(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】風力タービンブレード回転装置-ブレード安定システムを有するストラップ付先端装置
(51)【国際特許分類】
F03D 13/40 20160101AFI20230501BHJP
【FI】
F03D13/40
(21)【出願番号】P 2020554128
(86)(22)【出願日】2019-04-02
(86)【国際出願番号】 US2019025442
(87)【国際公開番号】W WO2019195331
(87)【国際公開日】2019-10-10
【審査請求日】2022-03-31
(32)【優先日】2018-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520005303
【氏名又は名称】ティーピーアイ コンポジッツ,インコーポレーティッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウユヌク,メーメット
(72)【発明者】
【氏名】ウナル,フルカン
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/131515(WO,A1)
【文献】特開2010-216317(JP,A)
【文献】特表2015-522114(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0008147(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0356113(US,A1)
【文献】国際公開第2013/092597(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/048719(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02584191(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 13/40
F03D 1/00
F03D 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
その中にブレードを受け付けるように構成され、外面に少なくとも1つのガイドを有するブレードハウジングと、
矩形状の基台と、
前記基台の第1側方に配置され
、一対の間隔をあけた柱を有しており、各柱が下端及び上端を有し、前記上端が第1ヒンジ点を画定している第1調整可能フレームと、
前記基台の第2側方に配置され
、一対の間隔をあけた柱を有しており、各柱が下端及び上端を有し、前記上端が第2ヒンジ点を画定している第2調整可能フレームと、
前記調整可能フレーム間に配置され
、少なくとも1つのヒンジ点にわたる少なくとも1つの調整可能ストラップと、
を備え
る風力タービンブレード懸架装置であって、
前記装置は、展開位置及び折り畳み位置を有し、前記装置が前記展開位置にあるとき、前記第1ヒンジ点及び前記第2ヒンジ点は前記矩形状の基台の中間点の上に配置され、前記装置が前記折り畳み位置にあるとき、前記第1ヒンジ点及び前記第2ヒンジ点は前記基台の縁に近接して配置され、
前記少なくとも1つのストラップは、前記ハウジングの前記外面の前記ガイドを通じて延びて、前記ブレードを懸架する、風力タービンブレード懸架装置。
【請求項2】
前記調整可能フレームは、非線形形状を有する、請求項1に記載の風力タービンブレード懸架装置。
【請求項3】
前記調整可能フレームは、伸縮自在に前記
少なくとも1つの調整可能ストラップの高さを調整するように構成されている、請求項1に記載の風力タービンブレード懸架装置。
【請求項4】
各調整可能フレームは、下端及び上端を有する一対の間隔をあけたストラットを有し、前記上端に近接する隣接ストラット間に延びる交差ビームを有する、請求項1に記載の風力タービンブレード懸架装置。
【請求項5】
前記
少なくとも1つの調整可能ストラップは、前記ブレードハウジングの表面全体未満の周囲まで延びている、請求項1に記載の風力タービンブレード懸架装置。
【請求項6】
前記
少なくとも1つの調整可能ストラップは、前記ブレードハウジングの前縁周囲まで延びている、請求項1に記載の風力タービンブレード懸架装置。
【請求項7】
前記ハウジングは、前記ブレードを収容するための開構成と、閉構成とを有する複数ピースコンポーネントとして構成されている、請求項1に記載の風力タービンブレード懸架装置。
【請求項8】
前記
