発振信号を生成する第2発振回路と、
前記第1の入力端子と前記第2の入力端子との電位の高低関係に応じた切替制御信号を生成する切替信号生成回路と、
前記切替制御信号に基づいて、前記第1発振回路及び前記第2発振回路それぞれから入力される前記発振信号のどちらを出力するかを切り替える切替部と、
前記切替部から出力される前記発振信号を電波に変換して送信する送信部と、
を有することを特徴とする標準電波配信装置。
【請求項3】
請求項に記載の標準電波配信装置において、
前記送信モジュールは、
前記第1の標準周波数と前記第2の標準周波数との公倍数を有する逓倍発振信号を生成する発振回路と、
前記第1の入力端子と前記第2の入力端子との電位の高低関係に応じた切替制御信号を生成する切替信号生成回路と、
前記切替制御信号に基づいて前記第1及び第2の標準周波数のどちらかを選択し、当該選択した標準周波数の発振信号を前記逓倍発振信号から生成する周波数変換回路と、
前記周波数変換回路から出力される前記発振信号を電波に変換して送信する送信部と、
を有することを特徴とする標準電波配信装置。
【請求項4】
親時計モジュールにて時刻情報を受信し、当該親時計モジュールと伝送線で接続された送信モジュールから標準電波を模した模擬標準電波を送信する標準電波配信装置であって、
前記親時計モジュールは、前記時刻情報に基づいて前記標準電波に使用される形式のタイムコードを生成し、当該タイムコードを表すパルス信号のハイレベルに対応して第1の電圧状態となりローレベルに対応して第2の電圧状態となる電圧信号を生成し、
前記伝送線は、対をなして配線された電線であり、当該両電線間に印加された前記電圧信号を伝送し、
前記送信モジュールは、前記伝送線に接続され前記電圧信号を印加される一対の入力端子を備え、当該入力端子間の電圧を電源にして動作すると共に、前記模擬標準電波として、標準周波数の電波を前記電圧信号の前記電圧状態に応じて振幅を切り替えて送信し、
前記第1及び第2の電圧状態はいずれも前記送信モジュールが動作する閾値以上の電圧であり、
前記送信モジュールは、
入力された前記電圧信号が前記第1及び第2の電圧状態のいずれであるかを判定する判定手段と、
前記標準周波数の電波を、前記第1の電圧状態では第1の振幅で送信し、前記第2の電圧状態では前記第1の振幅に対して所定割合に減じた第2の振幅で送信する送信手段と、
を有すること、を特徴とする標準電波配信装置。
【請求項5】
請求項に記載の標準電波配信装置において、
前記判定手段は、前記電圧信号にて、その変化パターンに基づいて、前記タイムコード内に所定形式で配置されるマーカー又はポジションマーカーのパルスを検出し、当該パルスに対応する電圧状態を前記第1の電圧状態と判定すること、
を特徴とする標準電波配信装置。
【請求項6】
請求項に記載の標準電波配信装置において、
前記送信手段は、前記第1の電圧状態にて第1の前記入力端子が第2の前記入力端子より高電位である場合には、前記標準周波数を第1の標準周波数に設定し、一方、前記第1の電圧状態にて前記第2の入力端子が前記第1の入力端子より高電位である場合には、前記標準周波数を第2の標準周波数に設定すること、
を特徴とする標準電波配信装置。
【請求項7】
請求項から請求項、及び請求項のいずれか1つに記載の標準電波配信装置において、
前記親時計モジュールは、前記電圧信号の前記伝送線に印加する向きを反転させるか否かを切り替える出力極性切替手段を有すること、を特徴とする標準電波配信装置。
【請求項8】
請求項1から請求項のいずれか1つに記載の標準電波配信装置において、
前記送信モジュールは、
筐体と、
前記筐体の内面に立設された支柱と、
前記支柱に取り付けられ、前記筐体の内面から離して支持された回路基板と、
前記回路基板に括り付けられ、前記筐体の内面から離して支持されたバーアンテナと、
を有することを特徴とする標準電波配信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波時計等の自動修正に用いられる標準電波を模した電波を配信する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
標準電波は、標準時と周波数の国家標準または国際標準として政府機関等により送信されている電波であり、日本では2か所の送信所から互いに別々の周波数(40kHz,60kHz)で送信されている。標準電波により、所定の形式で時刻に関する情報を表したタイムコードが送信され、電波時計等の機器(以下、単に電波時計と記す。)は標準電波を受信して時刻修正等を行う機能を有している。
【0003】
電波時計の時刻の正確性を維持する上では時刻修正を定期的に行うことが好ましく、この点で、電波時計の設置場所が標準電波を安定して受信できる環境にあることが求められる。しかし、利用者における電波時計の使用環境は必ずしも標準電波の好適な受信環境であるとは限らない。
【0004】
そこで、標準電波に相当する電波を送出することで、送信所から標準電波が好適に届かない場所においても電波時計の時刻修正機能を有効とする装置が提案されている。下記特許文献1には、送信所から受信した長波帯の標準電波信号をVHF帯あるいはUHF帯になるよう変調し、これをTV信号と合波して、建物内に敷設されたケーブルで伝送し、伝送先にて元の帯域の標準電波信号に復調してアンテナから放射する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5329253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
標準電波信号を他の信号に重畳させてケーブルにて伝送する場合、合波や復調のための処理や回路が必要となる分、信号処理が複雑となったり回路規模が大きくなったりするという問題があり、ひいては装置のコストや消費電力が増加し得る。また、ケーブルで伝送された標準電波信号を復調して放射する送信モジュールは、基本的に電波出力を微弱強度に規制されるため、大きな建物などにおいては複数箇所に設置され得る。それら設置場所は様々であり得るので、送信モジュールに関しては、目立たないよう小型とし、また商用電源のコンセントへの接続を不要とすると好都合である。
【0007】
本発明は上記問題点、課題を解決するためになされたものであり、信号処理や回路構成の簡素化によりコストや消費電力の低減が図られ、また、送信モジュールの設置上の利便性が向上した標準電波配信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る標準電波配信装置は、親時計モジュールにて時刻情報を受信し、当該親時計モジュールと伝送線で接続された送信モジュールから標準電波を模した模擬標準電波を送信する装置であって、前記親時計モジュールは、前記時刻情報に基づいて前記標準電波に使用される形式のタイムコードを生成し、当該タイムコードを表すパルス信号のハイレベルに対応して第1の電圧状態となりローレベルに対応して第2の電圧状態となる電圧信号を生成し、前記伝送線は、対をなして配線された電線であり、当該両電線間に印加された前記電圧信号を伝送し、前記送信モジュールは、前記伝送線に接続され前記電圧信号を印加される一対の入力端子を備え、当該入力端子間の電圧を電源にして動作すると共に、前記模擬標準電波として、標準周波数の電波を前記電圧信号の前記電圧状態に応じて振幅を切り替えて送信する。
