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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】時計、システムおよびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G04G 9/00 20060101AFI20230501BHJP
   G04G 21/00 20100101ALI20230501BHJP
   G04G 99/00 20100101ALI20230501BHJP
【FI】
G04G9/00 305
G04G21/00 D
G04G99/00 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019184737
(22)【出願日】2019-10-07
(65)【公開番号】P2021060286
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(74)【代理人】
【氏名又は名称】萩原 良一
(72)【発明者】
【氏名】清水 秀樹
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特許第6517987(JP,B1)
【文献】特開2004-294399(JP,A)
【文献】特開2002-365378(JP,A)
【文献】特開2001-343475(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04G 9/00
G04G 21/00
G04G 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者に認知機能に関するテストを提示することで前記使用者の認知機能の程度を判定する親機と通信する通信部と、
表示部と、
前記親機からの指示に応じて、前記表示部の表示形態を、時刻のアナログ表示、時刻のデジタル表示、特定の時間帯に特定の図形が表示される図形表示、および特定の時間帯に特定の色が表示される色表示のいずれかに切り換える制御部と、
を有することを特徴とする時計。
【請求項2】
表示部を有する親機および時計で構成され、
前記時計の使用者に認知機能に関するテストを提示する出題部と、
前記テストに前記使用者が合格したか否かを判定することで前記使用者の認知機能の程度を判定する判定部と、
前記判定部の判定結果に応じて、前記時計の表示部の表示形態として、時刻のアナログ表示、時刻のデジタル表示、特定の時間帯に特定の図形が表示される図形表示、および特定の時間帯に特定の色が表示される色表示のいずれかを選択する選択部と、
前記表示形態を前記選択部が選択したものに切り換える表示制御部と、
を有することを特徴とするシステム。
【請求項3】
前記出題部は、前記親機の表示部上で、現在時刻を前記使用者に数字で入力させる時間見当識テスト、表示された複数の図形の中から特定の意味を表すものを前記使用者に選択させる図形認識テスト、および表示された時計の指針を前記使用者に操作させて特定の時刻に合わせる時計描画テストを提示する、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記アナログ表示は、時針、分針および秒針で時刻を表す3針表示、または時針および分針で時刻を表す2針表示であり、
前記選択部は、前記時計描画テストが合格と判定されたならば前記アナログ表示を選択する、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記出題部は、前記時計描画テストとして、2針の時計の指針を特定の時刻に合わせさせる2針描画テストと、3針の時計の指針を特定の時刻に合わせさせる3針描画テストとを前記使用者に提示し、
前記選択部は、前記3針描画テストが合格と判定されたならば前記3針表示を選択し、前記3針描画テストが不合格でかつ前記2針描画テストが合格と判定されたならば前記2針表示を選択する、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記アナログ表示は、時針のみで時刻を表す1針表示であり、
前記選択部は、前記時計描画テストが不合格でかつ前記時間見当識テストが合格と判定された場合には、前記図形認識テストが合格と判定されたならば前記1針表示を、前記図形認識テストが不合格と判定されたならば前記デジタル表示を選択する、請求項3に記載のシステム。
【請求項7】
