(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】ヒト角化細胞を培養するための方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/071 20100101AFI20230501BHJP
C12M 3/00 20060101ALI20230501BHJP
A61L 27/38 20060101ALI20230501BHJP
A61L 27/60 20060101ALI20230501BHJP
A61L 27/54 20060101ALI20230501BHJP
A61K 35/36 20150101ALI20230501BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20230501BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20230501BHJP
A61P 13/10 20060101ALI20230501BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20230501BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
C12N5/071
C12M3/00 A
A61L27/38 300
A61L27/60
A61L27/54
A61K35/36
A61P17/02
A61P27/02
A61P13/10
A61P1/02
A61P1/04
(21)【出願番号】P 2019560303
(86)(22)【出願日】2018-05-04
(86)【国際出願番号】 SG2018050220
(87)【国際公開番号】W WO2018203834
(87)【国際公開日】2018-11-08
【審査請求日】2021-03-19
(32)【優先日】2017-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509034605
【氏名又は名称】ナショナル ユニバーシティ オブ シンガポール
(73)【特許権者】
【識別番号】508320723
【氏名又は名称】シンガポール ヘルス サービシーズ ピーティーイー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】トリグヴァソン, カール
(72)【発明者】
【氏名】ティジン, モニカ スリアナ
(72)【発明者】
【氏名】チュア, アルヴィン ウェン チョーン
【審査官】竹内 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/046315(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/061071(WO,A1)
【文献】特開2009-226207(JP,A)
【文献】特開2012-120531(JP,A)
【文献】国際公開第2005/087286(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/002888(WO,A1)
【文献】特表2013-521795(JP,A)
【文献】特表2013-545489(JP,A)
【文献】国際公開第2016/131959(WO,A1)
【文献】特表2002-542824(JP,A)
【文献】EXPERIMENTAL DERMATOLOGY,2002年,VOL:11, NR:5,PAGE(S):387 - 397
【文献】MATRIX BIOLOGY,2016年,VOL:56,PAGE(S):24 - 41
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12N 1/00-7/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト角化細胞を拡大するための方法であって、該方法は、
ヒト角化細胞を
、無傷の組換えラミニン
-421、または、無傷の組換えラミニン-511と無傷の組換えラミニン-421の両方の組み合わせでコーティングされた基材上にプレートする工程、および
該ヒト角化細胞を異種由来物質非含有の細胞培養培地中で培養する工程
を包含する方法。
【請求項2】
前記基材上にプレート
した前記角化細胞を新しく単離す
る、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ヒト角化細胞
が、約0.7×10
5細胞/cm
2~約1.2×10
5細胞/cm
2の密度で前記基材上にプレート
される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ヒト角化細胞
が、約30℃~約40℃の温度で前記基材上で培養
される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ヒト角化細胞
が、約5% CO
2~約15% CO
2を含む雰囲気中で培養
される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ヒト角化細胞を周期的に解離し、継代する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ヒト角化細胞の継代は、1 細胞~約1.5×10
4 細胞/cm
2の密度に達した際に起こる、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
前記基材は、ラミニン-511およびラミニン-421の両方でコーティングされる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ラミニン-511 対 ラミニン-421重量比は、15:1~1:15である、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
ヒト角化細胞を拡大するための、異種由来物質非含有のシステムであって、該システムは、
無傷の組換
えラミニン-421
およびラミニン-511
を含む基材;および
異種由来物質非含有の細胞培養培地、
を含むシステム。
【請求項11】
ヒト角化細胞をインビトロで拡大するための、異種由来物質非含有の細胞培養キットであって、該キットは、
無傷の組換
えラミニン-421
およびラミニン-511
のコーティングを有する細胞培養基材;および
無血清細胞培養培地、
を含むキット。
【請求項12】
患者の熱傷による創傷を処置するための組成物を作製する方法であって、該組成物は基材からのヒト角化細胞を含み、該方法は、
該患者のドナー部位から採取したヒト角化細胞を該基材上にプレートする工程であって、該基材が無傷の組換
えラミニン-421、
または、無傷の組換えラミニン-511
と無傷の組換えラミニン-421の両方の組み合わせでコーティングされている、工程;および
該ヒト角化細胞を異種由来物質非含有の条件下で該基材上で拡大する工程;
を包含し、該熱傷による創傷は、該組成物で覆われる、
方法。
【請求項13】
患者の慢性的な創傷を処置するための組成物を作製する方法であって、該組成物は基材からのヒト角化細胞を含み、該方法は、
該患者のドナー部位から採取したヒト角化細胞を該基材上にプレートする工程であって、該基材が、無傷の組換
えラミニン-421、
または、無傷の組換えラミニン-511
と無傷の組換えラミニン-421の両方の組み合わせでコーティングされている、工程;および
該ヒト角化細胞を異種由来物質非含有の条件下で該基材上で拡大する工程;
を包含し、該創傷は、該組成物で覆われる、
方法。
【請求項14】
上皮のみが傷ついた、および/または上皮欠損が傷害の構成要素である場合を含む、ヒト身体における任意の傷害または状態を処置するための組成物を作製する方法であって、該組成物は基材からのヒト角化細胞を含み、該方法は、
該患者のドナー部位から採取したヒト角化細胞を該基材上にプレートする工程であって、該基材が、無傷の組換
えラミニン-421、
または、無傷の組換えラミニン-511
と無傷の組換えラミニン-421の両方の組み合わせでコーティングされている、工程;および
該ヒト角化細胞を、異種由来物質非含有の条件下で該基材上で拡大する工程;
を包含し、該上皮欠損は、該組成物で覆われる、
方法。
【請求項15】
前記ヒト身体における傷害または状態は、眼、膀胱、口腔、または腸にある、請求項1
4に記載の方法。
【請求項16】
前記ヒト角化細胞が異種由来物質非含有かつ完全に規定されたシステムにおいて拡大される、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2017年5月5日に出願された米国仮特許出願番号第62/501,992号に基づく優先権を主張しており、この仮特許出願は、参考として全体が本明細書によって援用される。
【背景技術】
【0002】
背景
本開示は、ヒト表皮角化細胞を培養するための方法に関する。これらの角化細胞は、次いで、重度熱傷、軽度熱傷、および慢性的な創傷を処置するためのような治療において使用され得る。これらの培養細胞の他の潜在的な治療適用は、上皮のみが傷ついたか、または上皮下構成要素もまた損傷した場合を含む、ヒト身体において(例えば、眼、膀胱、口腔、腸などにおいて)任意の上皮の傷害または状態の処置に関するものであり得る。上記方法を実施するためのキットもまた開示される。非常に一般的に、角化細胞は、ラミニン-411、ラミニン-421、ラミニン-511、および/またはラミニン-521の基材上で培養され、フィーダー細胞の助けなしでインビトロでの角化細胞生存を支持するために、無血清培地に曝される。
【0003】
熱傷による傷害は、未だに極めて重大な臨床上の問題である。なぜなら全体表面積(TBSA)の40%を超えると、自己ドナー部位が創傷閉鎖のための一次カバーを提供するには不十分になるからである。この問題を克服するために開発された1つの技術は、自家培養上皮移植片(cultured epithelial autografts)(CEA)の使用である。この方法は、3~4週間の期間以内に完全な創傷被覆のために多量の培養上皮を得るために、小さな皮膚生検からの皮膚の表皮角化細胞の単離および連続的拡大を包含する。自己の培養ヒト上皮での大きな熱傷による創傷の恒久的な被覆の報告以来、この技術は、頻繁に救命措置である、重度熱傷を処置するために全世界で成功裡に使用されている。
