(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】内燃機関の吸気流制御装置
(51)【国際特許分類】
F02B 31/04 20060101AFI20230501BHJP
F02B 31/08 20060101ALI20230501BHJP
F02B 31/06 20060101ALI20230501BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
F02B31/04 500A
F02B31/08 500A
F02B31/06 500A
F02D45/00 368Z
(21)【出願番号】P 2019152522
(22)【出願日】2019-08-23
【審査請求日】2022-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】金子 隆
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/106751(WO,A1)
【文献】特開平6-264816(JP,A)
【文献】特開2004-60461(JP,A)
【文献】特開2007-309275(JP,A)
【文献】特開2011-241753(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 31/04
F02B 31/06
F02B 31/08
F02D 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気ポートに連通する吸気通路内に吸気の流れ方向に沿って設けられ、該吸気通路を二つの通路に仕切るとともに、所定の位置に前記二つの通路を連通する孔を有する隔壁プレートと、
前記隔壁プレートの上流側に配設されて、前記二つの通路うち、一方の通路を開閉する弁体と、
燃焼室内の火炎伝播状態を検出するセンサと、
前記弁体が閉状態の場合に、前記センサの検出結果に基づいて、火炎伝播状態が所定の適正状態に近づくように、前記隔壁プレートの前記孔を開状態または閉状態にする孔開閉手段と、を備えたことを特徴とする内燃機関の吸気流制御装置。
【請求項2】
前記孔は、前記隔壁プレートの幅方向の中央部領域に形成された中央部孔を含み、
前記孔開閉手段は、前記センサの検出結果に基づき、前記燃焼室内のタンブル流が、前記燃焼室を上方から見て回転方向が互いに逆となる一対の双子渦成分を有し、該一対の双子渦成分が前記幅方向の中央領域で排気側から吸気側へ向かう第1の双子渦型と判断した場合に、前記中央部孔を開状態にし、前記第1の双子渦型ではない場合に、前記中央部孔を閉状態にすることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の吸気流制御装置。
【請求項3】
前記孔は、前記隔壁プレートの幅方向の両側部領域に形成された一対の側部孔を含み、
前記孔開閉手段は、前記センサの検出結果に基づき、前記燃焼室内のタンブル流が、前記燃焼室を上方から見て回転方向が互いに逆となる一対の双子渦成分を有し、該一対の双子渦成分が前記幅方向の両側領域で排気側から吸気側へ向かう第2の双子渦型と判断した場合に、前記一対の側部孔を開状態にし、前記第2の双子渦型ではない場合に、前記一対の側部孔を閉状態にする請求項1または2に記載の内燃機関の吸気流制御装置。
【請求項4】
前記孔開閉手段は、前記隔壁プレートに積層配置され、該隔壁プレートの表面に沿ってスライド移動して前記孔を開閉する孔開閉プレートを備えたことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の内燃機関の吸気流制御装置。
【請求項5】
前記孔は、前記隔壁プレートの幅方向の中央部領域に該幅方向に間隔を置いて形成された一対の中央部孔と、前記隔壁プレートの幅方向の両側部領域に形成された一対の側部孔と、を含み、
前記孔開閉手段は、
前記隔壁プレートに積層配置され、該隔壁プレートの表面に沿ってスライド移動可能な第1の孔閉塞プレートおよび第2の孔閉塞プレートと、
前記吸気通路の外部において互いに噛み合うギヤを介して、前記第1の孔閉塞プレートおよび前記第2の孔閉塞プレートを同時に移動させる駆動部と、
前記センサの検出結果に基づいて前記駆動部を作動させる制御部と、を備え、
前記第1の孔閉塞プレートは、前記一対の中央部孔の一方および前記一対の側部孔の一方を開閉可能であり、
前記第2の孔閉塞プレートは、前記一対の中央部孔の他方および前記一対の側部孔の他方を開閉可能であり、
前記制御部は、前記センサの検出結果に基づき、