前記時計の表示部は、表示形態が前記1針表示に切り換えられたときに、時針に加えて分針も表示される2針表示および3針表示のときとは異なる時字を表示する、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記選択部は、前記時計描画テストと前記時間見当識テストが不合格と判定された場合には、前記図形認識テストが合格と判定されたならば前記図形表示を、前記図形認識テストも不合格と判定されたならば前記色表示を選択する、請求項3に記載のシステム。
【請求項9】
前記時計は、前記出題部に前記テストを提示させるための操作部をさらに有する、請求項3~8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
表示部を有する時計の使用者の認知機能に関するテストのデータを記憶する記憶部を有し前記時計の表示形態を制御する親機で実行されるプログラムであって、
前記使用者に前記テストを提示する機能と、
前記テストに前記使用者が合格したか否かを判定することで前記使用者の認知機能の程度を判定する機能と、
前記判定する機能の判定結果に応じて、前記時計の表示部の表示形態として、時刻のアナログ表示、時刻のデジタル表示、特定の時間帯に特定の図形が表示される図形表示、および特定の時間帯に特定の色が表示される色表示のいずれかを選択する機能と、
前記表示形態を前記選択する機能が選択したものに切り換えさせる指示を前記時計に送信する機能と、
を実現させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は時計、システムおよびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、所望のデザインに対応する時計デザインデータを外部から取得し、取得されたデータに基づき所定の表示面積の表示手段にデザインを表示させる時計が記載されている。特許文献2には、1本の指針と、全周を72または72の整数倍で分割した目盛を有する文字板とからなる1針表示の携帯電池時計が記載されている。特許文献3には、アナログ式時計の周囲に表示帯が形成され、表示帯にスケジュール表示部材を取り替え自在に貼り着け可能なスケジュール表示時計が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-284365号公報
【文献】実開昭55-16456号公報
【文献】実開平4-34688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
認知症を発症した人は、3針の時計を読むことができず、日常生活に支障が生じる。例えば3針の時計は読めないが2針の時計は読めたという場合でも、認知症の症状が進行すると、2針の時計も読めなくなったり、さらには数字や時刻そのものも認識できなくなったりすることもある。このため、認知症を発症した人でも認識可能な、症状の程度に応じた表示をする時計、特に腕時計が求められる。
【0005】
本発明は、使用者の認知機能の程度に応じて表示形態が切り換わる時計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
使用者に認知機能に関するテストを提示することで使用者の認知機能の程度を判定する親機と通信する通信部と、表示部と、親機からの指示に応じて、表示部の表示形態を、時刻のアナログ表示、時刻のデジタル表示、特定の時間帯に特定の図形が表示される図形表示、および特定の時間帯に特定の色が表示される色表示のいずれかに切り換える制御部とを有する時計が提供される。
【0007】
表示部を有する親機および時計で構成され、時計の使用者に認知機能に関するテストを提示する出題部と、テストに使用者が合格したか否かを判定することで使用者の認知機能の程度を判定する判定部と、判定部の判定結果に応じて、時計の表示部の表示形態として、時刻のアナログ表示、時刻のデジタル表示、特定の時間帯に特定の図形が表示される図形表示、および特定の時間帯に特定の色が表示される色表示のいずれかを選択する選択部と、表示形態を選択部が選択したものに切り換える表示制御部とを有するシステムが提供される。
【0008】
出題部は、親機の表示部上で、現在時刻を使用者に数字で入力させる時間見当識テスト、表示された複数の図形の中から特定の意味を表すものを使用者に選択させる図形認識テスト、および表示された時計の指針を使用者に操作させて特定の時刻に合わせる時計描画テストを提示することが好ましい。
【0009】
