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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】ヘアブラシ
(51)【国際特許分類】
   A46B 9/02 20060101AFI20230501BHJP
   A46B 15/00 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
A46B9/02
A46B15/00 F
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020518133
(86)(22)【出願日】2019-01-22
(86)【国際出願番号】 JP2019001818
(87)【国際公開番号】W WO2019215961
(87)【国際公開日】2019-11-14
【審査請求日】2021-09-22
(31)【優先権主張番号】P 2018092599
(32)【優先日】2018-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】小柳 智裕
(72)【発明者】
【氏名】森川 敏英
【審査官】新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第205456822(CN,U)
【文献】登録実用新案第3210149(JP,U)
【文献】特表2005-502412(JP,A)
【文献】特表2017-522942(JP,A)
【文献】国際公開第2017/163032(WO,A1)
【文献】登録実用新案第3213090(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A46B 9/02
A46B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッド部を備えたヘアブラシであって、
前記ヘッド部の第1の表面にセット部が配置され、
前記セット部は、毛髪に熱を伝える伝熱体からなり、
前記セット部は、当該セット部の表面から伸長する複数のブリッスルを備え、
前記ブリッスルの断面が、長軸と短軸とを有する楕円形状であり、
前記短軸が、前記セット部の長手方向の軸線に対して一方向へ回転した角度を有するように配置され、
前記第1の表面における前記ブリッスルの断面の中心が、前記第1の表面において幾何学的に配置され、
前記幾何学的な配置が、前記第1の表面におけるスパイラルの一部に沿った配置であり、
前記スパイラルが、フィボナッチスパイラルであることを特徴とするヘアブラシ。
【請求項2】
前記第1の表面におけるスパイラルの一部が前記セット部の表面で複数のトラックを生成し、
前記楕円形状の長軸が、前記トラックに沿うように前記ブリッスルが配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載のヘアブラシ。
【請求項3】
ヘッド部を備えたヘアブラシであって、
前記ヘッド部の第1の表面にセット部が配置され、
前記セット部は、毛髪に熱を伝える伝熱体からなり、
前記セット部は、当該セット部の表面から伸長する複数のブリッスルを備え、
前記ブリッスルの断面が、長軸と短軸とを有する楕円形状であり、
前記短軸が、前記セット部の長手方向の軸線に対して一方向へ回転した角度を有するように配置され、
前記第1の表面における前記ブリッスルの断面の中心が、前記第1の表面において幾何学的に配置され、
前記幾何学的な配置が、前記第1の表面におけるスパイラルの一部に沿った配置であり、
前記第1の表面におけるスパイラルの一部が前記セット部の表面で複数のトラックを生成し、
前記楕円形状の長軸が、前記トラックに沿うように前記ブリッスルが配置されている
ことを特徴とするヘアブラシ。
【請求項4】
前記幾何学的な配置が、前記第1の表面における2つのスパイラルの交点の一部に沿った配置である、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のヘアブラシ。
【請求項5】
前記セット部の短手方向の両端部に配置されたブリッスルの高さが、当該短手方向の中央部に配置されたブリッスルの高さよりも低い
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のヘアブラシ。
【請求項6】
前記複数のブリッスルのうちの少なくとも2つが前記伝熱体からなる第1のブリッスルであり、
