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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】ガス分離用膜
(51)【国際特許分類】
   B01D 69/12 20060101AFI20230501BHJP
   B01D 69/10 20060101ALI20230501BHJP
   B01D 69/02 20060101ALI20230501BHJP
   B01D 71/60 20060101ALI20230501BHJP
   B01D 71/38 20060101ALI20230501BHJP
   B01D 71/52 20060101ALI20230501BHJP
   B01D 71/44 20060101ALI20230501BHJP
   B01D 71/70 20060101ALI20230501BHJP
   B01D 71/02 20060101ALI20230501BHJP
   B01D 71/56 20060101ALI20230501BHJP
   B01D 71/64 20060101ALI20230501BHJP
   B01D 71/48 20060101ALI20230501BHJP
   B01D 71/68 20060101ALI20230501BHJP
   B01D 71/26 20060101ALI20230501BHJP
   B01D 71/42 20060101ALI20230501BHJP
   B01D 71/32 20060101ALI20230501BHJP
   B01D 69/00 20060101ALI20230501BHJP
   B01D 69/06 20060101ALI20230501BHJP
   B01D 53/22 20060101ALI20230501BHJP
   B01D 63/10 20060101ALI20230501BHJP
   B01D 63/08 20060101ALI20230501BHJP
   B01D 63/02 20060101ALI20230501BHJP
   C08L 101/12 20060101ALI20230501BHJP
   C08L 101/02 20060101ALI20230501BHJP
   C08K 5/17 20060101ALI20230501BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
B01D69/12
B01D69/10
B01D69/02
B01D71/60
B01D71/38
B01D71/52
B01D71/44
B01D71/70 500
B01D71/02 500
B01D71/56
B01D71/64
B01D71/48
B01D71/68
B01D71/26
B01D71/42
B01D71/32
B01D69/00
B01D69/06
B01D53/22
B01D63/10
B01D63/08
B01D63/02
C08L101/12
C08L101/02
C08K5/17
C08K3/04
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020510550
(86)(22)【出願日】2018-08-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-05
(86)【国際出願番号】 US2018047239
(87)【国際公開番号】W WO2019040445
(87)【国際公開日】2019-02-28
【審査請求日】2021-08-20
(31)【優先権主張番号】62/548,195
(32)【優先日】2017-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/548,205
(32)【優先日】2017-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516133799
【氏名又は名称】オハイオ・ステート・イノヴェーション・ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ダブリュー・エス・ウィンストン・ホ
(72)【発明者】
【氏名】ドンジュ・ウ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・ハン
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-136546(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0206811(US,A1)
【文献】国際公開第2016/196474(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/170249(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00-71/82
C02F 1/44
C08L 101/12
C08L 101/02
C08K 5/17
C08K 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持層と、
前記支持層上に配置された選択的ポリマー層と、
を含む膜であって、
前記選択的ポリマー層が、アミン含有ポリマーと、1,000Da以下の分子量を有する低分子量アミノ化合物とを含み、
前記支持層が、ガス透過性ポリマーと、前記ガス透過性ポリマー内に分散された親水性添加剤とを含み、
但し、前記選択的ポリマー層が、ポリビニルアルコール系ポリマーを含まないことを条件とする、膜。
【請求項2】
前記選択的ポリマー層が、57℃及び1気圧の供給圧力で少なくとも10のCO:N選択性を有する、請求項1に記載の膜。
【請求項3】
前記選択的ポリマー層が、ポリビニルアルコール系ポリマー以外の親水性ポリマーを更に含む、請求項1又は2に記載の膜。
【請求項4】
前記アミン含有ポリマーが、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、ポリ-N-イソプロピルアリルアミン、ポリ-N-tert-ブチルアリルアミン、ポリ-N-1,2-ジメチルプロピルアリルアミン、ポリ-N-メチルアリルアミン、ポリ-N,N-ジメチルアリルアミン、ポリ-2-ビニルピペリジン、ポリ-4-ビニルピペリジン、ポリアミノスチレン、キトサン、又はこれらのコポリマー若しくはブレンドからなる群から選択され;かつ、
前記低分子量アミノ化合物が、アミノイソ酪酸カリウム塩、アミノイソ酪酸-リチウム塩、アミノイソ酪酸-ピペラジン塩、グリシン-カリウム塩、グリシン-リチウム塩、グリシン-ピペラジン塩、ジメチルグリシン-カリウム塩、ジメチルグリシン-リチウム塩、ジメチルグリシン-ピペラジン塩、ピペラジジン-2-カルボン酸-カリウム塩、ピペラジジン-2-カルボン酸-リチウム塩、ピペラジジン-2-カルボン酸-ピペラジン塩、ピペラジジン-4-カルボン酸-カリウム塩、ピペラジジン-4-カルボン酸-リチウム塩、ピペラジジン-4-カルボン酸-ピペラジン塩、ピペラジジン-3-カルボン酸-カリウム塩、ピペラジジン-3-カルボン酸-リチウム塩、ピペラジジン-3-カルボン酸-ピペラジン塩、若しくはこれらのブレンドからなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の膜。
【請求項5】
前記親水性ポリマーが、ポリビニルアセテート、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、ポリシロキサン、これらのコポリマー、及びこれらのブレンドからなる群から選択されるポリマーを含む、請求項3に記載の膜。
【請求項6】
前記選択的ポリマー層が、架橋剤を更に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の膜。
【請求項7】
前記選択的ポリマー層が、カーボンナノチューブを更に含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の膜。
【請求項8】
前記カーボンナノチューブが、側壁官能基化カーボンナノチューブを含む、請求項7に記載の膜。
【請求項9】
前記ガス透過性ポリマーが、ポリアミド、ポリイミド、ポリピロロン、ポリエステル、スルホン系ポリマー、ニトリル系ポリマー、ポリマー性オルガノシリコーン、フッ化ポリマー、ポリオレフィン、これらのコポリマー、及びこれらのブレンドから選択されるポリマーを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の膜。
【請求項10】
前記親水性添加剤が、親水性ポリマーを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の膜。
【請求項11】
前記支持層が、走査型電子顕微鏡検査(SEM)によって測定される場合、10%~25%の表面空隙率及び20nm~90nmの平均細孔径を示す、請求項1~10のいずれか一項に記載の膜。
【請求項12】
前記支持層が、75°以下の水接触角を示す、請求項1~11のいずれか一項に記載の膜。
【請求項13】
前記支持層が、57℃及び1気圧の供給圧力で少なくとも12,000GPUのCO透過性を示す、請求項1~12のいずれか一項に記載の膜。
【請求項14】
供給ガス流から第1のガスを分離する方法であって、
請求項1~13のいずれか一項に記載の膜を、掃気ガスが膜の透過面にわたって流されるか又は減圧が膜の透過面へと適用される条件下で、前記第1のガスを含む前記供給ガス流と接触させることを含む、方法。
【請求項15】
前記第1のガスが、二酸化炭素、硫化水素、塩化水素、及びこれらの組み合わせから選択され、
前記供給ガスが、窒素、水素、一酸化炭素、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される第2のガスを含み、
前記膜が、57℃及び1気圧の供給圧力で20~300の第1のガス/第2のガス選択性を示す、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
支持層と、
前記支持層上に配置された選択的ポリマー層と、
を含む膜であって、
前記選択的ポリマー層が、選択的ポリマーマトリックスと、前記選択的ポリマーマトリックス内に分散されたカーボンナノチューブとを含み、
前記選択的ポリマーマトリックスが、アミン含有ポリマーと、1,000Da以下の分子量を有する低分子量アミノ化合物とを含み、
但し、前記選択的ポリマーマトリックスが、ポリビニルアルコール系ポリマーを含まないことを条件とする、膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2018年8月21日に出願された米国仮特許出願第62/548,205号、及び2018年8月21日に出願された米国仮特許出願第62/548,195号の利益を主張するものであり、これらの各々は、それらの全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素、硫化水素、及び塩化水素を含有するガス流、又は二酸化炭素、窒素酸化物、及び硫黄酸化物を含有するガス流を生成する、数々の工業的プロセスがある。多くの場合、水素及び窒素などの、ガス流のその他の成分から、1つ以上のこれらのガスを除去することが望ましい。選択的透過性ポリマー膜は、水素精製及び二酸化炭素隔離を含む種々のガス分離用途のため研究されてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、当該技術分野において、膜、膜の作製方法、及びガスの分離方法に対する需要が残存している。
【課題を解決するための手段】
【0004】
膜、膜の作製方法、及び膜の使用方法が、本明細書に記載される。膜は、支持層、及び支持層上に配置された選択的ポリマー層を含むことができる。
いくつかの実施形態では、支持層は、ガス透過性ポリマーと、ガス透過性ポリマー内に分散された親水性添加剤と、を含み得る。
【0005】
支持層は、ガス透過性ポリマーと、ガス透過性ポリマー内に分散された親水性添加剤と、を含み得る。ガス透過性ポリマーは、ポリアミド、ポリイミド、ポリピロロン、ポリエステル、スルホン系ポリマー、ポリマー性オルガノシリコーン、フッ素化ポリマー、ポリオレフィンからなる群から選択されるポリマー、これらのコポリマー、及びこれらのブレンドであってよい。いくつかの実施形態では、ガス透過性ポリマーは、ポリエーテルスルホンを含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、親水性添加剤は、親水性ポリマーを含む。親水性ポリマーは、電気的に中性であっても帯電していてもよい。好適な親水性添加剤の例としては、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone、PVP)、ヒドロキシル化ポリエーテルスルホン(hydroxylated polyethersulfone、PES-OH)、スルホン化ポリスルホン(sulfonated polysulfone、SPSf)、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、スルホン化ポリスチレン、これらのコポリマー、又はこれらのブレンドが挙げられる。特定の実施形態では、親水性添加剤は、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシル化ポリエーテルスルホン(PES-OH)、スルホン化ポリスルホン(SPSf)、これらのコポリマー、又はこれらのブレンドを含み得る。いくつかの実施形態では、親水性添加剤は、ガス透過性ポリマー及び親水性添加剤の総乾燥重量に基づいて、0.05重量%~20%重量%(例えば、0.05重量%~10%重量%、0.05重量%~5重量%、又は0.1重量%~2.5%重量%)の量で、ガス透過性ポリマー中に存在し得る。
【0007】
親水性添加剤をガス透過性ポリマーに導入することによって、支持層の表面特性及び形態を(及び支持層の輸送性能の拡張によって)、親水性添加剤を含まない同一の支持層に対して有意に向上させることができる。いくつかの例では、支持層は、走査型電子顕微鏡検査(scanning electron microscopy、SEM)によって測定される場合、10%~25%の表面空隙率、20nm~90nmの平均細孔径、又はこれらの組み合わせを示し得る。いくつかの実施例では、支持層は、角度測定によって測定される場合、75°以下の水接触角(例えば、60°~75°の水接触角)を示し得る。いくつかの実施形態では、支持層は、57℃及び1気圧の供給圧力で、少なくとも12,000GPUのCO透過性(例えば、12,000GPU~30,000GPUのCO透過性)を示し得る。支持層の改善された特性は、得られる複合膜に、改善された輸送特性を付与し得る。特定の場合では、ガス透過性ポリマー(及び付随の親水性添加剤)は、基部(例えば、ポリエステル不織布などの不織布)上に配置され得る。
