(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】振動を使用して可動面の上に粉末を分配するためのデバイスを含む積層造形装置
(51)【国際特許分類】
B22F 12/50 20210101AFI20230501BHJP
B28B 1/30 20060101ALI20230501BHJP
B29C 64/153 20170101ALI20230501BHJP
B29C 64/205 20170101ALI20230501BHJP
B29C 64/321 20170101ALI20230501BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20230501BHJP
【FI】
B22F12/50
B28B1/30
B29C64/153
B29C64/205
B29C64/321
B33Y30/00
(21)【出願番号】P 2020545629
(86)(22)【出願日】2019-02-25
(86)【国際出願番号】 FR2019050427
(87)【国際公開番号】W WO2019166727
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2021-12-15
(32)【優先日】2018-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】517160927
【氏名又は名称】アッドアップ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】カルラヴァン セドリック
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルラント ギレス
【審査官】祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-524476(JP,A)
【文献】国際公開第2017/015241(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0190112(US,A1)
【文献】特開平02-251389(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 12/50
B22F 3/16
B29C 64/153
B29C 64/205
B29C 64/321
B33Y 30/00
B22F 3/105
B28B 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末床堆積に基づく積層造形装置(10)であって、
造形エンクロージャ(12)と、該造形エンクロージャの内側に堆積された積層造形粉末の層を選択的に溶融するのに使用される少なくとも1つの熱又はエネルギ源(14)と、前記造形エンクロージャの内側に位置する造形ゾーン(20)の
周りで変位することができる少なくとも1つの移動可動粉末受容面(28)と、該移動可動受容面から前記造形ゾーンに粉末を拡げることを可能にする粉末拡張デバイス(30)と、前記移動可動受容面上に粉末を分配するためのデバイス(32)とを備え、
前記粉末分配デバイスが、粉末供給部(40)にリンクされたバッファタンク(38)と、前記移動可動受容面の上方に位置する粉末分配点(P1)に前記バッファタンクをリンクする分配ダクト(42)とを備え、
前記分配ダクト(42)が、該分配ダクト内のかつ前記バッファタンクから前記粉末分配点までの粉末の連続流れを発生させるために該分配ダクトを振動させることを可能にする振動デバイス(44)に装着されている、
ことを特徴とする粉末床堆積に基づく積層造形装置(10)。
【請求項2】
前記バッファタンクは、前記分配ダクト
(42
)に剛的に固定される、
請求項1に記載の粉末床堆積に基づく積層造形装置(10)。
【請求項3】
前記バッファタンクは、可撓性ダクト(46)によって前記粉末供給部にリンクされている、
請求項1又は2に記載の粉末床堆積に基づく積層造形装置(10)。
【請求項4】
前記粉末供給部は、主タンク(50)からの受容手段(48)を備えている、
請求項3に記載の粉末床堆積に基づく積層造形装置(10)。
【請求項5】
