(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】カップホルダ付きアームレスト及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B60N 2/75 20180101AFI20230501BHJP
B60N 3/10 20060101ALI20230501BHJP
A47C 7/54 20060101ALI20230501BHJP
B68G 7/06 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
B60N2/75
B60N3/10 A
A47C7/54 C
B68G7/06 A
(21)【出願番号】P 2019161037
(22)【出願日】2019-09-04
【審査請求日】2022-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】近藤 聡
【審査官】杉▲崎▼ 覚
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-309369(JP,A)
【文献】特開2000-238568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/75
B60N 3/10
A47C 7/54
B68G 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡樹脂製のパッドと、
前記パッドに埋設されて前記パッドを支持する支持フレームと、
前記パッドを覆う表皮と、
前記表皮に形成された表皮開口に挿通されて一部が前記表皮内に配置されるカップホルダと、を有するカップホルダ付きアームレストにおいて、
前記パッドに埋設され、前記カップホルダの外側に嵌合するベゼルと、
前記カップホルダに形成されて、前記ベゼルとの間に前記表皮開口の縁部を挟持するフランジ部と、を備え、
前記カップホルダが前記ベゼルに係止され、前記ベゼルが前記支持フレームに係止され
、前記カップホルダと前記ベゼルとの係止部分が、前記ベゼルと前記支持フレームとの固定部分より上方に位置しているカップホルダ付きアームレスト。
【請求項2】
発泡樹脂製のパッドと、
前記パッドに埋設されて前記パッドを支持する支持フレームと、
前記パッドを覆う表皮と、
前記表皮に形成された表皮開口に挿通されて一部が前記表皮内に配置されるカップホルダと、を有するカップホルダ付きアームレストにおいて、
前記パッドに埋設され、前記カップホルダの外側に嵌合するベゼルと、
前記カップホルダに形成されて、前記ベゼルとの間に前記表皮開口の縁部を挟持するフランジ部と、を備え、
前記カップホルダが前記ベゼルに係止され、前記ベゼルが前記支持フレームに係止され、
前記支持フレームに設けられ、前記カップホルダの一部を内側に受容するフレーム枠部と、
前記ベゼルに設けられ、前記フレーム枠部の1対の対向辺の外側か内側かに係合する係止凹部を有する複数の第1係合脚部と、を有するカップホルダ付きアームレスト。
【請求項3】
前記複数の第1係合脚部は、前記フレーム枠部の前記1対の対向辺の対向方向と平行な主平面を有するリブ構造をなしている請求項2に記載のカップホルダ付きアームレスト。
【請求項4】
発泡樹脂製のパッドと、
前記パッドに埋設されて前記パッドを支持する支持フレームと、
前記パッドを覆う表皮と、
前記表皮に形成された表皮開口に挿通されて一部が前記表皮内に配置されるカップホルダと、を有するカップホルダ付きアームレストにおいて、
前記パッドに埋設され、前記カップホルダの外側に嵌合するベゼルと、
前記カップホルダに形成されて、前記ベゼルとの間に前記表皮開口の縁部を挟持するフランジ部と、を備え、
前記カップホルダが前記ベゼルに係止され、前記ベゼルが前記支持フレームに係止され、
前記ベゼルの1対の対向辺から垂下する複数の第2係合脚部と、
前記カップホルダの側面から側方に突出し、前記複数の第2係合脚部の下端面に対向する複数の側面係合突部と、を有するカップホルダ付きアームレスト。
【請求項5】
前記複数の第2係合脚部は、前記ベゼルの1対の対向辺の対向方向と略直交する主平面を有する突片構造をなしている請求項4に記載のカップホルダ付きアームレスト。
【請求項6】
前記複数の第2係合脚部の下端部を前記カップホルダ側に曲げてなる屈曲係合部を備える請求項5に記載のカップホルダ付きアームレスト。
【請求項7】
