(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】車両用冷却装置及びこれを用いた冷却方法
(51)【国際特許分類】
B60K 11/04 20060101AFI20230501BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20230501BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20230501BHJP
H01M 10/6569 20140101ALI20230501BHJP
H01M 10/663 20140101ALI20230501BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20230501BHJP
H01M 10/633 20140101ALI20230501BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20230501BHJP
B60H 1/32 20060101ALI20230501BHJP
B60H 1/00 20060101ALI20230501BHJP
F25B 5/02 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
B60K11/04 G
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/6569
H01M10/663
H01M10/6556
H01M10/633
B60K1/04 Z
B60H1/32 621C
B60H1/00 101Z
F25B5/02 530K
(21)【出願番号】P 2020083784
(22)【出願日】2020-05-12
【審査請求日】2022-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】500309126
【氏名又は名称】株式会社ヴァレオジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000545
【氏名又は名称】弁理士法人小竹アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】赤星 光彦
(72)【発明者】
【氏名】根本 記明
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-184108(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0281564(US,A1)
【文献】特開2016-035378(JP,A)
【文献】特開2014-066410(JP,A)
【文献】特開2019-155999(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/04
H01M 10/613
H01M 10/625
H01M 10/6569
H01M 10/663
H01M 10/6556
H01M 10/633
B60K 1/04
B60H 1/32
B60H 1/00
F25B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、車両走行用の電力を蓄電可能とするバッテリ(13)を冷却する機能を備えた車両用冷却装置(1)であって、
冷媒を圧縮する圧縮機(2)と、
前記圧縮機(2)で圧縮された冷媒を放熱する放熱器(3)と、
車両の前席空間に送風される空気を冷却する前席用蒸発器(21)と、
前記前席用蒸発器(21)から前記圧縮機(2)に向かう冷媒の温度、または冷媒の温度及び圧力を感知して前記放熱器(3)で放熱された冷媒の前記前席用蒸発器(21)への供給流量を自律的に調節する前席用機械式膨張装置(22)と、
車両の後席空間に送風される空気を冷却する後席用蒸発器(31)と、
前記後席用蒸発器(31)から前記圧縮機(2)に向かう冷媒の温度、または冷媒の温度及び圧力を感知して前記放熱器(3)で放熱された冷媒の前記後席用蒸発器(31)への供給流量を自律的に調節する後席用機械式膨張装置(32)と、
前記バッテリ(13)を冷却可能なバッテリ用蒸発器(11)と、
前記放熱器(3)で放熱された冷媒の前記バッテリ用蒸発器(11)への供給流量を調節する電子式膨張装置(12)と、を有する冷凍サイクル(100)を備え、
前記冷凍サイクル(100)は、
前記放熱器(3)より下流側の冷媒管路(101)に設けられ、前記電子式膨張装置(12)を介して前記バッテリ用蒸発器(11)へ向かう管路(101a)と後述する第2分岐点(B2)へ向かう管路(101b)とを分岐させる第1分岐点(B1)と、
前記前席用機械式膨張装置(22)を介して前記前席用蒸発器(21)へ向かう管路(101c)と前記後席用機械式膨張装置(32)を介して前記後席用蒸発器(31)へ向かう管路(101d)とを分岐させる第2分岐点(B2)と、
