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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】車両処理装置
(51)【国際特許分類】
   B60S 3/06 20060101AFI20230501BHJP
【FI】
B60S3/06
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019167774
(22)【出願日】2019-09-13
(65)【公開番号】P2021041907
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-03-11
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2019年5月16日~18日、東京ビッグサイトで開催された「第36回オートサービスショー2019」にて公開
(73)【特許権者】
【識別番号】000103138
【氏名又は名称】エムケー精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】青木 徹夫
(72)【発明者】
【氏名】宮沢 治幸
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大雄
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-156762(JP,A)
【文献】特開平02-048253(JP,A)
【文献】特開平05-170054(JP,A)
【文献】特開2013-193530(JP,A)
【文献】特開平07-156763(JP,A)
【文献】特開平09-193755(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 3/00-3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面に起立して設けられ、前後に移動可能な本体部と、
前記本体部に設けられ、地面より高い位置で車両を検出する第1センサ部と、
前記本体部に設けられ、前記第1センサ部よりも高く、かつ前記第1センサ部よりも前方の位置で車両を検出する第2センサ部と、
前記本体部に設けられ、前記本体部の移動方向と交差する方向に移動可能なサイドブラシと、を備え、
前記第2センサ部は、前記本体部の起立方向に沿って並ぶ第1検出素子および前記第1検出素子よりも高い位置にある第2検出素子を有し、
車両に対して前記本体部を移動させることで、前記第1検出素子で検出され、かつ前記第2検出素子で検出されなかった車両と、前記第1検出素子および前記第2検出素子で検出された車両とをそれぞれ第1、第2の大きさに判別する手段と、
車両の大きさを判別した結果を基に、前記サイドブラシが車両の前面に沿って移動する距離を、前記第1の大きさ、前記第2の大きさの順に長くする手段と、を含む
車両処理装置。
【請求項2】
地面に起立して設けられ、前後に移動可能な本体部と、
前記本体部に設けられ、地面より高い位置で車両を検出する第1センサ部と、
前記本体部に設けられ、前記第1センサ部よりも高く、かつ前記本体部の筐体から離れた前方の位置で車両を検出する第2センサ部と、を備える
車両処理装置。
【請求項3】
地面に起立して設けられ、前後に移動可能な本体部と、
前記本体部に設けられ、地面より高い位置で車両を検出する第1センサ部と、
前記本体部に設けられ、前記第1センサ部よりも高く、かつ前記第1センサ部よりも前方の位置で車両を検出する第2センサ部と、
前記本体部に設けられ、前記本体部の起立方向に移動可能なトップブラシと、を備え、
前記トップブラシの直下には、前記第1センサ部の少なくとも一部が配置され、前記第2センサ部が配置されていない
車両処理装置。
【請求項4】
前記本体部の移動を停止させた状態において、前記第1センサ部で検出され、かつ前記第2センサ部で検出される車両と、前記第1センサ部で検出され、かつ前記第2センサ部で検出されない車両とに判別する手段を含む
請求項1~3のいずれか一項に記載の車両処理装置。
【請求項5】
車両に対して前記本体部を移動させることで、第1移動範囲を連続して前記第2センサ部で検出されなくなった車両と、これ以外の車両とに判別する手段を含む
請求項1~4のいずれか一項に記載の車両処理装置。
【請求項6】
連続して前記第2センサ部で検出されなくなった車両に対して前記本体部の移動を継続し、第2移動範囲を連続して前記第2センサ部で検出された車両と、これ以外の車両とに判別する手段を含む
請求項記載の車両処理装置。
【請求項7】