前記屈曲係合部の先端上縁部を円弧状又は平坦に面取りしてなるガイド面を備える請求項6に記載のカップホルダ付きアームレスト。
【請求項8】
前記屈曲係合部の上面に、前記ガイド面に略連続するガイドリブを備える請求項7に記載のカップホルダ付きアームレスト。
【請求項9】
発泡樹脂製のパッドと、
前記パッドに埋設されて前記パッドを支持する支持フレームと、
前記パッドを覆う表皮と、
前記表皮に形成された表皮開口に挿通されて一部が前記表皮内に配置されるカップホルダと、を有するカップホルダ付きアームレストにおいて、
前記パッドに埋設され、前記カップホルダの外側に嵌合するベゼルと、
前記カップホルダに形成されて、前記ベゼルとの間に前記表皮開口の縁部を挟持するフランジ部と、を備え、
前記カップホルダが前記ベゼルに係止され、前記ベゼルが前記支持フレームに係止され、
前記フランジ部は、先端部に下方に垂下する垂下壁を備え、下面に下方に開口するフランジ溝を有し、
前記ベゼルは、内縁部に上方に開口するベゼル溝を有し、
前記フランジ溝の前記垂下壁が前記ベゼル溝に突入して、前記ベゼル溝の底壁との間に前記表皮を挟み付けると共に、前記ベゼル溝の内周壁が前記フランジ溝に突入して、前記フランジ溝の底壁との間に前記表皮を挟み付けるカップホルダ付きアームレスト。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか1の請求項に記載のカップホルダ付きアームレストの製造方法であって、
前記カップホルダの前記フランジ部と前記ベゼルとの間で前記表皮開口の縁部を挟持して前記表皮開口を閉塞した状態にして成形型に収め、
前記表皮内に発泡原料を注入してパッドを成形するカップホルダ付きアームレストの製造方法。
【請求項11】
袋状に形成した前記表皮内
で、前記支持フレームに前記ベゼルを係止
し、
その後、前記カップホルダを前記表皮開口に挿入して前記ベゼルに係止し、前記フランジ部と前記ベゼルとの間で前記表皮開口の縁部を挟持して前記表皮開口を閉塞する請求項10に記載のカップホルダ付きアームレストの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、カップホルダが表皮の開口に挿通されて、その一部が表皮内に配置されるカップホルダ付きアームレスト及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されるカップホルダ付きアームレストの製造方法では、パッドの凹部に表皮の開口が重なるようにパッドを表皮で覆った後、表皮の開口にカップホルダを挿通してカップホルダをパッド内に埋設されたフレームに固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-127077号(段落[0027]、
図9)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の製造方法とは異なり、カップホルダをインサート部品として、表皮に形成された開口にカップホルダを挿通して一部を表皮内に配置し、その表皮内にパッド成形用の発泡原料を注入して、表皮とパッドを一体成形することが提案されている。この場合、表皮の開口から発泡原料が漏れ出ることを防ぐことが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた発明の第1態様は、パッドと、前記パッドに埋設されて前記パッドを支持する支持フレームと、前記パッドを覆う表皮と、前記表皮に形成された表皮開口に挿通されて一部が前記表皮内に配置されるカップホルダと、を有するカップホルダ付きアームレストにおいて、前記パッドに埋設され、前記カップホルダの外側に嵌合するベゼルと、前記カップホルダに形成されて、前記ベゼルとの間に前記表皮開口の縁部を挟持するフランジ部と、を備え、前記カップホルダが前記ベゼルに係止され、前記ベゼルが前記支持フレームに係止されているカップホルダ付きアームレストである。
【0006】
発明の第2態様は、前記カップホルダと前記ベゼルとの係止部分が、前記ベゼルと前記支持フレームとの固定部分より上方に位置している第1態様に記載のカップホルダ付きアームレストである。
【0007】
発明の第3態様は、前記支持フレームに設けられ、前記カップホルダの一部を内側に受容するフレーム枠部と、前記ベゼルから垂下され、前記フレーム枠部の1対の対向辺の外側か内側かに係合する係止凹部を有する複数の第1係合脚部と、を有する第1態様又は第2態様に記載のカップホルダ付きアームレストである。
【0008】