前記複数のブリッスルのうちの少なくとも1つが、前記伝熱体よりも熱伝導率の低い樹脂からなる第2のブリッスルである
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のヘアブラシ。
【請求項7】
前記第1のブリッスルの高さが、前記第2のブリッスルの高さより低いことを特徴とすることを特徴とする請求項6に記載のヘアブラシ。
【請求項8】
第1の断面積を有する第1のブリッスルに隣接して、前記第1の断面積とは異なる第2の断面積を有する第1のブリッスルが配置され、
前記第1の断面積が前記第2の断面積よりも大きく、
前記第2の断面積を有する第1のブリッスルが、前記セット部の短手方向の端部に沿って配置される
ことを特徴とする請求項6または7に記載のヘアブラシ。
【請求項9】
前記ヘッド部が長軸方向に高さを有する楕円柱体であり、
前記セット部が、前記楕円柱体の表面に配置される
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載のヘアブラシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘアブラシ、特に毛髪をセットする電気ヘアブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のヘアスタイリングにおいては、ヘアアイロン、ヘアブラシ、ブラシとヘアドライヤーの併用など、様々な方法が用いられていた。例えば、ヘアアイロンは、まず毛髪を梳き、次いでアイロンで毛髪を挟み込んでセットする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案第3206808号
【文献】特開2013-240434号
【文献】特開2007-229316号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような従来技術では、例えば、ヘアブラシは一度でヘアセットが可能であるが、うまく毛髪をキャッチできないと熱が毛髪に伝わりにくいという問題がある。また、その一方でブラシのピンを増やし過ぎると毛髪が絡まったり抜けなくなったりすることにより毛髪へのダメージが大きくなるという課題がある。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、毛髪をブリッスルに効率的にキャッチさせ、毛髪のセット力を高めることを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明に係るヘアブラシは、ヘッド部を備えたヘアブラシであって、前記ヘッド部の第1の表面にセット部が配置され、前記セット部は、毛髪に熱を伝える伝熱体からなり、前記セット部は、当該セット部の表面から伸長する複数のブリッスルを備え、前記ブリッスルの断面が、長軸と短軸とを有する楕円形状であり、前記短軸が、前記セット部の長手方向の軸線に対して一方向へ回転した角度を有するように配置され、前記第1の表面における前記ブリッスルの断面の中心が、前記第1の表面において幾何学的に配置され、前記幾何学的な配置が、前記第1の表面におけるスパイラルの一部に沿った配置である構成であり、前記スパイラルが、フィボナッチスパイラルである。
また、上記の課題を解決するために、本発明に係るヘアブラシは、ヘッド部を備えたヘアブラシであって、前記ヘッド部の第1の表面にセット部が配置され、前記セット部は、毛髪に熱を伝える伝熱体からなり、前記セット部は、当該セット部の表面から伸長する複数のブリッスルを備え、前記ブリッスルの断面が、長軸と短軸とを有する楕円形状であり、前記短軸が、前記セット部の長手方向の軸線に対して一方向へ回転した角度を有するように配置され、前記第1の表面における前記ブリッスルの断面の中心が、前記第1の表面において幾何学的に配置され、前記幾何学的な配置が、前記第1の表面におけるスパイラルの一部に沿った配置であり、前記第1の表面におけるスパイラルの一部が前記セット部の表面で複数のトラックを生成し、前記楕円形状の長軸が、前記トラックに沿うように前記ブリッスルが配置されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、上記の構成によれば、楕円の曲率の大きな領域を利用して毛髪を曲げることができるという効果を奏する。
【0008】
本発明の一態様によれば、毛髪はブリッスルに効率的にキャッチされ、毛髪のセット力を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】従来技術に係るヘアブラシのブリッスルの配列を示す概略図である。