前記第1センサ部は、前記本体部の前後方向に沿って並ぶ前側の検出素子および後側の検出素子を有し、前記前側の検出素子で車両を検出し、前記後側の検出素子で車両を検出しなかったときに、前記前側の検出素子と前記後側の検出素子の間に車両の前面下側端部がある状態で、車両が停車していることを検出する停車位置確認センサである
請求項1~のいずれか一項に記載の車両処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両処理装置に関し、特に、車両を洗浄する洗車装置に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2013-193530号公報(以下、「特許文献1」という)には、処理対象である車両の特徴として、箱車・平ボディ・バスといった「車種」と、2トン・4トン・10トンといった「大きさ」の選択を行って洗車する技術が記載されている。また、特許文献1には、回転ブラシで車両をブラッシングする際に、車両の特徴にあわせて回転ブラシと車両との接触状況をブラシ用モータの負荷で監視し、適正な接触圧となるように制御する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-193530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、車両の特徴である「車種」や「大きさ」の選択をユーザが間違えてしまうと、選択に応じた処理(例えばブラシ制御など)がなされることから車両などを損傷させてしまうおそれがある。
【0005】
本発明の一目的は、車両の特徴を判別することのできる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一解決手段に係る車両処理装置は、地面に起立して設けられ、前後に移動可能な本体部と、前記本体部に設けられ、地面より高い位置で車両を検出する第1センサ部と、前記本体部に設けられ、前記第1センサ部よりも高く、かつ前記第1センサ部より前方の位置で車両を検出する第2センサ部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
一解決手段によれば、車両の特徴を判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る車両処理装置を説明する正面図である。
図2図1に示す車両処理装置を説明する側面図である。
図3図1に示す車両処理装置のトップブラシを説明する構成図である。
図4図1に示す車両処理装置のサイドブラシを説明する構成図である。
図5図1に示す車両処理装置の制御系を説明するブロック図である。
図6図1に示す車両処理装置のサイドブラシの動きを説明する平面図である。
図7図1に示す車両処理装置が備える車幅大きさ判別手段のフロー図である。
図8図1に示す車両処理装置が備える車種判別手段のフロー図である。
図9図1に示す車両処理装置が備える車両大きさ判別手段のフロー図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の実施形態に係る車両処理装置として、車両を洗浄する処理機能を備える洗車装置について図面を参照して説明する。図1および図2に、それぞれ正面視および側面視の洗車装置50を示す。本実施形態に係る洗車装置50は、例えば、箱車・バス・平ボディ・トレーラといった車高の高い車両51を洗車するものである。このため、洗車装置50では、例えば、車高が1750mmよりも低いような車両51(例えば、セダン車、クーペ車など)は洗車されない。
【0010】
洗車装置50は、地面G(敷設面)に起立して設けられ、処理対象となる車両51を通過するように前後に移動可能な本体部1(本体機)を備えている。より具体的には、本体部1は、車両51を跨ぐように門型状に形成された筐体(フレームにパネルが取り付けられる)から構成され、正転逆転可能な走行モータ4・4により、車輪2・2を回転駆動してレール3・3に沿って往復走行する。門型状の本体部1は、例えば、幅5000mm×高さ5150mmの大きさで、車幅2500mm×車高4100mmまでの車両51を処理対象とする門口を有している。
【0011】
また、洗車装置50は、本体部1に設けられ、本体部1の起立方向(車両51の車高方向、鉛直方向)に移動可能なトップブラシ5を備えている。トップブラシ5は、本体部1の脚部に備えた昇降レール間に沿って昇降し、主に車両51の上面をブラッシングする。
【0012】
