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特許7271571駐車時の車両走行制御方法及び車両走行制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】駐車時の車両走行制御方法及び車両走行制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/00 20060101AFI20230501BHJP
   B60W 30/095 20120101ALI20230501BHJP
   B60W 30/06 20060101ALI20230501BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20230501BHJP
   B60R 99/00 20090101ALN20230501BHJP
【FI】
B60W30/00
B60W30/095
B60W30/06
G08G1/16 A
B60R99/00 351
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020559039
(86)(22)【出願日】2018-12-03
(86)【国際出願番号】 IB2018001491
(87)【国際公開番号】W WO2020115517
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-05-21
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】早川 泰久
【審査官】鶴江 陽介
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102016014709(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102009041587(DE,A1)
【文献】特開2017-159881(JP,A)
【文献】特開2008-143510(JP,A)
【文献】特開2004-331021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00- 1/16
B60R 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータが、
自律走行制御機能を備えた車両を自律走行制御により走行させる場合に、
複数の物体検出器を用いて前記車両の周辺に物体が存在するか否かを検出し、
前記複数の物体検出器に対応する複数の表示器を用い、前記物体検出器それぞれの検出範囲に向かう路面の所定位置に、前記物体検出器の検出範囲の面積に応じた所定パターンを視認可能に表示し、
前記物体を検出していない状態から前記物体を検出している状態になったら、前記物体に向かって表示する表示器の所定パターンを、それまで表示していたパターンとは異なるパターンに変更する車両走行制御方法において、
前記異なるパターンは、他の物体検出器に対応する表示器の前記所定パターンの面積より小さいパターンである車両走行制御方法。
【請求項2】
コンピュータが、
自律走行制御機能を備えた車両を自律走行制御により走行させる場合に、
複数の物体検出器を用いて前記車両の周辺に物体が存在するか否かを検出し、
前記複数の物体検出器に対応する複数の表示器を用い、前記物体検出器それぞれの検出範囲に向かう路面の所定位置に、前記物体検出器の検出範囲の面積に応じた所定パターンを視認可能に表示し、
前記物体を検出したときは、
前記車両と前記物体との相対速度を検出し、
その後に前記物体が相対移動する位置を前記相対速度に基づいて演算し、
前記物体を検出していない状態から前記物体を検出している状態になったら、前記物体に向かって表示する表示器及び前記相対移動する位置に向かって表示する表示器の所定パターンを、それまで表示していたパターンとは異なるパターンに変更する車両走行制御方法において、
前記異なるパターンは、前記物体に向かって表示する表示器及び前記相対移動する位置に向かって表示する表示器以外の表示器の前記所定パターンの面積より小さいパターンである車両走行制御方法。
【請求項3】
前記物体を検出したときは、前記物体に向かって表示する所定パターンを、前記物体を含まないパターンに縮小して表示する請求項1に記載の車両走行制御方法。
【請求項4】
前記物体を検出したときは、前記物体に向かって表示する所定パターンの色彩を、前記物体を検出しないときに表示する所定パターンの色彩とは異なる色彩に設定する請求項1に記載の車両走行制御方法。
【請求項5】
前記物体を検出したときは、前記物体に向かって表示する所定パターンの点滅パターンを、前記物体を検出しないときに表示する所定パターンの点滅パターンとは異なる点滅パターンに設定する請求項1に記載の車両走行制御方法。
【請求項6】
自律走行制御機能を備えた車両を自律走行制御させる走行制御器と、
前記車両の走行経路を演算し、前記走行制御器に走行指令を出力する制御器と、
前記車両の周辺に物体が存在するか否かを探索する複数の物体検出器と、
前記複数の物体検出器に対応し、視認可能なパターンを路面に表示する複数のパターン表示器と、
前記複数の物体検出器に対応する前記複数の表示器を用い、前記物体検出器それぞれの検出範囲に向かう路面の所定位置に、前記物体検出器の検出範囲の面積に応じた所定パターンを視認可能に表示し、前記物体を検出していない状態から前記物体を検出している状態になったら、前記物体に向かって表示する表示器の所定パターンを、それまで表示していたパターンとは異なるパターンに変更するように、前記パターン表示器を制御する表示制御器と、を備える車両走行制御装置において、
前記異なるパターンは、他の物体検出器に対応する表示器の前記所定パターンの面積より小さいパターンである車両走行制御装置。
【請求項7】
自律走行制御機能を備えた車両を自律走行制御させる走行制御器と、
前記車両の走行経路を演算し、前記走行制御器に走行指令を出力する制御器と、
前記車両の周辺に物体が存在するか否かを探索する複数の物体検出器と、
前記複数の物体検出器に対応し、視認可能なパターンを路面に表示する複数のパターン表示器と、
前記複数の物体検出器に対応する前記複数の表示器を用い、前記物体検出器それぞれの検出範囲に向かう路面の所定位置に、前記物体検出器の検出範囲の面積に応じた所定パターンを視認可能に表示し、前記物体を検出したときは、前記車両と前記物体との相対速度を検出するとともにその後に前記物体が相対移動する位置を前記相対速度に基づいて演算し、前記物体を検出していない状態から前記物体を検出している状態になったら、前記物体に向かって表示する表示器及び前記相対移動する位置に向かって表示する表示器の所定パターンを、それまで表示していたパターンとは異なるパターンに変更するように、前記パターン表示器を制御する表示制御器と、を備える車両走行制御装置において、