図2】実施形態1に係るヘアブラシのブリッスルの幾何学的な配列を示す概略図である。
図3】実施形態2に係るヘアブラシのブリッスルの配列を模式的に示す概略図である。
図4】実施形態3に係るヘアブラシのブリッスルの配列を模式的に示す概略図である。
図5】実施形態4に係るセット部の模式的な斜視図である。
図6】実施形態5に係るセット部の模式的な側面図である。
図7】実施形態6に係るヘアブラシの正面図である。
図8】実施形態6に係るヘアブラシの背面図である。
図9】(a)は実施形態6に係るヘアブラシの側面図であり、(b)は実施形態6に係るヘアブラシの斜視図である。
図10】実施形態6に係るヘアブラシの6面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
従来のヘアブラシのブリッスルの配列態様100、110の概略図を図1に示す。図1では、ヘアブラシの外観は示していないが、ブラシ面(xy平面)を臨む方向(xy平面に垂直なz軸方向)から見たブリッスルの配列のみを模式的に示す。図1(a)に示すように、一般的なヘアブラシでは、グリッド状にブリッスル10が配列されている。この構造では、xy平面において一定方向101に毛髪のすり抜けが生じてしまう。別の従来技術では、図1(b)に示すように、互い違いにブリッスル11が配列されている(特許文献1)。
【0011】
特許文献1(実用新案第3206808号)では、ブラシとヘアアイロンを一緒にした構造が提案されている。特許文献1に係るブラシでは、一旦、毛髪を梳かす必要がなく便利であるが、xy平面においてブリッスル(ピン)の配列が、y軸方向に対して直列である(図3(a))。当該考案は、ストレート用とはいえ、このような配列構造にすると、xy平面において一定方向111には毛髪のすり抜けが生じてしまう。したがって、ブリッスルの本数を増やすか、各ブリッスルのサイズを大きく設定する必要がある。特許文献1では、ブリッスルとブリッスルとの間に隙間がほとんどなく(図3(a))、毛髪は強い摩擦によってダメージを受けることが考えられる。
【0012】
また、特許文献2では、人の頭部の曲率に合わせたブリッスルが提案されており、この形状に倣ってブラシを設計することも考えられる。しかし、頭部についてはフィット感があると思われるが、例えば毛髪が長く頭部から離れた部位では、むしろ使用感が悪くなる。特許文献3では獣毛によってグリップ力をアップしたドライヤーが提案されているが、均等に効率よく熱を伝えられることにはならない。
【0013】
毛髪のグリップ力を増大させ、効率良く短時間で毛髪に熱を伝えることが可能なセット用ヘアブラシの必要性が望まれている。
【0014】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
【0015】
本発明に係るヘアブラシは、頭髪を梳かすヘッド部を有するヘアブラシであって、当該ヘッド部は毛髪をセットするセット部を有する。好ましい実施形態では、ヘッド部の一方の面にセット部が配置される。当該セット部は、熱を髪に伝える伝熱体からなり、セット部の表面(xy平面)(ブラシ面)に対して垂直(z軸方向)に立ち上がる複数のピン形状(ブリッスル)を有する。
【0016】
図2は、本発明に係るヘアブラシのブリッスルの幾何学的な配列を示す概略図である。図2(a)~(c)は、ヘアブラシの外観は示していないが、ブラシ面を臨む方向(xy平面に垂直なz軸方向)から見たブリッスル20,21,22の幾何学的な配列のみを模式的に示す。
【0017】
本願発明の好ましい実施形態では、ピン形状のブリッスル20,21,22のxy平面における各々の中心(図3(b)(i)参照)は、一定の幾何学的形状に沿って配置される。好ましい幾何学的形状は、2次元曲線であり、より好ましくはスパイラル(渦巻)である。本明細書でスパイラルとは、旋回するにつれ中心から遠ざかる渦巻状の2次元曲線をいう。本願発明の好ましい実施形態では、xy平面のスパイラルの一部に沿ってブリッスルが設けられることを特徴とする。
【0018】