【0008】
選択的ポリマーマトリックスは、57℃及び1気圧の供給圧力で、10~500(例えば、75~350)のCO:N選択性を有し得る。選択的ポリマーマトリックスは、親水性ポリマー、アミノ化合物、又はこれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、親水性ポリマーは存在しなくてもよい(例えば、選択的ポリマーマトリックスは、1種以上のアミノ化合物を含み得る)。他の実施形態では、選択的ポリマーマトリックスは、親水性ポリマーとアミノ化合物との組み合わせを含み得る。例えば、場合によっては、選択的ポリマーマトリックスは、親水性ポリマーマトリックス中に分散されたアミノ化合物を含み得る。
【0009】
アミノ化合物は、例えば、アミン含有ポリマー、低分子量アミノ化合物、又はこれらの組み合わせであり得る。いくつかの実施形態では、アミノ化合物は、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、ポリ-N-イソプロピルアリルアミン、ポリ-N-tert-ブチルアリルアミン、ポリ-N-1,2-ジメチルプロピルアリルアミン、ポリ-N-メチルアリルアミン、ポリ-N,N-ジメチルアリルアミン、ポリ-2-ビニルピペリジン、ポリ-4-ビニルピペリジン、ポリアミノスチレン、キトサン、コポリマー、及びこれらのブレンドなどの、アミン含有ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、アミノ化合物は、一級アミンの塩又は二級アミンの塩などの、低分子量アミノ化合物を含み得る。特定の場合では、選択的ポリマーマトリックスは、2種以上のアミノ化合物(例えば、アミン含有ポリマー及び低分子量アミノ化合物)の混合物を含み得る。
【0010】
親水性ポリマーは、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、又はポリエチレンイミンなどのポリアミン、これらのコポリマー、及びこれらのブレンドからなる群から選択されるポリマー、を含み得る。いくつかの実施形態では、選択的ポリマーは、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、無水マレイン酸、グリオキサール、ジビニルスルホン、トルエンジイソシアネート、トリメチロールメラミン、テレフタレートアルデヒド、エピクロロヒドリン、ビニルアクリレート、及びこれらの組み合わせなどの架橋剤を更に含み得る。
【0011】
いくつかの実施形態では、選択的ポリマー層は、選択的ポリマーマトリックス内に分散されたカーボンナノチューブを更に含み得る。カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、又はこれらの組み合わせを含み得る。場合によっては、カーボンナノチューブは、10nm~50nmの平均直径、50nm~20μm(例えば、200nm~20μm)の平均長さ、又はこれらの組み合わせを有し得る。場合によっては、カーボンナノチューブは、非官能基化カーボンナノチューブを含み得る。他の実施形態では、カーボンナノチューブは、側壁官能基化カーボンナノチューブを含み得る。例えば、カーボンナノチューブは、ヒドロキシ官能基化カーボンナノチューブ、カルボキシ官能基化カーボンナノチューブ、アミン官能基化カーボンナノチューブ、又はこれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、選択的ポリマー層は、選択的ポリマー層の総乾燥重量に基づいて、0.5重量%~5重量%のカーボンナノチューブを含み得る。
【0012】
いくつかの実施形態では、選択的ポリマー層は、選択的ポリマーマトリックスと、選択的ポリマーマトリックス内に分散されたカーボンナノチューブと、を含み得る。
【0013】
支持層は、ガス透過性ポリマーを含み得る。ガス透過性ポリマーは、ポリアミド、ポリイミド、ポリピロロン、ポリエステル、スルホン系ポリマー、ポリマー性オルガノシリコーン、フッ素化ポリマー、ポリオレフィンからなる群から選択されるポリマー、これらのコポリマー、及びこれらのブレンドであってよい。いくつかの実施形態では、ガス透過性ポリマーは、ポリエーテルスルホンを含む。特定の場合では、ガス透過性支持層は、基部(例えば、ポリエステル不織布などの不織布)上に配置されたガス透過性ポリマーを含む。
【0014】
選択的ポリマーマトリックスは、57℃及び1気圧の供給圧力で、10~500(例えば、75~350)のCO:N選択性を有し得る。選択的ポリマーマトリックスは、親水性ポリマー、アミノ化合物、又はこれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、親水性ポリマーは存在しなくてもよい(例えば、選択的ポリマーマトリックスは、1種以上のアミノ化合物を含み得る)。他の実施形態では、選択的ポリマーマトリックスは、親水性ポリマーとアミノ化合物との組み合わせを含み得る。例えば、場合によっては、選択的ポリマーマトリックスは、親水性ポリマーマトリックス中に分散されたアミノ化合物を含み得る。
【0015】
アミノ化合物は、例えば、アミン含有ポリマー、低分子量アミノ化合物、又はこれらの組み合わせであり得る。いくつかの実施形態では、アミノ化合物は、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、ポリ-N-イソプロピルアリルアミン、ポリ-N-tert-ブチルアリルアミン、ポリ-N-1,2-ジメチルプロピルアリルアミン、ポリ-N-メチルアリルアミン、ポリ-N,N-ジメチルアリルアミン、ポリ-2-ビニルピペリジン、ポリ-4-ビニルピペリジン、ポリアミノスチレン、キトサン、コポリマー、及びこれらのブレンドなどの、アミン含有ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、アミノ化合物は、一級アミンの塩又は二級アミンの塩などの、低分子量アミノ化合物を含み得る。特定の場合では、選択的ポリマーマトリックスは、2種以上のアミノ化合物(例えば、アミン含有ポリマー及び低分子量アミノ化合物)の混合物を含み得る。
【0016】
親水性ポリマーは、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、又はポリエチレンイミンなどのポリアミン、これらのコポリマー、及びこれらのブレンドからなる群から選択されるポリマー、を含み得る。いくつかの実施形態では、選択的ポリマーは、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、無水マレイン酸、グリオキサール、ジビニルスルホン、トルエンジイソシアネート、トリメチロールメラミン、テレフタレートアルデヒド、エピクロロヒドリン、ビニルアクリレート、及びこれらの組み合わせなどの架橋剤を更に含み得る。
【0017】
カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、又はこれらの組み合わせを含み得る。場合によっては、カーボンナノチューブは、10nm~50nmの平均直径、50nm~20μm(例えば、200nm~20μm)の平均長さ、又はこれらの組み合わせを有し得る。場合によっては、カーボンナノチューブは、非官能基化カーボンナノチューブを含み得る。他の実施形態では、カーボンナノチューブは、側壁官能基化カーボンナノチューブを含み得る。例えば、カーボンナノチューブは、ヒドロキシ官能基化カーボンナノチューブ、カルボキシ官能基化カーボンナノチューブ、アミン官能基化カーボンナノチューブ、又はこれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、選択的ポリマー層は、選択的ポリマー層の総乾燥重量に基づいて、0.5重量%~5重量%のカーボンナノチューブを含み得る。
【0018】
本明細書に記載される膜は、ガスに対して選択的な透過性を示し得る。例えば、膜は、水素及び/又は窒素からの、二酸化炭素及び/又は硫化水素の選択的な除去に使用され得る。
【0019】
供給ガス流から第1のガスを分離するための方法も提供される。これらの方法は、第1のガスの膜透過性を提供するために効果的な条件下において、本明細書に記載される任意の膜を、第1のガスを含む供給ガス流に接触させることを含み得る。膜は、供給側面及び透過側面を含み得る。いくつかの実施形態では、本方法は、更に、減圧を膜の透過側面へと適用して、第1のガスを除去することを更に含み得る。いくつかの実施形態では、膜は、減圧が膜の透過側面に適用される場合(例えば、0.2atmの透過圧で)、57℃及び1気圧の供給圧力で、少なくとも500GPU(例えば、500~1500GPU)のCO透過性を示し得る。
【0020】
供給ガスは、水素、二酸化炭素、硫化水素、塩化水素、一酸化炭素、窒素、メタン、蒸気、硫黄酸化物、窒素酸化物、又はこれらの組み合わせを含み得る。場合によっては、供給ガスは、少なくとも100℃の温度を有し得る。場合によっては、第1のガスは、二酸化炭素、硫化水素、塩化水素、及びこれらの組み合わせから選択され得る。いくつかの実施形態では、供給ガスは、窒素、水素、一酸化炭素、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される第2のガスを更に含むことができ、膜は、57℃及び1気圧の供給圧力で、10~500(例えば、20~300)の第1のガス/第2のガス選択性(例えば、CO:N選択性)を示し得る。
【0021】
本明細書に記載される膜の作製方法も提供される。
【0022】
いくつかの実施形態では、膜の作製方法は、支持層上に選択的ポリマー層を堆積させることを含むことができ、そこで、支持層は、ガス透過性ポリマーと、ガス透過性ポリマー内に分散された親水性添加剤と、を含む。方法は、ガス透過性ポリマー、親水性添加剤、細孔形成剤、及び溶媒/非溶媒混合物を含むキャスト溶液から支持層を形成することを更に含み得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、膜の作製方法は、支持層上に選択的ポリマー層を堆積させることを含み得る。選択的ポリマー層は、選択的ポリマーマトリックスと、選択的ポリマーマトリックス内に分散されたカーボンナノチューブと、を含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、親水性添加剤を含む、本明細書に記載される複合膜の組成を示す概略図である。
図2図2は、本明細書に記載される膜を調製するために使用され得るパイロットスケールの連続キャスト機の概略図である。
図3A図3Aは、実施例1Aにおいて調製されたPES膜の表面形態を示す顕微鏡写真である。
図3B図3Bは、比較例1Bにおいて調製されたPES膜の表面形態を示す顕微鏡写真である。
図4図4は、実施例1Cにおいて調製されたPES膜の表面形態を示す顕微鏡写真である。
図5図5は、実施例1Dにおいて調製されたPES膜の表面形態を示す顕微鏡写真である。
図6図6は、実施例1Eにおいて調製されたPES膜の表面形態を示す顕微鏡写真である。
図7図7は、実施例1Fにおいて調製されたPES膜の表面形態を示す顕微鏡写真である。
図8図8は、実施例1Gにおいて調製されたPES膜の表面形態を示す顕微鏡写真である。
図9図9は、カーボンナノチューブを含む、本明細書に記載される膜の組成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
膜、膜の作製方法、及び膜の使用方法が、本明細書に記載される。膜は、支持層、及び支持層上に配置された選択的ポリマー層を含むことができる。
【0026】
親水性添加剤を含む膜
いくつかの実施形態では、支持層は、ガス透過性ポリマーと、ガス透過性ポリマー内に分散された親水性添加剤と、を含み得る。膜は、ガスに対して選択的な透過性を示すことができる。
【0027】
ガス透過性ポリマーは、架橋ポリマー、相分離ポリマー、多孔質縮合ポリマー、又はこれらのブレンドであり得る。好適なガス透過性ポリマーの例としては、ポリアミド、ポリイミド、ポリピロロン、ポリエステル、スルホン系ポリマー、ニトリル系ポリマー、ポリマー性オルガノシリコーン、フッ素化ポリマー、ポリオレフィン、これらのコポリマー、又はこれらのブレンドが挙げられる。支持層中に存在し得るポリマーの具体例としては、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリジ-イソ-プロピルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンオキシド、ポリベンゾイミダゾール、ポリプロピレン、ポリエチレン、部分的にフッ素化、ペルフッ素化、若しくはスルホン化されたこれらの誘導体、これらのコポリマー、又はこれらのブレンドが挙げられる。いくつかの実施形態では、ガス透過性ポリマーは、ポリスルホン又はポリエーテルスルホンであり得る。所望により、支持層は、支持層の透過性を変質させることなく機械的強度を向上させるため、無機粒子を含むことができる。
【0028】
親水性添加剤は、親水性ポリマーを含み得る。親水性ポリマーは、電気的に中性であっても帯電していてもよい。
【0029】
好適な親水性添加剤の例としては、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシル化ポリエーテルスルホン(PES-OH)、スルホン化ポリスルホン(SPSf)、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、スルホン化ポリスチレン、これらのコポリマー、又はこれらのブレンドが挙げられる。特定の実施形態では、親水性添加剤は、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシル化ポリエーテルスルホン(PES-OH)、スルホン化ポリスルホン(SPSf)、これらのコポリマー、又はこれらのブレンドを含み得る。いくつかの例では、親水性添加剤は、5,000Da~5,000,000Da、又は50,000Da~2,000,000Daの重量平均分子量を有し得る。
【0030】
