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特許7271509ブロー成形方法、ブロー成形用金型およびブロー成形装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】ブロー成形方法、ブロー成形用金型およびブロー成形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 49/30 20060101AFI20230501BHJP
   B29C 49/12 20060101ALI20230501BHJP
   B29C 49/06 20060101ALI20230501BHJP
   B29C 49/48 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
B29C49/30
B29C49/12
B29C49/06
B29C49/48
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020511123
(86)(22)【出願日】2019-03-29
(86)【国際出願番号】 JP2019014164
(87)【国際公開番号】W WO2019189819
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-03-02
(31)【優先権主張番号】P 2018067639
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227032
【氏名又は名称】日精エー・エス・ビー機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】土屋 要一
【審査官】清水 研吾
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04035461(US,A)
【文献】特開2004-123146(JP,A)
【文献】特開昭58-30969(JP,A)
【文献】特開昭57-20330(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型に収容された樹脂製の有底のプリフォームを延伸ブローすることにより中間成形品を成形するブロー工程と、
前記金型内で前記中間成形品を押圧して二重壁容器を成形する押圧工程と、
を含む、二重壁容器のブロー成形方法であって、
前記二重壁容器は、内壁と、外壁と、内底と、を有し、
前記中間成形品は、前記内壁に対応する内壁対応部と、前記外壁に対応する外壁対応部と、前記内底に対応する内底対応部と、を有し、
前記内壁対応部および前記内底対応部は、前記外壁対応部から膨出するように形成され、
前記押圧工程において、前記内壁対応部が前記外壁対応部の内側まで反転可能となるように、前記内壁対応部および前記内底対応部の保有熱が維持されている状態で、前記外壁対応部から膨出するように形成された前記内壁対応部が前記外壁対応部の内側まで反転するように、前記内底対応部を押圧することで前記二重壁容器を成形し、
前記内底対応部の押圧と、前記内底対応部の外形の規定は同一の部材によって行われる、二重壁容器のブロー成形方法。
【請求項2】
プリフォームから中間成形品を経由して樹脂製の二重壁容器を製造するブロー成形ユニットにおいて用いられるブロー成形用金型であって、
前記二重壁容器は、内壁と、外壁と、内底と、を有し、
前記中間成形品は、前記内壁に対応する内壁対応部と、前記外壁に対応する外壁対応部と、前記内底に対応する内底対応部と、を有し、
前記内壁対応部および前記内底対応部は、前記外壁対応部から膨出するように形成され、
前記金型は、
前記ブロー成形ユニットに設けられた延伸ロッドで前記プリフォームを延伸させつつブローすることで成形される前記中間成形品の前記内壁対応部および前記外壁対応部の外形を規定するキャビティ型と、
前記中間成形品の前記内底対応部の外形を規定する底部と、
を備え、
前記底部は、前記内壁対応部が前記外壁対応部の内側まで反転可能となるように、前記内壁対応部および前記内底対応部の保有熱が維持されている状態で、前記外壁対応部から膨出するように形成された前記内壁対応部が前記外壁対応部の内側まで反転するように、前記内底対応部を押圧可能に構成されている、ブロー成形用金型。