少なくとも1つの調整可能ストラップは、前記ブレードの高さを変更するために調整可能である、請求項1に記載の風力タービンブレード懸架装置。
【請求項9】
その中にブレードを受け付けるように構成され、外面に少なくとも1つのガイドを有するブレードハウジングと、
矩形状の基台と、
前記基台の第1側方に配置されている
第1の一対の伸縮フレームであって、前記第1の伸縮フレームの各々が下端及び上端を有し、前記上端が第1ヒンジ点を画定している第1の一対の伸縮フレームと、
前記第1の一対の伸縮フレーム間に延びている第1交差ビームと、
前記基台の第2側方に配置されている
第2の一対の伸縮フレームであって、前記第2の伸縮フレームの各々が下端及び上端を有し、前記上端が第2ヒンジ点を画定している第2
の一対の伸縮フレームと、
前記第2の一対の伸縮フレーム間に延びている第2交差ビームと、
前記
矩形状の基台から延びて、前記
第1の伸縮フレーム間に配置され
、少なくとも1つのヒンジ点にわたる少なくとも1つの調整可能ストラップと、
を備え
る風力タービンブレード懸架装置であって、
前記装置は、展開位置及び折り畳み位置を有し、前記装置が前記展開位置にあるとき、前記第1ヒンジ点及び前記第2ヒンジ点は前記矩形状の基台の中間点の上に配置され、前記装置が前記折り畳み位置にあるとき、前記第1ヒンジ点及び前記第2ヒンジ点は前記基台の縁に近接して配置され、
前記少なくとも1つのストラップは、前記ハウジングの前記外面の前記ガイドを通じて延びて、前記ブレードを懸架する、風力タービンブレード懸架装置。
【請求項10】
前記
第1の伸縮フレームは弓形状を有する、請求項
9に記載の風力タービンブレード懸架装置。
【請求項11】
前記ストラップは、前記第1
及び第2の一対の伸縮フレーム間に配置されている、請求項
9に記載の風力タービンブレード懸架装置。
【請求項12】
第2ストラップは、前記第2の一対の伸縮フレーム間に配置されている、請求項
9に記載の風力タービンブレード懸架装置。
【請求項13】
少なくとも1つの伸縮フレームに接続され、
折り畳み位置から
展開位置に延びるアクチュエータをさらに備える、請求項
9に記載の風力タービンブレード懸架装置。
【請求項14】
前記アクチュエータは、前記第1交差ビーム及び前記第2交差ビームに取り付けられている、請求項
13に記載の風力タービンブレード懸架装置。
【請求項15】
フレームに取り付けられている複数のキャスターをさらに備える、請求項
9に記載の風力タービンブレード懸架装置。
【請求項16】
前記
少なくとも1つの調整可能ストラップは、前記ブレードの高さを変更するために調整可能である、請求項
9に記載の風力タービンブレード懸架装置。
【請求項17】
前記ストラップは、前記ブレードの前縁を囲う、請求項
9に記載の風力タービンブレード懸架装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年4月2日出願の米国仮特許出願第62/651,601号、62/651,588号、62/651,586号、及び62/651,581号に対する優先権を主張するものであり、これらの開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
開示された主題は、風力タービンロータブレードを動かすための風力タービンロータブレード取扱いシステム及び装置並びにこのような取扱いシステムの対応する作動方法に関する。
【背景技術】
【0003】
例えば、ブレード型から取り出された後や、型成形後の作業中(例えば、外側ブレード表面研削又はコーティング作業)等において、風力タービンブレードの一部を支持するように作用するカートをはじめとする、風力タービンブレードの製造工程で使用される様々な方法及びシステムが知られている。
【0004】
従来のブレードカートは、ブレードの本体の周りに取り付けられる密閉型リング構造を有する。しかしながら、ブレードの寸法が大きくなると、これらのカートは、多くの場合、ブレードへの装着が困難となる。カートがブレードに沿って(多くの場合、手動で)動かされる間、ブレードの重量を支持するために、しばしばクレーンが必要となる。加えて、人や機器が大型のリングにより妨げられ、カート位置におけるブレードの前縁及び後縁への容易なアクセスが阻まれる型成形後の作業中においてカートは危険を及ぼす。
【0005】