前記圧縮機(2)より上流側の冷媒管路(102)に設けられ、前記バッテリ用蒸発器(11)から流出した冷媒の管路(102a)と後述する第2合流点(J2)を通過した冷媒の管路(102b)とを合流させる第1合流点(J1)と、
前記前席用蒸発器(21)から流出した冷媒の管路(102c)と前記後席用蒸発器(31)から流出した冷媒の管路(102d)とを合流させる第2合流点(J2)と、
前記第1分岐点(B1)と前記第2分岐点(B2)との間の冷媒管路(101b)、及び、前記第1合流点(J1)と前記第2合流点(J2)との間の冷媒管路(102b)の少なくとも一方に配置された開閉弁(5,6)と、
を有することを特徴とする車両用冷却装置。
【請求項2】
前記バッテリ用蒸発器(11)は、前記バッテリ(13)と熱的に結合されていることを特徴とする請求項1記載の車両用冷却装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両用冷却装置を用いた冷却方法であって、
前記前席空間および前記後席空間の冷却が不要であり、且つ、前記バッテリ(13)の冷却要請がある場合には、前記開閉弁(5,6)を閉とし、
前記前席空間および前記後席空間の冷却要請がある場合には、前記開閉弁(5,6)を開とすることを特徴とする車両用冷却装置を用いた冷却方法。
【請求項4】
前記バッテリ(13)の冷却要請が無い場合には、前記電子式膨張装置(12)を閉とすることを特徴とする請求項3記載の車両用冷却装置を用いた冷却方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両走行用の電力を蓄電可能とするバッテリと車両の前席空間および後席空間とを冷却するために用いられる車両用冷却装置、及びこれを用いた冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来において、車両の前席空間と後席空間を冷却すると共に、車両走行用のバッテリを冷却することが可能な車両用冷却装置として、例えば、特許文献1に示される冷却装置が知られている。
これは、前席空間と後席空間とを冷却する空調用冷凍サイクルを、前席用空調ユニットに設けられた前席側膨張弁および前席側蒸発器と、後席用空調ユニットに設けられた後席側膨張弁および後席側蒸発器と、を圧縮機および凝縮器に対して並列的に設け、圧縮機で圧縮された冷媒を凝縮器で放熱した後、前席側膨張弁を介して前席側蒸発器へ供給すると共に後席側膨張弁を介して後席側蒸発器へ供給するようにしている。また、車両に搭載されるバッテリを冷却するために、空調ケースとは別に設けられた電池収納ケースにバッテリを収納し、この電池収容ケースにバッテリへ送風するための電池冷却用送風機を設け、電池冷却用送風機により、後席側空調ユニットの後席側蒸発器で冷却された冷風を冷風吸入通路を介して電池収納ケースに取り入れ、バッテリへ送風するようにしている。
【0003】
しかしながら、上述の車両用冷却装置においては、バッテリを冷却するために、後席側空調ユニットで冷却した冷風を電池収納ケースに取り入れ、バッテリの冷却風としているので、後席側空調ユニットが稼働していることが前提となる。即ち、後席に乗員が搭乗している場合、或いは、搭乗することが予定される場合(プレ空調の場合)にバッテリへ冷却風を供給することは可能となる。
【0004】
一方、車両に乗員が搭乗していない場合においてバッテリを充電する場合には、必ずしも車室を冷房する必要はないが、バッテリは充電により発熱する場合があるため、バッテリを冷却させる必要がある。このため、上述の車両用冷却装置においては、バッテリを冷却させるためには、乗員の有無に拘わらず少なくとも後席側空調ユニットを稼働させる必要があり、省エネの観点から好ましくない。
【0005】
また、上述の車両用冷却装置にあっては、後席側空調ユニットで生成した冷風を電池冷却用送風機で電池収納ケースに取り入れ、バッテリへ送風する手法を採用しているので、バッテリの冷却効率の点でも十分ではなく、また、バッテリを冷却するために、バッテリに向けて冷風を供給する専用の装置、すなわち、電池冷却用送風機とこの送風機によって送風された空気をバッテリに導くダクト又はケースが必要となり、省スペース化の点でも、改善の余地がある。
【0006】
このような不都合に鑑み、バッテリを冷却するためのバッテリ用蒸発器(電池用熱交換器)を設け、空調用冷凍サイクルの冷媒をバッテリ蒸発器にも供給可能とするバッテリ冷却装置を構築することは有用であり、例えば、下記する特許文献2に示されるような冷却装置が提案されている。
【0007】
