(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】後退装置と、それを有するフィード機構
(51)【国際特許分類】
G01N 1/06 20060101AFI20230501BHJP
【FI】
G01N1/06 Z
(21)【出願番号】P 2020528006
(86)(22)【出願日】2018-11-27
(86)【国際出願番号】 CN2018117727
(87)【国際公開番号】W WO2019105348
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2021-11-24
(31)【優先権主張番号】201711236083.4
(32)【優先日】2017-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】514210304
【氏名又は名称】ライカ マイクロシステムズ リミテッド シャンハイ
【氏名又は名称原語表記】Leica Microsystems Ltd. Shanghai
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】ファン、ズェグアン
(72)【発明者】
【氏名】リアン、シャン
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ、ガン
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-192236(JP,A)
【文献】米国特許第03534647(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に沿って移動可能でありかつ第1端を有するメインシャフトと;
位置が固定されておりかつ前記第1端が貫通される支持板と;
前記第1端に嵌設されかつ同じ方向に沿って積層され、かつ、所定の与圧で前記メインシャフトと前記支持板との間で押し付けられる複数のばね座金と、
を備えており、
前記メインシャフトは、第1の位置と第2の位置との間で切り換え可能に構成され、かつ、切り換え中に、前記メインシャフトの軸線方向に沿って前記支持板に対して相対的に所定の距離だけ移動することができ、前記第1の位置にあるときには、前記メインシャフトは前記支持板から最も遠く、前記第2の位置にあるときには、前記メインシャフトは前記支持板から最も近
く、
前記複数のばね座金と前記支持板との間に平面軸受が設けられている、
回転式ミクロトームのフィード機構のための後退装置。
【請求項2】
前記支持板は開口を有しており、前記第1端の一部が前記開口から延出することを特徴とする請求項1に記載の後退装置。
【請求項3】
各々のばね座金の外径が前記開口の直径よりも大きいことにより、前記複数のばね座金が前記支持板に当接することができることを特徴とする請求項2に記載の後退装置。
【請求項4】
前記第1端に連結されるプルロッドをさらに備える請求項1に記載の後退装置。
【請求項5】
前記プルロッドが、前記支持板の、前記メインシャフトから遠い一側に位置する、ことを特徴とする請求項4に記載の後退装置。
【請求項6】
前記プルロッドは前記メインシャフトの軸線方向に対して垂直に前記第1端に連結されることを特徴とする請求項4に記載の後退装置。
【請求項7】
前記複数のばね座金が3個であることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の後退装置。
【請求項8】
各々のばね座金は皿ばね座金であり、かつ、各々の皿ばね座金の内輪の突出方向が同じであることを特徴とする請求項1に記載の後退装置。
【請求項9】
各々の皿ばね座金の内輪の突出方向が前記支持板から前記メインシャフトの方を向いていることを特徴とする請求項8に記載の後退装置。
【請求項10】
前記第1端にフランジが設けられており、かつ、前記複数のばね座金が前記フランジによって前記メインシャフトと前記支持板との間で押し付けられることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の後退装置。
【請求項11】
前記フランジの、前記支持板に近い端面と前記支持板との間に隙間を形成し、かつ、前記隙間が、前記第1の位置と前記第2の位置との切り換え時に前記メインシャフトが移動する前記所定の距離以上の大きさであることを特徴とする請求項10に記載の後退装置。
【請求項12】
載物台、第1のキャリッジ、第2のキャリッジ、および