【0009】
(2)上記(1)に記載の標準電波配信装置において、前記第1の電圧状態は前記送信モジュールが動作する閾値以上の電圧であり、前記第2の電圧状態は前記閾値未満の電圧であり、前記送信モジュールは、前記電圧信号が前記第1の電圧状態である場合に動作して前記標準周波数の電波を送信する一方、前記第2の電圧状態である場合には動作を停止する構成とすることができる。
【0010】
(3)上記(2)に記載の標準電波配信装置において、前記送信モジュールは、前記第1の電圧状態にて、第1の前記入力端子が第2の前記入力端子より高電位である場合には前記標準周波数が第1の標準周波数である電波を送信し、一方、前記第2の入力端子が前記第1の入力端子より高電位である場合には第2の標準周波数である電波を送信する構成とすることができる。
【0011】
(4)上記(3)に記載の標準電波配信装置において、前記送信モジュールは、前記第1の標準周波数の発振信号を生成する第1発振回路と、前記第2の標準周波数の発振信号を生成する第2発振回路と、前記第1の入力端子と前記第2の入力端子との電位の高低関係に応じた切替制御信号を生成する切替信号生成回路と、前記切替制御信号に基づいて、前記第1発振回路及び前記第2発振回路それぞれから入力される前記発振信号のどちらを出力するかを切り替える切替部と、前記切替部から出力される前記発振信号を電波に変換して送信する送信部と、を有する構成とすることができる。
【0012】
(5)上記(3)に記載の標準電波配信装置において、前記送信モジュールは、前記第1の標準周波数と前記第2の標準周波数との公倍数を有する逓倍発振信号を生成する発振回路と、前記第1の入力端子と前記第2の入力端子との電位の高低関係に応じた切替制御信号を生成する切替信号生成回路と、前記切替制御信号に基づいて前記第1及び第2の標準周波数のどちらかを選択し、当該選択した標準周波数の発振信号を前記逓倍発振信号から生成する周波数変換回路と、前記周波数変換回路から出力される前記発振信号を電波に変換して送信する送信部と、を有する構成とすることができる。
【0013】
(6)上記(1)に記載の標準電波配信装置において、前記第1及び第2の電圧状態はいずれも前記送信モジュールが動作する閾値以上の電圧であり、前記送信モジュールは、入力された前記電圧信号が前記第1及び第2の電圧状態のいずれであるかを判定する判定手段と、前記標準周波数の電波を、前記第1の電圧状態では第1の振幅で送信し、前記第2の電圧状態では前記第1の振幅に対して所定割合に減じた第2の振幅で送信する送信手段と、を有する構成とすることができる。
【0014】
(7)上記(6)に記載の標準電波配信装置において、前記判定手段は、前記電圧信号にて、その変化パターンに基づいて、前記タイムコード内に所定形式で配置されるマーカー又はポジションマーカーのパルスを検出し、当該パルスに対応する電圧状態を前記第1の電圧状態と判定する構成とすることができる。
【0015】
(8)上記(7)に記載の標準電波配信装置において、前記送信手段は、前記第1の電圧状態にて第1の前記入力端子が第2の前記入力端子より高電位である場合には、前記標準周波数を第1の標準周波数に設定し、一方、前記第1の電圧状態にて前記第2の入力端子が前記第1の入力端子より高電位である場合には、前記標準周波数を第2の標準周波数に設定する構成とすることができる。
【0016】
(9)上記(3)~(5)、及び(8)に記載の標準電波配信装置において、前記親時計モジュールは、前記電圧信号の前記伝送線に印加する向きを反転させるか否かを切り替える出力極性切替手段を有する構成とすることができる。
【0017】
(10)上記(1)~(9)に記載の標準電波配信装置において、前記送信モジュールは、筐体と、前記筐体の内面に立設された支柱と、前記支柱に取り付けられ、前記筐体の内面から離して支持された回路基板と、前記回路基板に括り付けられ、前記筐体の内面から離して支持されたバーアンテナと、を有する構成とすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、信号処理や回路構成が簡素化されコストや消費電力の低減が図られる標準電波配信装置が得られ、また、送信モジュールについて小型化や商用電源への接続を不要として設置上の利便性が向上した標準電波配信装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る標準電波配信装置の概略の構成を示すための模式図である。
図2】日本の標準電波に使用されているタイムコードの構成を説明する模式図である。
図3】本発明の第1の実施形態における親時計モジュールの概略の構成を示すブロック図である。
図4】本発明の第1の実施形態における送信モジュールの概略の回路構成を示す図である。
図5】本発明の第1の実施形態における親時計モジュールの動作・処理の概略のフロー図である。
図6】本発明の第1の実施形態における親時計モジュールから出力される電圧信号、及び送信モジュールから送信される電波についての概略の信号波形図である。
図7】本発明の実施形態における送信モジュールの模式的な斜視図である。
図8】本発明の第2の実施形態における送信モジュールの概略の回路構成を示す図である。
図9】本発明の第2の実施形態における送信モジュールの制御回路の概略の動作を説明するフロー図である。
図10】本発明の第3の実施形態における送信モジュールの概略の回路構成を示す図である。
図11】本発明の第3の実施形態における親時計モジュールの動作・処理の概略のフロー図である。
図12】本発明の第3の実施形態における親時計モジュールから出力される電圧信号、及び送信モジュールから送信される電波についての概略の信号波形図である。
図13】本発明の第3の実施形態における送信モジュールの制御回路の動作に関する概略のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態(以下実施形態という)について、図面に基づいて説明する。
【0021】
図1は実施形態に係る標準電波配信装置1の概略の構成を示すための模式図である。図1に示す構成は一例であり、以下に説明する各実施形態に共通の構成例である。
【0022】
標準電波配信装置1は、親時計モジュール2、送信モジュール4及び伝送線6を含んで構成され、標準電波に相当する電波信号を電波時計8に配信してその時刻修正を可能とさせる機能を有する。
【0023】
親時計モジュール2と送信モジュール4とは伝送線6により接続される。また、標準電波配信装置1には複数の送信モジュール4を備えることができ、それらは1つの親時計モジュール2に共通に接続することができる。
【0024】