【0004】
重度熱傷処置のためにヒト表皮角化細胞を培養するためのこの現在の至適基準(gold standard)プロトコルは、いくつかの動物由来生成物(例えば、ウシ血清およびフィーダー細胞としてのマウス3T3線維芽細胞)の使用を要する。このような製品は、今日の細胞療法環境において共通する臨床品質基準を満たさない。マウス細胞の存在は、ヒト細胞培養物を動物病原体および免疫原性薬剤へと曝露するというリスクをもつ。さらに、培養培地中で使用されるウシ胎仔血清(FBS)は、規定されておらず、バッチ間で変動がある。
【0005】
この問題を克服するために、無血清で異種由来物質非含有の細胞培養培地が、角化細胞培養のために開発された。しかし、これらのシステムは、未だ最適ではなく、重度熱傷欠損の臨床適用において何も使用されていない。無血清角化細胞増殖培地を使用して、照射した3T3フィーダー細胞を使用せずに角化細胞を培養することは、フィーダー細胞によって支持された角化細胞と比較して、角化細胞の増殖能力を保存できなかったことが示されている。
【0006】
3T3フィーダー細胞および動物由来血清の助けなしに、インビトロで角化細胞生存および拡大を支持するための方法を開発することは望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
簡単な要旨
本開示は、ヒト表皮角化細胞を培養するための方法を提供する。次いで、これらの角化細胞は、それほど重度でない熱傷および慢性的な創傷を処置および管理するような治療において使用され得る。より詳細には、本開示はまた、完全に異種由来物質非含有のかつ完全にヒトの方法においてヒト表皮角化細胞を培養するための新規なシステムを記載する。純粋なラミニンマトリクス(例えば、LN-511および/またはLN-421)および化学的に規定された無血清培地を使用することによって、この方法は、フィーダー細胞および異種由来構成要素(xenobiotic component)の助けなしに、成人患者細胞において30程度の集団倍加で、インビトロで角化細胞生存を支持する。さらなる局面において、本開示は、角化細胞を培養するためのキットを提供する。
【0008】
FACS分析および免疫蛍光染色から、このシステムにおいて増殖した細胞は、角化細胞基底マーカー(basal marker)KRT5、KRT14、KRT15、ITGA6、およびITGB1を発現することが確認される。分化マーカーKRT1およびKRT10は、正常に後の継代において発現される。種々の時点で行われるリアルタイム定量的PCR分析(qPCR)は、増大する継代にわたって角化細胞の基底プロフィールおよび分化プロフィールを示す。
【0009】
いくつかの局面において、本開示は、ラミニン-411(LN-411)、ラミニン-421(LN-421)、ラミニン-511(LN-511)、またはラミニン-521(LN-521)の基質上に角化細胞をプレートすること、およびその細胞を、細胞培養培地を使用して培養することを記載する。言い換えると、その基材において使用されるラミニンは、α4鎖またはα5鎖を含む。特定の実施形態において、その細胞培養培地は、異種由来物質非含有である。その細胞は、プレートする前にトリプシンEDTAを用いて継代され得る。
【0010】
特定の局面において、上記細胞培養培地は、基礎培地である。いくつかの実施形態によれば、その基礎培地は、インスリンおよび化学的に規定された増殖補充物を含む。他の成分は、ヒト上皮増殖因子(hEGF);ヒドロコルチゾン;ならびに抗生物質および/または抗真菌剤(例えば、ゲンタマイシンまたはアンホテリシンB)を含み得る。上記インスリンは、組換えヒトインスリンであり得る。さらなる実施形態において、上記基礎培地は、エピネフリンおよびトランスフェリンをさらに含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、新たに単離した角化細胞は、約1×105/cm2の密度で上記基材上にプレートされ得る。具体的局面において、角化細胞は、約5% CO2~約15% CO2を含む雰囲気中で培養される。上記角化細胞は、約30℃~約40℃の温度で培養され得る。
【0012】
他の実施形態において、上記角化細胞は、約30℃~約40℃の温度でトリプシン処理され得る。特定の実施形態において、角化細胞は、約4分間~約12分間の期間にわたってトリプシン処理される。より具体的な実施形態において、角化細胞は、約6分間~約10分間の期間にわたってトリプシン処理される。さらなる特定の実施形態において、角化細胞は、約1×104 細胞/cm2の密度に達した際に継代される。
【0013】
ラミニン-411、ラミニン-421、ラミニン-511、および/またはラミニン-521を含む基材ならびに細胞培養培地を含む、角化細胞を維持するためのシステムがまた、開示される。特定の局面において、上記細胞培養培地は、異種由来物質非含有(xeno-free)である。他の局面において、上記細胞培養培地は、動物血清を含まない。
【0014】
本開示はまた、角化細胞をインビトロで培養するためのキットを記載する。上記キットは、ラミニン-411、ラミニン-421、ラミニン-511、および/またはラミニン-521のコーティングを有する細胞培養プレート;ならびに細胞培養培地を含み、ここで上記細胞培養培地は、無血清である。
【0015】
患者の熱傷による創傷を処置するための方法がまた、本明細書で開示される。上記患者のドナー部位から採取した角化細胞は、ラミニン-411、ラミニン-421、ラミニン-511、および/またはラミニン-521でコーティングされた基材上にプレートされる。上記角化細胞は、上記基材上で拡大される。上記基材からの角化細胞は、次いで、上記熱傷による創傷を覆うために使用される。
【0016】
患者の慢性的な創傷を処置するための方法がまた、本明細書で提供される。上記患者のドナー部位から採取した角化細胞は、ラミニン-411、ラミニン-421、ラミニン-511、および/またはラミニン-521でコーティングされた基材上にプレートされる。上記角化細胞は、上記基材上で拡大される。次いで、上記基材からの角化細胞は、上記創傷を覆うために使用される。
【0017】
上皮のみが傷ついたおよび/または上皮欠損が傷害の構成要素である場合を含む、ヒト身体において任意の傷害または状態を処置するための方法がまた、本明細書で開示される。上記患者のドナー部位から採取した角化細胞は、ラミニン-411、ラミニン-421、ラミニン-511、および/またはラミニン-521でコーティングされた基材上にプレートされる。上記角化細胞は、上記基材上で拡大される。次いで、上記基材からの角化細胞は、上記上皮欠損を覆うために使用される。
【0018】
熱傷による創傷、慢性的な創傷、および他の上皮欠損の処置のための角化細胞の使用がまた、本明細書で開示される。望ましくは、上記角化細胞は、ラミニン-411、ラミニン-421、ラミニン-511、および/またはラミニン-521でコーティングされた基材上にプレートされ、拡大される。
【0019】
本開示のこれらおよび他の非限定的な特性は、以下でより詳細に開示される。
【0020】
特許または特許出願ファイルは、少なくとも1枚のカラー仕上げの図面を含む。カラー図面付きのこの特許または特許出願公報の写しは、請求および必要な費用の支払いをすれば、当局によって提供される。
【0021】
以下は、図面の簡単な説明であり、これは、本明細書で開示される例示的実施形態を例証する目的で示され、限定する目的で示されるのではない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1-1】
図1A~1Jは、種々のラミニンマトリクス上で培養され、ラミニンを含まない陰性コントロール基材および角化細胞を3T3線維芽細胞とともに共培養した陽性コントロール基材と比較した、新たに単離されたヒト表皮角化細胞の一連の画像である。新たに単離されたヒト表皮角化細胞を、KGM-CD培地中で、LN-411、LN-421、LN-511、LN-521、LN-111、LN-332、およびコーティングなしの組織培養ディッシュ(陰性コントロール)上で培養した。7日目に画像を撮った。スケールバー=100マイクロメートル(μm)。
図1Aは、陰性コントロール(コーティングなし)である。
図1Bは、陽性コントロール(3T3)である。
図1Cは、LN-111のみを有する基材である。
図1Dは、LN-332のみを有する基材である。
図1Eは、LN-411のみを有する基材である。
図1Fは、LN-421のみを有する基材である。
図1Gは、LN-511のみを有する基材である。
図1Hは、LN-521のみを有する基材である。
図1Iは、LN-421およびLN-521を10:1比率(w/w/)で含む基材である。
図1Jは、LN-421およびLN-521を1:10(w/w/)で含む基材である。
【0023】
【
図2-1】
図2A~2Dは、従来のRheinwald & Greenの方法(Cell, 6, 331-343(1975)に記載されるように3T3マウス線維芽細胞とともに共培養した(3T3と表示))と比較して、LN-511およびLN-421上で培養した角化細胞の増殖速度を示す一連のグラフである。種々の年齢の個体から得た角化細胞を培養した。コンフルエントになった際に、細胞を採取し、計数し、それらが老化に達するまで継代した。集団倍加を、PD=3.32×log(採取した細胞数/播種した細胞数)として計算した。
図2A~2Cに関しては、y軸は、0から30まで10ずつ増大して延びており、x軸は、0日間から70日間まで10ずつ増大して延びている。
図2Aは、3T3に関する。
図2Bは、LN-511に関する。
図2Cは、LN-421に関する。
【0024】
図2Dは、LN-411(丸)、LN-421(菱形)、LN-511(三角形)、またはLN-521(四角形)上で培養した角化細胞の累積集団倍加の数を示すグラフである。y軸は、0から20まで5ずつ増大して延びており、x軸は、0日間から60日間まで10ずつ増大して延びている。LN-511およびLN-421の線は、LN-411またはLN-521より多くの集団倍加を有する。
【0025】
【
図3-1】