アナログ表示は、時針、分針および秒針で時刻を表す3針表示、または時針および分針で時刻を表す2針表示であり、選択部は、時計描画テストが合格と判定されたならばアナログ表示を選択することが好ましい。出題部は、時計描画テストとして、2針の時計の指針を特定の時刻に合わせさせる2針描画テストと、3針の時計の指針を特定の時刻に合わせさせる3針描画テストとを使用者に提示し、選択部は、3針描画テストが合格と判定されたならば3針表示を選択し、3針描画テストが不合格でかつ2針描画テストが合格と判定されたならば2針表示を選択することが好ましい。
【0010】
アナログ表示は、時針のみで時刻を表す1針表示であり、選択部は、時計描画テストが不合格でかつ時間見当識テストが合格と判定された場合には、図形認識テストが合格と判定されたならば1針表示を、図形認識テストが不合格と判定されたならばデジタル表示を選択することが好ましい。時計の表示部は、表示形態が1針表示に切り換えられたときに、時針に加えて分針も表示される2針表示および3針表示のときとは異なる時字を表示することが好ましい。
【0011】
選択部は、時計描画テストと時間見当識テストが不合格と判定された場合には、図形認識テストが合格と判定されたならば図形表示を、図形認識テストも不合格と判定されたならば色表示を選択することが好ましい。時計は、出題部にテストを提示させるための操作部をさらに有することが好ましい。
【0012】
表示部を有する時計の使用者の認知機能に関するテストのデータを記憶する記憶部を有し時計の表示形態を制御する親機で実行されるプログラムであって、使用者にテストを提示する機能と、テストに使用者が合格したか否かを判定することで使用者の認知機能の程度を判定する機能と、判定する機能の判定結果に応じて、時計の表示部の表示形態として、時刻のアナログ表示、時刻のデジタル表示、特定の時間帯に特定の図形が表示される図形表示、および特定の時間帯に特定の色が表示される色表示のいずれかを選択する機能と、表示形態をその選択する機能が選択したものに切り換えさせる指示を時計に送信する機能とを実現させるプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、使用者の認知機能の程度に応じて表示形態が切り換わる時計が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】腕時計1と親機2で構成されるシステム3の概念図とブロック図である。
図2】腕時計1の表示形態を示す図である。
図3】親機2に表示される時間見当識テストの例を示す図である。
図4】親機2に表示される図形認識テストの例を示す図である。
図5】親機2に表示される時計描画テストの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、時計、システムおよびプログラムを説明する。ただし、本発明は図面または以下に記載される実施形態には限定されないことを理解されたい。
【0016】
図1(A)および図1(B)は、腕時計1と親機2で構成されるシステム3の概念図とブロック図である。腕時計1は、認知症を発症した人が専用に使用する電子時計であり、親機2との間で無線通信を行って、親機2による制御の下で腕時計1の表示形態を腕時計1の使用者が認知できるものに切り換える機能を有する。本明細書でいう時計は、以下の実施形態では腕時計であるが、置き時計でもよい。
【0017】
腕時計1はデジタルクォーツ時計であり、いわゆるスマートウォッチであるとする。腕時計1は、表示部11、操作部12、通信部13、記憶部14および制御部15を有する。表示部11は、時刻の表示用に腕時計1の上面に設けられたカラーフルドットの液晶ディスプレイ(LCD)である。操作部12は、腕時計1の本体ケースの側面に設けられたボタンであり、図示した例では2時の位置と4時の位置に配置されている。通信部13は、親機2との間で無線通信をするためのものである。記憶部14は、腕時計1の本体ケースの内部に設けられたメモリ装置であり、表示部11への表示データなど、腕時計1の動作に必要なデータを記憶する。
【0018】
図2(A)~図2(F)は、腕時計1の表示形態を示す図である。腕時計1の表示形態には、これらの図に示す3針表示a、2針表示b、1針表示c(以上がアナログ表示)、デジタル表示d、図形表示eおよび色表示fの6通りがあり、これらのいずれかが表示部11に表示される。
【0019】
