(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】複合材料及び複合材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 9/26 20060101AFI20230501BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20230501BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20230501BHJP
【FI】
C08J9/26 102
C08L101/00
C08K3/013
(21)【出願番号】P 2021058870
(22)【出願日】2021-03-30
【審査請求日】2021-12-03
(31)【優先権主張番号】P 2020064896
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100163463
【氏名又は名称】西尾 光彦
(72)【発明者】
【氏名】大塚 哲弥
(72)【発明者】
【氏名】三村 貴信
(72)【発明者】
【氏名】加藤 智也
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-109101(JP,A)
【文献】特開2013-014716(JP,A)
【文献】特開2019-044130(JP,A)
【文献】特開2019-127535(JP,A)
【文献】特表2019-533049(JP,A)
【文献】特開2008-088284(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00-9/42
C08L 101/00
C08K 3/013
C09K 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機粒子及び樹脂を含む固体部を備え、
前記固体部の内部に、複数の空隙を含む多孔質構造が形成され、
前記無機粒子の少なくとも一部は、前記空隙に面する前記固体部の壁面に存在し、
前記複数の空隙は、直接又は前記無機粒子を介して互いに接し、
前記複数の空隙にわたって延びる伝熱路が互いに接する前記無機粒子により形成されて
おり、
下記式(1)により決定される値P
0
が30以上である、複合材料。
P
0
=(前記空隙の平均径[μm]/前記無機粒子の平均粒径[μm])×(空隙率[体積%]/100) ・・・式(1)
【請求項2】
無機粒子及び樹脂を含む固体部を備え、
前記固体部の内部に、複数の空隙を含む多孔質構造が形成され、
前記無機粒子の少なくとも一部は、前記空隙に面する前記固体部の壁面に存在し、
前記複数の空隙は、直接又は前記無機粒子を介して互いに接し、
前記複数の空隙にわたって延びる伝熱路が互いに接する前記無機粒子により形成されており、
前記無機粒子の実質的にすべてが、前記壁面と前記空隙同士の接続部とに存在する、複合材料。
【請求項3】
無機粒子及び樹脂を含む固体部を備え、
前記固体部の内部に、複数の空隙を含む多孔質構造が形成され、
前記無機粒子の少なくとも一部は、前記空隙に面する前記固体部の壁面に存在し、
前記複数の空隙は、直接又は前記無機粒子を介して互いに接し、
前記複数の空隙にわたって延びる伝熱路が互いに接する前記無機粒子により形成されており、
非発泡体である、複合材料。
【請求項4】
無機粒子及び樹脂を含む固体部を備え、
前記固体部の内部に、複数の空隙を含む多孔質構造が形成され、
前記無機粒子の少なくとも一部は、前記空隙に面する前記固体部の壁面に存在し、
前記複数の空隙は、直接又は前記無機粒子を介して互いに接し、
前記複数の空隙にわたって延びる伝熱路が互いに接する前記無機粒子により形成されており、
前記無機粒子のアスペクト比は、1以上50未満である、複合材料。
【請求項5】
前記複合材料の断面において、前記空隙の最長径の長さを有する線分Aと、前記線分Aの中点を通過して前記線分Aに直交し、かつ、前記空隙の一方の端から他方の端までの長さを有する線分Bと、を定めて、
前記線分Aの前記中点を重心とし、かつ、隣り合う2辺が前記線分A及び前記線分Bにそれぞれ平行であって平行な前記線分A又は前記線分Bの2倍の長さを有する長方形Cを定めて、
前記長方形Cから前記空隙部分を除いた領域を測定領域と定めて、前記測定領域を50μm四方の複数の領域Dに分割したとき、
前記複数の領域Dのうち、前記無機粒子に含まれている特定の原子の割合が最小となる前記領域における値Xと、前記無機粒子に含まれている特定の原子の割合が最大となる前記領域における値Yとが、Y/X≧2の関係を満たす、請求項1
~4のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項6】
下記式(1)により決定される値P
0が30以上である、請求項
2~4のいずれか1項に記載の複合材料。
P
0=(前記空隙の平均径[μm]/前記無機粒子の平均粒径[μm])×(空隙率[体積%]/100) ・・・式(1)
【請求項7】
熱伝導率が0.5W/(m・K)以上である、請求項