前記異なるパターンは、前記物体に向かって表示する表示器及び前記相対移動する位置に向かって表示する表示器以外の表示器の前記所定パターンの面積より小さいパターンである車両走行制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両を自律走行制御により走行させる車両走行制御方法及び車両走行制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
駐車中の自車両を発進させる際に、駐車場を走行する他車両や歩行者に対して自車両の発進動作を注意喚起するため、所定パターンを路面に投射する安全制御装置が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-101797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術は、単に自車両の発進動作を注意喚起するための所定パターンを路面に投射するものであり、障害物の検出範囲を示すパターンではない。そのため、歩行者などは、その車両が実際に自分を検出しているか否かを認識することはできない。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、自律走行制御を実行する場合に、自車両が実際に検出している物体の検出範囲を、その物体に認識させることができる車両走行制御方法及び車両走行制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、自律走行制御機能を備えた車両を自律走行制御により走行させる場合に、複数の物体検出器を用いて車両の周辺に物体が存在するか否かを検出し、前記複数の物体検出器に対応する複数の表示器を用い、前記物体検出器それぞれの検出範囲に向かう路面の所定位置に、前記物体検出器の検出範囲の面積に応じた所定パターンを視認可能に表示し、前記物体を検出していない状態から前記物体を検出している状態になったら、前記所定パターンを、それまで表示していたパターンとは異なる、面積が小さいパターンに変更することによって、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車両の周辺に存在する人間などの物体は、路面の所定位置に表示された所定パターンの表示を視認することで、車両が検出している物体の検出範囲を認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の車両走行制御方法及び車両走行制御装置を適用したリモート駐車システムを示すブロック図である。
図2図1の物体検出器とパターン表示器の車両への装着状態及び遠隔操作器を示す平面図である。
図3図1のパターン表示器による路面の所定位置への表示状態の一例を示す平面図である。
図4図1の遠隔操作器の位置検出器の一例を示す図である。
図5A図1のパターン表示器により路面の所定位置に表示されるパターンの表示形態例を示す平面図(その1)である。
図5B図1のパターン表示器により路面の所定位置に表示されるパターンの表示形態例を示す平面図(その2)である。
図5C図1のパターン表示器により路面の所定位置に表示されるパターンの表示形態例を示す平面図(その3)である。
図5D図1のパターン表示器により路面の所定位置に表示されるパターンの表示形態例を示す平面図(その4)である。
図6図1のパターン表示器により路面の所定位置に表示されるパターンの他の表示形態例を示す平面図である。
図7図1のパターン表示器により路面の所定位置に表示されるパターンのさらに他の表示形態例を示す平面図である。
図8図1のリモート駐車システムで実行される制御手順を示すフローチャートである。
図9A図1のリモート駐車システムで実行される後退リモート駐車の一例を示す平面図(その1)である。
図9B図1のリモート駐車システムで実行される後退リモート駐車の一例を示す平面図(その2)である。
図9C図1のリモート駐車システムで実行される後退リモート駐車の一例を示す平面図(その3)である。
図9D図1のリモート駐車システムで実行される後退リモート駐車の一例を示す平面図(その4)である。
図10図1のリモート駐車システムで実行されるリモート出庫の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の車両走行制御方法及び車両走行制御装置を適用したリモート駐車システム1を示すブロック図である。本発明に係る車両走行制御方法及び車両走行制御装置は、リモート駐車だけでなく、通常の自律走行制御にも適用することができるが、ここでは、リモート駐車を冷投げて本発明を説明する。
【0010】
本明細書において「駐車」とは、駐車スペースへ車両を継続的に止めておくことをいうが、「駐車経路」という場合には、駐車スペースへの車庫入れ経路のみならず、駐車スペースからの車庫出し経路をも含むものとする。その意味で、本発明に係る「駐車時の車両走行制御方法及び車両走行制御装置」は、駐車スペースへの車庫入れ時の車両の走行制御と、駐車スペースからの車庫出し時の車両走行制御との両方が含まれる。なお、車庫入れを入庫とも言い、車庫出しを出庫とも言う。また、自律走行制御、自律駐車制御とは、ドライバの運転操作に依ることなく、車載された走行制御装置の自動制御により、車両を走行又は駐車(入庫又は出庫)させることをいうものとする。
【0011】
本実施形態のリモート駐車システム1は、駐車スペースへの車庫入れ又は駐車スペースからの車庫出しをする場合に、自律走行制御によりこれらの車庫入れ又は車庫出しを行うシステムであるが、その操作途中でドライバが降車し、安全を確認しながら、遠隔操作器により実行指令を送信し続けることで、自律駐車制御を継続する。そして、車両が障害物と衝突するおそれがある場合には、停止指令を送信したり又は実行指令の送信を中止したりすることで、自律駐車制御を停止するものである。以下、遠隔操作を併用した車庫入れ自律走行制御モードをリモート入庫モード、遠隔操作を併用した車庫出し自律走行制御モードをリモート出庫モードともいう。
【0012】