【請求項3】
前記底部は底型であり、前記底型が前記延伸ロッドの延伸方向に昇降可能に構成されている、請求項2に記載のブロー成形用金型。
【請求項4】
前記底部は、底型と、前記底型に設けられた昇降ロッドと、から構成され、前記昇降ロッドが前記延伸ロッドの延伸方向に昇降可能に構成されている、請求項3に記載のブロー成形用金型。
【請求項5】
樹脂製の有底のプリフォームを製造する射出成形ユニットと、
前記射出成形ユニットで製造されたプリフォームから中間成形品を経由して樹脂製の二重壁容器を製造するブロー成形ユニットと、を備えるブロー成形装置であって、
前記ブロー成形ユニットは、請求項2~請求項4のいずれか一項に記載の金型と、前記プリフォームを延伸させる延伸ロッドと、を備える、ブロー成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロー成形方法、ブロー成形用金型およびブロー成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1および特許文献2には、中間成形品を経由して二重壁容器を製造する方法と、それにより製造された二重壁容器が開示されている。特許文献3には、容器成形後に底型を上昇させて底部を内方に押返して弧状底部を成形する方法と、弧状底部を有する容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特開昭53-114870号公報
【文献】米国特許第9339979号明細書
【文献】日本国特開平2-128826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ホット・コーヒー等を収容する容器の中には、断熱作用(保冷保温作用)を備えたカップ式のものが存在する。この種の容器では、胴部や底部を内外二重壁の構成とし、内壁と外壁との間に適度な空間を形成させることで断熱作用を得るようにしている。
【0005】
通常、この種の容器は、別々に製造された内方容器と外方容器とを組み合わせて製造されるが、パーツ数が多いため、その取扱いや製造工程が煩雑になる。そこで近年、単一のパーツから二重壁容器の成形を可能にした方法が考案されている。しかしこの製造方法は、ブロー成形装置で内壁部および底部が膨出した中間成形品を作製した後、別の装置で内壁部と底部を押圧反転させて二重壁容器にしているため、工数が多い。このため、装置コストや製造時間の短縮化の面で改善の余地があった。
【0006】
本発明は、製造工程を簡略化し好適に二重壁容器を製造することができるブロー成形方法、ブロー成形用金型およびブロー成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る二重壁容器のブロー成形方法は、
金型に収容された樹脂製の有底のプリフォームを延伸ブローすることにより中間成形品を成形するブロー工程と、
前記金型内で前記中間成形品を押圧して二重壁容器を成形する押圧工程と、
を含む、二重壁容器のブロー成形方法であって、
前記二重壁容器は、内壁と、外壁と、内底と、を有し、
前記中間成形品は、前記内壁に対応する内壁対応部と、前記外壁に対応する外壁対応部と、前記内底に対応する内底対応部と、を有し、
前記内壁対応部および前記内底対応部は、前記外壁対応部から膨出するように形成され、
前記押圧工程において、前記内壁対応部が前記外壁対応部の内側まで反転可能となるように、前記内壁対応部および前記内底対応部の保有熱が維持されている状態で、前記外壁対応部から膨出するように形成された前記内壁対応部が前記外壁対応部の内側まで反転するように、前記内底対応部を押圧することで前記二重壁容器を成形する、二重壁容器のブロー成形方法である。
【0008】
当該ブロー成形方法によれば、中間成形品の製造と中間成形品の内壁対応部および内底対応部を押圧反転させる二重壁容器の製造とをブロー成形において実施することができる。これにより製造工程を簡略にすることができ、好適に二重壁容器を製造することができる。
【0009】
また、本発明に係るブロー成形用金型は、
プリフォームから中間成形品を経由して樹脂製の二重壁容器を製造するブロー成形ユニットにおいて用いられるブロー成形用金型であって、
前記二重壁容器は、内壁と、外壁と、内底と、を有し、
前記中間成形品は、前記内壁に対応する内壁対応部と、前記外壁に対応する外壁対応部と、前記内底に対応する内底対応部と、を有し、