いくつかの実施形態では、親水性添加剤は、ガス透過性ポリマー及び親水性添加剤の総乾燥重量に基づいて、少なくとも0.05重量%(例えば、少なくとも0.1重量%、少なくとも0.25重量%、少なくとも0.5重量%、少なくとも0.75重量%、少なくとも1重量%、少なくとも1.25重量%、少なくとも1.5重量%、少なくとも1.75重量%、少なくとも2重量%、少なくとも2.25重量%、少なくとも2.5重量%、少なくとも2.75重量%、少なくとも3重量%、少なくとも3.25重量%、少なくとも3.5重量%、少なくとも3.75重量%、少なくとも4重量%、少なくとも4.25重量%、少なくとも4.5重量%、少なくとも4.75重量%、少なくとも5重量%、少なくとも6重量%、少なくとも7重量%、少なくとも8重量%、少なくとも9重量%、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、少なくとも25重量%、又はそれ以上)の量で、ガス透過性ポリマー中に存在し得る。いくつかの実施形態では、親水性添加剤は、ガス透過性ポリマー及び親水性添加剤の総乾燥重量に基づいて、20重量%以下(例えば、15重量%以下、10重量%以下、9重量%以下、8重量%以下、7重量%以下、6重量%以下、5重量%以下、4.75重量%以下、4.5重量%以下、4.25重量%以下、4重量%以下、3.75重量%以下、3.5重量%以下、3.25重量%以下、3重量%以下、2.75重量%以下、2.5重量%以下、2.25重量%以下、2重量%以下、1.75重量%以下、1.5重量%以下、1.25重量%以下、1重量%以下、0.75重量%以下、0.5重量%以下、0.25重量%以下、又は0.1%重量%以下)の量で、ガス透過性ポリマー中に存在し得る。
【0031】
ガス透過性ポリマー中の親水性添加剤の量は、上記の最小値のうちのいずれかから上記の最大値のうちのいずれかまでの範囲であり得る。例えば、いくつかの実施形態では、親水性添加剤は、ガス透過性ポリマー及び親水性添加剤の総乾燥重量に基づいて、少なくとも0.05重量%~20%重量%、(例えば、0.05重量%~10%重量%、0.05重量%~5重量%、又は0.1重量%~2.5%重量%)の量で、ガス透過性ポリマー中に存在し得る。
【0032】
親水性添加剤をガス透過性ポリマーに導入することによって、支持層の表面特性及び形態は(及び支持層の輸送性能の拡張によって)、親水性添加剤を含まない同一の支持層に対して有意に向上させることができる。いくつかの例では、支持層は、走査型電子顕微鏡検査(SEM)によって測定される場合、10%~25%の表面空隙率、20nm~90nmの平均細孔径、又はこれらの組み合わせを示し得る。いくつかの実施例では、支持層は、角度測定によって測定される場合、75°以下の水接触角(例えば、60°~75°の水接触角)を示し得る。いくつかの実施形態では、支持層は、57℃及び1気圧の供給圧力で、少なくとも12,000GPUのCO透過性(例えば、12,000GPU~30,000GPUのCO透過性)を示し得る。支持層の改善された特性は、得られる複合膜に、改善された輸送特性を付与し得る。
【0033】
特定の場合では、ガス透過性ポリマー(及び付随の親水性添加剤)は、基部(例えば、ポリエステル不織布などの不織布)上に配置され得る。基部は、特定の用途における使用に好適な膜の形成を促進するように構成された、任意の構造であり得る。例えば、基部は、平坦なディスク、チューブ、渦巻形、又は中空繊維の基部であり得る。基部は、任意の好適な材料から形成することができる。いくつかの実施形態では、層は、繊維性材料を含むことができる。基部の繊維性材料は、メッシュ(例えば、金属若しくはポリマーメッシュ)、織布又は不織布、ガラス、ガラス繊維、樹脂、スクリーン(例えば、金属若しくはポリマースクリーン)であり得る。特定の実施形態では、基部は不織布(例えば、ポリエステルから形成された繊維を含む不織布)を含むことができる。
【0034】
膜は、支持層上に配置された選択的ポリマー層を更に含むことができる。場合によっては、選択的ポリマー層は、ガスが拡散又は促進拡散を介して透過する選択的ポリマーマトリックスであり得る。選択的ポリマー層は、57℃及び1気圧の供給圧力で、少なくとも10のCO:N選択性を有する選択的ポリマーマトリックスを含み得る。例えば、選択的ポリマーマトリックスは、57℃及び1気圧の供給圧力で、少なくとも25(例えば、少なくとも50、少なくとも75、少なくとも100、少なくとも125、少なくとも150、少なくとも175、少なくとも200、少なくとも225、少なくとも250、少なくとも275、少なくとも300、少なくとも325、少なくとも350、少なくとも375、少なくとも400、少なくとも425、少なくとも450、又は少なくとも475)のCO:N選択性を有し得る。いくつかの実施形態では、選択的ポリマーマトリックスは、57℃及び1気圧の供給圧力で、500以下(例えば、475以下、450以下、425以下、400以下、375以下、350以下、325以下、300以下、275以下、250以下、225以下、200以下、175以下、150以下、125以下、100以下、75以下、50以下、又は25以下)のCO:N選択性を有し得る。
【0035】
特定の実施形態では、選択的ポリマー層は、上記の最小値のうちのいずれかから上記の最大値のうちのいずれかまでの範囲のCO:N選択性を有する選択的ポリマーマトリックスを含み得る。例えば、特定の実施形態では、選択的ポリマー層は、57℃及び1気圧の供給圧力で、10~500(例えば、57℃及び1気圧の供給圧力で、10~400、57℃及び1気圧の供給圧力で、75~400、57℃及び1気圧の供給圧力で、100~400、57℃及び1気圧の供給圧力で、10~350、57℃及び1気圧の供給圧力で、75~350、57℃及び1気圧の供給圧力で、100~350、57℃及び1気圧の供給圧力で、10~250、57℃及び1気圧の供給圧力で、75~250、又は57℃及び1気圧の供給圧力で、100~250)のCO:N選択性を有する選択的ポリマーマトリックスを含み得る。選択的ポリマーのCO:H選択性は、以下の実施例に記載されるものなどの、当該技術分野において既知の標準的なガス透過性測定方法を使用して、測定され得る。
【0036】
選択的ポリマーマトリックスは、親水性ポリマー、アミノ化合物、又はこれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、親水性ポリマーは存在しなくてもよい(例えば、選択的ポリマーマトリックスは、1種以上のアミノ化合物を含み得る)。他の実施形態では、選択的ポリマーマトリックスは、親水性ポリマーとアミノ化合物との組み合わせを含み得る。例えば、場合によっては、選択的ポリマーマトリックスは、親水性ポリマーマトリックス中に分散されたアミノ化合物(例えば、小分子、ポリマー、又はこれらの組み合わせ)を含み得る。
【0037】
いくつかの実施形態では、アミノ化合物は、1種以上の一級アミン部分及び/又は1種以上の二級アミン部分を含む化合物(例えば、小分子、ポリマー、又はこれらの組み合わせ)を含み得る。アミノ化合物は、例えば、アミン含有ポリマー、低分子量アミノ化合物(すなわち、小分子)、又はこれらの組み合わせであり得る。
【0038】
いくつかの実施形態では、アミノ化合物は、アミン含有ポリマー(本明細書では「固定キャリア」とも称される)を含む。アミン含有ポリマーは、任意の好適な分子量を有し得る。例えば、アミン含有ポリマーは、5,000Da~2,000,000Da、又は50,000Da~200,000Daの重量平均分子量を有し得る。アミン含有ポリマーの好適な例としては、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、ポリ-N-イソプロピルアリルアミン、ポリ-N-tert-ブチルアリルアミン、ポリ-N-1,2-ジメチルプロピルアリルアミン、ポリ-N-メチルアリルアミン、ポリ-N,N-ジメチルアリルアミン、ポリ-2-ビニルピペリジン、ポリ-4-ビニルピペリジン、ポリアミノスチレン、キトサン、コポリマー、及びこれらのブレンドが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、アミン含有ポリマーは、ポリビニルアミン(例えば、50,000Da~100,000Daの重量平均分子量を有するポリビニルアミン)を含み得る。いくつかの実施形態では、アミノ化合物がアミン含有ポリマーを含む場合、親水性ポリマーは存在しない。いくつかの実施形態では、アミノ化合物がアミン含有ポリマーを含む場合、選択的ポリマー層は、アミン含有ポリマーと親水性ポリマーとのブレンド(例えば、親水性ポリマーマトリックス中に分散されたアミン含有ポリマー)を含み得る。
【0039】
いくつかの実施形態では、アミノ化合物は、低分子量アミノ化合物(本明細書では「移動キャリア」とも称される)を含み得る。低分子量アミノ化合物は、1,000Da以下(例えば、800Da以下、500以下、300Da以下、又は250Da以下)の分子量を有し得る。いくつかの実施形態では、低分子量アミノ化合物は、膜が保存又は使用される温度で不揮発性であり得る。例えば、低分子量アミノ化合物は、一級アミンの塩又は二級アミンの塩を含み得る。いくつかの実施形態では、アミノ化合物が低分子量アミノ化合物を含む場合、選択的ポリマー層は、低分子量アミノ化合物と親水性ポリマーとのブレンド(例えば、親水性ポリマーマトリックス中に分散した低分子量アミノ化合物)を含み得る。
【0040】
場合によっては、低分子量アミノ化合物は、式:
【0041】
【化1】
を有するアミノ酸塩を含み得る。
式中、R、R、R、及びRは、水素又は1~4個の炭素原子を有する炭化水素基であり、nは、0~4の範囲の整数であり、Am+は、1~3の原子価を有するカチオンである。場合によっては、カチオン(Am+)は、式:
【0042】
【化2】
を有するアミンカチオンであり得る。
式中、R及びRは、水素又は1~4個の炭素原子を有する炭化水素基であり、Rは、水素又は1~4個の炭素原子を有する炭化水素基又は2~6個の炭素原子及び1~4個の窒素原子のアルキルアミンであり、yは、1~4の範囲の整数であり、mは、カチオンの原子価に等しい整数である。いくつかの実施形態では、Am+は、元素周期表のIa族、IIa族、及びIIIa族、又は遷移金属から選択される金属カチオンである。例えば、Am+は、リチウム、アルミニウム、又は鉄を含み得る。
【0043】
他の好適な低分子量アミノ化合物としては、アミノイソ酪酸-カリウム塩、アミノイソ酪酸-リチウム塩、アミノイソ酪酸-ピペラジン塩、グリシン-カリウム塩、グリシン-リチウム塩、グリシン-ピペラジン塩、ジメチルグリシン-カリウム塩、ジメチルグリシン-リチウム塩、ジメチルグリシン-ピペラジン塩、ピペラジジン-2-カルボン酸-カリウム塩、ピペラジジン-2-カルボン酸-リチウム塩、ピペラジジン-2-カルボン酸-ピペラジン塩、ピペラジジン-4-カルボン酸-カリウム塩、ピペラジジン-4-カルボン酸-リチウム塩、ピペラジジン-4-カルボン酸-ピペラジン塩、ピペラジジン-3-カルボン酸-カリウム塩、ピペラジジン-3-カルボン酸-リチウム塩、ピペラジジン-3-カルボン酸-ピペラジン塩、及びこれらのブレンドが挙げられる。
【0044】
選択的ポリマーマトリックスは、任意の好適な量のアミノ化合物を含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、親水性ポリマーは不存在であり得る。これらの実施形態では、選択的ポリマーマトリックスは、選択的ポリマーマトリックスを形成するために使用される成分の総重量に基づき、100重量%~80重量%のアミノ化合物を含み得る。場合によっては、選択的ポリマーマトリックスは、選択的ポリマーマトリックスを形成するために使用される成分の総重量に基づき、10重量%~90重量%(例えば、10重量%~50重量%)のアミノ化合物を含み得る。
【0045】
任意に、選択的ポリマーマトリックスは、任意の好適な親水性ポリマーを含み得る。選択的ポリマーマトリックスにおける使用に好適な親水性ポリマーの例としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、又はポリエチレンイミンなどのポリアミン、これらのコポリマー、及びこれらのブレンドを挙げることができる。いくつかの実施形態では、親水性ポリマーは、ポリビニルアルコールを含む。
【0046】
存在する場合、親水性ポリマーは、任意の好適な分子量を有することができる。例えば、親水性ポリマーは、15,000Da~2,000,000Da(例えば、50,000Da~200,000Da)の重量平均分子量を有することができる。いくつかの実施形態では、親水性ポリマーは、50,000Da~150,000Daの重量平均分子量を有するポリビニルアルコールを含み得る。
【0047】
選択的ポリマーマトリックスは、任意の好適な量の親水性ポリマーを含み得る。例えば、場合によっては、選択的ポリマーマトリックスは、選択的ポリマーマトリックスを形成するために使用される成分の総重量に基づき、10重量%~90重量%(例えば、10重量%~50重量%)の親水性ポリマーを含み得る。
【0048】
いくつかの実施形態では、選択的ポリマーマトリックスは、架橋剤を更に含み得る。選択的ポリマーマトリックスにおける使用に好適な架橋剤としては、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、無水マレイン酸、グリオキサール、ジビニルスルホン、トルエンジイソシアネート、トリメチロールメラミン、テレフタレートアルデヒド、エピクロロヒドリン、ビニルアクリレート、及びこれらの組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、架橋剤は、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、又は無水マレイン酸を含むことができる。選択的ポリマーマトリックスは、任意の好適な量の架橋剤を含み得る。例えば、選択的ポリマーマトリックスは、選択的ポリマーマトリックスの1~40重量パーセントの架橋剤を含み得る。
【0049】
選択的ポリマーマトリックスは、基部を更に含み得る。基部は、選択的ポリマーマトリックスの架橋(例えば、親水性ポリマーのアミン含有ポリマーとの架橋)に触媒作用を及ぼす触媒として機能し得る。いくつかの実施形態では、基部は、選択的ポリマーマトリックスに残留して、選択的ポリマーマトリックスの一部を構成し得る。好適な基部の例としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、トリエチルアミン、N,N-ジメチルアミノピリジン、ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、及びこれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、基部は、水酸化カリウムを含むことができる。選択的ポリマーマトリックスは、任意の好適な量の基部を含み得る。例えば、選択的ポリマーマトリックスは、選択的ポリマーマトリックスの1~40重量パーセントの基部を含み得る。
【0050】
いくつかの実施形態では、選択的ポリマー層は、選択的ポリマーマトリックス内に分散されたカーボンナノチューブを更に含み得る。任意の好適なカーボンナノチューブ(任意の好適な方法によって調製されるか、又は市販の供給源から得られる)が使用され得る。カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、又はこれらの組み合わせを含み得る。
【0051】