たとえば、幅狭の車庫や、図10に示すように自車両Vの両隣に他車両V3,V4が駐車している駐車場など、サイドドアが充分に開くほど余裕がない幅狭の駐車スペースでは、ドライバの乗降が困難となる。このような場合でも駐車を可能とするため、遠隔操作を併用したリモート入庫モードやリモート出庫モードが利用される。そして、車庫入れする場合には、リモート入庫モードを起動し、選択した駐車スペースへの入庫経路を演算して自律入庫制御が開始されたら、ドライバは遠隔操作器を所持して降車し、遠隔操作器により実行指令を送信し続けることで車庫入れを完了する。また、当該駐車スペースからの車庫出しする場合には、ドライバは所持した遠隔操作器を用いて車両の内燃機関又は駆動用モータをONし、さらにリモート出庫モードを起動し、選択した車庫出し位置への出庫経路を演算して自律出庫制御が開始されたら、ドライバは遠隔操作器により実行指令を送信し続けることで車庫出しを完了し、その後に乗車する。本実施形態のリモート駐車システム1は、このような遠隔操作を併用したリモート入庫モードと、同じく遠隔操作を併用したリモート出庫モードとを備えるシステムである。
【0013】
本実施形態のリモート駐車システム1は、目標駐車スペース設定器11、車両位置検出器12、物体検出器13、遠隔操作器の位置検出器14、駐車経路生成部15、物体減速演算部16、経路追従制御部17、目標車速生成部18、操舵角制御部19、車速制御部20、路面表示パターン設定部21、パターン表示器22、及び遠隔操作器23を備える。以下、各構成を説明する。
【0014】
目標駐車スペース設定器11は、リモート入庫モードの際には、自車両の周辺に存在する駐車スペースを探索し、駐車可能な駐車スペースの中から操作者に所望の駐車スペースを選択させ、この駐車スペースの位置情報(自車両の現在位置からの相対的位置座標や、緯度・経度など)を駐車経路生成部15に出力する。また、目標駐車スペース設定器11は、リモート出庫モードの際には、現在駐車している自車両の周囲に存在する出庫スペースを探索し、出庫可能な出庫スペースの中から操作者に所望の出庫スペースを選択させ、この出庫スペースの位置情報(自車両の現在位置からの相対的位置座標や、緯度・経度など)を駐車経路生成部15に出力する。なお、出庫スペースとは、図10に示すように、リモート出庫モードの際に、操作者が出庫操作を行ったのち、乗車する際の自車両の一時停車位置Sをいう。
【0015】
目標駐車スペース設定器11は、上述した機能を発揮するために、リモート入庫モード又はリモート出庫モードを入力操作する入力スイッチと、自車両の周囲を撮影する複数のカメラ(不図示,後述する物体検出器13を共用してもよい。)と、複数のカメラで撮影された画像データから駐車可能な駐車スペースを探索するソフトウェアプログラムがインストールされたコンピュータと、駐車可能な駐車スペースを含めた画像を表示するタッチパネル型ディスプレイと、を備える。そして、ドライバなどの操作者が、入力スイッチによりリモート入庫モードを選択すると、複数のカメラにより自車両の周囲の画像データを取得し、駐車可能な駐車スペースを含む画像をディスプレイに表示する。操作者が、表示された駐車スペースから所望の駐車スペースを選択すると、目標駐車スペース設定器11は、この駐車スペースの位置情報(自車両の現在位置からの相対的位置座標や、緯度・経度など)を駐車経路生成部15に出力する。なお、駐車可能な駐車スペースを探索する場合に、ナビゲーション装置の地図情報に詳細な位置情報を有する駐車場情報が含まれるときは、当該駐車場情報を用いてもよい。また、ドライバなどの操作者が、遠隔操作器23を用いて自車両の内燃機関又は駆動用モータを起動し、遠隔操作器23の入力スイッチによりリモート出庫モードを選択すると、複数のカメラにより自車両の周囲の画像データを取得し、出庫可能な出庫スペースを含む画像を遠隔操作器23のディスプレイに表示する。操作者が、表示された出庫スペースから所望の出庫スペースを選択すると、目標駐車スペース設定器11は、この出庫スペースの位置情報(自車両の現在位置からの相対的位置座標や、緯度・経度など)を駐車経路生成部15に出力する。
【0016】
車両位置検出器12は、GPSユニット、ジャイロセンサ、および車速センサなどから構成され、GPSユニットにより複数の衛星通信から送信される電波を検出し、自車両の位置情報を周期的に取得するとともに、取得した自車両の位置情報と、ジャイロセンサから取得した角度変化情報と、車速センサから取得した車速とに基づいて、自車両の現在位置を検出する。車両位置検出器12により検出された自車両の位置情報は、所定時間間隔で駐車経路生成部15及び経路追従制御部17に出力される。
【0017】
物体検出器13は、自車両の周辺に、障害物などの物体が存在するか否かを探索するものであり、カメラ、レーダー(ミリ波レーダー,レーザーレーダー,超音波レーダーなど)若しくはソナーなど、又はこれらを組み合わせたものを備える。これらのカメラ、レーダー若しくはソナー又はこれらを組み合わせたものは、自車両の周囲の外板部に装着されている。図2は、物体検出器13a~13hの車両Vへの装着状態の一例を示す平面図であり、フロントバンパの中央13a及び両サイド13b,13c、リヤバンパの中央13d及び両サイド13e,13f、左右のセンターピラー下部のシルアウタ13g,13hの8箇所に物体検出器13a~13hを装着した例を示す。物体検出器13a~13hを総称する場合は、物体検出器13という。なお、図2に示す物体検出器13の装着位置及び数量は一例であって、同図に示す位置以外に装着してもよく、装着箇所についても、8箇所未満又は9箇所以上であってもよい。また物体検出器13は、カメラやレーダーなどで検出された物体の位置を特定するためのソフトウェアプログラムがインストールされたコンピュータを備え、特定された物体情報(物標情報)とその位置情報(自車両の現在位置からの相対的位置座標や、緯度・経度など)は、駐車経路生成部15と、物体減速演算部16と、路面表示パターン設定部21へ出力される。
【0018】
図1に戻り、遠隔操作器23の位置検出器14は、後述する遠隔操作器23が車外に持ち出された場合に、その位置を特定するための装置であり、たとえば、図4に示すように、自車両Vの異なる位置に設けられた少なくとも2つのアンテナ24,24と、遠隔操作器23のアンテナ231と、車両Vのアンテナ24,24と遠隔操作器のアンテナ231との間の電波強度を検出するセンサと、センサにて検出された電波強度から三角測量法などを用いて遠隔操作器23の位置を演算するソフトウェアプログラムがインストールされたコンピュータと、から構成されている。遠隔操作器23の位置を特定するための電波は、所定時間間隔で継続して送信され、時々刻々変化する自車両Vに対する遠隔操作器23の位置を、たとえば自車両Vに対する相対的な位置情報として特定する。なお、遠隔操作器23の位置を特定するための電波は、遠隔操作器23からの実行指令信号を用いることができる。
【0019】