前記内壁対応部および前記内底対応部は、前記外壁対応部から膨出するように形成され、
前記金型は、
前記ブロー成形ユニットに設けられた延伸ロッドで前記プリフォームを延伸させつつブローすることで成形される前記中間成形品の前記内壁対応部および前記外壁対応部の外形を規定するキャビティ型と、
前記中間成形品の前記内底対応部の外形を規定する底部と、
を備え、
前記底部は、前記内壁対応部が前記外壁対応部の内側まで反転可能となるように、前記内壁対応部および前記内底対応部の保有熱が維持されている状態で、前記外壁対応部から膨出するように形成された前記内壁対応部が前記外壁対応部の内側まで反転するように、前記内底対応部を押圧可能に構成されている。
【0010】
当該ブロー成形用金型によれば、中間成形品の製造と中間成形品の内壁対応部および内底対応部を押圧反転させる二重壁容器の製造とをブロー成形用金型内において実施することができる。これにより製造工程を簡略にすることができ、好適に二重壁容器を製造することができる。
【0011】
また、上記のブロー成形用金型は、前記底部は底型であり、前記底型が前記延伸ロッドの延伸方向に昇降可能に構成されていてもよい。
【0012】
また、上記のブロー成形用金型は、前記底部は、底型と、前記底型に設けられた昇降ロッドと、から構成され、前記昇降ロッドが前記延伸ロッドの延伸方向に昇降可能に構成されていてもよい。
【0013】
また、本発明に係るブロー成形装置は、
樹脂製の有底のプリフォームを製造する射出成形ユニットと、
前記射出成形ユニットで製造されたプリフォームから中間成形品を経由して樹脂製の二重壁容器を製造するブロー成形ユニットと、を備えるブロー成形装置であって、
前記ブロー成形ユニットは、上記の金型と、前記プリフォームを延伸させる延伸ロッドと、を備える。
【0014】
当該ブロー成形装置によれば、中間成形品の製造と中間成形品の内壁対応部および内底対応部を押圧反転させる二重壁容器の製造とをブロー成形ユニットにおいて実施することができる。これにより製造工程を簡略にすることができ、好適に二重壁容器を製造することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、製造工程を簡略化し好適に二重壁容器を製造することができるブロー成形方法、ブロー成形用金型およびブロー成形装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態に係るブロー成形装置を示す機能ブロック図である。
図2】プリフォームが収容された状態のブロー成形ユニットの一態様を示す断面模式図である。
図3】中間成形品が成形された状態のブロー成形ユニットの一態様を示す断面模式図である。
図4】二重壁容器が成形された状態のブロー成形ユニットの一態様を示す断面模式図である。
図5】中間成形品が成形された状態のブロー成形ユニットの別の態様を示す断面模式図である。
図6】二重壁容器が成形された状態のブロー成形ユニットの別の態様を示す断面模式図である。
図7】中間成形品が成形された状態のブロー成形ユニットのさらに別の態様を示す断面模式図である。
図8】4ステーションのブロー成形装置を示す機能ブロック図である。
図9】3ステーションのブロー成形装置を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態の一例について、図面を参照して説明する。尚、本図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。まず、図1を参照して、樹脂製の二重壁容器10を製造するためのブロー成形装置20について説明する。図1はブロー成形装置20の機能ブロック図である。
【0018】
図1に示すように、ブロー成形装置20は、プリフォーム1を製造するための射出成形ユニット22を備えている。射出成形ユニット22には、原材料である樹脂材料を供給する射出装置24が接続されている。なお、樹脂材料としてはポリプロピレンやポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート等の材料を用いることができる。また、ブロー成形装置20は、プリフォーム1をブローして二重壁容器10を製造するためのブロー成形ユニット200を備えている。
【0019】
