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特許7271502オピオイドの検出のための電気化学アッセイ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】オピオイドの検出のための電気化学アッセイ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/28 20060101AFI20230501BHJP
   G01N 33/483 20060101ALI20230501BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20230501BHJP
   G01N 27/30 20060101ALI20230501BHJP
   G01N 27/48 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
G01N27/28 331Z
G01N33/483 F
G01N33/68
G01N27/30 B
G01N27/48 311
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020501845
(86)(22)【出願日】2018-03-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-25
(86)【国際出願番号】 FI2018050219
(87)【国際公開番号】W WO2018172619
(87)【国際公開日】2018-09-27
【審査請求日】2021-01-27
(31)【優先権主張番号】20175259
(32)【優先日】2017-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】522420122
【氏名又は名称】フェポッド・オイ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ニクラス・ヴェスター
(72)【発明者】
【氏名】エルシ・ミュンティネン
(72)【発明者】
【氏名】トミ・ラウリラ
【審査官】倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-271259(JP,A)
【文献】特開平01-134245(JP,A)
【文献】特表2007-524821(JP,A)
【文献】特開2012-215460(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0116195(US,A1)
【文献】特開2013-113726(JP,A)
【文献】特表2007-530413(JP,A)
【文献】特開2002-350383(JP,A)
【文献】ATTA Nada F. et al.,Determination of morphine at gold nanoparticles/Nafion carbon paste modified sensor electrode,Analyst,2011年08月30日,Vol.136,pp.4682-4691
【文献】ROCHA Luciana S. et al.,Ion-exchange voltammetry of dopamine at Nafion-coated glassy carbon electrodes: Quantitative features of ion-exchange partition and reassessment on the oxidation mechanism of dopamine in the presence of excess ascorbic acid,Bioelectrochemistry,2006年,Vol.69,pp.258-266
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/28,27/327
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
・四面体アモルファスカーボンなどのアモルファスカーボン、ダイヤモンド様カーボン、グラファイト、カーボンナノチューブ及びそれらの混合物からなる群から選択される炭素と、チタンと、からなる、炭素系作用電極と、
・炭素系対電極と、
・擬似参照電極と、
・前記炭素系作用電極を直接電源に接触させるための接点と、
・前記炭素系対電極を直接電源に接触させるための接点と、
・前記擬似参照電極を直接電源に接触させるための接点と、
を含む電極アセンブリ層が堆積された基板を含む多層試験ストリップであって、
前記擬似参照電極、前記作用電極及び前記対電極は、同じ平面内で互いに隣接して配置され、
前記試験ストリップは、サイズ排除を示し、電荷に関する選択性を有する選択透過膜層をさらに含み、
前記電極アセンブリ層の前記電極は、互いに電気的に分離されており、前記電極アセンブリ層は、前記基板と前記選択透過膜層との間に配置されている、ストリップ。
【請求項2】
前記基板は、ポリマー及びガラスからなる群から選択される、請求項1に記載のストリップ。
【請求項3】
前記対電極は、チタンをさらに含む、請求項1または2に記載のストリップ。
【請求項4】
前記擬似参照電極は銀を含む、請求項1から3の何れか一項に記載のストリップ。
【請求項5】
前記擬似参照電極は、銀-塩化銀(Ag/AgCl)を含む、請求項1から3の何れか一項に記載のストリップ。
【請求項6】
前記擬似参照電極は白金を含む、請求項1から3の何れか一項に記載のストリップ。
【請求項7】
前記接点の全ては、銀を含む、請求項1から6の何れか一項に記載のストリップ。
【請求項8】
前記選択透過膜層は、スルホン化ポリマー、酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリリジン、及び過酸化ポリピロールからなるポリマーの群から選択されるカチオン選択透過膜を含む、請求項1から7の何れか一項に記載のストリップ。
【請求項9】
前記選択透過膜層はナフィオン(登録商標)を含む、請求項1から8の何れか一項に記載のストリップ。
【請求項10】
フィルタ層をさらに備え、前記ストリップは、前記選択透過膜層が前記フィルタ層と前記電極アセンブリ層との間に位置するように配置される、請求項1から9の何れか一項に記載のストリップ。
【請求項11】
疎水性膜又は疎水性フィルム層をさらに備え、前記ストリップは、前記フィルタ層が前記選択透過膜層と前記疎水性膜又は疎水性フィルム層との間に位置するように配置される、請求項10に記載のストリップ。
【請求項12】
-参照データを格納するように構成されたメモリと、
-・請求項1から11の何れか一項に記載のストリップからの情報を処理し、処理された情報を得、
・前記処理された情報を前記参照データと比較し、
・前記処理された情報について結論を導き出す
ように構成された、少なくとも1つの処理コアと、
を備える、請求項1から11の何れか一項に記載のストリップを備える装置。
【請求項13】
・試料を提供するステップと、
・前記試料を多層試験ストリップの電極アセンブリの作用電極(2)及び対電極(4)と電気的に接触させるステップであって、前記作用電極(2)は、四面体アモルファスカーボンなどのアモルファスカーボン、ダイヤモンド様カーボン、グラファイト、カーボンナノチューブ及びそれらの混合物からなる群から選択される炭素と、チタンと、からなり、前記試験ストリップは、サイズ排除を示し、電荷に関する選択性を有する選択透過膜層を含む、ステップと、
・前記作用電極(2)と前記対電極(4)との間の電圧を変化させるステップと、
・前記作用電極(2)と前記対電極(4)との間の電流を、前記作用電極(2)と前記対電極(4)との間に印加される電圧に関連して測定するステップと、
・前記試料中の1つ以上のオピオイド分析物の電流特性の変化を検出するステップと、
