(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】電動弁及び冷凍サイクルシステム
(51)【国際特許分類】
F16K 31/04 20060101AFI20230501BHJP
F25B 41/35 20210101ALI20230501BHJP
【FI】
F16K31/04 Z
F25B41/35
(21)【出願番号】P 2020160780
(22)【出願日】2020-09-25
【審査請求日】2022-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】北見 雄希
(72)【発明者】
【氏名】土井 琢郎
(72)【発明者】
【氏名】中川 大樹
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-197800(JP,A)
【文献】特開2003-329157(JP,A)
【文献】特開2019-152303(JP,A)
【文献】特開2003-074730(JP,A)
【文献】特開2020-012528(JP,A)
【文献】特開2013-164125(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/00-31/05
F25B 41/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁室および弁ポートを有する弁本体と、前記弁ポートの開度を変更する弁部材と、前記弁部材を前記弁ポートの軸線方向に進退駆動する駆動軸を有する駆動部と、を備えた電動弁であって、
前記弁部材は、前記弁ポートに接近または離間する弁体と、前記駆動部の前記駆動軸と前記弁体とを接続する弁ホルダと、前記駆動軸または弁体と前記弁ホルダとを径方向の遊びをもって接続する首振り部と、を有し、
前記弁室内における前記弁ポートの近傍には、前記弁ホルダを前記軸線方向にガイドする筒状のガイド部が設けられ、前記ガイド部の内周面と前記弁ホルダの外周面とは、前記弁ポート側の第一の隙間と、前記駆動部側の第二の隙間と、を介して設けられ、前記第一の隙間の隙間寸法Aと、前記第二の隙間の隙間寸法Bと、の関係がA<Bに設定されていることを特徴とする電動弁。
【請求項2】
前記首振り部が前記駆動軸と前記弁ホルダとを接続するように設けられ、
前記首振り部における前記駆動軸と前記弁ホルダとの径方向の遊び寸法Cと、前記第一の隙間の隙間寸法Aと、前記第二の隙間の隙間寸法Bと、の関係がA<B<Cに設定されていることを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【請求項3】
前記第一の隙間によって前記弁ホルダをガイドする前記軸線方向のガイド長さL1と、前記弁ホルダの外径寸法L2と、の関係がL1/L2>1に設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電動弁。
【請求項4】
前記弁部材が前記弁ポートの全開位置にあるときに前記弁ホルダの先端部が前記ガイド部から突出することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電動弁。
【請求項5】
圧縮機と、凝縮器と、膨張弁と、蒸発器と、を含む冷凍サイクルシステムであって、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電動弁が、前記膨張弁として用いられていることを特徴とする冷凍サイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクルシステムなどに使用する電動弁及び冷凍サイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気調和機の冷凍サイクルに設けられる電動弁として、例えば特開2018-123879号公報(特許文献1)に開示されたものがある。この電動弁は、弁ポートを有する弁本体と、弁ポートの開度を変更する弁部材と、この弁部材を進退駆動する駆動部と、を備えた電動弁である。