射出成形ユニット22とブロー成形ユニット200とは、搬送手段28を中心として所定角度(本実施形態では180度)回転した位置に設けられている。搬送手段は回転板等で構成されており、回転板に取付けられているネック型2(図2を参照)によりネック部が支持された状態のプリフォーム1又は二重壁容器10が、回転板の回転に伴って搬送されるように構成されている。
【0020】
図1に示す射出成形ユニット22は、図示を省略する射出キャビティ型、射出コア型、ネック型等を備えている。これらの型が型締めされることで形成されるプリフォーム形状の空間内に、射出装置24から樹脂材料を流し込むことにより、有底のプリフォーム1が製造される。
【0021】
ブロー成形ユニット200は、射出成形ユニット22で製造されたプリフォーム1から中間成形品60を経由して二重壁容器10を製造するように構成されている。ここで、図2図4を参照して、二重壁容器10、中間成形品60およびブロー成形ユニット200について詳細に説明する。
【0022】
図2図4は、プリフォーム1から中間成形品60を経由して二重壁容器10を製造するブロー成形ユニット200の様子を示す断面模式図である。図2図4の各段階の詳細は後述する。
【0023】
ブロー成形ユニット200において成形される二重壁容器10は、内壁14と、外壁12と、内底16と、縁部18とを有する容器である(図4参照)。内壁14は内底16と連なるように構成されている。内壁14は縁部18を介して外壁12と連なるように構成されている。図4における左右の内壁14の間隔は下部から上部に向かうにつれて狭くなっており、内壁14は下部から上部にかけて傾斜している。また、図4における左右の外壁12の間隔も内壁14と同様に下部から上部に向かうにつれて狭くなっており、外壁12も下部から上部にかけて傾斜している。
【0024】
内底16は図4における左右の内壁14の上端を繋げるように形成されている。図4における左右の外壁12の間隔よりも左右の内壁14の間隔は小さく、内壁14は外壁12の内側に配置されている。内壁14および外壁12の間には空間が形成されている。図4における左右の外壁12の上端は繋がっておらず、二重壁容器10の外底は開放されている。内壁14および外壁12の間の空間に空気等の媒体が入り断熱効果が得られる。二重壁容器10は、コーヒーカップ等の用途に使用できる。
【0025】
プリフォーム1をブローすることにより成形される中間成形品60は、内壁対応部64と、外壁対応部62と、内底対応部66と、縁部対応部68を有している(図3参照)。内壁対応部64は、その後の工程で形成される二重壁容器10の内壁14に対応する部分である。また、外壁対応部62は二重壁容器10の外壁12に対応する部分であり、内底対応部66は二重壁容器10の内底16に対応する部分であり、縁部対応部68は二重壁容器10の縁部18に対応する部分である。内壁対応部64は内底対応部66と連なるように構成されている。内壁対応部64は縁部対応部68を介して外壁対応部62と連なるように構成されている。
【0026】
内壁対応部64および内底対応部66は外壁対応部62および縁部対応部68から図3における下方に膨出している。縁部対応部68の左右端部における内壁対応部64の間隔は、縁部対応部68の左右端部における外壁対応部62の間隔よりも小さい。図3における左右の内壁対応部64の間隔は上部から下部に向かうにつれて狭くなっており、内壁対応部64は上部から下部にかけて傾斜している。また、図3における左右の外壁対応部62の間隔は下部から上部に向かうにつれて狭くなっており、外壁対応部62は下部から上部にかけて傾斜している。図3における左右の外壁対応部62の上端は繋がっておらず、開放されている。
【0027】
ブロー成形ユニット200は、金型240とプリフォーム1を延伸させる延伸ロッド202とを備えている(図2図4参照)。延伸ロッド202は、図2図4における上下方向に移動可能に構成されている。金型240は、中間成形品60の内壁対応部64、外壁対応部62および縁部対応部68の外形を規定するキャビティ型242と、中間成形品60の内底対応部66の外形を規定する底部244と、を備えている。キャビティ型242は割型であり、プリフォーム1の収容と二重壁容器10の取り出しに合わせて開閉するように構成されている。
【0028】