を含む、試料中のオピオイドを検出する方法。
【請求項14】
・試料を提供するステップと、
・前記試料を、請求項1から10の何れか一項に記載の多層試験ストリップの前記電極アセンブリ層の前記作用電極(2)及び前記対電極(4)と電気的に接触させるステップと、
・前記作用電極(2)と前記対電極(4)との間の電圧を変化させるステップと、
・前記作用電極(2)と前記対電極(4)との間の電流を、前記作用電極(2)と前記対電極(4)との間に印加される電圧に関連して測定するステップと、
・前記試料中の1つ以上のオピオイド分析物の電流特性の変化を検出するステップと、
を含む、試料中のオピオイドを検出する方法。
【請求項15】
前記作用電極(2)と前記対電極(4)との間の電圧は、-0.6Vから0.2Vの範囲内で走査される、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記作用電極(2)と前記対電極(4)との間の電圧は、-0.5Vから1.5Vの範囲内で走査される、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項17】
走査速度は2.5~40mV/sの範囲である、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層試験ストリップ、特に試料中のオピオイド及びその代謝産物を検出するための多層試験ストリップ、及びそのような多層試験ストリップの製造方法に関する。さらに、本発明は、多層試験ストリップを含むオピオイド及びそれらの代謝産物の検出のためのシステム及び測定回路に関する。さらに、本発明は、試料中のオピオイドの測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モルヒネ(MO)、コデイン(CO)、トラマドール(TR)、オキシコドン(OXY)及びフェンタニル(FEN)は、激しい痛みを管理するために広く使用されているオピオイドである。これらのオピオイドは、広く使用されており、急性及び慢性の痛みの治療に非常に効果的な鎮痛剤である。しかしながら、患者の安全性を確保しながら治療の効能を確立することは、オピオイドの使用に関連する個々の薬物動態学的及び遺伝薬理学的因子のために困難である(図24)。
【0003】
これらの因子は、投与時に部分的又は完全に不活性であるが体内で活性型に化学的に変換されるCO及びTRなどのプロドラッグの使用に特に影響を与える。COは最初にN-脱メチル化によりノルコデイン(NC)に代謝され、さらにO-脱メチル化によりその活性型MO、薬理学的に活性な鎮痛薬に代謝される。MO及び6-アセチルモルヒネは、ヘロイン薬物検査で検査される主な代謝産物でもある。TRは同様に、その主な活性代謝産物O-デスメチルトラマドール(ODMT)に代謝される。COとTRの両方の代謝に関与する酵素、肝酵素CYP2D6の代謝活性は、非常に個人的であるため、COとTRの鎮痛効果は効果なしから高感度にまで及ぶ。さらに、投与時に活性であるオピオイドの薬物動態学的パラメーター(排泄率など)も非常に個人的である。
【0004】
試料中のオピオイド濃度の決定は、現在、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)及び質量分析法と組み合わせた液体クロマトグラフィー(LC-MS)を使用して実施されている。これらの方法を使用して、ヒトにおけるオピオイドの代謝における個人間変動、特にプロドラッグの活性化を検出及び定量化できる。しかし、これらの方法は高価で時間がかかるため、疼痛管理やオピオイド中毒の鑑別診断には実用的ではない。さらに、プロトコルを実施して結果を分析するには、高度なスキルを持つ専門家が必要である。
【0005】
電気化学的検出方法は、安価で、迅速で、高感度であるとともに、操作が比較的簡単であることがわかっている。そのような方法は、試料中のオピオイドの検出のために調査されてきた。しかし、オピオイドの治療濃度が非常に低いため(例えば、投薬に応じてCO及びMOの治療濃度は数十~数百nMの範囲である;通常、治療濃度は約100nM以下のオーダーである)、また、生体試料中のアスコルビン酸(AA)や尿酸(UA)などの電気活性干渉物質の濃度が高いため(100~500μM)、オピオイドの選択的定量検出は複雑で、直接的な電気化学的検出は困難である。MOの検出(Li 2010、Rezaei 2015、Dehdashtian 2016)及びCOの検出(Li 2013、Piech 2015)は幾つかのグループによって報告されてきたが、AA及びUAなどの干渉物質の存在下でのMOとCOの同時検出を報告したグループはほとんどない(Li 2014、Ensafi 2015、Taei 2016)。しかし、これらの研究では、例えば血液試料において、予期されるよりも低いレベルのAA及びUAですでに許容レベルに達することがわかった。
【0006】
最近、アモルファスカーボン、カーボンナノチューブ(CNT)及び様々な他の形態のグラファイトなどの炭素系材料が、特に新規の電極材料として使用するために、大きな注目を集めている。炭素材料は、大きな表面積、高い機械的強度、高い電気伝導率、及び電極触媒活性などの独特の構造と並外れた特性とを備えている。これらの新規電極材料の電極触媒特性は、ボルタンメトリー検出の選択性に大きく貢献してきたが、そのような炭素材料の電極触媒特性及び表面処理のみでは、オピオイドの電気化学的検出及び定量における上記及び可能性のある他の干渉物質を完全に排除するには不十分である。
【0007】
スルホン化コポリマーであるナフィオンなどの選択透過膜は、当技術分野で知られており、防汚性及びカチオン交換特性により広く使用されており、電気化学的測定において選択性の増加及び長期信号安定性を提供する。特にナフィオン膜は、妥当な走査速度で高速電子移動をサポートすることが示されている。親水性の負に帯電したスルホン酸基により、正に帯電した分析物の事前濃縮とカチオン性分析物の選択的検出が可能になる。AAやUAなどの幾つかの干渉物質が(中性pHで)溶液中にアニオン性分子として存在するため、多くの研究で示されているように、標的分析物とのそれらの干渉をナフィオン膜によって大幅に低減することができる(Rocha 2006、Hou 2010、Ahn 2012)。ナフィオン膜はまた、ナノサイズの親水性チャネルによるサイズ排除効果を示し、大きな分子を除去する。
【0008】
生体分子に加えて、他の干渉アニオン性薬物分子(生理学的pH)も生体試料中でオピオイドと共存する。特に、非ステロイド系抗炎症薬は高濃度で存在する。これらの分子の干渉は、ナフィオンを使用して排除できる。さらに、ナフィオン膜は、カチオンを選択的に濃縮する拡散バリアを提供する。このため、パラセタモール、キサンチン及びヒポキサンチンなどの中性種の存在下では、カチオンに対する選択性も向上する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、独立請求項の特徴によって定義される。幾つかの特定の実施形態は、従属請求項に定義されている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様によれば、炭素系作用電極、炭素系対電極、擬似参照電極、電極を直接電源に接触させるための接点、及び選択透過膜層を含む電極アセンブリ層が堆積された基板を含む多層試験ストリップが提供され、作用電極及び対電極は、同じ炭素系材料を含み、擬似参照電極、作用電極及び対電極は、同じ平面内で互いに隣接して配置され、前記電極アセンブリ層は、基板と選択透過膜層との間に配置されている。
【0011】
本発明の第2の態様によれば、参照データを格納するように構成されたメモリと、本明細書に記載のストリップからの情報を処理し、本明細書に記載のストリップからの情報を参照データと比較し、本明細書に記載のストリップからの処理された情報について結論を導き出すように構成された少なくとも1つの処理コアと、を備える装置が提供される。