発明の第4態様は、前記複数の第1係合脚部は、前記フレーム枠部の前記1対の対向辺の対向方向と平行な主平面を有するリブ構造をなしている第3態様に記載のカップホルダ付きアームレストである。
【0009】
発明の第5態様は、前記ベゼルの1対の対向辺から垂下する複数の第2係合脚部と、前記カップホルダの側面から側方に突出し、前記複数の第2係合脚部の下端面に対向する複数の側面係合突部と、を有する第1態様乃至第4態様の何れか1の態様に記載のカップホルダ付きアームレストである。
【0010】
発明の第6態様は、前記複数の第2係合脚部は、前記ベゼルの1対の対向辺の対向方向と略直交する主平面を有する突片構造をなしている第5態様に記載のカップホルダ付きアームレストである。
【0011】
発明の第7態様は、前記複数の第2係合脚部の下端部を前記カップホルダ側に曲げてなる屈曲係合部を備える第6態様に記載のカップホルダ付きアームレストである。
【0012】
発明の第8態様は、前記屈曲係合部の先端上縁部を円弧状又は平坦に面取りしてなるガイド面を備える第7態様に記載のカップホルダ付きアームレストである。
【0013】
発明の第9態様は、前記屈曲係合部の上面に、前記ガイド面に略連続するガイドリブを備える第8態様に記載のカップホルダ付きアームレストである。
【0014】
発明の第10態様は、第1態様乃至第9態様の何れか1の態様に記載のカップホルダ付きアームレストの製造方法であって、前記カップホルダの前記フランジ部と前記ベゼルとの間で前記表皮開口の縁部を挟持して前記表皮開口を閉塞した状態にして成形型に収め、前記表皮内に発泡原料を注入してパッドを成形するカップホルダ付きアームレストの製造方法である。
【0015】
発明の第11態様は、袋状に形成した前記表皮内に、予め前記支持フレームに前記ベゼルを係止して収めておき、前記カップホルダを前記表皮開口に挿入して前記ベゼルに係止し、前記フランジ部と前記ベゼルとの間で前記表皮開口の縁部を挟持して前記表皮開口を閉塞する第10態様に記載のカップホルダ付きアームレストの製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
発明の第1、10、11態様の開示によれば、カップホルダのフランジ部とベゼルとの間に表皮開口の縁部を挟んだ状態で、表皮内にパッドになる発泡原料を注入することで、表皮開口から発泡原料が漏れ出ることを防ぎつつ、表皮とパッドを一体成形することが可能となる。また、カップホルダがベゼルに係止し、ベゼルが支持フレームに係止しているので、表皮が安定的に挟持されて、カップホルダ付きアームレストの品質が安定する。
【0017】
発明の第2態様の構成のように、カップホルダとベゼルとの係止部分が、ベゼルと支持フレームとの係止部分より上方に位置していれば、ベゼルを支持フレームに係止した後に、カップホルダをベゼルに係止する作業を容易に行うことができる。
【0018】
発明の第3態様の構成では、フレーム枠部における1対の対向辺の外側か内側かに、ベゼルから垂下している複数の第1係合脚部を押し込むことで、第1係合脚部の係止凹部がフレーム枠部の1対の対向辺に係合してベゼルが支持フレームに係止することができる。従って、ベゼルの支持フレームに対する係止作業を容易に行うことができる。ここで、複数の第1係合脚部は、発明の第4態様の構成のように、フレーム枠部の1対の対向辺の対向方向と平行な主平面を有するリブ構造にすれば、高い係止力をえることができる。
【0019】
発明の第5態様の構成によれば、ベゼルの内側にカップホルダを押し込むことで、カップホルダの複数の側面係合突部がベゼルの複数の第2係合脚部を押し拡げて通過し、それら複数の第2係合脚部の下端面に対向して、カップホルダをベゼルに係止させることができる。従って、カップホルダのベゼルに対する係止作業を容易に行うことができる。また、カップホルダの複数の側面係合突部は、複数の第2係合脚部が容易に弾性変形する方向と交差する方向(第2係合脚部が垂下する方向)から複数の第2係合脚部に対向しているので、高い係止力を得ることができる。係止力が高くなった分、複数の第2係合脚部を容易に弾性変形可能な形状にして、カップホルダのベゼルに対する嵌合作業を容易に行うことができる。具体的には、発明の第6態様の構成のように、複数の第2係合脚部を、ベゼルの1対の対向辺の対向方向と略直交する主平面を有する突片構造にすれば、複数の第2係合脚部が容易に弾性変形し、カップホルダのベゼルに対する嵌合作業を容易に行うことができる。
【0020】