図3A~3Dは、角化細胞前駆細胞の時間依存性qPCR発現プロフィールおよび分化マーカーを示す一連のグラフである。角化細胞を、ラミニンでコーティングされたシステムで培養したか、または3T3とともに共培養した。コンフルエントになった際に、細胞を採取し、RNAをqPCR分析のために単離した。各グラフは、10継代にわたってGAPDHに対して正規化した上記マーカーのmRNA相対的発現をプロットする。丸は、LN-511に関し、三角形は、LN-421に関し、四角形は、3T3に関する。値は、継代1(P1)、継代4(P4)、継代7(P7)、および継代10(P10)に関して示される。
図3Aは、KRT5に関する。
図3Bは、KRT14に関する。
図3Cは、KRT1に関する。
図3Dは、KRT10に関する。
【0026】
【
図4-1】
図4A~4Nは、角化細胞前駆細胞マーカー(KRT5、KRT14、KRT15、p63)および分化マーカー(IVL、KRT1、KRT10)の一連の免疫蛍光画像である。角化細胞を、LN-511またはLN-421のいずれかでコーティングされた基材上で培養した。初期の継代(P1)で、その細胞を固定し、特異的角化細胞マーカーで免疫染色し、DAPIで対比染色した。初期の継代(P1)での角化細胞は、通常の基底細胞マーカー(KRT5およびKRT14)および低い分化マーカー(KRT1およびKRT10)を発現した。
【0027】
図4Aは、LN-511で、KRT5に関する。
図4Bは、LN-511で、KRT14に関する。
図4Cは、LN-511で、KRT15に関する。
図4Dは、LN-511で、p63に関する。
図4Eは、LN-511で、IVLに関する。
図4Fは、LN-511で、KRT10に関する。
図4Gは、LN-511で、KRT1に関する。
図4Hは、LN-421で、KRT5に関する。
図4Iは、LN-421で、KRT14に関する。
図4Jは、LN-421で、KRT15に関する。
図4Kは、LN-421で、p63に関する。
図4Lは、LN-421で、IVLに関する。
図4Mは、LN-421で、KRT10に関する。
図4Nは、LN-421で、KRT1に関する。
新たに単離されたヒト表皮角化細胞(継代0)を、LN-511、LN-421の上でプレートするか、または3T3線維芽細胞フィーダー細胞とともに共培養する(Rheinwald & Greenの方法)かのいずれかを行った。コンフルエントに達した後に、細胞を集め、基底/前駆細胞マーカー(KRT5、KRT14、ITGA6、ITGB1、およびKRT15)および分化マーカー(KRT1、KRT10)に関してFACS分析に供した。
【0028】
【
図5】
図5は、結果を示す棒グラフである。y軸は、陽性細胞の%(すなわち、そのマーカーを発現する)を示し、0から120%まで20%ずつ増大して延びている。そのマーカーは、x軸上に示され、左から右に、KRT5、KRT14、KRT15、ITGZ6、ITGB1、KRT1、およびKRT10が並んでいる。各マーカーに関して、左側のバーは、3T3基材であり、中央のバーは、LN-511基材であり、右側のバーは、LN-421である。
【0029】
【
図6-1】
図6Aは、ラミニン遺伝子ならびに基底マーカー遺伝子および分化角化細胞マーカー遺伝子の発現レベルを伴うヒートマップである(生物学的複製にわたって平均し、100万あたりの転写物(TPM)のlog10として表した)。
【0030】
図6Bは、3T3共培養、LN-421およびLN-511上で増殖している角化細胞におけるインテグリンおよびケラチン遺伝子の発現レベルを示すヒートマップである(生物学的複製にわたって平均し、100万あたりの転写物(TPM)のlog10として表した)。全てのサンプルにわたって1より大きいTPMの合計を有する遺伝子のみを示す。「完全」法を使用して、遺伝子を階層的にクラスター化した。
【0031】
図6Cは、3T3細胞上で増殖している角化細胞に対して比較した場合、LN-421およびLN-511上で増殖している角化細胞における機能的にアップレギュレーションしたプロセスおよびダウンレギュレーションしたプロセスを示すチャートである。機能的富化を、Gene Set Enrichment Analysis(GSEA)によって計算した。NES(正規化富化スコア)は、その富化の強度を表す。有意でないプロセスは、「NS」で示される。全ての他のプロセスは、有意に富化される(偽発見率(false discovery rate)(FDR)<0.05)。
【0032】
【
図7】
図7A~7Cは、LN-421、LN-511の上で予め増殖させるか、または3T3とともに共培養するかのいずれかであった角化細胞を播種した脱表皮化真皮(de-epidermalised dermis)(DED)の染色の断面である。
図7Aは、3T3とともに予め共培養した角化細胞での断面である。
図7Bは、LN-511上で予め増殖させた角化細胞での断面である。
図7Cは、LN-421上で予め増殖させた角化細胞での断面である。
【0033】
【
図8】
図8A~8Cは、3T3共培養システム上で増殖させたヒト角化細胞との比較での、LN-511またはLN-421上で培養したヒト角化細胞のインビボ移植である。組織を、移植の8日後に採取した。凍結切片をH&E染色で染色した。
図8Aは、3T3とともに予め共培養したヒト角化細胞から得られたインビボ移植片のH&E染色である。
図8Bは、LN-421上で予め培養したヒト角化細胞から得られたインビボ移植片のH&E染色である。
図8Cは、LN-511上で予め培養したヒト角化細胞から得られたインビボ移植片のH&E染色である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
詳細な説明
本明細書で開示される組成物および方法のより完全な理解は、添付の図面を参照することによって得られ得る。これらの図面は、本開示を示す便宜および容易さに基づいて模式的に示されるに過ぎず、従って、例示的な実施形態の範囲を規定するまたは限定することは意図されない。
【0035】
特定の用語が明確さのために以下の説明において使用されるが、これらの用語は、図面における例証に関して選択される実施形態の特定の構造に言及するに過ぎないことが意図され、本開示の範囲を規定するまたは限定することは意図されない。図面および以下に続く詳細な説明において、類似の番号指定は、類似の機能の構成要素に言及することは、理解されるべきである。
【0036】
単数形「1つの、ある(a)」、「1つの、ある(an)」、および「上記、この、その(the)」は、状況が明らかに別のことを規定しなければ、複数形への言及を含む。
【0037】
本明細書および請求項において使用される場合、用語「含む、包含する(comprising)」とは、「からなる(consisting of)」実施形態および「から本質的になる(consisting essentially of)」実施形態を含み得る。用語「含む、包含する(comprise(s))」、「含む、包含する(include(s))」、「有する(having)」、「有する(has)」、「し得る、できる(can)」、「含む、含有する(contain(s))」およびこれらのバリエーションは、本明細書で使用される場合、挙げられた成分/工程の存在を要求しかつ他の成分/工程の存在を許容する、開放系の移行句、用語、または文言であることが意図される。しかし、このような記載は、その挙げられた成分/工程のみの存在を、これらから生じ得るいかなる不純物とともに許容し、他の成分/工程を排除する、その列挙された成分/工程「からなる」および「から本質的になる」として組成物またはプロセスを記載しているとも解釈されるべきである。
【0038】
本出願の明細書および請求項における数値は、その値を決定するために、有効数字の同じ数に下げられる場合に同じである数値範囲、および述べられた値から、本出願に記載されるタイプの従来の測定技術の実験誤差未満が異なる数値範囲を含むことが理解されるべきである。
【0039】
本明細書で開示される全ての範囲は、その記載されるエンドポイントの両端を含み、独立して組み合わせ可能である(例えば、「2~10(from 2 to 10)」という範囲は、そのエンドポイントの両端である2および10、ならびに中間にある値の全てを含む)。
【0040】
用語「約(about)」とは、その値の基本的な機能を変化させることなく変動し得る任意の数値範囲を含むために使用され得る。範囲とともに使用される場合、「約」はまた、その2つのエンドポイントの絶対値によって規定される範囲を開示する。例えば、約2~約4はまた、「2~4」の範囲を開示する。用語「約」は、その示された数字の±10%をいい得る。
【0041】
本明細書で考察される全ての刊行物、特許、および特許出願は、それらの全体において参考として援用される。
【0042】
本開示に関連し得るいくつかの周知の参考文献としては、以下が挙げられる: Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Sambrook, et al., 1989, Cold Spring Harbor Laboratory Press); Gene Expression Technology (Methods in Enzymology, Vol. 185, edited by D. Goeddel, 1991. Academic Press, San Diego, Calif.); 「Guide to Protein Purification」 in Methods in Enzymology (M. P. Deutshcer, ed., (1990) Academic Press, Inc.); PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications (Innis, et al. 1990. Academic Press, San Diego, Calif.); Culture of Animal Cells: A Manual of Basic Technique, Second Ed. (R. I. Freshney. 1987. Liss, Inc. New York, N.Y.); Gene Transfer and Expression Protocols, pp. 109-128, ed. E. J. Murray, The Humana Press Inc., Clifton, N.J.); or the Ambion 1998 Catalog (Ambion, Austin, Tex.)。
【0043】