ここで「スパイラルの一部」とは、概念的に広がるxy平面のうちセット部を構成する領域に含まれるスパイラルの一部を意味する。セット部を構成するxy平面座標にはスパイラルの複数のトラックが生成されるようなピッチで構成されるスパイラルが好ましい。例えば、図2(a)では、セット部を構成するxy平面座標に、スパイラルのトラック202が少なくとも11本生成されているのが確認できる。図2(b)では、セット部を構成するxy平面座標に、スパイラルのトラック212が少なくとも11本生成されているのが確認できる。図2(c)では、セット部を構成するxy平面座標に、スパイラルのトラック222が少なくとも12本生成され、更に、スパイラルのトラック223が少なくとも16本生成されているのが確認できる。ブリッスルが、xy平面上において渦巻状のスパイラルの一部に沿って配置される態様を「スパイラル配列」、「スパイラル状に配置」とも称する。スパイラルの態様は、アルキメデススパイラルのような代数スパイラルに限定されず、対数螺旋などを採用することができる。好ましい実施形態では、フィボナッチスパイラルを採用することができる。スパイラルの初期半径、ピッチなどの種々のパラメータは任意に設定することが可能である。
【0019】
好ましい実施形態では、極座標でr=aθと記述できるアルキメデススパイラル(代数スパイラル)を採用することができる。例えば、図2(c)のトラック223では、パラメータaを0.017とし、θ=t×360としたとき、tが20~35のトラックが16本生成される。図2(c)のトラック222では、パラメータaを0.02とし、θ=-t×360としたとき、tが36~47のトラックが12本生成される。
【0020】
xy平面においてブリッスル20,21,22をスパイラル状に配置した本発明に係る構成では、金属ピン(ブリッスル)20,21,22が均等に配列される。これにより、毛髪が入ってくる場所または方向201,211に依存せず、すり抜けようとする毛髪に金属ピン(ブリッスル)20,21,22が確実に接触する(図2(a)、(b)参照)。その結果、毛髪は金属ピン(ブリッスル)20,21,22にキャッチされ、毛髪のセット力を高めることができる。
【0021】
図2(a)、(b)に示すように、スパイラルの方向はトラック202の方向でもよく、トラック212の方向でもよい。また図2(c)に示すように、2つの方向のスパイラルのトラック222,223の組み合わせによる交点にブリッスル22を配置するのも好ましい。ヘアブラシは髪全体に使用され、右利きの使用者と左利きの使用者が想定されるため、使用状況によって毛髪が進行する方向は特定できない。図2(c)に示す構成であれば、毛髪がどの方向から入ってきてもブリッスル22でキャッチされ、毛髪のセット力を向上させることができる。複数のピンは1つのスパイラルにおける第1トラックに沿って配置され、他の複数のピンは該スパイラルにおける第2トラック(第2トラックは第1トラックに隣接する)に沿って配置されてもよい。
【0022】
別の好ましい実施形態では、把持部とヘッド部からなるヘアブラシであって、ヘッド部は、ヘアブラシの長軸方向に高さを備える楕円柱状であってもよい。かかる楕円柱状のヘッド部の場合、セット部は楕円柱の表面に配置するように設けられるのが好ましい。
【0023】
図3に示すとおり、ブリッスルのxy平面における断面形状は、楕円形状であるのが好ましい(図3(b)(i)参照)。図3(b)(i)では、中心を通るx軸に平行な軸線が長軸となり、中心を通るy軸に平行な軸線が短軸となる。長軸と短軸が等しい場合(図3(b)(ii)参照)は、ブリッスルの断面形状が円形となる。本明細書では、円形状は楕円形状の一態様である。
【0024】
ヘアブラシによるブラッシングの際に、毛髪は出来る限り隙間を通ろうとする。例えば、特許文献1などでは、ある一定の方向(111とは反対方向)にヘアブラシが移動するとほとんどの毛髪がすり抜けてしまう場合がある。かかる状況では、ヘアブラシのブリッスル11が毛髪をキャッチすることができず、ブリッスル11を介して毛髪に熱を伝えることができないため毛髪を所望のスタイルにセットすることができない。毛髪のすり抜けを抑制するために特許文献1では、伝熱ピンの太さを太く設定したり、伝熱ピンの本数を増やす等の工夫をし、ブリッスル11の密度を増大させる対応が施されている。しかし、金属ブリッスルの密度をいたずらに増大させると、ブリッスル間のy軸方向における隙間が狭くなる。その結果、毛髪との摩擦が強くなり、毛髪にダメージを与え、毛髪がピン同士の間に入りにくくなったりする。
【0025】
これに対し、本願発明にかかるスパイラル状に配置されたブリッスル間のy軸方向における隙間は、特許文献1における隙間のように狭くならない。かかる構成により、従来のブリッスルの配列に比べ、毛髪へのダメージを軽減しつつ、確実にヘアセットをすることができる。
【0026】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0027】