また、弁部材は、弁ポートに接近または離間する弁体と、駆動部の駆動軸と上記弁体とを接続する弁ホルダと、を有し、弁本体には、駆動軸の雄ねじ部に螺合する雌ねじ部と、上記弁ホルダをガイドするガイド孔と、を有した支持部材が固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来の電動弁では、弁ホルダをガイドする支持部材のガイド孔が弁ポートから離れた位置に設けられ、弁ホルダは、その全長のうち半分程度の長さしかガイドされないため、弁ホルダに設けられた弁体が弁ポートに対して偏心したり傾斜したりする可能性がある。特に、弁ポートを通過する流体の圧力差や動圧が弁体に作用すると、弁部材に傾きや振動が発生しやすくなり、弁体および弁ポートの摩耗や損傷の原因となる可能性がある。
【0005】
そこで、支持部材のガイド孔を弁ポート側に延長することが考えられるが、弁本体に対して支持部材が芯ずれして固定された場合、弁部材も弁ポートに対して偏心してしまうことから、弁部材の弁体と弁ポートとが干渉して弁体が拘束される可能性がある。
【0006】
本発明は、弁ポートを有する弁本体と、弁ポートの開度を変更する弁部材と、この弁部材を進退駆動する駆動部と、を備えた電動弁において、弁部材の弁体を保持する弁ホルダを弁ポートの軸線方向にガイドする筒状のガイド部を改良し、ガイド部が弁本体に対して芯ずれして設けられたとしても、ガイド部内での弁部材の傾きを矯正して、弁体と弁ポートとの干渉を防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電動弁は、弁室および弁ポートを有する弁本体と、前記弁ポートの開度を変更する弁部材と、前記弁部材を前記弁ポートの軸線方向に進退駆動する駆動軸を有する駆動部と、を備えた電動弁であって、前記弁部材は、前記弁ポートに接近または離間する弁体と、前記駆動部の前記駆動軸と前記弁体とを接続する弁ホルダと、前記駆動軸または弁体と前記弁ホルダとを径方向の遊びをもって接続する首振り部と、を有し、前記弁室内における前記弁ポートの近傍には、前記弁ホルダを前記軸線方向にガイドする筒状のガイド部が設けられ、前記ガイド部の内周面と前記弁ホルダの外周面とは、前記弁ポート側の第一の隙間と、前記駆動部側の第二の隙間と、を介して設けられ、前記第一の隙間の隙間寸法Aと、前記第二の隙間の隙間寸法Bと、の関係がA<Bに設定されていることを特徴とする。
【0008】
この際に、前記首振り部が前記駆動軸と前記弁ホルダとを接続するように設けられ、前記首振り部における前記駆動軸と前記弁ホルダとの径方向の遊び寸法Cと、前記第一の隙間の隙間寸法Aと、前記第二の隙間の隙間寸法Bと、の関係がA<B<Cに設定されていることを特徴とする電動弁が好ましい。
【0009】
また、前記第一の隙間によって前記弁ホルダをガイドする前記軸線方向のガイド長さL1と、前記弁ホルダの外径寸法L2と、の関係がL1/L2>1に設定されていることを特徴とする電動弁が好ましい。
【0010】
また、前記弁部材が前記弁ポートの全開位置にあるときに前記弁ホルダの先端部が前記ガイド部から突出することを特徴とする電動弁が好ましい。
【0011】
本発明の冷凍サイクルシステムは、圧縮機と、凝縮器と、膨張弁と、蒸発器と、を含む冷凍サイクルシステムであって、前記電動弁が、前記膨張弁として用いられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電動弁及び冷凍サイクルシステムによれば、弁ポート側の第一の隙間寸法Aよりも駆動部側の第二の隙間寸法Bが大きいことで、ガイド部が弁本体に対して芯ずれして設けられたとしても、駆動部側の第二の隙間によってガイド部内で弁部材の傾きを、弁体が着座し易いような状態に矯正することができ、弁体と弁ポートとの干渉を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態の電動弁の弁閉状態の縦断面図である。
【
図2】第1実施形態の電動弁の弁閉状態の要部拡大断面図である。
【
図3】第1実施形態の電動弁の弁開状態の要部拡大断面図である。
【
図4】本発明の第2実施形態の電動弁の弁閉状態の縦断面図である。
【
図5】第2実施形態の電動弁の弁閉状態の要部拡大断面図である。
【
図6】第2実施形態の電動弁の弁開状態の要部拡大断面図である。
【
図7】本発明の第3実施形態の電動弁の弁閉状態の縦断面図である。
【