角化細胞は、ケラチンを生成する表皮細胞である。角化細胞は、表皮(皮膚の最も外層)における優勢な細胞であり、そこで見出される細胞のうちの90%を構成する。皮膚の基底層(basal layer)(基底層(stratum basale))において見出されるそれら角化細胞は、ときおり「基底細胞(basal cell)」または「基底角化細胞(basal keratinocyte)」といわれる。角化細胞の主要機能は、環境ダメージ(例えば、病原性細菌、真菌、寄生動物、およびウイルス、熱、UV照射および水分喪失による)に対するバリアの形成である。病原体が、表皮の上側の層に一旦侵入し始めたら、角化細胞は、炎症促進性メディエーター、特に、ケモカインを生成することによって反応し得る。
【0044】
インビトロで培養される初代細胞(例えば、角化細胞)の細胞表現型の喪失の1つの主な理由は、通常の細胞-マトリクス相互作用の欠如である。インビボでは、大部分の組織化された細胞(例えば、ヒト表皮角化細胞)は、基底膜(basement membrane)(BM)または基底板(basal lamina)として公知の空間マトリクスにかたく繋がれている。そのBMは、いくつかの特異的な構成要素(例えば、コラーゲンIV、プロテオグリカン、およびラミニンタンパク質)を含む。そのラミニンは、特有のBM構成要素であり、これは、多くのアイソフォームで存在する(≧16)。あるアイソフォームは極めて遍在性である一方で、他のアイソフォームは、非常に細胞タイプ特異的である。そのラミニンアイソフォーム、LN-511およびLN-521は、大部分の胚性および成体の基底膜の重要な構成要素であり、発生において重要な役割を有する。これら2つのアイソフォームは、その両方が皮膚の下にあるBMに位置し、角化細胞、幹細胞接着、増殖、移動を促進すること、およびおそらくは、皮膚の幹細胞集団において未分化の表現型の維持に寄与することが示されている。
【0045】
ラミニンは、基底板に主に存在するヘテロトリマー糖タンパク質のファミリーである。それらは、一方の側で隣り合う細胞レセプターとの結合相互作用を介して、および他のラミニン分子もしくは他のマトリクスタンパク質(例えば、コラーゲン、ニドゲンまたはプロテオグリカン)への結合によって機能する。そのラミニン分子はまた、細胞の挙動および機能に強く影響を及ぼし得る重要なシグナル伝達分子である。ラミニンは、細胞/組織表現型を維持するにあたって、ならびに組織修復および発生において細胞増殖および分化を促進するにあたって、両方において重要である。
【0046】
ラミニンは、大きな、マルチドメインのタンパク質であり、共通する構造組織化を伴う。そのラミニン分子は、種々のマトリクスおよび細胞相互作用機能を、1つの分子へと統合する。
【0047】
ラミニンタンパク質分子は、1つのα鎖サブユニット、1つのβ鎖サブユニット、および1つのγ鎖サブユニットを含み、全て、コイルドコイルドメインを通じてトリマーの状態に一緒に結合している。その12の公知のラミニンサブユニット鎖は、天然の組織において少なくとも15のトリマーラミニンタイプを形成し得る。そのトリマーラミニン構造内に、他のラミニンおよび基底板分子に向かう結合活性を有する同定可能なドメイン、ならびに膜結合レセプターがある。例えば、ドメインVI、IVb、およびIVaは、球状構造を形成し、ドメインV、IIIb、およびIlIa(これらは、システインリッチEGF様エレメントを含む)は、ロッド様構造を形成する。その3つの鎖のドメインIおよびIIは、三重鎖のコイルドコイル構造(ロングアーム)の形成に関与する。
【0048】
5つの異なるα鎖、3つのβ鎖および3つのγ鎖が存在し、これらは、ヒト組織において、少なくとも15の異なる組み合わせにおいて見出されている。これらの分子は、それらの歴史的発見に基づいて、ラミニン-1~ラミニン-15と称されるが、代替の命名法は、それらの鎖組成に基づいてそのアイソフォームを記載する(例えば、α1鎖、β1鎖およびγ1鎖を含むラミニン-111(以前はラミニン-1と称されていた))。ラミニンの4つの構造的に規定されたファミリーグループが同定されている。5つの同定されたラミニン分子の第1のグループは、全て、β1鎖およびγ1鎖を共有し、それらのα鎖組成(α1~α5鎖)によって変わる。5つの同定されたラミニン分子(ラミニン-521を含む)の第2のグループは、全て、β2鎖およびγ1鎖を共有し、繰り返すが、それらのα鎖組成によって変動する。同定されたラミニン分子の第3のグループは、1つの同定されたメンバー、ラミニン-332を有し、α3β3γ2という鎖組成を有する。同定されたラミニン分子の第4のグループは、1つの同定されたメンバー、ラミニン-213を有し、新たに同定されたγ3鎖を有する(α2β1γ3)。
【0049】
本開示の方法は、一般に、角化細胞を培養し、それらの拡大を促進することに関する。特に、上記方法は、純粋なラミニンマトリクス上で角化細胞を培養することを企図する。さらに、本明細書で開示される培養システムは、完全に異種由来物質非含有であることが企図される。
【0050】
接着性細胞は、代表的には、生存および再生するために2つのことを要求する:(1)その細胞の構造的支持を提供する基材またはコーティング;および(2)その細胞への栄養を提供する細胞培養培地である。その基材またはコーティング(1)は、代表的には、容器(例えば、ペトリ皿)において、またはマルチウェルプレートのウェルにおいて、層として形成される。その接着性細胞がプレートされるその基材またはコーティングは、ラミニンを含むことが特に企図される。
【0051】
一般に、本開示の細胞培養基材は、任意の有効なラミニンを含み得、ここでその有効性は、角化細胞がその基材上で生存し得るか否かによって決定される。その基材が、任意の1つの特定のラミニン(すなわち、1つの単一のラミニン)を含むことが具体的に企図されるが、他の成分が、その基材の中に存在してもよい。特定の実施形態において、そのラミニンは、ラミニン-511(LN-511)、ラミニン-521(LN-521)、ラミニン-411(LN-411)またはラミニン-421(LN-421)である。
【0052】
他の特定の実施形態において、その基材は、2つの特定のラミニン、すなわち、LN-511、LN-521、LN-411、および/またはLN-421のうちのいずれか2つの組み合わせを含み得る。特定の実施形態において、2つの特定のラミニンのその組み合わせは、LN-511およびLN-421である。その基材におけるLN-511 対 LN-421の重量比は、1:15~15:1、または1:10~10:1の範囲に及び得る。
【0053】
本明細書で使用される場合、用語「ラミニン-521(Laminin-521)」とは、α5鎖、β2鎖およびγ1鎖を一緒に結合することによって形成されるタンパク質をいう。この用語は、組換えラミニン-521および天然に存在する供給源に由来するヘテロトリマーラミニン-521の両方を包含すると解釈されるべきである。
【0054】
本明細書で使用される場合、用語「ラミニン-511(Laminin-511)」とは、α5鎖、β1鎖およびγ1鎖を一緒に結合することによって形成されるタンパク質をいう。この用語は、組換えラミニン-511および天然に存在する供給源に由来するヘテロトリマーラミニン-511の両方を包含すると解釈されるべきである。
【0055】
本明細書で使用される場合、用語「ラミニン-421(Laminin-421)」とは、α4鎖、β2鎖およびγ1鎖を一緒に結合することによって形成されるタンパク質をいう。この用語は、組換えラミニン-421および天然に存在する供給源に由来するヘテロトリマーラミニン-421の両方を包含すると解釈されるべきである。
【0056】
本明細書で使用される場合、用語「ラミニン-411(Laminin-411)」とは、α4鎖、β1鎖およびγ1鎖を一緒に結合することによって形成されるタンパク質をいう。この用語は、組換えラミニン-411および天然に存在する供給源に由来するヘテロトリマーラミニン-411の両方を包含すると解釈されるべきである。
【0057】
そのラミニンは、無傷のタンパク質またはタンパク質フラグメントであり得る。用語「無傷の(intact)」とは、α鎖、β鎖、およびγ鎖のドメインの全てから構成され、その3本の鎖が、ヘテロトリマー構造を形成するために一緒に結合されているタンパク質に言及する。そのタンパク質は、別個の鎖、フラグメント、または機能的ドメインに分解されていない。用語「鎖(chain)」は、そのラミニンタンパク質のα鎖、β鎖、またはγ鎖の全体に言及する。用語「フラグメント(fragment)」とは、別の分子またはレセプターへの結合活性を有する1個、2個、または3個の機能的ドメインを含む任意のタンパク質フラグメントをいう。しかし、鎖は、各鎖が3個より多くのこのようなドメインを有することから、フラグメントと見做されるべきではない。同様に、無傷のラミニンタンパク質は、フラグメントと見做されるべきではない。機能的ドメインの例としては、ドメインI、II、III、IV、V、VI、およびGドメインが挙げられる。
【0058】
その細胞培養基材は、細胞培養培地と組み合わせて使用される。本開示の細胞培養培地は、インビトロで角化細胞を培養するために特に適している。代表的には、細胞培養培地は、分化を阻害しかつ増殖を改善するために、多数のおよび多量の種々の増殖因子ならびにサイトカインを含む。
【0059】
非常に一般的に、本開示の細胞培養培地は、液相を含む化学的に規定された無血清培地である。以下の表1は、本開示の細胞培養培地に存在し得る種々のこのような成分の列挙、およびその成分が存在する場合には、その最小濃度および最大濃度を含む。その値は、指数表記で表される。例えば、「4.1E-01」は、4.1×10
-01として解釈されるべきである。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【0060】
その細胞培養培地の液相は、水、血清、またはアルブミンであり得る。
【0061】
上記の表1で列挙された成分または構成要素の多くは、必ずしも必要ではないか、または低濃度で使用され得る。
【0062】
その細胞培養培地は、インスリンまたはインスリン代用物を含み得ることが企図される。同様に、その細胞培養培地は、トランスフェリンまたはトランスフェリン代用物を含み得る。しかし、いくつかの具体的な実施形態において、その細胞培養培地は、(1)インスリンもしくはインスリン代用物、または(2)トランスフェリンもしくはトランスフェリン代用物、またはこれら2つの構成要素の任意の組み合わせを含まなくてもよいことが企図される。