従来のブレードカートは、その中に風力タービンブレードが導入される密閉型リングを形成する密閉型ブラケットで構成されている。この構成の欠点は、ブレードをカート内へと積載する作業にある。なぜなら、積載工程を実施するには、ブレードの先端からカートがブレードの重量を支持できるブレードの位置へとカートを移動さなくてはならないか、あるいは天井走行クレーン及びケーブルを使用してブレードをカート内へと移動させなくてはならないかのいずれかだからである。このような従来のブレード取扱いシステムの好ましくない複雑さに加えて、これらの従来システムの作業は様々な動きを必要とし、このことは様々なコンポーネントの導入や取り外しの際にブレード損傷の高いリスクがある。
【0006】
国際公開第2013/092597号、国際公開第2012/048719号、米国特許出願公開第2014/0356113号明細書、欧州特許第2584191号明細書、及び特開2010-216317号公報に従来のブレード取扱いシステムの例が開示されており、その全体を参照することにより、開示されている特定のブレード接触要素及び相対的な可動域を含んでそれらのそれぞれが本明細書中に組み込まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
開示された主題の目的及び利点は、下記の説明において記載されて明らかとなるとともに、開示された主題の実施により知られることとなるであろう。開示された主題の追加的な利点は、添付の図面並びに本明細書に記載された説明及び請求項で具体的に示される方法及びシステムにより実現及び達成されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
これら及び他の利点を実現するため、開示された主題の目的に従って、具現化及び広範に説明されているように、開示された主題は、その中にブレードを受け付けるように構成され、外面に少なくとも1つのガイドを有するブレードハウジングと、基台と、前記基台の第1側方に配置されている第1調整可能フレームと、前記基台の第2側方に配置されている第2調整可能フレームと、前記調整可能フレーム間に配置されている少なくとも1つの調整可能ストラップと、を備え、前記少なくとも1つのストラップは、前記ハウジングの前記外面の前記ガイドを通じて延びて、前記ブレードを懸架する、風力タービンブレード懸架装置を含む。
【0009】
実施形態によっては、前記調整可能フレームは、非線形形状(non-linear shape)を有する。
【0010】
実施形態によっては、各調整可能フレームは、下端及び上端を有する一対の間隔をあけたストラットを有し、前記第1及び第2フレームの前記上端は、前記第1及び第2フレームの前記下端よりも近接した位置に配置されている。
【0011】
実施形態によっては、前記調整可能フレームは、伸縮自在に前記ストラップの高さを調整するように構成されている。
【0012】
実施形態によっては、各調整可能フレームは、下端及び上端を有する一対の間隔をあけたストラットを有し、前記上端に近接する隣接ストラット間に延びる交差ビームを有する。
【0013】
実施形態によっては、前記調整可能ストラップは前記ブレードハウジングの表面全体未満の周囲まで延びている。
【0014】
実施形態によっては、前記調整可能ストラップは、前記ブレードハウジングの前縁周囲まで延びている。
【0015】
実施形態によっては、前記ハウジングは、前記ブレードを収容するための開構成と、閉構成とを有する複数ピースコンポーネントとして構成されている。
【0016】
実施形態によっては、前記ストラップは、前記ブレードの高さを変更するために調整可能である。
【0017】
実施形態によっては、前記装置は、前記風力タービンブレードを回転させるための推進機構をさらに備える。
【0018】
本開示の他の態様によると、風力タービンブレード懸架装置は、その中にブレードを受け付けるように構成され、外面に少なくとも1つのガイドを有するブレードハウジングと、基台と、前記基台の第1側方に配置されている第1の一対の伸縮フレームと、前記第1の一対の伸縮フレーム間に延びている第1交差ビームと、前記基台の第2側方に配置されている第2伸縮フレームと、前記第2の一対の伸縮フレーム間に延びている第2交差ビームと、前記基台から延びて、前記伸縮フレーム間に配置されている少なくとも1つの調整可能ストラップと、を備え、前記少なくとも1つのストラップは、前記ハウジングの前記外面の前記ガイドを通じて延びて、前記ブレードを懸架する。
【0019】
実施形態によっては、前記伸縮フレームは弓形状を有する。
【0020】
実施形態によっては、前記ストラップは、前記第1の一対の伸縮フレーム間に配置されている。
【0021】
実施形態によっては、前記ストラップは、前記第2の一対の伸縮フレーム間に配置されている。