前記燃焼室内のタンブル流が、前記燃焼室を上方から見て回転方向が互いに逆となる一対の双子渦成分を有し、該一対の双子渦成分が前記幅方向の中央領域で排気側から吸気側へ向かう第1の双子渦型と判断した場合に、前記駆動部を作動させて、前記一対の中央部孔を開状態にするとともに前記一対の側部孔を閉状態にし、
前記燃焼室内のタンブル流が、前記燃焼室を上方から見て回転方向が互いに逆となる一対の双子渦成分を有し、該一対の双子渦成分が前記幅方向の両側領域で排気側から吸気側へ向かう第2の双子渦型と判断した場合に、前記一対の中央部孔を閉状態にするとともに前記一対の側部孔を開状態にすることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の吸気流制御装置。
【請求項6】
前記センサは、前記燃焼室に設けられる点火プラグに内蔵されていることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の内燃機関の吸気流制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の吸気通路を仕切る隔壁プレートを備えた内燃機関の吸気流制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両の内燃機関において、燃焼室内に流入する吸気にタンブル流(縦渦)を発生させるために、燃焼室近傍において吸気通路を2つの通路に仕切り、一方の通路を塞いで他方の通路を通る吸気の流速を高める吸気流制御装置が開発されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
図8は、タンブル流を発生させる従来の内燃機関の吸気流制御装置を示す図である。吸気流制御装置100は、吸気通路110内に、吸気通路110を二つの通路111,112に仕切る隔壁プレート120を備えており、仕切られた通路のうち、一方の通路111の上流側に、この通路111を開閉可能な制御弁126が設置されている。
【0004】
この吸気流制御装置100では、一方の通路111を制御弁126で閉塞して、他方の通路112から燃焼室130内に流れる吸気の流速を高めることで、燃焼室130内にタンブル流を発生させることができる(
図8の矢印参照)。タンブル流が発生すると燃焼速度が向上し、内燃機関の冷間始動時等において燃焼効率を高めることができる。
【0005】
図9及び
図10は、燃焼室130の上方側から吸気流制御装置100を見た図であって、タンブル流生成時の燃焼室130内の吸気の流れと火炎伝播状態を示す図である。各図では、上方側から見た火炎形状Fをドットで示している。各図において矢印で示すように、燃焼室130内でタンブル流を発生させた場合、吸気側から排気側へ向かう吸気の流速が不均一になって双子渦(一対の横渦)成分が生じることがあり、かかる場合には、吸気側から排気側へ向かう流速が遅い領域に、排気側から吸気側へ向かう流れが生じる。
【0006】
燃焼室130では、点火プラグの火花点火により発生した火炎が、その周囲に伝播していくが、燃焼室130内で吸気の流速が不均一になることにより、局所的に火炎伝播速度が遅い領域Xが発生する。なお、燃焼室130内の火炎伝播状態は、例えば特許文献2に記載されているように、火炎伝播状態を検出するセンサによって検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2007-327487号公報
【文献】特開平5-33755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図9及び
図10に示すように、局所的に火炎伝播の遅い領域Xが生じると、この領域Xに起因してノッキングが発生する懸念がある。
【0009】
ノッキングが発生すると、エンジンの燃費性能や出力性能に影響を及ぼすことから、タンブル流を発生させた際に、火炎伝播状態を適正な状態にしてノッキングの発生を防止できる技術の開発が求められていた。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、ノッキングの発生を防止してエンジンの燃費性能や出力性能を向上できる内燃機関の吸気流制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明にかかる内燃機関の吸気流制御装置は、吸気ポートに連通する吸気通路内に吸気の流れ方向に沿って設けられ、該吸気通路を二つの通路に仕切るとともに、所定の位置に前記二つの通路を連通する孔を有する隔壁プレートと、前記隔壁プレートの上流側に配設されて、前記二つの通路うち、一方の通路を開閉する弁体と、燃焼室内の火炎伝播状態を検出するセンサと、前記弁体が閉状態の場合に、前記センサの検出結果に基づいて、火炎伝播状態が所定の適正状態に近づくように、前記隔壁プレートの前記孔を開状態または閉状態にする孔開閉手段と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、隔壁プレートで仕切られた二つの通路の内、一方の通路を閉塞してタンブル流を発生させた際に、隔壁プレートに形成された孔を開状態にすることで、この孔から、弁体で閉塞された一方の通路を通って燃焼室へ入る吸気の流れを生成することができ、これによって、燃焼室内の吸気の流れ(吸気側から排気側へ向かう吸気流の流速)を調整することができる。