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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】圧電センサ配置及び信号判別方法
(51)【国際特許分類】
   F42C 11/02 20060101AFI20230501BHJP
   H10N 30/30 20230101ALI20230501BHJP
   H10N 30/88 20230101ALI20230501BHJP
【FI】
F42C11/02
H10N30/30
H10N30/88
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020544536
(86)(22)【出願日】2019-03-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-15
(86)【国際出願番号】 SE2019050231
(87)【国際公開番号】W WO2019182495
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2022-02-25
(31)【優先権主張番号】1800060-4
(32)【優先日】2018-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】508167634
【氏名又は名称】サーブ エービー
【氏名又は名称原語表記】SAAB AB
【住所又は居所原語表記】581 88 Linkoping Sweden
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ホルム,トニー
(72)【発明者】
【氏名】オストルンド,ヨハン
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0133954(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0204756(US,A1)
【文献】特開2004-087526(JP,A)
【文献】米国特許第03256817(US,A)
【文献】米国特許第03622814(US,A)
【文献】米国特許第05157220(US,A)
【文献】国際公開第2003/051794(WO,A2)
【文献】特開平05-322497(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F42C 11/02
H10N 30/30
H10N 30/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発射体(2)において用いられる圧電センサ配置であって、
少なくともいくつかの機械的な波の周波数を減衰させるように適合された減衰層(5)によって完全に又は部分的に包囲された圧電センサ(6)を備え、
前記圧電センサ(6)は、オブジェクトとの衝突により機械的な波が前記発射体(2)の本体を通じて伝搬したことを示す電圧出力信号(9)を生成するように構成されており、
前記センサ配置は、前記電圧出力信号(9)を経時的に積分するとともに、前記積分された値を所定の閾値と比較するように構成されており、
前記閾値を上回る積分値は、前記発射体(2)がハードターゲットであるオブジェクトに衝突したことを示し、
前記減衰層(5)による機械的な波の減衰及び前記電圧出力信号(9)の積分は、共に、所定のカットオフ周波数を上回る機械的な波の周波数をフィルタリングするように構成され、
前記カットオフ周波数を上回る機械的な波の周波数は、前記発射体(2)がソフトターゲットであるオブジェクトに衝突したことを示し、
前記カットオフ周波数は、800Hz以下である、圧電センサ配置。
【請求項2】
前記減衰層(5)は、前記圧電センサ(6)に糊付け又ははんだ付けされる、請求項1に記載の圧電センサ配置。
【請求項3】
前記減衰層(5)は、0.01から1mmの範囲の厚さを有する、請求項1又は2に記載の圧電センサ配置。
【請求項4】
前記減衰層(5)は、シリコーン又はシリコーン系材料からなる、請求項1からの何れか一項に記載の圧電センサ配置。