3針表示a、2針表示bおよび1針表示cのときには表示部11の全面に文字板11dが表示され、3針表示aでは時針11h、分針11mおよび秒針11sで、2針表示bでは時針11hおよび分針11mで、1針表示cでは時針11hのみで時刻が表示される。腕時計1では、機械的な部品としての時針、分針および秒針は設けられておらず、アナログ表示のときには、制御部15が表示部11のLCDを制御することで、仮想的な指針が回転している表示を実現する。デジタル表示dでは、文字板や指針は表示されず、24時間表記または12時間表記の数字で表示部11に時刻が表示される。このときは、時分に加えて秒や年月日を表す数字を表示してもよい。
【0020】
図形表示eでは、時刻は表示されず、特定の時間帯に表示部11の全面に特定の図形が表示される。図2(E)の例では食事のマークが表示されており、このマークは例えば昼の12時から13時までの時間帯に表示される。色表示fでは、時刻は表示されず、特定の時間帯に表示部11の全面に特定の色が表示される。色表示fを利用する場合には、使用者と介護者との間で、例えば赤色が表示されたら食事をするなど、何色が表示されたら何をするかということを予め定めておく。図形表示eと色表示fでは、このように、使用者に今やるべきことを図形または色で通知する。図形表示eと色表示fをするためには、何時から何時までの時間帯に何の図形または何色を表示するかを管理者が腕時計1に予め登録し、そのデータを記憶部14に記憶させておく。
【0021】
制御部15は、腕時計1の本体ケースの内部に設けられたマイクロコンピュータの制御回路として構成され、機能ブロックとして、計時部16および表示制御部17を有する。計時部16は公知の時計回路で構成され、現在時刻を計時する。表示制御部17は、親機2からの指示に応じて、表示部11の表示形態を、3針表示a、2針表示b、1針表示c、デジタル表示d、図形表示eおよび色表示fのいずれかに切り換える。
【0022】
3針表示aを指示されたときには、表示制御部17は、文字板11d、時針11h、分針11mおよび秒針11sの表示データを記憶部14から取得し、計時部16が示す現在時刻に従って指針が文字板11d上で回転するように文字板11dと指針を表示させる。2針表示bまたは1針表示cを指示されたときも、秒針11sまたは分針11mと秒針11sが表示されなくなることを除けば、3針表示aのときと同様である。ただし、表示制御部17は、1針表示cを指示されたときには、図2(A)~図2(C)に示すように、文字板11d上の目盛り11iを相対的に細かくするなどして、2針表示bおよび3針表示aのときとは異なる時字を表示させることが好ましい。
【0023】
デジタル表示dを指示されたときには、表示制御部17は、数字の表示データを記憶部14から取得し、計時部16が示す現在時刻に従って、表示部11上に時刻を表す数字を表示させる。図形表示eまたは色表示fを指示されたときには、表示制御部17は、表示の切換え時刻のデータを記憶部14から取得し、計時部16が示す現在時刻がその切換え時刻に一致したときに、表示すべき図形または色のデータを記憶部14から取得して、その図形または色を次の切換え時刻まで表示部11に表示させる。
【0024】
親機2は、例えばスマートホン、タブレットPCまたはノートPCなどの携帯端末であり、腕時計1の使用者に対して認知機能に関するテスト(認知機能テスト)を実施して、その結果に応じて腕時計1の表示形態をその使用者が認知できるものに切り換えさせる。親機2は、表示部21、通信部23、記憶部24および制御部25を有する。表示部21は、例えばタッチパネルディスプレイである。図示した例では表示部21が親機2の操作部を兼ねているが、親機2は、例えばキーボードやマウスといった、タッチパネルディスプレイとは別の操作部を有してもよい。通信部23、腕時計1との間で無線通信をするためのものである。記憶部24は、例えば半導体メモリなどで構成され、親機2が提示する認知機能テストのデータなど、親機2の動作に必要なデータを記憶する。
【0025】
制御部25は、CPU、RAMおよびROMを含むマイクロコンピュータの制御回路として構成され、親機2の動作を制御する。制御部25は、そのマイクロコンピュータで実行されるプログラムにより実現される機能ブロックとして、出題部26、判定部27、選択部28および設定部29を有する。
【0026】
出題部26は、親機2の表示部21上で、腕時計1の使用者に対し、認知機能テストとして、時間見当識テスト、図形認識テスト(手がかり再生テスト)および時計描画テストの3種類を提示する。出題部26は、管理者が親機2を操作することでこれらのテストを提示してもよいが、親機2を操作しなくても腕時計1の操作部12のボタンを押下することで自動的に起動されるように、腕時計1と親機2とを連動させることが好ましい。これにより、親機2上で認知機能テストを行うアプリケーションを起動するための操作が簡単になる。