これにより、センサの検出結果から火炎伝播状態が適正状態からずれている場合に、孔開閉手段によって隔壁プレートの孔の開閉状態を変化させて、燃焼室内の吸気の流れを調整し、局所的に火炎伝播速度が遅くなる領域が発生することを抑制することができ、その結果、ノッキングの発生を防止して、エンジンの燃費性能や出力性能を向上することができる。
【0013】
また、本発明に係る内燃機関の吸気流制御装置は、さらに、前記孔は、前記隔壁プレートの幅方向の中央部領域に形成された中央部孔を含み、前記孔開閉手段は、前記センサの検出結果に基づき、前記燃焼室内のタンブル流が、前記燃焼室を上方から見て回転方向が互いに逆となる一対の双子渦成分を有し、該一対の双子渦成分が前記幅方向の中央領域で排気側から吸気側へ向かう第1の双子渦型と判断した場合に、前記中央部孔を開状態にし、前記第1の双子渦型ではない場合に、前記中央部孔を閉状態にすることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、センサの検出結果により、燃焼室内のタンブル流が第1の双子渦型と判断した場合、すなわち、
図9に示す双子渦成分を有するタンブル流が生じている場合に、隔壁プレートの幅方向の中央部領域に形成された中央部孔を開状態にすることで、該幅方向における燃焼室内の中央領域において吸気側から排気側へ向かう吸気の流速を高めることができる。これにより、吸気側から排気側へ向かう吸気の流れを均一化して、火炎伝播状態を適正状態に近づけることができる。これにより、ノッキングの発生を防止し、燃費性能や出力性能を向上することができる。
【0015】
また、本発明に係る内燃機関の吸気流制御装置は、さらに、前記孔は、前記隔壁プレートの幅方向の両側部領域に形成された一対の側部孔を含み、前記孔開閉手段は、前記センサの検出結果に基づき、前記燃焼室内のタンブル流が、前記燃焼室を上方から見て回転方向が互いに逆となる一対の双子渦成分を有し、該一対の双子渦成分が前記幅方向の両側領域で排気側から吸気側へ向かう第2の双子渦型と判断した場合に、前記一対の側部孔を開状態にし、前記第2の双子渦型ではない場合に、前記一対の側部孔を閉状態にする。
【0016】
この構成によれば、センサの検出結果により、燃焼室内のタンブル流が第2の双子渦型と判断した場合、すなわち、
図10に示す双子渦成分を有するタンブル流が生じている場合に、隔壁プレートの幅方向の両側部領域に形成された一対の側部孔を開状態にすることで、該幅方向における燃焼室内の両側領域において吸気側から排気側へ向かう吸気の流速を高めることができる。これにより、吸気側から排気側へ向かう吸気の流れを均一化して、火炎伝播状態を適正状態に近づけることができる。これにより、ノッキングの発生を防止し、燃費性能や出力性能を向上することができる。
【0017】
また、本発明に係る内燃機関の吸気流制御装置は、さらに、前記孔開閉手段は、前記隔壁プレートに積層配置され、該隔壁プレートの表面に沿ってスライド移動して前記孔を開閉する孔開閉プレートを備えたことを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、隔壁プレートに対して積層配置された孔閉塞プレートにより、吸気通路を通る吸気流に乱れが生じることを抑制しながら、隔壁プレートの孔を開閉することができる。
【0019】