【0012】
本発明の第3の態様によれば、試料を提供するステップと、試料を多層試験ストリップの電極アセンブリの作用電極(2)及び対電極(4)と電気的に接触させるステップと、作用電極(2)と対電極(4)との間の電圧を変化させるステップと、作用電極(2)と対電極(4)との間の電流を、作用電極(2)と対電極(4)との間に印加される電圧に関連して測定するステップと、試料中の1つ以上のオピオイド分析物の電流特性の変化を検出するステップと、を含む、試料中のオピオイドを検出する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1a】本発明の少なくとも幾つかの実施形態による電極の製造方法を示す。
図1b】本発明の少なくとも幾つかの実施形態による電極の製造方法を示す。
図1c】本発明の少なくとも幾つかの実施形態による電極の製造方法を示す。
図1d】本発明の少なくとも幾つかの実施形態による電極の製造方法を示す。
図2a】ガラス基板上にプレス転写され、ナフィオンで被覆されたCNTネットワークの平面図及び断面図を示す。
図2b】ガラス基板上にプレス転写され、ナフィオンで被覆されたCNTネットワークの平面図及び断面図を示す。
図2c】ガラス基板上にプレス転写され、ナフィオンで被覆されたCNTネットワークの平面図及び断面図を示す。
図3a】本発明の少なくとも幾つかの実施形態をサポートすることができる例示的な装置を示す。
図3b】本発明の少なくとも幾つかの実施形態をサポートすることができる例示的な装置を示す。
図3c】本発明の少なくとも幾つかの実施形態をサポートすることができる例示的な装置を示す。
図3d】本発明の少なくとも幾つかの実施形態をサポートすることができる例示的な装置を示す。
図4a】a)1M KCl中のFe(CN) 4-3-におけるCNT及びCNT+ナフィオン電極のサイクリックボルタモグラムを示す。走査速度100mV/s又は500mV/s。
図4b】b)1M KCl中のIrCl 2-におけるCNT及びCNT+ナフィオン電極のサイクリックボルタモグラムを示す。走査速度100mV/s又は500mV/s。
図4c】c)1M KCl中のFcMeOHにおけるCNT及びCNT+ナフィオン電極のサイクリックボルタモグラムを示す。走査速度100mV/s又は500mV/s。
図4d】d)PBS中のFcMeOHにおけるCNT及びCNT+ナフィオン電極のサイクリックボルタモグラムを示す。走査速度100mV/s又は500mV/s。
図4e】e)1M KCl中のRu(NH 2+3+におけるCNT及びCNT+ナフィオン電極のサイクリックボルタモグラムを示す。走査速度100mV/s又は500mV/s。
図4f】f)PBS中のRu(NH 2+3+におけるCNT及びCNT+ナフィオン電極のサイクリックボルタモグラムを示す。走査速度100mV/s又は500mV/s。
図5a】a)500μMのAA及びUAにおけるCNT及びCNT+ナフィオン電極の微分パルスボルタモグラムを示す。
図5b】b)50μMのMO及びCOにおけるCNT及びCNT+ナフィオン電極の微分パルスボルタモグラムを示す。
図6a】500μMのAA、500μMのUA、及びc)10nMから2.5μMに増加するMO濃度を有する10μMのCO、における初期及びナフィオン被覆SWCNTN電極の微分パルスボルタモグラムを示す。走査速度50mV/s。
図6b】500μMのAA、500μMのUA、及びc)10nMから2.5μMに増加するMO濃度を有する10μMのCO、における初期及びナフィオン被覆SWCNTN電極の微分パルスボルタモグラムを示す。走査速度50mV/s。
図6c】500μMのAA、500μMのUA、及びd)10nMから2.5μMに増加するCO濃度を有する10μMのMO、における初期及びナフィオン被覆SWCNTN電極の微分パルスボルタモグラムを示す。走査速度50mV/s。
図6d】500μMのAA、500μMのUA、及びd)10nMから2.5μMに増加するCO濃度を有する10μMのMO、における初期及びナフィオン被覆SWCNTN電極の微分パルスボルタモグラムを示す。走査速度50mV/s。
図7a】断面SEM画像から測定した浸漬被覆ナフィオンフィルムの厚さプロファイル(マイクロメートル単位のy軸厚、全断面にわたるx軸測定点、任意の距離)を示す。
図7b】1M KCl中の1mMのIrClに対する、走査速度の平方根の関数として測定されたサイクリックボルタンメトリーピーク電流(酸化及び還元ピーク)を示す。
図7c】c)裸のSWCNT電極を備えたPBS中の1mMのFcMeOHに対する、走査速度の平方根の関数として測定されたサイクリックボルタンメトリーピーク電流(酸化及び還元ピーク)を示す。
図7d】d)ナフィオン被覆SWCNT電極を備えたPBS中の1mMのFcMeOHに対する、走査速度の平方根の関数として測定されたサイクリックボルタンメトリーピーク電流(酸化及び還元ピーク)を示す。
図7e】e)裸のSWCNT電極を備えた1M KCl中の1mMのRu(NHに対する、走査速度の平方根の関数として測定されたサイクリックボルタンメトリーピーク電流(酸化及び還元ピーク)を示す。
図7f】f)ナフィオン被覆SWCNT電極を備えた1M KCl中の1mMのRu(NHに対する、走査速度の平方根の関数として測定されたサイクリックボルタンメトリーピーク電流(酸化及び還元ピーク)を示す。
図7g】裸及びナフィオン被覆SWCNT電極を備えたPBS中の1mMのRu(NHのサイクリックボルタンメトリー測定を示す。
図8a】試験用の試料例の構成を示す。試料は、血漿、白血球及び血小板、及び赤血球を含む全血で構成されている。血漿部分は次に、AA(50~200μmol/l)、UA(100~500μmol/l)、イブプロフェン(~100μmol/l)、アスピリン(~100μmol/l)、パラセタモール(~100μmol/l)及びMO(1~100nmol/l)を含む分析物の挑戦的な(challenging)マトリックスを含む。
図8b】全血試料の受動フィルタリングを示し、例えば、赤血球、白血球及び血小板を除去して、タンパク質、アニオン及びカチオン分析物がフィルタを通過できるようにし、カチオン分析物は選択透過膜を通過し、中性及びアニオン成分の通過を防ぐ。これにより、カチオン分析物のみが試験ストリップの作用電極に接触される。
図9】本発明の少なくとも幾つかの実施形態による電極の断面の走査型電子顕微鏡写真である。示されているのは、ガラス基板上に堆積されたSWCNTNと、SWCNTNを被覆する選択透過膜であるナフィオンの層とである。
図10a】5%ナフィオン溶液で被覆(溶液中に5秒間浸漬被覆)されたSWCNT電極で測定された500uMのAA及び500uMのUAの存在下でのパラセタモール(PA)の異なる濃度の微分パルスボルタモグラムを示す。
図10b】5%ナフィオン溶液で被覆(溶液中に5秒間浸漬被覆)されたSWCNT電極で測定されたリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中のモルヒネ(MO)及びコデイン(CO)の異なる濃度の微分パルスボルタモグラムを示す。
図10c】500uMのAA、500uMのUA及び10uMのCOの存在下でのMOの異なる濃度の微分パルスボルタモグラム、及びMOの濃度の関数としてのピーク電流の2つの線形範囲を示す。
図10d図10cのMOの低濃度の拡大図である。
図10e】無希釈のプールされた血漿で測定されたMOの異なる濃度の微分パルスボルタモグラム、及び低濃度の拡大図を示す。
図11】本発明の少なくとも幾つかの実施形態による試験ストリップ、並びに分析物に電流を流した結果である分析物の電気化学的反応(MOの酸化)を示し、これにより、ボルタモグラムにおいて分析物(MO)の信号が生じる。示されている試験ストリップは、ナフィオンなどの選択透過膜であるカチオン交換膜(11)、分析される試料の受動フィルタリング用のフィルタ(10)、及びテフロン(登録商標)膜などの疎水性保護膜(9)が堆積された電極アセンブリ(1)を含む。