【請求項5】
前記圧電センサ(6)は、圧電結晶である、請求項1からの何れか一項に記載の圧電センサ配置。
【請求項6】
請求項1からの何れか一項に記載の圧電センサ配置によって電圧アウトレット信号(8,9)を判別する方法であって、
i) 事前に決定された積分値の知識に基づいて閾限界値を設定することであって、前記閾値を上回る積分値は、前記発射体(2)がハードターゲットであるオブジェクトに衝突したことを示すことと、
ii) 衝突により前記発射体(2)を通じて伝搬する機械的な波を検出する前記圧電センサ(6)から得た前記電圧出力信号(9)を、経時的に積分することと、
iii) 前記算出された積分値と前記閾値とを比較することにより、所望でないソフトオブジェクトとの衝突により生成された機械的な波に由来する前記閾限界値を下回る低エネルギの積分値を、所望のハードオブジェクトとの衝突により生成された機械的な波に由来する高エネルギの積分値から判別することと、
を備える、方法。
【請求項7】
請求項1からの何れか一項に記載の圧電センサを配置された、発射体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電センサ配置と、ソフトターゲット及びハードターゲットから生じる電気出力信号の判別方法と、に関する。本発明は、爆発発射体、例えば砲弾における圧電センサ配置の使用にも関するものであり、爆発が意図せずに発生しないように安全防護する。
【背景技術】
【0002】
砲弾などの起爆装置の信管に組み込まれた圧電結晶においては、ターゲットへの衝突時に電気出力信号が生成されることが一般に知られている。圧電結晶によって生成される電気信号は、砲弾において発生する衝撃波と、発射体のターゲットへの衝突時に起こる減速と、に関係する。電気信号は通常、信号処理される。結晶は、起爆装置に含まれる爆発物が爆発するべきか否かを決定する論理回路を一般に備える信管に、電気的に接続されている。したがって、信管は、特定の条件下、例えば電気信号が所定の値に達したときに、弾薬の爆発性物質の爆発を開始し得る。圧電結晶は、例えば、弾頭の衝撃センサを開示している国際公開第03/051794号明細書から既知である。同明細書においては、少なくとも1つの圧電結晶を有するマルチモード信管が、ターゲットの衝突時に電気出力信号を生成する。国際公開第03/051794号明細書の装置は、ソフトオブジェクトへの衝突時に伝送される電気信号とハードターゲットの衝突時に伝送される電気信号とをそれぞれ判別することができる。したがって、信号を検出及び判別することにより、論理回路によって、いつ爆発が起こるべきか、すなわちソフトターゲット又はハードターゲットへの衝突後のどの時点で爆発が起こるべきかを制御することが可能である。
【0003】
圧電センサは、時代と共に、より高感度になるように開発されてきた。これは、センサが時に過度に高感度になることを意味している。この現象の一例が、発射体が所望のターゲットへの途上で通り過ぎるであろう藪又は他のソフトオブジェクトについてさえ実質的なピークが立つ電圧出力信号である。そのようなピークは、例えば数度という小さな弾着角度でのハードターゲットとの衝突後の信号よりも高くさえなり得ることがわかっている。これは、最小出力電圧の閾値が、藪又は低木林のような邪魔になる物体(ソフトオブジェクト)を所望のハードターゲットと判別することに必ずしも依拠し得ないことを意味する。爆発物又は弾頭が望ましくない場所で爆発すれば意図しない爆発のリスクが存在するであろうし、かなりの危険さえもたらし得ることは言うまでもない。この課題に対処する1つの手法が米国特許出願公開第3,667,393号明細書に開示されている。同明細書では、木の枝によって引き起こされる過早爆発がエアギャップによって防止されるので、ターゲットに命中してエアギャップが短絡しない限りは信管の点火が起こらない。
【0004】