底部244は、外壁対応部62および縁部対応部68から下方に膨出するように形成された内壁対応部64が外壁対応部62の内側まで反転するように、内底対応部66を押圧可能に構成されている。本実施形態において底部244は底型246であり、底型246は延伸ロッド202の延伸方向に昇降可能に構成されている。底型246は、図2および図3に示す状態から、図4の縁部対応部68よりも上の位置から外壁対応部62の上端部よりも下の位置まで内底対応部66を押圧可能に構成されている。底型246の昇降距離は、二重壁容器10の内底16の所望の深さに応じて適宜変更できる。
【0029】
続いて、図2図4を参照して二重壁容器10のブロー成形方法を説明する。本実施形態に係るブロー成形方法は、金型240に収容されたプリフォーム1を延伸ブローすることにより中間成形品60を成形するブロー工程(図2および図3参照)と、金型240内で中間成形品60を押圧して二重壁容器10を成形する押圧工程(図3及び図4参照)と、を含む。
【0030】
ブロー工程において、まず射出成形ユニット22で成形されたプリフォーム1を搬送手段28によって搬送して、ブロー成形ユニット200の金型240の開いた状態のキャビティ型242の間に配置する。そして、キャビティ型242を閉じて金型240内にプリフォーム1を収容する(図2)。
【0031】
次いで、プリフォーム1を延伸ロッド202で図2における下方向に延伸させつつ、ブロー媒体でブローして中間成形品60を成形する(図3)。ブロー媒体としては、空気等の気体を用いることができる。また、水などの液体を用いてもよく、気体と液体との混合媒体を用いてもよい。この時、内壁対応部64が外壁対応部62の内側まで反転可能となるように、内壁対応部64および内底対応部66の保有熱を維持する。
【0032】
この「保有熱」とは、中間成形品60の各部位が保有している熱のことを表す。例えば、射出成形ユニットで成形されたプリフォーム1が成形時に保有している熱は高く、その状態であれば成形品の賦形を容易に行える。一方で、保有熱が低くなると成形品の賦形が困難になる。「内壁対応部64が外壁対応部62の内側まで反転可能となるように、内壁対応部64および内底対応部66の保有熱を維持する」とは、中間成形品60の内壁対応部64を外壁対応部62の内側まで反転させる二重壁容器10の賦形を行える高さの熱を、後の押圧工程まで内壁対応部64および内底対応部66に保有させることを意味する。
【0033】
一般的にホットパリソン式のブロー成形方法では、プリフォームの肉厚部位は薄肉部位より保有熱が大きい(高温である)ため延伸され易い傾向があり、ブロー後のその対応部位は他の部位より薄くなり保有熱は著しく減少する。よって、例えばプリフォーム1の下部3(内壁対応部64および内底対応部66となる部分)の肉厚を上部(外壁対応部62となる部分)の肉厚よりも相対的に薄くすることで、中間成形品60の内壁対応部64および内底対応部66の保有熱を維持することができる。なお、コールドパリソン式のブロー成形方法では、前述の肉厚分布は逆にするのが望ましい。また、例えばブロー成形ユニット200にプリフォーム1を収容する直前にプリフォーム1の下部3を上部よりも相対的に低温にしても、中間成形品60の内壁対応部64および内底対応部66の保有熱を維持することができる。さらに、例えば金型240のキャビティ型242の内壁対応部64の外形を規定する部分と、底部244と、に温調機能を持たせることによっても、中間成形品60の内壁対応部64および内底対応部66の保有熱を維持することができる。
【0034】
ブロー工程において中間成形品60を成形してすぐに、内壁対応部64が外壁対応部62の内側まで反転可能となるように、内壁対応部64および内底対応部66の保有熱が維持されている状態で、金型240内で内底対応部66を底型246で押圧する。この際、延伸ロッド202も併せて上昇させる。ただし、押圧を始める前に延伸ロッド202を事前に上昇させていてもよい。底型246での押圧により外壁対応部62から膨出するように形成された内壁対応部64を外壁対応部62の内側まで反転させる(図4)。当該工程を経て二重壁容器10を成形する。成形後、底型246を下降させてキャビティ型242を開いて二重壁容器10を開放し、ネック型2を開いて二重壁容器10を得ることができる。なお、ブロー媒体に液体や気体と液体との混合媒体を用いる場合は、ネック型2を開く前に回収するようにしても良い。