【0063】
他の細胞培養培地は、増殖因子(例えば、インターロイキン-1β(IL-1βまたはカタボリン)、インターロイキン-6(IL6)、または色素上皮由来因子(PEDF)を含み得ることに注意すべきである。このような増殖因子は、本開示の細胞培養培地に存在しなくてもよい。
【0064】
使用され得る1つの具体的な細胞培養培地は、基礎培地である。基礎培地は、いかなる特別の栄養素補充物をも要求しない、微生物のうちの多くのタイプの増殖を促進する補充されていない培地である。特定の実施形態において、その基礎培地は、Lonzaから市販されている角化細胞増殖培地-化学的に規定(KGM-CD)基礎培地である。
【0065】
その基礎培地は、インスリンおよび増殖補充物を含み得る。そのインスリンは、組換えヒトインスリンであり得る。その基礎培地に存在するさらなる成分は、ヒト上皮増殖因子(hEGF);ヒドロコルチゾン;抗生物質および/もしくは抗真菌剤(例えば、ゲンタマイシンまたはアンホテリシンB);ならびに成長ホルモン(例えば、エピネフリンおよびトランスフェリン)を含み得る。
【0066】
LN-421またはLN-511のいずれかの基材および基礎培地を含むシステムは、完全に化学的に規定された環境およびフィーダー細胞または動物血清またはアポトーシスのいかなるインヒビターもなしの異種由来物質非含有条件において、角化細胞を支持するために極めて十分に機能する。フィーダー細胞の例としては、マウス線維芽細胞またはヒト皮膚線維芽細胞が挙げられる。
【0067】
細胞培養培地は、完全に規定されかつ異種由来物質非含有であることが企図される。その培地はまた、いかなる分化インヒビターも、分化誘導因子も、アポトーシスインヒビターも、または動物血清をも欠いているべきである。分化誘導因子の例としては、Nogginまたは角化細胞増殖因子が挙げられる。
【0068】
ラミニン基材と本開示の細胞培養培地との組み合わせは、ヒト角化細胞を効率的に支持し得る細胞培養システムを生じる。ラミニンおよび最小量の栄養素が、本質的に要求される全てである。この細胞培養培地と組み合わせて使用されるラミニンは、LN-511またはLN-421のいずれかであることが特に企図される。
【0069】
いくつかの実施形態における細胞培養システムは、その基材の中にLN-411、LN-421、LN-511、またはLN-521のうちの少なくとも1つを含み、フィーダー細胞および動物血清を使用する従来の方法によって示されるより長く、ヒト角化細胞を維持する。
【0070】
以下の実施例は、本開示をさらに例証する目的のものである。その実施例は例証に過ぎず、本開示に従って作製されるデバイスを、その中で示される材料、条件、またはプロセスパラメーターに限定することは意図されない。
【実施例】
【0071】
初代角化細胞単離
【0072】
ヒト表皮角化細胞(HEK)を、健康な被験体の形成外科手術からの手術廃棄物から、これらのドナーからのインフォームド・コンセントおよびSingapore General Hospitalの倫理委員会からの倫理審査による承認を得て、単離した。簡潔には、最大4cm2 組織を、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)(Lonza)中で洗浄し、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(Gibco)中の10mLの2.5mg/mL Dispase II(Roche)の中でインキュベートし、一晩4℃において静置した。翌日、表皮を手術用ピンセット(fine forceps)で真皮から機械的に分離し、0.05% トリプシン-EDTA溶液(Gibco)中で15分間、37℃においてインキュベートした。細胞が解離した際に、トリプシン活性を、その溶液を3容積の新鮮なDMEM(Gibco)で希釈することによって低減した。次いで、角化細胞を、遠心分離を通じて集め、角化細胞増殖培地-化学的に規定(KGM-CD)(Lonza)中に再懸濁した。
【0073】
初代角化細胞培養
【0074】
6ウェル組織培養プレート(Corning, Costar)を、4℃において2.5μg/cm2の滅菌LN-111、LN-332、LN-411、LN-421、LN-511またはLN-521(BioLamina AB)で一晩コーティングした。新たに単離されたヒト表皮角化細胞を、予めコーティングされたプレートに、最初は密度9×104/cm2において播種し、KGM-CD(Lonza)中、37℃、10% CO2で培養した。コントロールプレートに関しては、ヒト表皮角化細胞を、Rheinwald & Greenの方法に従って培養するか、またはコーティングされていないプレート上で培養するかのいずれかであった。簡潔には、新たに単離されたHEK(9×104/cm2)を、完全FAD培地:10% ウシ胎仔血清(FBS)(Hyclone)、5μg/mL インスリン(Insulatard(登録商標))、0.18mM アデニン(Calbiochem)、0.4μg/mL ヒドロコルチゾン(Calbiochem)、2nM トリヨードサイロニン(Sigma)、0.1nM コレラ毒素(Sigma)、10ng/mL 上皮増殖因子(Upstate)、および100 IU/mL-100μg/mL ペニシリン-ストレプトマイシン(Gibco)を補充した、DMEM(Gibco)およびHam’s F12(Gibco)培地(3:1比)中、致死的に照射した(60Gy)3T3-J2線維芽細胞のフィーダー層上で培養した。コンフルエントになった際に、無血清システムの中のHEK培養物を、TrypLE Select(Gibco Invitrogen)を使用して8~16分間、37℃でトリプシン処理した一方で、コントロールプレート上のHEK培養物を、0.05% トリプシン-EDTA(Gibco)で5分間、37℃でトリプシン処理した。コンフルエント未満の初代培養物を、1×104 細胞/cm2において連続的に継代した。累積集団倍加の数を、以下の式を使用して計算した:PD=(log N/N0)/log2(ここでNは、各継代で得られた細胞の総数を表し、N0は、実験開始時にプレートした細胞数を表す)。
【0075】
定量的PCR分析
【0076】
種々の継代におけるHEK細胞の全RNAを、RNeasy Micro Kit(Qiagen)を使用して、製造業者の説明書に従って精製した。その収量を、NanoDrop ND-2000分光光度計(NanoDrop Technologies)によって決定した。定量的RT-PCR分析のために、cDNAを、TaqMan Reverse Transcription Reagents Kit(Applied BioSystems)を使用して、製造業者の説明書に従って20μL反応混合物中の500ngの全RNAから合成した。リアルタイム定量的RT-PCRを、iQ SYBR Green Super mix(BioRad)および目的の遺伝使用のプライマーを含むアッセイミックス中で、合成したcDNAで行った。GAPDHを、正規化コントロールとして使用した。
【0077】
FACS分析
【0078】
細胞を種々の継代で集め、単一細胞懸濁物を、Fixation Reagent(Medium A; Life Technologies)で15分間、室温において固定し、FACS緩衝液(1×PBS中0.5% BSA、2mM EDTA)で洗浄し、FACS緩衝液中の5% ヤギ血清でブロッキングし、Permeabilization Reagent(Medium B; Life Technologies)中の一次抗体で15分間、室温において免疫染色し、FACS緩衝液中の1% ヤギ血清中で希釈した二次抗体で検出した。蛍光色素結合体化抗体に関して、固定した細胞を、Medium B中で希釈した抗体およびヒトFcRブロッキング試薬(Miltenyi Biotec, 1:50)とともに、30分間、室温でインキュベートした。染色した細胞をFACS緩衝液中に再懸濁し、FACS分析(MACSQuant VYB, Miltenyi Biotec)に供した。データを、MACSQuantify(Miltenyi Biotec)ソフトウェアを使用して分析した。
【0079】
器官型培養
【0080】
グリセロール保存した同種異系皮膚(EURO SKIN BANK, EA Beverwijk, Netherland)の表皮を、急速凍結および融解の数回のサイクルの後に機械的に除去した。次いで、この脱表皮化真皮(DED)を2×2cm平方に切断し、その真皮の細網側に、1cm直径のステンレス鋼リングの助けを借りて、5×105 ヒト皮膚線維芽細胞を播種した。その翌日、各DEDを裏返し、ラミニン上でまたはR&Gシステムでのいずれかで増殖させた2×105 HEK細胞を、個々のDED上で別個にCFAD培地中、7日間播種した。その後、培養物を空気-液体界面に14日間持ち上げて、層状にした。次いで、各サンプルを、凍結切片化のために処理し、H&E染色で染色した。
【0081】
RNA配列決定(RNA-seq)データの生成
【0082】
成人患者由来角化細胞を、3T3共培養(n=2)において、またはLN-421(n=4)もしくはLN-511(n=3)コーティング上で、のいずれかで別個に増殖させた。さらに、皮膚全体をまた単離した(n=3)。RNAを、培養プレートまたは皮膚全体のいずれかからmicroRNA精製キット(Norgen Biotek Corporation)で製造業者のガイドラインに従って単離した。RNAseqライブラリーを、Illumina Tru-Seq Stranded Total RNAを使用して、Ribo-Zero Goldキットプロトコルで、製造業者の説明書(Illumina, San Diego, California, USA)に従って調製した。ライブラリーをAgilent Bioanalyzer(Agilent Technologies, Palo Alto, CA)で検証し、希釈し、Illumina Cluster Stationを使用してIlluminaフローセルに適用した。配列決定を、Duke-NUS Genome Biology FacilityにあるIllumina HiSeq2000配列決定機で、ペアエンド100bpリードオプションで行った。
【0083】