図3は、実施形態2にかかるブリッスルの配列を模式的に示す。図3(a)は、セット部30(xy平面)上にブリッスル31、32が、2つのスパイラルのトラック222、223上に配置されているセット部の正面図を示す。図3(b)(i)は、ブリッスル31のxy平面における断面形状を示し、図3(b)(ii)は、ブリッスル32のxy平面における断面形状を示す。ブリッスル31、32は、ともに伝熱体からなる伝熱ピンであるのが好ましい。図3(c)は、図3(a)に示したセット部の斜視図を示す。
【0028】
好ましい実施形態では、セット部30は、xz平面においてz軸方向に凸状に湾曲している形状を有する。ブリッスル31,32は、z軸方向に垂直に立ち上がるように伸長するのが好ましい。他の好ましい実施形態では、xz平面において凸状に湾曲したセット部50の断面のうち、湾曲した表面における接線方向に対して垂直に立ち上がるように、ブリッスル31,32が配置されるのが好ましい。湾曲したセット部の表面におけるブリッスル31,32の付け根部分の断面積の中心が、スパイラルのトラック222、223上に配置されるのが好ましい。
【0029】
実施形態2に係るヘアブラシでは、セット部30は、ブリッスル31よりも幅が狭い(長軸が短い)ブリッスル32を有し、ブリッスル32も、スパイラルの一部に沿って設けられるのが好ましい。好ましい実施形態では、セット部30は、断面積の異なる2種類以上のブリッスルを備えるのが好ましい。好ましい実施形態では、ブリッスル32のxy平面における断面形状は円形であるのが好ましい。好ましい実施形態では、ブリッスル32のxy平面における各々の中心(図3(b)(ii)参照)が、スパイラルの一部に沿って設けられることを特徴とする(図3(a)参照)。
【0030】
図3(a)、(c)に示すとおり、ブリッスル32はセット部30の短手方向端部にy軸方向に沿って配置されるのが好ましい。かかる構成では、セット部30の短手方向端部で、ブリッスル間のy軸方向における間隔を狭くすることができる。毛髪は隙間を通ろうとする性質があるため、かかる構成により、毛髪がブリッスル間に侵入しやすい箇所を設けることができる。
【0031】
かかる構成により、スパイラル配列によってセット力を向上させつつ、毛髪の侵入しやすさを向上させ、効果のバランスを向上させることが可能となる。
【0032】
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0033】
図4は、実施形態3に係るブリッスルの配列を模式的に示す。図4(a)は、セット部40(xy平面)上にブリッスル41、32が、2つのスパイラルのトラック222、223上に配置されているセット部の正面図を示す。図4(b)は、ブリッスル41のxy平面における断面形状を示す。実施形態2と同様に、ブリッスル41、32は、ともに伝熱体からなる伝熱ピンであるのが好ましい。
【0034】
好ましい実施形態では、セット部40は、xz平面においてz軸方向に凸状に湾曲している形状を有する。ブリッスル41,32,42は、z軸方向に垂直に立ち上がるように伸長するのが好ましい。他の好ましい実施形態では、xz平面において凸状に湾曲したセット部40の断面のうち、湾曲した表面における接線方向に対して垂直に立ち上がるように、ブリッスル41,32,42が配置されるのが好ましい。湾曲したセット部の表面におけるブリッスル41,32,42の付け根部分の断面積の中心が、スパイラルのトラック222、223上に配置されるのが好ましい。
【0035】
実施形態3にかかるブリッスル41の断面における短軸は、セット部40の長手方向の軸線(y軸)に対して一方向へ回転した角度を有するように配置されるのが好ましい。具体的には、図4(b)に示すブリッスル41の断面における短軸は、セット部40の長手方向の軸線(y軸)と平行ではなく、y軸に対して所定の角度で傾斜しているのが好ましい。言い換えれば、ブリッスル41の断面における短軸は、y軸に対して一方向へ所定の角度で回転して配置されるのが好ましい。更に好ましい実施形態では、図4(a)に示すように、ブリッスル41の断面における長軸が、トラック223に沿うようにブリッスル41が配置されているのが確認できる。他の好ましい実施形態では、ブリッスル41の断面における長軸をトラック222に沿うようにブリッスル41を配置することも可能である。
【0036】
〔実施形態4〕