ダイヤフラム制御弁(52)が、前記粉末供給部(40)と前記可撓性ダクト(46)の間に挿入されている、
請求項3又は4に記載の粉末床堆積に基づく積層造形装置(10)。
【請求項6】
前記振動デバイス(44)及び前記分配ダクト(42)は、調節可能傾斜を有する支持体(60)に装着されている、
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の粉末床堆積に基づく積層造形装置(10)。
【請求項7】
前記粉末分配デバイス(32)は、前記分配ダクト
(42
)の内側に流量調整器(62)を備えている、
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の粉末床堆積に基づく積層造形装置(10)。
【請求項8】
前記流量調整器は、前記分配ダクト
(42
)の内側で回転するように可動に装着されたシャッター(64)の形態を取る、
請求項7に記載の粉末床堆積に基づく積層造形装置(10)。
【請求項9】
前記バッファタンク(38)は、前記分配ダクト(42)のセクションよりも大きいセクションを有する、
請求項1ないし8のいずれか1項に記載の粉末床堆積に基づく積層造形装置(10)。
【請求項10】
前記バッファタンク(38)と前記分配ダクト(42)の間の接合セクション(S1)が、長円形態を有する、
請求項9に記載の粉末床堆積に基づく積層造形装置(10)。
【請求項11】
前記粉末分配デバイス(32)は、前記分配ダクト(42)の内側に置かれた粉末検出器(68)を備えている、
請求項1ないし10のいずれか1項に記載の粉末床堆積に基づく積層造形装置(10)。
【請求項12】
前記分配ダクト(42)は、積層造形装置の前記造形エンクロージャの壁(70)を通過し、前記粉末分配点(P1)は、前記造形エンクロージャ(12)の内側に位置し、前記バッファタンク(38)は、前記造形エンクロージャの外側に位置する、
請求項1ないし11のいずれか1項に記載の粉末床堆積に基づく積層造形装置(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザビーム及び/又は電子ビーム及び/又はダイオードのような1又は2以上のエネルギ源又は熱源を使用する粉末ベースのこの粉末の粒子の溶融を通した積層造形の分野にある。
【0002】
より具体的には、本発明は、粉末床堆積に基づく積層造形の分野にあり、その目的は、粉末床堆積によって積層造形装置の内側に積層造形粉末を積層するのに使用されるデバイスに粉末を供給することである。
【0003】
更に具体的には、本発明の目的は、移動可能粉末受容面に安定的な且つ制御された粉末流量を与えることである。
【背景技術】
【0004】
WO2017/108868は、作動平面と粉末の層が交互に連続して分散されて選択的に固められる少なくとも1つの作業ゾーンとがその内側にある造形エンクロージャを含む粉末床堆積に基づく積層造形装置を説明している。
【0005】
造形に有用な粉末の様々な層を生成するために、WO2017/108868に説明される機械は、作業ゾーンの上方に変位することができるローラ又はスクレーパのような粉末拡張デバイスと、粉末受容引き出し及び粉末注入器を含む作動平面上に粉末を堆積させるためのデバイスとを含む。引き出しは、引き出しが粉末拡張デバイスの軌道から出て延びる格納位置と引き出しが粉末拡張デバイスの軌道の中に少なくとも部分的に延びる展開位置との間で作動平面に対して並進移動可能である。注入器は、粉末受容引き出しの上方にこの引き出しがその格納位置とその展開位置の間で変位される時に粉末をこの受容引き出し上に分配するように配置される。
【0006】
このWO2017/108868はまた、注入器が例えば可撓性タイプのカプリングを通じて粉末タンクに接続されるようにかつ投与ホッパがタンクと注入器の間に挿入されることが可能であるように規定している。
【0007】
しかし、このWO2017/108868は、投与ホッパの正確な配置も可動引き出し上に粉末を分配することを可能にする手段の正確な配置も指定していない。
【0008】
ここで、WO2017/108868に与えられるような移動可能粉末受容面を用いると、注入器の出力で制御されて引き出しの移動中に安定である粉末流量を送出することが必要である。