RNA-seqリードを、質について評価し、hg38(Ensembl Gene annotation build 79)に対してSTAR 2.5.2bを使用して整列させ、RSEM 1.2.31を使用して定量した。培養したサンプルにおいて平均して4300万のリードをマッピングし、皮膚全体からのサンプルにおいて平均して1億1330万が、得られた。遺伝子註釈を、R library biomaRt 2.30.0を使用して、Ensemblバージョン79(hg38)から引き出した。リボソーム遺伝子(Ensembl遺伝子バイオタイプ「rRNA」)およびミトコンドリア遺伝子を除去した(合計で584遺伝子)。小さな非コードRNA遺伝子「RN7SL1」および「RN7SL2」を除去した。なぜならそれらの高発現レベルに起因して、それらは遺伝子発現分布のアウトライアーだったからである。遺伝子数を、R関数roundによって丸めた。予備フィルタリング工程を追加し、その中で、1より大きい計数を有する遺伝子のみを、全てのサンプルにわたって合計したときに維持した。
【0084】
RNA-seqデータ分析
【0085】
差次的発現分析および機能的富化を使用して、3つの培養法:3T3共培養、LN-421およびLN-511を比較した。差次的発現分析を、DESeq2 1.14.1で行った。DESeq2を、Wald検定を使用してペアワイズで実行し、技術的複製を折りたたみ(collapsing technical replicates)、患者効果を調節した(すなわち、共変数「Patient_ID」をモデルに追加した)。3つのペアワイズ比較を行い、LN-421サンプルを3T3に対して、LN-511を3T3に対して、およびLN-511をLN-421に対して、比較した。DESeq2結果関数では、そのalphaパラメーターを0.05に設定し、パラメーターの残りをデフォルトとして放置した。Benjamini & Hochberg(BH)調節したp値<0.05である場合、遺伝子を、有意に差次的に発現される(DE)と見做した。
【0086】
その差次的発現結果の機能富化分析を、Gene Set Enrichment Analysis(GSEA)ソフトウェア2-2.2.2で行った。DESeq2出力に含まれる全ての遺伝子を、HGNCシンボルにマッピングし、その相当するDESeq2出力Wald統計値(すなわち、log2倍数変化の推定値をその標準誤差で除算したもの)によってランク付けした。GSEAを実行して、Hallmark遺伝子セットの過剰提示(すなわち、十分に規定された生物学的状態またはプロセスを表す註釈付き遺伝子セットの群の集合体から導出された一貫して発現された遺伝子シグナチャー)を評価した。Hallmark遺伝子セットを、Molecular Signatures Database遺伝子セット5.1から得た。GSEAを10,000順列(permutation)での古典的なプレランクモード(pre-rank mode)で実行して、偽発見率(FDR)を評価した。そのGSEAの実行において、最大遺伝子セットサイズを5,000に設定し、最小クラスターサイズを10に設定した。遺伝子セットを、FDR<0.05である場合に富化されたと見做した。
【0087】
選択された遺伝子の発現レベルの可視化
【0088】
100万あたりの転写物(TPM)を、低く発現された電子を除去することによって予めフィルタにかけた(すなわち、TPMを、全サンプルにわたって合計し、1より大きいTPMを有する遺伝子のみを維持した)。TPMレベルを記録し(加算および1のオフセットの後)、R library limma 3.30.13からの関数removeBatchEffectを使用して、患者効果について調節した。
【0089】
培養表皮皮膚等価物の調製
【0090】
透明なフィブリンマットを、2mLまたは5mLのTISSEELキット(Baxter)を使用して、クリーンベンチの中で調製した。そのキットからのフィブリノゲンを、その推奨される再構成より2倍高く、1mMの塩化カルシウム(CaCl2)を含む1.1% 塩化ナトリウム溶液(NaCl)を使用して希釈した;この溶液を、その後、等容積においてそのキットによって提供されるトロンビンと混合し、1.1% NaClおよび1mM CaCl2溶液を使用して、3 IU/mLに希釈した。上記の混合した溶液を、10×10cm2 ディッシュへと均一に分与し、室温において完全な重合のために10~15分間静置し、使用するまで4℃において貯蔵した。そのフィブリンマット上でHEKを培養する間に線維素溶解を防止するために、アプロチニン(Trasylol, Bayer)を、各供給時に、最終濃度150 kIU/mLになるように培養培地中に添加した。移植のために、フィブリンマットを、2.5μg/cm2のLN-511またはLN-421のいずれかでコーティングし、4℃で一晩インキュベートしたか、または致死的にγ照射した3T3-J2線維芽細胞とともに播種し、37℃で一晩インキュベートした。次いで、HEKを、10,000細胞/cm2において翌日播種し、コンフルエントになるまで増殖させた。手術当日に、全ての移植片をそれぞれの無血清培地(ラミニンサンプルに関してはKGM-CDおよび3T3共培養サンプルに関しては新しいDMEM)で2回洗浄した。
【0091】
ヌードマウス上へのヒト表皮移植片の移植
【0092】
動物研究を、SingHealth動物実験委員会(IACUC)から承認されたプロトコルで行った。8~10週齢のヌード無胸腺BALB/c nu/nuマウスを、Animal Resource Centre(ARC, Perth, Western Australia)から購入し、皮膚移植片レシピエントとして使用した。マウスを収容し、SingHealth Experimental Medical Center(SEMC)において特定病原体がいない条件下で維持した。全てのマウスを実験手順前に少なくとも1週間、それらの環境に慣らした。
【0093】
手術当日に、その日の朝に(または少なくとも手術の1時間前に)およびその日の最後の別のときに開始して、マウスをブプレノルフィン(1mg/kg)で2回処置した。クリーンベンチの中で、マウスに、5% イソフルランを使用して個々にチャンバに入れて麻酔をかけた。維持のために、そのマウスを、手術手順用のマスクを通して吸入させることによって、2% イソフルランに供した。Barrandon et al., J. Investigative Dermatology, 91, 315-318(1988)によって開発された方法に従って、フラップ手順(flap procedure)を行った。簡潔には、そのマウスの背側皮膚表面を、アルコール消毒綿で2回、感染防止のために清拭した。2×2cm2の矩形のフラップをはさみで切開し、持ち上げた。そのフラップより僅かに大きいSafetac foam(Mepilex Lite dressing)のシートを、粘着性の側を下面にしてその動物の皮膚の下に挿入した。その後、フィブリン上の培養ヒト表皮皮膚等価物(細胞表面を下側に露出)を、Mepilex包帯の上に、細胞を保護するために、2層の不活性Silon-TSR包帯をその間に挿入して置いた。その移植片を1滴の無血清培地で湿らせた後に、フラップをその移植片の上に適所に戻して重ね、切開を、非吸収性6-0縫合糸で閉じて保護し、移植片を適所に固定した。
【0094】
その移植片を採取するために、その動物をCO2吸入で屠殺した。次いで、その移植片を採取し、4% 緩衝化パラホルムアルデヒド中で固定してパラフィン包埋するか、または液体窒素中で急速凍結するかのいずれかを行った。次いで、5μmの切片を集め、ヘマトキシリンおよびエオシン染色または免疫染色のいずれかのために処理した。
【0095】
実験データの統計分析
【0096】
データを、3~7個の異なる患者サンプルの平均±SEMとして提示する。種々の時点での相対的mRNA発現および表面マーカータンパク質発現の差異を、一元配置ANOVAで評価し、Tukeyの事後検定を使用して多重比較のために較正した。全てのグラフおよび統計分析を、Prism Software 7.0(GraphPad)によって生成した。差異を、p<0.05において有意と見做した。
【0097】
一般的な組織培養法
【0098】
12ウェル組織培養プレート(Costar)を、4℃において、ラミニンの製造業者の説明書(BioLamina AB)に従って、密度2μg/cm2の滅菌LN-411、LN-421、LN-511、およびLN-521で一晩コーティングした。他の場合には、6ウェル組織培養プレート(Corning, Costar)を、4℃において、2.5μg/cm2の滅菌LN-111、LN-332、LN-411、LN-421、LN-511またはLN-521(BioLamina AB)で一晩コーティングした。
【0099】
ヒト表皮角化細胞サンプルを、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中で洗浄し、10mLの、DMEM(Gibco)中2.5mg/mL Dispase II(Roche)の中で一晩4℃においてインキュベートした。翌日、表皮を手術用ピンセットで真皮から機械的に分離し、0.05% トリプシン-EDTA(Gibco)中で、37℃において15分間インキュベートした。細胞を解離した際に、トリプシン活性を、その溶液を3容積の新鮮なDMEMで希釈することによって低減した。次いで、角化細胞を、遠心分離を通じて集め、角化細胞増殖培地-化学的に規定(KGM-CD)(Lonza)中に再懸濁した。
【0100】
新たに単離されたヒト表皮角化細胞を、予めコーティングしたプレート(およびコントロールプレート)上に、最初は密度0.9×105~1×105 細胞/cm2において播種し、KGM-CD中、37℃、10% CO2で培養した。
【0101】
コントロールプレートに関しては、ヒト表皮角化細胞は、Rheinwald & Greenの方法に従って培養するか、またはコーティングされていないプレート上で培養するかのいずれかであった。簡潔には、新たに単離されたHEK(9×104/cm2)を、完全FAD培地:10% ウシ胎仔血清(FBS)(Hyclone)、5μg/mL インスリン(Insulatard(登録商標))、0.18mM アデニン(Calbiochem)、0.4μg/mL ヒドロコルチゾン(Calbiochem)、2nM トリヨードサイロニン(Sigma)、0.1nM コレラ毒素(Sigma)、10ng/mL 上皮増殖因子(Upstate)、および100 IU/mL-100μg/mL ペニシリン-ストレプトマイシン(Gibco)を補充した、DMEM(Gibco)およびHam’s F12(Gibco)培地(3:1比)中、致死的に照射した(60Gy)3T3-J2線維芽細胞のフィーダー層上で培養した。