図12】本発明の少なくとも幾つかの実施形態による試験ストリップで使用するための電極アセンブリ(1)を説明する。電極アセンブリ(1)は、作用電極(2)、対電極(4)、及び擬似参照電極(3)を備える。作用電極(2)は、チタン/四面体アモルファスカーボン(Ti/taC)電極である。擬似参照電極(3)と対電極(4)は、銀から形成される。電極は同じ平面内で互いに電気的に分離して配置され(8)、作用電極(2)は擬似参照電極(3)と対電極(4)との間に配置される。各電極(2、3、4)には、直接電源に接続するための接点(5、6、7)が設けられる。接点(5、6、7)は通常、銀、例えば銀ペーストで作られる。
図13】Ti/taC電極での、幾つかのオピオイド及び一般的な干渉物質の微分パルスボルタンメトリー測定を示す。酸化ピークの位置を示す説明図であり、測定された電流は縮尺通りではない。
図14】SWCNT電極での、幾つかのオピオイドの微分パルスボルタンメトリー測定を示す。
図15a】プレーン及びナフィオン被覆SWCNT電極での、a)MOの微分パルスボルタモグラムを示す。ナフィオン膜を使用すると、MOとCOの両方に対するSWCNT電極の選択性と感度が向上する。
図15b】プレーン及びナフィオン被覆SWCNT電極での、b)COの微分パルスボルタモグラムを示す。ナフィオン膜を使用すると、MOとCOの両方に対するSWCNT電極の選択性と感度が向上する。
図16】MO及びCOの10μM溶液中の保持時間の関数として測定されたDPV信号を示す。
図17a】a)プレーンSWCNT電極での、モルヒネ-3-グルクロニド(M-3-G)のDPV走査を示す。
図17b】b)ナフィオン被覆SWCNT電極での、モルヒネ-3-グルクロニド(M-3-G)のDPV走査を示す。
図18a】ナフィオンを有さないTi/ta-C電極で測定した、別々の溶液中の幾つかの濃度のa)トラマドール(TR)のDPVを示す。
図18b】ナフィオンを有さないTi/ta-C電極で測定した、別々の溶液中の幾つかの濃度のb)O-デスメチルトラマドール(ODMT)のDPVを示す。
図18c】c)ナフィオンを有さないTi/ta-C電極で測定した同じ溶液中の50μMのTR及び50μMのODMTのDPVを示す。
図18d】d)ナフィオンで被覆されたTi/taC電極で測定された同じ溶液中の50μMのTR及び50μMのODMTのDPVを示す。
図19】プレーン及びナフィオン被覆SWCNT電極でのAA及びUAのDPVを示す。
図20a】プレーン及び2.5%被覆Ti/taC電極での50μMのa)キサンチン(Xn)のDPVを示す。
図20b】プレーン及び2.5%被覆Ti/taC電極での50μMのb)ヒポキサンチン(HXn)のDPVを示す。
図21】プレーンSWCNT電極(黒色)及びナフィオン被覆SWCNT電極(灰色)での無希釈血漿のDPV測定を示す。
図22】ナフィオン被覆SWCNT電極での、モルヒネの濃度を増加させて加えた(spiked)無希釈ヒト血漿のDPVを示す。
図23】50μMのケタミンのDPV測定を示す。
図24】投薬間の所与のオピオイドの血中濃度の変化を示す。
図25】本発明の少なくとも幾つかの実施形態による幾つかの電極アセンブリを示す。各電極アセンブリ(1)は、作用電極(3)、参照電極(4)、及び対電極(2)を含む。各電極には、直接外部電源に接続するための3つの接点(5、6、7)が設けられる。
図26】炭素系材料で作られた作用電極(2)、炭素系材料で作られた対電極(4)、銀で作られた擬似参照電極(3)、及び電極(2、3、4)を直接外部電源に接続するための接点(5、6、7)を含む、本発明の少なくとも幾つかの実施形態による試験ストリップを示す。
図27】炭素系材料で作られた作用電極(3)、炭素系材料で作られた対電極(2)、銀で作られた擬似参照電極(4)、及び電極を外部電源に直接接続するための接点(5、6、7)を含む、本発明の少なくとも幾つかの実施形態による試験ストリップ電極アセンブリを示す。mmで示された寸法を有する電極アセンブリも示されている。
図28a】裸のSWCNT電極及びナフィオン被覆SWCNT電極での、50uMのMO(a)の微分パルスボルタンメトリー測定を示す。この図は、如何にナフィオン膜がオピオイド分析物のピーク数を減らし、選択性をさらに高めるか、を示している。
図28b】裸のSWCNT電極及びナフィオン被覆SWCNT電極での、50uMのCO(b)の微分パルスボルタンメトリー測定を示す。この図は、如何にナフィオン膜がオピオイド分析物のピーク数を減らし、選択性をさらに高めるか、を示している。
図29a】a)裸のSWCNT電極での、PBS中の50uMのモルヒネ-3-グルグロニド(M3G)及び100uMのM3Gの微分パルスボルタンメトリー測定を示す。
図29b】b)ナフィオンを有するSWCNTでの、PBS中の50uMのモルヒネ-3-グルグロニド(M3G)及び100uMのM3Gの微分パルスボルタンメトリー測定を示す。ナフィオン膜は、MOの不活性代謝産物を効率的に除去する。
図30a】フェンタニルの検出における作用電極のカソード調整の効果を示す。
図30b】フェンタニルの検出における作用電極のカソード調整の効果を示す。
図31a】5%ナフィオン溶液で被覆(溶液中に5秒間浸漬被覆)されたSWCNT電極で測定されたリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中のモルヒネ(MO)及びコデイン(CO)の異なる濃度の微分パルスボルタモグラムを示す。MOに加えて、CO濃度に対するピーク電流の線形範囲も示している。
図31b】5%ナフィオン溶液で被覆(溶液中に5秒間浸漬被覆)されたSWCNT電極で測定されたリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中のモルヒネ(MO)及びコデイン(CO)の異なる濃度の微分パルスボルタモグラムを示す。MOに加えて、CO濃度に対するピーク電流の線形範囲も示している。
図32a】500uMのAA、500uMのUA及び10uMのCOの存在下でのMOの異なる濃度の微分パルスボルタモグラム、並びにMO及びCOの濃度の関数としてのピーク電流の2つの線形範囲を示す。
図32b】500uMのAA、500uMのUA及び10uMのCOの存在下でのMOの異なる濃度の微分パルスボルタモグラム、並びにMO及びCOの濃度の関数としてのピーク電流の2つの線形範囲を示す。
図33】本発明の少なくとも幾つかの実施形態による電気図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
個々の薬物動態学的及び遺伝薬理学的因子を確立するために、患者のオピオイドの血中濃度を同時に定量的に測定できることが重要である。COとヘロインから代謝的に生成されたMOを決定する場合、特にモルヒネを正確に測定する必要がある。本研究で使用される電極は、AA、UA及びCOの存在下で50nMのモルヒネの電流を繰り返し測定し、MOのピーク電流は2つの線形範囲を生成することがわかる。低い範囲は、痛みの治療のため、またほとんどの中毒(intoxicaton)及び被毒(poisoning)の場合の治療濃度内に十分収まっている。
【0015】
従って、実施形態の目的は、上述の欠点の少なくとも幾つかを克服し、試料中のオピオイドを検出するための多層試験ストリップを提供することである。一実施形態では、多層試験ストリップは、炭素系作用電極、炭素系対電極、擬似参照電極、電極を直接電源に接触させるための接点、及び選択透過膜を含む電極アセンブリ層が堆積される基板を含む。一実施形態では、擬似参照電極、作用電極、及び対電極は、同じ平面内で互いに隣接して配置される。一実施形態では、電極アセンブリ層を形成する電極は、互いに電気的に分離されている。さらなる実施形態では、作用電極及び対電極は同じ炭素系材料を含む。さらに別の実施形態では、対電極は参照電極と同じ材料で形成される。好ましい実施形態では、対電極及び参照電極は、作用電極を形成する材料とは異なる材料から形成される。一実施形態では、作用電極に含まれる炭素系材料は、対電極に含まれる炭素系材料とは異なる。一実施形態では、電極アセンブリ層は、基板と選択透過膜層との間に配置される。