1~6のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項8】
前記複数の空隙は、実質的に相似である外形を有する、請求項1~
7のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項9】
前記空隙の前記外形が実質的に球形である、請求項
8に記載の複合材料。
【請求項10】
前記無機粒子の実質的にすべてが、前記壁面と前記空隙同士の接続部とに存在する、請求項1
、3、及び4のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項11】
当該複合材料は、非発泡体である、請求項1
、2、及び4のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項12】
前記空隙の平均径は、50μm~5000μmであり、
前記無機粒子の平均粒径は、0.1μm~50μmである、請求項1~
11のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項13】
前記無機粒子のアスペクト比は、1以上50未満である、請求項1~
3のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項14】
空隙率が10体積%~60体積%である、請求項1~
13のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項15】
第1樹脂と前記第1樹脂の表面に配置された無機粒子とを含む複数の複合粒子を備え、かつ互いに接する前記無機粒子により形成された伝熱路が前記複数の複合粒子の表面を経由して延びるように前記複数の複合粒子の少なくとも一部が互いに接している粒子集合体の空隙に、第2樹脂又は前記第2樹脂の前駆体を含む流動体を充填することと、
充填された前記流動体の流動性が低下し、かつ前記流動体が前記前駆体を含む場合は前記前駆体から前記第2樹脂が生成するように、前記流動体を加熱することと、
前記第1樹脂を収縮又は除去することにより、前記無機粒子の少なくとも一部が前記第2樹脂の壁面に存在する複数の空隙を形成することと、を含む、
複合材料の製造方法。
【請求項16】
前記第1樹脂が互いに実質的に相似である外形を有し、
前記複数の空隙が互いに実質的に相似である外形を有する、請求項
15に記載の複合材料の製造方法。
【請求項17】
前記複数の空隙は、発泡工程を経ることなく形成される、請求項
15又は
16に記載の複合材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材料及び複合材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発泡材料などの複数の空隙を有する材料において熱伝導性を高める試みがなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、無機材料からなる鱗片状のフィラーと、そのフィラーを結合する熱硬化性樹脂からなる結合樹脂と、を備えた複合材料が開示されている。この複合材料は、複数のボイドが分散するように形成された発泡材料であり、ボイドの内壁には、フィラーの平坦面同士が重なるように、フィラーが集積されている(請求項1及び
図1)。特許文献1には、フィラーの厚さに対するフィラーの平坦面の平均長さの比率、すなわちアスペクト比が50未満であると、フィラーの平坦面同士が重なり難いことが記載されている。
【0004】
無機フィラーを用いながらも断熱性に優れた複合材料も提案されている。特許文献2には、ポリオール、発泡剤、層状粘土鉱物等を含む組成物から得られるポリウレタンフォームが開示されている。この複合材料は、高い独立気泡率を有し、その内部では無機フィラーである層状粘土鉱物が均一に分散されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-109101号公報
【文献】特開2009-191171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術では、発泡によるフィラーの集積により熱伝導性の向上が図られている。この技術では、フィラーの接触面積を確保するために、アスペクト比が高い鱗片状のフィラーが実質的に必要とされている。このため、この技術は、無機粒子の形状に関わらずに、複数の空隙を有する材料において熱伝導性能を高める観点から再検討の余地を有している。そこで、本発明は、所定の鱗片状のフィラーを備えていなくても、高い熱伝導性能を発揮しうる新規の複合材料を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
無機粒子及び樹脂を含む固体部を備え、
前記固体部の内部に、複数の空隙を含む多孔質構造が形成され、
前記無機粒子の少なくとも一部は、前記空隙に面する前記固体部の壁面に存在し、
前記複数の空隙は、直接又は前記無機粒子を介して互いに接し、
前記複数の空隙にわたって延びる伝熱路が互いに接する前記無機粒子により形成されている、複合材料を提供する。
【0008】
また、本発明は、