【0102】
コンフルエントになった際に、その細胞を、TrypLESelect(Gibco Invitrogen)を使用することによって、8~16分間、37℃においてトリプシン処理した。その後、その角化細胞を、密度1×104 細胞/cm2において慣用的に継代した。累積集団倍加の数を、以下の式を使用して計算した:PD=(log N/N0)/log2(ここでNは、各継代で得られた細胞の総数を表し、N0は、実験開始時にプレートした細胞数を表す)。
【0103】
実施例1
ヒト皮膚サンプルを、Singapore General Hospitalからの同意を得て、ドナーから得た。簡潔には、サンプルをOCT媒体中に包埋し、5μm(マイクロメートル)切片において凍結切片を作製し、個々のラミニンアイソフォーム免疫蛍光染色およびDAPIでの対比染色に供した。
【0104】
ヒト皮膚基底膜でのラミニンアイソフォーム染色は、ラミニンα1、α3、α5、β1、β2、β3、γ1、およびγ2アイソフォームに関して陽性を示した。ラミニンα2およびα4アイソフォームは、基底膜に存在しなかったが、ラミニンα4は、血管上で陽性染色された。ラミニンγ3アイソフォームは、非特異的染色を示した。これらの結果は、LN-332、LN-511、およびLN-521が表皮下基底膜において発現されたことを示す。
【0105】
実施例2
次に、皮膚分節切片において発現されるラミニンアイソフォームのmRNA発現レベルを、リアルタイムPCRを通じて得た。ラミニンα3、α5、β1、β2、β3、β4、γ1、およびγ2アイソフォームは、陽性に発現された。
【0106】
実施例3
上記の方法を使用して調製され、新たに単離されたヒト表皮角化細胞を、ラミニン基材(LN-332、LN-411、LN-421、LN-511、LN-521)上で培養した。LN-111基材、およびいかなるラミニンコーティングもなしの組織培養ディッシュを、陰性コントロールとして供した。3T3線維芽細胞とともに共培養した角化細胞を、陽性コントロールとして使用した。次いで、細胞を、KGM-CD基礎培地中で培養した。ラミニン上の全てのHEK培養を、Rheinwald & Greenの3T3フィーダー層を使用するいかなる初期の拡大もなしに、動物性のものがなく規定されたKGM-CD細胞培養システムにおいて行った。
【0107】
図1A~1Jに示されるように、LN-411、LN-421、LN-511、またはLN-521上で培養したヒト角化細胞は、コントロール基材上で培養したそれら角化細胞と比較して、より良好に事が運んでいた。陰性コントロール(コーティングなし)、LN-111、およびLN-332上で培養した細胞は、生き延びなかった。対照的に、角化細胞は、LN-411、LN-421、LN-511、およびLN-521、ならびに陽性コントロール(3T3)上に付着および増殖できた。LN-411およびLN-421上で培養した角化細胞はコロニーを形成した一方で、LN-511およびLN-521上で培養したものは、個々の実体として付着し増殖するようであった。LN-421およびLN-511の両方を組み合わせて培養した角化細胞は、十分に増殖した。
【0108】
角化細胞を計数し、LN-511、LN-421、および陽性コントロール上で培養した角化細胞の増殖速度を、
図2A~2Cに示されるようにグラフ化した。集団倍加を、PD=3.32×log(採取した細胞数/播種した細胞数)として計算した。これらのグラフは、LN-511およびLN-421が、角化細胞増殖およびコロニー形成能力を支持できたことを示す。個々には、LN-511およびLN-421は、LN-521およびLN-411と比較して、長期間培養において角化細胞をより良好に維持できた。これは、
図2Dにおいて、それらそれぞれの累積集団倍加に反映される。
【0109】
実施例4
LN-511およびLN-421上で培養した角化細胞の遺伝的安定性を試験するために、角化細胞の核型決定を、早期(継代1)および長期培養(継代9)において行った。3T3とともに共培養した角化細胞を、それぞれの継代におけるコントロールとして使用した。LN-511およびLN-421上で培養した角化細胞は、継代1および継代9の両方において、正常な核型決定を示し、観察可能な転座または染色体変化は存在しなかった。
【0110】
実施例5
定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)を、LN-511またはLN-421のいずれかのラミニン基材上にプレートしたヒト表皮角化細胞で行った。qPCRを、3T3コントロール基材と比較して、角化細胞前駆細胞マーカー(KRT5、KRT14)および分化マーカー(KRT1、KRT10)の発現プロフィールを観察するために、継代1、継代4、継代7、および継代10において行った。
【0111】
図3A~3Dにおいて示されるように、前駆細胞マーカーおよび分化マーカーの相対的発現のqPCR発現プロフィールを、10継代にわたってGAPDHに対して正規化した。全体的に、LN-511(丸)またはLN-421(三角形)のいずれかの上で培養した角化細胞の各基底/分化マーカーの発現プロフィールは、コントロール基材(3T3、四角形)と類似の傾向を示した。初期の継代では、LN-511およびLN-421の両方の上で増殖された角化細胞は、KRT5およびKRT14を高度に発現した。分化マーカー発現の始まりは、継代7の後に開始し、ここでKRT1およびKRT10は、徐々に増大した。
【0112】
初期の継代(P1)では、LN-511またはLN-421基材上で培養した細胞を固定し、特異的角化細胞マーカーで免疫染色し、DAPIで対比染色した。これらは、
図4A~4Nで示される。初期の継代(P1)での角化細胞は、正常な基底細胞マーカー(KRT5、KRT14、KRT15、p63)および低い分化マーカー(IVL、KRT10、KRT1)を発現した。
【0113】
実施例4
コンフルエントに達した後、細胞を集め、前駆細胞マーカー(KRT5、KRT14、ITGA6、ITGB1、およびKRT15)または分化マーカー(KRT1、KRT10)に関して蛍光活性化セルソーティング(FACS)分析に供した。これを、LN-511もしくはLN-421のいずれかのラミニン基材上でプレートしたか、または3T3線維芽細胞フィーダー細胞とともに共培養した細胞について行った。
【0114】
図5は、各基材上での各マーカーに関する結果を示すグラフである。そのFACS分析は、LN-511またはLN-421のいずれかの上で培養した角化細胞が、コントロール(3T3)と匹敵する、高レベルの基底マーカー(90%陽性を超える)および低発現の分化マーカーを発現することを示した。この結果は、これらの基底マーカーおよび転写因子p63(これは、角化細胞増殖を調節することが公知であり、ヒト皮膚において角化細胞の発生および維持のために必要とされる)の免疫染色によって別個に確認された。
【0115】
実施例5
LN-421、LN-511上でおよび3T3共培養システムを使用して増殖されたHEKのトランスクリプトームを、RNA配列決定(RNA-seq)によって調査した。その結果を、
図6A~6Cに示す。
【0116】
図6Aおよび
図6Bに示されるように、基底マーカーおよび分化マーカーは、異なる3つの培養システムにおいて類似の発現レベルを示した。これは、その試験したプラットフォーム上で増殖させた細胞が全て前駆細胞であることを確認した。全体的に、LN-421およびLN-511上で増殖させた角化細胞は、類似のトランスクリプトームプロフィールを示した(Spearmanのランク付けされた相関は0.99および60のみの差次的に発現された遺伝子(偽発見率、FDR<0.05))。
【0117】
より多くの差異が、その2つのラミニン上で増殖させた角化細胞のトランスクリプトームと、3T3共培養システムを使用して増殖させた細胞のトランスクリプトームプロフールとを比較する場合に見出された(3T3共培養とそれぞれ比較した場合に、LN-511およびLN-421上で増殖させた角化細胞の間でSpearmanのランク付けされた相関は0.94および0.95で、7,694および7,587の差次的に発現された遺伝子)。これは、
図6Cに示される。LN-421またはLN-511上で増殖させた角化細胞では、顕著なダウンレギュレーション(FDR<10
-6)は、「上皮間葉転換」およびいくつかの炎症促進性経路(例えば、「インターフェロンα応答」、「インターフェロンγ応答」および「NFKBを介するTNFAシグナル伝達」)に関与する遺伝子について観察された。炎症促進性経路は、線維芽細胞と共培養した場合に、ヒト皮膚角化細胞においてアップレギュレートされることが公知である。ダウンレギュレーションはまた、いくつかの発生経路に関与する遺伝子において観察された(例えば、それぞれ、LN-421 FDR=9×10
-6およびLN-511 FDR=1×10
-4の「TGFβシグナル伝達」、ならびにそれぞれ、LN-421 FDR=4×10
-4およびLN-511 FDR=1×10
-2の「WNTβカテニンシグナル伝達」)。これらの角化細胞はまた、他の細胞プロセスの中でも、「MYC標的」および細胞周期(すなわち、「E2F標的」および「GM2チェックポイント」)の強力なアップレギュレーション(FDR<10
-6)を示した。MYCは、角化細胞接着および増殖を調節することが示された。まとめると、このデータは、LN-511およびLN-421上で増殖させた角化細胞のトランスクリプトームが、3T3共培養システムを使用して増殖させた細胞より炎症性が少なく、より大きな増殖特徴を示すようであったことを示唆する。
【0118】
実施例6