親時計モジュール2は、標準電波配信装置1の外部から時刻情報を受信し、時刻情報に基づいて変調した電圧信号を端子A,Bから伝送線6へ送出する。具体的には、親時計モジュール2は、時刻情報に基づいて標準電波に使用される形式のタイムコードを生成し、当該タイムコードを表すパルス信号のハイレベル(Hレベル)に対応して第1の電圧状態となりローレベル(Lレベル)に対応して第2の電圧状態となる電圧信号を生成する。
【0025】
伝送線6は、対をなして配線された電線6a,6bからなり、親時計モジュール2から当該両電線6a,6b間に電圧信号を印加され、当該電圧信号を伝送する。本実施形態では、電線6aが親時計モジュール2の端子Aに接続され、電線6bが親時計モジュール2の端子Bに接続されるものとする。
【0026】
送信モジュール4は、伝送線6に接続され電圧信号を印加される一対の入力端子P,Qを備え、当該入力端子間の電圧を電源にして動作する。また、送信モジュール4は入力端子P,Qに印加される電圧信号に基づいて標準電波に相当する電波を生成し送出する。ここでは、この標準電波に相当する電波を模擬標準電波と称する。つまり、送信モジュール4が送出する電波は標準電波そのものではなく、標準電波を模した模擬標準電波であり、当該模擬標準電波は電波時計8に対しては基本的に標準電波と同等に機能する。具体的には、送信モジュール4は模擬標準電波として、標準周波数の電波を、電圧信号が第1の電圧状態か第2の電圧状態かに応じて振幅を切り替えて送信する。
【0027】
なお、標準周波数は標準電波の周波数であり、日本では福島県のおおたかどや山標準電波送信所から送信される標準電波について40kHz、また佐賀県のはがね山標準電波送信所から送信される標準電波について60kHzである。
【0028】
例えば、標準電波配信装置1は建物内にて用いられ、その建物内にて親時計モジュール2は外部からの時刻情報を取得するのに都合がよい場所に設置され、伝送線6は建物内の複数の部屋やフロアに跨がって敷設される。また、送信モジュール4は、建物内の複数箇所に設置される電波時計8が模擬標準電波を受信できるように複数設置され得る。なお、図1では、伝送線6が1系統だけである例を示しているが、親時計モジュール2から複数系統の伝送線6を延在させてもよいし、伝送線6を途中で分岐させてもよい。また、上述したように、送信モジュール4は一対の入力端子P,Qを伝送線6に接続するだけで電源供給と時刻情報の伝達が行われるので、伝送線とは別に電源線を用意する必要が無い。よって、既設の伝送線、例えば館内放送用の伝送線や構内電話用の伝送線などをそのまま利用することで、新たな配線工事をすることなく標準電波配信装置1を実現することが可能である。
【0029】
図2は、日本の標準電波に使用されているタイムコードの構成を説明する模式図である。具体的には、図2は、時刻情報が「2004年92日(4月1日)17時25分、木曜日、1ヶ月以内にうるう秒無し」である例を示している。
【0030】
タイムコードは1周期60秒(60ビット)の繰り返しで送出される。つまり1分間の各秒に1ビットが割り当てられ1つのパルスが出力される。タイムコード内には所定形式でマーカー(M)及びポジションマーカー(P0~P5)が配置され、M,P0~P5以外のビット位置に格納されるバイナリデータで時刻などが表現される。M,P0~P5は0.2秒幅のパルスで表現され、バイナリデータを構成する“0”と“1”はそれぞれ0.8秒幅、0.5秒幅のパルスで表現される。なお、バイナリデータに含まれる時刻の最小単位は「分」であり、「秒」の情報は1周期のタイムコードにおけるパルスをカウントすることで得られる。
【0031】
図2にて上段、下段それぞれ右方向が時間tの正の向きであり、上段が1周期のうち0秒≦t<30秒、下段が30秒≦t<60秒を表しており、斜線のハッチングを施した矩形がパルスの期間である。Mのパルスの立ち上がり位置は、正分(毎分0秒)に対応し、P1~P5,P0の立ち上がり位置はそれぞれ9秒、19秒、29秒、39秒、49秒、59秒に対応する。ここで、パルスが立ち上がっている状態がパルス信号のHレベル、立ち下がっている状態がLレベルである。M,P0~P5に対応するビットでは当該ビットに割り当てられた1秒間の先頭の0.2秒にてHレベルとなり、それに続く残り0.8秒にてLレベルとなる。バイナリデータを構成するビットも同様に、1秒の先頭からパルス幅に相当する0.8秒又は0.5秒の期間にてHレベルとなり、残りの期間はLレベルとなる。そして、標準電波は標準周波数の搬送波をタイムコードのHレベル、Lレベルに応じて振幅変調して生成され、Hレベルでの振幅を100%とするとLレベルでの振幅は10%とする諸元が定められている。
【0032】
以下、いくつかの実施形態を順に説明する。なお、その際、先に説明した実施形態における要素と同様の機能を備えた要素には、同一の符号を付して、後の実施形態では重複する説明を省略することがある。
【0033】
[第1の実施形態]
図3は、第1の実施形態の標準電波配信装置1における親時計モジュール2の概略の構成を示すブロック図である。
【0034】
親時計モジュール2は、受信手段20、時刻修正手段22、内部時計計時手段24、タイムコードビット抽出手段26、出力極性切替手段28及びパルス出力手段30を有する。
【0035】
受信手段20は時刻情報源から時刻情報を受信する。時刻情報源として、標準電波送信所からの長波標準電波やGPS(Global Positioning System)などからの衛星電波といった電波信号や、NTP(Network Time Protocol)サーバなどのインターネット上の時刻サーバからの信号を利用することができる。具体的には、受信手段20はアンテナを備えたり、インターネットに接続されたりしてそれら時刻情報源から時刻情報を取得する。
【0036】
時刻修正手段22は、受信手段20にて取得した現在の時刻情報に基づいて、内部時計計時手段24にて計時される時刻を随時修正する。例えば、時刻修正手段22は内部時計計時手段24での計時誤差を修正する。また、時刻修正手段22は、内部時計計時手段24から送信モジュール4の電波放射までの標準電波配信装置1での信号処理や伝送により生じる遅延を補正し、内部時計計時手段24に設定する時刻を定めることができる。
【0037】
内部時計計時手段24は時間経過を計って時刻情報を生成する。具体的には、内部時計計時手段24は、時刻修正手段22により設定された時刻を基準とし、当該時刻からの時間経過を計って時刻情報を更新する。例えば、内部時計計時手段24は、時刻情報として、年、1月1日からの通算日、曜日、時、分、秒を表すバイナリデータを生成する。
【0038】
タイムコードビット抽出手段26は、内部時計計時手段24が計時する秒ごとに、タイムコードにおける当該秒に対応するビットのパルス幅を定める。具体的には、当該秒がタイムコードにおけるM,P0~P5のタイミングであれば、タイムコードビット抽出手段26はパルス幅を0.2秒とし、一方、それ以外のタイミングであれば、例えば、内部時計計時手段24が生成したバイナリデータのビット列の中から当該タイミングに対応するビットを抽出し、その値に応じてパルス幅を0.8秒及び0.5秒のいずれかに定める。
【0039】