【0009】
実際に、引き出し上に堆積された粉末ビーズの品質は、造形された部品の品質に直結する。
【0010】
引き出しの移動中に粉末流量が弱まる場合に、作業ゾーン上に分散された粉末の一部の層は、各スポットで不十分である厚みを有することになり、これは、欠陥を有する又は適合しない部品の生成に至ることになる。
【0011】
同じく、粉末流量が引き出しの移動中の全て又は一部で大きすぎる場合に、ある一定の量の粉末は、無意味に過剰に堆積されることになり、かつ既に大量の粉末を増加させることになり、これは、固まらず、かつプロテーゼの造形のような一部の用途では溶融されて再び粉末として再調整されなければ再使用することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、積層造形装置のエンクロージャの内側に位置する少なくとも1つの点でかつ特に作業ゾーンの近くに位置する移動可能粉末受容面上で安定かつ制御された粉末流量を送出することができる粉末分配デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的のために、本発明の主題は、粉末床堆積に基づく積層造形装置であり、この積層造形装置は、造形エンクロージャと、造形エンクロージャの内側に堆積された積層造形粉末の層を選択的に溶融するのに使用される少なくとも1つの熱又はエネルギ源とを含む。これに加えて、積層造形装置は、造形エンクロージャの内側に位置する造形ゾーンの近くに変位することができる少なくとも1つの移動可動粉末受容面と、移動可動受容面から造形ゾーンに粉末を拡げることを可能にする粉末拡張デバイスと、移動可動受容面上に粉末を分配するためのデバイスとを含む。
【0015】
本発明により、粉末分配デバイスは、粉末供給部にリンクされたバッファタンクと、移動可動受容面の上方に位置する粉末分配点にバッファタンクをリンクする分配ダクトとを含む。
【0016】
更に本発明により、分配ダクトは、分配ダクトに及びバッファタンクから分配点まで粉末の連続流れを発生させるように分配ダクトを振動させることを可能にする振動デバイス上に装着される。
【0017】
積層造形粉末を分配するための振動の使用は、それが、粉末粒子又は集団によって閉塞又は破損されやすい例えば回転溝付きローラ又は並進可動プレートのような移動部品の使用を回避することを可能にするので有利である。
【0018】
振動の振幅及び周波数を変調することにより、振動デバイスは、例えば溝付きローラの場合に当て嵌まると考えられるような分配デバイス内の部品を交換する必要なしにバッファタンクと分配点の間の粉末の連続流れの流量及び従って移動可動受容面上に堆積される粉末の量を容易かつ迅速に修正することを可能にする。
【0019】
更に振動の振幅及び周波数を変調することにより、分配デバイスは、異なる粒径の粉末に容易かつ迅速に適応させることができる。
【0020】
最後に、分配デバイスはいずれの回転又は並進移動部品も含まないので、例えば、例えば異なる組成の及び/又は異なる粒径の粉末の別のバッチと共に積層造形装置を使用したい時に、分配デバイスの洗浄が簡素化される。
【0021】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の説明から明らかになるであろう。非限定的な例として与えるこの説明は、添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明による積層造形装置の概略正面図である。
【
図2】本発明による積層造形装置の概略平面図である。
【
図3】本発明による積層造形装置の粉末分配デバイスの第1の変形の側面図である。
【
図4】本発明による積層造形装置の粉末分配デバイスの第2の変形の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、粉末床堆積に基づく積層造形装置に関する。粉末床堆積に基づく積層造形は、互いに重ね合わされた積層造形粉末の異なる層の選択的溶融によって1又は2以上の部品が造形される積層造形方法である。粉末の第1の層は、プレートのような支持体上に堆積され、次に、造形される1又は複数の部品の第1の水平セクションに従って1又は2以上のエネルギ源又は熱源を使用して選択的に焼結又は溶融される。次に、溶融又は焼結したばかりの粉末の第1の層上に粉末の第2の層が堆積され、粉末のこの第2の層は、その順番で選択的に焼結又は溶融され、造形される1又は複数の部品の最終水平セクションの生成に有用な粉末の最終層まで同様に続く。