グリセロール保存した同種異系皮膚(EURO SKIN BANK, EA Beverwijk, The Netherlands)の表皮を、急速凍結および融解の数サイクルの後に、機械的に除去した。次いで、この脱表皮化真皮(DED)を2cm×2cm平方へと切断し、その真皮の細網側に、1cm直径のステンレス鋼リングの助けを借りて、5×105 ヒト皮膚線維芽細胞を播種した。その翌日、各DEDを裏返し、LN-421、LN-511上で予め増殖させるか、または3T3とともに共培養するかのいずれかを行った第2の角化細胞培養物を、cFAD培養培地中の各DED上に、2×105 細胞で播種した。そのcFAD培養培地は、10% ウシ胎仔血清、5μg/mL インスリン、0.18mM アデニン、0.4μg/mL ヒドロコルチゾン、0.1nM コレラ毒素、2nM トリヨードサイロニン、10ng/mL 上皮増殖因子、および50 IU/mL ペニシリン-ストレプトマイシンを含む、3:1の比のDMEMおよびHam’s F12の混合物であった。培養物を、この培地中に7日間浸漬して増殖させ、次いで、それらを、空気-液体界面に14日間持ち上げて、層状にした。各サンプルを、凍結切片化のために処理した。凍結した切片を5μm厚に切断し、H&E染色で染色した。
【0119】
得られた断面を、
図7A~7Cに示す。このインビトロ機能アッセイは、LN-511およびLN-421上で培養した角化細胞が、従来のRheinwald & Greenの方法に匹敵する、厚みのある正常な層状になった表皮を形成し得ることを示した。
【0120】
実施例7
これらのインビトロ結果をさらに検証するために、これらの細胞の機能性を、Barrandon et al., J. Investigative Dermatology, 91, 315-318 (1988)によって記載されるとおりのフラップ移植法を使用することによって、インビボでさらに調査した。この方法は、移植片生存を評価するために、およびレシピエント動物の表皮に由来する移植片によって生成されるヒト表皮間を区別するために、適している。なぜならそれは、従来の移植片と比較して、移植片収縮を最小限にするからである。移植後14日間、LN-511、LN-421上で培養されるか、または3T3共培養を使用するかのいずれかであった角化細胞によって生成したヒト表皮を、採取し、切片にし、ヘマトキシリン/エオシン(H&E)染色および免疫染色の両方によって特徴づけた。
【0121】
H&E染色から、LN-511またはLN-421のいずれかの上で培養したHEKは、完全に層状になった表皮層をインビボで生成できることを明らかにした。
図8A~8Cを参照のこと。その形成された表皮がヒト起源のものであって、宿主に由来するものではないことを示すために、その切片を、抗ヒトKu80核染色抗体で免疫染色した。次に、基底マーカーおよび分化マーカーの免疫蛍光染色から、LN-511またはLN-421のいずれかの上で培養した角化細胞は、インビボで正常に層状になることを明らかにした。絶え間ないラミニンγ2鎖発現は、LN-511およびLN-421の両方の上で生成されたヒト表皮の基底層の下で観察された。これは、これらの移植したHEKが、BMタンパク質(同様に、上皮ラミニン、LN-332)を分泌し、機能的な表皮層を形成したことを示唆する。
【0122】
概要
本開示は、異種由来物質非含有の完全に規定されたシステムにおいてヒト表皮角化細胞を培養するための方法を提供する。無血清培地中でヒト表皮角化細胞を培養および増殖させるための現行の方法は、それらを集め、特徴づける前に、細胞生存のためにフィーダーシステムにおける最初の拡大を要求する。しかし、これらの方法は、角化細胞増殖を長期間培養において維持できない(すなわち、5回の継代未満の細胞が代表的には特徴付けにおいて使用される)。本開示で記載される方法は、3T3フィーダーシステムを使用することによる最初の拡大を経ることなく、異種由来物質非含有の完全に規定されたシステムにおいて角化細胞のより一貫したかつ強い拡大を可能にする。
【0123】
図1A~1Jを参照すると、LN-511またはLN-421のいずれかを有する基材上で培養した角化細胞が、ラミニン、LN-411、またはLN-521のない基材上で培養したそれら角化細胞より大きく効率的に増殖した。
【0124】
図5を参照すると、LN-421およびLN-511上で増殖された角化細胞は、コントロールと比較して、高レベルの基底マーカーおよび低発現の分化マーカーを有した。それによって、化学的に規定された異種由来物質非含有の基礎培地中、LN-421またはLN-511上で角化細胞を培養することは、それらの増殖能力を保ちながら、動物細胞を含む培養において角化細胞を増殖させる代替であり得ることを意味する。従って、この特定のシステムは、任意のヒト細胞培養物を動物病原体に曝す危険性を低減し、その培養した細胞生成物が、あまり重度でない熱傷および慢性的な創傷の管理において安全に使用されることを可能にする。なぜならそのシステムは、異種由来物質非含有で、かつ完全に規定されているからである。
【0125】
さらに、上記で開示される方法を使用して増殖された表皮角化細胞は、分化マーカーは7回目の(7)継代後に出現し始めるが、少なくとも10継代にわたって維持され得、それによって、現行の方法が支持し得る代表的な5回の(5)継代を上回って改善する。
【0126】
これらの方法は、培養された治療用細胞製品(これは、安全性の懸念に起因して、重大な熱傷の症例および重篤な視力喪失にのみ現在は制限されている)が、軽度の熱傷および慢性的な創傷の管理において安全に使用されることを可能にする。これらの細胞製品はまた、少なくとも1つの上皮欠損を有するヒト身体において(例えば、眼、膀胱、口腔、腸などにおいて)任意の傷害または状態を処置するために潜在的に使用され得る。さらに、ドナー部位に病的状態を引き起こすことなく、培養された移植片での創傷被覆の可能性が存在し、それによって、このような患者のクオリティー・オブ・ライフが改善される。
【0127】
本開示は、例示的実施形態に言及して記載されてきた。明らかに、改変および変更が、前述の詳細な説明を読んで理解した際に想起される。本開示は、添付の請求項またはその均等物の範囲内にある限りにおいて、全てのこのような改変および変更を含むと解釈されることが意図される。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
角化細胞を拡大するための方法であって、該方法は、
角化細胞を、α4鎖またはα5鎖を含むラミニンでコーティングされた基材上にプレートする工程、
を包含する方法。
(項目2)
前記α4鎖またはα5鎖を含むラミニンは、ラミニン-411、ラミニン-421、ラミニン-511、またはラミニン-521のうちの少なくとも1つである、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記角化細胞を、異種由来物質非含有の細胞培養培地中で培養する工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目4)
新しく単離された角化細胞を、前記基材上にプレートする工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記角化細胞を、約0.7×10
5
/cm
2
~約1.2×10
5
/cm
2
の密度で前記基材上にプレートする工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記角化細胞を、約30℃~約40℃の温度で前記基材上で培養する工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記角化細胞を、約5% CO
2
~約15% CO
2
を含む雰囲気中で培養する工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目8)
前記角化細胞を周期的に解離し、継代する工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目9)
前記角化細胞の継代は、1 細胞~約1.5×10
4
細胞/cm
2
の密度に達した際に起こる、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記基材は、ラミニン-511およびラミニン-421の両方でコーティングされる、項目1に記載の方法。
(項目11)
ラミニン-511 対 ラミニン-421重量比は、15:1~1:15である、項目10に記載の方法。
(項目12)
角化細胞を拡大するためのシステムであって、該システムは、
ラミニン-411、ラミニン-421、ラミニン-511、またはラミニン-521を含む基材;および
細胞培養培地、
を含むシステム。
(項目13)
前記細胞培養培地は、異種由来物質非含有である、項目12に記載のシステム。
(項目14)
前記細胞培養培地は、いかなる動物血清をも含まない、項目12に記載のシステム。
(項目15)
前記システムは、いかなるフィーダー細胞をも含まない、項目12に記載のシステム。
(項目16)
前記基材は、ラミニン-511およびラミニン-421の両方を含む、項目12に記載のシステム。
(項目17)
角化細胞をインビトロで拡大するための細胞培養キットであって、該キットは、
ラミニン-411、ラミニン-421、ラミニン-511、またはラミニン-521のコーティングを有する細胞培養基材;および
無血清細胞培養培地、
を含むキット。
(項目18)
患者の熱傷による創傷を処置するための方法であって、該方法は、
該患者のドナー部位から採取した角化細胞を、ラミニン-411、ラミニン-421、ラミニン-511、またはラミニン-521でコーティングされた基材上にプレートする工程;
該角化細胞を該基材上で拡大する工程;および
該熱傷による創傷を、該基材からの該角化細胞で覆う工程、
を包含する方法。
(項目19)
患者の慢性的な創傷を処置するための方法であって、該方法は、
該患者のドナー部位から採取した角化細胞を、ラミニン-411、ラミニン-421、ラミニン-511、またはラミニン-521でコーティングされた基材上にプレートする工程;
該角化細胞を該基材上で拡大する工程;および
該創傷を、該基材からの該角化細胞で覆う工程、
を包含する方法。
(項目20)
上皮のみが傷ついた、および/または上皮欠損が傷害の構成要素である場合を含む、ヒト身体における任意の傷害または状態を処置するための方法であって、該方法は、
該患者のドナー部位から採取した角化細胞を、ラミニン-411、ラミニン-421、ラミニン-511、またはラミニン-521でコーティングされた基材上にプレートする工程;
該角化細胞を、該基材上で拡大する工程;および
該上皮欠損を、該基材からの該角化細胞で覆う工程、
を包含する方法。
(項目21)
前記ヒト身体における傷害または状態は、眼、膀胱、口腔、または腸にある、項目20に記載の方法。