【0016】
選択透過層は、固有の選択透過性を提供する、すなわち、UA及びAAなどのアニオン干渉物質、及びキサンチン(Xn)及びヒポキサンチン(HXn)などの中性干渉物質はブロックされ、試料から電極へ通過できない。このような試験ストリップを使用すると、サイクリックボルタンメトリー(CV)、リニアスイープボルタンメトリー(LSV)、通常のパルスボルタンメトリー、方形波ボルタンメトリー、微分パルスボルタンメトリー(DPV)、吸着ストリッピングボルタンメトリー、クロノクーロメトリー及びクロノアンペロメトリーでオピオイドの電気化学的検出を実行できる。
【0017】
一実施形態では、炭素系電極は、四面体アモルファスカーボンなどのアモルファスカーボン、ダイヤモンド様カーボン、グラファイト、カーボンナノチューブ、及びそれらの混合物からなる群から選択される炭素を含む。さらなる実施形態では、炭素系電極は、単層カーボンナノチューブネットワーク(SWCNTN)を含む。SWCNTNは導電性が高く、ワイヤの製造に使用でき、直接電源に接触させることができる。例えば、薄膜をパターン化して、ワイヤとすることができる導電線及び電極を作製することができる。
【0018】
オピオイド及び他のほとんどの生体及び薬物分子は、いわゆる内圏型(inner sphere)の分析物であり、電極材料の表面化学に敏感であることを意味する。従って、酸化電位と感度は、炭素-炭素結合と表面官能基を変更することで調整され得る。同様に、カーボンナノ材料の合成に使用される表面金属触媒も電気化学的特性に影響を与える。これらの触媒金属の表面負荷とそれらの酸化状態を制御することも、選択性を高めるために使用できる。従って、一実施形態では、1つ以上の炭素系電極は、1つ以上の触媒金属をさらに含む。好ましい実施形態では、1つ以上の炭素系電極はチタンを含む。
【0019】
上述のように、電極アセンブリは基板上に堆積される。一実施形態では、基板は、ポリマー及びガラスからなる群から選択される。ポリマー/ガラス基板は、安価な使い捨ての試験ストリップを提供する。
【0020】
作用電極及び対電極と同様に、試験ストリップは、準参照電極と呼ばれることもある擬似参照電極をさらに含む。作用電極とは、対象の反応が起こる電気化学システムの電極である。対電極とは、電気化学セルを流れる電流を単に運ぶ役割をする電極である。擬似参照電極とは、そこに感知できるほどの電流を流さない電極であり、作用電極における電位を観察又は制御するために使用される。一実施形態では、擬似参照電極は銀を含む。好ましい実施形態では、擬似参照電極は、銀-塩化銀(Ag/AgCl)を含む。特定の実施形態では、擬似参照電極は白金を含む。
【0021】
実施形態において、選択透過膜層は、ナフィオン、酢酸セルロース、従来の透析膜、ポリビニルスルホネート、カルボキシメチルセルロース、ポリリジン、過酸化ポリピロール及び他のスルホン化ポリマーからなるポリマーの群から選択される選択透過膜を含む。ナフィオンなどの一般的に使用されるポリマーフィルムは、サイズ排除、電荷排除、イオン交換、錯体化、触媒及び導電特性を示す。好ましい実施形態では、選択透過膜はナフィオンを含む。
【0022】
広範囲のサイクリックボルタンメトリー(CV)及び微分パルスボルタンメトリー(DPV)の結果が、ナフィオン膜で被覆された電極で実施された。正と負の両方の電荷を持つ様々な酸化還元プローブでのCV結果は、仮特許に添付された原稿で見ることができる。結果は、負に帯電したフェリシアン化物Fe(CN)と塩化イリジウムIrClがナフィオン被覆によって除外され、カチオン性ヘキサアンミンルテニウムRu(NHとフェロセンメタノールFcMeOHが膜の下で濃縮されることを示している。これらの結果は、ナフィオンの既知の選択透過特性を確認している。
【0023】
モルヒネ(図15a)及びコデイン(図15b)溶液中のナフィオン被覆SWCNT電極で実施されたDPV実験は、ナフィオン被覆電極がモルヒネ及びコデインの両方に対してピーク数が少なく、従って電極の選択性が増加することを示す。モルヒネの選択性は、電流の大幅な減少又はより高い潜在的ピークの完全な消失によって特に増加し、モルヒネとコデインの同時検出が可能になる。さらに、ナフィオン被覆はモルヒネの信号、特にコデインの信号を強化することがわる。これはおそらく、ギブス-ドナン効果によりフィルムの下の濃度が増加したためである。仮特許の原稿は、ナノモル濃度のモルヒネとコデインを同時に検出できることを示している。
【0024】
保持時間(電極を溶液と接触させてから測定を開始するまでの時間)の関数としての濃縮を、濃度10μMのモルヒネ及びコデインを有する溶液でさらに研究した。図16は、保持時間の関数として測定された電流を示し、モルヒネとコデインの両方の信号電流が保持時間とともに増加することを明確に示している。
【0025】
ナフィオン膜はまた、実際の試料に存在する幾つかのオピオイド代謝産物からの干渉を抑制するのに有用であると予測される。モルヒネの代謝産物ですでに幾つかの測定が行われており、オキシコドンの代謝産物で追加の測定を行う予定である。
【0026】
モルヒネの主な代謝産物はグルクロニドであり、グルクロニドの炭素3又は6へのカップリングにより生成される。モルヒネ-6-グルクロニド(M-6-G)はモルヒネの主要な活性代謝産物であるが、モルヒネ-3-グルコロニド(M-3-G)は、活性オピオイドアゴニストではない。図17は、ナフィオン被覆の有無によるM-3-Gの測定を示す。M-3-Gはナフィオン膜を透過できないことがわかる。モルヒネグルクロニド、一般にグルクロニドは膜を透過できず、モルヒネに対する選択性の増加を誘発すると予想される。
【0027】
オピオイドの選択的かつ高感度な検出におけるナフィオン被覆の効果は、トラマドール(TR)及びその主な代謝産物O-デスメチルトラマドール(ODMT)を用いた実験でも見ることができる。図18では、これら2つの分析物を、ナフィオン被覆の有無にかかわらず、四面体アモルファスカーボン(ta-C)電極で測定している。プレーンta-C電極はTRとODMTの両方を別々に見ることができるが(それぞれ図18a及び図18b)、両方とも幾つかの酸化ピークを示し、従って同じ溶液から測定することはできない(図18c)。
【0028】
対照的に、電極をナフィオン膜で被覆することにより、各分析物について1つのピークのみが記録され、従ってTR及びODMTを同じ溶液から選択的に検出することができる(図18d)。現在、文献にはそのような結果は見つからない。ただし、トラマドールの酸化電位は、電極材料によって大きく異なる。例えば、幾つかの予備的な結果によると、SWCNT電極ではTRとODMTの信号が重複する。従って、実際の生体試料からのトラマドールを測定する幾つかの研究は、実際にはトラマドールとO-デスメチルトラマドールの重ね合わせを測定している可能性がある。
【0029】
カチオン交換膜であるナフィオン被覆は、アスコルビン酸(AA)及び尿酸(UA)などの負に帯電した種が電極に到達するのをブロックすることにより、選択性をさらに高める。図19は、AA及びUA溶液中のプレーン及びナフィオン被覆SWCNT電極のDPVを示す。
【0030】
キサンチン及びヒポキサンチンなどの生理学的pHで中性電荷を持つ他の生体分子によって引き起こされる干渉(図20)もta-C電極で研究されている。ナフィオン被覆はまた、これらの分子の干渉も減らすようである。
【0031】