請求項1~11のいずれか一項に記載の後退装置を備えており、前記載物台は前記第1のキャリッジに摺動可能に連結され、前記第1のキャリッジは前記第2のキャリッジに摺動可能に連結され、前記第2のキャリッジは位置が固定されており、前記後退装置のメインシャフトの第2端が前記載物台に連結され、前記載物台を駆動して前記メインシャフトの軸線方向に沿って前記第1のキャリッジに対して前記所定の距離だけ後退させるために用いられる、回転式ミクロトームのためのフィード機構。
【請求項13】
前記支持板は前記第1のキャリッジに固定的に連結されることを特徴とする
請求項12に記載のフィード機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はミクロトームの技術分野に関し、具体的には、後退装置と、該後退装置を有するフィード機構とに関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術における回転式ミクロトームのうち、回転式ミクロトームは通常、切片化すべきサンプルを保持するサンプルホルダを受載するキャリアを備えている。キャリアは、回転式ミクロトームの垂直な経路に沿って上向きおよび下向きに移動する。この垂直運動の間に、サンプルが上方位置から、回転式ミクロトーム上に固定的に配置されたナイフ上を通過することで1回の切片化作業を完了する。1回の切片化作業の後に、サンプルホルダはナイフの下方位置に位置する。
【0003】
サンプルが上方位置に戻る際に、表面がブレードに衝突するおそれがあるほか、サンプルを破損させる可能性がある。このため、回転式ミクロトームのマイクロフィード機構は後退装置を有する。該機能は、一対のばね座金とプルロッドにより実現される。後退させなければならない場合、プルロッドを引き動かし、フィード機構を引き戻す。後退させる必要がない場合、プルロッドを繰り出し、フィード機構が一対のばね座金により当初位置まで動かされる。ここで、マイクロフィード機構が本分野において指すのは、ハンドホイールを一回転させると該マイクロフィード機構がサンプルを駆動して0.1μm~100μmフィードすることができることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常、一対のばね座金は、互いに向かい合う方式で配置され、低い剛性を有しており、ひいては、マイクロフィード機構に良好な剛性を持たせない。マイクロフィード機構は、硬質材料を切片化する際または高速の切片化の際に振動が生じることがあり、切片品質が不十分になるおそれがある。
【0006】
本開示は、関連技術における技術的課題の1つを少なくとも一定程度解決しようとするものである。
【0007】
このため、本開示の1つの目的は、フィード機構の剛性を高め、切片化品質を改善する後退装置を提案することにある。
【0008】
本開示のもう1つの目的は、上記後退装置を有するフィード機構を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の実施例による、回転式ミクロトームのフィード機構のための後退装置は、軸線方向に沿って移動可能でありかつ第1端を有するメインシャフトと;位置が固定されておりかつ前記第1端が貫通される支持板と;前記第1端に嵌設されかつ同じ方向に沿って積層され、かつ、所定の与圧で前記メインシャフトと前記支持板との間で押し付けられる複数のばね座金と、を備えており、前記メインシャフトは、第1の位置と第2の位置との間で切り換え可能に構成され、かつ、切り換え中に、前記メインシャフトの軸線方向に沿って前記支持板に対して相対的に所定の距離だけ移動することができ、前記第1の位置にあるときには、前記メインシャフトは前記支持板から最も遠く、前記第2の位置にあるときには、前記メインシャフトは前記支持板から最も近い。
[発明を実施するための形態]
【0010】
本開示の実施例による後退装置は、同方向に積層された複数のばね座金が配置されているため、比較的高い剛性を後退装置に持たせており、硬質材料を切片化する際または高速の切片化の際に、振動を効果的に低減し、切片品質を向上させることができる。
【0011】
本開示のいくつかの実施例では、前記支持板は開口を有しており、前記第1端の一部が前記開口から延出する。
【0012】
本開示のいくつかの実施例では、各々のばね座金の外径が前記開口の直径よりも大きいことにより、前記複数のばね座金が前記支持板に当接することができる。
【0013】
本開示のいくつかの実施例では、前記後退装置が、前記第1端に連結されるプルロッドをさらに備えることにより、後退装置を操作することができる。
【0014】
本開示のいくつかの実施例では、前記プルロッドが、前記支持板の、前記メインシャフトから遠い一側に位置することにより、後退装置に容易に接近して操作することができる。
【0015】