場合によっては、カーボンナノチューブは、少なくとも10nm(例えば、少なくとも20nm、少なくとも30nm、又は少なくとも40nm)の平均直径を有し得る。場合によっては、カーボンナノチューブは、50nm以下(例えば、40nm以下、30nm以下、又は20nm以下)の平均直径を有し得る。特定の実施形態では、カーボンナノチューブは、上記の最小値のうちのいずれかから上記の最大値のうちのいずれかまでの範囲の平均直径を有し得る。例えば、カーボンナノチューブは、10nm~50nm(例えば、10nm~30nm、又は20nm~50nm)の平均直径を有し得る。
【0052】
場合によっては、カーボンナノチューブは、少なくとも50nm(例えば、少なくとも100nm、少なくとも200nm、少なくとも300nm、少なくとも400nm、少なくとも500nm、少なくとも600nm、少なくとも700nm、少なくとも800nm、少なくとも900nm、少なくとも1μm、少なくとも5μm、少なくとも10μm、又は少なくとも15μm)の平均長さを有し得る。場合によっては、カーボンナノチューブは、20μm以下(例えば、15μm以下、10μm以下、5μm以下、1μm以下、900nm以下、800nm以下、700nm以下、600nm以下、500nm以下、400nm以下、300nm以下、200nm以下、又は100nm以下)の平均長さを有し得る。
【0053】
特定の実施形態では、カーボンナノチューブは、上記の最小値のうちのいずれかから上記の最大値のうちのいずれかまでの範囲の平均長さを有し得る。例えば、カーボンナノチューブは、50nm~20μm(例えば、200nm~20μm、又は500nm~10μm)の平均長さを有し得る。
【0054】
場合によっては、カーボンナノチューブは、非官能基化カーボンナノチューブを含み得る。他の実施形態では、カーボンナノチューブは、側壁官能基化カーボンナノチューブを含み得る。側壁官能基化カーボンナノチューブは、当該技術分野において周知である。好適な側壁官能基化カーボンナノチューブは、例えば、強酸酸化による側壁上への欠陥の作成によって、非官能基化カーボンナノチューブから調製され得る。酸化剤によって作成される欠陥は、続いて、より安定なヒドロキシル基及びカルボン酸基に変換され得る。次いで、酸処理されたカーボンナノチューブ上のヒドロキシル基及びカルボン酸基は、他の官能基を含有する試薬(例えば、アミン含有試薬)に結合し、それによって、カーボンナノチューブの側壁上にペンダント官能基(例えば、アミノ基)を導入し得る。いくつかの実施形態では、カーボンナノチューブは、ヒドロキシ官能基化カーボンナノチューブ、カルボキシ官能基化カーボンナノチューブ、アミン官能基化カーボンナノチューブ、又はこれらの組み合わせを含み得る。
【0055】
いくつかの実施形態では、選択的ポリマー層は、選択的ポリマー層の総乾燥重量に基づいて、少なくとも0.5重量%(例えば、少なくとも1重量%、少なくとも1.5重量%、少なくとも2重量%、少なくとも2.5重量%、少なくとも3重量%、少なくとも3.5重量%、少なくとも4重量%、又は少なくとも4.5重量%)のカーボンナノチューブを含み得る。いくつかの実施形態では、選択的ポリマー層は、選択的ポリマー層の総乾燥重量に基づいて、5重量%以下(例えば、4.5重量%以下、4%重量以下、3.5%重量以下、3%重量以下、2.5%重量以下、2%重量以下、1.5%重量以下、又は1%重量以下)のカーボンナノチューブを含み得る。
【0056】
選択的ポリマー層は、上記の最小値のうちのいずれかから上記の最大値のうちのいずれかまでの範囲のカーボンナノチューブ量を含み得る。例えば、選択的ポリマー層は、選択的ポリマー層の総乾燥重量に基づいて、0.5重量%~5重量%(例えば、1重量%~3重量%)のカーボンナノチューブを含み得る。
【0057】
所望により、選択的ポリマー層は、例えば、化学グラフティング、混和、又はコーティングにより選択的ポリマー層の性能向上のために、表面改質させることができる。例えば、疎水性成分が選択的ポリマー層へと追加されて、より高い流体選択性を促進する方式で、選択的ポリマー層の特性を変化させてよい。
【0058】
膜における各層の厚さの合計は、機械的に堅牢ではあるが、透過性に障害を生じるほどの厚さではない構造が選択され得る。いくつかの実施形態では、選択的ポリマー層は、50ナノメートル~5ミクロン(例えば、50nm~2ミクロン、又は100ナノメートル~750ナノメートル、又は250ナノメートル~500ナノメートル)の厚さを有し得る。いくつかの実施形態では、支持層は、1ミクロン~500ミクロン(例えば、50~250ミクロン)の厚さを有することができる。場合によっては、本明細書にて開示した膜は、5ミクロン~500ミクロンの厚さを有することができる。
【0059】
これらの膜の作製方法もまた、本明細書に開示される。膜の作製方法は、ガス透過性ポリマー及び親水性添加剤から支持層を形成することと、支持層上に選択的ポリマー層を堆積させて、支持層上に配置された選択的層を形成することと、を含み得る。
【0060】
支持層は、最初に、好適な溶媒/非溶媒混合物中に、支持層の成分(例えば、ガス透過性ポリマー、親水性添加剤、及び細孔形成剤)を含むコーティング溶液を形成することによって調製され得る。支持層は、実験室規模でフィルム塗布器、又はパイロット規模で連続キャスト機を用いることによって製造され得る。以下の実施例では、図2に示されるパイロット規模のロールツーロールキャスト機を使用して、PES膜を製造した。キャスト溶液は、固定ステンレス鋼ナイフ(最大21インチ幅)によって、100μmの所定の間隙設定で、4フィート/分の速度で移動する不織布上に連続的にキャストされた。3lbfの張力を適用して、布地の平坦性を確保した。キャスト溶液を保持するトラフは、十分な流速(350cc/分)でNでパージされ、キャスト溶液が相分離するのを防止した。キャストナイフの後に湿度チャンバが設置され、布地の回転速度によって、湿度チャンバ内の曝露時間を制御することができた。湿ったNが湿度チャンバに流されて、相対湿度を制御した。湿度チャンバ内の相対湿度及び曝露時間は、それぞれ60%及び6.25秒であった。続いて、キャストフィルムは、水タンクに浸漬されて、支持層を形成した。凝固浴温度は、所望の細孔径に応じて、15~17℃で制御された。
【0061】
任意に、支持層は、例えば、支持体及び吸着物質に対して適切な方法を使用して、水又はその他の吸着種の除去など、選択的ポリマー層の堆積の前に事前処理され得る。吸着種の例は、例えば、水、アルコール、ポロゲン、及び界面活性剤テンプレートである。
【0062】
選択的ポリマー層は、最初に、好適な溶媒中に、選択的ポリマーマトリックスの成分(例えば、親水性ポリマー、アミノ化合物、又はこれらの組み合わせ、並びに任意に架橋剤及び塩基性化合物)を含むコーティング溶液を形成することによって調製され得る。好適な溶媒の一例は、水である。いくつかの実施形態では、用いられる水の量は、コーティング溶液の50重量%~99重量%の範囲である。コーティング溶液は、次いで、選択的ポリマー層の形成に使用され得る。例えば、コーティング溶液は、任意の好適な技術を使用して、支持層(例えば、ナノ多孔質ガス透過性膜)上にコーティングすることができ、溶媒は、非多孔質膜が基材上に形成されるように、蒸発する場合がある。好適なコーティング技術の例としては、「ナイフコーティング」又は「ディップコーティング」が挙げられるが、これらに限定されない。ナイフコーティングは、ナイフが平坦な基材にわたってポリマー溶液を延伸させるために使用され、周辺温度又は約100℃以上の温度でポリマー溶液の溶媒を蒸発させた後、均一な厚さのポリマー溶液の薄膜を形成し、製造された膜を得るプロセスを含む。ディップコーティングは、ポリマー溶液を多孔質支持体と接触させるプロセスを含む。余剰溶液は、支持体から排出されてもよく、ポリマー溶液の溶媒を、周辺温度又は高温で蒸発させる。本開示の膜は、中空繊維、チューブ、フィルム、シートなどの形状に成形されてもよい。特定の実施形態では、膜は、平坦なシートの、螺旋状に巻き付けられた、中空繊維の、又はプレート及び枠の構造に構成されてもよい。
【0063】
いくつかの実施形態では、例えば、親水性ポリマー、架橋剤、基部、及びアミノ化合物を含有する選択的ポリマーマトリックスから形成された膜は、架橋が行われるために十分な温度及び時間で加熱され得る。一実施例では、80℃~100℃の範囲の架橋温度を用いることができる。別の実施例では、架橋は1~72時間で行われ得る。得られた溶液は、上述のように、支持層上にコーティングされ、溶媒を蒸発させることができる。いくつかの実施形態では、溶媒除去後の選択的ポリマーマトリックスのより高い架橋度は、約100℃~約180℃で生じ、架橋は約1~約72時間で行われる。
【0064】
添加剤が、選択的ポリマー層を形成する前に、選択的ポリマー層に含まれて、膜の保水能力を増加させ得る。好適な添加剤としては、ポリスチレンスルホン酸-カリウム塩、ポリスチレンスルホン酸-ナトリウム塩、ポリスチレンスルホン酸-リチウム塩、スルホン化ポリフェニレンオキシド、ミョウバン、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。一実施例では、添加剤は、ポリスチレンスルホン酸-カリウム塩を含む。
【0065】
いくつかの実施形態では、これらの膜の作製方法は、工業的レベルで規模化され得る。
【0066】
カーボンナノチューブを含む膜
いくつかの実施形態では、選択的ポリマー層は、選択的ポリマーマトリックスと、選択的ポリマーマトリックス内に分散されたカーボンナノチューブと、を含み得る。膜は、ガスに対して選択的な透過性を示すことができる。
【0067】
支持層は、任意の好適な材料から形成することができる。支持層を形成するために使用される材料は、膜の最終使用用途に基づき選択することができる。いくつかの実施形態では、支持層は、ガス透過性ポリマーを含むことができる。ガス透過性ポリマーは、架橋ポリマー、相分離ポリマー、多孔質縮合ポリマー、又はこれらのブレンドであり得る。好適なガス透過性ポリマーの例としては、ポリアミド、ポリイミド、ポリピロロン、ポリエステル、スルホン系ポリマー、ニトリル系ポリマー、ポリマー性オルガノシリコーン、フッ素化ポリマー、ポリオレフィン、これらのコポリマー、又はこれらのブレンドが挙げられる。支持層中に存在し得るポリマーの具体例としては、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリジ-イソ-プロピルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンオキシド、ポリベンゾイミダゾール、ポリプロピレン、ポリエチレン、部分的にフッ素化、ペルフッ素化、若しくはスルホン化されたこれらの誘導体、これらのコポリマー、又はこれらのブレンドが挙げられる。いくつかの実施形態では、ガス透過性ポリマーは、ポリスルホン又はポリエーテルスルホンであり得る。所望により、支持層は、支持層の透過性を変質させることなく機械的強度を向上させるため、無機粒子を含むことができる。
【0068】
特定の実施形態では、支持層は、基部上に配置されたガス透過性ポリマーを含むことができる。基部は、特定の用途における使用に好適な膜の形成を促進するように構成された、任意の構造であり得る。例えば、基部は、平坦なディスク、チューブ、渦巻形、又は中空繊維の基部であり得る。基部は、任意の好適な材料から形成することができる。いくつかの実施形態では、層は、繊維性材料を含むことができる。基部の繊維性材料は、メッシュ(例えば、金属若しくはポリマーメッシュ)、織布又は不織布、ガラス、ガラス繊維、樹脂、スクリーン(例えば、金属若しくはポリマースクリーン)であり得る。特定の実施形態では、基部は不織布(例えば、ポリエステルから形成された繊維を含む不織布)を含むことができる。
【0069】
膜は、支持層上に配置された選択的ポリマー層を更に含むことができる。場合によっては、選択的ポリマー層は、ガスが拡散又は促進拡散を介して透過する選択的ポリマーマトリックスであり得る。選択的ポリマー層は、57℃及び1気圧の供給圧力で、少なくとも10のCO:N選択性を有する選択的ポリマーマトリックスを含み得る。例えば、選択的ポリマーマトリックスは、57℃及び1気圧の供給圧力で、少なくとも25(例えば、少なくとも50、少なくとも75、少なくとも100、少なくとも125、少なくとも150、少なくとも175、少なくとも200、少なくとも225、少なくとも250、少なくとも275、少なくとも300、少なくとも325、少なくとも350、少なくとも375、少なくとも400、少なくとも425、少なくとも450、又は少なくとも475)のCO:N選択性を有し得る。いくつかの実施形態では、選択的ポリマーマトリックスは、57℃及び1気圧の供給圧力で、500以下(例えば、475以下、450以下、425以下、400以下、375以下、350以下、325以下、300以下、275以下、250以下、225以下、200以下、175以下、150以下、125以下、100以下、75以下、50以下、又は25以下)のCO:N選択性を有し得る。
【0070】
特定の実施形態では、選択的ポリマー層は、上記の最小値のうちのいずれかから上記の最大値のうちのいずれかまでの範囲のCO:N選択性を有する選択的ポリマーマトリックスを含み得る。例えば、特定の実施形態では、選択的ポリマー層は、57℃及び1気圧の供給圧力で、10~500(例えば、57℃及び1気圧の供給圧力で、10~400、57℃及び1気圧の供給圧力で、75~400、57℃及び1気圧の供給圧力で、100~400、57℃及び1気圧の供給圧力で、10~350、57℃及び1気圧の供給圧力で、75~350、57℃及び1気圧の供給圧力で、100~350、57℃及び1気圧の供給圧力で、10~250、57℃及び1気圧の供給圧力で、75~250、又は57℃及び1気圧の供給圧力で、100~250)のCO:N選択性を有する選択的ポリマーマトリックスを含み得る。選択的ポリマーのCO:H選択性は、以下の実施例に記載されるものなどの、当該技術分野において既知の標準的なガス透過性測定方法を使用して、測定され得る。
【0071】
選択的ポリマーマトリックスは、親水性ポリマー、アミノ化合物、又はこれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、親水性ポリマーは存在しなくてもよい(例えば、選択的ポリマーマトリックスは、1種以上のアミノ化合物を含み得る)。他の実施形態では、選択的ポリマーマトリックスは、親水性ポリマーとアミノ化合物との組み合わせを含み得る。例えば、場合によっては、選択的ポリマーマトリックスは、親水性ポリマーマトリックス中に分散されたアミノ化合物(例えば、小分子、ポリマー、又はこれらの組み合わせ)を含み得る。
【0072】
いくつかの実施形態では、アミノ化合物は、1種以上の一級アミン部分及び/又は1種以上の二級アミン部分を含む化合物(例えば、小分子、ポリマー、又はこれらの組み合わせ)を含み得る。アミノ化合物は、例えば、アミン含有ポリマー、低分子量アミノ化合物(すなわち、小分子)、又はこれらの組み合わせであり得る。
【0073】