【0027】
図3は、親機2に表示される時間見当識テストの例を示す図である。時間見当識テストは、腕時計1の使用者(被験者)が現在時刻や数字を認識できるか否かを判定するためのものであり、出題部26は、時間見当識テストとして、例えば図3に示す画面40を表示部21に表示させる。画面40では、被験者への指示を示す文の下に年、月、日、時および分の回答欄41が、さらにその下に、0~9の数字および削除(訂正)の選択ボタン42ならびに選択された数字を回答として入力するための入力ボタン43が表示される。被験者は、管理者の指示の下で、表示部21上のこれらのボタンを操作して回答を数字で入力する。
【0028】
図4は、親機2に表示される図形認識テストの例を示す図である。図形認識テストは、被験者が図形を認識し記憶できるか否かを判定するためのものであり、被験者に特定の図形(イラストまたはマーク)を記憶させ、それとは関係ない質問などを行った後でもとの図形を回答させる。出題部26は、図形認識テストとして、例えば図4に示す画面51a~51fを一定時間ごとに表示部21に順次表示させる。例えば、最初の画面51aでは、食事のマーク52aとその意味の説明文が表示され、続く数枚から10枚程度の画面51b~51eでは、最初のマーク52aとは異なるマーク52b~52eがそれぞれ表示される。最後の画面51fでは、最初の画面51aに表示されていたマークを尋ねる文とともに、それまでに表示されたマーク52a~52eの中から正解を含む複数個が同時に表示される。被験者は、管理者の指示の下で画面51f内の1つのマークを選択する。
【0029】
図5(A)および図5(B)は、親機2に表示される時計描画テストの例を示す図である。時計描画テストは、被験者が2針および3針の時計を読めるか否かを判定するためのものであり、2針描画テストおよび3針描画テストで構成される。出題部26は、例えば、2針描画テストとして図5(A)に示す画面61を、3針描画テストとして図5(B)に示す画面62を、表示部21にそれぞれ表示させる。2針描画テストの画面61では文字板63、時針64および分針65が、3針描画テストの画面62では文字板63、時針64、分針65および秒針66が、被験者への指示を示す文とともにそれぞれ表示される。被験者は、管理者の指示の下で、表示された時計の指針を時計回りまたは反時計回りの方向になぞることで、指定された時刻に合わせるようにそれぞれの指針を回転させる。
【0030】
判定部27は、認知機能テストに腕時計1の使用者(被験者)が合格したか否かを判定することで、被験者の認知機能の程度を判定する。判定部27は、時間見当識テストで被験者が回答した年、月、日、時および分が親機2に内蔵の時計または腕時計1の計時部16が示す現在時刻と一致するならば、時間見当識テストは合格であり被験者は現在時刻や数字を認識できると判定し、一致しないならば、時間見当識テストは不合格であり被験者は現在時刻や数字を認識できないと判定する。判定部27は、図形認識テストで被験者が選択したマークが最初の画面51aに表示されていたマーク52aと一致するならば、図形認識テストは合格であり被験者は図形の認識と記憶ができると判定し、一致しないならば、図形認識テストは不合格であり被験者は図形の認識と記憶ができないと判定する。
【0031】
判定部27は、2針描画テストで被験者が合わせた指針が示す時刻が指定された時刻と一致するならば、2針描画テストは合格であり被験者は2針の時計を読めると判定する。この場合、判定部27は、さらに3針描画テストで被験者が合わせた指針が示す時刻が指定された時刻と一致するならば、3針描画テストも合格であり被験者は3針の時計も読めると判定し、一致しないならば、3針描画テストは不合格であり被験者は2針の時計は読めるが3針の時計は読めないと判定する。判定部27は、2針描画テストで被験者が合わせた指針が示す時刻が指定された時刻と一致しないならば、2針描画テストと3針描画テストは不合格であり被験者は2針の時計も3針の時計も読めないと判定する。判定部27は、2針描画テストが合格ならば時計描画テストは合格であり、2針描画テストが不合格ならば時計描画テストは不合格であると判定する。
【0032】
一般に、2針の時計を読めない人は3針の時計も読めないので、2針描画テストが不合格の場合には、3針描画テストを行う必要はなく、出題部26は3針描画テストを提示しなくてもよい。判定精度を高めるために、特に図形認識テストと時計描画テストについては、出題部26は同様の問題を複数回出題し、判定部27はそれらの正解率が基準値を上回るか否かに応じて合否を判定してもよい。