本開示のいくつかの実施例では、前記プルロッドが前記メインシャフトの軸線方向に垂直に前記第1端に連結されることにより、より軽便に後退装置を操作することができる。
【0016】
本開示のいくつかの実施例では、前記複数のばね座金が3個であることにより、後退装置が第1の位置にあるときの、メインシャフトの軸線方向に沿った剛性を高めるとともに、メインシャフトが第2の位置に向かって移動するときの複数のばね座金の弾性力を適正にすることができ、後退装置の操作に有利である。
【0017】
本開示のいくつかの実施例では、各々のばね座金は皿ばね座金であり、かつ、各々の皿ばね座金の内輪の突出方向が同じであり、メインシャフトに対する複数のばね座金の作用力をより均等にする。
【0018】
本開示のいくつかの実施例では、各々の皿ばね座金の内輪の突出方向が前記支持板から前記メインシャフトの方を向いていることにより、メインシャフトが第2の位置から第1の位置に戻るのに有利である。
【0019】
本開示のいくつかの実施例では、前記第1端にフランジが設けられており、かつ、前記複数のばね座金が前記フランジによって前記メインシャフトと前記支持板との間で押し付けられる。
【0020】
本開示のいくつかの実施例では、前記フランジの、前記支持板に近い端面と前記支持板との間に隙間を形成し、かつ、前記隙間が、前記第1の位置と前記第2の位置との切り換え時に前記メインシャフトが移動する前記所定の距離以上の大きさであり、メインシャフトの軸線方向に沿ったメインシャフトの移動が干渉されないようにする。
【0021】
本開示のいくつかの実施例では、前記複数のばね座金と前記支持板との間に平面軸受が設けられていることにより、後退装置がメインシャフトの回動に影響しない。
【0022】
本開示の実施例によるフィード機構は、載物台、第1のキャリッジ、第2のキャリッジ、および上記実施例による後退装置を備えており、前記載物台は前記第1のキャリッジに摺動可能に連結され、前記第1のキャリッジは前記第2のキャリッジに摺動可能に連結され、前記第2のキャリッジは位置が固定されており、ここで、前記後退装置のメインシャフトの第2端が前記載物台に連結され、前記載物台を駆動して前記メインシャフトの軸線方向に沿って前記第1のキャリッジに対して所定の距離だけ後退させるために用いられる。
【0023】
本開示のいくつかの実施例では、前記支持板が前記第1のキャリッジに固定的に連結されるかあるいは前記第1のキャリッジと一体に形成されることにより、後退装置が第1のキャリッジにより安定的に支持され得る。
【発明の効果】
【0024】
本開示の実施例によるフィード機構の有益な効果は、本開示の実施例による後退装置の有益な効果と同じであり、無用な記述はここで繰り返さない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、本開示の実施例による後退装置およびフィード機構の概略図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施例による後退装置およびフィード機構のもう1つの概略図である。
【
図3】
図3は、本開示の実施例による後退装置の部分断面図である。
【実施例】
【0026】
以下、図面を参照しながら、本開示の好ましい実施形態(実施例)について説明する。説明を要するのは、ここで使用される「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」という用語および類似した記述は、説明する目的のためのものであるに過ぎず、本開示に対する限定ではない、という点である。
【0027】
本開示は、軸線方向に沿って移動可能でありかつ第1端を有するメインシャフトと;位置が固定されておりかつ前記第1端が貫通される支持板と;前記第1端に嵌設されかつ同じ方向に沿って積層され、かつ、所定の与圧で前記メインシャフトと前記支持板との間で押し付けられる複数のばね座金と、を備えており、前記メインシャフトは、第1の位置と第2の位置との間で切り換え可能に構成され、かつ、切り換え中に、前記メインシャフトの軸線方向に沿って前記支持板に対して相対的に所定の距離だけ移動することができ、前記第1の位置にあるときには、前記メインシャフトは前記支持板から最も遠く、前記第2の位置にあるときには、前記メインシャフトは前記支持板から最も近い、回転式ミクロトームのフィード機構のための後退装置に関する。
【0028】
図1および
図2は、本開示の実施例による後退装置100とフィード機構1000の立体図を示しており、
図3は、本開示の実施例による後退装置100の部分断面図を示している。
【0029】
図1~
図3では、方向を記述および決定しやすいように、直交するXYZ軸を図示しており、