図3に、洗車装置50が備えるトップブラシ5の駆動機構を示す。トップブラシ5は、本体部1の移動方向と交差する方向(車両51の車幅方向、水平方向)に沿った回転軸(ブラシ軸12)を有している。このトップブラシ5(回転ブラシ)は、ブラシ軸12の両端に直結されたキャリア13L・13Rによって本体部1内に垂設した昇降レール14L・14R上を昇降するように構成され、一方のキャリア13Rに固定されたブラシモータ15により正逆転駆動される。キャリア13L・13Rは、上端と下端を無端状に接続するチェーン16と、該チェーン16が懸回されるスプロケット17U・17Dと、左右の上スプロケット17U同士を連結する回転軸18、該回転軸18を正逆転する昇降モータ19からなる昇降装置により昇降移動される。昇降限界スイッチ20、21は、キャリア13Lの接触によりスイッチングして上昇限界及び下降限界を与える。
【0013】
また、洗浄装置50は、本体部1に設けられ、本体部1の移動方向と交差する方向(車両51の車幅方向、水平方向)に移動可能なサイドブラシ6・6を備えている(図1図2)。サイドブラシ6・6は、本体部1の上部幅方向(車幅方向)に備えた走行レールに沿って開閉し、主に車両51の前後面及び側面をブラッシングする。
【0014】
図4に、洗車装置50が備えるサイドブラシ6の駆動機構を示す。サイドブラシ6・6(回転ブラシ)は、本体部1の起立方向(車両51の車高方向)に沿った回転軸(ブラシ軸22)を有している。サイドブラシ6・6は、ブラシ軸22の上端に直結したキャリア23L・23Rによって本体部1内の後方上部に水平に横架された開閉レール24に沿って開閉するように構成され、ブラシモータ25・25により正逆転駆動される。キャリア23L・23Rは、右端と左端を無端状に接続するチェーン26と、該チェーン26が懸回されるスプロケット27L・27Rと、一方のスプロケット27L・27Rを正逆転する開閉モータ28とを備える開閉装置により開閉される。なお、洗車装置50では、サイドブラシ6・6が互いに近づく方向の動作を閉動作、離れる方向の動作を開動作としている。
【0015】
また、洗車装置50は、走行限界スイッチ7を備えている(図1図2)。走行限界スイッチ7は、本体部1の脚部下端に設けられ、レール3の前端及び後端付近に設置したドッグ3a・3bに接触して本体部1の前進及び後進の限界位置を検出する。走行限界スイッチ7がドッグ3aに接触すると走行後端位置が検出され、ドッグ3bに接触すると走行前端位置が検出されるものである。
【0016】
また、洗車装置50は、電装ボックス8a・8bを備えている。電装ボックス8a・8bは、本体部1の脚部前面に左右一対で取り付けられ、正面視右側に位置する電装ボックス8aの前面に洗車受付を行う操作パネル9を設けている。操作パネル9で任意の洗車プログラムを選択した後にスタートすると、本体部1が前進し、各散布ノズル(図示せず)から水などの洗浄液を散布しながらトップブラシ5、サイドブラシ6により車両51のブラッシング洗浄が行われる。
【0017】
また、洗車装置50は、本体部1に設けられ、地面Gより高い位置で車両51を検出する第1センサ部52を備えている。第1センサ部52は、検出素子として透過型の光電センサ10・11を備えてユニットを構成している。光電センサ10・11は、電装ボックス8a・8bの対向する内面において奥行き方向(本体部1の前後方向、車長方向)に沿って所定距離離れた位置に並んで設置されている。また、光電センサ10(前側検出素子)および光電センサ11(後側検出素子)は、それぞれ発光部と受光部とを対面配置するとともに、受光部を発光部よりも高い位置に配置することで傾斜した光軸を形成し、この傾斜光軸の通光/遮光によって車両51の有無を検出する。発光部と受光部の地上高さは、それぞれ例えば950mmおよび1350mmである。このような光電センサ10・11を備える第1センサ部52によれば、広範囲で車両51の前面下側(バンパ付近)を検出することができる。
【0018】
図2に示すように、洗車装置50では、トップブラシ5の直下には、第1センサ部52の少なくとも一部(光電センサ11)が配置されているが、トップブラシ5は、第1センサ部52に接触しないように移動範囲が定められている。洗車装置50では、洗車の対象が車高の高い車両51であるため、その上面を主にブラッシングするトップブラシ5の移動範囲は、車両51のバンパ高さまで下降しなくともよい。これにより、トップブラシ5の地面G側ではスペースが確保されるため、トップブラシ5の直下に、第1センサ部52の少なくとも一部を配置することができ、本体部1のコンパクト化を図ることができる。
【0019】