また、実際のヒト血漿試料を用いて実験を行った。図21に示す初期実験は、ナフィオン被覆が血漿試料中の干渉種の干渉を効果的に制限できることを示す。図22はさらに、様々な濃度のモルヒネを添加した(spiking)後、無希釈のヒト血漿試料でモルヒネを検出できることを示す。
【0032】
さらなる実施形態では、ストリップはさらにフィルタ層を含む。フィルタ層は、アッセイ用に提供された全血試料から血液形成要素(血球)を受動的にフィルタリングするために提供される(図8)。一実施形態では、ストリップは、選択透過膜層がフィルタ層と電極アセンブリ層との間に位置するように配置される。
【0033】
ストリップのさらなる実施形態は、疎水性膜/フィルム層をさらに含む。一実施形態においてストリップは、フィルタ層が選択透過膜層と疎水性膜/フィルム層との間に位置するように配置される。さらなる実施形態では、疎水性膜/フィルム層はテフロン(登録商標)を含む。疎水性膜/フィルム層は保護層として存在する。
【0034】
一実施形態では、血液形成要素(血液細胞)の受動的濾過が可能なフィルタ、カチオン交換膜及び炭素電極、サイズ及び電荷排除の両方を示す選択透過膜、カーボンナノチューブ、アモルファスカーボン又はグラファイトなどの炭素系電極を含む多層電極が提供される。オピオイド及び他のほとんどの生体分子及び薬物分子は、いわゆる内圏型の分析物であり、電極材料の表面化学に敏感であることを意味する。従って、酸化電位と感度は、炭素-炭素結合と表面官能基を変更することで調整され得る。同様に、カーボンナノ材料の合成に使用される表面金属触媒も電気化学的特性に影響を与える。これらの触媒金属の表面負荷とそれらの酸化状態を制御することも、選択性を高めるために使用できる。生理学的条件下で主に正に帯電しているオピオイド(すなわち、カチオン)の場合、選択透過膜層は、ナフィオンなどのカチオン選択透過膜で構成される。オピオイドが膜の下で濃縮され、膜が生体液に高濃度で存在するアスコルビン酸や尿酸などの負に帯電したアニオンをブロックするため、これにより選択性が向上する(図11及び12を参照)。
【0035】
従って、実施形態では、指刺しキットで採取された少量(10~60μl)の血液試料を分析するために、作用電極、対電極及び擬似参照電極を含む試験ストリップが提供される。図11は、そのような電極が電気化学的にそれを酸化することにより如何にモルヒネを検出するかを示す。Ti/ta-C作用電極と銀の対電極及び参照電極を含む試験ストリップを図12に示す。
【0036】
試験ストリップは、無希釈の血漿/血液中の遊離モルヒネの検出に有用である。試験ストリップは、ヒドロキシルのみ又はヒドロキシル及びアミンを検出するように設計することができ、幾つかの選択性を備えた複数のオピオイドの検出、例えばモルヒネとコデインの同時選択検出などを可能にする。さらに、代謝的に生成された活性代謝産物であるモルヒネ(コデイン由来)及びo-デスメチルトラマドール(トラマドール由来)の検出も可能である。また、以下で説明するように、試験ストリップはグルコロニドの識別を提供する。ta-C電極とSWCNTの違いからわかるように、電気化学的酸化電位は表面化学に大きく依存する。これまでの特性評価では、SWCNTは低濃度の欠陥と酸素含有基を備えたグラファイトである一方、ta-Cはダイヤモンド様のバルクとアモルファスsp2リッチの表面層を有することが示されてきた。これらのタイプの違いは、電極材料の選択又は表面官能化処理を通じて、試験ストリップの選択性と感度を調整するために使用することができる。
【0037】
試験ストリップは、試験される試料の内容に関する情報を提供する。従って、本発明の実施形態は、試験ストリップによって提供される情報を分析するための装置に関する。従って、一実施形態では、参照データを格納するように構成されたメモリと、上述の実施形態の何れか1つによるストリップからの情報を処理し、上述の実施形態の何れか1つによるストリップからの情報を参照データと比較し、上述の実施形態の何れか1つによるストリップからの処理された情報について結論を導き出すように構成された少なくとも1つの処理コアと、を備える装置が提供される。
【0038】
上記のように、試験ストリップはオピオイドの検出に特に有用である。上記の図1に示すこれらの多層電極を使用して、リン酸緩衝液(PBS)中で幾つかのオピオイドを測定した。これらの測定に使用した炭素材料は、チタンの上部に堆積された四面体アモルファスカーボン(Ti/ta-C)及び単層カーボンナノチューブ(SWCNT)であった。結果は、酸化電位の感度と位置の両方でいくらかの変動を示す。測定されたオピオイドのほとんどは、ヒドロキシル基とアミン基の酸化に起因する幾つかの酸化ピークも示す。図13は、Ti/ta-C電極での幾つかのオピオイド並びに幾つかの一般的な干渉物質の測定値を示す。SWCNT電極での同じオピオイドの測定値を図14に示す。
【0039】
従って、本発明の実施形態は、試料中のオピオイドを検出する方法に関する。一実施形態では、方法は、試料を提供するステップと、試料を多層試験ストリップの電極アセンブリの作用電極(2)及び対電極(4)と電気的に接触させるステップと、作用電極(2)と対電極(4)との間の電圧を変化させるステップと、作用電極(2)と対電極(4)との間の電流を、作用電極(2)と対電極(4)との間に印加される電圧に関連して測定するステップと、試料中の1つ以上のオピオイド分析物の電流特性の変化を検出するステップと、を含む。
【0040】
さらなる実施形態では、方法は、試料を提供するステップと、試料を上述の実施形態の何れかによる多層試験ストリップの電極アセンブリの作用電極(2)及び対電極(4)と電気的に接触させるステップと、作用電極(2)と対電極(4)との間の電圧を変化させるステップと、作用電極(2)と対電極(4)との間に印加される電圧に関連して作用電極(2)と対電極(4)との間の電流を測定するステップと、試料中の1つ以上のオピオイド分析物の電流特性の変化を検出するステップと、を含む。
【0041】
一実施形態では、作用電極(2)と対電極(4)との間の電圧は、-0.6Vから0.2Vまで走査される。好ましい実施形態では、作用電極(2)と対電極(4)との間の電圧は、-0.5Vから1.5Vまで走査される。
【0042】
さらなる実施形態では、走査速度は2.5~40mV/sの範囲にある。
【0043】
さらなる実施形態において、方法は、試料を提供するステップと、上述の実施形態の何れかによる試験ストリップを提供された試料と接触させるステップと、試験ストリップに電流を流すステップと、試料中の1つ以上のオピオイド分析物の電流特性の変化を検出するステップと、を含む。
【実施例
【0044】
[SWCNT合成]
SWCNTを、一酸化炭素雰囲気中で触媒としての浮遊フェロセンの熱分解により合成した。このプロセスは、Kaskelaら(2010)及びMoisalaら(2006)で詳細に説明されている。SWCNTは、表面エネルギーの最小化により気相でバンドルを形成する。バンドルは、ニトロセルロース膜(Millipore Ltd. HAWP、プレサイズ0.45μm)で収集され、そこから他の基板に転写できる。
【0045】
[電極作製]
SWCNTNをガラス(メッツラー)上にプレス転写し、高密度化した。室温のプレス転写プロセスは、Kaskelaら(2010)及びIyerら(2015)で詳細に説明されている。ガラスは1cmx2cmのピースに事前に切断され、高速液体クロマトグラフィーグレードアセトン(Sigma Aldrich)で超音波により洗浄した。洗浄後、ピースに窒素を吹き付け、120℃のホットプレートで数分間焼き付けた。SWCNTNを備えた膜フィルタを切断し、SWCNTN側を下にしてガラスピース上に置き、2枚のガラススライドの間に押し付けた。フィルタの裏張りを慎重に剥がした後、付着したSWCNTNを数滴のエタノールで高密度化させ、XX℃でxx分間焼き付けた(図1a)。
【0046】