発明の第7態様の構成のように、複数の第2係合脚部の下端部をカップホルダ側に曲げてなる屈曲係合部を備えれば、カップホルダの複数の側面係合突部がベゼルの複数の第2係合脚部を通過する直前に、屈曲係合部と側面係合突部とが干渉して第2係合脚部が撓むので、カップホルダのベゼルに対する嵌合作業が容易になる。
【0021】
発明の第8態様の構成によれば、屈曲係合部の先端上縁部に、円弧状又は平坦に面取りされたガイド面を設けたり、発明の第9態様の構成のように、屈曲係合部の上面に、ガイド面に略連続するガイドリブを備えたりすれば、第2係合脚部がスムーズに撓むようになり、カップホルダのベゼルに対する嵌合作業が一層容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本開示の一実施形態に係るカップホルダ付きアームレストの斜視図
【
図2】カップホルダ付きアームレストのA-A断面図
【
図3】カップホルダ付きアームレストに埋設された支持フレーム、カップホルダ及びベゼルの平面図
【
図5】(A)カップホルダを上方から見た斜視図、(B)カップホルダを下方から見た斜視図
【
図6】(A)カップホルダのB-B断面図、(B)後側の係止部の拡大断面図
【
図11】カップホルダ付きアームレストの(A)E-E断面図、(B)C-C断面図
【
図12】カップホルダ付きアームレストの(A)D-D断面図、(B)B-B断面図
【
図13】カップホルダ付きアームレストのF-F断面図
【
図15】発泡成形型にセットされた表皮内に支持フレームとベゼルが固定された状態を示す断面図
【
図16】ベゼルにカップホルダが固定された状態を示す断面図
【
図17】発泡成形型にセットされた表皮内に発泡原料が注入された状態を示す断面図
【
図18】発泡成形型にセットされた表皮内にパッドが形成された状態を示す断面図
【
図19】他の実施形態に係るカップホルダ付きアームレストにおける表皮開口の縁部周辺の断面図
【
図20】他の実施形態に係るカップホルダとベゼルの係止部分を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、
図1~
図18を参照して、本開示の実施形態に係るカップホルダ付きアームレスト10(以下、単に「アームレスト10」という。)について説明する。
図1に示されるように、アームレスト10は、例えば、車両の後部座席の中央に取り付けられ、前後方向に長い直方体状をなしている。また、アームレスト10は、後側を中心に回動可能になっていて、不使用時には、後部座席の背もたれに収容されてシートの一部として使用される。なお、アームレスト10は、後部座席以外に取り付けられる構成であってもよいし、回動不能な構成であってもよい。
【0024】
アームレスト10は、袋状の表皮15の内部にアームレスト10の骨組みとなる支持フレーム20を有し(
図3参照)、その支持フレーム20を発泡樹脂で構成されたパッド12で覆ってなる。また、アームレスト10には、カップホルダ30が備えられると共に、そのカップホルダ30の外側に嵌合するベゼル40がパッド12に埋設されている。以下、各部位について詳説する。
【0025】
図4に示されるように、支持フレーム20は、1対のサイドフレーム21,21と、1対のサイドフレーム21,21の後端部どうしを連絡する後端連絡部材22と、1対のサイドフレーム21,21の前端部どうしを連絡する前端連絡部材24と、1対のサイドフレーム21,21の中間部どうしを連絡する中間連絡部材25と、を備えている。前端連絡部材24は、丸棒を略C字状に形成してなり、そのC字の切れ目が後側を向くように配置されている。中間連絡部材25は、丸棒を略コ字状に形成してなり、前側で開放するように配置されている。なお、各サイドフレーム21の後端部には、アームレスト10の回動軸となる回動軸部23が固定される。
【0026】
図7、
図8及び
図9に示されるように、ベゼル40は、矩形枠状に形成されたベゼル本体41と、ベゼル本体41の内縁部から下方に垂下した下方突壁51と、ベゼル本体41の内縁部から上方に起立した枠状突壁61と、を有し、枠状突壁61の内側部分がカップホルダ30が挿通される挿通口40Aになっている。
【0027】
図10に示されるように、ベゼル本体41は、ベゼル本体41の内周部を構成する内側平坦部42と、ベゼル本体41の外周部を構成する外側平坦部44と、内側平坦部42と外側平坦部44とを連絡する中間連絡部43と、外側平坦部44の外縁部から下方に垂下した外周壁45と、からなる。上述した枠状突壁61は、内側平坦部42から起立している。
【0028】