第1樹脂と前記第1樹脂の表面に配置された無機粒子とを含む複数の複合粒子を備え、かつ互いに接する前記無機粒子により形成された伝熱路が前記複数の複合粒子の表面を経由して延びるように前記複数の複合粒子の少なくとも一部が互いに接している粒子集合体の空隙に、第2樹脂又は前記第2樹脂の前駆体を含む流動体を充填することと、
充填された前記流動体の流動性が低下し、かつ前記流動体が前記前駆体を含む場合は前記前駆体から前記第2樹脂が生成するように、前記流動体を加熱することと、
前記第1樹脂を収縮又は除去することにより、前記無機粒子の少なくとも一部が前記第2樹脂の壁面に存在する複数の空隙を形成することと、を含む、
複合材料の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、所定の鱗片状のフィラーを備えていなくても、高い熱伝導性能を発揮しうる新規の複合材料を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る複合材料の一例を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る複合材料の別の一例を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る複合材料において、超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡を用いたエネルギー分散型X線分光法による測定位置を説明する図である。
【
図4】
図4は、サンプル1に係る複合材料の断面を光学顕微鏡で観察した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。以下の説明は、本発明の例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0012】
図1に示すように、本実施形態に係る複合材料1は、固体部10を備えている。固体部10は、無機粒子20及び樹脂30を含む。固体部10の内部には、例えば、無機粒子20を介し、又は無機粒子20を介さずに直接、互いに接する複数の空隙40を含む多孔質構造が形成されている。例えば、無機粒子20の少なくとも一部は、空隙40に面する固体部10の壁面に存在している。伝熱路5及び6は、例えば、複数の空隙40にわたって、すなわち複数の空隙40の周縁部を経由して、延びている。伝熱路5及び6は、連続して、言い換えると互いに接する又は近接するように配置された複数の無機粒子20により形成されている。伝熱路5及び6は、例えば、固体部10の内部を通過せずに、より具体的には固体部10の壁面に沿って、延びている。例えば、一部の伝熱路5は、複合材料1の表面1aからこの表面1aと反対側の表面1bにまで達している。
【0013】
特許文献1に記載の技術のように、互いに離間した空隙を含む経路を経由する伝熱路を形成するためには、離間した空隙の外周同士が無機粒子で結ばれるように固体部10の内部を縦断する無機粒子が必要となる。このため、無機粒子のアスペクト比を高く設定する必要がある。これに対し、
図1に示した形態によれば、無機粒子20のアスペクト比が高くなくても、伝熱路5及び6が確保され、複合材料1が高い熱伝導性能を発揮しうる。複合材料1には、隣接する空隙40を結び、かつその間において固体部10に囲まれた無機粒子20が含まれていなくてもよい。
【0014】
図1に示したような特定の断面に、すべての伝熱路が現れるとは限らないこと、さらに特定の伝熱路のすべての部分が現れるとは限らないこと、には注意する必要がある。例えば、伝熱路6は、
図1を見る限りは表面1bにまで延びていないように見える。しかし、伝熱路6は、この断面には現れない無機粒子を通過して表面1bにまで達している。同様に、特定の断面のみではすべての空隙の接触は確認できない。例えば、空隙50は、
図1を見る限りは孤立している。しかし、空隙50は、紙面の厚さ方向に隣接する別の空隙に接触している。
【0015】
ただし、すべての伝熱路が表面1aから表面1bに到達している必要はない。また、多孔質構造に含まれるすべての空隙が別の空隙に直接又は無機粒子を介して接している必要もない。
【0016】
接続部41及び43には樹脂30が存在しない。接続部41には樹脂30及び無機粒子20が存在しない。接続部41において直接接している空隙40は、連通する1つの空間を形成している。無機粒子21が存在する接続部43において互いに接している空隙40は、無機粒子21の間の微小な隙間を介して連通する1つの空間を形成していてもよく、互いに分離した空間として存在していてもよい。ただし、
図1では無機粒子21を介して接しているように見える空隙40が、
図1とは別の断面においては直接接して連通していてもよい。
【0017】
図2に示すように、空隙40の内部には粒子60が存在していてもよい。粒子60は、典型的には樹脂粒子である。この樹脂粒子は、後述する第1樹脂により構成されていてもよい。粒子60は、熱処理により収縮した第1樹脂でありうる。収縮前の樹脂粒子は、空隙40に相当する形状を有していてもよい。空隙内を占めていた樹脂は、
図1に示したように除去されていてもよいし、