【0022】
実施形態によっては、前記装置は、少なくとも1つの伸縮フレームに接続されているアクチュエータをさらに備え、前記アクチュエータは下降位置から伸長位置に前記伸縮フレームを延ばす。
【0023】
実施形態によっては、前記アクチュエータが前記第1交差ビーム及び前記第2交差ビームに取り付けられている。
【0024】
実施形態によっては、前記装置は、前記フレームに取り付けられている複数のキャスターをさらに備える。
【0025】
実施形態によっては、前記ストラップは、前記ブレードの高さを変更するために調整可能である。
【0026】
実施形態によっては、前記装置は、前記風力タービンブレードを回転させるための推進機構をさらに備える。
【0027】
実施形態によっては、前記ストラップは、前記ブレードの前縁を囲う。
【0028】
上記の全般的な説明及び下記の詳細な説明のいずれも例示であり、請求される開示された主題のさらなる説明を提供することを意図すると理解されよう。
【0029】
組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、開示された主題の方法及びシステムのさらなる理解を説明し提供するために含まれている。明細書と共に、図面は開示された主題の原理を説明するように機能する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本明細書中に開示の取扱いシステムに搭載された風力タービンブレードの概略図である。
【
図2】本明細書中に開示の先端装置に搭載された風力タービンブレードの概略図である。
【
図3】ブレードの長手方向軸に対する様々な位置周りでブレードを回転させる様子を示した、本明細書中に開示の先端装置の概略図である。
【
図4】ブレードの長手方向軸に対する様々な位置周りでブレードを回転させる様子を示した、本明細書中に開示の先端装置の概略図である。装置の基底構造を明確にするため、ストラップ無しの本開示の先端装置を示している。
【
図5】ブレードの長手方向軸に対する様々な位置周りでブレードを回転させる様子を示した、本明細書中に開示の先端装置の概略図である。装置の基底構造を明確にするため、ストラップ無しの本開示の先端装置を示している。
【
図6】ブレードの長手方向軸に対する様々な位置周りでブレードを回転させる様子を示した、本明細書中に開示の先端装置の概略図である。
【
図7】ブレードの長手方向軸に対する様々な位置周りでブレードを回転させる様子を示した、本明細書中に開示の先端装置の概略図である。装置の基底構造を明確にするため、ストラップ無しの本開示の先端装置を示している。
【
図8】ブレードの長手方向軸に対する様々な位置周りでブレードを回転させる様子を示した、本明細書中に開示の先端装置の概略図である。
【
図9】ブレードの長手方向軸に対する様々な位置周りでブレードを回転させる様子を示した、本明細書中に開示の先端装置の概略図である。装置の基底構造を明確にするため、ストラップ無しの本開示の先端装置を示している。
【
図10】ブレードの長手方向軸に対する様々な位置周りでブレードを回転させる様子を示した、本明細書中に開示の先端装置の概略図である。装置の基底構造を明確にするため、ストラップ無しの本開示の先端装置を示している。
【
図11】ブレードの長手方向軸に対する様々な位置周りでブレードを回転させる様子を示した、本明細書中に開示の先端装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
開示された主題の目的及び利点は、下記の説明において記載されて明らかとなるとともに、開示された主題の実施により知られることとなるであろう。開示された主題の追加的な利点は、添付の図面並びに本明細書に記載された説明及び請求項で具体的に示される方法及びシステムにより実現及び達成されるであろう。
【0032】
これより、開示された主題の実施形態例を詳細に参照していくが、その例は添付の図面に示されている。開示された主題の方法及び対応する工程は、システムの詳細な説明と併せて説明される。
【0033】
本明細書中に提示されている方法及びシステムは、風力タービンブレードの取扱い、例えば、締め付け、固定、回転、及び輸送のために使用されてもよい。明細書中に開示されているシステム及び装置は、風力タービンブレード製造の様々な仕上げ工程を容易にするために使用できる。実施形態例では、本システムは、本明細書中に含まれる図面内に示されるように、「ルート装置(root device)」及び「先端装置(tip device)」と呼ばれる2つの分離した装置から成る。