図1において、X軸の正方向は左向き方向であり、X軸の負方向は右向き方向であり;Y軸の正方向は前向き方向であり、Y軸の負方向は後向き方向であり;Z軸の正方向は上向き方向でありZ軸の負方向は下向き方向である。
【0030】
図1に示すように、本開示の実施例による、回転式ミクロトームのフィード機構のための後退装置100は、メインシャフト10、支持板20、および複数のばね座金30を備える。
【0031】
メインシャフト10は、その軸線方向に沿って移動可能である。支持板20の位置は固定されており、かつ、メインシャフト10の第1端は支持板20に貫通される。複数のばね座金30がメインシャフト10の第1端に嵌設されかつ同じ方向に沿って積層され、かつ、複数のばね座金30がメインシャフト10と支持板20との間で所定の与圧で押し付けられる。説明を要するのは、支持板20は位置が固定されるというのが指すのは、メインシャフト10および複数のばね座金30に対しては、固定された位置に支持板20が設けられることにより、支持板20がメインシャフト10および複数のばね座金30を支持することができることであり;複数のばね座金30が同じ方向に沿って積層されるというのが指すのは、複数のばね座金30が同じ方向に沿って配向されかつ互いに受け止め合うことであり、つまり、互いに向かい合う方式で配置されるのではなく;また、メインシャフト10の第1端が指すのは、
図1に示す後端である、という点である。
【0032】
メインシャフト10は第1の位置と第2の位置との間で切り換え可能であり、かつ、切り換え中にメインシャフト10の軸線方向に沿って支持板20に対して相対的に所定の距離だけ移動することができる。具体的には、第1の位置にあるときには、メインシャフト10は支持板20から最も遠く、メインシャフト10を引き動かしてメインシャフトによって複数のばね座金30を圧縮することができ、かつ、メインシャフト10をメインシャフト10の軸線方向に沿って支持板20に向かって第2の位置まで所定の距離だけ移動させることができ;第2の位置にあるときには、メインシャフト10は支持板20から最も近く、メインシャフト10を繰り出し、メインシャフト10は複数のばね座金30の弾性復元力の作用でメインシャフト10の軸線方向に沿って支持板20から遠ざかって第1の位置まで前記所定の距離だけ移動することにより、後退装置100の後退および繰り出しを実現している。具体的には、メインシャフト10の軸線方向が指すのは、
図1に示す前後方向である。
【0033】
メインシャフト10はメインシャフト10の軸線方向周りに回動することができることで、フィード機構1000のマイクロフィードを駆動するために用いられ、対比をなすのは、後退装置100が、メインシャフト10の軸線方向に沿ってメインシャフト10を移動させることで、フィード機構1000を駆動して小さな範囲で後退および繰り出しを行わせるという点であることを、当業者は理解可能である。
【0034】
支持板20は開口(図示せず)を有しており、メインシャフト10の第1端の一部が該開口から延出する。複数のばね座金30がメインシャフト10の第1端に嵌設される、つまり、各々のばね座金30の内径はメインシャフト10の第1端の直径よりも大きい。また、各々のばね座金30の外径が開口の直径よりも大きいことにより、複数のばね座金30が支持板20に当接することができる。
【0035】
図2に示すように、後退装置100はプルロッド40をさらに備えており、かつ、プルロッド40がメインシャフト10の第1端に連結されることで、後退装置100を操作することができる。具体的には、プルロッド40が、支持板20の、メインシャフト10から遠い一側に位置することにより、後退装置100に容易に接近して操作することができる。さらに、プルロッド40がメインシャフト10の軸線方向に対して垂直にメインシャフト10の第1端に連結され得ることにより、より軽便に後退装置100を操作することができる。
【0036】
図3に示すように、複数のばね座金30が3個であることにより、後退装置100が第1の位置にあるときの、メインシャフト10の軸線方向に沿った剛性を高めるととともに、メインシャフト10が第2の位置に向かって移動するときの複数のばね座金30の弾性力を適正にすることができ、後退装置100の操作に有利である。
【0037】
各々のばね座金30は皿ばね座金であってよく、かつ、各々の皿ばね座金の内輪の突出方向が同じであり、すなわち、複数の皿ばね座金が同じ方向に沿って配置されかつ積層され、メインシャフト10に対する複数のばね座金30の作用力をより均等にし、かつ、後退装置100が第1の位置にあるときのメインシャフト10の軸線方向に沿った剛性をさらに高めることができる。さらに、各々の皿ばね座金の内輪の突出方向が支持板20からメインシャフト10の方を向いていることにより、メインシャフト10が第2の位置から第1の位置に戻るのに有利である。