銀の接点パッドを、導電性銀塗料(Electrolube)により作製した。銀を室温で15分間乾燥させた後、60℃に予熱したホットプレートで3分間焼き付けた。ワイヤを、銀エポキシ(MG Chemicals)を用いて銀の接点パッドに接触させた後、エポキシを一晩硬化させた(図1b)。電極を、3mmの穴のあるPTFEフィルム(Saint-Gobain Performance Plastics CHR 2255-2)で覆った(図1c)。最後に、電極をナフィオンで浸漬被覆した。電極を5重量%ナフィオン溶液(ナフィオン117溶液、Sigma Aldrich)に5秒間浸漬し、室温で一晩乾燥させた(図1d)。
【0047】
[特性評価]
[電気化学]
サイクリックボルタンメトリー(CV)及び微分パルスボルタンメトリー(DPV)測定を、CH Instruments(CHI630E)ポテンシオスタットで実施した。参照電極としてAg/AgCl電極(+0.199VvsSHE、放射計分析)、対電極としてグラファイトロッドを有する3電極セルを、全ての電気化学測定に使用した。
【0048】
SWCNTN及びナフィオンで被覆されたSWCNTNの電気化学的特性を、4つの酸化還元プローブ:FcMeOH、Ru(NH 2+3+、Fe(CN) 4-3-及びIrCl 2-で調べた。各プローブの濃度1mMの溶液はそれぞれ、1M KCl(Merck Suprapur)中又はPBS中のフェロセンメタノール(Sigma-Aldrich)、1M KCl中又はPBS中のヘキサアンミンルテニウム(III)塩化物(Sigma-Aldrich)、1M KCl中のヘキサシアノ鉄酸カリウム(III)(Sigma-Aldrich)、及び1M KCl中のヘキサクロロイリジウムカリウム(IV)(Sigma-Aldrich)から調製した。PBSのpHは7.4で、KClの場合であった。両方の電極タイプを、10、25、50、100、200、300、400、500、及び1000mV/sの走査速度で、室温において各酸化還元プローブで測定した。
【0049】
500μMのAA(L-アスコルビン酸、Sigma)及び500μMのUA(尿酸、Sigma)の原液を、PBS中に溶解することにより調製した。
【0050】
[MO&CO溶液]
MO及びCOを有する一連の濃度を、1mM及び0.5mMの原液から注入法により実施した。全てのDPV測定を、50mV/sの走査速度で行った。全ての測定で、溶液を少なくとも5分間Nで脱酸素化し、測定中は空気をパージした。
【0051】
[結果]
シリコン上にプレス転写され高密度化されたSWCNTNを、SEMにより画像化した。典型的な画像を図XXに示す。SWCNTNは、図xxに示すTEMでも画像化された。画像分析に基づいて、バンドル直径は3 20nmであるとわかった。フェロセン触媒の分解の結果として形成される鉄ナノ粒子は、明視野TEM画像で暗く表示され(図2を参照)、50nmよりも小さいことがわかった。X線光電子分光法(XPS)も、酸化シリコンウエハ上にプレス転写されたSWCNTNに対して行われ、以前の研究でも行われている(Iyerら(2015))。調査では、シリコン、酸素、及び炭素のスペクトルピークが見つかった。鉄の有意なピークは検出されなかった。
【0052】
[画像分析]
ナフィオン被覆の厚さを、全断面にわたる121のSEM画像から分析した(図2)。平均厚さは1.17±0.54μmであることがわかった。ナフィオン被覆の厚さの大きな変動は、堆積方法による可能性がある。液滴塗布(drop coating)は、電極を被覆するための非常に一般的な方法である。
【0053】
[ラマン分光]
図3は、a)初期のCNTネットワーク及びb)ナフィオン被覆CNTネットワークのラマンスペクトルを示す。顕著なピークは図にマークされている。図3b)は、ナフィオンで被覆されたガラス試料のスペクトルも示している。ナフィオン試料では、CF、CS、COC、SO 、及びCCを含む幾つかのピークが観察された。これらのピークは全て、ナフィオンで被覆されたCNT試料にも存在していた。
【0054】
292(CFひねり(twisting))、307(CFひねり)、381(CFはさみ(scissoring))、667(CF縦揺れ(wagging))、725(CF対称ストレッチ)、798(CSストレッチ)、971(COC対称ストレッチ)、1059(SO 対称ストレッチ)、1174(SO 縮退(degenerate)ストレッチ)、1207(CF縮退ストレッチ)、1291(CC縮退ストレッチ)、及び1372(CC対称ストレッチ)がナフィオンで観察された。
【0055】
初期のチューブについては、弱いDピークのみが観察され、少数のみの欠陥の存在を示している。ナフィオンで被覆された試料の1333付近のピークの強度と幅の増加は、少なくとも部分的には、ナフィオンで観察された1291(CC縮退ストレッチ)と1372(CC対称ストレッチ)の重なりによるものである可能性がある。D/G比の同様の変化が、ナフィオン-CNT及びPVDF-CNT複合材料で観察されている。ナフィオンバックボーンのCF基は電子受容体である。従って、金属CNTの電子密度が低下する界面でのCNTとフッ素間の供与体-受容体相互作用により、D/G比の変化が予想される。さらに、ナフィオンのスルホン酸基は、SWCNTをプロトン化できることが示されている。
【0056】
これは、Gピークの強度の拡大及び低下としてラマンスペクトルに反映される。Gピークの変化は、D/G比の変化にも寄与する。
【0057】
金属性の増加は、導電率の低下をもたらさない。Pドーピングは、フェルミ準位を価電子帯に向かってシフトさせる。
【0058】
RMBピークの出現は、全てのチューブがナフィオンで完全に被覆されていないことを示している。
【0059】
放射状呼吸モード(radial breathing mode;RBM)ピークはローレンツピークに適合しており、挿入図に示されている。式(1)が使用された。
【0060】
【数1】
【0061】
ここで、A=234nm/cm、及びB=10cm-1である。
【0062】
5つのRBMモードが初期のCNT試料について見出されたが、ナフィオン被覆試料については2つの明確なモードのみが観察された。
【0063】
[電気化学]
FcMeOH、Ru(NH 2+/3+、Fe(CN) 4-/3-、IrCl 2-を含む幾つかの既知の酸化還元系を使用して、SWCNT及びナフィオン被覆SWCNT電極の電気化学的特性を研究した。これらの中で、Ru(NH 2+/3+は外圏型(outer sphere)の酸化還元系であると考えられており、その電子移動は表面化学とは無関係である。FcMeOHもしばしば外圏型であるとみなされるが、炭素電極に吸着する可能性があることが報告されている。酸化還元プローブの電荷は、ナフィオン被覆を介した透過性に影響を与えることがわかる。負に帯電したFe(CN) 4-/3-及びIrCl 2-の電子移動において、前者はほぼ完全に抑制され、後者は完全に抑制される。Ru(NH 2+/3+のナフィオン被覆電極では電流の低下が観察されたが、FcMeOHでは電流の増加が観察された。観察された挙動が電極の変動に関連していないことを確認するために、各電極の1つを最初にRu(NH 2+/3+で、次にFcMeOHで測定した。どちらの場合も、同様の酸化及び還元電流とピーク電位分離が観察された(図4)。
【0064】
Ru(NH 2+/3+の拡散は、対イオンとナフィオンのかなりの静電的相互作用のために遅い可能性が高い。Etらは、Ru(NH 2+がナフィオンに対して非常に高い親和性を持っていることを示した。さらに、ナフィオンの構造は、スルホン化されていない大部分を含む。Szentimaryらは、非スルホン化領域は有機カチオンのイオン交換反応を促進する疎水性相互作用を可能にすることを示唆した。FcMeOHはRu(NHの溶解度よりもはるかに低い溶解度を持つ疎水性分子であるため、そのような疎水性相互作用は観察された挙動を説明するかもしれない。
【0065】