いくつかの実施形態では、アミノ化合物は、アミン含有ポリマー(本明細書では「固定キャリア」とも称される)を含む。アミン含有ポリマーは、任意の好適な分子量を有し得る。例えば、アミン含有ポリマーは、5,000Da~5,000,000Da、又は50,000Da~2,000,000Daの重量平均分子量を有し得る。アミン含有ポリマーの好適な例としては、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、ポリ-N-イソプロピルアリルアミン、ポリ-N-tert-ブチルアリルアミン、ポリ-N-1,2-ジメチルプロピルアリルアミン、ポリ-N-メチルアリルアミン、ポリ-N,N-ジメチルアリルアミン、ポリ-2-ビニルピペリジン、ポリ-4-ビニルピペリジン、ポリアミノスチレン、キトサン、コポリマー、及びこれらのブレンドが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、アミン含有ポリマーは、ポリビニルアミン(例えば、50,000Da~2,000,000Daの重量平均分子量を有するポリビニルアミン)を含み得る。いくつかの実施形態では、アミノ化合物がアミン含有ポリマーを含む場合、親水性ポリマーは存在しない。いくつかの実施形態では、アミノ化合物がアミン含有ポリマーを含む場合、選択的ポリマー層は、アミン含有ポリマーと親水性ポリマーとのブレンド(親水性ポリマーマトリックス中に分散されたアミン含有ポリマー)を含み得る。
【0074】
いくつかの実施形態では、アミノ化合物は、低分子量アミノ化合物(本明細書では「移動キャリア」とも称される)を含み得る。低分子量アミノ化合物は、1,000Da以下(例えば、800Da以下、500以下、300Da以下、又は250Da以下)の分子量を有し得る。いくつかの実施形態では、低分子量アミノ化合物は、膜が保存又は使用される温度で不揮発性であり得る。例えば、低分子量アミノ化合物は、一級アミンの塩又は二級アミンの塩を含み得る。いくつかの実施形態では、アミノ化合物が低分子量アミノ化合物を含む場合、選択的ポリマー層は、低分子量アミノ化合物と親水性ポリマーとのブレンド(例えば、親水性ポリマーマトリックス中に分散した低分子量アミノ化合物)を含み得る。
【0075】
場合によっては、低分子量アミノ化合物は、式:
【0076】
【化3】
を有するアミノ酸塩を含み得る。
式中、R、R、R、及びRは、水素又は1~4個の炭素原子を有する炭化水素基であり、nは、0~4の範囲の整数であり、Am+は、1~3の原子価を有するカチオンである。場合によっては、カチオン(Am+)は、式:
【0077】
【化4】
を有するアミンカチオンであり得る。
式中、R及びRは、水素又は1~4個の炭素原子を有する炭化水素基であり、Rは、水素又は1~4個の炭素原子を有する炭化水素基又は2~6個の炭素原子及び1~4個の窒素原子のアルキルアミンであり、yは、1~4の範囲の整数であり、mは、カチオンの原子価に等しい整数である。いくつかの実施形態では、Am+は、元素周期表のIa族、IIa族、及びIIIa族、又は遷移金属から選択される金属カチオンである。例えば、Am+は、リチウム、アルミニウム、又は鉄を含み得る。
【0078】
他の好適な低分子量アミノ化合物としては、アミノイソ酪酸-カリウム塩、アミノイソ酪酸-リチウム塩、アミノイソ酪酸-ピペラジン塩、グリシン-カリウム塩、グリシン-リチウム塩、グリシン-ピペラジン塩、ジメチルグリシン-カリウム塩、ジメチルグリシン-リチウム塩、ジメチルグリシン-ピペラジン塩、ピペラジジン-2-カルボン酸-カリウム塩、ピペラジジン-2-カルボン酸-リチウム塩、ピペラジジン-2-カルボン酸-ピペラジン塩、ピペラジジン-4-カルボン酸-カリウム塩、ピペラジジン-4-カルボン酸-リチウム塩、ピペラジジン-4-カルボン酸-ピペラジン塩、ピペラジジン-3-カルボン酸-カリウム塩、ピペラジジン-3-カルボン酸-リチウム塩、ピペラジジン-3-カルボン酸-ピペラジン塩、及びこれらのブレンドが挙げられる。
【0079】
選択的ポリマーマトリックスは、任意の好適な量のアミノ化合物を含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、親水性ポリマーは不存在であり得る。これらの実施形態では、選択的ポリマーマトリックスは、選択的ポリマーマトリックスを形成するために使用される成分の総重量に基づき、100重量%~80重量%のアミノ化合物を含み得る。場合によっては、選択的ポリマーマトリックスは、選択的ポリマーマトリックスを形成するために使用される成分の総重量に基づき、10重量%~90重量%(例えば、10重量%~50重量%)のアミノ化合物を含み得る。
【0080】
任意に、選択的ポリマーマトリックスは、任意の好適な親水性ポリマーを含み得る。選択的ポリマーマトリックスにおける使用に好適な親水性ポリマーの例としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、又はポリエチレンイミンなどのポリアミン、これらのコポリマー、及びこれらのブレンドを挙げることができる。いくつかの実施形態では、親水性ポリマーは、ポリビニルアルコールを含む。
【0081】
存在する場合、親水性ポリマーは、任意の好適な分子量を有することができる。例えば、親水性ポリマーは、15,000Da~2,000,000Da(例えば、50,000Da~200,000Da)の重量平均分子量を有することができる。いくつかの実施形態では、親水性ポリマーは、50,000Da~150,000Daの重量平均分子量を有するポリビニルアルコールを含み得る。
【0082】
選択的ポリマーマトリックスは、任意の好適な量の親水性ポリマーを含み得る。例えば、場合によっては、選択的ポリマーマトリックスは、選択的ポリマーマトリックスを形成するために使用される成分の総重量に基づき、10重量%~90重量%(例えば、10重量%~50重量%)の親水性ポリマーを含むことができる。
【0083】
いくつかの実施形態では、選択的ポリマーマトリックスは、架橋剤を更に含み得る。選択的ポリマーマトリックスにおける使用に好適な架橋剤としては、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、無水マレイン酸、グリオキサール、ジビニルスルホン、トルエンジイソシアネート、トリメチロールメラミン、テレフタレートアルデヒド、エピクロロヒドリン、ビニルアクリレート、及びこれらの組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、架橋剤は、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、又は無水マレイン酸を含むことができる。選択的ポリマーマトリックスは、任意の好適な量の架橋剤を含み得る。例えば、選択的ポリマーマトリックスは、選択的ポリマーマトリックスの1~40重量パーセントの架橋剤を含み得る。
【0084】
選択的ポリマーマトリックスは、基部を更に含み得る。基部は、選択的ポリマーマトリックスの架橋(例えば、親水性ポリマーのアミン含有ポリマーとの架橋)に触媒作用を及ぼす触媒として機能し得る。いくつかの実施形態では、基部は、選択的ポリマーマトリックスに残留して、選択的ポリマーマトリックスの一部を構成し得る。好適な基部の例としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、トリエチルアミン、N,N-ジメチルアミノピリジン、ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、及びこれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、基部は、水酸化カリウムを含むことができる。選択的ポリマーマトリックスは、任意の好適な量の基部を含み得る。例えば、選択的ポリマーマトリックスは、選択的ポリマーマトリックスの1~40重量パーセントの基部を含み得る。
【0085】
選択的ポリマー層は、選択的ポリマーマトリックス内に分散されたカーボンナノチューブを更に含む。任意の好適なカーボンナノチューブ(任意の好適な方法によって調製されるか、又は市販の供給源から得られる)が使用され得る。カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、又はこれらの組み合わせを含み得る。
【0086】
場合によっては、カーボンナノチューブは、少なくとも10nm(例えば、少なくとも20nm、少なくとも30nm、又は少なくとも40nm)の平均直径を有し得る。場合によっては、カーボンナノチューブは、50nm以下(例えば、40nm以下、30nm以下、又は20nm以下)の平均直径を有し得る。特定の実施形態では、カーボンナノチューブは、上記の最小値のうちのいずれかから上記の最大値のうちのいずれかまでの範囲の平均直径を有し得る。例えば、カーボンナノチューブは、10nm~50nm(例えば、10nm~30nm、又は20nm~50nm)の平均直径を有し得る。
【0087】
場合によっては、カーボンナノチューブは、少なくとも50nm(例えば、少なくとも100nm、少なくとも200nm、少なくとも300nm、少なくとも400nm、少なくとも500nm、少なくとも600nm、少なくとも700nm、少なくとも800nm、少なくとも900nm、少なくとも1μm、少なくとも5μm、少なくとも10μm、又は少なくとも15μm)の平均長さを有し得る。場合によっては、カーボンナノチューブは、20μm以下(例えば、15μm以下、10μm以下、5μm以下、1μm以下、900nm以下、800nm以下、700nm以下、600nm以下、500nm以下、400nm以下、300nm以下、200nm以下、又は100nm以下)の平均長さを有し得る。
【0088】
特定の実施形態では、カーボンナノチューブは、上記の最小値のうちのいずれかから上記の最大値のうちのいずれかまでの範囲の平均長さを有し得る。例えば、カーボンナノチューブは、50nm~20μm(例えば、200nm~20μm、又は500nm~10μm)の平均長さを有し得る。
【0089】
場合によっては、カーボンナノチューブは、非官能基化カーボンナノチューブを含み得る。他の実施形態では、カーボンナノチューブは、側壁官能基化カーボンナノチューブを含み得る。側壁官能基化カーボンナノチューブは、当該技術分野において周知である。好適な側壁官能基化カーボンナノチューブは、例えば、強酸酸化による側壁上への欠陥の作成によって、非官能基化カーボンナノチューブから調製され得る。酸化剤によって作成される欠陥は、続いて、より安定なヒドロキシル基及びカルボン酸基に変換され得る。次いで、酸処理されたカーボンナノチューブ上のヒドロキシル基及びカルボン酸基は、他の官能基を含有する試薬(例えば、アミン含有試薬)に結合し、それによって、カーボンナノチューブの側壁上にペンダント官能基(例えば、アミノ基)を導入し得る。いくつかの実施形態では、カーボンナノチューブは、ヒドロキシ官能基化カーボンナノチューブ、カルボキシ官能基化カーボンナノチューブ、アミン官能基化カーボンナノチューブ、又はこれらの組み合わせを含み得る。
【0090】
いくつかの実施形態では、選択的ポリマー層は、選択的ポリマー層の総乾燥重量に基づいて、少なくとも0.5重量%(例えば、少なくとも1重量%、少なくとも1.5重量%、少なくとも2重量%、少なくとも2.5重量%、少なくとも3重量%、少なくとも3.5重量%、少なくとも4重量%、又は少なくとも4.5重量%)のカーボンナノチューブを含み得る。いくつかの実施形態では、選択的ポリマー層は、選択的ポリマー層の総乾燥重量に基づいて、5重量%以下(例えば、4.5重量%以下、4%重量以下、3.5%重量以下、3%重量以下、2.5%重量以下、2%重量以下、1.5%重量以下、又は1%重量以下)のカーボンナノチューブを含み得る。
【0091】
選択的ポリマー層は、上記の最小値のうちのいずれかから上記の最大値のうちのいずれかまでの範囲のカーボンナノチューブ量を含み得る。例えば、選択的ポリマー層は、選択的ポリマー層の総乾燥重量に基づいて、0.5重量%~5重量%(例えば、1重量%~3重量%)のカーボンナノチューブを含み得る。
【0092】
所望により、選択的ポリマー層は、例えば、化学グラフティング、混和、又はコーティングにより選択的ポリマー層の性能向上のために、表面改質させることができる。例えば、疎水性成分が選択的ポリマー層へと追加されて、より高い流体選択性を促進する方式で、選択的ポリマー層の特性を変化させてよい。
【0093】
膜における各層の厚さの合計は、機械的に堅牢ではあるが、透過性に障害を生じるほどの厚さではない構造が選択され得る。いくつかの実施形態では、選択的ポリマー層は、50ナノメートル~5ミクロン(例えば、50nm~2ミクロン、又は100ナノメートル~750ナノメートル、又は250ナノメートル~500ナノメートル)の厚さを有し得る。いくつかの実施形態では、支持層は、1ミクロン~500ミクロン(例えば、50~250ミクロン)の厚さを有することができる。場合によっては、本明細書にて開示した膜は、5ミクロン~500ミクロンの厚さを有することができる。
【0094】
これらの膜の作製方法もまた、本明細書に開示される。膜の作製方法は、支持層上に選択的ポリマー層を堆積させて、支持層上に配置された選択的層を形成することを含み得る。選択的ポリマー層は、選択的ポリマーマトリックスと、選択的ポリマーマトリックス内に分散されたカーボンナノチューブと、を含み得る。
【0095】
任意に、支持層は、例えば、支持体及び吸着物質に対して適切な方法を使用して、水又はその他の吸着種の除去など、選択的ポリマー層の堆積の前に事前処理され得る。吸着種の例は、例えば、水、アルコール、ポロゲン、及び界面活性剤テンプレートである。
【0096】
選択的ポリマー層は、最初に、好適な溶媒中に、選択的ポリマーマトリックスの成分(例えば、親水性ポリマー、アミノ化合物、又はこれらの組み合わせ、並びに任意に架橋剤及び塩基性化合物)、及びカーボンナノチューブを含むコーティング溶液を形成することによって調製され得る。好適な溶媒の一例は、水である。いくつかの実施形態では、用いられる水の量は、コーティング溶液の50重量%~99重量%の範囲である。コーティング溶液は、次いで、選択的ポリマー層の形成に使用され得る。例えば、コーティング溶液は、任意の好適な技術を使用して、支持層(例えば、ナノ多孔質ガス透過性膜)上にコーティングすることができ、溶媒は、非多孔質膜が基材上に形成されるように、蒸発する場合がある。好適なコーティング技術の例としては、「ナイフコーティング」又は「ディップコーティング」が挙げられるが、これらに限定されない。ナイフコーティングは、ナイフが平坦な基材にわたってポリマー溶液を延伸させるために使用され、周辺温度又は約100℃以上の温度でポリマー溶液の溶媒を蒸発させた後、均一な厚さのポリマー溶液の薄膜を形成し、製造された膜を得るプロセスを含む。ディップコーティングは、ポリマー溶液を多孔質支持体と接触させるプロセスを含む。余剰溶液は、支持体から排出されてもよく、ポリマー溶液の溶媒を、周辺温度又は高温で蒸発させる。本開示の膜は、中空繊維、チューブ、フィルム、シートなどの形状に成形されてもよい。特定の実施形態では、膜は、平坦なシートの、螺旋状に巻き付けられた、中空繊維の、又はプレート及び枠の構造に構成されてもよい。