また、洗車装置50は、本体部1の筐体から支持部60(アーム部)を介して前方に離れて設けられ、車両51を検出する第2センサ部53を備えている。トップブラシ5が本体部1側に設けられているが、これよりも前方に第2センサ部53を設けることで、トップブラシ5で車両5をブラッシングする前に、後述する車両51の特徴を判別することができる。また、本体部1の筐体側には洗浄ブラシとなるトップブラシ5やサイドブラシ6・6が設けられているが、洗浄時に筐体のパネルに水などの洗浄液が跳ね返り飛沫となる。この飛沫による影響を抑制するために、洗車装置50では、第2センサ部53を本体部1の筐体から離して設けている。これにより、第2センサ部53の不良状態を回避し、車両51の特徴を精度よく判別することができる。また、第2センサ部53は、ユニットとして支持部60を介して本体部1の筐体に容易に取り付けられるため、メンテナンス性にも優れている。
【0020】
また、第2センサ部53は、第1センサ部52よりも高く、かつこれよりも前方の位置(図2では間隔xとして示す。間隔xは例えば55mm)となるように、本体部1に設けられている。洗車装置50では、第1センサ部52を構成する光電センサ11から例えば355mm前方に第2センサ部53が設けられている。また、第2センサ部53は、検出素子として透過型の光電センサ54・55・56・57を備えてユニットを構成している。これら複数の光電センサ54・55・56・57は、本体部1の起立方向に沿って直線上に並んで設けられている。光電センサ54・55・56・57は、それぞれ発光部と受光部とを対向配置するとともに、発光部と受光部とを同じ高さに配置することで水平な光軸を形成し、この水平光軸の通光/遮光によって車両51の有無を検出する。
【0021】
光電センサ57は、光電センサ56よりも高い位置にある。光電センサ56は、光電センサ55よりも高い位置にある。光電センサ55は、光電センサ54よりも高い位置にある。すなわち、光電センサ54・55・56・57がこの順で地面G側から設けられている。光電センサ54・55・56・57の地上高は、例えば、1750mm、2250mm、2750mm、3250mmである。なお、図2に示すように、トップブラシ5の直下では、第2センサ部53は配置されておらず、トップブラシ5が昇降移動しても第2センサ部53に接触しない。
【0022】
洗車装置50は箱車・バス・平ボディ・トレーラを洗車の対象としているが、第2センサ部53は、第1センサ部52よりも上方でかつ前方(間隔x)に位置しており、その洗車の対象である車両51の前面上側(前面ガラス付近)を検出することができる。他方、例えば、セダン車のようにボンネットを備えることで車長方向において前面側バンパと前面ガラスとが離れている車両51は、第1センサ部52で検出されても第2センサ部53では検出されない。
【0023】
図5に、洗車装置50の制御系の構成を示す。洗車装置50は、種々の機能(手段)を発揮させるための制御部30を備えている。制御部30は、本体部1の走行モータ4、走行限界スイッチ7、操作パネル9、第1センサ部52、第2センサ部53、トップブラシ5のブラシモータ15、昇降モータ19、昇降限界スイッチ20、21、サイドブラシ6・6のブラシモータ25、開閉モータ28が接続されている。操作パネル9には、水洗車・洗剤洗車・ワックス洗車といった洗車コースが選択できる洗車コースキー、洗車スタートキー、洗車ストップキーが備えられ、ユーザの希望に添った洗車形態を設定できるようになっている。
【0024】
また、制御部30は、本体部1の走行位置を検出する走行位置検出部36と、トップブラシモータ15の電流値を検出する電流検出部37と、昇降モータ19を制御する昇降制御部38と、を備えている。走行位置検出部36は、走行モータ4の駆動時間をカウントし、走行限界スイッチ7で検出される走行限界位置からの本体部1の移動位置を推定して昇降制御部38および開閉制御部40に指令を出力する。電流検出部37は、トップブラシモータ15の電流値を検出し、トップブラシ5と車両51との接触状態を判断して昇降制御部38に指令を出力する。昇降制御部38は、走行位置検出部36および電流検出部37からの指令を受けてトップブラシ5を昇降する。
【0025】
また、制御部30は、サイドブラシモータ25の電流値を検出する電流検出部39と、開閉モータ28を制御する開閉制御部40とを備えている。電流検出部39は、サイドブラシモータ25の電流値を検出し、サイドブラシ6と車両51との接触状態を判断して開閉制御部40に指令を出力する。開閉制御部40は、走行位置検出部36および電流検出部39からの指令を受けてサイドブラシ6を開閉する。
【0026】
また、制御部30は、各種データなどを記憶した記憶部41を備えている。記憶部41には、トップブラシ5やサイドブラシ6を車両51に接触させたときの電流上昇量から接触状態を判断するための上下限の電流閾値と、部位毎の電流変化特性を示す係数とが、車種(例えば、箱車・バス・平ボディ・トレーラ)や洗浄部位(例えば、前面、上面、後面、側面)に対してテーブル化されて記憶されている。すなわち、ブラシを車両51に接触させたときに上昇する電流値がデータ記憶部41に記憶された上下限の電流閾値の間になるように、トップブラシ5を昇降、サイドブラシ6を開閉してブラッシングが行われている。