出力極性切替手段28は、パルス出力手段30から伝送線6に出力する電圧信号の向きを切り替える回路である。ここで、電圧信号の向きは、端子Aと端子Bとの電位の大小関係で定義され、例えば、電圧信号の順向きを端子Aが端子Bより高電位である状態、電圧信号の逆向きを端子Bが端子Aより高電位である状態と定義する。いずれの向きとするかは例えば、ユーザが設定することができ、出力極性切替手段28はその設定に応じて、電圧信号を伝送線に印加する向きを順向きとするか、またはそれを反転させた逆向きとするかを切り替える。なお、後述するように、出力極性切替手段28が設定する電圧信号の向きにより、送信モジュール4から送信される模擬標準電波の周波数を2種類の標準周波数(40kHz,60kHz)のどちらにするかを制御することができる。
【0040】
パルス出力手段30は、タイムコードビット抽出手段26で設定されたパルス幅を有するパルスを生成し、端子A,Bから伝送線6へ電圧信号として出力する回路である。具体的には、パルスの立ち上がりタイミングは、内部時計計時手段24での計時における正秒のタイミングであり、当該正秒からパルスのHレベルが始まり、パルス幅に対応した時間が経過すると、パルスはHレベルからLレベルに立ち下がる。
【0041】
伝送線6に出力される電圧信号、つまり端子A,B間の電位差は、パルスのHレベルにて、Lレベルより大きくなる。本実施形態では、出力極性切替手段28により電圧信号の伝送線6への出力を順向きに設定された場合には、端子Bを接地電位として端子Aにパルスを出力し、一方、伝送線6への出力を逆向きに設定された場合には、端子Aを接地電位として端子Bにパルスを出力する。本実施形態ではパルスの電圧は24ボルト[V]とする。つまり、伝送線6の電線6a,6b間には、パルスのHレベルに対応して24Vの電位差が印加され、Lレベルでは電位差は0Vとされる。
【0042】
パルス出力手段30はトランジスタなどのスイッチ動作でパルスのオン/オフを制御する。また、パルス出力手段30は敷設される伝送線6に対する十分な駆動能力を確保するように回路を構成される。つまり、パルス出力手段30が24Vのパルスを出力する例では基本的に、パルス出力手段30に接続された伝送線6の全長に亘って実質的に24Vの電圧信号が印加される。一方、伝送線6がパルス出力手段30の駆動能力を超えて長く敷設される場合などには、伝送線6の途中に電圧信号を増幅する回路を別途設けてもよい。
【0043】
図4は第1の実施形態に係る送信モジュール4の概略の回路構成を示す図である。送信モジュール4はブリッジ回路40、定電圧レギュレータ42、40kHz発振回路44、60kHz発振回路46、切替信号生成回路48、アナログスイッチ50、増幅回路52及びアンテナ54を備える。
【0044】
ブリッジ回路40はダイオードD1~D4からなるブリッジ整流器であり、伝送線6から端子P,Q間に印加される入力信号を全波整流して出力することができる。ここで、端子P,Q間に印加される電圧信号の向きは、それら2つの端子それぞれを電線6a,6bのどちらに接続するかによって切り替わり、また、親時計モジュール2の出力極性切替手段28での設定によっても切り替わる。ブリッジ回路40は、この向きが変わり得る伝送線6の電圧信号から、一定極性の電圧を生成して定電圧レギュレータ42へ出力する。具体的には、D1とD2との接続点、D3とD4との接続点がそれぞれ定電圧レギュレータ42の入力端子であるGND、VINに接続され、ブリッジ回路40へ入力される電圧信号の向きに依らず、GNDに対するVINの電位が非負に保たれる。ここでGNDを接地電位とし、VINの電位を定電圧レギュレータ42の入力電圧と呼ぶことにすると、本実施形態では、親時計モジュール2のパルス出力手段30におけるパルスのHレベルの期間に対応して、定電圧レギュレータ42の入力電圧は正となる。
【0045】
定電圧レギュレータ42は入力電圧を、送信モジュール4の電源として用いる所定電圧に変換する。具体的には、定電圧レギュレータ42は、親時計モジュール2でのパルスのHレベルの期間に当該所定電圧を出力する。つまり、Hレベルの期間には定電圧レギュレータ42が電源として機能し、よって、送信モジュール4が動作する。一方、パルスのLレベルの期間には電線6a,6b間の電圧が0Vとなり、定電圧レギュレータ42からの当該所定電圧の出力が停止するので、送信モジュール4は動作を停止する。
【0046】
40kHz発振回路44は第1の標準周波数(40kHz)の発振信号を生成する第1発振回路、また60kHz発振回路46は第2の標準周波数(60kHz)の発振信号を生成する第2発振回路であり、いずれも、給電されると動作して発振信号を生成し、給電が停止すると発振を停止する。つまり、40kHz発振回路44及び60kHz発振回路46は給電されている間だけ発振信号を出力する。
【0047】
切替信号生成回路48は、第1の入力端子Pの電位φと第2の入力端子Qの電位φとの高低関係に応じた切替制御信号を生成し、アナログスイッチ50へ出力する。本実施形態では切替信号生成回路48は、ダイオードD5と、直列接続された抵抗素子R1,R2とを用いて構成される。D5はアノードを端子Pに接続され、カソードをR1,R2からなる抵抗列の一方端に接続され、また、当該抵抗列の他方端は接地される。D5のカソードにはφに応じた電位が現れ、R1とR2との接続点に抵抗分割により得られる電位が切替制御信号としてアナログスイッチ50に与えられる。具体的には、親時計モジュール2におけるHレベルの出力時にて、電線6a,6bのうち端子Pが接続される側が高電位φ(=24V)、端子Qが接続される側がφ(=0V)である場合には、切替信号生成回路48は切替制御信号として正電位を出力し、一方、端子P側の電線がφで端子Q側の電線がφである場合には、切替制御信号として接地電位が出力される。なお、R1,R2による抵抗分割により、端子P側が24Vとなった場合における切替制御信号の正電位をアナログスイッチ50の定格入力電圧に合わせている。
【0048】
アナログスイッチ50は、切替制御信号に基づいて、第1発振回路及び第2発振回路それぞれから入力される発振信号のどちらを出力するかを切り替える切替部である。本実施形態では、アナログスイッチ50は、切替制御信号の電位が閾値より上か下かで切り替えが行われる構成であり、切替制御信号が正電位である場合には、第1発振回路である40kHz発振回路44が生成する40kHzの発振信号を選択的に出力し、切替制御信号が接地電位である場合には、第2発振回路である60kHz発振回路46が生成する60kHzの発振信号を選択的に出力する。
【0049】
増幅回路52とアンテナ54とは切替部であるアナログスイッチ50から出力される発振信号を電波に変換して送信する送信部である。増幅回路52は、アナログスイッチ50が出力する発振信号を電流増幅してアンテナ54へ出力する。アンテナ54は増幅回路52から入力された発振信号を電波として空中に送出する。例えば、アンテナ54はフェライトバーアンテナやループアンテナで構成される。
【0050】