【0097】
いくつかの実施形態では、例えば、親水性ポリマー、架橋剤、基部、アミノ化合物、及びカーボンナノチューブを含有する選択的ポリマーマトリックスから形成された膜は、架橋が行われるために十分な温度及び時間で加熱され得る。一実施例では、80℃~100℃の範囲の架橋温度を用いることができる。別の実施例では、架橋は1~72時間で行われ得る。得られた溶液は、上述のように、支持層上にコーティングされ、溶媒を蒸発させることができる。いくつかの実施形態では、溶媒除去後の選択的ポリマーマトリックスのより高い架橋度は、約100℃~約180℃で生じ、架橋は約1~約72時間で行われる。
【0098】
添加剤が、選択的ポリマー層を形成する前に、選択的ポリマー層に含まれて、膜の保水能力を増加させ得る。好適な添加剤としては、ポリスチレンスルホン酸-カリウム塩、ポリスチレンスルホン酸-ナトリウム塩、ポリスチレンスルホン酸-リチウム塩、スルホン化ポリフェニレンオキシド、ミョウバン、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。一実施例では、添加剤は、ポリスチレンスルホン酸-カリウム塩を含む。
【0099】
いくつかの実施形態では、これらの膜の作製方法は、工業的レベルで規模化され得る。
【0100】
使用方法
本明細書にて開示した膜は、ガス状混合物の分離に使用することができる。例えば、第1のガス及び1つ以上の追加のガス(例えば、少なくとも第2のガス)を含む供給ガスから第1のガスを分離するための方法が、提供される。本方法は、第1のガスの膜透過性を提供するために効果的な条件下で、本開示の任意の膜を(例えば、選択的ポリマーを含む側で)供給ガスに接触させることを含んでもよい。いくつかの実施形態では、本方法は、少なくとも第1のガスを含有する透過液を膜の裏側から引き出すこともまた含むことができ、第1のガスはガス状流から選択的に除去される。透過液は、供給流と比較して高い濃度にて、少なくとも第1のガスを含むことができる。用語「透過液」とは、膜の第2の側に存在し得る掃気ガス又は液体などのその他の流体を除外した、膜の裏側又は第2の側で引き出された供給流の一部を意味する。
【0101】
膜は、100℃以上の温度を含む任意の好適な温度で、流体を分離するために使用され得る。例えば、膜は、100℃~180℃の温度で、使用され得る。いくつかの実施形態では、減圧が膜の透過面へと適用されて、第1のガスを除去することができる。いくつかの実施形態では、掃気ガスが膜の透過面にわたって流されて、第1のガスを除去することができる。任意の好適な掃気ガスを使用することができる。好適な掃気ガスの例としては、例えば、空気、蒸気、窒素、アルゴン、ヘリウム、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0102】
第1のガスは酸性ガスを含むことができる。例えば、第1のガスは二酸化炭素、硫化水素、塩酸、二酸化硫黄、三酸化硫黄、窒素酸化物、又はこれらの組み合わせであることができる。いくつかの実施形態では、膜は、水素、窒素、一酸化炭素、又はこれらの組み合わせと比較し、二酸化炭素に対して選択的であることができる。いくつかの実施形態では、膜は、水素、窒素、一酸化炭素、又はこれらの組み合わせと比較し、硫化水素に対して選択的であることができる。いくつかの実施形態では、膜は、水素、窒素、一酸化炭素、又はこれらの組み合わせと比較し、塩酸ガスに対して選択的であることができる。いくつかの実施形態では、酸性ガスは、燃料電池、発電及び水素化用途、再生可能エネルギー用バイオガス、並びに商業用天然ガスのため、水素精製を必要とする石油燃料から由来してよい。例えば、膜は、燃料電池(例えば、燃料電池への進入に先立って、供給ガスを精製するため)に用いられてよい。膜は、燃焼ガスから二酸化炭素を除去するために使用することもできる。
【0103】
第1のガス又は酸性ガスの透過性は、57℃及び1気圧の供給圧力で、少なくとも50GPU(例えば、75GPU以上、100GPU以上、150GPU以上、200GPU以上、250GPU以上、300GPU以上、350GPU以上、400GPU以上、450GPU以上、500GPU以上、550GPU以上、600GPU以上、650GPU以上、700GPU以上、750GPU以上、800GPU以上、850GPU以上、900GPU以上、950GPU以上、1000GPU以上、1100GPU以上、1200GPU以上、1300GPU以上、又は1400GPU以上)であり得る。
【0104】
第1のガス又は酸性ガスの透過性は、57℃及び1気圧の供給圧力で、1500GPU以下(例えば、1400GPU以下、1300GPU以下、1200GPU以下、1100GPU以下、1000GPU以下、950GPU以下、900GPU以下、850GPU以下、800GPU以下、750GPU以下、700GPU以下、650GPU以下、600GPU以下、550GPU以下、500GPU以下、450GPU以下、400GPU以下、350GPU以下、300GPU以下、250GPU以下、200GPU以下、150GPU以下、100GPU以下、又は75GPU以下)であり得る。
【0105】
膜を通る第1のガス又は酸ガスの透過性は、上述の最小値のいずれかから上述の最大値のいずれかまで変化し得る。例えば、第1のガス又は酸性ガスの透過性は、57℃及び1気圧の供給圧力で、50GPU~1500GPU(例えば、120℃で、300GPU~1500GPU、又は57℃及び1気圧の供給圧力で、500GPU~1500GPU)であり得る。
【0106】
いくつかの実施形態では、上の膜を通る第1のガス又は酸性ガスの透過性値は、減圧が膜の透過側面に適用される場合(例えば、0.2atmの透過圧で)、57℃及び1気圧の供給圧力で、観察され得る。例えば、いくつかの実施形態では、第1のガス又は酸性ガスの透過性は、減圧が膜の透過側面に適用される場合、57℃及び1気圧の供給圧力で、50GPU~1500GPU(例えば、減圧が膜の透過側面に適用される場合、120℃で、300GPU~1500GPU、57℃及び1気圧の供給圧力で、500GPU~1500GPU)であり得る。特定の実施形態では、膜は、減圧が膜の透過側面に適用される場合(例えば、0.2atmの透過圧で)、57℃及び1気圧の供給圧力で、少なくとも500GPU(例えば、500~1500GPU)のCO透過性を示し得る。
【0107】
膜は、57℃及び1気圧の供給圧力で、少なくとも10の第1のガス/第2のガス選択性を示し得る。いくつかの実施形態では、膜は、57℃及び1気圧の供給圧力で、最大500の第1のガス/第2のガス選択性を示し得る。例えば、膜は、57℃及び1気圧の供給圧力で、10以上、25以上、50以上、75以上、100以上、125以上、150以上、175以上、200以上、225以上、250以上、275以上、300以上、325以上、350以上、375以上、400以上、425以上、450以上、又は475以上の第1のガス/第2のガス選択性を示し得る。いくつかの実施形態では、第1のガス又は酸性ガスに関する膜の透過性及び選択性は、より高い又はより低い温度にて変化し得る。
【0108】
支持層は、単独で(例えば、選択的ポリマー層なしで)、濾過用途にも使用され得る。例えば、支持層は、単独で、改善された限外濾過膜として使用され得る(例えば、タンパク質分離、浄水、排水処理、食品加工などでの使用)。
【0109】
非限定的な実例として、本開示のある特定の実施形態の実施例を、以下に与える。
【実施例
【0110】
実施例1-親水性添加剤を含む膜
概要
ナノ多孔質ガス透過性膜、並びにナノ多孔質ガス透過性膜から形成される選択的透過性複合膜が本明細書に記載される。ナノ多孔質ガス透過性膜は、ガス透過性ポリマー(例えば、ポリエーテルスルホン(polyethersulfone、PES))と、ガス透過性ポリマー中に分散された、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシル化ポリエーテルスルホン(PES-OH)、又はスルホン化ポリスルホン(SPSf)などの親水性添加剤と、から形成される。得られたナノ多孔質ガス透過性膜は、改善された親水性及び形態を示す。親水性添加剤をPES中に組み込むことによって、親水性添加剤を含まない同一の膜と比較して、膜のガス透過抵抗が低下する。更に、ナノ多孔質ガス透過性膜から形成される選択的透過性複合膜の場合、親水性添加剤を含まない同一の膜と比較して、膜の向上した親水性に起因して、より薄い選択的ポリマー層が、ナノ多孔質ガス透過性膜の上にコーティングされ得る。形態学的改質及び親水性改質の両方によって、ナノ多孔質ガス透過性膜から形成される選択的透過性複合膜の分離性能が改善され得る。ナノ多孔質ガス透過性膜は、異なる調製条件で、28.5~70nmの平均細孔径、及び11.4~18.5%の表面空隙率を有する多孔質表面を有し得る。
【0111】
背景
ナノ多孔質ポリマー基材は、支持層として一般的に使用されて、ガス分離における複合膜の機械的強度を提供する。基材の表面特性及び形態は、複合膜の輸送性能を改善するために重要である。煙道ガスからのCO分離などのガス分離に使用され得る、複合膜調製用のパイロット規模でのポリマー(例えば、ポリエーテルスルホン(PES))膜の効果的な製造方法が本明細書に記載される。得られた改善されたPES膜は、N含有流、例えば煙道ガスからのCOの除去及び捕捉を含む、ガス分離用複合膜の製造に効果的な支持体である。
【0112】
PES膜の1つの欠点は、親水性選択的ポリマー層と基材との間の付着性問題を引き起こし得る、その低い親水性である。その結果、PES基材の上に超薄型及び欠陥のない選択的層をコーティングするのに好適な粘度が必要とされる。しかしながら、PES基材の親水性が向上すると、付着性問題が解決され得るだけでなく、均一で、より薄い選択的層が基材上にコーティングされ得る。したがって、表面特性は、複合膜の輸送性能の重要な要因となる。
【0113】
PES基材の親水性を改善するための努力がなされてきた。文献に提示された一般的に使用されているPES親水性改質方法は、(1)スルホン化又はアミノ化によるPES材料のバルク改質、(2)プラズマ処理又はグラフティングによる調製されたPES膜の化学的改質、及び(3)表面親水性添加剤とのブレンドである。バルク改質は、制御が難しく、わずかな親水性の改善は、達成することはほとんど不可能である。更に、化学的改質は、基材の大量生産にはコストがかかる。しかしながら、ガス分離に必要な膜面積が大きいため、費用効果の高い複合膜が必要であり、基材製造のコスト要件につながる。PESと他の添加剤とを、巨大分子からナノ粒子にブレンドすることは、PES基材を改質するための有効で、最も単純な方法である。
【0114】
米国特許第8,684,188号は、PESと、PVP及びLiClなどの親水性ポリマーと、をブレンドする改質方法を記載している。本特許によれば、改質されたPES膜の接触角は、親水性ポリマーを添加しない比較試料と比較して低下した。米国特許第5,178,765号は、PESと、親水性ポリ-2-オキサゾリン及びPVPと、をブレンドする方法を開示している。得られた膜は、長期の水湿潤性を示した。報告されたブレンド方法は、効率的で簡単である。しかしながら、公開された特許に開示された親水性PES膜調製方法は、水処理又は濾過分野において応用された。この分野における必要な親水性は、汚損問題を低減させるために、多くの場合高くなる。それにもかかわらず、過度の親水性は、コーティングの間、選択的層浸透を誘発し得る。したがって、本明細書に記載される膜において、少量の親水性添加剤のみが組み込まれ、コーティング浸透を起こすことなく、親水性のわずかな増加につながる。結果として、本明細書で調製されるPES膜は、ガス分離用の複合膜調製用の支持層としての使用に好適な親水性を示す。
【0115】
更に、基材の形態は、それがガス透過抵抗に有意に影響を及ぼすため、膜の分離性能に影響を及ぼす。多層複合膜のガス透過抵抗は、各層からの抵抗を含む。高透過性選択的層のために、下層の支持層は、基材の形態が十分に開放されていない場合、総抵抗の10%超を提供し得る。基材バルク形態、並びに(細孔径及び空隙率を含む)表面形態の両方は、ガス透過抵抗に寄与する。表面形状は、基材細孔への横方向の拡散のため、選択的層から基材(すなわち、支持層)へのガス分子の輸送を制限する。空隙率の増加は、効果的な拡散長さの低減のため、分離性能を改善し得る。親水性を向上させることに加えて、親水性添加剤の添加もまた、表面形態並びにバルク形態を改善し得る。親水性添加剤をPESに組み込むことによって、ナノ多孔質ガス透過性膜(PES基材)のガス透過抵抗は、親水性添加剤を含まない同一の組成物の膜と比較して、100%以上低減する。
【0116】
ガス分離用の複合膜中の支持層として使用される、改善されたナノ多孔質ガス透過性膜(例えば、PES基材)の、効率的で、費用効果の高い製造を提供する、製造プロセスもまた記載される。これらの方法は、ガス分離用の改善された複合膜の大量生産に対応する。
【0117】
材料及び方法
ナノ多孔質ガス透過性膜用のキャスト溶液
ナノ多孔質ガス透過性膜用の典型的なキャスト溶液は、PESポリマー、親水性添加剤、溶媒、及び細孔形成剤を含む。N-メチル-2-ピロリドン(N-methyl-2-pyrrolidone、NMP)及び水を、溶媒及び非溶媒としてそれぞれ用いた。2-メトキシエタノール(2-Methoxyethanol、2-ME)を、水との高い親和性のため、細孔形成添加剤としてキャスト溶液に組み込み、それは、基材のバルク内の相互接続されたスポンジ構造につながる。最初に、溶液が透明かつ均質になるまで、80℃で6時間磁気撹拌しながら、PES(又はPES及び親水性添加剤)を適切な量のNMPに溶解することによって、キャスト溶液を調製した。次いで、溶液を室温まで冷却し、相分離を最小限にするために2-MEを滴下した。典型的なPES含有量は、溶液中で14重量%であり、NMP対2-MEの重量比は、35/58であった。溶液を磁気撹拌下で一晩保持した。全ての手順をNシャワー下で行った。一晩撹拌した後、溶液は、後続のキャストに使用することができる。
【0118】
パイロット規模でのキャストプロセス
ナノ多孔質PES膜を、蒸気及び非溶媒誘導相反転工程によって連続的に製造した。PES膜は、実験室規模でフィルム塗布器、又はパイロット規模で連続キャスト機を用いることによって製造され得る。以下の実施例では、PES膜を、図2に示されるパイロット規模のロールツーロールキャスト機を使用して製造した。キャスト溶液を、固定ステンレス鋼ナイフ(最大21インチ幅)によって、100μmの所定の間隙設定で、4フィート/分の速度で移動する不織布上に連続的にキャストした。3lbfの張力を適用して、布地の平坦性を確保した。キャスト溶液を保持するトラフを、十分な流速(350cc/分)でNでパージし、キャスト溶液が相分離するのを防止した。キャストナイフの後に湿度チャンバを設置し、布地の回転速度は、湿度チャンバ内の曝露時間を制御し得た。湿ったNを湿度チャンバに流して、相対湿度を制御した。湿度チャンバ内の相対湿度及び曝露時間は、それぞれ60%及び6.25秒であった。続いて、キャストフィルムを、水タンクに浸漬して、PES膜を形成した。凝固浴温度を、所望の細孔径に応じて、15~17℃で制御した。