しかしながら、従来技術においては、爆発物又は弾頭がいつ爆発するのかの閾値を安全に設定するという課題が依然として存在する。なぜなら、信管のロジックは、圧電センサによって信管に伝送される信号を、爆発が所望のターゲットにおいて開始されるように解釈することができなければならないからである。特に、当該技術分野においては、ハードターゲットへの衝突を、例えば藪からの小さな弾着角度と判別するという課題がある。今日使用されている多くの圧電センサに関係する更なる課題は、センサからの出力電圧信号の従来の信号処理は、エネルギ並びに時間的及び空間的制限の違いが小さいため、所望のターゲットへの衝突を所望でないターゲットへの衝突と判別するのに必ずしも十分ではないかもしれないということである。
【0005】
上記に鑑みて、本発明は、上述の課題を解決することのできる圧電センサ配置を提供しようとするものである。より具体的には、本発明は、所望のオブジェクトに由来する出力信号と藪などの所望でない物体に由来する出力信号との安全な判別を規定する圧電センサ配置を提供しようとするものである。本発明はまた、新たな信号判別方法を伴う、所望のターゲットにおける安全な爆発の閾値の設定を可能にする方法も提供しようとするものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、発射体において用いられる圧電センサ配置に関するものであり、所定のカットオフ周波数を上回る周波数の信号を減衰させるように適合された減衰層によって完全に又は部分的に包囲された圧電センサを備え、それによって、所望のハードターゲットへの衝突時の圧電センサの電圧出力信号が、所望でないソフトオブジェクトへの衝突に由来する電圧出力信号と判別され得る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態によれば、本発明は、発射体、例えば従来の砲弾において用いられる圧電センサ配置に関するものであり、所定のカットオフ周波数を上回る周波数の信号を減衰させるように適合された減衰層によって完全に又は部分的に包囲された圧電センサを備え、それによって、所望のハードターゲットへの衝突時の圧電センサの電圧出力信号が、
i)衝突時に圧電センサから得られる電圧出力信号を経時的に積分して電気エネルギを計算することと、
ii)ステップi)で得られた計算された電気エネルギの知識に基づいて閾限界値を設定し、ひいては、その閾限界値を下回る所望でないソフトオブジェクトに由来する低エネルギ含量と所望のハードターゲットに由来する高エネルギ含量との判別を安全防護する(safeguarding discrimination)ことと、
により、所望でないソフトオブジェクトへの衝突に由来する電圧出力信号と判別され得る。
【0008】
一実施形態によれば、減衰層は、所定のカットオフ周波数を下回る、例えば、約500Hz未満など約800Hzを下回る周波数の信号を通過させる。一実施形態によれば、圧電センサは減衰層によって完全に包囲される。
【0009】
一実施形態によれば、減衰層は圧電センサの片側又は両側に配置される。そのような圧電センサは、好適には平坦な形状を有し、例えば、特に前面及び後面を有する丸い形を備えたディスク又はコインの形状とされる。例えば、減衰層によって完全に包囲されるセンサがディスク又はコインのような円筒形状を有する場合、その平坦な両端と外囲面との両方が減衰層によって覆われる。
【0010】
本発明は、本明細書に記載された圧電センサ配置による電圧アウトレット信号を判別する方法にも関し、
i)衝突時に圧電センサから得られる電圧出力信号を経時的に積分して電気エネルギを計算することと、
ii)ステップi)で得られた計算された電気エネルギの知識に基づいて閾限界値を設定し、ひいては、その閾限界値を下回る所望でないソフトオブジェクトに由来する低エネルギ含量と所望のハードターゲットに由来する高エネルギ含量との判別を安全防護することと、
を備える。
【0011】
本発明は、意図しない爆発が発生しないように安全防護するための、発射体、好適には砲弾における圧電センサ配置の使用にも関する。本発明は、本明細書に記載のセンサ配置を装備した発射体、好適には砲弾にも関する。
【0012】
圧電センサにおける圧電インパルスは、異なる弾着角度では相当に異なり得ることがわかっている。一例として、下記で参照するシミュレーションによれば、5°という弾着角度での砲弾のインパルス、すなわち圧電センサからの出力電圧信号は、同じ砲弾の垂直弾着の対応するインパルスの約3%と低いであろう。約30°の弾着角度では、インパルスは、垂直着弾のインパルスの約35%であろう。