外側平坦部44は、内側平坦部42よりも上側に配置されると共に、枠状突壁61の上端部より上側に配置されている。そして、中間連絡部43は、枠状突壁61との間に枠溝62を形成している。
【0029】
図8に示されるように、下方突壁51は、略四角筒状に形成され、外周壁45よりも下方に延びている。下方突壁51は、左右方向で対向する短辺側壁51A、51Aと、前後方向で対向する長辺側壁51B、51Bと、を有する。短辺側壁51Aには側方係合脚部52が設けられ、前側の長辺側壁51Bには1対の前側係合脚部53、53が設けられ、後側の長辺側壁51Bには1対の後側係合脚部54、54が設けられている。
【0030】
図7及び
図8に示されるように、側方係合脚部52は、短辺側壁51Aの中央部に配置され、外周壁45と下方突壁51とを繋ぐように左右方向に延びる1対の係合リブ52A、52Aを有する。係合リブ52Aは、短辺側壁51Aよりも下方に延び、ベゼル本体41の外周壁45からは、1対の係合リブ52Aどうしを連絡する連絡壁52Bが垂下している。また、係合リブ52Aの下端部には、外側を下方に配置する段差52Dが設けられている。
【0031】
前側係合脚部53は、前側の長辺側壁51Bの両端部寄り位置に配置されている。前側係合脚部53は、長辺側壁51Bの内面(後面)から前後方向に延びると共に、上下方向に延在する係合リブ53Aを対をなして有する。係合リブ53Aは、長辺側壁51Bよりも下方に延び、長辺側壁51Bからは、1対の係合リブ53Aの前端部及び下端部どうしを連絡する連絡壁53Bが垂下している。これにより、前側係合脚部53は、後側に開放した箱状をなしている。また、係合リブ53Aには、後側に開放した切欠によって構成された係合凹部53Kが設けられている。なお、外周壁45と、下方突壁51及び連絡壁53Bとの間には、補強リブ53Lが形成され、補強リブ53Lを中心にして1対の係合リブ53A、53Aが左右対称に配置されている。
【0032】
後側係合脚部54は、後側の長辺側壁51Bの両端部寄り位置で、かつ、前側係合脚部53より端部寄り位置に配置されている(
図9参照)。後側係合脚部54は、外周壁45と下方突壁51とを繋ぐように前後方向に延びる1対の係合リブ54A、54Aを有する。係合リブ54Aは、下方突壁51の内面(前面)より僅かに突出していると共に、長辺側壁51Bよりも下方に延びている。また、係合リブ54Aには、前側に開放した切欠によって構成された係合凹部54Kが設けられている。
図10に示されるように、係合リブ54Aのうち係合凹部54Kより下側部分は、下側に向かって下方突壁51から離れるように傾斜した三角形状をなしている。
【0033】
図11(A)及び
図11(B)に示されるように、ベゼル40は、支持フレーム20の前端連絡部材24に固定されている。具体的には、ベゼル40の前側係合脚部53の係合凹部53Kが前端連絡部材24の前辺部24Fに前側から嵌合し、後側係合脚部54の係合凹部54Kが前端連絡部材24の後辺部24Bに後側から嵌合する。また、ベゼル40の側方係合脚部52の段差52Dが前端連絡部材24を左右方向に挟むことで(
図2参照)、ベゼル40の左右方向の位置ずれが規制される。ベゼル40の前端連絡部材24への固定は、例えば、前側係合脚部53の係合凹部53Kを前端連絡部材24の前辺部24Fの斜め上方から嵌合した状態で前辺部24Fを中心にベゼル40を下方に回動させて、後辺部24Bによって後側係合脚部54を弾性変形させながら押し込んで、後側係合脚部54の係合凹部54Kを前端連絡部材24の後辺部24Bに嵌合させることで行われる。このとき、後側係合脚部54の係合凹部54Kより下側に配置された三角形状の内側を向く斜辺を案内にして後側係合脚部54が押し込まれる。
【0034】
なお、支持フレーム20の前端連絡部材24が特許請求の範囲の「フレーム枠部」に相当し、前辺部24F及び後辺部24Bが特許請求の範囲の「フレーム枠部の1対の対向辺」に相当する。また、ベゼル40の前側係合脚部53及び後側係合脚部54が特許請求の範囲の「第1係合脚部」に相当する。
【0035】
また、本実施形態のアームレスト10は、ベゼル40にカップホルダ30が係止されると共に、カップホルダ30の後述するフランジ部33とベゼル40との間で表皮15の表皮開口15A(
図15参照)の縁部を挟持する構成となっている。
【0036】
図7及び
図8に示されるように、ベゼル40には、挿通口40Aの開口縁に複数の可撓片58が設けられている。可撓片58は、長辺側壁51Bに沿って配置され、長辺側壁51Bとの間にスリット51Sを介して設けられている。