【0119】
ガス輸送特性評価
製造されたPES膜及び複合膜のガス輸送特性を、ガス透過性試験装置を介して特性評価した。簡潔に言えば、膜を、2.7cmの有効面積及び向流構成を有する矩形ステンレス鋼セルに装填した。乾燥基準で20%のCO及び80%のNの供給ガス混合物、及びアルゴン(argon、Ar)の掃気ガスを、マスフロー制御器(Brooks instrument,Hatfield,PA)によって制御した。供給ガス流量及び掃気ガス流速は、それぞれ92cc/分及び30cc/分であった。更に、圧力を、供給側面及び掃気側面でそれぞれ1.5psig及び1.2psigになるよう調整した。温度を、温度制御されたオーブン(Bemco Inc.Simi Valley,CA)を介して、57℃に制御した。供給ガス及び掃気ガスを、ラシヒガラスリングパッキングで満たされたステンレス鋼加湿器(Swagelok,Westerville,OH,U.S.A.)を介して加湿することによって、57℃(典型的な煙道ガス温度)で17.2%の飽和水含有量を、全ての輸送実験における供給側面及び掃気側面の両方に適用した。輸送測定の前に、100mlの水を両側の加湿器にポンプで送り込んだ。非透過及び透過ガス流を、それらのそれぞれのノックアウト容器及びドライライト管によって乾燥させた後、それらを組成分析のためにガスクロマトグラフ(gas chromatograph、GC)に送った。次いで、ガス組成物を、CO透過性及びCO/N選択性の計算に使用した。
【0120】
実施例1A
PESポリマー(BASF製Ultrason(登録商標)E7020P)及びPVP K90(BASF製Luvitec(登録商標))を使用して、ナノ多孔質ガス透過性膜(本明細書ではPES基材とも称される)を調製した。詳細な溶液組成を表1に要約する。キャスト溶液中のNMP及び2-ME濃度が、それぞれ32.27重量%及び53.48重量%に対応する、35/58のNMP/2-MEの重量比を使用した。キャスト溶液を、上記の手順に従って調製し、PES基材を、図2に示される連続キャスト機によってキャストした。水凝固浴温度を除いて、キャストプロセス中の操作パラメータを、以下の全ての実施例に対して同一に保った。実施例1Aにおいて、凝固浴温度を17℃に制御した。
【0121】
【表1】
【0122】
図3Aは、実施例1AにおけるPES基板の表面形態を示す。平均細孔径及び表面空隙率は、それぞれ46.5nm及び14.3%であった。以下の比較例1Bにおいて調製された親水性添加剤(PVP)を含まない同一の膜は、平均細孔径及び表面空隙率がそれぞれ41nm及び12%であることを示した。PVPの添加は、細孔径及び空隙率を増加させ、これによりガス透過耐性が低下した。表2に示されるように、PVP改質PES基材のCO透過性は、22500GPU(1GPU=10-6cm(STP)・cm-2・s-1・cmHg-1)であり、これは、表3に示される未改質PES基材(比較例1Bにおいて9200GPU)のCO透過性よりも2倍超高かった。PVPの組み込み後に、ガス輸送に有利な開放形態が得られた。表2及び3はまた、実施例1Aにおける基材の接触角が、比較例1Bにおける基材の接触角よりも小さいことを示し、改善されたPES基材の親水性の改善を示す。
【0123】
【表2】
【0124】
比較例1B
元の未改質PES基材(親水性添加剤を用いずに調製された膜)を調製して、実施例1Aにおいて調製された膜と比較した。14重量%のPES濃度及び35/58のNMP/2-ME重量比を適用した。実施例1Aにおいて記載された同様の溶液調製手順及びキャストプロセスを使用した。凝固浴温度を17℃に制御した。表3は、元の未改質PES基材の表面形態、接触角、及びCO透過性を示す。改質され、改善されたPES基材の改善を示すための対照として、この基材を使用した。
【0125】
【表3】
【0126】
実施例1C
親水性PES基材を、より低い含有量のPVP(BASF製Luvitec(登録商標)K90)が組み込まれることを除いて、実施例1Aにおいて記載された同じ手順によって調製した。詳細な溶液組成を表4に要約する。図4は、調製されたPES基材の表面形態を示し、表5は、実施例1Cにおける改質されたPES基材の表面形態、接触角、及びCO透過性を要約する。示されるように、平均細孔径及び表面空隙率は、それぞれ38.7nm及び13.4%であった。実施例1CのCO透過性は22000GPUであり、比較例1Bと比較して、より開放的な形態が得られた。実施例2におけるより低い接触角は、改質されたPES基材の改善された親水性を示す。
【0127】
【表4】
【0128】
【表5】
【0129】
実施例1D
親水性PES基材を、実施例1Aにおいて記載された同じ手順によって得た。異なる分子量のPVP(BASF製Luvitec(登録商標)K30)を、0.025重量%の濃度で組み込んだ。PES濃度及びNMP/2-ME重量比を、それぞれ14重量%及び35/58に保った。凝固浴温度を15℃に制御した。図5は、調製されたPES基材の表面形態を示し、表6は、改質され、改善されたPES基材の表面形態、接触角、及びCO透過性を要約する。示されるように、実施例1D(19000GPU)における、改質され、改善されたPESのCO透過性は、比較例1B(9200GPU)における元の未改質PES基材のCO透過性よりも高く、これは、より開放的な形態に起因していた。実施例1Dにおけるより低い接触角は、改質され、改善されたPES基材の改善された親水性を示す。
【0130】
【表6】
【0131】
実施例1E
親水性PES基材を、実施例1Aにおいて記載された同じ手順によって調製した。異なる分子量のPVP(BASF製Luvitec(登録商標)K30)を、0.01重量%の濃度で組み込んだ。PES濃度及びNMP/2-ME重量比を、それぞれ14重量%及び35/58に保った。凝固浴温度を15℃に制御した。図6は、調製されたPES基材の表面形態を示し、表7は、改質され、改善されたPES基材の表面形態、接触角、及びCO透過性を要約する。示されるように、実施例1E(18000GPU)における、改質されたPESのCO透過性は、比較例1B(9200GPU)における元の未改質PES基材のCO透過性よりも高く、これは、より開放的な形態によって説明することができた。表7における低減した接触角によって示されるように、実施例1Eにおいて、改質されたPES基材の改善された親水性が得られた。
【0132】
【表7】
【0133】
実施例1F
キャスト溶液を、実施例1Aにおいて記載された同じ手順によって調製した。実施例1Fにおける親水性添加剤として、1%のヒドロキシル化度を有するヒドロキシル化PES(住友化学製SUMIKAEXCEL 5003 PS)を用いた。詳細なキャスト溶液組成を表8に示す。親水性PES膜を、凝固浴温度を17℃で制御したことを除いて、実施例1Aにおいて記載されたキャストプロセスを使用することによって得た。図7は、調製されたPES基材の表面形態を示し、表9は、改質されたPES基材の表面形態、接触角、及びCO透過性を要約する。示されるように、実施例1F(14100GPU)における、改質されたPESのCO透過性は、比較例1B(9200GPU)における元の未改質PES基材のCO透過性よりも高く、これは、より開放的な形態に起因していた可能性がある。表9に列挙されるように、実施例1Fにおける低減した接触角は、改質され、改善されたPES基材の改善された親水性を示す。
【0134】
【表8】
【0135】
【表9】
【0136】
実施例1G
キャスト溶液を、実施例1Aにおいて記載された同じ手順によって調製した。実施例1Gにおいて、6%のスルホン化度を有するスルホン化ポリスルホンを、親水性添加剤として用いた。詳細なキャスト溶液組成を表10に示す。親水性PES膜を、凝固浴温度を17℃で制御したことを除いて、実施例1Aにおいて記載されたキャストプロセスを使用することによって得た。図8は、調製されたPES基材の表面形態を示し、表11は、改質されたPES基材の表面形態、接触角、及びCO透過性を要約する。示されるように、実施例1G(12800GPU)における、改質され、改善されたPESのCO透過性は、比較例1B(9200GPU)における元の未改質PES基材のCO透過性よりも高かった。この基材のガス透過抵抗の低減は、そのより開放的な形態のためであった。表11に示される、実施例1Gにおける70°のより低い接触角は、改質されたPES基材の改善された親水性を示す。
【0137】
【表10】
【0138】
【表11】
【0139】
実施例1H
アミン含有ポリマー選択的層を、上記の実施例1A~1Gの各基材上にコーティングして、複合膜を形成した。選択的層は、固定部位キャリアとして機能したポリビニルアミン(polyvinylamine、PVAm)と、移動キャリアとして機能したピペラジングリシネート(piperazine glycinate、PG)と、を含む。PVAm及びPGを、35/65の重量比で混合した。コーティング溶液(約1000cp)の粘度を使用して、基板上に選択的層を欠陥なくコーティングした。約175nmの選択的層厚さを、全ての複合膜に用いた。複合膜のガス輸送特性を、前述の手順によって測定した。
【0140】
表12は、実施例1A~1Gから製造された基材を使用することによって調製された複合膜の輸送結果を列挙する。示されるように、比較例1Bからの基材上にコーティングされた膜と比較して、実施例1A~1Gからの改質されたPES基材を用いることによる全ての複合膜は、親水性添加剤を組み込んだ後のガス透過抵抗の低下に起因して、改善された分離性能を実証した。例えば、実施例1Aにおける、改質されたPESのCO透過性は、比較例1Bにおける未改質PES基材と比較して、100%超改善した。したがって、実施例1A及び比較例1Bにおける基材上にコーティングされた複合膜のCO透過性は、それぞれ825及び785GPUであった。更に、実施例1A及び比較例1Bにおける基材上にコーティングされた複合膜のCO/N選択性値は、それぞれ153及び145GPUであった。改善されたCO透過性は、改質された基材のガス透過抵抗の低下に起因する可能性があり、改善されたCO/N選択性は、選択的層コーティングの改善された接着性のための向上した親水性によって説明され得る。
【0141】
【表12】
【0142】
実施例2-カーボンナノチューブを含む膜
概要
カーボンナノチューブを含む選択的透過性膜が、本明細書に記載される。膜は、CO/N分離、具体的には、減圧が膜の透過側面に引かれる用途において使用され得る。膜の選択的ポリマー層は、アミン含有ポリマーと、移動キャリアとしてアミン含有ポリマー内に分散されたアミノ酸塩と、を含んで、COの輸送を促進し得る。未処理及び/又は官能基化カーボンナノチューブは、選択的ポリマー層中に組み込むことができ、そこで、それは硬質無機充填剤として機能する。非官能基化カーボンナノチューブ、並びに側壁官能基化カーボンナノチューブ(例えば、ヒドロキシ官能基化カーボンナノチューブ、カルボキシ官能基化カーボンナノチューブ、又はアミン官能基化カーボンナノチューブ)を利用し得る。カーボンナノチューブは、選択的ポリマー層の剛性を高めることができ、これは、減圧下でのナノ多孔質支持層への選択的ポリマー層の浸透を低減することができる。これにより、選択的ポリマー層中にカーボンナノチューブを含まない同一の膜に対して、適用された減圧下での膜の機能(例えば、CO透過度、CO選択性、又はこれらの組み合わせ)を改善することができる。
【0143】
背景
大気中のCO濃度が過去10年間で400ppmを超えたため、地球温暖化に関する懸念が高まっている。化石燃料の燃焼は、大量のCO放出への主な要因のうちの1つであり、膜技術は、大規模な固定源(例えば、石炭火力発電所及び天然ガス火力発電所からの煙道ガス)からCOを捕捉し、続いて、圧縮及び地質学上の除去をする有望な手法として提案されている。複数の研究努力が、少なくとも95%のCO純度を有する発電所の煙道ガスから、90%COを捕捉し得る膜プロセスを設計するために供された。これらのプロセスの多くの一般的な要素は、減圧が膜の透過側面に引かれて膜透過駆動力を提供する減圧膜段階である。これらの状況では、膜は、供給側面から透過側面への圧力差を受ける。しかしながら、多くの場合、適用された減圧は、膜のCO透過性を有意に減少させる(例えば、50%以上)。
【0144】
以下に論じられるように、適用された減圧下での膜性能の低下は、選択的ポリマー層のナノ多孔質支持層への減圧駆動浸透の結果であると考えられる。本明細書では、カーボンナノチューブを膜の選択的ポリマー層に組み込むことによって、膜性能を向上させ得ることが実証される。
【0145】
材料及び方法
単層及び多層カーボンナノチューブの両方、並びに側壁官能基化(例えば、欠陥酸化、続いてヒドロキシル化(-OH)、カルボキシル化(-COOH)、及び/又はアミノ化(-NH))によって合成されるこれらのナノチューブの誘導体が、本明細書に記載される膜に組み込まれ得る。ナノチューブは、50nm~100μm(例えば、200nm~20μm)の長さの範囲であり得る。ナノチューブは、任意の好適な直径を有し得る。例えば、場合によっては、ナノチューブは、10nm~50nmの直径を有し得る。Arkema Inc.(Philadelphia,PA)から、商標名Graphistrength(登録商標)C100(長さ0.1~10μm、直径10~15nm)で市販されている多層カーボンナノチューブが、これらの原理実証研究のために使用された。
【0146】
同様に、様々なアミン含有ポリマーを使用して、選択的ポリマーマトリックスを形成し得る。好適なアミン含有ポリマーの例としては、ポリビニルアミン(PVAm)、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、アミン含有デンドリマー、これらのコポリマー、及びこれらのブレンドが挙げられる。場合によっては、アミン含有ポリマーは、300~3,000kDaの重量平均分子量を有し得る。特定の場合では、アミン含有ポリマーは、少なくとも1000kDaの重量平均分子量を有し得る。これらの原理実証研究のために、BASF(Vandalia,IL)から、商標名Polymin(登録商標)VXで入手可能な市販品から精製されたPVAmが使用された。PVAmは、2,000kDaの重量平均分子量を有した。
【0147】
特定の実施形態では、アミノ酸塩が、アミン含有ポリマー中でブレンドされて、CO輸送を更に促進し得る。任意のアミノ酸の塩が使用され得る。しかしながら、これらの原理実証研究のために、ピペラジングリシネートが使用された。
【0148】
カーボンナノチューブの官能基化及び分散