【0024】
図1が示すようにかつ粉末床堆積による部品の積層造形を可能にするために、本発明による積層造形装置10は、造形エンクロージャ12と、造形エンクロージャ12の内側に堆積された積層造形粉末の層を1又は2以上のビーム16を通じて選択的に溶融するのに使用される少なくとも1つの熱又はエネルギ源14とを備えている。
【0025】
1又は複数の熱又はエネルギ源14は、1又は2以上の電子ビーム及び/又は1又は2以上のレーザビームを生成することができる供給源の形態を取ることができる。これらの供給源は、例えば、1又は2以上の電子銃及び/又は1又は2以上の発光ダイオードである。選択的溶融及び従ってエネルギビーム又は熱ビーム16の変位を可能にするために、各供給源14は、1又は複数のビーム16を変位かつ制御するための手段を備えている。
【0026】
造形エンクロージャ12は、密封されたエンクロージャである。この造形エンクロージャ12の壁は、エンクロージャの内側で起こっている造形を観察することを可能にする窓を備えているのがよい。この造形エンクロージャ12の少なくとも1つの壁は、保守又は洗浄作動のためのエンクロージャの内部へのアクセスを与える開口を含み、この開口は、造形サイクル中に扉を使って堅く閉じることができる。造形サイクル中に、積層造形粉末の酸化を避けるために及び/又は爆発のリスクを避けるために、造形エンクロージャ12は、窒素のような不活性ガスで充填することができる。造形エンクロージャ12は、酸素の侵入を避けるために僅かに過剰な圧力下に維持することができ、又は粉末を焼結又は溶融させるためにエンクロージャの内側で電子ビームが使用される時に真空に維持することができる。
【0027】
造形エンクロージャ12の内側では、本発明による積層造形装置10は、水平作動平面18と、造形ジャケット22及び造形プレート24によって定められた少なくとも1つの造形ゾーン20とを備えている。ジャケット22は、作動平面18の下を垂直に延び、それは、作動平面18に現われる。造形プレート24は、作動シリンダのようなアクチュエータ26の作用下で造形ジャケット22の内側で垂直に摺動する。
【0028】
造形される1又は複数の部品の積層造形に有用な粉末の異なる層を生成するために、本発明による積層造形装置は、造形エンクロージャの内側に位置する造形ゾーン20の近くに変位されることが可能である少なくとも1つの移動可動粉末受容面28と、移動可動粉末受容面28から造形ゾーン20に粉末を拡げることを可能にする粉末拡張デバイス30と、移動可動粉末受容面28上に粉末を分配するためのデバイス32とを備えている。
【0029】
分散デバイス30は、キャリッジ40上に装着されたスクレーパの又はローラ34の形態を取る。このキャリッジ40は、造形ゾーン20の上方で水平方向D40に並進可動であるように装着される。この目的のために、キャリッジ40は、例えばレール41上に装着される。水平並進によって駆動されるように、キャリッジ40は、電動化されるか又は造形エンクロージャ12の内側又は好ましくは外側に位置付けられたモータによってかつプーリ及びベルトのような運動伝達システムによって運動を開始することができる。
【0030】
好ましくは、本発明による積層造形装置では、粉末受容面28は、造形ゾーン20の周りで移動可能であるように、かつモータのようなアクチュエータ36によって造形ゾーン20の周りで運動を開始するように装着される。
【0031】
造形ゾーンの周りで移動可能であるように装着されることにより、受容面28は、造形ゾーン20の周りのバルクの低減を提供する。更に、造形ゾーンの周りの受容面の可動性は、造形ゾーン20の前のどこからでも粉末を取り除くことを可能にし、これは、分散デバイス30がキャリッジ40の並進の水平線D40の2つの反対方向に作動することを可能にする。
【0032】
好ましくは、受容面28は、造形ゾーン20の周りで回転移動可能であるように装着され、かつアクチュエータ36によって造形ゾーン20の周りで回転するように駆動される。