【0037】
詳細には、
図7及び
図10に示されるように、可撓片58は、内側平坦部42から下方に延び、先端部が内側に屈曲した屈曲係合部59になっている。屈曲係合部59は、先端上縁部が上方に膨らむように湾曲したガイド面59Gになっている一方、先端下端面が平坦面になっている。また、屈曲係合部59には、左右方向の中央にガイド面59Gと滑らかに連絡するガイドリブ59Lが設けられている。なお、可撓片58は、
図9に示されるように、前側の長辺側壁51Bのうち前側係合脚部53より両端部側と、後側の長辺側壁51Bのうち後側係合脚部54より中央側とに配置され、前側と後側とで左右方向の位置が異なっている。
【0038】
図7及び
図10に示されるように、枠状突壁61は、内側平坦部42から上方に突出すると共に上端部がベゼル40の内側に屈曲する鉤状に形成されている。また、枠状突壁61のうち、可撓片58とその両側のスリット51S、51Sが位置する上方部分には、カップホルダ30(詳細には、後述するカップホルダ30の側面係合突部35)との干渉を避けるための切欠部61Kが形成されている。なお、枠状突壁61の上端部は、ベゼル40の内側に向かって上るように傾斜している。
【0039】
図7、
図8及び
図10に示されるように枠状突壁61の内周面には、複数の係止爪63が突設されている。係止爪63は、下方に向かって延びた帯状をなし、先端が円弧状になっている。なお、係止爪63は、枠状突壁61の各側壁の中央部に1つずつ設けられ、そのうちの枠状突壁61の長辺側壁に形成された係止爪63は、長辺側壁51Bの中央部に形成された切欠部51Kの中央に配置されている。
【0040】
図5に示されるように、カップホルダ30は、容器状に形成されたカップ受容部31の上端開口縁からフランジ部33が外側に張り出した構造を有する。カップ受容部31は、左右に並べられた2つの単カップ受容部31Aが連絡路31Bで繋がれた平面視ダンベル形状に形成されている。
【0041】
図6(A)に示されるように、フランジ部33には、下方に開口したフランジ溝34が形成されている。具体的には、フランジ部33は、カップ受容部31の上端から外側に向かって延設された張出壁33Aと、張出壁33Aの外縁部から垂下してカップ受容部31と対向する外側対向壁33Bと、からなる。そして、フランジ溝34が、外側対向壁33Bとカップ受容部31との間に形成されている。
【0042】
図5に示されるように、カップ受容部31の外周面のうち前側及び後側を向く部分には、前後方向に突出する側面係合突部35が設けられている。側面係合突部35は、カップ受容部31の上下方向の中央より上側に配置され、
図6に示されるように、左右方向からみて断面略直角三角形の筒状をなしている。また、側面係合突部35には、側方に張り出した先端部に段付き状に凹んだ嵌合凹部36が形成されている。詳細には、側面係合突部35は、カップ受容部31から離れるに従って上るように傾斜したガイド傾斜壁35Aと、カップ受容部31から略水平に延びた上側平坦壁35Bと、ガイド傾斜壁35Aの上端部からカップ受容部31側に延びて平坦な上面を有する下側平坦壁35Cと、上側平坦壁35Bと下側平坦壁35Cとの間を連絡し、カップ受容部31に離れるに従って下るように傾斜した連絡傾斜壁35Dと、を備えている。そして、連絡傾斜壁35Dと下側平坦壁35Cとによって嵌合凹部36が形成されている。
【0043】
側面係合突部35は、左右方向の外側を向く一端部が補強リブ37にて閉塞されている。また、カップ受容部31の後側に設けられた側面係合突部35は、補強リブ37がガイド傾斜部35Aの下方に張り出して延びると共に、上側平坦面35Bの上方に張り出して延びている。
【0044】
図12(A)及び
図12(B)に示されるように、カップホルダ30は、ベゼル40の可撓片58が側面係合突部35の嵌合凹部36に係合することで、ベゼル40に対して係止される。具体的には、カップホルダ30がベゼル40の挿通口40Aに挿通される過程で、カップホルダ30の側面係合突部35がベゼル40の可撓片58を外側に押し拡げ、側面係合突部35が可撓片58を通過したところで可撓片58が弾性復帰して側面係合突部35の嵌合凹部36に係合し、可撓片58の下端面が嵌合凹部36の下側平坦部35Cに対向する。これにより、カップホルダ30がベゼル40に係止され、ベゼル40に対して抜け止めされる。
【0045】