【0013】
一実施形態によれば、減衰層は、0.01から2mm、好適には約0.01から1mmの範囲の厚さを有する。一実施形態によれば、減衰層の厚さは、0.01から0.5mm、例えば約0.01から0.1mmの範囲である。
【0014】
一実施形態によれば、減衰層は、0.5から10、例えば0.5から5、最も好適には1から2.5g/cmの範囲の密度を有する。
【0015】
一実施形態によれば、減衰層は、-40から63℃の温度範囲において、20から100、好適には50から90、又は最も好適には60から80ショアAの範囲のデュロメータ硬度を有する(ISO7619)。一実施形態によれば、減衰層は、0.5から5、例えば1から3MPaの範囲の引張強さを有する(ISO37)。
【0016】
一実施形態によれば、減衰層は、80から95、好適には85から95%の範囲の破断伸びを有する(ISO37)。
【0017】
一実施形態によれば、減衰層は、5から15、例えば8から12N/mmの範囲の引裂強さを有する(ISO34-IC)。
【0018】
一実施形態によれば、減衰層は、10%及び20%歪み時のそれぞれで5から15、好適には8から12、最も好適には9から11MPaの範囲の圧縮弾性率を有する(ISO7743)。
【0019】
圧電材料からの関連する出力電圧信号を検出するとともに例えば藪又は他のソフトオブジェクトに由来する信号と判別するために、厚さは、減衰材料の種類、利用される圧電センサの感度、及び起爆装置の種類等に応じて設計可能である。概して、減衰層が厚いほど、減衰効果及び電気出力信号の低減は、少なくともあるレベルまで大きくなる。また、概して、減衰層が厚いほど、信号の周波数のカットオフは広くなる。邪魔になる信号を生成する藪又は他のタイプのソフトターゲットからの邪魔になる害信号はカットオフするのが望ましい一方で、所望のハードターゲットへの衝突からの信号はカットオフすべきではない。なぜならそれは、信管の正しい設定を脅かし、不十分に正確な信号データが処理されることによって、意図しない爆発をもたらし得るからである。
【0020】
好適には、「ハードターゲット」は、約100HBよりも高い、例えば約300HBよりも高いか、又は500HBよりも高い硬度を有する。一実施形態によれば、ハードターゲットの硬度は、100から1500、好適には300から800など、200から1000HBの範囲内にある。「ハードターゲット」という用語は、本発明の文脈においては、発射体の減速度が少なくとも20%、好適には少なくとも50%、又は少なくとも99%であることを意味する。好適には、発射体の速度は、発射体のターゲットへの衝突時点から少なくとも20%、好適には少なくとも50%、又は少なくとも99%低減される。「ハードターゲット」とは対照的に、藪などのソフトターゲットに衝突又はこれを通過するときの速度の低減は、20%未満である。
【0021】
好適には、減衰材料は、減衰材料が曝される温度範囲内、典型的には-80から80℃の範囲内では、実質的に同じ機械的物性を有する。一実施形態によれば、減衰層の材料は、-60から80°の温度範囲内ではその機械的物性を実質的に変化させない。
【0022】
一実施形態によれば、減衰層は、例えばクランプ手段、糊付け、はんだ付けによって、又は、好適には減衰層を圧電センサ若しくは圧電センサを備える構造物に直接的に取り付けることで減衰層を不要にすることによって、圧電センサに取り付けられる。好適には、減衰層は、間に遊び又は空間がないように、好適には糊付け又ははんだ付けによって、圧電センサに密に接合される。
【0023】
一実施形態によれば、減衰層(5)は、シリコーン又はシリコーン系材料からなる。本明細書において用いられるとき、「シリコーン」という用語は、交互の珪素原子と酸素原子との鎖であるシロキサンの繰り返し単位からなり、炭素及び/又は水素と結合されることの多い、任意の不活性合成化合物を含むポリマーなど、任意のポリシロキサン化合物を意味する。ポリシロキサンは、より正確には重合化シロキサンとして知られており、珪素原子に取り付けられた有機側基を備える無機珪素-酸素主鎖で構成される。これらの珪素原子は四価である。シリコーンは、無機-有機モノマーから構築されたポリマーである。シリコーンは概して化学式[RSiO]nを有する。ただし、Rはアルキル(メチル、エチル)などの有機基又はフェニル基である。