市販のカーボンナノチューブは、非常に絡み合った集合体として供給されているため、水に分散することは困難であった。したがって、超音波処理が使用されて、カーボンナノチューブを水中に効果的に分散させた。いくつかの手法が使用されて、カーボンナノチューブの水中での分散及び安定化を促進した。第1に、ドデシル硫酸ナトリウムを添加して、カーボンナノチューブの表面張力を低下させ、それによって凝集を防止した。第2に、強酸酸化によって、カーボンナノチューブの側壁上に欠陥が作成された。酸化剤によって作成された欠陥は、続いて、より安定なヒドロキシル基及びカルボン酸基に変換された。第3に、酸処理されたカーボンナノチューブ上のヒドロキシル基及びカルボン酸基を、アミン含有試薬に結合させた(それによって、カーボンナノチューブ上にペンダントアミノ基を導入した)。カーボンナノチューブの側壁上に荷電基を導入することによって、カーボンナノチューブの凝集を、電気斥力によって抑制することができる。
【0149】
膜の調製
分散されたカーボンナノチューブを、アミン含有ポリマーの溶液に添加して、特定のポリマー濃度及びカーボンナノチューブ充填を有する分散液にすることによって、膜合成用コーティング溶液を調製した。次いで、カーボンナノチューブを、別の超音波処理を行うことによって、ポリマー中に十分に分散させた。次に、特定量のアミノ酸塩を、分散液中に組み込んで、コーティング溶液を形成した。次いで、コーティング溶液を、「ナイフコーティング」技術によって、ポリエーテルスルホン(PES)ナノ多孔質基材上にコーティングした。水を蒸発させた後、次いで、膜をガス透過性測定のために使用した。
【0150】
輸送測定
ガス透過性測定を、以下に記載されるように、透過装置を使用して行った。膜を、温度制御されたオーブン(Bemco Inc.Simi Valley,Ca)内のステンレス鋼の矩形透過セルに、2.7cmの有効膜面積で装填した。供給側面上で、20%のCO及び80%のNを含有する92sccmの2成分ガス混合物を、57℃で、60体積%のラシヒリングのパッキング及び100mLの水で充填された500mLのステンレス鋼加湿器(Swagelok,Westerville,OH)を使用して加湿した。供給圧力を、周囲圧力付近の圧力調整器によって1.5psigで制御した。透過側面上で、湿潤アルゴン掃気又は減圧のいずれかを使用して、膜透過駆動力を提供した。掃気ガスを使用した場合、30sccmの乾燥アルゴンを、供給側面加湿器と同一の加湿器によって加湿した。アルゴン掃気の圧力を、周囲圧力付近の圧力調整器を使用して1.0psigで制御した。供給ガス及び掃気ガスは、向流パターンであった。非透過及び透過流の組成を、熱伝導率検出器(Agilent Technologies,Palo Alto,CA)を備えたクロマトグラフ(GC)を使用して分析した。SUPELCO Carboxen(登録商標)1004マイクロパックGCカラム(Sigma-Aldrich,St.Louis,MO)を、分析のために設置した。減圧を引いた場合、透過セルの透過側面を、真空ダイヤフラムポンプ(荏原製作所、東京、日本)に接続した。透過圧力を、減圧調整器(Alicat Scientific,Inc.,Tucson,AZ)によって0.2atmで制御した。透過流が真空ポンプに入る前に、冷却装置(Fisher Scientific,Hampton,NH)によって0℃に冷却された1Lステンレス鋼の水ノックアウト(Swagelok,Westerville,OH)を通過して、透過液から水分を除去した。真空ポンプの排出は、組成分析のために、30sccmの乾燥アルゴン掃気によってGCに送られた。
【0151】
実施例2A:カーボンナノチューブを用いずに調製された膜
実施例2Aでは、選択的ポリマーマトリックス(アミン含有ポリマー及びアミン含有ポリマー中に分散されたアミノ酸塩)を含む選択的ポリマー層を含む膜を、カーボンナノチューブを用いずに調製した。
【0152】
簡潔に言えば、10gのPVAm水溶液(1.5重量%、約200cpの粘度)を、水をNパージで蒸発させることによって4重量%まで濃縮した。1.013gのピペラジングリシネート水溶液(27.5重量%)を、濃縮されたPVAm溶液に添加して、均質なコーティング溶液を形成した。コーティング溶液は、約1700cpの粘度を付与した35/65(重量/重量)のPVAm対ピペラジングリシネート比を有した。GARDCO調節可能なマイクロメーターフィルムアプリケータ(Paul N.Gardner Company,Pompano Beach,FL)を使用して、38.7nmの平均表面細孔径を有するナノ多孔質PES基材上にコーティング溶液をキャストした。膜を、ガス透過試験の前に一晩乾燥させた。170nmの選択的層厚さを、フィルムアプリケータの間隙設定を調整することによって達成した。
【0153】
膜を、アルゴン掃気及び減圧の両方で試験した。アルゴン掃気を用いた試験では、供給圧力及び透過圧力は、それぞれ1.5及び1psigであり、約1の供給圧力対透過圧力の比に対応した。減圧を用いた試験では、供給圧力は1.5psigであり、一方では透過圧力は0.2atmであり、約5の供給圧力対透過圧力の比をもたらした。2つの異なる試験条件からのCO透過性及びCO/N選択性を、以下の表13に示す。表13に示されるように、膜は、アルゴン掃気によって試験された場合、150の高いCO/N選択性と共に、840GPU(1GPU=10-6cm(STP)・cm-2・s-1・cmHg-1)の望ましいCO透過性を示した。しかしながら、透過側面に減圧を引いた場合、透過性は473GPUに低減した。57℃で水蒸気で飽和した供給ガスを用いて、選択的層中のPVAmを高度に膨潤させた。透過側面上の吸引によって、選択的層が、ナノ多孔質基材の細孔内に引きこまれ、それによってCOの物質移動抵抗を増加させる。したがって、減圧下での劣化した性能は、選択的ポリマー層における機械的強度の欠如に結び付けられ得る。
【0154】
実施例2B:非官能基化カーボンナノチューブを使用して調製された膜
実施例2Bでは、非官能基化多層カーボンナノチューブを、選択的ポリマー層に組み込んで、その機械的強度を向上させた。
【0155】
簡潔に言えば、カーボンナノチューブを、ドデシル硫酸ナトリウムの助けを借りて水に分散させた。1gのドデシル硫酸ナトリウムを、穏やかに混合しながら、98gの水に添加して、泡立ちを回避した。次いで、1gのGraphistrength(登録商標)C100多層カーボンナノチューブを、溶液中に添加した。混合物を、良好な分散液が得られるまで、20kHzの超音波処理浴中で、60Wの電力で24時間超音波処理した。カーボンナノチューブ分散液を、使用前に6000rpmで3分間遠心分離した。カーボンナノチューブを組み込む前に、PVAm水溶液を濃縮した。20gの希釈されたPVAm溶液(1.5重量%)を、Nパージ下で水を蒸発させることによって、6重量%まで濃縮した。次いで、激しく混合しながら、1.750gのカーボンナノチューブ分散液(1重量%)を、濃縮されたPVAm溶液中に滴下した。次いで、混合物を超音波処理浴中で超音波処理して、カーボンナノチューブを再分散させた、これには48時間を要した。最後に、2.026gのピペラジングリシネート水溶液(27.5重量%)を、分散液中に添加して、均質なコーティング溶液を形成した。しかしながら、コーティング溶液の粘度は、約150cpであった。上記実施例2Aにおいて記載されているように、コーティング溶液を、ナノ多孔質PES基材上にキャストした。一晩乾燥させた後、選択的ポリマー層は、総固形分中2重量%のカーボンナノチューブを含有し、PVAm対ピペラジングリシネートの比は依然として35/65(重量/重量)であった。
【0156】
実施例2Bにおいて調製された膜も、それぞれアルゴン掃気及び減圧で試験した。輸送結果を、表13に報告する。選択的ポリマー層の改善された機械的強度(選択的ポリマーマトリックス中に分散されたカーボンナノチューブの結果)のため、減圧下のCO透過性は、617GPUに改善された。しかしながら、アルゴン掃気によって実証されたものよりも依然として205GPU低かった
【0157】
実施例2C:酸処理されたカーボンナノチューブを使用して調製された膜
実施例2Cでは、酸処理された多層カーボンナノチューブを、選択的ポリマー層に組み込んで、その機械的強度を向上させた。
【0158】
カーボンナノチューブの酸処理を、以下に記載されるように行った。最初に、90mLの硫酸(98%)を、氷/水浴中で冷却された500mLの丸底フラスコに添加した。激しく混合しながら、30mLの硝酸(2.6M)を硫酸に滴下した。0.8gの多層カーボンナノチューブを、酸混合物中に添加し、懸濁液を、超音波処理浴中で、30分間超音波処理して、ナノチューブ凝集体を予備破壊した。次いで、懸濁液を120℃の油浴に移し、還流下で90分間酸化反応を行った。懸濁液を室温に冷却し、300mLの水を徐々に添加して濃縮硫酸を希釈した。残留酸を、減圧濾過下で、酸処理されたカーボンナノチューブを水で洗浄することによって除去した。細孔径0.2~0.4μmを有する微多孔質テフロン(登録商標)膜を、濾過に使用した。濾過を、濾液pHが7に達するまで行った。得られた酸処理されたカーボンナノチューブを、実施例2Bにおいて記載されているように、超音波処理浴によって1重量%の濃度で水中に分散させた。
【0159】
酸処理されたカーボンナノチューブを組み込む前に、PVAm水溶液を濃縮した。20gの希釈されたPVAm溶液(1.5重量%)を、Nパージ下で水を蒸発させることによって、6重量%まで濃縮した。次いで、激しく混合しながら、1.750gの酸処理されたカーボンナノチューブ分散液(1重量%)を、濃縮されたPVAm溶液中に滴下した。分散液が滴下されると、酸処理されたカーボンナノチューブが沈殿し、ポリマー溶液はゲル化した。沈殿物が、強い混合によって微細片に破砕され、ポリマー溶液が再び流動化されるまで、次の滴下をしなかった。次いで、混合物を、超音波処理浴中で16時間超音波処理して、ナノチューブを再分散させた。最後に、2.026gのピペラジングリシネート水溶液(27.5重量%)を、分散液中に添加して、均質なコーティング溶液を形成した。コーティング溶液の粘度は、わずか約300cpであった。実施例2Aにおいて記載されているように、コーティング溶液を、ナノ多孔質PES基材上にキャストした。一晩乾燥させた後、選択的ポリマー層は、総固形分中2重量%の酸処理されたカーボンナノチューブを含有し、PVAm対ピペラジングリシネートの比は依然として35/65(重量/重量)であった。
【0160】
実施例2Cにおいて調製された膜も、それぞれアルゴン掃気及び減圧で試験した。輸送結果を、表13に報告する。選択的ポリマー層に酸処理されたカーボンナノチューブを組み込むことによって、CO透過性が更に改善され(751GPUまで)、これは、カーボンナノチューブを含有しない膜よりも278GPU高かった。
【0161】
実施例2D:アミン官能基化カーボンナノチューブを使用して調製された膜
実施例2Dでは、アミン官能基化多層カーボンナノチューブを、選択的ポリマー層に組み込んで、その機械的強度を向上させた。
【0162】
簡潔に言えば、実施例2Cにおいて記載されているように、調製された酸処理されたカーボンナノチューブを、アミノ基で更に官能基化した。アミノ官能基化を、以下のように行った。最初に、3-アミノプロピルトリエトキシシランを、5重量%の濃度でアセトンに溶解した。0.4gの3-アミノプロピルトリエトキシシラン溶液を、20gの酸処理されたカーボンナノチューブ分散液(1重量%)に添加した。次いで、激しく混合しながら、混合物を、80℃で30分間反応させた。得られた混合物を、実施例2Bにおいて記載されているように、超音波処理浴を使用して再分散させた。
【0163】
アミン官能基化カーボンナノチューブを組み込む前に、PVAm水溶液を濃縮した。20gの希釈されたPVAm溶液(1.5重量%)を、Nパージ下で水を蒸発させることによって、6重量%まで濃縮した。次いで、激しく混合しながら、2.188gのアミン官能基化カーボンナノチューブ分散液(0.8重量%)を、濃縮されたPVAm溶液中に滴下した。混合物を、超音波処理浴中で16時間超音波処理して、ナノチューブを再分散させた。最後に、2.026gのピペラジングリシネート水溶液(27.5重量%)を、分散液中に添加して、均質なコーティング溶液を形成した。コーティング溶液の粘度は、約500cpであった。実施例2Aにおいて記載されているように、コーティング溶液を、ナノ多孔質PES基材上にキャストした。PES基材の平均細孔径は、15.0nmであった。一晩乾燥させた後、選択的ポリマー層は、総固形分中2重量%のアミノ官能基化カーボンナノチューブを含有し、PVAm対ピペラジングリシネートの比は35/65(重量/重量)であった。
【0164】
実施例2Dにおいて調製された膜も、それぞれアルゴン掃気及び減圧で試験した。輸送結果を、表13に報告する。アミノ官能基化カーボンナノチューブの組み込みは、CO透過性を更に改善した(807GPUまで)。適用された減圧下での示された透過性は、アルゴン掃気のみを使用して観察された透過度に近いものであった。
【0165】
【表13】
【0166】
添付の「特許請求の範囲」の組成物及び方法は、本明細書に記載された特定の組成物及び方法により範囲を限定されるものではなく、「特許請求の範囲」のいくつかの態様の説明のとおりであることを意図し、機能的に同等な任意の組成物及び方法は、「特許請求の範囲」内に収まるものとする。本明細書に示されかつ記載されたものに加え、組成物及び方法の種々の変更は、添付の特許請求の範囲の範囲内に収まるものとする。なお、本明細書に開示された特定の代表的な材料及び方法工程のみが詳細に記載されるが、材料及び方法工程のその他の組み合わせも、特に列挙されずとも、添付の特許請求の範囲内に収まるものとする。したがって、工程、要素、成分、又は構成要素の組み合わせは、本明細書に明確に記述され得る。しかしながら、工程、要素、成分、及び構成要素のその他の組み合わせは、明確に規定されずとも含まれる。
【0167】
本明細書で使用する場合、用語「含む(comprising)」及びその変化形は、用語「含む(including)」及びその変化形と同義的に使用され、制限のない非限定的用語である。用語「含む(comprising)」及び「含む(including)」は、様々の実施形態を記載するために、本明細書において使用されているが、本発明のより具体的な実施形態を提示するために、用語「から本質的になる(consisting essentially of)」及び「からなる(consisting of)」を、「含む(comprising)」及び「含む(including)」の代わりに使用することができ、やはり開示もされている。明記されている場合の他に、明細書及び特許請求の範囲に使用されている幾何学的形状、寸法などを表す全ての数字は、最低限理解されるものであり、特許請求の範囲の範囲に対する均等論の適用を制限することは企図されず、有効数字の数及び通常の四捨五入の手法に照らし合わせて解釈されるものとする。
【0168】
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、開示される発明に属する当業者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書において引用される刊行物及びそれらが引用される資料は、参照により具体的に組み込まれている。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9