上述の構成の標準電波配信装置1は、親時計モジュール2でのHレベルの期間にのみ送信モジュール4から電波を放射する。つまり、親時計モジュール2でのLレベルの期間には電波の振幅は0であり、送信モジュール4から送信される模擬標準電波は断続波となる。
【0051】
また上述したように送信モジュール4と伝送線6との接続の仕方には2つの向きがあり、それに対応して送信モジュール4の端子P,Qと親時計モジュール2の端子A,Bとの接続の向きも2通りある。ここでは、端子Pが端子A、端子Qが端子Bにそれぞれ接続される状態を送信モジュール4の順接続状態、また、端子Pが端子B、端子Qが端子Aにそれぞれ接続される状態を送信モジュール4の逆接続状態と定義する。順接続状態の送信モジュール4は、親時計モジュール2が順向きの電圧信号を出力する場合に40kHzの電波を放射し、親時計モジュール2が逆向きの電圧信号を出力する場合に60kHzの電波を放射する。そして、これに対応して、出力極性切替手段28の設定状態に関し、電圧信号を順向きとする設定を設定周波数が40kHzの状態、また電圧信号を逆向きとする設定を設定周波数が60kHzの状態と定義することにする。
【0052】
次に、本実施形態に係る標準電波配信装置1の動作についてさらに説明する。
【0053】
図5は親時計モジュール2における動作・処理の概略のフロー図である。親時計モジュール2は電源を投入されると(ステップS2)、受信手段20が時刻情報を受信する処理を継続的に実行する(ステップS4,S6)。受信手段20が時刻情報を取得すると(ステップS6にて「YES」の場合)、時刻修正手段22が取得された時刻情報を用いて内部時計計時手段24にて計時される時刻情報を修正する(ステップS8)。
【0054】
内部時計計時手段24は計時し(ステップS10)、タイムコードビット抽出手段26は内部時計計時手段24における秒のカウント値が“00”,“09”,“19”,“29”,“39”,“49”,“59”であれば(ステップS12にて「YES」の場合)、パルス幅としてマーカーM及びポジションマーカーP0~P5を表す0.2秒を設定し、パルス出力手段30が電圧信号として0.2秒幅のパルスを出力する。電圧信号の向きは出力極性切替手段28の設定周波数の状態に従って選択され(ステップS14)、設定周波数40kHzの場合、端子A側に0.2秒のパルスが出力され(ステップS16)、設定周波数60kHzの場合、端子B側に0.2秒のパルスが出力される(ステップS18)。
【0055】
一方、内部時計計時手段24における秒のカウント値が“00”,“09”,“19”,“29”,“39”,“49”,“59”以外であれば(ステップS12にて「NO」の場合)、タイムコードビット抽出手段26は、内部時計計時手段24が生成したバイナリデータのビット列の中から、タイムコードにおける当該カウント値が指し示す位置に該当するビットを抽出し(ステップS20)、抽出したビットの値に従ってパルス幅を0.5秒及び0.8秒のいずれかに設定する(ステップS22)。
【0056】
具体的には、当該ビット値が“1”の場合には、パルス幅は0.5秒とされる。そして、電圧信号の向きが設定周波数の状態に従って選択され(ステップS24)、設定周波数40kHzの場合、端子A側に0.5秒のパルスが出力され(ステップS26)、設定周波数60kHzの場合、端子B側に0.5秒のパルスが出力される(ステップS28)。
【0057】
また、当該ビット値が“0”の場合には、パルス幅は0.8秒とされる。そして、電圧信号の向きが設定周波数の状態に従って選択され(ステップS30)、設定周波数40kHzの場合、端子A側に0.8秒のパルスが出力され(ステップS32)、設定周波数60kHzの場合、端子B側に0.8秒のパルスが出力される(ステップS34)。
【0058】
親時計モジュール2は、ステップS10での内部時計計時手段24のカウントに連動して、ステップS12~S34の処理を繰り返す。また、内部時計計時手段24でのカウントは通常、水晶発振回路により生成されたクロックを基準として行われる。親時計モジュール2は当該カウントの誤差が累積しないように、例えば、ステップS4~S8の処理を定期的に行う。
【0059】
図6は親時計モジュール2から出力される電圧信号、及び送信モジュール4から送信される電波についての概略の信号波形図である。図6(a)及び(b)はそれぞれ電圧信号が順向きの場合と逆向きの場合を示しており、それぞれの場合について、上から順に、親時計モジュール2の端子Aの出力電位、端子Bの出力電位、送信モジュール4からの送信電波の振幅が、共通の時間軸で示されている。ちなみに、時間軸は水平方向であり、右向きが正の向きである。
【0060】
電圧信号が順向きである場合には、図6(a)に示すように、パルス出力手段30から端子Aにパルスが出力される。つまり、本実施形態ではHレベルの出力期間に端子Aの電位は24Vとされ、Lレベルの出力期間に端子Aの電位は0Vとされる。また、端子Bは0Vに維持される。一方、図6(b)に示す電圧信号が逆向きである場合の端子A,Bの電位変化は、図6(a)の場合と入れ替わって、端子Bにパルスが出力される。つまり、本実施形態ではHレベルの出力期間に端子Bの電位は24V、Lレベルの出力期間に端子Bの電位は0Vとされ、また端子Aは0Vに維持される。
【0061】
電圧信号の向きがいずれの場合でも、送信モジュール4はHレベルの期間にて振幅を有する断続波を送信する。なお、送信モジュール4が順接続状態であれば、送信周波数は、順向きの電圧信号の場合、40kHzに設定され、逆向きの電圧信号の場合、60kHzに設定される。一方、送信モジュール4が逆接続状態であれば、送信周波数は、順向きの電圧信号の場合、60kHzに設定され、逆向きの電圧信号の場合、40kHzに設定される。
【0062】
図7は送信モジュール4の模式的な斜視図である。送信モジュール4は、筐体60内に図4に示す回路が収納された構造を有し、図7では筐体60を透視して内部構造を示している。内部構造は支柱62、回路基板64、バーアンテナ66を含んでいる。
【0063】
筐体60は例えば、箱形であり、またバーアンテナ66に対応する長手方向を有した直方体とすることができる。
【0064】
支柱62は、例えば、筐体60の直方体をなす内面のうちの1つ(底面とする。)に立設される。例えば、支柱62はバーアンテナ66の傍らに配置され、またバーアンテナ66の長軸方向に間隔を設けて2つ配置される。
【0065】
回路基板64には基本的に図4に示した回路のうちアンテナ54以外の主要部分が実装される。バーアンテナ66は送信モジュール4の回路のうちアンテナ54に該当し、フェライトバーとその周囲の巻き線とを含み、巻き線は回路基板64に接続され増幅回路52から給電される。バーアンテナ66は回路基板64に例えば、結束帯68で括り付けられる。結束帯68は例えば、比較的広い幅でバーアンテナ66の中央部に位置する。例えば、結束帯68として熱収縮チューブが用いられる。
【0066】