【0024】
場合によっては、これらの-Si-O-主鎖のうち2つ以上を結合するために有機側基が用いられてもよい。-Si-O-鎖の長さ、側基、及び架橋を変化させることによって、シリコーンは幅広い特性及び組成をもって合成され得る。シリコーンは、粘ちょう度が液体からゲル、ゴム、硬質プラスチックへと変化し得る。最も一般的なシロキサンは、線状ポリジメチルシロキサン(PDMS)、シリコーンオイルである。2番目に大きいシリコーン材料群はシリコーン樹脂に基づくもので、これらは分岐状及びかご状のオリゴシロキサンによって形成される。
【0025】
好適には圧電結晶が用いられる。圧電結晶は、機械力が印加されると電流を発する。逆に、圧電結晶は、印加される電流によって機械的に変形される。
【0026】
機械力と電流とのこの相互関係は、通常、本発明のセンサ応用に利用される。従来、圧電センサは、ターゲットへの衝突時に爆発性物質の爆発を開始する。ターゲットに衝突すると、衝撃波が弾体(又は他の装置)を通じて伝搬し、圧電センサの表面に到達するであろう。すると、圧電センサは、機械的な衝撃波を電気的なパルス又は信号に変換し得る。電装ユニット、典型的には論理回路が、電気パルスの形状を処理して、砲弾が爆発すべきか否かを決定する。論理回路は、電気パルスの立ち上がり時間及び振幅など、電気パルスの電気的特性を決定する。
【0027】
一実施形態によれば、衝突後の爆発を遅らせるための遅延回路が備えられる。遅延及び点火回路が提供され、異なる弾薬及び動作に適合されてもよい。
【0028】
一実施形態によれば、圧電センサ又は結晶は、曲げ力、すなわち弾頭が垂直とは異なる弾着角度でターゲットに当たるときに生じる力の検知を可能にするために、2つ又はいくつかの部分、例えば3つの部分、好適には2つの部分に分割される。
【0029】
好適には、減衰層を備える圧電センサは、信管、例えば信管の電子部品に隣接して配置される。好適には、減衰層を備える圧電センサは、信管に取り付けられるか、又は、信管構造内、例えば信管の電子部品の近傍に配置される。取り付けは、センサの信管構造へのはんだ付け又は糊付けによって行われてもよい。
【0030】
好適には、圧電センサは、例えばばねによって、信管内に搭載される。センサを備えた発射体がターゲットに衝突する際に安全発火装置が移動し得るので、ばねによる搭載が好適であろう。また、例えば温度の公差及びばらつきによって引き起こされる静荷重が最小化され得る。カットオフ周波数は、減衰層の厚さ及び材料の種類、減衰層がどのように圧電センサに配置されるか、並びに圧電センサがどのように発射体に配置されるかによって決定される。
【0031】
実施例
鋼材表面に、様々な角度で、200m/秒の速さで当たる球状物を用いて、シミュレーションが行われた。Sonox P52が、0.8mmの厚さを有するシリコーンの減衰層を備えた圧電結晶として用いられた。シミュレーション(試験)は、以下に従って実施された。
【0032】
衝突試験:STANAG 4370、AECTP 300(第3版)、方法403、手順3、図A-1
落下試験:STANAG 4370、AECTP 300(第3版)、方法414、手順1
振動試験:STANAG 4370、AECTP 400(第3版)、方法401、手順3、図B-1
【0033】
藪の無発火試験:MIL-STD 331球状物が兵器とターゲットとの間の藪を通して発射され得ることを検証するために、標準試験が実施された。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】減衰層のない圧電結晶の電気出力電圧信号を示す。
図2】シリコーンの減衰層に埋め込まれた圧電結晶の電気出力電圧信号を示す。
図3】圧電結晶がシリコーンの減衰層に埋め込まれた配置に関して、経時的に積分された電気出力電圧信号を示す。