【0033】
より詳細には、受容面32は、垂直軸32の周りで回転移動可能であるように装着され、かつアクチュエータ36によってこの垂直軸の周りで回転するように駆動される。
【0034】
回転部品を造形するために、又は電子ビームによる積層造形の観点で真空に対する造形ジャケット22の機械的強度を改善するために、
図2に示すように、造形ジャケット22は、好ましくは円筒形であり、造形ゾーン20は、好ましくは円形である。
【0035】
造形ジャケット22は、好ましくは垂直中心軸D22の周りで円筒形であるので、受容面32の回転の垂直軸D32は、円筒形造形ジャケット22の及び造形ゾーン20の垂直中心軸D22と一致する。
【0036】
同じく、移動可動受容面28は、好ましくは環状であり、それは、その全円周にわたって造形ゾーン20を外側から取り囲む。更に好ましくは、移動可動受容面28は、その回転垂直軸D32の周りに環状である。
【0037】
移動可動受容面28のこの環状構成は、造形ゾーン20の周りのこの面のバルクを可能な限り最小にすることを可能にする。
【0038】
移動可動受容面28上に粉末を堆積させるために、本発明による積層造形装置は、移動可動受容面28上に粉末を分配するためのデバイス32を含む。
【0039】
本発明によりかつ
図2が模式的に示すように、粉末分配デバイスは、粉末供給部40にリンクされたバッファタンク38と、バッファタンク38を移動可動受容面28の上方に位置する粉末分配点P1にリンクする分配ダクト42とを含む。
【0040】
更に本発明によりかつ
図3及び4が示すように、分配ダクト42は、分配ダクト内の及びバッファタンク38から粉末分配点P1への粉末の連続流れを発生させるために分配ダクトを振動させることを可能にする振動デバイス44に装着される。
【0041】
好ましくは、バッファタンク38は、分配ダクト42に剛的に固定される。すなわち、振動デバイス44は、バッファタンク38を振動させて粉末の流れを促進し、かつバッファタンク38の内側の粉末アーチの生成を回避することも可能にする。
【0042】
より詳細には、バッファタンク38は、分配ダクトの上流端E1に固定され、粉末分配点は、分配ダクトの他方の下流端E2に位置する。
【0043】
粉末供給部40を分配ダクト42の及びバッファタンクの振動から隔離するために、バッファタンク38は、例えばベローズタイプの可撓性ダクト46によって粉末供給部にリンクされる。この可撓性ダクトは、好ましくは、クロロプレンベースのゴム状組成物に生成され、良好な真空気密を提供する。
【0044】
可撓性ダクト46内の重力による粉末の流れを助けるために、粉末供給部40は、バッファタンク38の上方に配置される。同じ目的のために、可撓性ダクトは、好ましくは垂直線D46に沿って配置される。
【0045】
粉末供給部40は、自動化された粉末供給回路にリンクすることができるが、好ましくは、粉末供給部は、主タンク50の受容手段48を含む。これらの受容手段48は、例えばフランジの形態を取る。
【0046】
主タンク50は、積層造形サイクル全体に対して十分である量の粉末を閉じ込めるように例えば数十リットルの大きい容量を有する。主タンク50と比較して、バッファタンク38は、僅か数リットルのより少ない容量を提供する。これは、大量の粉末を振動させることを回避し、従って、振動デバイス44の過大寸法を回避することを可能にする。
【0047】
その少ない容量に起因して、バッファタンク38は、定期的に粉末を再供給しなければならない。この目的のために、粉末供給部40と可撓性ダクト46の間にダイヤフラム制御弁52が挿入される。より詳細には、ダイヤフラム制御弁52は、中空本体53と、粉末供給部40と可撓性ダクト46の間で粉末の通過を遮断する又は自由にするように延長又は後退する内部ダイヤフラム54とを含む。内部ダイヤフラム54は、例えば、中空本体53とこの内部ダイヤフラムの間に位置する密封容積に閉じ込められた1又は複数の気体の圧力を変えることによって延長又は後退する。
【0048】
ダイヤフラム制御弁52の使用は、それが、運動を開始した時に粉末粒子によって閉塞され易いバタフライタイプの遮断部品を含まないので、粉末の流れを調整するのに特に適している。