1つに束ねられたバーアンテナ66及び回路基板64は、支柱によって筐体60の内面から離して支持される。具体的には、回路基板64が支柱62に接続される。例えば、回路基板64は平面視にて、バーアンテナ66に沿って延在するアンテナ隣接部64aと、アンテナ隣接部64aからバーアンテナ66の側方に突き出した部分であって支柱62に固定される支柱取り付け部64bとを有する。例えば、回路基板64は、束ねられたバーアンテナ66を下にして、支柱62の上端部に取り付けられる。
【0067】
この構造では、バーアンテナ66が筐体60に接触した状態にないので、送信モジュール4に外部から衝撃が加わった際に、当該衝撃はバーアンテナ66に直接及ばず、支柱62の撓みや、片持ち梁構造をなす回路基板64の撓み、さらに結束帯68の柔軟性により緩和されてバーアンテナ66に伝わる。よって、フェライトバーが折れるといったバーアンテナ66の破損が起こりにくくなる。つまり、送信モジュール4が衝撃に強い構造となることで、設置時の取り扱いが容易となる。
【0068】
[第2の実施形態]
図1に示した標準電波配信装置1の構成のうち、第2の実施形態の親時計モジュール2及び伝送線6は第1の実施形態と共通であり、これらに関しては第1の実施形態についての上述の説明を援用することができる。第2の実施形態が第1の実施形態と異なる点は送信モジュール4にあり、以下、この相違点を中心に説明する。説明の便宜上、第2の実施形態では、送信モジュールの符号は“4B”とする。
【0069】
図8は第2の実施形態に係る送信モジュール4Bの概略の回路構成を示す図である。送信モジュール4Bはブリッジ回路40、定電圧レギュレータ42、水晶発振回路80、制御回路82、モータードライバ84、ローパスフィルタ86及びアンテナ54を備える。
【0070】
水晶発振回路80は第1の標準周波数である40kHzと第2の標準周波数である60kHzとの公倍数を有する逓倍発振信号を生成する。例えば、水晶発振回路80は逓倍発振信号として12MHzのクロック信号を生成する。
【0071】
制御回路82は、切替信号生成回路48から入力される切替制御信号に基づいて第1及び第2の標準周波数のどちらかを選択し、当該選択した標準周波数の発振信号を逓倍発振信号から生成する周波数変換回路としての機能を果たす。例えば、制御回路82は12MHzの逓倍発振信号を1/300に分周して40kHzの発振信号を生成し、また、1/200に分周して60kHzの発振信号を生成する。例えば、制御回路82はマイクロプロセッサを用いて構成され、切替信号生成回路48は制御回路82にて論理値を表す電圧にて切替制御信号を生成し制御回路82に入力する。具体的には、切替信号生成回路48は、φ>φの場合には、論理状態「H」を表す所定の正電圧を出力し、φ<φの場合には、論理状態「L」を表す0Vを出力する。
【0072】
モータードライバ84、ローパスフィルタ86及びアンテナ54は周波数変換回路である制御回路82から出力される発振信号を電波に変換して送信する送信部である。モータードライバ84は制御回路82が出力する発振信号を電流増幅してアンテナ54に給電する。つまり、送信モジュール4Bはモータードライバ84を、モーターを駆動するためではなくアンテナの駆動回路として用いている。モータードライバ84を用いることで、コイル型のアンテナ54に対して大きな電流量で正負の極性における駆動が可能であり、その結果、送信モジュール4Bは広範囲に電波を出力することができる。モータードライバ84は入力された発振信号から正極性の発振信号とそれを反転させた負極性の発振信号とを生成し平衡出力する。ローパスフィルタ86は例えば、CRローパスフィルタで構成され、モータードライバ84の両極出力から出力される発振信号に含まれ得る高調波を除去し、アンテナ54は高調波を除去された発振信号を入力され電波として送出する。
【0073】
制御回路82やモータードライバ84はデジタル回路で構成することができ、それをIC化することで回路構成、ひいては送信モジュール4Bの小型化を図ることができる。
【0074】
なお、定電圧レギュレータ42は第1の実施形態と同様、パルス出力手段30でのHレベルの出力期間にのみ電源として機能する。よって、制御回路82等は定電圧レギュレータ42から電源を供給されると動作し、その供給が止まると動作を停止し、送信モジュール4Bから送信される模擬標準電波は第1の実施形態と同様、断続波となる。図9は送信モジュール4Bの制御回路82の概略の動作を説明するフロー図である。制御回路82は、定電圧レギュレータ42から電源を供給されると、電源投入状態となって動作を開始する(ステップS40)。制御回路82は、切替信号生成回路48からの切替制御信号がHレベルであれば(ステップS42にて「YES」の場合)、水晶発振回路80からのクロック信号を分周して40kHzの発振信号を出力し(ステップS44)、一方、切替制御信号がLレベルであれば(ステップS42にて「NO」の場合)、水晶発振回路80からのクロック信号を分周して60kHzの発振信号を出力する(ステップS46)。
【0075】
また、送信モジュール4Bと伝送線6との接続の仕方は、第1の実施形態と同様、順接続状態と逆接続状態との2通りから選択することができ、それにより、送信される模擬標準電波の周波数を切り替えることができる。
【0076】
[第3の実施形態]
第3の実施形態においても第1又は第2の実施形態と共通の構成要素については上述の説明を援用することができ、以下、第3の実施形態について第1、第2の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0077】
上述した第1及び第2の実施形態の標準電波配信装置1は、送信モジュール4から模擬標準電波として断続波を出力する。つまり、親時計モジュール2におけるLレベルの期間にて電波の振幅は0としている。これに対して、第3の実施形態の標準電波配信装置1は、親時計モジュール2におけるLレベルの期間での電波の振幅を0とせず、Hレベルの出力時の電波(信号波)より小さい振幅を有する残留波を出力する。機能上の相違点に対応する構成上の相違点は親時計モジュール2のパルス出力手段30と、送信モジュール4とにあり、説明の便宜上、第3の実施形態におけるパルス出力手段30の符号は“30C”とし、また、送信モジュール4の符号は“4C”とする。
【0078】
パルス出力手段30Cは、タイムコードビット抽出手段26で設定されたパルス幅を有するパルス(正相パルスと呼ぶ。)と、正相パルスとは逆相のパルス(逆相パルスと呼ぶ。)とを生成し、それらを端子A,Bから伝送線6へ出力する。
【0079】
例えば、正相パルスは第1及び第2の実施形態と同じとすることができ、タイムコードを表すパルス信号のHレベルに対応して高電位φとなり、タイムコードを表すパルス信号のLレベルに対応して低電位φとなる。なお、φ,φは本実施形態においても24V,0Vとする。一方、逆相パルスはタイムコードを表すパルス信号のHレベルに対応してφとなり、タイムコードを表すパルス信号のLレベルに対応してφとなる。
【0080】