図4】信管構造内に位置決めされた圧電結晶を備える発射体を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、圧電電圧のシミュレーションされた生データを様々なターゲットタイプについて示す。X軸は時間(秒)を示し、Y軸は電圧(ボルト)を示す。ここで、電圧は、約0.05msの期間の後で立ち上がり始める。その時、衝撃波が、(減衰層を備えない)圧電結晶によって、ターゲットに衝突する砲弾の機械構造を介して検知される。圧電センサにおける機械的運動によって、圧電センサから電流が出力される。電流は、キャパシタ及び電流によって充電されるように配置された他の電気部品を充電する。キャパシタは、信管の電子機器の論理装置及び/又はプロセッサ装置に電気的に接続される。したがって、圧電センサからの信号は、信号を解析する信管のプロセッサに伝送される。信号は、立ち上がり時間を含む時間及び振幅と、経時的な電圧の振幅及び積分とに関して解析される。経時的な電圧の積分は、経時的に増加する、生成された電気エネルギに対応する。発射体が藪に衝突する際、電気エネルギは、生成された電気エネルギが初期に増加した後、減少中である。図1に認められるように、藪への衝突8が圧電結晶において短いが高いピークを創出する一方で、5°の角度での鋼材ターゲットへの衝突9は、ピークの振幅がより低い信号をもたらすが、経時的な発射体の遅延を反映する信号ももたらす。数字10は、鋼材ターゲットへの衝突8の減速を示している。
【0036】
図2は、5°の角度で藪及び鋼材ターゲットに衝突する圧電電圧信号のシミュレーションされたデータを示す。圧電結晶は、0.8mmの厚さを有するシリコーンの減衰層に埋め込まれている。Y軸は、アナログ・デジタル変換器(ADC)が与えるデジタル基準値に対応する。0は0Vに対応し、255はADCの基準値(この場合には2.3V)に対応する。異なる数字は以下の衝突を表す。
【0037】
藪11(その信号は、鋼材ターゲット14への衝突と比べてかなり低減されている)。シリコーン埋込圧電結晶の信号は、藪の信号が鋼材ターゲットへの衝突後の信号よりも高いピークを有する図1の非埋込圧電信号と比較されるべきである。信号12は、未だ鋼材ターゲットに到達していない自由飛翔中の砲弾を表す。信号13は、鋼材ターゲットへの砲弾のフィンの衝突を表す(弾着角度5°)。ピーク14は、弾体による鋼材ターゲットへの衝突を表す。信号15は、跳ね返って砂山(信号16によって表される)に向かって自由飛翔中の砲弾を表し、砲弾はその砂山で止まる。図2はシリコーン層のフィルタリング効果を明確に示しており、特に藪を通過した後、かなり低減された信号がもたらされている。
【0038】
図3は、積分された圧電電圧のシミュレーションされたデータを示す。図1と同じ圧電結晶が用いられているが、図3においては、圧電結晶の表面の周囲に取り付けられたシリコーン減衰層が備えられている。図3に図示される圧電信号はフィルタ処理されている。すなわち、あるレベルを上回る周波数は、シリコーン層によってカットオフされて積分されている。また、5°の弾着角度での鋼材ターゲットへの衝突後の遅延を示す図3のグラフは、経時的に積分されている。入力信号は、発射体が爆発するべきか否かをトリガする所定の閾値を有する信管電子機器に伝送されている。図3では、信号が積分されているので、所望のターゲットの信号が、藪、すなわち所望でないオブジェクトと判別され得る。したがって、経時的に信号を積分するこの方法は、例えば砲弾が藪を通過するときに過早爆発のリスクを冒すことなく、爆発がいつ起こるべきであるかの閾値電圧信号の安全な設定を可能にする。閾値の設定は、爆発がどの最小レベルで開始されるべきであるかを決定するであろう。同一の減衰された圧電結晶の閾値電圧は、装置、例えば砲弾の機械構造に応じて変化するであろう。
【0039】
図4は、矢印1によって示される方向に飛翔中の発射体2を示す。発射体2は、ブースタチャージ3及び信管構造4を備えている。信管構造4においては、シリコーン層からなる減衰構造5(正確な縮尺ではない)が圧電結晶6に接合されている(図4には結晶6の下の減衰層5のみが示されている。減衰層5は、代替的な実施形態においては、結晶6を完全に包囲してもよい)。圧電結晶6は境界面7を介して(及び包囲する減衰層5を介して)発射体本体と接続しており、その発射体本体から衝突時の衝撃波が圧電結晶6に伝送される。
図1
図2
図3
図4