【0035】
ところで、別々に製造された内方容器と外方容器とを組み合わせて製造された二重壁容器では、パーツ数が多いためその取扱いや製造工程が煩雑になる。また、単一のパーツからブロー成形機で内壁部および底部を膨出させた中間成形品を作成し、別の装置で内壁部と底部とを押圧反転させて二重壁容器を成形する方法もあるが、別々の装置を用いるため工数が多くなる。ブロー成形機から別の装置に中間成形品を移動させると、中間成形品の保有熱は失われ、別の装置で二重壁容器を成形する前に別途加温する必要が生じる。
【0036】
本実施形態に係るブロー成形方法では、ブロー成形に使用される金型240内で中間成形品60を成形するブロー工程および二重壁容器10を成形する押圧工程を実施する。そして、押圧工程において、内壁対応部64が外壁対応部62の内側まで反転可能となるように、ブロー工程後も内壁対応部64および内底対応部66の保有熱が維持されることで、中間成形品60から二重壁容器10を当該金型240内で成形することができる。これにより、中間成形品60の製造と中間成形品60の内壁対応部64および内底対応部66を押圧反転させる二重壁容器10の製造とをブロー成形において実施することができ、製造工程を簡略にすることができ、好適に二重壁容器10を製造することができる。
【0037】
また、本実施形態に係るブロー成形用の金型240は、中間成形品60の内壁対応部64および外壁対応部62の外形を規定するキャビティ型242と、中間成形品60の内底対応部66の外形を規定する底部244とを備えている。そして底部244は、内壁対応部64が外壁対応部62の内側まで反転可能となるように、内壁対応部64および内底対応部66の保有熱が維持されている状態において、内壁対応部64が外壁対応部62の内側まで反転するように、内底対応部66を押圧可能に構成されている。これにより、プリフォーム1を延伸させつつブローすることで中間成形品60を製造した後、中間成形品60の内底対応部66を底部244によって押圧することができる。そして、中間成形品60の内壁対応部64および内底対応部66を押圧反転させて二重壁容器10を製造することができる。中間成形品60の製造と二重壁容器10の製造とを金型240内において実施することができ、製造工程を簡略にすることができ、好適に二重壁容器10を製造することができる。
【0038】
本実施形態に係るブロー成形装置20は、中間成形品60の内壁対応部64および外壁対応部62の外形を規定するキャビティ型242と、中間成形品60の内底対応部66の外形を規定する底部244とを備える金型240を備えている。そして底部244は、内壁対応部64が外壁対応部62の内側まで反転可能となるように、内壁対応部64および内底対応部66の保有熱が維持されている状態において、内壁対応部64が外壁対応部62の内側まで反転するように、内底対応部66を押圧可能に構成されている。これにより、プリフォーム1を延伸させつつブローすることで中間成形品60を製造した後、中間成形品60の内底対応部66を底部244によって押圧することができる。そして、中間成形品60の内壁対応部64および内底対応部66を押圧反転させて二重壁容器10を製造することができる。中間成形品60の製造と二重壁容器10の製造とをブロー成形ユニット200において実施することができ、製造工程を簡略にすることができ、好適に二重壁容器10を製造することができる。
【0039】
上記の実施形態では底部244が底型246で構成されていた。一方で、図5に示すように底部1244は底型1246と、底型1246に設けられた昇降ロッド1248で構成されていてもよい。図5及び図6は上記の実施形態の別の態様を説明するための図である。図5に示す金型1240は、底部1244以外は上記の実施形態で説明した態様と同様であるため説明を省略する。昇降ロッド1248は延伸ロッド202の延伸方向に昇降可能に構成されている。昇降ロッド1248により中間成形品60の内底対応部66を押圧して二重壁容器10を成形することができる(図6)。これにより上記の実施形態における効果と同様の効果が得られる。
【0040】