これは、電子式の冷房用膨張弁で減圧された冷媒を室内蒸発器に供給する経路と、電子式の電池用膨張弁で減圧された冷媒を電池用熱交換器に供給する経路と、を圧縮機、室内凝縮器、及び室外熱交換器に対して並列的に接続し、また、室外熱交換器から流出した冷媒を冷房用膨張弁へ流入する冷媒回路と電池用膨張弁へ流入する冷媒回路とに切り換える電池用開閉弁を設け、圧縮機から吐出した冷媒を室内凝縮器および室外熱交換器にて放熱させ、冷房用膨張弁で減圧した後に室内蒸発器で蒸発させる場合と、圧縮機から吐出された冷媒を室内凝縮器および室外熱交換器にて放熱させ、電池用膨張弁で減圧させた後に電池用熱交換器にて蒸発させる場合と、を切り替え可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2007-137127号公報
【文献】特開2014-228190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、このような構成においては、冷房用膨張弁や電池用開閉弁を開閉制御することで、車室内空調とは独立にバッテリを冷却することは可能であるが、膨張弁として高価な電子式膨張弁(電子式膨張装置)を用いなければならないため、車両用冷却装置としてコストを抑えることが難しくなるという不都合がある。特に、前席空間と後席空間とを独立させて空調する所謂デュアルエアコンにおいては、各空間を冷却する蒸発器がそれぞれ必要となるため、室内冷却用の蒸発器毎に電子式膨張装置が用いられると、冷却装置としてコストを抑えることが一層難しくなる。
【0010】
また、上述の装置においても、バッテリの冷却は、電池用熱交換器で生成した冷気を送風機でバッテリへ送風する空冷式となるので、バッテリの冷却効率の点でも十分ではなく、また、送風機や送風された空気をバッテリに導くダクト又はケースが必要となり、省スペース化の点でも、依然として改善の余地がある。
【0011】
さらに、車室の前席空間と後席空間とを別々に冷却可能とするために前席用蒸発器と後席用蒸発器とを設ける構成においては、バッテリ用蒸発器へ冷媒を供給する経路を、前席用蒸発器や後席用蒸発器に冷媒を供給する経路と切り離して形成することが要請されるため、バッテリ蒸発器をどのように冷凍サイクルに組み込むかは非常に重要なポイントとなる。
【0012】
本発明は係る事情に鑑みてなされたものであり、バッテリの冷却と車室の前席空間および後席空間とを冷却することが可能な車両用冷却装置において、高価な電子式膨張装置を用いることなく車室を冷却できるようにしつつ、前席空間および後席空間とは独立させてバッテリを冷却させることで効率的なバッテリ冷却を行うことが可能な車両用冷却装置とこれを用いた冷却方法を提供することを主たる課題としている。
また、上記課題を達成した上で、さらにバッテリの冷却を効果的に行うと共に、省スペース化を図ることができれば、一層好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を達成するために、本発明に係る車両用冷却装置は、車両に搭載され、車両走行用の電力を蓄電可能とするバッテリ(13)を冷却する機能を備えた車両用冷却装置(1)であって、
冷媒を圧縮する圧縮機(2)と、前記圧縮機(2)で圧縮された冷媒を放熱する放熱器(3)と、車両の前席空間に送風される空気を冷却する前席用蒸発器(21)と、前記前席用蒸発器(21)から前記圧縮機(2)に向かう冷媒の温度、または冷媒の温度及び圧力を感知して前記放熱器(3)で放熱された冷媒の前記前席用蒸発器(21)への供給流量を自律的に調節する前席用機械式膨張装置(22)と、車両の後席空間に送風される空気を冷却する後席用蒸発器(31)と、前記後席用蒸発器(31)から前記圧縮機(2)に向かう冷媒の温度、または冷媒の温度及び圧力を感知して前記放熱器(3)で放熱された冷媒の前記後席用蒸発器(31)への供給流量を自律的に調節する後席用機械式膨張装置(32)と、前記バッテリ(13)を冷却可能なバッテリ用蒸発器(11)と、前記放熱器(3)で放熱された冷媒の前記バッテリ用蒸発器(11)への供給流量を調節する電子式膨張装置(12)と、を有する冷凍サイクル(100)を備え、
前記冷凍サイクル(100)は、前記放熱器(3)より下流側の冷媒管路(101)に設けられ、前記電子式膨張装置(12)を介して前記バッテリ用蒸発器(11)へ向かう管路(101a)と後述する第2分岐点(B2)へ向かう管路(101b)とを分岐させる第1分岐点(B1)と、前記前席用機械式膨張装置(22)を介して前記前席用蒸発器(21)へ向かう管路(101c)と前記後席用機械式膨張装置(32)を介して前記後席用蒸発器(31)へ向かう管路(101d)とを分岐させる第2分岐点(B2)と、前記圧縮機(2)より上流側の冷媒管路(102)に設けられ、前記バッテリ用蒸発器(11)から流出した冷媒の管路(102a)と後述する第2合流点(J2)を通過した冷媒の管路(102b)とを合流させる第1合流点(J1)と、前記前席用蒸発器(21)から流出した冷媒の管路(102c)と前記後席用蒸発器(31)から流出した冷媒の管路(102d)とを合流させる第2合流点(J2)と、前記第1分岐点(B1)と前記第2分岐点(B2)との間の冷媒管路(101b)、及び、前記第1合流点(J1)と前記第2合流点(J2)との間の冷媒管路(102b)の少なくとも一方に配置された開閉弁(5,6)と、