【0027】
ここで、洗車装置50の処理動作(言い換えると、車両処理方法の工程)について説明する。洗車装置50は、種々の手段(プログラム)を備えており、処理制御部30によって各手段が実行される。概略すると、入車してきた車両51の停車を確認し、その車両51の「車種」や「大きさ」に対応してトップブラシ5やサイドブラシ6・6を用いて洗浄などの処理を行う。洗車装置50は、「車種」や「大きさ」を自動的に判別する手段を備えている。なお、洗車される車両51は、車種として箱車、バス、平ボディ、トレーラがあり、大きさとして小型、中型、大型があるものとする。
【0028】
停車位置確認手段では、まず、本体部1を待機位置に待機させた状態(車両51に対して本体部1の移動を停止させた状態)で、洗車対象の車両51を第1センサ部52の光電センサ10・11で与える停止位置まで入車させる。このとき、本体部1は、走行限界スイッチ7がドッグ3aに接触する位置で停止している。そして、本体部1の前方から一対のレール3・3の間を通って車両51が乗り入れられると、本体部1前面に設けられた第1センサ部52の光電センサ10・11によって、車両51が停止しているか否かの検出が行われる。
【0029】
より具体的には、第1センサ部52は、光電センサ10(前側検出素子)と光電センサ11(後側検出素子)との間に車両51の前面下側端部(例えばバンパ)がある状態で、車両が停車していることを検出する。すなわち、光電センサ10が遮光、光電センサ11が通光であることで、車両51が所定位置に停車したことを検出することができる。このため、第1センサ部52は、停車位置確認センサであるといえる。
【0030】
第1車種判別手段では、本体部1を待機位置に待機させた状態において、第1センサ部52で検出され、かつ第2センサ部53で検出される車両51と、第1センサ部52で検出され、かつ第2センサ部53で検出されない車両51とに判別する。後述するように、洗車装置50が第1センサ部52および第2センサ部53を備えることで、車両51の特徴から洗車が可能か否かを判別することができる。洗車装置50での洗車に適した車両51であれば、操作パネル9での洗車受付を許可し、各キーにて選択動作を行った後、洗車開始キー(ボタン)を入力すると、本体部1の移動に伴って洗浄から乾燥までの一連の洗車処理が行われる。
【0031】
より具体的には、第1センサ部52が車両51の停車を検出した状態で、第2センサ部53の光電センサ54・55・56・57のうち少なくとも光電センサ54が遮光であることで、第1センサ部52および第2センサ部53で車両51が検出されたとする。他方、第1センサ部52が車両51の停車を検出した状態で、第2センサ部53の光電センサ54・55・56・57のいずれもが通光であることで、第1センサ部52で検出され、かつ第2センサ部53で検出されないとする。これにより、第1センサ部52および第2センサ部53の両者で検出された車両51を、箱車・バス・平ボディ・トレーラといった車高の高い車種と判別し、第2センサ部53で検出されない車両51を、例えばセダン車など車高の低い車種と判別することができる。なお、本実施形態では、第1センサ部52は光電センサ10・11によって構成されている場合を示しているが、いずれか1つであってもよく、それが車両51を検出する構成であってもよい。
【0032】
ここで、洗車装置50では、第1センサ部52で検出されても、第2センサ部53で検出されない車両51に対して、洗車を行うことを中止(禁止)している。洗車が行われないものとしては、例えば、セダン車、クーペ車、ハッチバック車などのボンネットのある車高の低い車両である。洗車装置50は、車高が高く、大きい車両51を洗車するため、これにあわせてトップブラシ5、サイドブラシ6の長さや、それを駆動させるモータ出力が最適化されている。にもかかわらず、仮に洗車装置50で車高の低く、小さい車両51を洗車してしまうと、その車両51にダメージを与えてしまうおそれがある。このため、洗車装置50では、第1センサ部52よりも高く、かつ前方の位置で車両51を検出する第2センサ部53を設けて、バス、トレーラなど車高が高いという特徴のものと、セダン車など車高が低いという特徴のものとを判別し、適した車両51に対して洗車を行っている。
【0033】
洗車処理が開始されると、トップブラシ5およびサイドブラシ6・6を空転させて空転電流値を検出する。洗車の度に空転電流値を検出することで、ブラシモータの電流特性がブラシの劣化摩耗・気温・電源電圧の状態等の環境要因によって変化することを許容するためである。その後は洗車開始時のブラシ空転電流値を基準に、車体51に接触して上昇する電流上昇値を、各閾値の範囲内に収まるように昇降・開閉が制御されることとなる。トップブラシ5により車両51の主に上面がブラッシングされ、サイドブラシ6により車両51の主に前面・側面・後面がブラッシングされる。