図5は、実施形態4に係るブリッスルの配列を模式的に示す。図5(a)は、セット部50(xy平面)上にブリッスル31,42および孔51がスパイラルのトラック222、223上に配置されているセット部50の斜視図を示す。更に、図5(a)は、セット部50の斜視図と一緒に、ブリッスル52を連結したベース部53の斜視図を示す。図5(b)は、セット部50の裏面から孔51を介して、ベース部53に連結されたブリッスル52を装着させた斜視図を示す。孔51にブリッスル52がxy平面に対して垂直(z軸方向)に立ち上がるように配置されている状態を示す斜視図である。ブリッスル52は、伝熱体よりも熱伝導率の低い樹脂からなるのが好ましい。
【0037】
好ましい実施形態では、セット部50は、xz平面においてz軸方向に凸状に湾曲している形状を有する。ブリッスル31,42,52は、z軸方向に垂直に立ち上がるように伸長するのが好ましい。他の好ましい実施形態では、xz平面において凸状に湾曲したセット部50の断面のうち、湾曲した表面における接線方向に対して垂直に立ち上がるように、ブリッスル31,42,52が配置されるのが好ましい。湾曲したセット部の表面におけるブリッスル31,42,52の付け根部分の断面積の中心が、スパイラルのトラック上に配置されるのが好ましい。
【0038】
実施形態4におけるブリッスル52は、ブリッスル42と同様にxy平面における断面形状は円形であるのが好ましい。
【0039】
樹脂ピン(ブリッスル52)は、隙間に入り込んだ毛髪が抜けだすのを防ぐことができる。例えばブリッスル52の先端を球状にすることで引っ掛かり部となり、その効果がより高まる。樹脂ピン(ブリッスル52)を、スパイラルの配列の一部にすることで、効果をより高めることができる。また、樹脂であれば加工が容易であり、表面粗さなどを利用してグリップ力の調整が可能である。樹脂ピン(ブリッスル52)は1本でもよいし、それぞれが毛束であっても良い。
【0040】
〔実施形態5〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0041】
図6は、実施形態5のセット部40の側面図(xz平面)の概略図である。セット部40の短手方向(x軸方向)におけるセット部40の中央部付近のブリッスル41(伝熱ピン)の高さは、端部付近のブリッスル41の高さより高く設けられるのが好ましい。言い換えれば、セット部40の短手方向における両端のブリッスル41の高さは、中央部のブリッスル41の高さよりも低いことが好ましい。ここでブリッスルの高さとは、ピン自体の長さではなく、z軸方向の値のことを言う。隣接するブリッスル41間に毛髪が侵入する場合、中央部の高いブリッスル41が毛髪に先に接触することにより、隣接するブリッスル41間に毛髪が侵入しやすくなる。
【0042】
セット部40は平らな面に限定されず、図6に示すようにxz平面において凸状であってもよい。別の好ましい実施形態では、xz平面において凹状であってもよい。
【0043】
〔実施形態6〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0044】
図4(a)に示すとおり、ブリッスル42はセット部40の短手方向端部にy軸方向に沿って配置されるのが好ましい。かかる構成では、セット部40の短手方向端部で、ブリッスル間のy軸方向における間隔を狭くすることができる。毛髪は隙間を通ろうとする性質があるため、かかる構成により、毛髪がブリッスル間に侵入しやすい箇所を設けることができる。
【0045】
かかる構成により、スパイラル配列によってセット力を向上させつつ、毛髪の侵入しやすさを向上させ、効果のバランスを向上させることが可能となる。
【0046】
またブリッスル42は、樹脂ピンとするのが好ましい。上述の実施形態4と同様に、ブリッスル42(樹脂ピン)は、伝熱ピンよりも熱伝導率の低い樹脂からなるのが好ましい。
【0047】
更に好ましい実施形態では、ブリッスル42は、ブリッスル41、32よりも高さが高いのが好ましい。伝熱ピン(ブリッスル41)は、耐熱過剰になる場合が想定され、伝熱ピンが直接頭皮に接触すると使用者が熱いと感じる場合がある。図9に示すように、樹脂ピン(ブリッスル22)が伝熱ピン(ブリッスル41)より突出していれば、樹脂ピン(ブリッスル42)が伝熱ピン(ブリッスル41)よりも先に頭皮に接触する。このため、直接伝熱ピン(ブリッスル41)が頭皮に接触するのを防ぐことができる。
【0048】
樹脂ピンの材質は、成形性と耐熱性が良好であるのが好ましい。好ましい実施形態では、ブリッスル42の球状部のみを伝熱ピン(ブリッスル41)の高さより突出させるのが好ましい。かかる態様では、毛髪が抜けにくく、かつ使用者に伝熱部が触れることを抑制することが可能となる。
【0049】
〔実施形態7〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0050】