図8】第3実施形態の電動弁の弁閉状態の要部拡大断面図である。
【
図9】第3実施形態の電動弁の弁開状態の要部拡大断面図である。
【
図10】本発明の実施形態の冷凍サイクルシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の電動弁及び冷凍サイクルシステムの実施形態について図面を参照して説明する。
図1は第1実施形態の電動弁の弁閉状態の縦断面図、
図2は第1実施形態の電動弁の弁閉状態の要部拡大断面図、
図3は第1実施形態の電動弁の弁開状態の要部拡大断面図である。なお、以下の説明における「上下」の概念は
図1の図面における上下に対応する。本実施形態の電動弁10は、弁本体1と、支持部材2と、弁部材3と、駆動部4と、を備えている。
【0015】
弁本体1は、切削加工されたSUSや黄銅等の金属製の部材であって、その内部に円筒状の弁室1Rが形成されている。また、弁本体1の外周片側には弁室1Rに導通される第1継手管11が接続されるとともに、下端から下方に延びる筒状部に第2継手管12が接続されている。また、第2継手管12の弁室1R側には弁座部材13が嵌合されている。弁座部材13の内側は軸線Xを中心として弁室1Rに開口する円筒形状の弁ポート13aとなっており、第2継手管12は弁ポート13aを介して弁室1Rに導通される。
【0016】
弁本体1には、上部から弁室1R内に挿通されるように支持部材2が取り付けられている。支持部材2は、弁本体1の内周面内に嵌合される基部21と、基部21から下方に位置する略円筒状のガイド部22と、基部21から上方に位置する略円筒状の保持部23と、保持部23の上部に延設された円柱状の支持部24と、基部21の外周に設けられたリング状のフランジ部25とを有している。基部21、ガイド部22、保持部23及び支持部24は樹脂製の一体品として構成されている。また、フランジ部25は、例えば、黄銅、ステンレス等の金属板であり、このフランジ部25は、インサート成形により樹脂製の基部21と共に一体に設けられている。そして、支持部材2は、基部21を弁本体1に挿入することにより組み付けられ、フランジ部25を介して弁本体1の上端部に溶接により固定されている。
【0017】
支持部材2の支持部24の中心には、弁ポート13aの軸線Xと同軸の雌ねじ部24aとそのネジ孔が形成されている。また、支持部材2において、基部21、ガイド部22及び保持部23の内側には軸線Xと同軸の略円筒形状の下側のガイド孔2Aと上側のガイド孔2Bとが形成されている。そして、ガイド孔2A,2B内に弁部材3が配設されている。
【0018】
図2及び
図3に示すように、弁部材3は、円筒状の部材からなる弁ホルダ31と、弁体32と、円環状のワッシャ(スラストワッシャ)33と、バネ受け34と、コイルバネ35と、を備えて構成されている。
【0019】
弁ホルダ31は円筒状でその下端部に弁体32が固着されている。弁体32は、ステンレスや真鍮等の金属部材により形成され、下側先端のニードル部32aと、このニードル部32aの上端で弁ホルダ31に固着される基部32bと、基部32bの上部でコイルバネ35内に嵌合されるボス部32cとを有している。また、弁ホルダ31は、上端部を内側に曲げることで挿通孔31aを有する円環状の天井部31bを有している。一方、後述のロータ軸41は、雄ねじ部41aより下端側の端部にボス部411を有するとともに、このボス部411にはフランジ部412が一体に形成されている。そして、弁部材3のワッシャ33の挿通孔33aがロータ軸41のボス部411に嵌め込まれ、弁ホルダ31の挿通孔31aにロータ軸41をその上から嵌め込むことで、ワッシャ33は弁ホルダ31の天井部31bとロータ軸41のフランジ部412との間でボス部411の外周に配設されている。さらに、バネ受け34は軸線X方向に移動可能に設けられ、このバネ受け34と弁体32との間にコイルバネ35が圧縮した状態で配設されている。
【0020】