また、本発明に係る内燃機関の吸気流制御装置は、さらに、前記孔は、前記隔壁プレートの幅方向の中央部領域に該幅方向に間隔をおいて形成された一対の中央部孔と、前記隔壁プレートの幅方向の両側部領域に形成された一対の側部孔と、を含み、前記孔開閉手段は、前記隔壁プレートに積層配置され、該隔壁プレートの表面に沿ってスライド移動可能な第1の孔閉塞プレートおよび第2の孔閉塞プレートと、前記吸気通路の外部において互いに噛み合うギヤを介して、前記第1の孔閉塞プレートおよび前記第2の孔閉塞プレートを同時に移動させる駆動部と、前記センサの検出結果に基づいて前記駆動部を作動させる制御部と、を備え、前記第1の孔閉塞プレートは、前記一対の中央部孔の一方および前記一対の側部孔の一方を開閉可能であり、前記第2の孔閉塞プレートは、前記一対の中央部孔の他方および前記一対の側部孔の他方を開閉可能であり、前記制御部は、前記センサの検出結果に基づき、前記燃焼室内のタンブル流が、前記燃焼室を上方から見て回転方向が互いに逆となる一対の双子渦成分を有し、該一対の双子渦成分が前記幅方向の中央領域で排気側から吸気側へ向かう第1の双子渦型と判断した場合に、前記駆動部を作動させて、前記一対の中央部孔を開状態にするとともに前記一対の側部孔を閉状態にし、前記燃焼室内のタンブル流が、前記燃焼室を上方から見て回転方向が互いに逆となる一対の双子渦成分を有し、該一対の双子渦成分が前記幅方向の両側領域で排気側から吸気側へ向かう第2の双子渦型と判断した場合に、前記一対の中央部孔を閉状態にするとともに前記一対の側部孔を開状態にすることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、隔壁プレートの中央部孔と両側部孔とを、第1及び第2の孔閉塞プレートを用いて同時に開閉制御することができる。また、燃焼室内のタンブル流が第1の双子渦型と判断した場合に、隔壁プレートの一対の中央部孔を開状態、一対の側部孔を閉状態にすることで、燃焼室内の中央領域において吸気側から排気側へ向かう吸気の流速を高めることができる。また、燃焼室内のタンブル流が第2の双子渦型と判断した場合に、隔壁プレートの一対の中央部孔を閉状態、一対の側部孔を開状態にすることで、燃焼室内の両側部領域において吸気側から排気側へ向かう吸気の流速を高めることができる。このように、燃焼室内の吸気流を調整することにより、吸気側から排気側へ向かう吸気の流れを均一化して、火炎伝播状態を適正状態に近づけることができ、その結果、ノッキングの発生を防止して、燃費性能や出力性能を向上することができる。
【0021】
また、本発明に係る内燃機関の吸気流制御装置は、さらに、前記センサは、前記燃焼室に設けられる点火プラグに内蔵されていることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、装置の小型化を図ることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る内燃機関の吸気流制御装置によれば、ノッキングの発生を防止してエンジンの燃費性能や出力性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態である内燃機関の吸気流制御装置の説明図。
【
図4】吸気流制御装置を燃焼室の上方側から見た図であって、吸気の流れと火炎伝播状態を説明する図。
【
図5】吸気流制御装置を燃焼室の上方側から見た図であって、吸気の流れと火炎伝播状態を説明する図。
【
図6】制御部による隔壁プレートの孔の開閉制御を示すフローチャート図。
【
図7】隔壁プレートの孔を開状態にした場合の吸気の流れを説明する
図2と同様の図。
【
図9】
図8に示す吸気流制御装置を燃焼室の上方側から見た図であって、吸気の流れと火炎伝播状態を説明する図。
【
図10】
図8に示す吸気流制御装置を燃焼室の上方側から見た図であって、吸気の流れと火炎伝播状態を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本発明の一実施形態である内燃機関の吸気流制御装置10の説明図であって、吸気流制御装置10を上面側から見た図であり、
図2は、
図1のA-A線断面図である。本発明に係る内燃機関の吸気流制御装置10は、例えば、自動車等の車両の内燃機関に適用される。
【0026】
吸気流制御装置10は、吸気通路11を形成する吸気配管12と、燃焼室13を有するエンジン本体14と、排気通路15を形成する排気配管16と、吸気通路11内に配置された隔壁プレート20と、隔壁プレート20の上流側に配置された弁体であるタンブルジェネレータバルブ26(以下、TGV26とも称する)とを備える。隔壁プレート20には複数の孔22が形成されており、吸気流制御装置10は、この孔22を開閉する孔開閉手段40と、制御部60とを備えている。燃焼室13のほぼ中心位置には点火プラグ50が設置されており、この点火プラグ50には、
図3に示すように、火炎伝播形状を検出するセンサ52が内蔵されている。なお、
図2では発明を理解しやすいように、A-A線上にない点火プラグ50、後述する第2の軸部材44及び第2のギヤ46を側面視で示している。
【0027】