【0034】
洗車開始により、トップブラシ5は、地上高の異なる光電センサ54・55・56・57を備える第2センサ部53の検出結果から、例えば、ミラーMの上位置まで下降される。その後、トップブラシ5を回転させながら、本体部1が前進することで、ブラシモータ15の電流値でトップブラシ5が車両51の上面に接触したことを検出する。車両51の上面のブラッシングでは、本体部1を前進させながら、ブラシモータ15の電流値が上下限の閾値の範囲内になるよう制御が行われる。
【0035】
また、洗車開始により、サイドブラシ6・6のうち本体部1の正面視右側のものは、車両51の前面右端に対向する位置まで閉じられ、他方の正面視右側のものは、そのままの位置で待機する。その後、右側サイドブラシ6を回転させながら、本体部1が前進することで、ブラシモータ25の電流値で右側サイドブラシ6が車両51の前面に接触したことを検出する。車両51の前面のブラッシングでは、本体部1の移動を停止し、ブラシモータ25の電流値が上下限の閾値の範囲内になるよう制御が行われる。このとき、後述の車幅大きさ判別手段の結果を基に、右側サイドブラシ6が車両51の前面に沿って移動する距離が設定される。
【0036】
図6に、車両51に対するサイドブラシ6・6の動きを示す。本実施形態では、洗車対象の車両51が前面左側にミラーMを備えていることを想定しており、本体部1の正面視右側サイドブラシ6のみで車両51の前面をブラッシングする。ミラーMに近接する正面視左側サイドブラシ6を、ミラーMとの接触を回避して車両51の前面に当接させるのは困難だからである。このため、車両51の前面をブラッシングするにあたり、右側サイドブラシ6は、最初に当接した前面右端から左端に向かって、車幅大きさ判別手段により設定された距離SDを移動する。
【0037】
図7に車幅大きさ判別手段のフローを示す。車幅大きさ判別手段では、車両51に対して本体部1の移動を開始し、光電センサ54で検出され、かつ光電センサ55で検出されなかった車両51と、光電センサ54および光電センサ55で検出された車両51とをそれぞれ車幅の小さいもの、大きいものとして判別する。なお、車幅大きさ判別手段は、右側サイドブラシ6が車両51の前面に当接する前に行われている。
【0038】
より具体的には、本体部1の移動に伴って第2センサ部53が停車した車両51の前面端部から所定距離(例えば500mm)にある検出位置まで移動し(ステップS10)、その検出位置(例えば、箱車であればキャビン側面と対向する位置)において、光電センサ55(地上高2250mm)が車両51によって遮光されているか否かを判別する(ステップS20)。このとき、光電センサ55よりも低い位置にある光電センサ54(地上高1750mm)は洗車対象の車両51によって遮光されている。このため、光電センサ55が遮光していなければ(通光していれば)、車幅が小程度の車両51であると判別する(ステップS30)。この結果を基に、右側サイドブラシ6による前面ブラッシング時のシフト距離SDを第1シフト距離(例えば600mm)と設定する。
【0039】
他方、光電センサ55が遮光していれば、車幅が中程度ないし大程度の車両51であると判別し(ステップS40)、更に光電センサ56(地上高2750mm)が車両51によって遮光されているか否かを判別する(ステップS50)。光電センサ56が遮光していなければ、車幅が中程度の車両51であると判別する(ステップS60)。この結果を基に、右側サイドブラシ6による前面ブラッシング時のシフト距離SDを小程度の車幅の第1シフト距離よりも長い、第2シフト距離(例えば700mm)と設定する。他方、光電センサ56が遮光していれば、車幅が大程度の車両51であると判別する(ステップS70)。この結果を基に、右側サイドブラシ6による前面ブラッシング時の移動距離SDを中程度の車幅の第2シフト距離よりも長い、第3シフト距離(例えば800mm)と設定する。
【0040】
車両51の前面のブラッシングが終了し、右側サイドブラシ6が待機位置に戻されると、本体部1が車両51に対して前進移動することにより第2車種判別が行われる。第2車種判別手段では、第1車種判別手段で洗車可能とされた車両51を、箱車・バス、平ボディ、またはトレーラであるのか車種を判別する。
【0041】