遠隔操作器23の位置を特定するための電波は、遠隔操作器23のアンテナ231から車両Vのアンテナ24,24へ所定時間間隔で送信してもよいし、車両Vのアンテナ24,24から遠隔操作器23のアンテナ231へ所定時間間隔で送信してもよい。前者の場合は、車両Vのアンテナ24,24と遠隔操作器のアンテナ231との間の電波強度を検出するセンサと、センサにて検出された電波強度から三角測量法などを用いて遠隔操作器23の位置を演算するソフトウェアプログラムがインストールされたコンピュータは、車両Vに設けられ、後者の場合は遠隔操作器23に設けられる。遠隔操作器23の位置検出器14にて検出された遠隔操作器の位置情報(自車両Vに対する相対的な位置情報)は、路面表示パターン設定部21に出力される。なお、遠隔操作器23は操作者により車外へ持ち出されることから、遠隔操作器23の位置検出器14により検出される遠隔操作器23の位置情報は、操作者の位置情報でもある。
【0020】
駐車経路生成部15は、予め記憶されている自車両の大きさ(車幅、車長及び最小回転半径など)と、目標駐車スペース設定器11からの目標駐車位置(リモート入庫モードの場合は駐車スペースの位置情報、リモート出庫モードの場合は出庫スペースの位置情報を言う。以下同じ。)と、車両位置検出器12からの自車両の現在位置情報と、物体検出器13からの物体(障害物)の位置情報とを入力し、自車両の現在位置から目標駐車位置に向かう駐車経路(リモート入庫モードの場合は入庫経路、リモート出庫モードの場合は出庫経路をいう。以下同じ。)であって、物体に衝突又は干渉しない駐車経路を演算する。図9A~9Dは、リモート入庫モードの一例を示す平面図である。図9Aに示す自車両Vの現在位置において、ドライバが入力スイッチを操作してリモート入庫モードを選択すると、目標駐車スペース設定器11は3つの駐車可能な駐車スペースPS1,PS2,PS3を探索してこれらを含む画像をディスプレイに表示し、これに対してドライバが駐車スペースPS1を選択したとする。この場合、駐車経路生成部15は、図9Aに示す現在位置から、図9B図9C及び図9Dに示す駐車スペースPS1に至る入庫経路R1,R2を演算する。
【0021】
なお、図10に示す駐車位置において、点線で示すように自車両Vの両隣に他車両V3,V4が駐車中であってドライバがドアを開いて乗車し難い場合には、リモート出庫モードにて自車両Vを出庫させることもできる。すなわち、図10に示す状態で、ドライバが遠隔操作器23を用いて自車両の内燃機関又は駆動用モータを起動し、遠隔操作器23の入力スイッチを操作してリモート出庫モードを選択すると、目標駐車スペース設定器11は、たとえば図10に示す出庫可能な出庫スペースSを探索して遠隔操作器23のディスプレイに表示し、これに対してドライバが当該出庫スペースSを選択したとする。この場合には、駐車経路生成部15は、図10に示す現在位置から出庫スペースSに至る出庫経路Rを演算する。以上のように、駐車経路生成部15は、リモート入庫モードの場合は、現在位置から駐車スペースに至る入庫経路を演算し、リモート出庫モードの場合は、現在位置から出庫スペースに至る出庫経路を演算する。そして、これらの入庫経路又は出庫経路を経路追従制御部17及び目標車速生成部18に出力する。
【0022】
物体減速演算部16は、物体検出器13からの障害物その他の物体の位置情報を入力し、物体との距離と、車速とに基づいて、物体と衝突するまでの時間(TTC:Time to Collision)を演算し、自車両の減速開始タイミングを演算する。たとえば、図9A図9Dに示すリモート入庫モードにおいて、障害物としての物体が駐車場の壁Wである場合には、図9A図9Cに示すように壁Wとの距離が所定以上である場合は、車速を初期設定値とし、図9Dに示すように自車両Vが壁Wに衝突するまでの時間TTCが所定値以下になるタイミングで、自車両Vの車速を減速する。この減速開始タイミングは、目標車速生成部18に出力する。
【0023】
経路追従制御部17は、駐車経路生成部15からの入庫経路又は出庫経路と、車両位置検出器12からの自車両の現在位置とに基づいて、所定時間間隔で自車両を入庫経路又は出庫経路に沿った経路に追従するための目標操舵角を演算する。図9A図9Dの入庫経路R1,R2についていえば、図9Aに示す現在位置から図9Bに示す切り返し位置まで直進する入庫経路R1の目標操舵角と、図9Bに示す切り返し位置から図9C及び図9Dに示す駐車位置まで左旋回する入庫経路R2の目標操舵角とを、自車両Vの現在位置ごとに所定時間間隔で演算し、操舵角制御部19に出力する。
【0024】
目標車速生成部18は、駐車経路生成部15からの入庫経路又は出庫経路と、物体減速演算部16からの減速開始タイミングとに基づいて、所定時間間隔で自車両Vを入庫経路又は出庫経路に沿った経路に追従する際の目標車速を演算する。図9A図9Dの入庫経路についていえば、図9Aに示す現在位置から発進して図9Bに示す切り返し位置で停止する際の目標車速と、図9Bに示す切り返し位置から発進(後退)して図9Cに示す駐車位置の途中まで左旋回する際の目標車速と、図9Dに示す壁Wに接近して停車する際の目標車速とを、自車両Vの現在位置ごとに所定時間間隔で演算し、車速制御部20に出力する。
【0025】
操舵角制御部19は、経路追従制御部17からの目標操舵角に基づいて、自車両Vの操舵系システムに設けられた操舵アクチュエータを動作する制御信号を生成する。また、車速制御部20は、目標車速生成部18からの目標車速に基づいて、自車両Vの駆動系システムに設けられたアクセルアクチュエータを動作する制御信号を生成する。これら操舵角制御部19と車速制御部20とを同時に制御することで、自律駐車制御が実行される。
【0026】
遠隔操作器23は、目標駐車スペース設定器11にて設定した自律駐車制御の実行を継続するか停止するかを、操作者Uが車外から指令する。そのため、経路追従制御部17及び目標車速生成部18(又はこれに代えて、操舵角制御部19及び車速制御部20でもよい)に実行継続指令信号又は実行停止信号を送信するための、短距離通信機能(図4に示すアンテナ231など)を備え、車両Vに設けられたアンテナ24,24との間で通信を行う。また、リモート出庫モードにおいては、自車両Vの駆動系システム(内燃機関又は駆動用モータ)の始動/停止スイッチと、リモート出庫モードを入力する入力スイッチと、出庫スペースを含む画像を表示するディスプレイとが必要とされるため、これらの機能を備えた携帯型コンピュータで構成することが好ましい。
【0027】