また、さらに別の態様を図7に示す。図7は、中間成形品2060が成形された状態のブロー成形ユニットを示す断面模式図である。なお、図7中で上記の実施形態と同じ構成については同じ符号を付して説明を省略する。中間成形品2060では、外壁対応部2062と縁部対応部2068とは、内壁対応部2064より肉厚に形成されている。例えば、外壁対応部2060と縁部対応部2068との胴部平均肉厚を、内壁対応部2064と比べて1.2倍以上厚くさせると好ましい。これにより、内壁対応部2064を押圧反転させ易くできる。また、高圧エア(例えば3.5Mpa以下(1.6MPa~3.5MPa))の排気後、中間容器2060に低圧エア(例えば1.5Mpa以下(0.3MPa~1.5MPa))を導入して加圧させた状態で反転させても良い。これにより、押圧反転時の縁部対応部2068の不規則な変形が抑制できる。例えば、延伸ロッド202が縁部対応部2068より下がった時点で低圧エアを導入し、内壁対応部2064の中間位置より下がった時点で高圧エアを導入してもよい。これにより、中間成形体2060の肉厚分布や賦形性が向上できる。また、内壁対応部2062を押圧反転させ易くするため、縁部対応部2068の近傍に段差部2064aを設けてもよい(キャビティ型2242の対応部位は凹状部2242c)。これにより、押圧反転時の内壁対応部2062を段階的に反転させることができる。なお、これらの構成は図7に示される態様以外でも当然に採用でき、図3及び図4図5及び図6に示される態様においても適用することが可能である。
【0041】
また、図7に示す態様では、外壁対応部2062の強度(剛性度)を向上させるため、凹状リブ2060aが設けられている(キャビティ型2242の対応部位は凸状部2242a)。これにより、押圧反転時の外壁対応部2062の変形が防止できる。また、縁部対応部2068の強度を向上させるため、フランジ部2068bが設けられている。フランジ部2068bは第1フランジ部2068b1と第2フランジ部2068b2とを有する(キャビティ型2242の対応部位は凹状部2242b(2242b1、2242b2))。第2フランジ部2068a2で第1フランジ部2068a1を補強する。さらに、第2フランジ部2068a2の近傍に凹状リブ2060aを設けて強度を上げても良い。これにより、押圧反転時の縁部対応部2068の不規則な変形が防止できる。また、内壁対応部2064に対応するキャビティ型2242に複数のエアベント2242dが設けられている。これにより、内壁対応部2064を肉薄に成形し易くできる。
【0042】
また、上記の実施形態において説明したブロー成形装置20は、射出成形ユニット22およびブロー成形ユニット200を有する態様であったが、これ以外にもプリフォーム1の温度をブローする前に調整する温調部や製造された二重壁容器10を取り出すための取出し部などを有していてもよい。例えば図8に示すように、温調部25および取出部27をさらに有する4ステーションのブロー成形装置1020であってもよく、図9に示すように取出部27をさらに有する3ステーションのブロー成形装置2020であってもよい。
【0043】
また、上記の実施形態においては、外壁12が傾斜(テーパー)している二重壁容器10および外壁対応部62が傾斜(テーパー)している中間成形品60を説明したが、傾斜のない上下方向に真っ直ぐ伸びる外壁12を備える二重壁容器10および傾斜のない上下方向に真っ直ぐ伸びる外壁対応部62を備える中間成形品60としてもよい。
【0044】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0045】
なお、本願は、2018年3月30日付で出願された日本国特許出願(特願2018-067639)に基づいており、その全体が引用により援用される。また、ここに引用されるすべての参照は全体として取り込まれる。
【符号の説明】
【0046】
1:プリフォーム、2:ネック型、3:下部、10:二重壁容器、12:外壁、14:内壁、16:内底、18:縁部、20,1020,2020:ブロー成形装置、22:射出成形ユニット、24:射出装置、25:温調部、27:取出部、28:搬送手段、60,2060:中間成形品、62,2062:外壁対応部、64,2064:内壁対応部、66:内底対応部、68,2068:縁部対応部、200:ブロー成形ユニット、202:延伸ロッド、240,1240:金型、242:キャビティ型、244,1244:底部、246,1246:底型、1248:昇降ロッド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9