弁本体1の上端には密閉ケース14が溶接等によって気密に固定され、密閉ケース14の内外に駆動部4が構成されている。駆動部4は、軸線Xを中心とする「駆動軸」としてのロータ軸41と、外周部を多極に着磁されたマグネットロータ42と、密閉ケース14の外周に設けられたステータコイル43と、その他図示しない部材で構成されている。ロータ軸41はマグネットロータ42の中心に固着されており、このロータ軸41の支持部材2側には、雄ねじ部41aが形成されている。この雄ねじ部41aは支持部材2の雌ねじ部24aに螺合されている。そして、ステータコイル43にパルス信号が与えられることにより、そのパルス数に応じてマグネットロータ42が回転されてロータ軸41が回転する。なお、密閉ケース14内の上部にはマグネットロータ42の突起に連動してマグネットロータ42の回転を規制する回転ストッパ機構15が設けられている。
【0021】
以上の構成により、駆動部4が駆動されると、マグネットロータ42及びロータ軸41が回転し、ロータ軸41の雄ねじ部41aと支持部材2の雌ねじ部24aとのねじ送り機構により、ロータ軸41は軸線X方向に移動する。この回転に伴うロータ軸41の軸線X方向移動によって弁ホルダ31と共に弁体32が軸線X方向に移動する。そして、弁体32のニードル部32aを弁ポート13a内に挿通させた状態で軸線X方向に進退させて弁ポート13aの開口面積を増減させる。これにより、第1継手管11から第2継手管12へ、または第2継手管12から第1継手管11へ流れる流体(冷媒)の流量が制御される。
【0022】
図2に示すように、弁部材3とロータ軸41との接続部分において、ワッシャ33とボス部411との間には隙間「C」が形成されている。これにより、弁部材3(その上端部)は、ロータ軸41に対して軸線Xの半径方向に遊びをもって接続されている。すなわち、このワッシャ33とボス部411は、ロータ軸41と弁ホルダ31とを径方向の遊びをもって接続する首振り部を構成している。
【0023】
また、支持部材2のガイド部22に形成された上側のガイド孔2Bの内径は下側のガイド孔2Aの内径より大きくなっている。これにより、弁部材3のホルダ部31は下側のガイド孔2Aにより軸線X方向にガイド(案内)される。すなわち、弁ポート13aの近傍には、弁ホルダ31を下側のガイド孔2Aで軸線X方向にガイドする筒状のガイド部22が設けられている。ここで、前記『弁ポートの近傍』について説明する。この弁ポート13aとは、弁座部材13の上面の事を指しており、この弁座部材13の上面から軸線X方向の駆動部側方向に弁ホルダ31の外径寸法「L2」以下にガイド部22の先端(下端)がある事を『弁ポートの近傍』と言う。また、ガイド部22の内周面と弁ホルダ31の外周面とは、弁ポート13a側の第一の隙間(ガイド孔2A側の隙間)と、駆動部4側の第二の隙間(ガイド孔2B側の隙間)とを介して設けられている。そして、下側のガイド孔2Aにおける第一の隙間の隙間寸法「A」と、上側のガイド孔2Bにおける第二の隙間の隙間寸法「B」と、の関係がA<Bに設定されている。
【0024】
このように、弁ポート13a側の第一の隙間寸法「A」よりも駆動部4側の第二の隙間寸法「B」が大きいので、ガイド部22が弁本体1に対して芯ずれして設けられたとしても、駆動部4側の第二の隙間によってガイド部22内で弁部材3の傾きを、弁体32が着座し易いような状態に矯正することができ、弁体32と弁ポート13aとの干渉を防止することができる。また、弁ポート13a側の第一の隙間寸法「A」が小さく設定されていることで、弁ポート13aに近い位置で弁体32をガイドして径方向の移動を規制することができ、流体の圧力差や動圧が弁体32に作用した場合でも、弁体32の傾きや振動を抑制することができる。
【0025】
なお、前記首振り部を構成するワッシャ33とボス部411との径方向の遊び寸法「C」と、上記第一の隙間寸法「A」及び第二の隙間寸法「B」は、A<B<Cに設定されている。これにより、首振り部が弁ホルダ31の傾きに作用することがない。また、第一の隙間「A」によって弁ホルダ31をガイドする軸線X方向のガイド長さ「L1」と、弁ホルダ31の外径寸法「L2」と、の関係は、L1/L2>1に設定されている。これにより、ガイド部22で弁ホルダ31を軸線X方向に確実にガイドすることができる。
【0026】