ただし、リモート入庫モードのみを使用する場合は、少なくとも自律駐車制御の実行を継続するか停止するかの指令信号を送信すればよいので、たとえば無線施解錠キーに当該指令信号の実行/停止ボタンを設けたものでもよい。また、遠隔操作器23から経路追従制御部17及び目標車速生成部18(又はこれに代えて、操舵角制御部19及び車速制御部20でもよい)に実行継続指令信号又は実行停止信号を送信する手段は、電気通信回線網を用いてもよい。なお、遠隔操作器23と自車両Vの車載装置(経路追従制御部17及び目標車速生成部18)とは、短距離通信機能を介してペアリング処理(自車両Vが遠隔操作器23を認証して指令を受け付ける処理)が実行され、自車両Vが遠隔操作器23を認証した場合に限り、実行継続指令信号又は実行停止信号を受け付ける。
【0028】
特に本実施形態のリモート駐車システム1では、視認可能なパターンを路面に表示するパターン表示器22と、このパターン表示器22を制御して、物体検出器13により物体を検出したときは、物体の検出範囲に応じた所定パターンを、検出範囲に向かう路面の所定位置に表示する路面表示パターン設定部21と、を備える。
【0029】
パターン表示器22は、LED照明装置やレーザ光照射装置などにより構成され、可視光を自車両Vの周囲の路面に向けて照射する。LED照明装置やレーザ光照射装置などにより構成されるパターン表示器22の装着位置は、たとえば図2に示すように、各物体検出器13a~13hの近傍に、各物体検出器13a~13hそれぞれに対応付けて並設することができる。図2は、パターン表示器22a~22hの自車両Vへの装着状態の一例を示す平面図であり、上述した8箇所の物体検出器13a~13hのそれぞれの近傍、すなわちフロントバンパの中央22a及び両サイド22b,22c、リヤバンパの中央22d及び両サイド22e,22f、左右のセンターピラー下部のシルアウタ22g,22hの8箇所にパターン表示器22a~22hを装着した例を示す。なお、図2に示すパターン表示器22の装着位置及び数量は一例であって、同図に示す位置以外に装着してもよく、装着箇所についても、8箇所未満又は9箇所以上であってもよい。また、LED照明装置を自車両Vの全周に設け、自車両Vの周囲が同じセグメントになるように分けて表示するようにしてもよい。
【0030】
また図3の上図及び下図は、このように8箇所に設けられた各パターン表示器22により路面に照射されるパターンPの例を示す図である。図3の上図に示す例は、各物体検出器13a~13hそれぞれの検出範囲を示すパターンとした例であり、図3の下図に示す例は、図形のパターンを表示した例である。図3の上図及び下図に示すパターンPは、各パターン表示器22により最大面積で照射した場合のパターンPを示すものであるが、後述するように、路面表示パターン設定部21により、各パターン表示器22による表示面積が可変とされ、またいずれのパターン表示器22をON/OFFするかも可変とされている。
【0031】
路面表示パターン設定部21は、パターン表示器22による可視光のパターンPを設定する。可視光のパターンPは、物体検出器13による物体の検出範囲に応じた所定パターンPを、検出範囲に向かう路面の所定位置に表示する。ここで、路面表示パターン設定部21にて設定されるパターンPの形態例を説明する。いずれの形態例も、本発明の「物体の検出範囲に応じた所定パターンPを、検出範囲に向かう路面の所定位置に表示する」ことに含まれるものである。
【0032】
《第1表示形態例》
図5A図5Dは、図9A図9Dに示すようなリモート入庫モードによる自律駐車制御だけでなく、これを含む一般的な自律走行制御の実行中において、各パターン表示器22a~22hによるパターンPを、各物体検出器13a~13hによる検出範囲に向かう路面の所定位置に表示する表示形態例を示す平面図である。図5A図5Dにおいて、自車両Vは右方向に走行し、物体である人間Hは、立ち止まっているものとする。また、物体検出器13及びパターン表示器22は、図2に示すように装着されているものとし、符号13a~13h及び22a~22hの図示を省略する。この場合、物体検出器13により物体を検出しないときのパターンPは、物体検出器13の検出範囲に相関する面積のパターンとする一方、自車両Vと検出した物体(ここでは人間H)との距離が近いほど、パターンPの表示面積を小さくする。
【0033】
図5Aに示す状態では、自車両Vの周囲に装着された8個の物体検出器13a~13hのいずれも、物体である人間Hを検出していないので、8個のパターン表示器22a~22hにより路面に照射される各パターンPは、物体検出器13の検出範囲に相関する面積のパターンとする。ここで、物体検出器13の検出範囲に相関する面積とは、物体検出器13の検出範囲と同一の面積のほか、これに相似する面積をいう。これに対して、自車両Vが右方向に走行して図5Bに示す状態になると、自車両Vの左前部に装着された物体検出器13cが物体である人間Hを検出するため、当該物体検出器13cに対応するパターン表示器22cによるパターンPの面積を、他のパターン表示器によるパターンPの面積より小さくする(パターン表示器22cのOFFを含む)。
【0034】
さらに自車両Vが右方向に走行して図5Cに示す状態になると、自車両Vの左側部に装着された物体検出器13hが物体である人間Hを検出するため、当該物体検出器13hに対応するパターン表示器22hによるパターンPの面積を、他のパターン表示器によるパターンPの面積より小さくする(パターン表示器22hのOFFを含む)。このとき、先ほど面積を小さくしたパターン表示器22cによるパターンPの面積は、元の面積に戻す。さらに自車両Vが右方向に走行して図5Dに示す状態になると、自車両Vの左後部に装着された物体検出器13fが物体である人間Hを検出するため、当該物体検出器13fに対応するパターン表示器22fによるパターンPの面積を、他のパターン表示器によるパターンPの面積より小さくする(パターン表示器22fのOFFを含む)。このとき、先ほど面積を小さくしたパターン表示器22hによるパターンPの面積は、元の面積に戻す。
【0035】
以上、図5A図5Dに順次示すように、自車両Vが人間Hの横を通過する場合、人間Hを検出した物体検出器13に対応するパターン表示器22の表示を、人間Hの検出範囲に応じた所定パターンP、同図に示す例では、検出した人間Hを含まないようにパターンの面積を縮小して、検出範囲に向かう路面の所定位置に表示する。これにより、自車両Vの周囲に存在する人間Hは、路面に表示されたパターンPとその大きさを視認することで、自車両Vが自分を検出していること、換言すれば自車両Vの自律走行範囲に自分が含まれないこと、さらに言えば、自車両Vが自分に接触しないことを認識することができる。
【0036】
《第2表示形態例》