【0034】
図1に示されるように、システム1000は、一般的にルート装置(100)と、先端装置(200)とを備える。これらサブシステム100及び200は、従来の取扱いシステムよりも優れた効率性、アクセス性、人間工学性によって、追加的な取扱い機能と、より大きな風力タービンブレードを取扱う能力とを提供する。本明細書中では「先端装置」への参照が記載されているが、本明細書中に開示されている装置及び方法はブレードのいかなる部分(すなわち先端部だけでなく、ブレードの長さに沿った任意の位置)と係合するように採用することができることが理解されるであろう。
ブレード取扱い装置(200)
【0035】
ブレード安定システムを有するストラップ付ブレード懸架取扱い装置(1000)は、本明細書中に開示されている風力タービンブレード回転装置の一態様である。この構造の目的は、より大きな風力タービンブレードを取扱う追加機能と機会を、簡単な積載工程で従来のシステムよりも高効率でのアクセス性及び人間工学性で実現させることである。
【0036】
本明細書中に開示のシステムは、以下のi)特殊形状複合ブレードテンプレート(Special shaped composite blade template)、ii)二重ストラップ付ブレード先端回転システム(Double strapped blade tip rotation system)、iii)伸縮性側方柱システム(Telescopic side column system)、iv)ブレードストラップ調整システム、及びv)ブレード安定システムといったサブシステムを有する。これらは、それぞれ以下でさらに詳細に説明される。
特別形状複合ブレードテンプレート
【0037】
ブレード懸架装置(200)は、
図1乃至
図11に示されるように、その中に風力タービンブレードを受け付けるスリーブ又はシュラウドとして機能する複合ブレードハウジングテンプレート(300)を有する。テンプレート(300)は、互いに固定、例えば、締め付け合わされて、その中にブレードを確実に保持するツーピースコンポーネントとして形成可能である。ピースは、2枚貝のようにヒンジで連結でき、又は脱着可能に互いに接続され、様々なモードの動作中のブレードを留めるためにしっかりと係止する別ピースとすることができる。テンプレート(300)の内側表面は、ブレード表面を破損から緩衝又は保護する材料のコーティング又は層を有することができる。テンプレート(300)の外側表面は、以下にさらに詳細に説明される、ブレードを懸架して回転させるストラップを受け付け、誘導するための一連の溝又はチャネルを有する。
図2に示される実施形態例では、テンプレート(300)は、前縁から後縁までブレードを完全に囲う(明確にするため不図示)。同様に、ブレードは、ストラップと継続的に係合しつつ、360度(以上)回転できるように、溝/チャネルがテンプレート(300)の周囲に完全に延びている。テンプレート(300)は特定のブレード形状及びサイズに従ってサイズ決めできるが、ブレード懸架装置(200)の残り部分は、普遍的な設計であり、全ての風力タービンブレードに適用可能である。
【0038】
ブレード懸架装置(200)は、
図2乃至
図11に示されるように、基台(210)と、支持フレーム伸縮柱(220)とを有する。ブレード懸架装置(200)は、単一の一体型ユニットであることもできるし、1つに繋ぐこと、又はそうでない場合は、風力タービンブレードを受け付けて支持するように接続することができる複数の個別ユニットから成ることもできる。例えば、フレーム(220)は、クランプ又はピンで脱着可能に互いに接合して係止されるツーピース構造でもよい。ツーピースは、ブレードの下に延びる相互接続ストラットを介して底部に沿って接合させることができる。
【0039】
支持基台(210)は、耐荷ビームと、任意選択で、作業現場周囲でブレード懸架装置(200)の移動を可能にするキャスターとを有する。図示した例示的な実施形態では、ビームは、開いており、上下からアクセス可能な箱のようなフレームを画定するように、平行に配置されている。基台(210)から上向きに延びているのは伸縮柱(220)であり、底部が基台(210)の縁に接続され、上部がブレード懸架装置の中間点付近に集まるように弓状、例えば、楕円形状に構成されている。この弓形状は、ブレードが支持される位置であるブレード懸架装置(200)の中心点に近接する交差ビーム(222)周辺に支持ストラップのヒンジ点をもたらすことができる点で有利である。このように、重心が、対称な装置の中間点に近接している。さらに、弓形状及び伸縮柱は、以下にさらに詳細に説明するように、ブレードが回転できるための十分な空間を可能にする。
