(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
F24C 7/02 20060101AFI20230501BHJP
【FI】
F24C7/02 541
F24C7/02 541P
F24C7/02 521K
F24C7/02 521U
(21)【出願番号】P 2020523516
(86)(22)【出願日】2019-03-01
(86)【国際出願番号】 JP2019007971
(87)【国際公開番号】W WO2019235003
(87)【国際公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-09-22
(31)【優先権主張番号】P 2018109724
(32)【優先日】2018-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】浅海 伸二
【審査官】西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-075470(JP,A)
【文献】国際公開第2015/129449(WO,A1)
【文献】特開2017-026233(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱庫の開口部を開閉する開閉扉を備えた加熱調理器において、
上記開閉扉の前面に操作部が設けられると共に、当該開閉扉内に上記操作部から操作を受付けて各種処理を行う回路基板が設けられ、
上記回路基板の背面の少なくとも1部に重なるようにダクトが設けら
れ、
上記回路基板の収容部は、外部からの冷却風が流れる第1送風路となる空間を有し、上記ダクトは、第1送風路とは異なる、外部からの冷却風が流れる第2送風路となる空間を有し、
上記第2送風路は、上記第1送風路とは別に設けられた排出口を有し、
上記ダクトは金属板により形成されていることを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
上記ダクト内に冷却風を送り込むための送風部がさらに設けられていることを特徴とする請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
上記ダクトの排出口は、上記加熱調理器の外部に冷却風を排出する排出口であることを特徴とする請求項2に記載の加熱調理器。
【請求項4】
上記
第2送風路は、上記排出口の手前で狭められていることを特徴とする請求項3に記載の加熱調理器。
【請求項5】
上記開閉扉が上記加熱庫の開口部を閉じた状態で、少なくとも上記回路基板の一部が上記開口部とオーバーラップするように、当該回路基板が配置されていることを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱庫の扉内に回路基板が設けられた加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、操作部および操作部の操作を受けて各種処理を行う回路基板を加熱庫の開閉扉であるドア内に設けた加熱調理器が提案されている。
【0003】
一般に回路基板は熱に弱いため、特許文献1に開示された加熱調理器では、ドアに設けられた回路基板を冷却する冷却手段をドアに設けることにより、ドアに設けられた回路基板を一定温度以下に維持するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本国公開特許公報「特開2008-224081号公報」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ドア内に設けられた回路基板は、加熱調理中、加熱庫からの輻射熱により加熱される。このため、特許文献1に開示された加熱調理器のように、ドアの表面に設けられた操作ボタンと、ドア内における回路基板との間に生じる隙間に冷却風を循環させて当該回路基板を冷却させる構成では、回路基板収容部に冷却風が循環されるものの、回路基板収容部の操作ボタンと反対側の面(加熱調理中に加熱庫からの輻射熱を受ける面)には冷却風が当たらない。
【0006】
従って、特許文献1に開示された加熱調理器では、ドア内に設けられた回路基板の加熱庫側の面に対する輻射熱の遮蔽が十分でなく、当該回路基板の冷却が十分に行えていない為、回路部品の寿命や、マイコンの誤動作などの問題が生じる恐れがある。
【0007】