詳細には、カップホルダ30は、ベゼル40の挿通口40Aの挿通方向に押し込むことで嵌合される。その際、カップホルダ30は、側面係合突部35のガイド傾斜壁35Aによって徐々に可撓片58を外側に撓ませながら押し込まれる。ここで、可撓片58には、屈曲係合部59にガイド面59Gが設けられると共に、屈曲係合部59の上面にガイドリブ59Lを備えているので、可撓片58がスムーズに撓み、カップホルダ30のベゼル40に対する嵌合作業が容易になっている。さらに、
図5及び
図13に示されるように、カップホルダ30の後側の側面係合突部35、35に設けられた補強リブ37、37がベゼル40の後側の長辺側壁51Bに設けられた可撓片58、58を左右方向に挟むことで、カップホルダ30の左右方向の位置ずれが規制される。カップホルダ30がベゼル40に係止された状態では、ベゼル40の可撓片58のガイド面59Gが側面係合突部35の連絡傾斜部35Dに当接又は近接する共に、可撓片58の下端面が側面係合突部35の下側平坦部35Cに当接又は近接する。
【0046】
また、カップホルダ30の嵌合凹部36にベゼル40の可撓片58が係合した状態では、側面係合突部35の下側平坦部35Cが、ベゼル40の可撓片58が容易に弾性変形する前後方向ではなく、可撓片58が変形し難い上下方向から可撓片58に対向するので、高い係止力を得ることができる。そして、係止力が高くなった分、可撓片58を容易に弾性変形可能な形状にして、カップホルダ30のベゼル40に対する嵌合作業を容易に行うことができるようになっている。
【0047】
さらに、支持フレーム20の前側連絡部材24の位置から分かるように、カップホルダ30とベゼル40との係止部分は、ベゼル40と支持フレーム20との固定部分より上方に位置している。これにより、ベゼル40を支持フレーム20に係止した後に、カップホルダ30をベゼル40に係止する作業を容易に行うことができる。
【0048】
本実施形態のアームレスト10では、カップホルダ30がベゼル40に係止されると、
図14に示されるように、表皮15の表皮開口15Aの縁部がカップホルダ30のフランジ部33とベゼル40に挟まれる。具体的には、ベゼル40の枠状突壁61は、フランジ部33のフランジ溝34に突入し、表皮開口15Aの縁部は、フランジ溝34の溝底壁と枠状突壁61とに挟み付けられている。
【0049】
また、フランジ部33の外側対向壁33Bは、ベゼル40の枠溝62に突入し、表皮開口15Aの縁部は、枠溝62の溝底壁(即ち、ベゼル本体41の内側平坦部42)と外側対向壁33Bとにも挟み付けられている。
【0050】
表皮開口15Aの縁部には、係止孔16が形成されていて、その係止孔16にベゼル40の係止爪63が挿通されている。これにより、ベゼル40の外側平坦部44及び枠状突壁61に当接するように表皮15が張られて表皮開口15Aが矩形状に形成される。なお、本実施形態のアームレスト10では、カップホルダ30の上面がアームレスト10の上面より僅かに低い位置に配置される。
【0051】
なお、ベゼル40の長辺側壁51B、51Bが特許請求の範囲の「ベゼルの1対の対向辺」に相当し、可撓片58が特許請求の範囲の「第2係合脚部」に相当する。
【0052】
本実施形態のアームレスト10は、以下のようにして製造される。
【0053】
アームレスト10を製造するには、まず、
図15に示されるように、発泡成形型70に、表皮15に内蔵した支持フレーム20をセットし、次いで、表皮開口15Aから表皮15内にベゼル40を挿入して、ベゼル40を支持フレーム20(詳細には、前端連絡部材24)に固定する。このとき、ベゼル40の係止爪63に表皮15の係止孔16を引っ掛けて、表皮開口15Aの縁部をベゼル40に固定する。なお、本実施形態では、発泡成形型70は、アームレスト10の前部を下側に配置する構成となっている。
【0054】
次いで、
図16に示されるように、表皮開口15Aにカップホルダ30のカップ受容部31を押し込んで、カップホルダ30の嵌合凹部36にベゼル40の可撓片58を係合させてカップホルダ30をベゼル40に係止する。すると、ベゼル40の枠状突壁61がカップホルダ30のフランジ溝34に突入して、フランジ溝34の溝底壁と枠状突壁61との間に表皮15が挟み付けられると共に、カップホルダ30の外側対向壁33Bがベゼル40の枠溝62に突入して、枠溝62の溝底壁と外側対向壁33Bとの間に表皮15が挟み付けられる。なお、このとき、表皮15の係止孔16にベゼル40の係止爪63が係止しているので、表皮15においてベゼル40とカップホルダ30に挟持される部位の位置ずれが起こり難くなる。その結果、パッド12を覆う表皮15の面積が小さくなることが抑えられ、表皮15及びパッド12の成形の安定化が図られる。