吸気通路11は、エンジン本体14の上部に設けられたシリンダヘッドの吸気ポート17A,17Bに連通する流路であり、吸気通路11を形成する吸気配管12は、吸気管と、吸気管とシリンダヘッドを接続するインテークマニホールドとを含んでいる。シリンダヘッドは、燃焼室の天井となるルーフ18を構成しており、このルーフ18に吸気ポート17A,17Bと、排気ポート19A,19Bとが形成されている。本実施形態では、1つの気筒に2つの吸気ポート17A,17B及び2つの排気ポート19A,19Bが設けられており、吸気通路11を流れる吸気は2つの吸気ポート17A,17Bに分配される。
【0028】
各吸気ポート17A,17Bは、吸気バルブ53によって開閉され、吸気バルブ53開弁したときに、吸気通路11内の吸気が燃焼室13内に導入される。各排気ポート19A,19Bは、排気バルブ54によって開閉され、吸気バルブ53の開弁したときに排気バルブ54が閉弁する。本実施形態では、隔壁プレート20及びTGV26が配置される領域において、吸気通路11の断面が略四角形状となっており、この領域から吸気ポート17A,17Bに向かう領域において、吸気通路11及びその内部の部材が、上面視で幅方向W(隔壁プレート20の幅方向Wと一致する)の中央位置を通る中心線に対して左右対称になるように形成されている。
【0029】
燃焼室13は、ルーフ18の中央部に頂部を有するペントルーフ型に形成されており、この頂部に火炎伝播形状を検出するセンサ52を内蔵した点火プラグ50が設置されている。
【0030】
センサ52は、
図3に示すように点火プラグ50の周方向に沿って配置された複数の光ファイバプローブを有しており、各光ファイバプローブが検出した火炎データに基づいて、燃焼室13内の火炎伝播状態を検出する。
図3では、各光ファイバプローブの視野角を円錐状の仮想線で示しており、符号59は、燃焼室13を形成するシリンダ内を往復運動するピストンを示している。なお、センサ52は、光ファイバプローブを用いたものに限られず、イオンプローブを用いたもの等、火炎伝播状態を検出可能な公知の装置を適宜用いることが可能である。また、センサ52は、点火プラグ50に内蔵されていなくてもよいが、本実施形態のように内蔵型とすることで装置の小型化を図ることができる。
【0031】
隔壁プレート20は、吸気通路11を形成するインテークマニホールドに設けられ、通気通路11を第1の通路11a及び第2の通路11bの2つの通路に区画するものである。隔壁プレート20は、吸気通路11に固定されており、平板状であって、吸気通路11の流れ方向に沿って伸長している。本実施形態では、上方側(燃焼室13のルーフ18の頂部側)に位置する第1の通路11aが、下方側の第2の通路11bよりも流路が広くなっている。なお、流路の広さはこれに限られず、第2の通路11bに対して、第1の通路11aを狭くしてもよく、同じ広さにしてもよい。
【0032】
TGV26は、平板状の弁本体27Aと、弁本体27Aを回動可能に支持する弁シャフト27Bと、弁シャフト27Bを回転駆動させるモータ28とを有する。弁シャフト27Bは、吸気通路11を貫通して吸気通路11の幅方向Wに伸長している。弁本体27Aは、モータ28の駆動力により弁シャフト27Bとともに弁シャフト27Bの軸周りに回転し、第1の通路11aを開放する開位置と、第1の通路11aを閉塞する閉位置とに移動する。
【0033】
既述のとおり、隔壁プレート20には、プレートを貫通する孔22が形成されており、本実施形態では、隔壁プレート20の幅方向Wに間隔をおいて複数の孔22が形成されている。具体的には、隔壁プレート20の幅方向Wの中央部領域に位置して幅方向Wに間隔をおいて形成された一対の中央部孔23A,23Bと、幅方向Wの両側部領域に形成された一対の側部孔24A,24Bと、を有する。図示例では、各中央部孔23A,23B及び各側部孔24A,24Bが、それぞれ、流れ方向に沿って配置された2つの孔22で構成されているが、数は2つに限られず、1つ又は3つ以上とすることができる。
【0034】
各孔22は、隔壁プレート20の下流側の端部に形成されていることが好ましい。本実施形態では、隔壁プレート20の下流側端部が2つに分岐して、吸気ポート17A,17Bまで延びており、この分岐した端部の一方(吸気ポート17A側)に中央部孔23A及び側部孔24Aが形成され、他方(吸気ポート17B側)に中央部孔B及び側部孔24Bが形成されている。なお、隔壁プレート20の下流側端部は、分岐していない形状であってもよい。
【0035】
孔開閉手段40は、中央部孔23A及び側部孔24Aを開閉する第1の孔閉塞プレート41と、中央部孔B及び側部孔24Bを開閉する第2の孔閉塞プレート42と、隔壁プレート20に対して各孔閉塞プレート41,42を移動させる駆動手段とを備える。
【0036】