【0049】
バッファタンク38からの粉末の再供給を最も良く管理するために、バッファタンク38は、少なくとも1つの低粉末レベル検出器58を装備している。好ましくは、バッファタンク38は、高粉末レベル検出器60と低粉末レベル検出器58を装備する。ダイヤフラム制御弁52の作動及びより好ましくはその開放は、バッファタンク38に装備された1又は複数の粉末レベル検出器によって伝達された情報に従属する。
【0050】
振動デバイス44によって発生する振動は、この分配ダクト42が水平に配置された場合でさえも、分配ダクト42内の及びバッファタンク38から分配点P1への粉末の連続流れを発生させることを可能にする。しかし、
図4が示すように、振動デバイス44及び分配ダクト42は、調節可能傾斜を有する支持体60上に装着することもできる。調節可能傾斜を有するこの支持体60は、例えば、他よりも流動性の低い積層造形粉末の流れを促進するためにバッファタンク38を分配点P1の上方に置くように分配ダクト42を傾けることを可能にする。
【0051】
異なる試験に続いて、水平に対して10°の分配ダクト42の傾斜が粉末の流れの流量及び分配時のその安定性に関して良好な妥協点を提供することが明らかになった。
【0052】
振動の使用と相まって、分配ダクト42の傾斜は、バッファタンク38と分配点P1の間の粉末の流れの流量及び安定性の最適制御及び従って移動可動受容面28上に堆積された粉末ビーズの最適品質をもたらすことができる。
【0053】
振動デバイス44は、例えば、分配ダクト42及び従ってバッファタンク38と振動器84とがそれに固定されたプラットフォーム82の形態を取る。振動器84は、例えば、質量がそのステム上に装着された複動シリンダの形態を取る。プラットフォーム82は、フレーム90に固定された2つの可撓性ブレード86、88上に装着され、このフレーム90は、造形エンクロージャから及びより一般的に機械のシャーシから振動的に分離される。
【0054】
好ましくは、振動器84は、プラットフォーム82の平面P82に対して及び従って分配ダクト42の長手線D42に対して25°の角度αだけ傾斜した線D84に沿って装着され、分配ダクト42は、プラットフォームの平面P82と平行に装着される。すなわち、振動デバイス44によって生成された振動は、分配ダクト42の長手線D42に対して25°だけ傾斜した線内に延びる。
【0055】
更に好ましくは、振動器84によって発生した振動は、約2ミリメートルのピーク間振幅、すなわち、中心点のいずれの側にも約1ミリメートルの振幅を有する。
【0056】
最後に、振動器84によって発生した振動は、1Hz~150Hzの低周波数に位置する。例えばチタンから構成された低密度粉末に対して、使用する振動は、約15Hzに位置する周波数を有する。例えばステンレス鋼から構成されるより密度の高い粉末に対して、使用する振動は、約35Hzに位置する周波数を有する。従って、理想的には、振動器84によって発生する振動は、10Hzと50Hzの間に位置する。
【0057】
調節可能傾斜を有する支持体60の有無に関わらず、振動デバイス44によって発生する振動は、バッファタンク38と分配点P1の間の粉末の流れの流量及び安定性を適度に制御することを可能にすることができる。しかし、非常に流動性の高い粉末を分配するために又はバッファタンク38と分配点P1の間の粉末の流れの流量及び安定性を更により良く制御するために、粉末分配デバイス32は、分配ダクト42の内側に流量調整器62を備えているのがよい。
【0058】
この流量調整器62は、好ましくは、分配ダクト42の内側に回転移動可能であるように装着されたシャッター64の形態を取る。シャッター64の傾斜を変えることにより、分配ダクト42の内部セクションが局所的に変化し、これは、バッファタンク38と粉末分配点P1の間の分配ダクト42内の粉末の流れの最大流量を増減させることを可能にする。
【0059】
有利なことに、シャッター64の傾斜は、作動シリンダのようなアクチュエータ66を通じて制御することができる。
【0060】