【0055】
次いで、表皮15内にパッド形成用の発泡原料71を注入し(
図16参照)、発泡させる。このとき、表皮開口15Aの縁部は、カップホルダ30のフランジ部33とベゼル40との間に挟まれているので、発泡原料71が表皮開口15Aから漏れ出ることが抑えられる。なお、本実施形態では、表皮15は複数の表皮材を縫製することによって袋状に形成され、発泡原料71の注入は、縫製されていない表皮材端部の重ね合わせ部よりノズルを通して行われる。
【0056】
そして、発泡原料71の発泡が終了すると、表皮15内にパッド12が形成されると共に、パッド12、表皮15、支持フレーム20、カップホルダ30及びベゼル40が一体化されたアームレスト10が完成する(
図18参照)。
【0057】
このように、本実施形態のアームレスト10及びその製造方法では、カップホルダ30のフランジ部33とベゼル40との間に表皮開口15Aの縁部が挟まれた状態で、表皮15内にパッド形成用の発泡原料71が注入されることで、表皮開口15Aから発泡原料71が漏れ出ることが防ぎつつ、表皮15とパッド12を一体成形することが可能となる。また、カップホルダ30がベゼル40に係止し、ベゼル40が支持フレーム20に係止しているので、表皮15が安定的に挟持されて、アームレスト10の品質が安定する。
【0058】
また、本実施形態では、カップホルダ30とベゼル40との係止部分が、ベゼル40と支持フレーム20との係止部分より上方に位置しているので、ベゼル40を支持フレーム20に係止した後に、カップホルダ30をベゼル40に係止する作業を容易に行うことができる。
【0059】
さらに、本実施形態では、支持フレーム20の前側連絡部材24の外側か内側かに、ベゼル40の複数の前側係合脚部53及び後側係合脚部54を押し込むことで、前側係合脚部53及び後側係合脚部54の係止凹部53、54が前側連絡部材24に係合してベゼル40が支持フレーム20に係止する。これにより、ベゼル40の支持フレーム20に対する係止作業を容易に行うことができる。また、ベゼル40の内側にカップホルダ30を押し込むだけで、カップホルダ30の複数の側面係合突部35がベゼル40の複数の可撓片58を押し拡げて通過し、それら複数の可撓片58の下端面に対向して、カップホルダ30がベゼル40に係止されるので、カップホルダ30のベゼル40に対する係止作業を容易に行うことができる。
【0060】
[他の実施形態]
(1)
図19に示されるように、カップホルダ30のフランジ部33にフランジ溝34が形成されず、ベゼル40に枠状突部61及び枠溝62が形成されない構成であってもよい。この構成によっても、表皮開口15Aの縁部をカップホルダ30のフランジ部33とベゼル40の開口縁との間に挟み付けることができ、発泡原料71の漏出が抑えられる。
【0061】
(2)ベゼル40の外側平坦部44に貫通孔を形成し、外側平坦部44と表皮15との間にパッド12が配置された構成としてもよい。
【0062】
(3)上記実施形態では、
図8に示されるよう、前側係合脚部53及び後側係合脚部54を、支持フレーム20の前側連絡部材24における前辺部24F及び後辺部24Bの対向方向、即ち、前後方向と平行な方向に延びる係合リブ53A、53Bを有するリブ構造とにしていたが、前側係合脚部53及び後側係合脚部54を、可撓片58と同様の構成の弾性片構造としてもよい。前側係合脚部53及び後側係合脚部54を、弾性片構造とすれば、容易に弾性変形させることができるが、前側係合脚部53及び後側係合脚部54をリブ構造とすることで、高い係止力を得ることが可能となる。
【0063】
(4)上記実施形態では、カップホルダ30及びベゼル40を前後方向で非対称な形状としたが、カップホルダ30及びベゼル40を前後方向で対称な形状としてもよい。
【0064】
(5)表皮15に発泡シート等を裏打ちして厚み方向に弾力性を持たせることで、
図20に示すように、ベゼル40の可撓片58の下端面と、カップホルダ30の側面係合突部35の下側平坦部35Cの上面とを、カップホルダ30のカップ受容部31から離れるに従って上側に傾斜させた構成としてもよい。この構成によれば、カップホルダ30が底壁側から外力を受けた場合でも、可撓片58が側面係合突部35の嵌合凹部36との嵌合が深くなる方向に移動するので、カップホルダ30がベゼル40から外れることを抑制することができる。
【符号の説明】
【0065】
10 カップホルダ付きアームレスト
12 パッド
15 表皮
20 支持フレーム
30 カップホルダ
33 フランジ部
40 ベゼル