伝熱体からなるセット部をヘアブラシ本体に装着した具体例を以下に説明する。
【0051】
本発明に係るヒータ内蔵のヘアブラシ(ヘアブラシアイロンとも称する)の一例の外観模式図を図7図10に示す。
【0052】
図7にヘアブラシの正面図700を示す(xy平面)。図8は、ヘアブラシの背面図800を示す。図9(a)は、ヘアブラシの側面図900を示す(yz平面)。図9(b)は、ヘアブラシの斜視図910を示す。図10は、別の好ましい実施形態に係るヘアブラシの六面図を示す。図10(a)~(f)はそれぞれ、正面図、背面図、平面図、底面図、左側面図、右側面図を示す。
【0053】
実施形態7にかかるヘアブラシは、使用者が手で握る部分としての把持部72と、把持部72の第1の端部に連結されたヘッド部70と、ヘッド部70内に配置された伝熱体とを備える。好ましい実施形態では、使用時には把持部72とヘッド部70とが略直線状の外観を呈する。他の好ましい実施形態では、把持部72とヘッド部70とが、所定の角度で接続された外観を呈してもよい。ヘッド部70は、熱を毛髪に伝熱する伝熱体からなるセット部40を有し、セット部40は、複数の立ち上がるピン形状(ブリッスル41、32、42)を有する。また好ましい実施形態では、ヘッド部70は整流板(ガイドリブ)71を備える。図8、9に示すように、複数の整流板71が、楕円柱状のヘッド部70のセット部40以外の面に渡って配置されるのが好ましい。整流板71により毛髪の進行方向を整えることができるのが好ましい。伝熱体は、内側にヒータ(図示せず)が装着されているのが好ましい。伝熱体の材料は、熱伝導性が良好であればよく、例えば、ステンレス、アルミニウム合金等の金属であるのが好ましい。他の金属でも伝熱体を構成することができ、上記金属材料に限定されるものではない。
【0054】
把持部72の第1の端部と対向する他の端部に、電源コード91が接続される。ヘッド部70の内部には、ヒータ(図示せず)があるのが好ましい。別の実施形態では、把持部72内にヒータを包含する構成であってもよい。好ましい実施形態では、伝熱体には、内側にヒータが装着されているのが好ましい。伝熱体の材質は、熱伝導性が良好であれば良い。ブラシ面の形状は、xy平面において平面であるのが好ましい。他の好ましい実施形態では、xz平面において凸状や凹状であってもよい。
【0055】
好ましい実施形態では、把持部72にスイッチ110および操作部120を備えるのが好ましい。電源コード91の先端に備えられたプラグ(図示せず)をコンセントに挿入した上で、把持部72に設けられたスイッチ110を押すことができる。操作部120で所望の温度に設定することができる。ヒータ(図示せず)の温度は、一例として、100、120、140、160、180、及び、200℃から選択することができるように操作部が構成されるのが好ましい。これらの温度に限定することなく、別の好ましい実施形態では、他の設定温度の組み合わせを選択することができるのが好ましい。
【0056】
ヒータが所望の温度に達した後、手で把持部72を持ち、ヘッド部70を毛髪にあてることができる。伝熱ピンと毛髪とが接触し、毛髪に熱が伝えられる。毛髪が自然冷却すればヘアセットが完了する。
【0057】
頭髪が濡れた状態で本発明のヘアブラシアイロンを使用すると、熱せられた伝熱ピンで毛髪を乾かしながら、セットすることも可能である。操作終了後は、スイッチを切り、通電を切断すると、ヒータの発熱は止まり、放置するとヘッド部70が常温まで放熱される。
【0058】
〔変形例〕
毛髪にやさしいとされている獣毛ブラシを適宜付加したり、樹脂ピンを追加または間引く構成は、適宜設計変更可能な範囲であり、本発明の範囲に影響を及ぼすものではない。また、送風装置を付加することによりドライヤーの機能を持たせる構成なども適宜設計変更可能な範囲であり、本発明の範囲に影響を及ぼすものではない。
【0059】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係るヘアブラシは、ヘッド部(70)を備えたヘアブラシであって、毛髪に熱を伝える伝熱体からなるセット部(30、40、50)が、前記ヘッド部(70)の第1の表面に配置され、前記セット部(30、40、50)は、当該セット部(30、40、50)の表面から伸長する複数のブリッスル(20、21、22、31、32、41、42、52)を備え、前記ブリッスル(20、21、22、31、32、41、42、52)の高さ方向に垂直な断面が、長軸と短軸とを有する楕円形状であり、前記短軸が、前記セット部(30、40、50)の長手方向の軸線に対して一方向へ回転した角度を有するように配置され、前記第1の表面における前記ブリッスルの断面の中心が、前記第1の表面において幾何学的に配置され、前記幾何学的な配置が、前記第1の表面におけるスパイラルの一部に沿った配置である構成である。