【0038】
メインシャフト10の第1端にフランジ12が設けられており、かつ、複数のばね座金30がフランジ12によってメインシャフト10と支持板20との間で押し付けられる。具体的には、フランジ12は第1のフランジ121と第2のフランジ122とを備えており、複数のばね座金30が第1のフランジ121に嵌設され、かつ、複数のばね座金30が第2のフランジ122に当接する。つまり、第1のフランジ121の外径が各々のばね座金30の内径よりも小さく、かつ、第2のフランジ122の外径が各々のばね座金30の内径よりも大きく、かつ、各々のばね座金30の外径よりも小さいことにより、複数のばね座金30に対する支持を保証していると同時に、材料を節約することができる。
【0039】
フランジ12の、支持板20に近い端面と支持板20との間に隙間Gを形成することができ、かつ、該隙間Gが、第1の位置と第2の位置との切り換え時にメインシャフト10が移動する所定の距離以上の大きさであり、メインシャフト10の軸線方向に沿ったメインシャフト10の移動が干渉されないようにする。具体的には、複数のばね座金30と支持板20との間に平座金50がさらに設けられていてもよく、かつ、平座金50が第1のフランジ121に嵌設されることにより、接触面積を増やすことができ、かつ、隙間Gの形成に有利である。さらに、メインシャフト10の軸線方向に沿って、複数のばね座金30の、第1の位置にあるときの厚みと平座金50の厚みとの和が第1のフランジ121の厚みよりも大きいことにより、該隙間Gを形成する。
【0040】
複数のばね座金30と支持板20との間に平面軸受60が設けられていてもよく、複数のばね座金30がメインシャフト10に従って一緒に回動できるようにすることにより、後退装置100がメインシャフト10の回動に影響せず、すなわち、メインシャフト10が、回動することができることで、フィード機構1000のマイクロフィードを駆動するために用いられる。具体的には、平面軸受60が平座金50と支持板20との間に設けられ、かつ、軸スリーブ70を介してメインシャフト10の第1端に嵌設される。これにより、メインシャフト10はその軸線方向周りに回動することができると同時に、その軸線方向に沿って移動することもできる。
【0041】
図1および
図2を参照すると、本開示の実施例による、回転式ミクロトームのためのフィード機構1000は、載物台200、第1のキャリッジ300、第2のキャリッジ400、上記実施例による後退装置100を備えている。
【0042】
載物台200は第1のキャリッジ300に摺動可能に連結され、第1のキャリッジ300は第2のキャリッジ400に摺動可能に連結され、第2のキャリッジ400は位置が固定されており、ここで、後退装置100のメインシャフト10の第2端が載物台200に連結され、載物台200を駆動してメインシャフト10の軸線方向に沿って第1のキャリッジ300に対して所定の距離だけ後退させるために用いられる。具体的には、載物台200は第1のキャリッジ300に対して前後方向に摺動可能であり、かつ、第1のキャリッジ300は第2のキャリッジ400に対して上下方向に摺動可能である。説明を要するのは、第2のキャリッジ400は位置が固定されるというのが指すのは、第1のキャリッジ300、載物台200、および後退装置100に対しては固定された位置に設けられることにより、これらの部材に対して支持作用を果たすことができることである、という点である。
【0043】
また、支持板20は第1のキャリッジ300に固定的に連結されるかあるいは第1のキャリッジ300と一体に形成されてよい。それによって、後退装置100は第1のキャリッジ300により安定的に支持され得る。
【0044】
理解可能なのは、フィード機構1000の他の構造および原理は当業者が獲得可能なものであり、無用な記述はここで繰り返さない、という点である。
【0045】
以下、本開示の実施例による後退装置100の動作過程について記述する。
【0046】