を有することを特徴としている。
【0014】
したがって、前席空間および後席空間を冷却すると共に車両走行用のバッテリを冷却する機能を備えた車両用冷却装置において、前席および後席用の蒸発器への冷媒流量を調節する膨張装置を機械式膨張装置とした上で、バッテリのみを冷却することができるようになる。このため、室内冷却用の構成部品を廉価な部品で対応できるようにすると共に、バッテリ冷却を単独運転できるようにしてバッテリ冷却の効率を高めることが可能となる。
【0015】
第1分岐点(B1)と第2分岐点(B2)との間の冷媒管路、及び、第1合流点(J1)と第2合流点(J2)との間の冷媒管路の少なくとも一方に開閉弁を設けず、この開閉弁によって前席用蒸発器および後席用蒸発器への冷媒供給を停止させない場合には、前席用および後席用の膨張装置として機械式膨張装置を用いていると、少なからず冷媒がこの機械式膨張装置を介して前席用蒸発器や後席用蒸発器へ流出し、蒸発器を凍結させる不都合が考えられる。機械式膨張装置では、冷媒の流路を絞り状態とすることは可能であるが、完全に閉状態とすることが困難なためである。
【0016】
このような不都合を回避するために、電子式膨張装置を用いて完全に閉状態を形成することも考えられるが、前席用蒸発器と後席用蒸発器のそれぞれに対応させて電子式膨張装置を用いる場合には、前述した如く、コストを抑えることが難しくなる。そこで、前席用蒸発器と後席用蒸発器のそれぞれに対応する膨張装置は機械式膨張装置とした上で、第1分岐点(B1)と第2分岐点(B2)との間の冷媒管路、及び、第1合流点(J1)と第2合流点(J2)との間の冷媒管路の少なくとも一方に開閉弁を設け、この開閉弁を閉とすることによって前席用蒸発器および後席用蒸発器への冷媒供給を停止させるようにすれば、前席用蒸発器および後席用蒸発器への冷媒供給を確実に停止させることが可能となり、前席用蒸発器や後席用蒸発器の凍結を防止しつつ、開閉弁を閉とした場合にはバッテリのみへ冷媒を供給することが可能となるので、バッテリの冷却効率を高めることが可能となる。
【0017】
なお、開閉弁を設ける態様としては、分岐点B1と分岐点B2との間に開閉弁を設ける態様(
図1、
図2)、合流点J1と合流点J2との間に開閉弁を設ける態様(
図3、
図4)、B1とB2との間、及び、J1とJ2との間の両方に開閉弁を設ける態様(
図5、
図6)が考えられる。
【0018】
また、上述の車両用冷却装置において、前記バッテリ用蒸発器は、前記バッテリと熱的に結合されているようにするとよい。
このような構成においては、バッテリの熱をバッテリ用蒸発器に移動させることが容易となり、空気冷却よりも効率的な冷却が可能となる。また、バッテリを冷却するために送風機や空気流路を形成するダクト等が不要となるので、省スペース化、小型化を図ることが可能となる。
【0019】
上述の車両用冷却装置を用いて冷却する場合において、前席空間および後席空間の冷却が不要であり、且つ、バッテリの冷却要請がある場合には、前記開閉弁を閉とし、前席空間および後席空間の冷却要請がある場合には、開閉弁を開にすればよい。また、バッテリの冷却要請が無い場合には、電子式膨張装置を閉にすればよい。
【発明の効果】
【0020】
以上述べたように、本発明によれば、バッテリ用蒸発器から流出した冷媒の管路と第2合流点を通過した冷媒の管路とを合流させる第1合流点と、前席用蒸発器から流出した冷媒の管路と後席用蒸発器から流出した冷媒の管路とを合流させる第2合流点と、第1分岐点と第2分岐点との間の冷媒管路、及び、第1合流点と第2合流点との間の冷媒管路の少なくとも一方に開閉弁を配置したので、前席用蒸発器と後席用蒸発器のそれぞれに対応する膨張装置を機械式膨張装置とした上で、前席空間および後席空間とは独立させてバッテリを冷却させることが可能となり、高価な電子式膨張装置を用いることなく車室を冷却することが可能になると共に、前席空間および後席空間とは独立させてバッテリを効率的に冷却することが可能となる。
【0021】
また、バッテリ用蒸発器をバッテリと熱的に結合した構成とすることで、バッテリの熱をバッテリ用蒸発器に円滑に移動させることが可能となるので、空気冷却よりも効率的な冷却が可能となる。しかも、バッテリを冷却するために送風機や空気流路を形成するダクトが不要となるので、省スペース化、小型化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明に係る車両用冷却装置の構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1の車両用冷却装置を用いた冷却態様を示す図であり、冷媒が流れている管路を太線で示したものであり、(a)は、バッテリのみを冷却する状態を示し、(b)は、バッテリと車室(前席空間および後席空間)とを冷却する状態を示し、(c)は、車室(前席空間と後席空間)のみを冷却する状態を示す。