本発明の一態様は、加熱庫を開閉するドア内に設けられた回路基板の冷却を十分に行える加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る加熱調理器は、加熱庫の開口部を開閉する開閉扉を備えた加熱調理器において、上記開閉扉の前面に操作部が設けられると共に、当該開閉扉内に上記操作部から操作を受付けて各種処理を行う回路基板が設けられ、上記回路基板収容部の背面の少なくとも1部に重なるようにダクトが設けられ、上記回路基板の収容部は、外部からの冷却風が流れる第1送風路となる空間を有し、上記ダクトは、第1送風路とは異なる、外部からの冷却風が流れる第2送風路となる空間を有し、上記第2送風路は、上記第1送風路とは別に設けられた排出口を有し、上記ダクトは金属板により形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、加熱庫を開閉する開閉扉内に設けられた回路基板の冷却を十分に行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態1に係る加熱調理器の正面図である。
【
図2】
図1に示す加熱調理器のドアの斜視図である。
【
図4】(a)は
図2に示すドアのAA線矢視断面図であり、(b)は(a)の簡略図である。
【
図5】
図4に示す断面図のBB線矢視断面図である。
【
図6】本発明の実施形態2に係る加熱調理器のドアの概略図である。
【
図7】本発明の実施形態3に係る加熱調理器の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
【0012】
<加熱調理器の概略説明>
図1は、本実施形態の加熱調理器1の正面図であり、(a)はドア(開閉扉)3を閉めた状態を、(b)はドア3を開けた状態を示す。加熱調理器1は、マイクロ波を発生するマグネトロン(図示しない)を備え、加熱調理として電子レンジ調理を行う加熱調理器である。加熱調理器1は、電子レンジ調理機能に加えてオーブン調理機能等を有していてもよい。
【0013】
図1に示すように、加熱調理器1は、直方体形状のケーシング2と、ドア3とを備え、ケーシング2で囲まれる空間が、被加熱物を収容するための加熱庫2aとなっている。なお、マグネトロンはケーシング2内部(例えば、加熱庫2aを挟んでドア3と反対側)に備えられている。
【0014】
ドア3は、加熱庫2aの開口部2bを開閉するための開閉扉であり、加熱庫2aと対向する位置に配置される窓(窓部)3aと、窓3aを囲むフレーム(枠部)3bとを備える。窓3aには加熱庫2aを覗けるように、耐熱ガラスあるいは耐熱性の透明樹脂が嵌め込まれている。フレーム3bは、非金属材料、例えば、樹脂から形成されている。
【0015】
ドア3は、加熱庫2aを開閉可能に設けられており、下端の辺を略中心に回動し、上側にはドア3を開閉するためのユーザ補助としてハンドル4が取り付けられている。本実施形態では、ドア3の開閉は、ドア3の下端側の辺を略中心に回動して行われる構成であるが、これに限定されず、例えば、ドア3の左端または右端の辺を中心に回動してドア3が開閉する構成であってもよい。ドア3の詳細については、後述する。
【0016】
また、ドア3の加熱庫2aと対向する面に、加熱庫2aの入り口の開口部2bを覆うサイズのシールド材料(図示せず)が形成されている。
【0017】
加熱調理器1は、さらに、当該加熱調理器1に関する各種情報等を表示し、当該加熱調理器1への操作を受け付けるための表示操作部5がドア3の前面に設けられている。表示操作部5には、ダイヤル6やボタン7および操作情報等の各種情報を表示する表示パネル8が設けられている。なお、表示操作部5は、ダイヤル6やボタン7等の物理的な部材を使用しない、例えば、タッチパネルとして構成されていてもよい。
【0018】
次に、ドア3の詳細な構造について説明する。
【0019】
<ドア3の概要>
図2は、ドア3の斜視図を示し、
図3は、ドア3の分解斜視図を示す。
【0020】
ドア3は、
図2に示すように、窓3aの下側に表示操作部5を設けるためのパネル部31aを備えている。詳細には、ドア3は、パネル部31aの他、
図3に示すように、表示操作部5のダイヤル6を構成するスタートボタン31bおよびエンコーダボタン31c、パネル格子31d、ボタン支持軸31e、選択ボタン(B)31f、キャンセルボタン31g、選択ボタン(A)31h、送風ファン31i、回路基板31j、外ドアガラス31k、送風路板31l、ガラスストッパ31m、ドア支持部材31n、ドアサブフレーム31o、ドアパッキング31p、ドアカバー31qからなっている。