FcMeOH及びRu(NH 2+/3+の見掛け電位で観察されるシフトは、ナフィオン膜に組み込まれた酸化還元活性プローブで生じることが知られている。シフトの大きさは、支持電解質のイオン強度に依存する。FcMeOHとRu(NH 2+/3+を同じ電極で測定して、観測される差異がバッチごとの変動ではなく、分子の特性によるものであることを確認する必要がある。表1は、CNT及びナフィオン被覆CNT電極で使用された酸化還元プローブのピーク電位分離(ΔEp)、酸化及び還元電流を示している。
【0066】
【表1】
【0067】
CV実験において、AA及びUA信号は、ナフィオン被覆により完全に抑制され得る。遅いDPVでは、特にUAの完全な抑制ははるかに困難である。図5a)は、AA信号の合計抑制とUA信号の98.2%抑制を示す。
【0068】
図5b)は、50μMのMO及びCO溶液のDPVを示す。まず、MOとCOの両方がCNT電極で幾つかの酸化ピークを示すことに注意することが重要である。ナフィオン被覆電極では、各電極につき1つのピークのみが観察できる。酸化電流も増加するが、これはおそらく予備濃縮によるものである。
【0069】
個々の薬物動態学的及び遺伝薬理学的因子を確立するために、患者のモルヒネ及びコデインの血中濃度を同時に定量的に測定できることが重要である。特にモルヒネを正確に測定する必要がある。本研究で使用される電極は、AA、UA及びCOの存在下で50nMのモルヒネの電流を繰り返し測定し、2つの線形範囲を生成することがわかる。低い範囲は、痛みの治療のため、またほとんどの中毒及び被毒の場合の治療濃度内に十分収まっている。
【0070】
図6は、500μMのAA、500μMのUA、及びc)10nMから2.5μMに増加するMO濃度を有する10μMのCO、及びd)10nMから2.5μMに増加するCO濃度を有する10μMのMO、における初期及びナフィオン被覆SWCNTN電極の微分パルスボルタモグラムを示す。走査速度50mV/s。
【0071】
この電極で観察される低いバックグラウンド電流は、信号対雑音比を著しく増加させる。モルヒネの重複する2番目の酸化ピークにより、ヘロインとコデインの定量がより困難になる。本研究で使用される電極は、両方の分子がそれぞれ明確に区別できる1つのピークのみを生じさせるため、明確な利点をもたらす。
【0072】
開示される本発明の実施形態は、本明細書に開示される特定の構造、プロセスステップ、又は材料に限定されないが、関連分野の当業者によって認識されるようにそれらの均等物に拡張されることを理解されたい。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明する目的で使用され、限定することを意図するものではないことも理解されたい。
【0073】
本明細書全体を通しての一実施形態又は実施形態への言及は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、又は特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。従って、本明細書全体の様々な場所での「一実施形態では」又は「実施形態では」という語句の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態を指しているわけではない。例えば約又は実質的になどの用語を使用して数値が参照される場合、正確な数値も開示される。
【0074】
本明細書で使用されるように、複数のアイテム、構造要素、組成要素、及び/又は材料は、便宜上、共通のリストで提示され得る。ただし、これらのリストは、リストの各メンバーが個別の一意のメンバーとして個別に識別されるように解釈する必要がある。従って、そのようなリストの個々のメンバーは、反対の指示なしに共通のグループでのそれらの提示にのみ基づいて、同じリストの他のメンバーの事実上の同等物として解釈されるべきではない。さらに、本明細書では、本発明の様々な実施形態及び例を、その様々な構成要素の代替物とともに参照することがある。そのような実施形態、例、及び代替物は、互いの事実上の同等物として解釈されるべきではなく、本発明の別個の自律的な表現と見なされるべきであることが理解される。
【0075】
さらに、説明された特徴、構造、又は特性は、1つ又は複数の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせることができる。以下の説明では、本発明の実施形態の完全な理解を提供するために、長さ、幅、形状などの例などの多くの特定の詳細が提供される。しかしながら、当業者は、本発明が1つ以上の特定の詳細なしで、又は他の方法、構成要素、材料などで実施できることを認識するであろう。他の例では、周知の構造、材料、又は操作は、本発明の態様を不明瞭にすることを避けるために、詳細に示されていない。
【0076】
前述の例は、1つ以上の特定の用途における本発明の原理の例示であるが、形態、使用法、及び実装の詳細における多くの修正が発明能力の行使なしで、かつ本発明の原理及び概念から逸脱することなく行われ得ることは、当業者に明らかであろう。従って、以下に記載される特許請求の範囲による場合を除き、本発明が限定されることは意図されていない。
【0077】
「含む(to comprise)」及び「含む(to include)」という動詞は、本文書では、引用されていない特徴の存在を除外も要求もしないオープンな制限として使用される。従属請求項に記載されている特徴は、特に明記されていない限り、相互に自由に組み合わせることができる。さらに、この文書を通して「a」又は「an」、すなわち単数形の使用は、複数を排除しないことを理解されたい。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の少なくとも幾つかの実施形態は、ヘルスケアの様々な分野での産業用途を見出す。実施形態は、オピオイド血清濃度の定量的測定のための簡単で安価なリアルタイム方法を提供し、急性期医療における個人オピオイド療法及び鑑別診断を促進し得る。本発明はまた、臨床研究、特に大規模な集団レベルの薬物動態学研究のコストを大幅に削減する可能性がある。現在の人口動態学の発展により、人口の年齢は今後数十年で成長すると予想される。これにより、すでに苦労している医療システムに大きな負担がかかる。特に、ほとんどのオピオイドが処方され消費されている米国では、ヘルスケアシステムにコスト削減の大きな圧力がかかっている。
【0079】
[頭字語リスト]
MO:モルヒネ
CO:コデイン
AA:アスコルビン酸
UA:尿酸
CV:サイクリックボルタンメトリー
LSV:リニアスイープボルタンメトリー
DPV:微分パルスボルタンメトリー
NC:ノルコデイン
CNT:カーボンナノチューブ
SWCNTN:単層カーボンナノチューブネットワーク
Xn:キサンチン
HXn:ヒポキサンチン
【0080】
[参考文献]
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【符号の説明】
【0081】
1 電極アセンブリ
2 作用電極
3 擬似参照電極
4 対電極
5 電気接点
6 電気接点
7 電気接点
8 電気的分離
図1a
図1b
図1c
図1d
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b
図3c
図3d
図4a
図4b
図4c
図4d
図4e
図4f
図5a
図5b
図6a
図6b
図6c
図6d
図7a
図7b
図7c
図7d
図7e
図7f
図7g
図8a
図8b
図9
図10a
図10b
図10c
図10d
図10e
図11
図12
図13
図14
図15a
図15b
図16
図17a
図17b
図18a
図18b
図18c
図18d
図19
図20a
図20b
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28a
図28b
図29a
図29b
図30a
図30b
図31a
図31b
図32a
図32b
図33