図8に、第2車種判別手段のフローを示す。第2車種判別手段では、第1センサ部52(停車位置確認センサ部でもある)で検出され、かつ第2センサ部53で検出された車両51に対して本体部1の移動を開始し、所定の第1移動範囲を連続して第2センサ部53で検出されなくなった車両51と、これ以外の車両51とに判別する。すなわち、本体部1の前進移動により、これに設けられた第2センサ部53も前進移動するので、この第2センサ部53で連続して検出されなかった(連続して通光した)車両51と、これ以外の車両51とに判別する。
【0042】
より具体的には、第2センサ部53が停車した車両51の前面端部から第1距離以降であって停車した車両51の前面端部から第2距離に到達する前に、第2センサ部53の光電センサ54・55・56・57のいずれかが所定の第1移動範囲(例えば200mm)を連続して通光するか否かで判別する(ステップS110)。ここで、第1距離は、例えばトレーラのトラクタヘッドの終了位置までの距離を想定している。また、第2距離は、例えばトレーラのバンパからコンテナ前端までの距離を想定している。これにより、所定の移動距離の連続通光がある場合、キャビン後方には空間があるものとして、車種を「平ボディ」または「トレーラ」と判別する(ステップS120)。他方、所定の第1移動範囲の連続通光がない場合、車種を「箱車・バス」と判別する(ステップS130)。なお、本実施形態では、箱車とバスの外形が似ているため、車種としては同じものとして処理される。
【0043】
また、第2車種判別手段では、連続して第2センサ部53で検出されなくなった車両51に対して本体部1の前進移動を継続し、所定の第2移動範囲を連続して第2センサ部53で検出された車両51と、これ以外の車両51とに判別する。すなわち、本体部1の前進移動により、これに設けられた第2センサ部53も前進移動するので、この第2センサ部53で連続して検出された(連続して遮光した)車両51と、これ以外の車両51とに判別する。
【0044】
より具体的には、本体部1の移動に伴ってサイドブラシ6・6が第3距離を前進移動する前に、第2センサ部53の少なくとも光電センサ54・55・56が所定の第2移動範囲(例えば450mm)を連続して遮光するか否かで判別する(ステップS140)。ここで、第3距離は、平ボディのキャビン境界から平ボディのあおり部に対してサイドブラシ6・6が閉じられる位置までの距離を想定している。これにより、所定の第2移動範囲の連続遮光がある場合、コンテナがあったとし、車種を「トレーラ」と判別する(ステップS150)。このとき、コンテナの開始位置を認識できるため、このコンテナ開始位置においてトップブラシ5を下降させ、サイドブラシ6・6を閉じることで、コンテナを効率よく洗浄することができる。他方、所定の第2移動範囲の連続遮光がない場合、車種を「平ボディ」と判別する(ステップS160)。なお、本実施形態では、平ボディおよびトレーラの車両大きさは、同じ大型として処理される。
【0045】
図9に、車両大きさ判別手段のフローを示す。車両大きさ判別手段では、車両51に対して本体部1を移動させ、光電センサ54(あるいは光電センサ55)で検出され、かつ光電センサ56で検出されなかった車両51と、光電センサ54(あるいは光電センサ55)および光電センサ56で検出された車両51とをそれぞれ車両の小さいもの、大きいものとして判別する。なお、車両大きさ判別手段は、第2車種判別手段により、箱車・バスの車種であると判別(ステップS130)された後に行われる。
【0046】
より具体的には、本体部1の前進移動に伴って第2センサ部53が停車した車両51の前面端部から所定距離(例えば2675mm)にある検出位置まで移動し(ステップS210)、その検出位置(例えば、箱車であればコンテナ側面と対向する位置)において、光電センサ56(地上高2750mm)が車両51によって遮光されているか否かを判別する(ステップS220)。このとき、光電センサ56よりも低い位置にある光電センサ54(地上高1750mm)あるいは光電センサ55(地上高2250mm)は車両51によって遮光されている。このため、光電センサ56が遮光していなければ(言い換えれば通光していれば)、車形が小型の車両51であると判別する(ステップS230)。
【0047】
他方、光電センサ56が遮光していれば、中型ないし大型の車両51であると判別し(ステップS240)、更に光電センサ57(地上高3250mm)が車両51によって遮光されているか否かを判別する(ステップS250)。光電センサ57が遮光していなければ、中型の車両51であると判別する(ステップS260)。他方、光電センサ57が遮光していれば、大型の車両51であると判別する(ステップS270)。なお、これら小型、中型、大型の結果を基に、それぞれに併せてトップブラシ5の昇降距離、サイドブラシ6・6の開閉距離が設定される。
【0048】