【
図3】
図3は、本発明に係る車両用冷却装置の他の構成例を示す図である。
【
図4】
図4は、
図3の車両用冷却装置を用いた冷却態様を示す図であり、冷媒が流れている管路を太線で示したものであり、(a)は、バッテリのみを冷却する状態を示し、(b)は、バッテリと車室(前席空間および後席空間)とを冷却する状態を示し、(c)は、車室(前席空間と後席空間)のみを冷却する状態を示す。
【
図5】
図5は、本発明に係る車両用冷却装置のさらに他の構成例を示す図である。
【
図6】
図6は、
図5の車両用冷却装置を用いた冷却態様を示す図であり、冷媒が流れている管路を太線で示したものであり、(a)は、バッテリのみを冷却する状態を示し、(b)は、バッテリと車室(前席空間および後席空間)とを冷却する状態を示し、(c)は、車室(前席空間と後席空間)のみを冷却する状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る車両用冷却装置の実施形態を図面により説明する。
図1において、車両用冷却装置1は、車両走行用の電力を蓄電可能とするバッテリ13を冷却可能とするバッテリ温度管理装置10と、車両の前席空間を冷却可能とする前席用空調ユニット20と、車両の後席空間を冷却可能とする後席用空調ユニット30と、を有し、バッテリ温度管理装置10に設けられ、バッテリ13を冷却可能とするバッテリ用蒸発器11と、前席用空調ユニット20内に配置されて前席空間から取り込んだ空気を冷却する前席用蒸発器21と、後席用空調ユニット内に配置されて後席空間から取り込んだ空気を冷却する後席用蒸発器31と、を有する冷凍サイクル100を備えている。
【0024】
この冷凍サイクル100は、具体的には、冷媒を圧縮する圧縮機2と、圧縮機2で圧縮された冷媒を放熱する放熱器3と、バッテリ13を冷却可能とする前記バッテリ用蒸発器11と、放熱器3で放熱された冷媒を減圧膨張してバッテリ用蒸発器11へ供給する冷媒量を調節するバッテリ用膨張装置12と、車両の前席空間に送風される空気を冷却する前記前席用蒸発器21と、放熱器3で放熱された冷媒を減圧膨張して前席用蒸発器21へ供給する冷媒量を調節する前席用膨張装置22と、車両の後席空間に送風される空気を冷却する前記後席用蒸発器31と、放熱器3で放熱された冷媒を減圧膨張して後席用蒸発器31へ供給される冷媒量を調節する後席用膨張装置32と、を有して構成されている。
【0025】
バッテリ用蒸発器11と、前席用蒸発器21、後席用蒸発器31は、圧縮機2及び放熱器3に対して並列的に接続されている。放熱器3より下流側の冷媒管路101は、バッテリ用膨張装置12を介してバッテリ用蒸発器11へ向かう管路101aと後述する第2分岐点(B2)へ向かう管路101bとを分岐させる第1分岐点(B1)と、前席用膨張装置22を介して前席用蒸発器21へ向かう管路101cと後席用膨張装置32を介して後席用蒸発器31へ向かう管路101dとを分岐させる第2分岐点(B2)と、を備え、放熱器3から流出した冷媒を、第1分岐点(B1)を介してバッテリ用膨張装置12へ導き、また、第1分岐点(B1)および第2分岐点(B2)を介して前席用膨張装置22と後席用膨張装置32へ導くようにしている。
【0026】
また、圧縮機2より上流側の冷媒管路102は、バッテリ用蒸発器11から流出した冷媒の管路102aと後述する第2合流点(J2)を通過した冷媒の管路102bとを合流させる第1合流点(J1)と、前席用蒸発器21から流出した冷媒の管路102cと後席用蒸発器31から流出した冷媒の管路102dとを合流させる第2合流点(J2)と、を備え、バッテリ用蒸発器11から流出した冷媒を第1合流点(J1)を経て圧縮機2に戻し、前席用蒸発器21と後席用蒸発器31から流出した冷媒を第2合流点(J2)および第1合流点(J1)を経て圧縮機2に戻すようにしている。
【0027】
ここで、前席用膨張装置22は、前席用蒸発器21から圧縮機2に向かう冷媒の温度、または冷媒の温度及び圧力を感知して放熱器3で放熱された冷媒の前席用蒸発器21への供給流量を自律的に調節する機械式膨張弁(前席用機械式膨張装置)で構成される。後席用膨張装置32も、後席用蒸発器31から圧縮機2に向かう冷媒の温度、または冷媒の温度及び圧力を感知して放熱器3で放熱された冷媒の後席用蒸発器31への供給流量を自律的に調節する機械式膨張弁(後席用機械式膨張装置)で構成されている。
【0028】