【0021】
上記構成のドア3は、内部に回路基板31jが設けられた構造となっている。この回路基板31jは、表示操作部5からの操作を受付けて加熱調理器1における調理等の各種処理を行うための操作基板である。一般に、回路基板31jは熱に弱い。通常、加熱調理器1における調理中はメニューにより加熱庫2a内の温度が300℃くらいになる。このため、本実施形態に係る加熱調理器1は、回路基板31jを冷却するための冷却機構を備えている。
【0022】
<回路基板31jの冷却機構>
図4の(a)は、
図2のAA線矢視断面図であり、(b)は、(a)を簡略化した図である。
図5は、
図4のBB線矢視断面図である。
【0023】
回路基板31jの背面(表示操作部5が設けられている面と反対側の面)に、送風路板31lによって形成されたダクト40が形成されている。送風路板31lは、断面略コ字状であり、フレーム(枠部)3bにおいて回路基板31jの長手方向に沿った方向に凹部側を向けて設置して、冷却風が流れる送風路となる空間を有するダクト40を形成する。なお、送風路板31lは、金属基板で構成されている。
【0024】
ダクト40は、一方の端部の供給口40aから送風ファン31iからの冷却風を導入し、他方の端部の排出口40b(
図6)から当該ダクト40を流れた冷却風を排出するようになっている。これにより、ダクト40を流れる冷却風により回路基板31jの収容部背面側(加熱室側)が冷却される。また、送風ファン31iからの冷却風は、ダクト40の供給口40aだけでなく、回路基板31jの収容部側にも流れるように構成されている。これにより、回路基板31jの表面および裏面側も冷却される。つまり、送風ファン31iにより、ドア3の左下部(送風ファン31iの下部)に設けられた吸入口(図示せず)から吸気した冷却風は、回路基板31jの表面および裏面、さらにダクト40に流れる。回路基板31jの表面および裏面を流れた冷却風は、ドア3の右下部(仕切板141の下部)に設けられた排気孔3d(
図6)からドア3の外に排出され、ダクト40を流れた冷却風は、前記排気孔とは別に設けられた排気口40b(
図6)からドア3の外に排出される。
【0025】
なお、ダクト40は、回路基板31jの背面の少なくとも1部が重なるように形成されていればよいが、回路基板31jの背面の全面に形成されているのが、冷却効率の面から好ましい。
【0026】
以上のように、送風ファン31i、ダクト40、排気孔3dによって回路基板31jを冷却するための冷却機構を構成している。
【0027】
<効果>
上記構成の加熱調理器1は、ドア3内に回路基板31jが設けられ、回路基板31jの背面、すなわち表示操作部5に対向する面と反対側の面(ドア3を閉じたときに加熱庫2aに対向する面)の少なくとも1部が重なるようにダクト40が設けられている。このダクト40の内部は空間になっているので、当該ダクト40によって加熱庫2aからの熱を遮蔽することができる。このように、加熱庫2aからの輻射熱は、ダクト40によって遮蔽されるため、回路基板31jの温度が上がるのを抑制することができる。従って、回路基板31jの冷却を十分に行えるという効果を奏する。
【0028】
さらに、加熱調理器1には、ダクト40内に冷却風を送り込む送風部である送風ファン31iが設けられている。これにより、送風ファン31iによって発生する冷却風がダクト40内に送風されることになるため、回路基板31jの背面の冷却効率をさらに高めることができる。しかも、送風ファン31iによって発生する冷却風は、回路基板31jの表面、すなわち表示操作部5側の面および裏面にも送風されるようになっている。これにより、回路基板31jは、表面および裏面の冷却が行われることになるので、当該回路基板31jの冷却効率をさらに向上させることができる。
【0029】
また、ダクト40の排出口40bは、加熱調理器1の外部に冷却風を排出する排出口であり、仕切板141の下部に形成されている。
【0030】
これにより、ダクト40を流れる冷却風は、排出口40bからドア3の外部に排出される。つまり、送風ファン31iは、常に新鮮な冷却風をダクト40に送り続けることができるため、回路基板31jの冷却効率をさらに高めることができる。
【0031】
しかも、回路基板31jの表面および裏面を通った冷却風も、排気孔3dからドア3の外部に排出されるので、回路基板31jは表面および裏面の冷却効率をさらに高めることができる。
【0032】