特に、弁閉時において、L1/L2>1に設定されていると有効である。(弁閉時では、弁ホルダ31の下端はガイド部22から突出している為、全開時よりもガイド長さ「L1」が短くなる場合がある為、弁閉のガイド長さ短い時でもL1/L2>1に設定されることが好ましい。例えば後述の第2実施形態時など)また、第一の隙間「A」によって弁ホルダ31をガイドする軸線X方向のガイド長さ「L1」と、弁ホルダ31の外径寸法「L2」と、の関係は、2>L1/L2>1に設定されていることが好ましい。すなわち、L1はL2より長く、L2の2倍未満の長さということである。これにより、L1がL2より長いため、ガイド部22で弁ホルダ31を軸線X方向に確実にガイドすることができると共に、L1がL2の2倍未満の長さであるため、ガイド部22が弁本体1に対して芯ずれして設けられたとしても弁部材3が拘束されにくくなり、弁体32と弁ポート13aとの干渉を防止することができる。
【0027】
また、
図3に示すように、弁部材3が弁ポート13aの全開位置にあるとき、弁ホルダ31側の先端部(弁体32の基部32b)がガイド部22から突出するよう構成されている。これにより、第2継手管12側から流体が流入するときに、ガイド部22の先端で渦を生じることがなく、動圧の影響を低減することができる。仮に、全開位置にあるとき、弁ホルダ31側の先端部(弁体32の基部32b)がガイド部22から突出していなく、ガイド部22の下端より上側に入り込んで、溜まり空間ができる様に構成されている場合は、第2継手管12側から流体が流入するときに、ガイド部22の先端内側の溜まり空間で滞留する為、渦を生じ、動圧で弁体が傾きやすくなる。
【0028】
図4は第2実施形態の電動弁の縦断面図、
図5は第2実施形態の電動弁の弁閉状態の要部拡大断面図、
図6は第2実施形態の電動弁の弁開状態の要部拡大断面図である。以下の各実施形態において同様な部材、同様な要素には同じ符号を付記して詳細な説明は省略する。この第2実施形態において第1実施形態と異なる点は、駆動部4側の第二の隙間寸法「B」を構成する構造である。
【0029】
この第2実施形態における支持部材2′は、基部21′と、、基部21′から下方に位置する略円筒状のガイド部22′と、基部21′から上方に位置する略円筒状の保持部23′と、第1実施形態と同様な支持部24及びフランジ部25とを有している。基部21′、ガイド部22′及び保持部23′の内側には軸線Xと同軸の一定内径の円筒形状のガイド孔2A′が形成されている。そして、ガイド孔2A′内に弁部材3′が配設されている。
【0030】
図5及び
図6に示すように、弁部材3′は、略円筒状の部材からなる弁ホルダ31′と、第1実施形態と同様な弁体32と、円環状のワッシャ33と、バネ受け34と、コイルバネ35と、を備えて構成されている。弁ホルダ31′は、弁ポート13a側の下側の円筒部31A′と、駆動部4側の上側の円筒部31B′とで構成されている。そして、下側の円筒部31A′の外径はガイド孔2A′内で摺動可能な大きさであり、上側の円筒部31B′の外径は下側の円筒部31A′の外径より小さくなっている。これにより、ガイド部22′のガイド孔2A′(内周面)と弁ホルダ31′の外周面は、弁ポート13a側の第一の隙間(円筒部31A′側の隙間)と、駆動部4側の第二の隙間(円筒部31B′側の隙間)とを介して設けられている。
【0031】
下側の円筒部31A′における第一の隙間の隙間寸法「A」と、上側の円筒部31B′における第二の隙間の隙間寸法「B」と、の関係がA<Bに設定されている。このA<Bの関係による作用効果は第1実施形態と同様であるが、この第2実施形態によれば、ガイド孔2A′がストレートになっているので、支持部材2′の樹脂成形時におけるアンダーカットを回避できる。
【0032】
図7は第3実施形態の電動弁の縦断面図、
図8は第3実施形態の電動弁の弁閉状態の要部拡大断面図、
図9は第3実施形態の電動弁の弁開状態の要部拡大断面図である。この第3実施形態において第1実施形態と異なる点は、ロータ軸41′と弁部材3″とが一体に形成されている点である。また、弁部材3″において、弁ホルダ31″と弁体32″とが弁ポート13a側において首振り部により接続されている点である。
【0033】
図8及び