図6は、図5A図5Dに示すシーンと同様のシーンにおいて、各パターン表示器22a~22hによるパターンPを、各物体検出器13a~13hによる検出範囲に向かう路面の所定位置に表示する他の表示形態例を示す平面図である。図5A図5Dに示す表示形態例では、人間Hを検出した物体検出器13に対応するパターン表示器のみ、その検出範囲を変更したが、図6に示す表示形態例では、人間Hなどの物体を検出したときは、人間Hに向かう路面の所定位置だけでなく、その後に人間Hが相対移動する位置にも、検出範囲に応じた所定パターンPを表示する。すなわち、図6に示すように、自車両Vが右方向に走行し、人間Hが立ち止まっている場合、自車両Vの現在位置においては、物体検出器13cにより人間Hが検出されているので、当該物体検出器13cに対応するパターン表示器22cによるパターンPの面積を縮小する。これに加えて、その後においては、自車両Vはさらに右方向に走行するので、物体検出器13hにより当該人間Hが検出されることになる。したがって、この状況を先読みし、その後に検出される物体検出器13hに対応するパターン表示器22hによるパターンPの面積も同時に縮小する。
【0037】
そのため、路面表示パターン設定部21は、物体検出器13により検出された物体位置の時間的変化から当該物体の移動速度を演算するとともに、目標車速生成部18により生成された自車両Vの車速を入力し、物体と自車両Vとの相対移動速度を演算する。そして、自車両Vの現在位置から、その後に物体が移動する位置を演算し、この位置をどの物体検出器13が検出するかを判断する。このように、自車両Vの現在位置で検出される物体のみならず、その後に検出される物体に対しても、路面に表示するパターンPを変化させることで、これを視認した人間Hは、路面に表示されたパターンPとその大きさと位置とを視認することで、自車両Vが自分を検出していること、換言すれば自車両Vの自律走行範囲に自分が含まれないこと、さらに言えば、自車両Vが自分に接触しないことを、その後の状況まで認識することができる。
【0038】
《第3表示形態例》
図7は、たとえば自律駐車モードによる自律走行制御を実行するシーンにおいて、各パターン表示器22a~22hによるパターンPを、各物体検出器13a~13hによる検出範囲に向かう路面の所定位置に表示するさらに他の表示形態例を示す平面図である。図5A図5D及び図6に示す表示形態例では、人間Hを検出した物体検出器13に対応するパターン表示器又はその後に人間Hを検出すると予想される物体検出器13を含め、全てのパターン表示器22を用いて、検出範囲に応じた所定パターンPを表示したが、本例では、特定のパターン表示器22を用いて、検出範囲に応じた所定パターンPを路面に表示する。
【0039】
たとえば、複数の物体検出器13a~13hにより複数の物体を検出したときは、路面表示パターン設定部21は、目標車速生成部18から自車両Vの走行速度を読み込み、自車両Vが、検出した各物体に衝突するまでの衝突時間を演算し、衝突時間が最も短い物体のみについての所定パターンPを、その物体検出器13に対応するパターン表示器22を用いて、当該物体に向かう路面の所定位置に表示する。すなわち、図7に示すように、自車両Vの周辺に2人の人間H1,H2が存在し、自車両Vは駐車経路Rに沿って後退駐車している場合、自車両Vは、人間H2から遠ざかる一方、人間H1に対しては近づく。したがって、自車両Vの衝突時間が最も短いのは物体検出器13dにより検出される人間H1であり、人間H2ではない。したがって、物体検出器13dに対応するパターン表示器22dを用いて、検出範囲のパターンPを人間H1に向かう路面に表示する。これにより、人間H1は、路面に表示されたパターンPとその大きさと位置とを視認することで、自車両Vが自分を検出していること、換言すれば自車両Vの自律走行範囲に自分が含まれないこと、さらに言えば、自車両Vが自分に接触しないことを認識することができる。
【0040】
さらに本例では、車両から降車した操作者Uが、遠隔操作器23を操作することで自車両Vを自律駐車制御させているが、路面表示パターン設定部21は、遠隔操作器23の位置検出器14から遠隔操作器23の位置を読み込み、物体検出器13により物体、ここでは人間H1を検出したときは、上述したとおり人間H1に向かって所定パターンPを表示すると同時に、遠隔操作器23に向かう路面の所定位置にも、パターン表示器22aを用いて、人間H1に向けて表示した所定パターンPに対応するパターンPuを視認可能に表示する。このようにすることで、人間H1が操作者Uから死角となる位置に立っていても、操作者Uは物体(人間H1)の存在を認識することができる。
【0041】
なお、上述した例においては、物体検出器13により物体を検出したときは、物体に向かって表示する所定パターンを、物体を含まないパターンに縮小して表示するようにこうせいしたが、物体に向かって表示する所定パターンPの色彩を、物体を検出しないときに表示する所定パターンPの色彩とは異なる色彩に設定してもよい。また、物体を検出したときは、物体に向かって表示する所定パターンPの点滅パターンを、物体を検出しないときに表示する所定パターンPの点滅パターンとは異なる点滅パターンに設定してもよい。
【0042】
以上、路面表示パターン設定部21にて実行されるパターン表示器22の表示形態例を示したが、これらの表示形態例のいずれか一つを路面表示パターン設定部21にて処理してもよい。またはこれに代えて、遠隔操作器23に路面表示パターン設定部21による表示形態を選択するスイッチを設け、操作者Uが遠隔操作中などに選択可能に構成してもよい。また、路面表示パターン設定部21は、パターン表示器22によるパターンPの表示に際し、検出した物体が人間Hである場合は、自車両Vが停車した後もパターンの表示を所定時間だけ継続してもよい。さらに、検出した物体が人間Hである場合は、自車両Vから離れていても、自車両Vが減速して停車する旨の異なるパターンを表示してもよい。
【0043】
次に図8を参照して、本実施形態のリモート駐車システム1の制御フローを説明する。ここでは、図9A図9Dに示す後退駐車をリモート自律駐車制御により実行するシーンを説明する。まず、図9Aに示すように、自車両Vが駐車スペースの近傍に到着したら、ステップS1にて、ドライバなどの操作者Uは、車載された目標駐車スペース設定器11のリモート駐車の開始スイッチをONしてリモート入庫モードを選択する。目標駐車スペース設定器11は、ステップS2にて、車載された複数のカメラなどを用いて自車両Vが駐車可能な駐車スペースを探索し、ステップS3にて駐車可能な駐車スペースがあるか否かを判定する。駐車可能な駐車スペースがある場合はステップS4へ進み、駐車可能な駐車スペースがない場合はステップS1へ戻る。ステップS2により駐車可能な駐車スペースが検出されない場合は、「駐車スペースがありません」といった言語表示または音声にて操作者に報知し、本処理を終了してもよい。