冷媒の温度を感知して冷媒の供給流量を自律的に調節する機械式膨張弁は、いわゆる内部均圧式の自動膨張弁を想定したもので、蒸発器21,31の温度又は蒸発器21,31を流出する冷媒の温度の高低を予め封入されたガスの圧力の高低へと変換する感温筒と、感温筒側のガスの封入空間と蒸発器21,31に流入する冷媒(流入冷媒)が導入される導入空間とを区画すると共に感温筒側のガスの圧力と流入冷媒の圧力とがそれぞれ対向して作用するように構成されたダイヤフラム(又はベローズ)とを有し、この感温筒側のガスの圧力と流入冷媒の圧力とを均等にするように動作させる。また、冷媒の温度及び圧力を感知して冷媒の供給流量を自律的に調節する機械式膨張弁は、いわゆる外部均圧式の自動膨張弁を想定したもので、蒸発器21,31の温度又は蒸発器21,31を流出する冷媒の温度の高低を予め封入されたガスの圧力の高低へと変換する感温筒と、蒸発器21,31を流出する冷媒(流出冷媒)が導入される導入空間とを区画すると共に感温筒側のガスの圧力と流出冷媒の圧力とがそれぞれ対向して作用するように構成されたダイヤフラム(又はベローズ)とを有し、この感温筒側のガスの圧力と流出冷媒の圧力とを均等にするように動作させる。
【0029】
これに対して、バッテリ用蒸発器11への供給流量を調節するバッテリ用膨張装置12は、外部からの制御信号(後述する制御ユニット50からの信号)で開度が制御される電子式膨張装置が用いられる。
【0030】
また、この例において、バッテリ用蒸発器11は、バッテリ13と熱的に結合し冷却する方式を採用している。具体的には、バッテリ用蒸発器11を、例えば、特開2016-35378号公報に示されるように、並行に配置された複数のフラットチューブと、各々のフラットチューブの両端部のそれぞれに配置されたマニホールドとを有して構成し、フラットチューブをバッテリ13の表面に直接的に接触させるようにしている。あるいは、フラットチューブとバッテリ13の表面との間に熱伝導度を調整して温度の均一化を行うための熱伝導度調整部材や、フラットチューブとバッテリ13の表面のそれぞれの歪みに基づいた非接触部を減少するための充填剤を介するよう構成し、フラットチューブをバッテリ13の表面に間接的に接触させてもよい。
【0031】
そして、第1分岐点(B1)と第2分岐点(B2)との間の冷媒管路101b、及び、第1合流点(J1)と第2合流点(J2)との間の冷媒管路102bの少なくとも一方に開閉弁(この例では、第1分岐点(B1)と第2分岐点(B2)との間の冷媒管路101bに開閉弁5)が配置されている。開閉弁は、絞り機能を有さないことが好ましい。これにより製造コストを抑制できる。
【0032】
制御ユニット50は、車室内の熱負荷情報や前席用空調ユニット20及び後席用空調ユニット30の稼働の有無、バッテリの充電の有無等の情報を入力し、冷凍サイクル100の稼働の有無(圧縮機2や放熱器3の冷却用ファン6の稼働の有無)を制御すると共に、バッテリ用膨張装置12の開度制御や開閉弁5をオンオフさせる制御等を行うようにしている。
【0033】
図2に開閉弁5のオンオフ制御、及び、バッテリ用膨張装置12の開度を制御することによって切り替えられる冷却態様が示されている。
【0034】
このうち、
図2(a)は、バッテリ13のみを冷却するために、開閉弁5を閉として前席用蒸発器21と後席用蒸発器31への冷媒供給を止め、バッテリ用蒸発器11のみへ冷媒を供給するように冷凍サイクル100を稼働させた状態である。
この状態において、圧縮機2で圧縮された冷媒は、放熱器3で放熱され、その全てがバッテリ用膨張装置12にて減圧膨張されてバッテリ用蒸発器11へ供給される。したがって、放熱器3から流出する全ての冷媒をバッテリ冷却用として用いることが可能となるので(車室を冷却するために用いられないので)、バッテリを効率よく冷却することが可能となる。
【0035】
また、バッテリ用蒸発器11は、バッテリ13と熱的に結合されてバッテリの熱を吸収するので、バッテリを空気冷却する従来の冷却装置に比べて、冷却効率は非常に高いものとなる。バッテリ用蒸発器11で得られた冷気を運搬するために送風機を用いる従来の空冷方式においては、空気の熱伝導率は極めて低いので、効果的にバッテリ13を冷却することはできない。これに対して本発明においては、バッテリ13にバッテリ用蒸発器11を熱的に結合する(直接的に、または間接的に接触する)ことで、バッテリ13から発生した熱を除去させるので、バッテリ13を効果的に冷却させることができると共に、バッテリ13を速やかに冷却することが可能となる。
【0036】
また、バッテリ用蒸発器11をバッテリ13と熱的に結合することで、送風機や空気流路を形成するダクトが不要となり、バッテリ温度管理装置10の小型化が図れ、省スペース化を図ることが可能となる。
【0037】
また、
図2(b)は、バッテリ13と車室(前席空間および後席空間)の両方を冷却するために、開閉弁5を開として前席用蒸発器21と後席用蒸発器31への冷媒供給を行いつつ、バッテリ用蒸発器11へも冷媒を供給するように冷凍サイクル100を稼働させた状態である。この例では、圧縮機2で圧縮された冷媒は、放熱器3で放熱され、その後、一部の冷媒が第1分岐点(B1)で分岐してバッテリ用蒸発器11へ送られ、バッテリ冷却用として用いられ、残りの冷媒は、第2分岐点(B2)を介して前席用蒸発器21と後席用蒸発器31に振り分けられて供給される。したがって、バッテリ13はバッテリ用蒸発器11によって速やかに冷却され、また車室(前席空間、後席空間)も同時に冷却されることになる。