第1及び第2の孔閉塞プレート41,42は平滑な板状であって、隔壁プレート20に積層配置される。本実施形態では、第1及び第2の孔閉塞プレート41,42が平面視で略長方形状に形成されており、互いに厚さ方向で重ならないように、隔壁プレート20の上面に下流側が開いたハの字状に配置されている。
【0037】
孔開閉手段40の駆動手段は、第1の軸部材43と、第1の軸部材43と平行に配置された第2の軸部材44と、第1の軸部材43の外周に嵌装された第1のギヤ45と、第2の軸部材44の外周に嵌装された第2のギヤ46と、第1の軸部材43又は第2の軸部材44を回転駆動する駆動部48とを備える。
【0038】
第1及び第2の軸部材43,44は、
図1及び
図2に示すように、隔壁プレート20の幅方向Wの中央部領域に、幅方向Wに並んで配置されている。第1の軸部材43は、第1の孔閉塞プレート41の上流側かつ第2の孔閉塞プレート42と近接する側の端部と、隔壁プレート20とを貫通しており、これらの表面に対して略垂直に延びている。第2の軸部材44は、第2の孔閉塞プレート42の上流側かつ第1の孔閉塞プレート41と近接する側の端部と、隔壁プレート20とを貫通しており、これらの表面に対して略垂直に延びている。本実施形態ではさらに、各軸部材43,44が吸気通路11を上下方向に貫通しており、その両端部がインテークマニホールドに軸支されているとともに、該両端部の間の中間部が隔壁プレート20に軸支されている。
【0039】
第1のギヤ45、第2のギヤ46及び駆動部48は、通気通路11の外部に設けられる。第1及び第2のギヤ45,46のそれぞれは、第1及び第2の軸部材43,44のそれぞれの外周に固定されている。駆動部48は、例えばモータ等であって、本実施形態では第2の軸部材44の端部に取付けられている。
【0040】
この孔開閉手段40では、駆動部48によって第2の軸部材44が軸まわりに回動すると、第2のギヤ46及び第1のギヤ45を介して、第1の軸部材43が、第2の軸部材44とは反対方向に回動する。これにより、第1及び第2の軸部材43,44に固定された第1及び第2の孔閉塞プレート41,42は、それぞれ、隔壁プレート20の表面をスライドするように、各軸部材43,44を中心に同時に回動する。
【0041】
特に、本実施形態の孔開閉手段40は、制御部60によって駆動部48を作動させることによって、
図1に示すように、第1及び第2の孔閉塞プレート41,42により全ての孔22を閉塞した全閉位置と、
図4に示すように、第1及び第2の中央部孔23A,23Bを開状態にして第1及び第2の側部孔24A,24Bを閉状態にする中央部開放位置と、
図5に示すように、第1及び第2の中央部孔23A,23Bを閉状態にして第1及び第2の側部孔24A,24Bを開状態にする両側部開放位置とのいずれかに各孔閉塞プレート41,42を移動させることができる。
【0042】
制御部60は、CPU等の情報処理手段、ROMやRAM等の記憶手段、入出力インターフェイス及びこれらを接続するデバイス等を備えて構成されている。制御部60は、点火プラグ50、センサ52、TGV26、及び孔開閉手段40と電気的に接続されており、車両の運転状態等に応じて、これらを制御する。
【0043】
また、制御部60は、少なくともTGV26が閉位置にある場合に、センサ52の検出結果に基づいて、燃焼室13内の火炎伝播状態を検出し、火炎伝播状態が適正状態であるかを判断する。火炎伝播は、燃焼室13の中心部から同心円状に伝播することがノッキング抑制の観点から望ましいため、例えば、このような略同心円状に伝播する状態(
図4及び
図5の火炎形状Fを参照)を適正状態とし、
図9及び
図10に示すように、局部的に火炎伝播速度が遅い領域Xが発生して、火炎形状Fが同心円状にならない場合を適正状態ではないと判断することができる。
【0044】
本実施形態では、特に、
図9の火炎形状Fのように、排気側の幅方向Wの略中央領域に、火炎伝播速度の遅い領域Xが発生している状態を第1の双子渦型とし、
図10の火炎形状Fのように、の幅方向Wの略中央領域に、火炎伝播速度の遅い領域Xが発生している状態を第2の双子渦型として、それぞれ適正状態ではないと判断しており、その他の場合を適正状態としている。
【0045】
火炎形状Fが第1の双子渦型になる場合には、
図9に示すように、燃焼室13内のタンブル流が、燃焼室13を上方から見て回転方向が互いに逆となる一対の双子渦成分を有し、該一対の双子渦成分が幅方向Wの中央領域で排気側から吸気側へ向かう吸気の流れを形成している。また、火炎形状Fが第2の双子渦型になる場合には、