粉末分配中にシャッター64の傾斜を変化させることは、それが実行可能であるとしても、その計画はないことに注意しなければならない。一方、試験を通してシャッターの最良の位置、言い換えれば、分配される粉末の流れの最も良い制御を可能にする位置を見出し、かつ積層造形サイクルの全体を通して及び従って積層造形サイクル中に移動可動受容面28上で実行される各粉末分配サイクル中にこの位置を保持することが計画される。
【0061】
分配ダクト42の上流端E1が粉末で充填されることを保証するために、バッファタンク38は、分配ダクト42のセクションよりも大きいセクションを有する。より具体的には、バッファタンクの最小セクションは、分配ダクト42の最大セクションよりも約2倍大きい。
【0062】
好ましくは、バッファタンク38は、先細り形態であり、かつそのより小径のベースによって分配ダクト42にリンクされる。好ましくは、分配ダクト42は、例えば金属で作られた円筒チューブの形態を取る。同じく、バッファタンク38のより小径のベースの内部セクションは、分配ダクトを形成するチューブの内部セクションよりも約2倍大きい。
【0063】
バッファタンク38の底部での粉末アーチの出現を回避し、かつ粉末の流れに対する振動の作用を助けるために、バッファタンク38と分配ダクト42の間の接合セクションS1は、長円形態を有する。
【0064】
バッファタンク38は、先細り形態のものであり、かつそのより小径のベースによって分配ダクト42にリンクされるので、バッファタンク38は、そのより大径のベースによって可撓性ダクト46にリンクされる。バッファタンク38のより大径のベースの内部セクションと、可撓性ダクト46、ダイヤフラム制御弁52、及び粉末供給部40の内部セクションとは、分配ダクトを形成するチューブの内部セクションよりも約3倍大きい。
【0065】
好ましくは、分配ダクト42を形成するチューブは、4センチメートルよりも大きいか又はそれに等しい直径を有する円形内部セクションを有する。この直径未満では、ある一定の粉末を用いて流れ問題が生じる可能性がある。
【0066】
好ましくは、粉末供給部40、ダイヤフラム制御弁52、可撓性ダクト46、及びバッファタンク38のより大きいベースは、粉末分配デバイスのこれらの構成要素の内側のあらゆるアーチを粉砕することを意図した手段、例えば、攪拌デバイス又は振動を設けることを必要とせずに粉末アーチの出現を回避するために直径の10センチメートルよりも大きいか又はそれに等しい直径の円形内部セクションを有する。粉末供給部40及びダイヤフラム制御弁52は、これらの構成要素が振動を受けず、これが粉末アーチの出現を回避することを可能にすると考えられるので、より大径の内部セクションを有する。同様に、可撓性ダクト46は、このダクトの材料が振動を吸収するので、より大径の内部セクションを有する。
【0067】
可撓性ダクト46での粉末アーチの出現のあらゆるリスクを回避するために、この可撓性ダクト46は、数十センチメートル及び好ましくは僅か5センチメートルの長さを有する。
【0068】
一例として、分配ダクト42は、約800ミリメートルの長さを有し、この長さは、造形エンクロージャ12の内側でレール41の下を通過するのに必要な距離により、及び造形エンクロージャ12の外側の振動デバイス44のバルクによって規定される。
【0069】
バッファタンク38と粉末分配点P1の間に粉末の流れが実際に存在することを保証するために、粉末分配デバイス32は、分配ダクト42の内側に置かれた粉末検出器68を含むことができる。理想的には、この粉末検出器68は、分配ダクト42を形成するチューブに沿って中程に配置される。分配ダクトの内側に流量調整器62が設けられる場合に、粉末検出器68は、調整器の下流に設けられる。
【0070】
好ましくは、ダクト42内の粉末高レベル60、粉末低レベル58、及び粉末存在68検出器は、金属粉末又は例えばセラミック粉末のような非金属粉末の検出を可能にする高周波容量センサの形態を取る。
【0071】
本発明による機械では、移動可動受容面28は、好ましくは、造形エンクロージャ12の内側に位置し、分配点P1は、好ましくは、移動可動受容面28の上方で、又は移動可動受容面28が、それが造形ゾーンの近くに位置決めされた時に通過する点の上方で造形エンクロージャの内側に位置する。
【0072】