【0040】
上述のように、伸縮柱(220)はまた、ブレード懸架装置(200)の反対端にある隣接する伸縮柱(220)の間に延びる交差ビーム(222)を有する。一連の交差ビームはまた、基台(210)の平行ビーム間に延びる。さらに、伸縮柱(220)は、伸縮柱(220)を挟んで誘導し、交差ビーム(222)と共同して先端装置に追加的な支持及び剛性を与える、パネル(223)を有する。交差ビームは、様々な形状のブレードに適応するため、柱(220)間の空間及び基台(210)の前側及び後側ストラットが所望に応じて折り畳み(collapsed)又は展開(expanded)が可能となるように調整可能である。
【0041】
ブレード懸架装置(200)は、ブレードを持ち上げる及び懸架するように採用されるベルト又はストラップを受け付け、誘導するための溝又はチャネルを有する。伸縮柱(220)がブレードの長さに沿って所望の任意の位置に配置でき、ブレードの最先端に近接して配置されなくてもよいことは理解されるべきである。
【0042】
作業において、ブレード懸架装置(200)内に収められたブレード先端表面にアクセスが必要な場合、第2ブレード懸架装置(200)を隣接位置に置き、同様にブレード先端を受け付けさせることができる。その後、第2ブレード懸架装置(200)がブレードを懸架される位置に維持している間に、第1ブレード懸架装置(200)を取り外すことができる。
二重ストラップ付ブレード先端回転システム
【0043】
ブレード懸架装置(200)は、ベルト又はストラップ(250)を介してブレードを支持及び回転するように作動する。テンプレート(300)と同様に、ストラップ(250)は、損傷からブレード表面を緩衝又は保護する材料のコーティング又は層を有することができる。図示した例示的な実施形態では、二重ストラップ構成が使用されているが、現在開示されているシステム内に別の数のストラップを採用することもできる。
【0044】
ブレード懸架装置(200)は、ティルト及びヨー方向に移動の自由度を有している。例えば、ストラップ張力調整機構が備えられており、そこではストラップ張力調整機構がパネル(223)の後ろの側方柱(220)の下に位置付けられている。このシステムは、互いに対するストラップの張力を計測し、ブレードの回転中にストラップが緩むことを回避するために張力のバランスを取る。
図3に示される実施形態例では、ストラップ(250)は、テンプレート(300)から外側に突出するチャネル(302)内に誘導されて摺動可能に保持されている。その中にブレード(明確にするために不図示)を留めるテンプレート(300)は、ストラップがテンプレート(300)の前縁の周りに巻き付き、テンプレートの上下面の一部のみへと延びるように、ストラップ(250)の上に載る。言い換えると、ストラップは、およそ翼弦位置中間から後縁まではテンプレート(300)と係合していない。
【0045】
ストラップ(250)は、
図6に示されるように、上部交差ビーム(222)の周りに巻き付き、基台(210)に向かって下向きに延びて中央交差ビーム(222’)の周りに巻き付き、次に下部交差ビーム(222’’)に巻き付く。本開示の他の態様によると、ストラップ(250)は、以下にさらに詳細に説明されるように、ローラ及びベアリングを介して、伸長及び引き込み等、長さ調整される。従って、本明細書中に開示のストラップ懸架システムは、装置の作動(すなわちブレードの回転)に動力を供給するための推進手段を必要としない。しかしながら、所望であれば、分離した推進手段を本明細書中に開示のシステムに組み込むことができる。
伸縮性側方柱システム
【0046】
本開示の他の態様によると、ブレード懸架装置(200)は、風力タービンブレードの受け付け、懸架、及び回転を行うように作動可能な伸長位置(extended position)(
図1乃至
図3、
図6及び
図8乃至
図11)から、例えば、ブレードの積載/積み降ろしのための折り畳まれた位置(collapsed position)(
図4乃至5及び7)へと変換させる調整可能構造として構成可能である。図示した例示的な実施形態では、先端伸縮柱(220)は、装置全体のサイズを最小限にする伸縮方式で折り畳まれるように構成されている。
【0047】
伸縮柱(220)は、