【0038】
さらに、
図2(c)は、車室(前席空間および後席空間)のみを冷却するために、開閉弁5を開としつつバッテリ用膨張装置12を閉とした状態である。この例では、圧縮機2で圧縮された冷媒は、放熱器3で放熱され、その後、バッテリ用蒸発器11へ送られることなく、全ての冷媒が第2分岐点(B2)で分岐されて、前席用蒸発器21と後席用蒸発器31へ送られる。このため、圧縮機2で圧縮された冷媒を車室(前席空間および後席空間)の冷房のためだけに使用することができ、車室内の冷房を効率よく行うことが可能となる。
【0039】
なお、
図2(b)や
図2(c)のように車室(前席空間と後席空間)を冷却する場合、後席空間のみを単独で冷却する運転モードは行われない。前席空間に運転手や乗員が搭乗せず、後席空間に搭乗した乗員によって後席空間の冷却のみが要請されることが無いためである。このため、前席用膨張装置22を閉弁機能を有した電子式膨張装置とする必要や、第2分岐点B2と前席用膨張装置22との間に開閉弁5とは異なる開閉弁を設定する必要は、無い。
【0040】
以上の例においては、開閉弁5を第1分岐点(B1)と第2分岐点(B2)との間の冷媒管路101bに配置した例を示したが、
図3に示されるように、開閉弁6を第1合流点(J1)と第2合流点(J2)との間の冷媒管路102bに配置し、制御ユニット50で開閉制御するようにしてもよい。
【0041】
図4に、
図3の構成において開閉弁6をオンオフ制御することにより切り替えられる冷却態様が示されている。
このうち、
図4(a)は、バッテリのみを冷却するために、開閉弁6を閉として前席用蒸発器21と後席用蒸発器31から流出する冷媒を止め、第2分岐点(B2)から前席用蒸発器21や後席用蒸発器31へ導かれる冷媒を停止させるように冷凍サイクル100を稼働させた状態である。
【0042】
この状態においては、圧縮機2で圧縮された冷媒が放熱器3で放熱され、その全てがバッテリ用膨張装置12にて減圧膨張されてバッテリ用蒸発器11へ供給される。したがって、放熱器3から流出する全ての冷媒をバッテリ冷却用として用いることが可能となるので、バッテリ13効率よく冷却することが可能となる。
また、バッテリ用蒸発器11は、バッテリ13と熱的に結合されてバッテリ13の熱を吸収するので、バッテリ用蒸発器11の冷気を送風するための送風機やダクトが不要となる。
【0043】
また、
図4(b)は、バッテリ13と車室(前席空間および後席空間)の両方を冷却するために、開閉弁6を開として前席用蒸発器21と後席用蒸発器31への冷媒循環を行いつつ、バッテリ用蒸発器11へも冷媒を供給するように冷凍サイクル100を稼働させた状態である。この例では、圧縮機2で圧縮された冷媒は、放熱器3で放熱され、その後、一部の冷媒が第1分岐点(B1)で分岐してバッテリ用蒸発器11へ送られ、バッテリ冷却用として用いられ、残りの冷媒は、第2分岐点(B2)を介して前席用蒸発器21と後席用蒸発器31に振り分けられて供給される。したがって、バッテリ13はバッテリ用蒸発器11によって速やかに冷却され、また車室(前席空間、後席空間)も同時に冷却されることになる。
【0044】
さらに、
図4(c)は、車室(前席空間および後席空間)のみを冷却するために、開閉弁6を開としつつバッテリ用膨張装置12を閉とした状態である。この例では、圧縮機2で圧縮された冷媒は、放熱器3で放熱され、その後、バッテリ用蒸発器11へ送られることなく、全ての冷媒が第2分岐点(B2)で分岐されて前席用蒸発器21と後席用蒸発器31へ送られる。このため、圧縮機2で圧縮された冷媒を車室(前席空間および後席空間)の冷房のためだけに使用することができ、車室内の冷房を効率よく行うことが可能となる。
【0045】
なお、
図4(b)や
図4(c)のように車室(前席空間と後席空間)を冷却する場合、後席空間のみを単独で冷却する運転モードは行われない。前席空間に運転手や乗員が搭乗せず、後席空間に搭乗した乗員によって後席空間の冷却のみが要請されることが無いためである。このため、前席用膨張装置22を閉弁機能を有した電子式膨張装置とする必要や、第2分岐点B2と前席用膨張装置22との間に開閉弁5とは異なる開閉弁を設定する必要は、無い。
【0046】
図5において、さらに他の構成例が示され、開閉弁5を第1分岐点(B1)と第2分岐点(B2)との間の冷媒管路101bに配置し、また、開閉弁6を第1合流点(J1)と第2合流点(J2)との間の冷媒管路102bにも配置し、制御ユニット50でこれらの開閉弁5,6を開閉制御するようにしてもよい。
【0047】
図6に、
図5の構成において開閉弁5,6をオンオフ制御することにより切り替えられる冷却態様例が示されている。
【0048】
このうち、
図6(a)は、バッテリ13のみを冷却するために、開閉弁5と開閉弁6を閉として前席用蒸発器21と後席用蒸発器31への冷媒の供給を止め、バッテリ用蒸発器11のみへ冷媒を供給するように冷凍サイクル100を稼働させた状態である。