伝送線6に出力する電圧信号の向きが出力極性切替手段28により順向きに設定された場合には、パルス出力手段30Cは端子Aから正相パルスを出力し、かつ端子Bから逆相パルスを出力する。つまり、親時計モジュール2から伝送線6への電圧信号において、タイムコードを表すパルス信号のHレベルに対応して出力される状態を第1の電圧状態とし、Lレベルに対応して出力される状態を第2の電圧状態とすると、順向きの電圧信号では第1の電圧状態は、端子Aがφ、端子Bがφとなる状態であり、第2の電圧状態は、端子Aがφ、端子Bがφとなる状態である。逆向きの電圧信号では端子A,Bの電位が順向きの場合と逆になるだけであり、端子Bから正相パルス、端子Bから逆相パルスが出力される。つまり、端子A,Bそれぞれが第1の電圧状態ではφ,φとなり、第2の電圧状態ではφ,φとなる。すなわち、電圧信号の順向き、逆向きに関わらず、第1及び第2の電圧状態のいずれにおいても、伝送線6の電線6a,6b間にはφとφとの電位差24Vが印加され、送信モジュール4Cの定電圧レギュレータ42は電源として機能し、よって、送信モジュール4Cが動作する。これにより送信モジュール4Cは残留波を生成可能となる。
【0081】
図10は第3の実施形態に係る送信モジュール4Cの概略の回路構成を示す図である。送信モジュール4Cは、図8に示す第2の実施形態の送信モジュール4Bの構成に加えて、電源電圧切替回路90を有する。
【0082】
上述した第1及び第2の実施形態では、定電圧レギュレータ42のオン/オフに応じて電波の振幅が切り替わり断続波が得られた。これに対して、本実施形態では、第1及び第2の電圧状態のいずれでも定電圧レギュレータ42が動作することで残留波を生成することが可能となる反面、定電圧レギュレータ42のオン/オフに基づいて電波の振幅を切り替えることができない。そこで、制御回路82により、伝送線6から送信モジュール4Cに入力された電圧信号が第1及び第2の電圧状態のいずれであるかを判定する判定手段を構成し、その判定結果に基づいて電波の振幅を制御する。
【0083】
電源電圧切替回路90はモータードライバ84、ローパスフィルタ86及びアンテナ54と共に送信手段を構成し、当該送信手段は、標準周波数の電波として、第1の電圧状態では第1の振幅を有する信号波を送信し、第2の電圧状態では第1の振幅に対して所定割合に減じた第2の振幅を有する残留波を送信する。具体的には、電源電圧切替回路90は制御回路82から判定結果に応じた切替制御信号を入力され、判定結果が第1の電圧状態である期間には例えば、定電圧レギュレータ42の出力電圧をモータードライバ84に供給し、一方、第2の電圧状態である期間におけるモータードライバ84への供給電圧は、第1の電圧状態での電圧より低減する。これにより、制御回路82からモータードライバ84に入力された発振信号は、第2の電圧状態の期間には第1の電圧状態の期間より振幅を小さくされてアンテナ54へ出力され、残留波の送信が実現される。標準電波の諸元に即して残留波を出力することで、電波時計において連続的に模擬標準電波を受信でき、受信信号を検波した検波波形も連続性を保つことができるため、送信周波数が断続する際に発生するノイズが無く、安定した受信が可能になる。なお、第2の振幅は、上述した標準電波の諸元に対応して、第1の振幅の10%に設定することができるが、送信モジュール4Cの送信電波出力、送信電波の到達範囲、到達範囲における遮蔽物の多さ、などの条件に合わせて調整しても良い。
【0084】
図11は第3の実施形態の親時計モジュール2における動作・処理の概略のフロー図である。図11にて、第1の実施形態にて説明した図5と同様の動作・処理には同一の符号を付している。図11において、パルス出力手段30Cに関する動作・処理に図5との相違点があり、具体的には図5のステップS16,S18,S26,S28,S32,S34では端子A,Bの一方にしかパルスを出力しないのに対し、図11ではそれぞれ端子A,Bの両方にパルスを出力する処理であるステップS16C,S18C,S26C,S28C,S32C,S34Cに置き換わる。
【0085】
つまり、ステップS14,S24,S30にて設定周波数40kHzの場合には、パルス出力手段30CはステップS16C,S26C,S32Cにて、それぞれステップS16,S26,S32と同様、端子Aに正相パルスを出力する一方、さらに端子Bに逆相パルスを出力する。また、ステップS14,S24,S30にて設定周波数60kHzの場合には、パルス出力手段30CはステップS18C,S28C,S34Cにて、それぞれステップS16,S26,S32と同様、端子Bに正相パルスを出力する一方、さらに端子Aに逆相パルスを出力する。それぞれの場合のパルス幅は図5の場合と同じである。
【0086】
図12は第3の実施形態の親時計モジュール2から出力される電圧信号、及び送信モジュール4Cから送信される電波についての概略の信号波形図である。表現の仕方は図6と同じであり、図12(a)及び(b)はそれぞれ電圧信号が順向きの場合と逆向きの場合を示している。
【0087】
電圧信号が順向きである場合には、図12(a)に示すように、パルス出力手段30Cから端子Aに正相パルスが出力され、端子Bに逆相パルスが出力される。つまり、既に述べたように、本実施形態ではタイムコードのHレベルの出力期間に端子A,Bそれぞれの電位は24V,0Vとされ、Lレベルの出力期間に端子A,Bそれぞれの電位は0V,24Vとされる。一方、図12(b)に示す電圧信号が逆向きである場合の端子A,Bの電位変化は、図12(a)の場合と入れ替わって、端子Bに正相パルス、端子Aに逆相パルスが出力される。つまり、端子A,Bそれぞれの電位はHレベルの出力期間に0V,24Vとされ、Lレベルの出力期間に24V,0Vとされる。
【0088】
送信モジュール4CはHレベルの期間にて大きな振幅を有する電波を信号波として送信し、Lレベルの期間にて小さな振幅を有する電波を残留波として送信する。なお、送信モジュール4Cが順接続状態であれば、送信周波数は、順向きの電圧信号の場合には40kHzに設定され、逆向きの電圧信号の場合には60kHzに設定される。一方、送信モジュール4が逆接続状態であれば、送信周波数は、順向きの電圧信号にて60kHzに設定され、逆向きの電圧信号にて40kHzに設定される。
【0089】
図13は送信モジュール4Cの制御回路82の動作に関する概略のフロー図である。上述の判定手段は、送信モジュール4Cに入力された電圧信号にて、その変化パターンに基づいて、タイムコード内に所定形式で配置されるマーカーM又はポジションマーカーP0~P5のパルスを検出し、当該パルスに対応する電圧状態を第1の電圧状態と判定する構成とすることができ、本実施形態では判定手段として制御回路82は、P0~P5のパルスを検出する。
【0090】
そのために、制御回路82は切替信号生成回路48から入力される切替制御信号に基づいて端子Pの電位φを継続的に監視する(ステップS50)。親時計モジュール2からの電圧信号の電圧状態の切り替わりに伴って電位φが変化すると(ステップS50にて「YES」の場合)、制御回路82はその変化前の電位φに関し、0.2秒の持続時間の状態が10秒の周期で現れたかを判断する(ステップS54,S56,S60,S62)。これにより、ポジションマーカーのパルスのタイミングが検出でき、そのタイミングでの電位φが電圧信号の第1の電圧状態を表すことが分かる。