【0044】
目標駐車スペース設定器11は、ステップS4にて、駐車可能な駐車スペースPS1,PS2,PS3を車載ディスプレイに表示し、操作者Uに希望する駐車スペースの選択を促し、操作者Uが特定の駐車スペースPS1を選択したら、その目標駐車位置情報を駐車経路生成部15へ出力する。駐車経路生成部15は、ステップS5において、自車両Vの現在位置と目標駐車位置とから、図9B図9Dに示す駐車経路R1,R2を生成するとともに、物体減速演算部16は、物体検出器13により検出された物体情報に基づいて、自律駐車制御時の減速開始タイミングを演算する。駐車経路生成部15により生成された駐車経路は経路追従制御部17へ出力され、物体減速演算部16により演算された減速開始タイミングは、目標車速生成部18へ出力される。
【0045】
以上により自律駐車制御がスタンバイ状態となるので、操作者Uに自律駐車制御の開始の承諾を促し、操作者Uが開始を承諾することで自律駐車制御が開始される。図9Aに示す後退駐車においては、図9Aに示す現在位置から一旦前進し、図9Bに示す切り返し位置に到着したら、ステップS6にて操作者Uの降車を促したのち、図9Cに示すように左に操舵しながら後退し、図9Dに示す駐車スペースPS1まで直進する。
【0046】
このような自律駐車制御を実行中に、ステップS6にて操作者Uが遠隔操作器23を持って降車すると、ステップS7にて、操作者Uは遠隔操作器23を起動する。なお、ステップS6からステップS9までの間は、自車両Vは停車状態とされる。ステップS8においては、遠隔操作器23と自車両Vとのペアリング処理が行われる。このペアリング処理により、自車両Vが遠隔操作器23を認証して指令の受け付けが可能になると、ステップS9にてリモート操作が開始され、遠隔操作器23の実行ボタンを押し続けることで、リモート駐車制御の実行が継続する。一方、操作者Uが遠隔操作器23の停止ボタンを押すと(又は実行ボタンを離すと)、リモート駐車制御の停止指令が、経路追従制御部17及び目標車速生成部18(又はこれに代えて、操舵角制御部19及び車速制御部20でもよい)に送信され、リモート駐車制御が一時停止する。なお、リモート駐車制御が一時停止した状態で安全が確認された場合など、再び操作者Uが遠隔操作器23の実行ボタンを押し続けることで、リモート駐車制御の実行が再開する。
【0047】
操作者Uが車外に降車して遠隔操作器23の実行ボタンを押し続けると、経路追従制御部17は、駐車経路R1,R2に沿った目標操舵角を操舵角制御部19へ逐次出力するとともに、目標車速生成部18は、駐車経路R1,R2に沿った目標車速を車速制御部20へ逐次出力する。これにより、自車両Vは目標車速で駐車経路R1,R2に沿って自律駐車制御を実行する。このとき、ステップS10において、物体検出器13は、自車両Vの周囲に存在する人間Hや障害物Wなどの物体の有無を検出し、ステップS11にて物体を検出した場合はステップS12へ進み、物体を検出しない場合はステップS15へ進む。なお、ステップS10から後述するステップS16までの処理は、ステップS16にて自車両Vが目標とする駐車スペースに到着するまでの間、所定時間間隔で実行される。
【0048】
ステップS12からステップS15までの処理は、上述した路面表示パターン設定部21にて設定されるパターンPの表示形態例に応じて実行される。すなわち、ステップS12では、路面表示パターン設定部21は、操作者Uに把持された遠隔操作器23の位置を検出する。遠隔操作器23から自車両Vへのリモート操作の実行継続指令は、遠隔操作器23のアンテナ231から車両Vのアンテナ24,24への短距離通信にて行われることから、自車両Vに設けられた電波強度センサにより車両Vのアンテナ24,24と遠隔操作器のアンテナ231との間の電波強度を検出し、三角測量法などを用いて遠隔操作器23の位置を演算する。車両のアンテナ24,24の装着位置及びその距離は既知であるから、自車両Vに対する遠隔操作器23の相対位置を演算することができる。上述した第3表示形態例(図7)では、パターン表示器22aによるパターンPuを自車両Vから遠隔操作器23に向かう路面の所定位置に表示するため、ステップS12にて遠隔操作器23の位置が検出される。なお、その他の表示形態例のように、遠隔操作器23の位置に拘らず、パターンPを表示する場合には、当該ステップS12を省略してもよい。
【0049】
ステップS13では、路面表示パターン設定部21は、物体検出器13により検出された障害物などの物体と、自車両Vとの衝突時間を演算する。物体検出器13により障害物までの距離が検出され、目標車速生成部18により目標車速が生成されるので、これらの情報により、自車両Vが物体と衝突するまでの時間TTCが演算される。上述した第3表示形態例(図7)では、物体と衝突するまでの時間TTCが最も短い人間H1に応じた検出範囲のパターンPがパターン表示器22dを用いて路面に表示されるため、ステップS13にて衝突時間TTCが演算される。なお、その他の表示形態例のように、物体と衝突するまでの時間TTCに拘らず、パターンPを表示する場合には、当該ステップS13を省略してもよい。
【0050】
ステップS14では、路面表示パターン設定部21は、物体の検出範囲に応じたパターンPを検出範囲に向かう路面の所定位置に表示するように、パターン表示器22を制御する。ここでいう物体の検出範囲に応じたパターンとは、上述した第1表示形態例から第3表示形態例のいずれかを含む意味である。すなわち、第1表示形態例(図5A図5D)のように、自車両Vが人間Hの横を通過する場合、人間Hを検出した物体検出器13に対応するパターン表示器22の表示を、人間Hの検出範囲に応じた所定パターンP、同図に示す例では、検出した人間Hを含まないようにパターンの面積を縮小して、検出範囲に向かう路面の所定位置に表示すること、第2表示形態例(図6)のように、人間Hなどの物体を検出したときは、人間Hに向かう路面の所定位置だけでなく、その後に人間Hが相対移動する位置にも、検出範囲に応じた所定パターンPを表示すること、第3表示形態例(図7)のように、衝突時間が最も短い物体(人間H1)のみについての所定パターンPを、その物体検出器13dに対応するパターン表示器22dを用いて、当該物体(人間H1)に向かう路面の所定位置に表示すること、同じく第3表示形態例(図7)のように、遠隔操作器23に向かう路面の所定位置にも、パターン表示器22aを用いて、人間H1に向けて表示した所定パターンPに対応するパターンPuを視認可能に表示すること、が含まれる。
【0051】