図10に示すように、燃焼室13内のタンブル流が、燃焼室13を上方から見て回転方向が互いに逆となる一対の双子渦成分を有し、該一対の双子渦成分が幅方向Wの両側領域で排気側から吸気側へ向かう吸気の流れを形成している。このように、センサ52が検出した火炎伝播状態から、タンブル流の状態が、第1の双子渦型であるか、第2の双子渦型であるか、それ以外であるかを検出することができる。
【0046】
また、制御部60は、TGV26が閉位置にある場合に、センサ52の検出結果に基づいて、孔開閉手段40の駆動部48を作動させて、第1及び第2の孔閉塞プレート41,42を全閉位置と、中央部開放位置と、両側部開放位置とのいずれかにし、これにより、隔壁プレート20の孔2の開閉状態を変化させる。また、TGV26が開位置にある場合には、各孔閉塞プレート41,42を全閉位置にする。
【0047】
上述した吸気流制御装置10では、車両のエンジンの運転領域が高速回転や高負荷領域の場合には、TGV26が第1の通路11aを開放する開位置で保持される。この弁体14の全開状態では、吸気通路11内の吸気は、第1の通路11a及び第2の通路11bの双方を通過可能な状態となり、各通路11a,11bを通って吸気ポート17A,17Bから燃焼室13内へ流入する。一方、車両の冷間始動時や、エンジンの運転領域が低速回転又は低負荷領域の場合には、TGV26を開位置から閉位置に移動し、第1の通路11aを閉状態にして、燃焼室13内にタンブル流(
図2の矢印参照)を発生させる。
【0048】
次に、上述した吸気流制御装置10の動作を説明する。
図6は、制御部60による隔壁プレート20の孔の開閉制御を示すフローチャート図である。以下、ステップ毎に順を追って制御部60の処理を説明する。
【0049】
まず、制御部60は、TGV26からの信号に基づいて、TGV26が開状態であるか閉状態であるかを判断する(ステップS11)。
【0050】
TGV26が閉位置の場合、すなわち、燃焼室13内にタンブル流を発生させている場合(ステップS11:Yes)、センサ52の検出結果から、燃焼室13内のタンブル流が第1の双子渦型であるか否かを判断する(ステップS12)。タンブル流が第1の双子渦型である場合(ステップS12:Yes)、孔開閉手段40の駆動部48を作動させて第1及び第2の孔閉塞プレート41,42を中央部開放位置に移動させ(ステップS13)、処理を終了(リターン)する。なお、ステップS13において、第1及び第2の孔閉塞プレート41,42が既に中央部開放位置にある場合には、それを維持する。
【0051】
第1及び第2の孔閉塞プレート41,42が中央部開放位置になると、
図7において太線矢印で示すように、第2の通路11bを流れる吸気の一部が、第1及び第2の中央部孔23A,23Bのそれぞれから、第1の通路11a側に流入して燃焼室13へ流れ込む。この吸気により、幅方向Wの中央部の吸気の流速が、第1及び第2の中央部孔23A,23Bを開状態にするに比べて速くなる(
図4の実線矢印SFを参照)。
【0052】
既述のとおり、火炎形状が第1の双子渦型の場合、
図4において破線矢印で示すように、燃焼室13内で、幅方向Wの中央領域に排気側から吸気側へ向かう流れが生じているが、第1及び第2の中央部孔23A,23Bを開放して吸気の流れを変化させることにより、幅方向Wの中央領域において吸気側から排気側へ向かう吸気の流速を高めて、排気側から吸気側へ向かう流れを抑えることができ、吸気側から排気側へ向かう吸気の流れを均一化することができる。これにより、火炎伝播状態が、
図4において火炎形状Fで示すように、燃焼室13の中心部から略同心円状に伝播する状態(すなわち、適正状態)となる。
【0053】
一方、ステップS12において、タンブル流が第1の双子渦型ではない場合(ステップS12:No)、燃焼室13内のタンブル流が第2の双子渦型であるか否かを判断する(ステップS14)。タンブル流が第2の双子渦型である場合(ステップS14:Yes)、駆動部48を作動させて第1及び第2の孔閉塞プレート41,42を両側部開放位置に移動させ(ステップS15)、処理をリターンする。なお、ステップS15において、第1及び第2の孔閉塞プレート41,42が既に両側部開放位置にある場合には、それを維持する。
【0054】
第1及び第2の孔閉塞プレート41,42が両側部開放位置になると、
図7において太線矢印で示すように、第2の通路11bを流れる吸気の一部が、第1及び第2の側部孔24A,24Bのそれぞれから、第1の通路11a側に流入して燃焼室13へ流れ込む。この吸気により、幅方向Wの両側部の吸気の流速が、第1及び第2の側部孔24A,24Bを開状態にする前に比べて速くなる(
図5の実線矢印SFを参照)。
【0055】
既述のとおり、火炎形状が第2の双子渦型の場合、