通常、回転式ミクロトームの切片化過程において、フィード機構1000がサンプルを駆動して上から下へブレード(図示せず)を通過させることで、1回の切片化作業を完了する。1回の切片化作業を完了した後、サンプルが載置された載物台200はブレードの下方位置に位置しており、サンプルが上向きに移動してブレードの上方位置に戻る過程において、ブレードがサンプル表面に衝突するのを回避するために、プルロッド40を引き動かすことができ、メインシャフト10を動かして複数のばね座金30を圧縮し、複数のばね座金30を変形させることにより、メインシャフト10が第1の位置からメインシャフト10の軸線に沿ってブレードから遠ざかって第2の位置まで所定の距離だけ移動することができるようにし、載物台200を動かしてブレードから遠ざからせる。このとき、第1のキャリッジ300を駆動して上向きに摺動させ、サンプルが載置された載物台200をブレードの上方位置まで戻す。プルロッド40を繰り出すことができ、複数のばね座金30が弾性復元力の作用でメインシャフト10を押し動かし、第2の位置からメインシャフト10の軸線に沿ってブレードに向かって移動させて第1の位置に戻すことができる。このようにして、回転式ミクロトームが切片化作業を継続することができる。
【0047】
いくつかの実施例では、
図1および
図2に示すように、本開示の実施例による後退装置100は、軸線方向に沿って移動可能でありかつ第1端を有するメインシャフト10と;位置が固定されておりかつメインシャフト10の第1端が貫通される支持板20と;メインシャフト10の第1端に嵌設されかつ同じ方向に沿って積層され、かつ、所定の与圧でメインシャフト10と支持板20との間で押し付けられる複数のばね座金30と、を備えており、ここで、メインシャフト10は、第1の位置と第2の位置との間で切り換え可能に構成され、かつ、切り換え中に、メインシャフト10の軸線方向に沿って支持板20に対して相対的に所定の距離だけ移動することができ、第1の位置にあるときには、メインシャフト10は前記支持板20から最も遠く、第2の位置にあるときには、メインシャフト10は支持板20から最も近い。
【0048】
本開示の実施例による後退装置100およびフィード機構1000では、同方向に積層された複数のばね座金30が配置されているため、比較的高い剛性を後退装置100に持たせており、硬質材料を切片化する際または高速の切片化の際に、振動を効果的に低減し、切片品質を向上させることができる。
【0049】
なお、「第1の」、「第2の」という用語は記述する目的のためにのみ用いられ、相対的な重要性を指示または暗示するか、あるいは、指示される技術的特徴の数を暗に指すと理解してはならない。これにより、「第1の」、「第2の」と限定された特徴は、1以上の該特徴を明示するかあるいは暗に含み得る。本開示の記述では、「複数の」の意味合いは、別途明確かつ具体的に限定されていない限り、2つまたは2つ以上ということである。
【0050】
本開示では、明確な規定や限定が別途ない限り、「取り付ける」、「結合される」、「連結する」、「固定する」等の用語については広義に理解しなければならず、例えば、固定連結であってもよく、取り外し可能な連結または一体化であってもよく;機械的連結であってもよく、電気的連結であってもよく;直接結合されてもよく、中間媒体を介して間接的に結合されてもよく、2つの部品内部の連通または2つの部品の相互作用関係であってもよい。当業者にとっては、本開示における上記用語の具体的な意味合いを、具体的な状況に応じて理解することができる。
【0051】
本開示では、明確な規定や限定が別途ない限り、第1の特徴が第2の特徴の「上」または「下」にあることは、第1の特徴と第2の特徴が直接接触することであるか、または、第1の特徴と第2の特徴が中間媒体を介して間接的に接触することであってよい。また、第1の特徴が第2の特徴「の上」、「上方」、および「上部」にあるというのは、第1の特徴が第2の特徴の直上または斜め上方にあることであるか、または、第1の特徴の水平高さが第2の特徴よりも高いことを表しているに過ぎない。第1の特徴が第2の特徴「の下」、「下方」、および「下部」にあるというのは、第1の特徴が第2の特徴の直下または斜め下方にあることであってもよいし、または、第1の特徴の水平高さが第2の特徴よりも低いことを表しているに過ぎない。
【0052】
本明細書の記述では、「1つの実施例」、「いくつかの実施例」、「例示」、「具体的な例示」、または「いくつかの例示」といった参照用語の意味は、該実施例または例示と結び付けて記述される具体的な特徴、構造、材料あるいは特徴が本開示の少なくとも1つの実施例または例示に含まれることを指す。本明細書では、上記用語の示す説明について、対応するのが同じ実施例や例示である必要はない。また、記述される具体的な特徴、構造、材料あるいは特徴は、いずれか1つまたは複数の実施例または例示において、適切な方式で結び付けることができる。なお、当業者は、本明細書において記述された様々な実施例または例示を結び付けたり組み合わせたりすることができる。
【0053】
以上、本開示の実施例を示して記述したが、理解可能なのは、上記実施例は例示的なものであり、本開示に対する制限であると理解してはならず、当業者は本開示の範囲内で上記実施例を変更、修正、置換、および変形することができる、という点である。