図9Aのシーンでは、自車両Vの周辺に2人の人間H1,H2が立っているが、物体検出器13によりこれらの人間H1,H2を検出していないので、路面表示パターン設定部21は、各物体検出器13a~13hに相当する各パターン表示器22a~22hによるパターンを、検出範囲に相関する面積のパターンとする。また、図9Bに示すシーンでは、物体検出器13bにより人間Hが検出されたので、この物体検出器13bに対応するパターン表示器22bによるパターンPを縮小またはOFFする。同様に、図9Cに示すシーンでは、物体検出器13hにより人間Hが検出されたので、この物体検出器13hに対応するパターン表示器22hによるパターンPを縮小またはOFFする。同様に、図9Dに示すシーンでは、物体検出器13cにより人間Hが検出されたので、この物体検出器13hに対応するパターン表示器22cによるパターンPを縮小またはOFFする。
【0052】
ステップS15では、物体検出器13a~13hにより何らの物体も検出されない場合には、路面表示パターン設定部21は、その物体検出器13a~13hに相当するパターン表示器22a~22hによるパターンを、検出範囲に相関する面積のパターンとする。なお、ステップS11にて実行される判断は、物体検出器13a~13h毎に行われ、これに対するステップS14及びS15のパターンPの表示も、各物体検出器13a~13hに対応するパターン表示器22a~22h毎に行われる。
【0053】
ステップS16にて、自車両Vが目標駐車スペースに到着したか否かを判断し、到着していない場合はステップS10へ戻り、自車両Vが目標駐車スペースに到着した場合は、以上の自律駐車制御を終了する。
【0054】
以上のとおり、本実施形態のリモート駐車システム1によれば、自律走行制御機能を備えた自車両Vを自律走行制御させる場合に、自車両Vの周辺に人間Hなどの物体が存在するか否かを探索し、物体を検出したときは、検出範囲に応じた所定パターンを検出範囲に向かう路面の所定位置に表示する。これにより、自車両Vの周囲に存在する人間Hは、路面に表示されたパターンPとその大きさを視認することで、自車両Vが自分を検出していること、換言すれば自車両Vの自律走行範囲に自分が含まれないこと、さらに言えば、自車両Vが自分に接触しないことを認識することができる。
【0055】
また、本実施形態のリモート駐車システム1によれば、人間Hなどの物体を検出したときは、物体に向かって表示する所定パターンを、物体を含まないパターンに縮小して表示するので、当該人間Hは、パターンPを視認するだけで感覚的に自車両Vが自分を検出していること、換言すれば自車両Vの自律走行範囲に自分が含まれないこと、さらに言えば、自車両Vが自分に接触しないことを認識することができる。
【0056】
また、本実施形態のリモート駐車システム1によれば、人間Hなどの物体を検出したときは、物体に向かって表示する所定パターンの色彩を、物体を検出しないときに表示する所定パターンの色彩とは異なる色彩に設定するので、当該人間Hは、パターンPを視認するだけで感覚的に自車両Vが自分を検出していること、換言すれば自車両Vの自律走行範囲に自分が含まれないこと、さらに言えば、自車両Vが自分に接触しないことを認識することができる。
【0057】
また、本実施形態のリモート駐車システム1によれば、人間Hなどの物体を検出したときは、物体に向かって表示する所定パターンの点滅パターンを、前記物体を検出しないときに表示する所定パターンの点滅パターンとは異なる点滅パターンに設定するので、当該人間Hは、パターンPを視認するだけで感覚的に自車両Vが自分を検出していること、換言すれば自車両Vの自律走行範囲に自分が含まれないこと、さらに言えば、自車両Vが自分に接触しないことを認識することができる。
【0058】
また、本実施形態のリモート駐車システム1によれば、自車両Vの外部にある遠隔操作器23からの実行指令又は停止指令に基づいて、自車両Vを自律走行制御により所定スペースに入庫させ、又は自律走行制御により所定スペースから出庫させる場合に、遠隔操作器23の位置を検出し、人間Hなどの物体を検出したときは、物体に向かって所定パターンPを表示すると同時に、遠隔操作器23に向かう路面の所定位置に、所定パターンPに対応するパターンPuを視認可能に表示するので、人間H1が操作者Uから死角となる位置に立っていても、操作者Uは物体(人間H1)の存在を認識することができる。
【0059】
また、本実施形態のリモート駐車システム1によれば、複数の物体を検出したときは、自車両Vの走行速度を検出し、自車両Vが、検出した各物体に衝突するまでの衝突時間TTCを演算し、衝突時間TTCが最も短い物体についての所定パターンPのみを、当該物体に向かう路面の所定位置に表示するので、必要とされる情報のみを適切に表示することができ、人間Hは、パターンPを視認するだけで感覚的に自車両Vが自分を検出していること、換言すれば自車両Vの自律走行範囲に自分が含まれないこと、さらに言えば、自車両Vが自分に接触しないことを認識することができる。
【0060】
また、本実施形態のリモート駐車システム1によれば、人間Hなどの物体を検出したときは、自車両Vと物体との相対速度を検出し、その後に物体が相対移動する位置を相対速度に基づいて演算し、物体に向かう路面の所定位置と、相対移動する位置に向かう路面の所定位置とに、所定パターンPを表示するので、これを視認した人間Hは、路面に表示されたパターンPとその大きさと位置とを視認することで、自車両Vが自分を検出していること、換言すれば自車両Vの自律走行範囲に自分が含まれないこと、さらに言えば、自車両Vが自分に接触しないことを、その後の状況まで認識することができる。
【0061】
上記操舵角制御部19及び車速制御部20は本発明に係る走行制御器に相当し、上記目標駐車スペース設定器11、駐車経路生成部15、経路追従制御部17及び目標車速生成部18は本発明に係る制御器に相当し、上記路面表示パターン設定部21及び遠隔操作器23の位置検出器14は本発明に係る表示制御器に相当する。
【符号の説明】
【0062】
1…リモート駐車システム
11…目標駐車スペース設定器
12…車両位置検出器
13…物体検出器
14…遠隔操作器の位置検出器
15…駐車経路生成部
16…物体減速演算部
17…経路追従制御部
18…目標車速生成部
19…操舵角制御部
20…車速制御部
21…路面表示パターン設定部
22…パターン表示器
23…遠隔操作器
231…アンテナ
24…アンテナ
V…自車両
V1~V6…他車両
P,Pu…表示するパターン
PS1,PS2,PS3…駐車スペース
S…出庫スペース
U…操作者
H,H1,H2…人間(物体)
W…障害物(物体)
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図10