粉末分配点P1は、好ましくは、造形エンクロージャ12の内側に位置するので、分配ダクト42は、機械の造形エンクロージャ12の壁70を通過し、バッファタンク38は、造形エンクロージャ12の外側に位置する。より詳細には、分配ダクトの下流端E1だけが造形エンクロージャ12の内側に存在し、振動デバイス44、可撓性ダクト46、ダイヤフラム制御弁52、粉末供給部40、及び主タンク50は、好ましくは、造形エンクロージャ12の外側に配置される。
【0073】
分配ダクト42とこのダクトが通過するエンクロージャの壁70との間の振動の伝達を避けるために、同じく造形エンクロージャの密封気密性を維持するために、例えばベローズ形態の可撓性スリーブ72が、壁70を分配ダクト42にリンクする。より詳細には、可撓性スリーブ72は、エンクロージャの壁70に作られた開口74を分配ダクト42の周囲に装着されたクラウンリング76にリンクする。
【0074】
有利なことに、可撓性スリーブ72は、調節可能傾斜を有する支持体60による分配ダクト42の傾斜も可能にする。
【0075】
作動平面18及び移動可動受容面28の上方では、分配点P1は、分配ダクト42の下流端E2によって形成される。この下流端は、分配ダクト42の下流端E2のバルクを低減するために、かつ特に分配ダクト42の下流端E2がキャリッジ40のレール41の下を通過することを可能にするために、数センチメートルの長さにわたって一定である第1のセクション縮小部78を含む。
【0076】
次に、分配ダクト42の下流端E2は、粉末分配点P1を形成する開口O1まで分配ダクト42の内部セクションを徐々に縮小する第2のセクション縮小部80を含む。この第2のセクション縮小部80は、移動可動受容面28を超えて粉末を散布することを避けるために粉末噴流を壊すことを可能にする。更に、この第2のセクション縮小部80は、積層造形のための電子ビームの使用によって発生するX線から分配された粉末を防護するために厚み数ミリメートルの金属部品の形態を取る。
【0077】
好ましくは、粉末分配点P1を形成する開口O1は、下方に向けられ、すなわち、作動平面18及び移動可動受容面28に面している。この向きは、移動可動受容面28の上への粉末の流れを助け、かつ移動可動受容面28を超える粉末の散布を制限する。
【0078】
粉末分配点P1は、好ましくは一意的である。しかし、造形エンクロージャ12内にいくつかの造形ゾーン20が存在する場合に、積層造形装置は、好ましくは、本発明により、造形ゾーン及び移動可動受容面毎に1つの分配デバイス及び1つの粉末分配点のいくつかの移動可動受容面及び従って異なる粉末分配デバイス32に属するいくつかの粉末分配点を含むことができる。
【0079】
更に好ましくはかつ受容面28が移動可能であることに起因して、粉末分配点P1は、造形エンクロージャ12の内側に固定される。
【0080】
粉末分配点P1の一意性は、それが全体的に分配デバイス32の及び機械10のバルクを低減することを可能にするので有利である。
【0081】
有利なことに、粉末分配中に移動可動受容面28の変位の速度を変えることにより、造形ゾーン20の近くに堆積される粉末ビーズの高さを変えることが可能である。これは、例えば円形造形ゾーン20の場合でのようにキャリッジ40の並進の水平線D40に少なくとも2つの異なる長さを有する造形ゾーン20に対して移動可動受容面28上に堆積される粉末の量を最も良く適合させることを可能にする。
【0082】
粉末ビーズが分配点P1を通じて移動可動受容面28上に堆積された状態で、分散デバイス30は、円形又は多角形とすることができる造形ゾーン20にわたって粉末を拡げるために並進される。
【0083】
好ましくは、主タンク50、粉末供給部40、ダイヤフラム制御弁52の本体53、バッファタンク38、及び分配ダクト42は、良好な真空気密性を保持する材料であるステンレス鋼で生成される。更に、主タンク50、粉末供給部40、ダイヤフラム制御弁52の本体53、バッファタンク38、及び分配ダクト42は、金属粉末を磁化させないようにステンレスかつ非磁性鋼で生成される。
【0084】
理想的には、粉末分配点P1は、移動可動受容面28から約1センチメートルに位置する。この高さは、移動可動受容面28上の高さ数ミリメートルの粉末ビーズの堆積を可能にし、かつ移動可動受容面28を超えて粉末を散布することを回避するのに十分である。