回路基板31jの冷却効率を高めるためには、冷却風は、ダクト40内で常に流れている状態が好ましく、当該ダクト40内で留まるのは好ましくない。以下の実施形態2では、ダクト40に送り込まれた冷却風が、当該ダクト40内で留まらないようにする例について説明する。
【0033】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について
図6に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0034】
図6は、本実施形態の加熱調理器におけるドア3を示し、(a)は正面図、(b)は背面図である。なお、説明の便宜上、ドア3の正面図では、パネル格子31dが取り外され、送風ファン31iが露出した状態、背面図では、ダクト40が取り外された状態を示している。
【0035】
ドア3は、前記実施形態1と同様に、送風ファン31iからの冷却風がダクト40の供給口40aから導入され、排出口40bからドア3の外部に排出される。
【0036】
さらに、ダクト40の排出口40bの近傍には、当該ダクト40における送風路の上流側よりも下流側の幅を狭めるための仕切板141が形成されている。つまり、ダクト40内の送風路は、排出口40bの手前で狭められている。これにより、ダクト40内を流れる冷却風に係る圧力は、排出口40b付近で送風路が狭まっていることで高くなるので、冷却風の流速は排出口40b付近で速くなる。この結果、送風ファン31iからの冷却風は、ダクト40内で滞ることなく排出口40bから外部に適宜排出される。従って、回路基板31jの背面には常に新しい冷却風が流れるため、当該回路基板31jの背面を効率良く冷却することができる。
【0037】
〔実施形態3〕
本発明のさらに他の実施形態について
図7に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0038】
図7は、本実施形態の加熱調理器201の側断面図である。
【0039】
加熱庫202aの輻射熱は、開口部202bからドア203内の回路基板231jに伝わる。このため、回路基板231jは、ドア203内において加熱庫202aからの輻射熱の影響を少なくするために、一般には、開口部202bから遠い位置に配置するのが好ましい。
【0040】
しかしながら、本実施形態の加熱調理器201では、回路基板231jの背面側(加熱庫202a側)にダクト240が設けられているので、回路基板231jは加熱庫202aからの輻射熱の影響を受けにくい。従って、加熱調理器201は、
図7に示すように、ドア203がケーシング202内の加熱庫202aの開口部202bを閉じた状態で、当該ドア203内に設けられた回路基板231jが開口部202bと少なくとも一部オーバーラップ(図中のOL部分)するように配置してもよい。この場合、ダクト240も、回路基板231jと同様に、ケーシング202の開口部202bと少なくとも一部オーバーラップするように配置されている。ダクト240は、回路基板231jの背面側を全体的にカバーするように配置するのが好ましいが、少なくとも回路基板231jが開口部202bとオーバーラップしている部分をカバーするように配置するのが好ましい。
【0041】
従って、回路基板231jの背面側にダクト240を設けていれば、回路基板231jの配置位置はドア203内のどの位置であってもよい。
【0042】
このように、加熱調理器201において回路基板231jを設けるためのスペース的な制約がなくなるので、当該加熱調理器201の設計の自由度が増し、デザイン性を重視し、且つ省スペース化を図ることが可能となり、結果として、製造にかかるコストの削減も可能とする。
【0043】
なお、前記実施形態1~3においては、加熱庫内の輻射熱や、周囲温度を効率的に遮断できるため、本発明を適用できる加熱調理器としては電子レンジの他に、加熱庫と開閉扉を有する加熱調理器であればどのようなものであってもよく、例えばオーブン等であってもよい。
【0044】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 加熱調理器
2a 加熱庫
2b 開口部
3 ドア(開閉扉)
3d 排気孔
5 表示操作部(操作部)
31i 送風ファン
31j 回路基板
31l 送風路板
40 ダクト
40a 供給口
40b 排出口
141 仕切板
201 加熱調理器
202a 加熱庫
202b 開口部
203 ドア(開閉扉)
231j 回路基板
240 ダクト