図9に示すように、弁部材3″はロータ軸41′の下端に一体に形成された弁ホルダ31″を有し、この弁ホルダ31″の下端部に弁体32″が取り付けられている。弁体32″は、ステンレスや真鍮等の金属部材により形成され、下側先端のニードル部32a″と、このニードル部32a″の上端に延びるロッド部32b″と、このロッド部32b″に連結されたフランジ部32c″とを有している。また、弁ホルダ31″の下端には挿通孔36a″を有する固定金具36″が固着されるとともに、弁ホルダ31″内には、挿通孔33a″を有するワッシャ33″と、バネ受け34″と、コイルバネ35″とが配設されている。そして、ワッシャ33″の挿通孔33a″と固定金具36″の挿通孔36a″内に弁体32″のロッド部32b″が嵌め込まれている。そして、固定金具36″の挿通孔36a″と弁体32″のロッド部32b″との間には隙間が形成されており、弁体32″は、弁ホルダ31″に対して軸線Xの半径方向に遊びをもって接続されている。すなわち、この弁体32″は、「首振り部」によって弁ホルダ31″に対して径方向の遊びをもって接続されている。
【0034】
この第3実施形態では、弁ホルダ31″はロータ軸41′と一体に形成されているが、ロータ軸41′の雄ねじ部41aと支持部材2の雌ねじ部24aとの間で径方向にある程度ガタツキがあるため、弁部材3″はガイド部22のガイド孔2A(内周面)でガイドされている。ここで、弁ポート13a側の第一の隙間寸法「A」よりも駆動部4側の第二の隙間寸法「B」が大きいので、ガイド部22が弁本体1に対して芯ずれして設けられたとしても、駆動部4側の第二の隙間によってガイド部22内で弁部材3″の傾きを、弁体32″が着座し易いような状態に矯正することができ、弁体32″と弁ポート13aとの干渉を防止することができる。
【0035】
図10は実施形態の冷凍サイクルシステムを示す図である。図において、符号10は膨張弁を構成する本発明の実施形態の電動弁、200は室外ユニットに搭載された室外熱交換器、300は室内ユニットに搭載された室内熱交換器、400は四方弁を構成する流路切換弁、500は圧縮機である。電動弁10、室外熱交換器200、室内熱交換器300、流路切換弁400、及び圧縮機500は、それぞれ導管によって図示のように接続され、ヒートポンプ式の冷凍サイクルを構成している。なお、アキュムレータ、圧力センサ、温度センサ等は図示を省略してある。
【0036】
冷凍サイクルの流路は、流路切換弁400により冷房運転時の流路と暖房運転時の流路の2通りに切換えられる。冷房運転時には、図に実線の矢印で示したように、圧縮機500で圧縮された冷媒は流路切換弁400から室外熱交換器200に流入され、この室外熱交換器200は凝縮器として機能し、室外熱交換器200から流出された液冷媒は電動弁10を介して室内熱交換器300に流入され、この室内熱交換器300は蒸発器として機能する。
【0037】
一方、暖房運転時には、図に破線の矢印で示したように、圧縮機500で圧縮された冷媒は流路切換弁400から室内熱交換器300、電動弁10、室外熱交換器200、流路切換弁400、そして、圧縮機500の順に循環され、室内熱交換器300が凝縮器として機能し、室外熱交換器200が蒸発器として機能する。電動弁10は、冷房運転時に室外熱交換器200から流入する液冷媒、または暖房運転時に室内熱交換器300から流入する液冷媒を、それぞれ減圧膨張し、さらにその冷媒の流量を制御する。
【0038】
なお、以上の第1実施形態から第3実施形態の説明では、
図1から
図9の様に、支持部材2、2´の基部21、21´は、弁本体1の内周面内に径方向の隙間を有して嵌合される構成としていたが、これに限定されるものではなく、支持部材2、2´の基部21、21´は、弁本体1の内周面内に径方向の隙間を有さない圧入される構成としてもよい。圧入の場合でも、圧入部分(基部)の形状や部品バラツキや圧入バラツキなどにより、ガイド部22、22´が弁本体1に対して芯ずれして設けられることも考えられ、上記と同様の効果が得られる。
【0039】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0040】
1 弁本体
1R 弁室
11 第1継手管
12 第2継手管
13 弁座部材
13a 弁ポート
2 支持部材
2A ガイド孔
2B ガイド孔
22 ガイド部
3 弁部材
31 弁ホルダ
32 弁体
4 駆動部
41 ロータ軸(駆動軸)
X 軸線
2′ 支持部材
2A′ ガイド孔
22′ ガイド部
3′ 弁部材
31′ 弁ホルダ
3″ 弁部材
31″ 弁ホルダ
10 電動弁
200 室外熱交換器
300 室内熱交換器
400 流路切換弁
500 圧縮機