【0060】
上記の構成によれば、楕円の曲率の大きな領域を利用して毛髪を曲げることができる。
【0061】
本発明の態様2に係るヘアブラシは、上記の態様1において、前記スパイラルが、フィボナッチスパイラルである構成としてもよい。
【0062】
上記の構成によれば、より効果的に毛髪の引張力を増大させることができる。
【0063】
本発明の態様3に係るヘアブラシは、上記の態様1または2において、前記第1の表面におけるスパイラルの一部が前記セット部(30、40、50)の表面で複数のトラック(202、212、222、223)を生成し、前記楕円形状の長軸が、前記トラックに沿うように、前記ブリッスルが配置されている構成としてもよい。
【0064】
上記の構成によれば、より効果的に毛髪の引張力を増大させることができる。
【0065】
本発明の態様4に係るヘアブラシは、上記の態様1から3のいずれかにおいて、前記幾何学的な配置が、前記第1の表面における2つのスパイラルの交点の一部に沿った配置である、構成としてもよい。
【0066】
上記の構成によれば、いずれの方向から侵入する毛髪に対してもブリッスルが効率的に毛髪をキャッチし、毛髪のセット力を高めることができる。
【0067】
本発明の態様5に係るヘアブラシは、上記の態様1から4のいずれかにおいて、前記セット部(30、40、50)の短手方向の両端部に配置されたブリッスルの高さが、当該短手方向の中央部に配置されたブリッスルの高さよりも低い構成としてもよい。
【0068】
上記の構成によれば、ブリッスル間に毛髪が侵入する際に、中央部に配置されたブリッスルが先に毛髪に接触することにより、ブリッスル間に毛髪が入りやすくなる効果を高めることができる。
【0069】
本発明の態様6に係るヘアブラシは、上記の態様1から5のいずれかにおいて、前記複数のブリッスル(20、21、22、31、32、41、42、52)のうちの少なくとも2つが前記伝熱体からなる第1のブリッスル(伝熱ピン31、32、41、42)であり、前記複数のブリッスルのうちの少なくとも1つが、前記伝熱体よりも熱伝導率の低い樹脂からなる第2のブリッスル(樹脂ピン52)である構成としてもよい。
【0070】
上記の構成によれば、ブリッスル間の隙間に入り込んだ毛髪が抜けだすのを防ぐことができる。
【0071】
本発明の態様7に係るヘアブラシは、上記の態様6において、前記第1のブリッスル(伝熱ピン31、32、41、42)の高さが、前記第2のブリッスル(樹脂ピン52)の高さより低い構成としてもよい。
【0072】
上記の構成によれば、伝熱体からなる第1のブリッスルが直接頭皮に触れるのを防ぐことができる。
【0073】
本発明の態様8に係るヘアブラシは、上記の態様6または7において、第1の断面積を有する第1のブリッスル(伝熱ピン31、41)に隣接して、前記第1の断面積とは異なる第2の断面積を有する第1のブリッスル(伝熱ピン32、42)が配置され、前記第1の断面積が前記第2の断面積よりも大きく、前記第2の断面積を有する第1のブリッスル(伝熱ピン32、42)が、前記セット部(30、40、50)の短手方向の端部に沿って配置される構成としてもよい。
【0074】
上記の構成によれば、スパイラル配列によってセット力を向上させつつ、毛髪の侵入しやすさを向上させ、効果のバランスを向上させることが可能となる。
【0075】
本発明の態様9に係るヘアブラシは、上記の態様1から8のいずれかにおいて、前記ヘッド部(70)が長軸方向に高さを有する楕円柱体であり、前記セット部(30、40、50)が、前記楕円柱体の表面に配置される構成としてもよい。
【0076】
上記の構成によれば、効率的に毛髪に熱を伝えることができ、セット力を高めることができる。
【0077】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0078】
10、11、20、21、22、31、32、41、42、52 ブリッスル
30、40、50 セット部
53 ベース部
70 ヘッド部
71 整流板
72 把持部
91 電源コード
101、111、201、211 毛髪進行方向
202、212、222、223 トラック
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10