この状態においては、圧縮機2で圧縮された冷媒が放熱器3で放熱され、その全てがバッテリ用膨張装置12にて減圧膨張されてバッテリ用蒸発器11へ供給される。したがって、放熱器3から流出する全ての冷媒をバッテリ冷却用として用いることが可能となるので、バッテリ13を効率よく冷却することが可能となる。
また、バッテリ用蒸発器11は、バッテリ13と熱的に結合されてバッテリ13の熱を吸収するので、バッテリ用蒸発器11の冷気を送風するための送風機やダクトが不要となる。
【0049】
また、
図6(b)は、バッテリ13と車室(前席空間および後席空間)の両方を冷却するために、開閉弁5と開閉弁6を開としてバッテリ用蒸発器11へ冷媒を供給しつつ、前席用蒸発器21と後席用蒸発器へも冷媒供給を行うように冷凍サイクルを稼働させた状態である。この例では、圧縮機2で圧縮された冷媒は、放熱器3で放熱され、その後、一部の冷媒が第1分岐点(B1)で分岐してバッテリ用蒸発器11へ送られ、バッテリ冷却用として用いられ、残りの冷媒は、第2分岐点(B2)を介して前席用蒸発器21と後席用蒸発器31に振り分けられて供給される。したがって、バッテリ13はバッテリ用蒸発器11によって速やかに冷却され、また車室(前席空間、後席空間)も同時に冷却されることになる。
【0050】
さらに、
図6(c)は、車室(前席空間および後席空間)のみを冷却するために、開閉弁5と開閉弁6を開としつつバッテリ用膨張装置12を閉とした状態である。この例では、圧縮機2で圧縮された冷媒は、放熱器3で放熱され、その後、バッテリ用蒸発器11へ送られることなく、全ての冷媒が第2分岐点(B2)で分岐されて前席用蒸発器21と後席用蒸発器31へ送られる。このため、圧縮機2で圧縮された冷媒を車室(前席空間および後席空間)の冷房のためだけに使用することができ、車室内の冷房を効率よく行うことが可能となる。
【0051】
以上のように、前席空間と後席空間を冷却するデュアルエアコンを搭載すると共に、車両走行用の電力を蓄電可能とするバッテリ13を冷却する機能を備えた車両用冷却装置1において、前席用膨張装置22と後席用膨張装置32を機械式膨張装置とし、バッテリ用膨張装置12を電子式膨張装置とし、第1分岐点(B1)と第2分岐点(B2)との間の冷媒管路101b、及び、第1合流点(J1)と第2合流点(J2)との間の冷媒管路102bの少なくとも一方に開閉弁5,6を配置し、この開閉弁5,6のオンオフ、及び、バッテリ用膨張装置12の開度制御によって冷却態様を切り替えるようにしたので、前席空間および後席空間とバッテリ13を冷却可能とする冷凍サイクルを廉価に形成することが可能になると共に、バッテリ13を単独で冷却することが可能となる。すなわち、バッテリ13のみを単独で冷却させる運転モードと、バッテリ13及び車室(前席空間と構成空間)を同時に冷却させる運転モードと、車室のみを冷却させる運転モードの切り替えが可能となる
【0052】
なお、
図6(b)や
図6(c)のように車室(前席空間と後席空間)を冷却する場合、後席空間のみを単独で冷却する運転モードは行われない。前席空間に運転手や乗員が搭乗せず、後席空間に搭乗した乗員によって後席空間の冷却のみが要請されることが無いためである。このため、前席用膨張装置22を閉弁機能を有した電子式膨張装置とする必要や、第2分岐点B2と前席用膨張装置22との間に開閉弁5とは異なる開閉弁を設定する必要は、無い。
【0053】
また、上述の例では、バッテリ用蒸発器11をバッテリ13と熱的に結合させてバッテリ13を冷却させるようにしているので、バッテリ13を冷却するために送風機や空気流路を形成するダクトが不要となり、バッテリ温度管理装置10を小型にすることができ、省スペース化を図ることが可能となる。
【0054】
さらに、上述の構成においては、デュアルエアコンの冷凍サイクルにおいて、開閉弁5(分岐側開閉弁)を設ける場合には、バッテリ用蒸発器11に通じる管路101aを接続する第1分岐点(B1)を放熱器3と開閉弁5との間に設け、開閉弁6(合流側開閉弁)を設ける場合には、バッテリ用蒸発器11に通じる管路102aを接続する第1合流点(J1)を開閉弁6と圧縮機2との間に設けるようにしたので、第1分岐点(B1)と第1合流点(J1)を介してバッテリ用蒸発器11に通じる管路101a,102aを接続すれば電気自動車に適用可能な冷凍サイクルとすることができ、容易に製造ができる。また第1分岐点と第1合流点との間のバッテリ用蒸発器11に通じる管路101a,102aを除去すれば、エンジン車両に適用可能な冷凍サイクルとすることができ、冷凍サイクルの汎用化を図ることが可能になる。
【符号の説明】
【0055】
1 車両用冷却装置
2 圧縮機
3 放熱器
5,6 開閉弁
11 バッテリ用蒸発器
12 バッテリ用膨張装置。
13 バッテリ
21 前席用蒸発器
22 前席用膨張装置
31 後席用蒸発器
32 後席用膨張装置
100 冷凍サイクル
B1 第1分岐点
B2 第2分岐点
J1 第1合流点
J2 第2合流点