図6に示されるように、下端で下部交差ビーム(222’)に、上端で上部交差ビーム(222)に取り付けられているピストン(225)によって伸長と折り畳まれた位置との間で変換される。ピストン(225)は、互いに対し、選択的及び独立的であることが可能で、先端伸縮柱(220)内で進展及び後退するように作動可能である。ピストン(225)は、電気、空気圧、又は油圧式手段を介して、作動させることができる。さらに、ピストン(225)は、しっかりと及び脱着可能に交差ビーム(222)に取り付けられるように、接続機構(例えば、留め金、締付金具、リング)を有することができる。
【0048】
作業において、伸縮柱(220)は、タービンブレードの受け取りのために折り畳まれた構成に設定する(テンプレート300がブレードの長さに沿って所望の位置に取り付けられている)ことができる。ストラップ(250)は、テンプレート(300)の外面上のチャネル//スロット(302)内に位置付けられる。ピストン(225)は、続いて、伸縮柱(220)を上向きに延ばすように作動され、その結果、その中でブレードを持ち上げ、懸架する際に、ストラップ(250)に張力がかかるようにする。伸長プロセスがプログラム可能なPLCソフトウェアシステムによって制御できるように、センサは伸縮柱(220)内に埋め込まれることができる。さらに、装置が変移していること及び/又はその伸縮可動域の終端に近いことを人員に警告するために、アラーム(例えば、可聴式/光学式/触知式)を採用できる。
ブレードストラップ調整システム
【0049】
本開示の他の態様によると、
図2、
図6、及び
図8に示される実施形態では、フレーム(210)の下に位置するブレードストラップ(250)長さ調整システムが提供される。実施形態によっては、箱状のフレーム(210)は閉鎖した構造を有することが可能で、その場合、ストラップ調整はその中で保持される。ストラップ長さ調整システムが提供され、ブレードが位置する中間領域にあるストラップを短くする又は長くするために、装置の底部でストラップの経路/長さを増やす又は減らすことができる。ストラップ調整システムのシリンダの数量及び長さは、ブレードのサイズ及び回転位置に従って算出される。
【0050】
ストラップ調整は、伸縮柱(220)の負荷及びブレードの回転位置に応じて提供可能である。追加的に又は代替的に、ストラップは、ルート装置(100)からのブレードの回転中でも、ブレードの安定性の必要量を与えるために調整できる。また、ストラップはブレードの高さ及び積載/積み降ろし状況によって調整できる。本開示の態様によると、このシステム内でブレードを回転させるための推進/エネルギー/駆動システムが必要ない。各ストラップはリングとして構成され、それらのベアリングを介して自由に動くことができる(例えば、作業者が手動でストラップを引っ張ることで回転を生じさせることができる)。ルート装置が作動(例えば、ブレードが回転)すると、先端装置はルート装置と同期して自由に回転する。しかしながら、ブレードの安定性を提供するため、駆動システムはストラップ長さ調整のために設けられる。
ブレード安定システム
【0051】
本開示の他の態様によると、本明細書中に説明されている各サブシステムの動作をモニタし、制御するブレード安定システムを採用できる。例えば、伸縮フレーム(222)、ストラップ調整、及びブレード回転がすべて同時に動作するように、PLC制御ソフトウェアをプログラムすることができる。代替的に、制御は、後続のタスクを開始する前に各タスクを連続して完了させることを必要とするように、任意の時間にたった1つのサブシステムのみ動作できるように設定できる。
【0052】
同様に、本明細書中に開示のいかなるサブシステムの作動も遅らせる又は停止させるように、境界限界及び条件を設定できる。
ルート装置(100)
【0053】
ルート装置(100)は、単一の一体型ユニットであることもできるし、1つに繋ぐこと、又はそうでない場合は、風力タービンブレードを受け付けて支持するように接続することができる複数の個別ユニットから成ることもできる。ルート装置(100)は、風力タービンブレードの根元部を受け付けて、ブレードを(様々な速度で)回転させるように適応する。従って、ルート支持部材は、例えば、弓状等の風力タービンの根元に対する相補的形状で構成されている。ルート支持部材は、根元部の外側半径と同程度の半径を有する湾曲形状から成ることができる。より一般的に言えば、根元支持部材の形状は、根元部の形状に適合する。実施形態によっては、ルート支持部材120は様々な根元形状に合うように調整可能である。
【0054】