図5において破線矢印で示すように、燃焼室13内で、幅方向Wの両側領域に排気側から吸気側へ向かう流れが生じているが、第1及び第2の側部孔24A,24Bを開放して吸気の流れを変化させることにより、幅方向Wの両側領域において吸気側から排気側へ向かう吸気の流速を高めて、排気側から吸気側へ向かう流れを抑えることができ、吸気側から排気側へ向かう吸気の流れを均一化することができる。これにより、火炎伝播状態が、
図5において火炎形状Fで示すように、燃焼室13の中心部から略同心円状に伝播する状態(すなわち、適正状態)となる。
【0056】
また、ステップS14において、タンブル流が第2の双子渦型ではない場合(ステップS14:No)、孔開閉手段40からの信号により、第1及び第2の孔閉塞プレート41,42が全閉位置にあるか否かを判断する(ステップS16)。全閉位置である場合(ステップS16:Yes)には、処理をリターンする。全閉位置ではない場合(ステップS16:No)、駆動部48を作動させて第1及び第2の孔閉塞プレート41,42を全閉位置に移動させ(ステップS17)、処理をリターンする。
【0057】
タンブル流を発生させており、そのタンブル流が第1の双子渦型でも第2の双子渦型でもない場合には、火炎伝播状態が適正状態であると判断することができる。かかる場合には、孔22を全閉状態にして適正状態を維持する。
【0058】
ステップS11において、TGVが開位置にある場合(ステップS11:No)には、第1及び第2の孔閉塞プレート41,42が全閉位置にあるか否かを判断し(ステップS16)、全閉位置である場合(ステップS16:Yes)には、処理をリターンし、全閉位置ではない場合(ステップS16:No)には、第1及び第2の孔閉塞プレート41,42を全閉位置に移動させて(ステップS17)、処理をリターンする。
【0059】
なお、ステップS13、ステップS15又はステップS17により、処理をリターンする場合には、所定の時間を経過してから処理をスタートすることで、孔22の開閉状態を所定時間維持して、吸気の乱れを抑制することができる。
【0060】
上述したように、本実施形態の吸気流制御装置10では、TGV26を閉位置にしてタンブル流を発生させた際に、火炎伝播形状が所定の適正状態からずれている場合に、孔開閉手段40により、隔壁プレート20に形成された孔22の開閉状態を変化させて、燃焼室13内の吸気の流れを変えることにより、火炎伝播状態を適正状態に近づけることができる。これにより、局所的に火炎伝播速度が遅くなる領域が発生することを抑制して、ノッキングの発生を防止することができる。このように、ノッキングの発生を防止することで、エンジンの燃費性能や出力性能を向上することができる。
【0061】
また、孔22を開閉する第1及び第2の孔閉塞プレート41,42は、平滑な板状であって、隔壁プレート20に積層された状態で、隔壁プレート20の表面上をスライド移動するように構成されているため、各孔閉塞プレート41,42により、吸気通路11を通る吸気流に乱れが生じることを抑制しながら、孔22の開閉状態を変えることができる。
【0062】
なお、本発明は上述した実施の形態や変形例に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0063】
例えば、吸気通路11において、TGV26は、隔壁プレート20の下側に位置する第2の通路11bを開閉し、第2の通路11bを閉塞して、第1の通路を通過する吸気によってタンブル流を発生させてもよい。かかる場合、孔閉塞プレート41,42は、隔壁プレート20の下面側に積層配置されることが好ましい。
【0064】
また、例えば、隔壁プレート20に形成される孔22は1つ以上であればよく、1つの場合には、隔壁プレート20の中央部領域に形成される。また、孔22の開閉状態により、ωタンブル型及び逆ωタンブル型のいずれか一方のみを抑制して、火炎伝播状態を適正状態にでき構造であってもよい。また、孔開閉手段40は、上述したものに限られず、例えば、第1及び第2の孔閉塞プレート41,42を個別に移動させる構造であってもよい。
【0065】
また、上述した吸気流制御装置10は、エンジンを構成する気筒毎に設けることができ、各気筒で発生するタンブル流に応じて個別に制御することが可能である。
【符号の説明】
【0066】
10 吸気流制御装置
11 吸気通路
11a 第1の通路
11b 第2の通路
13 燃焼室
15 排気通路
20 隔壁プレート
22 孔
23A,23B 中央部孔
24A,24B 側部孔
26 TGV(弁体)
40 孔開閉手段
41 第1の孔閉塞プレート
42 第2の孔閉塞プレート
50 点火プラグ
52 センサ