本実施形態では、洗車装置50が、第1センサ部52と、これよりも高く、かつ前方に設けられた第2センサ部53とを備えている。これにより、車両51の車種や大きさといった特徴を自動で判別することができる。車両51の特徴を把握することで、車両51に適した洗車を行うことができる。
【0049】
以上、本発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0050】
前記実施形態では、地面に停車した車両に対して本体部が移動する車両処理装置を説明した。これに限らず、例えば、車両の車長方向に移動可能なキャリアに車両を搭乗させて、本体部に対して車両が移動する装置や、車両および本体部が共に移動する装置に適用する場合であってもよい。このように、本発明には、処理対象となる車両に対して本体部が相対移動する関係が含まれている。
【0051】
また、前記実施形態では、第1センサ部や第2センサ部の検出素子として透過型の光電センサ(ビームセンサ)を適用する場合について説明した。これに限らず、反射型の光電センサや、ビームセンサ以外の赤外線や超音波を用いたセンサを適用する場合であってもよい。
【0052】
また、前記実施形態では、車両の車種や大きさを選択せずとも洗車できる場合について説明した。これに限らず、操作パネルで車両の車種や大きさを選択させる場合であってもよい。この場合、車両処理装置は、第2センサ部(車種判別センサ)の不良状態を判定するセンサ不良判定手段を備えてもよい。ここで、センサ不良判別手段は、洗車受付状態で、第1センサ部(入車センサ)が車両の入車を検出していない状態で、第2センサ部の所定時間以上の連続遮光を検出したとき、第2センサ部が不良状態と判断してもよい。また、センサ不良判別手段は、洗車受付状態で、第1センサ部が車両の入車を検出しておらず、第2センサ部の間欠的な遮光を所定時間内に所定回数以上検出したとき、第2センサ部が不良状態と判断してもよい。また、センサ不良判別手段は、洗車受付状態でセンサ不良を検出して以降、第2センサ部の所定時間以上の連続的な通光を検出したとき、第2センサ部が正常状態と判断を変えてもよい。
【0053】
これにより、第2センサ部の正常/不良状態に応じ、そのときどきに可能な最善の制御を選択的に実行することができる。また、車両処理装置は、第2センサ部が正常状態のときには操作パネルでユーザに車種を選択させず、不良状態のときには車種を選択させるように制御する洗車受付制御手段を備えてもよい。車両処理装置は、第2センサ部が正常状態のときには洗車受付をユーザに許可し、不良状態のときには洗車受付を禁止する洗車受付制御手段を備えてもよい。ここで、洗車受付制御は、音声や画面表示や車種ボタンのLEDの点滅状態により、ユーザに車種を選択させるよう案内できるよう構成する。また、車種を選択させない場合には、案内を行わず、ボタン押下も無効とすることもできる。また、車両処理装置は、車種が選択されずに洗車が受け付けられた場合には第2センサ部により自動認識した車種に適合した洗車制御を実行し、車種が選択されて洗車が受け付けられた場合には選択された車種に適合した洗車制御を実行する洗車手段を備えてもよい。
【0054】
また、前記実施形態では、第2センサ部が4つの光電センサを備える場合について説明した。これに限らず、光電センサの数は、2つであっても、5つ以上であってもよい。
【0055】
また、前記実施形態では、発光部と受光部とを対向配置した光電センサを用い、水平光軸の通光/遮光によって車両の有無を検出する場合について説明した。これに限らず、例えば、第1光電センサと第2光電センサとの間隔を短くし、第1光電センサの発光部と、第2光電センサの受光部とにより、傾斜光軸を形成し、その通光/遮光によって車両の有無を検出するように構成することもできる。
【0056】
また、前記実施形態では、、第1センサ部よりも高く、かつこれよりも前方の位置に第2センサ部を設ける場合について説明した。これに限らず、第1センサ部が第2センサ部よりも前方となるように設けても車両の特徴を判別することができる。また、第1センサ部が前後に検出素子を有する場合には、それら検出素子の間の直上に第2センサ部を設けることもできる。
【0057】
また、前記実施形態では、停車位置確認センサ部として、地面より高い位置で車両を検出する第1センサ部を適用した場合について説明した。これに限らず、第2車種判別手段や車両大きさ判別手段では、停車位置確認センサ部として、地面に設けられたタイヤ踏み込みスイッチによる停止板やタイヤ検出装置(例えば、特開2018-135076号公報)を用いることができる。
【符号の説明】
【0058】
1 本体部
50 洗車装置
52 第1センサ部
53 第2センサ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9