風力タービンブレードの動き(例えば、ブレードの長手方向軸回りの回転)を発生させる動力は、例えば、電気モータや空気圧又は油圧式システム等、様々な方法で提供できる。実施形態によっては、動力供給手段(及び場合によっては関連する配線、ケーブル、又は配管)がルート装置内に直接的に収容されている。他の実施形態では、電源及び/又は補助動力システムが、ルート装置(100)ハウジングの外部に配置可能である。実施形態によっては、回転モーメントがブレードを通じて先端装置に伝えられて、先端装置が受動的に回転している間、ルート装置はブレードの回転を駆動することができる。
【0055】
本開示の他の態様によれば、ルート装置(100)及びブレード懸架装置(200)は分離して独立して作動可能なコンポーネントとして配置できる。実施形態によっては、ルート装置及びブレード懸架装置は、他のコンポーネントに対し1つのコンポーネントの相対的な位置を伝達する位置表示機構を備えることができる。例えば、レーザ等の光学的機構を備えることができ、ルート装置とブレード懸架装置とが(例えば、ブレードの長手方向軸に対して)適切に整列するとユーザに注意喚起する。ブレード懸架装置が誤って変位してしまった場合、アラームは、望ましくない負荷がブレード又は支持装置上に引き起こされないようにブレード懸架装置を整列状態へと戻すための修正措置を取るようにユーザに通知できる。好ましくは、本明細書中に開示のシステムは、同時に同じスピードで回転等の動きを行うように連動したルート装置及びブレード懸架装置と同期する。
【0056】
さらに、ルート装置又は先端装置は、そこに配置されたブレードにいかなる負荷も伝えることなく各装置が(例えば、作業現場に沿って再配置された)他方に合わせて動くように、それらの間の相対運動を制限するように構成できる。
【0057】
一旦、ブレードがルート装置及びブレード懸架装置内に支持されると、ブレード用の、例えば、ハーネス、クレーン等のいかなる外部の支持手段も取り外すことができることが理解されるであろう。実施形態によっては、ブレード(又はコア)を係合する装置の部分は保護カバーを備えて、破損を防止すること及び望ましくない負荷の伝達をさらに吸収又は緩和することができる。上述の風力タービンブレード取扱いシステムの実施形態は、可撓性であってもよく、様々なロータブレードの位置に適応できる。これによりロータブレードへの負荷がより小さくなることとなる。結果として、ロータブレードの損傷の危険性が抑えられる。
【0058】
従って、本開示は、様々な改善及び利益を風力タービンブレードの取扱いに対して提供し、その例は以下の通りである。
1.容易なブレードの積載/積み降ろし。
2.同じ装置で同じブレードに対する異なる先端支持位置を得ることができる。
3.より低い先端装置の高さ。
4.より少ない重量で容易な移動。
5.異なるブレードに適応するためにテンプレートのバリエーションのみが必要なユニバーサルデザイン。
6.先端装置の持ち上げ及び降下能力。
7.より大きなブレードの回転角度及び表面アクセス性が増加する。
8.回転中にブレードが受ける応力がより少ない。
9.システムが自己整列するため、事前調整が不要。
【0059】
開示された主題は、特定の好適な実施形態に関して本明細書中に説明されているが、その範囲から逸脱することなく、開示された主題に様々な修正及び改良を行うことができることは当業者には認識されるであろう。さらに、開示された主題の一実施形態の個別の特性は、本明細書中で説明されてもよい、又は他の実施形態でなく一実施形態の図面において示されてもよいが、一実施形態の個別の特性は他の実施形態の1以上の特性又は複数の実施形態からの特性と組み合わされてもよいことは明白なはずである。
【0060】
以下に主張される特定の実施形態に加えて、開示された主題は、以下に主張される従属特性と上記で開示されたものとの他の考えられ得る組み合わせを有する他の実施形態をも対象とする。つまり、従属請求項及び上記の開示で提示される特定の特性は、開示された主題が他の考えられ得る組み合わせを有する他の実施形態もとりわけ対象とすると認識されるように、開示された主題の範囲内で他の方法で互いと組み合わせ可能である。このように、開示された主題の特定の実施形態の上述の説明は、解説及び説明の目的のために提示されている。限定的とする意図又は開示された主題を開示されたこれらの実施形態に限定する意図はない。
【0061】
当業者には、開示された主題の主旨又は範囲から逸脱することなく、開示された主題の方法及びシステムにおいて様々な修正及び変更が行えることが明白であろう。このように、開示された主題は、添付の請求項及びそれらの同意義の範囲内にある修正及び変更を含むことが意図される。