【0033】
表1は、認知機能テストの結果と親機2が選択する腕時計1の表示形態との対応関係を示す表である。
【表1】
【0034】
表中の「○」は合格を、「×」は不合格を表す。2針の時計を読めない人は3針の時計も読めない(3針の時計を読める人は2針の時計も読める)ので、表1には、2針描画テストが不合格で3針描画テストが合格の場合は記載していない。現在時刻や数字を認識できない人は2針の時計も3針の時計も読めないので、表1には、時間見当識テストが不合格で2針描画テストまたは3針描画テストが合格の場合は記載していない。
【0035】
選択部28は、判定部27の判定結果に応じて、腕時計1の表示部11の表示形態を選択する。選択部28は、2針描画テストと3針描画テストが合格と判定されたならば3針表示aを選択し、2針描画テストが合格でかつ3針描画テストが不合格と判定されたならば2針表示bを選択する。選択部28は、時計描画テストが不合格でかつ時間見当識テストが合格と判定された場合には、図形認識テストが合格と判定されたならば1針表示cを、図形認識テストが不合格と判定されたならばデジタル表示dを選択する。選択部28は、時計描画テストと時間見当識テストが不合格と判定された場合には、図形認識テストが合格と判定されたならば図形表示eを、図形認識テストも不合格と判定されたならば色表示fを選択する。選択部28は、通信部23を介して、選択した表示形態を示すデータと表示形態の切換え指示を腕時計1に送信する。
【0036】
設定部29は、腕時計1で図形表示eまたは色表示fが行われるときに表示される図形または色とそれが表示される時間帯を設定するための管理者の入力操作を表示部21上で受け付け、通信部23を介してその設定データを腕時計1に送信する。
【0037】
このように、親機2が認知機能テストの出題、結果判定、および腕時計1の表示形態の選択を行い、腕時計1が表示形態の切換え指示とどの表示形態が選択されたかを示すデータとを受信して切換えを行うことで、処理が簡略化される。腕時計1と親機2によれば、認知症の症状が進行しても、その時点での使用者の認知機能の程度を把握して、適切な表示形態での表示を実現することができる。
【0038】
上記の例とは異なり、親機2が各表示形態の表示データも保持し、選択した表示形態の表示データを表示形態の切換え指示とともに腕時計1に送信してもよい。腕時計1の記憶部14の記憶容量が限られていても、一般に親機2の記憶部24の記憶容量は多いので、親機2から腕時計1に表示データを与えれば、表示形態を上記の6通りよりも増やすことができ、使用者の認知症の症状に応じた細かい表示設定が可能になる。また、出題部26および判定部27の機能は親機2に持たせることが好ましいが、選択部28および設定部29の機能は腕時計1に持たせてもよい。すなわち、認知機能テストの出題と結果判定は親機2で行い、表示形態の選択および図形表示eや色表示fでの表示内容や切換え時刻の設定は腕時計1で行ってもよい。
【0039】
腕時計1は、デジタルクォーツ時計に限らず、アナログクォーツ時計か、または機械的な部品としての指針とLCDの両方を有するアナログデジタル混合の時計でもよい。ただし、指針がある時計の場合には、指針の表示を消すことができず、デジタル表示d、図形表示eおよび色表示fはできないため、切換え可能な表示形態は残りのアナログ表示のみであり、したがって、時間見当識テストと図形認識テストの両方に合格できる人のみが対象となる。指針がある時計の場合には、各指針を互いに連動させず独立に駆動できる必要があり、2針表示bのときには分針と秒進を重ねて駆動し、1針表示cのときには時針、分針および秒進をすべて重ねて駆動すればよい。
【0040】
図形表示eおよび色表示fのときには、図形または色だけでなく、目立たないように小さく時刻を表示してもよい。現在時刻や数字を認識できない人は時刻も認識できないが、時刻を表示することで、正しい時間帯に図形または色が正しく表示されているかどうかを管理者(介護者)が確認することができる。
【0041】
親機2の機能を実現するプログラムは、通信手段により提供してもよいし、CD-ROMなどの記録媒体に格納して提供してもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 腕時計
2 親機
3 システム
11,21 表示部
12 操作部
13,23 通信部
14,24 記憶部
15,25 制御部
図1
図2
図3
図4
図5