【0091】
具体的には、変化後のφがφであれば(ステップS52にて「YES」の場合)、その直前におけるφ=φの状態の時間幅が0.2秒であり、さらにその前における0.2秒幅のφ=φの状態の検知からの経過時間が10秒であれば(ステップS54及びS56にて「YES」の場合)、φ=φが電圧信号の第1の電圧状態に対応する。これは、順向きの電圧信号に対し送信モジュール4Cが順接続状態であるか、逆向きの電圧信号に対し送信モジュール4Cが逆接続状態である場合であり、この場合、制御回路82は模擬標準電波の周波数として第1の標準周波数(40kHz)を選択し、水晶発振回路80からのクロックを分周して生成する出力クロックの周波数を40kHzに設定し、当該出力クロックをモータードライバ84へ発振信号として供給する(ステップS58)。
【0092】
一方、変化後のφがφであれば(ステップS52にて「NO」の場合)、その直前におけるφ=φの状態の時間幅が0.2秒で、かつ前回の0.2秒幅のφ=φの状態の検知から10秒であれば(ステップS60及びS62にて「YES」の場合)、φ=φが第1の電圧状態に対応する。これは、送信モジュール4Cが順向きの電圧信号に対し逆接続状態、又は逆向きの電圧信号に対し順接続状態である場合であり、制御回路82は模擬標準電波の周波数として第2の標準周波数(60kHz)を選択し、出力クロックの周波数を60kHzに設定し、当該出力クロックをモータードライバ84へ供給する(ステップS64)。
【0093】
ここで、ポジションマーカーのタイミングが検出できない場合には(ステップS54,S56,S60,S62にて「NO」の場合)、標準周波数が設定されない。この場合(ステップS66にて「NO」の場合)、制御回路82は処理をステップS50から繰り返す。
【0094】
一方、ステップS58又はS64にて標準周波数が設定された場合(ステップS66にて「YES」の場合)、制御回路82は、第1の電圧状態か第2の電圧状態かの判定結果に応じて振幅を切り替えつつ、設定された標準周波数で模擬標準電波を送信する処理(ステップS70~S82)を開始する。振幅の切り替えは、制御回路82が判定結果に応じて電源電圧切替回路90に切替制御信号を送り、電源電圧切替回路90の出力電圧を所定の高電圧とするか所定の低電圧とするかを切り替えることで行われる。
【0095】
具体的には、制御回路82は、φがφである期間には(ステップS70にて「YES」の場合)、設定周波数が40kHzであれば(ステップS72)、電源電圧切替回路90を高電圧側に設定し(ステップS74)、設定周波数が60kHzであれば(ステップS72)、電源電圧切替回路90を低電圧側に設定する(ステップS76)。また、φがφである期間には(ステップS70にて「NO」の場合)、設定周波数が40kHzであれば(ステップS78)、電源電圧切替回路90を低電圧側に設定し(ステップS80)、設定周波数が60kHzであれば(ステップS78)、電源電圧切替回路90を高電圧側に設定する(ステップS82)。
【0096】
ステップS70~S82はループ処理で繰り返され、φが切り替わるごとに振幅の切り替えが行われる。これにより、親時計モジュール2にて生成するタイムコードに対応した模擬標準電波が生成される。
【0097】
[変形例]
(1)第1実施形態では、電圧信号の第1及び第2の電圧状態は、それぞれ端子A,B間の電圧が24V,0Vとなる状態である構成例を説明したが、第1~第3の実施形態において、電圧信号の第1及び第2の電圧状態はその例に限定されない。
【0098】
例えば、第1及び第2の実施形態では、第1の電圧状態は送信モジュール4,4Bが動作する閾値以上の電圧であればよく、また第2の電圧状態は当該閾値未満の電圧であればよく、これにより、送信モジュール4,4Bは、電圧信号が第1の電圧状態である場合に動作して標準周波数の電波を送信する一方、第2の電圧状態である場合には動作を停止する上述と同様の構成が得られる。
【0099】
また、第3の実施形態では、例えば、順向きの電圧信号にて、第1の電圧状態を端子Aの電位φA1=24V、端子Bの電位φB1=0Vの状態とし、第2の電圧状態を端子Aの電位φA2=0V、端子Bの電位φB2=24Vの状態とする例を説明した。しかし、この例に限らず、電位差|φA1-φB1|及び|φA2-φB2|がそれぞれ送信モジュール4Cが動作する閾値以上の電圧であれば、第3の実施形態で述べた残留波を出力する構成が実現可能である。
【0100】
(2)第3の実施形態では、φA1=φB2,φA2=φB1であり、電圧信号の向き(順向き、逆向き)の反転や送信モジュール4Cの伝送線6への接続状態(順接続状態、逆接続状態)の反転に対して、電圧信号の電位関係が対称である。そのため、送信モジュール4Cは、電圧信号の電位関係に頼らずに、電圧信号の変化パターンに基づいて第1の電圧状態を判定し、送信電波の振幅の切り替えなどを行っている。
【0101】
しかし、例えば、φA1≠φB2に設定するなどして、電圧信号の電位関係を第1の電圧状態と第2の電圧状態とで非対称とすれば、送信モジュール4Cにて当該電位関係から第1の電位状態を判定することが可能である。つまり、第3の実施形態にて、送信モジュールに入力された電圧信号が第1及び第2の電圧状態のいずれであるかを判定する判定手段を、電圧信号の変化パターンに頼らない構成とすることができ、当該判定手段を用いて第3の実施形態で説明した残留波を送信する標準電波配信装置1を実現することができる。
【0102】
(3)上記実施形態では、標準電波配信装置1の送信する標準周波数およびタイムコードとして、日本における標準電波を例に説明してきたが、特にこれには限られず、例えば、WWVB(米国 60kHz)、DCF77(ドイツ 77.5kHz)など、他国の標準周波数およびタイムコードを用いても良い。また、近年の電波時計は日本の標準電波のみならず、WWVB、DCF77といった複数種類の標準電波を受信可能なものも多くなっているため、標準電波配信装置1は複数種類の模擬標準電波を送信可能な構成とし、送信モジュール4の電波ノイズ環境などに応じて、それら複数種類の模擬標準電波を切り替えて送信するようにしても良い。
【符号の説明】
【0103】
1 標準電波配信装置、2 親時計モジュール、4 送信モジュール、6 伝送線、6a,6b 電線、8 電波時計、20 受信手段、22 時刻修正手段、24 内部時計計時手段、26 タイムコードビット抽出手段、28 出力極性切替手段、30 パルス出力手段、40 ブリッジ回路、42 定電圧レギュレータ、44 40kHz発振回路、46 60kHz発振回路、48 切替信号生成回路、50 アナログスイッチ、52 増幅回路、54 アンテナ、60 筐体、62 支柱、64 回路基板、66 バーアンテナ、68 結束帯、80 水晶発振回路、82 制御回路、84 モータードライバ、86 ローパスフィルタ、90 電源電圧切替回路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13