図2に示したように変形して残存していてもよい。後者の場合、粒子60は、無機粒子20に接していてもよい。特定の断面では粒子60の存在が確認できない空隙50の内部にも、別の断面を観察すると粒子60の存在が確認されることがある。
図2に示した形態では、空隙40及び50の少なくとも一部に、当該空隙よりも小さい粒子60が存在している。
【0018】
空隙40の周縁の無機粒子20は、その少なくとも一部が空隙40に露出している。ただし、その全部が空隙40に露出している必要はない。
【0019】
無機粒子20は、例えば、樹脂30の熱伝導率より高い熱伝導率を有する限り、特定の材料に限定されない。無機粒子20の例は、六方晶窒化ホウ素(h-BN)、アルミナ、結晶性シリカ、非晶性シリカ、窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭素繊維、銀、銅、アルミニウム、炭化ケイ素、黒鉛、酸化亜鉛、窒化ケイ素、炭化ケイ素、立方晶窒化ホウ素(c-BN)、べリリア、及びダイヤモンドである。無機粒子20の形状は、特定の形状に限定されない。形状の例は、球形状、ロッド状(短繊維状を含む)、鱗片状、及び顆粒状である。顆粒状とは、例えば、バインダーを用いて複数の無機粒子20を凝集させた形状又は複数の無機粒子20の焼結体を意味する。
【0020】
無機粒子20のアスペクト比は、特定の値に限定されない。無機粒子20のアスペクト比は、50未満、40以下、さらに30以下であってもよい。無機粒子20のアスペクト比は、1以上であってもよく、それを超える値、例えば2以上、さらに3以上であってもよい。特に断らない限り、アスペクト比は、粒子の最小径に対する粒子の最大径の比(最大径/最小径)により定める。なお、本明細書において、最小径は、最大径を定める線分の中点を通過する最短の線分により定める。
【0021】
無機粒子20の平均粒径は、特定の値に限定されない。無機粒子20の平均粒径は、例えば、0.05μm~100μmであり、0.1μm~50μm、0.1μm~30μm、0.5~10μmであってもよい。「平均粒径」は、例えば、レーザー回折散乱法によって求めることができる。平均粒径は、例えば、マイクロトラック・ベル社製の粒度分布計(マイクロトラックMT3300EXII)を用いて、頻度が体積基準の分率で示される粒度分布曲線より求められる、50%累積値(メディアン径)d50である。
【0022】
無機粒子20の形状は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)等を用いた観察によって決定できる。例えば、アスペクト比(最大径/最小径)が1.0以上1.7未満、特に1.0以上1.5以下、さらには1.0以上1.3以下であって、輪郭の少なくとも一部、特に実質的に全部、が曲線として観察される場合、無機粒子20は、球形状であると判断できる。
【0023】
鱗片状は一対の主面及び側面を有する板状の形状である。主面は、無機粒子20の最も面積の大きい面であり、通常は実質的に平坦な面である。無機粒子20が鱗片状である場合、アスペクト比は、上述の定義に代え、平均厚さに対する主面の平均寸法の比として定義される。鱗片状である無機粒子20の厚さは、一対の主面間の距離を意味する。平均厚さは、SEMを用いて任意の50個の無機粒子20の厚さを測定し、その平均値を算出することによって求めることができる。主面の平均寸法は、上述の粒度分布計を用いて測定したd50の値を用いることができる。鱗片状である無機粒子20のアスペクト比は、1.5以上、1.7以上、さらに5以上であってもよい。
【0024】
ロッド状は、棒状、柱状、樹状、針状、及び円錐形状などの棒状の形状である。ロッド状である無機粒子20のアスペクト比は、1.5以上、1.7以上、さらに5以上であってもよい。なお、無機粒子20の形状を問わず、アスペクト比の上限の例は、上述したとおりである。
【0025】
無機粒子20が球形状である場合、平均粒径は、例えば、0.1μm~50μmであり、好ましくは0.1μm~10μmであり、より好ましくは0.5μ~5μmである。無機粒子20がロッド状である場合、無機粒子20の短軸長さは、例えば、0.01μm~10μmであり、好ましくは0.05μm~1μmである。また、無機粒子20の長軸長さは、例えば、0.1μm~20μmであり、好ましくは0.5μ~10μmである。無機粒子20が鱗片状である場合、無機粒子20の主面の平均寸法は、例えば、0.1μm~20μmであり、好ましくは0.5μm~15μmである。また、無機粒子20の厚さは、例えば、0.05μm~1μmであり、好ましくは0.08μm~0.5μmである。無機粒子20がロッド状である場合、無機粒子20の最小径(通常は短軸長さ)は、例えば、0.01μm~10μmであり、好ましくは0.05μm~1μmである。また、無機粒子20の最大径(通常は長軸長さ)は、例えば、0.1μm~20μmであり、好ましくは0.5μ~10μmである。無機粒子20のサイズがこのような範囲であれば、空隙40に沿って無機粒子20が配置されやすいため、複数の空隙40にわたって延びる伝熱路5が確実に形成されうる。無機粒子20が顆粒状である場合、平均粒径は、例えば、10μm~100μmであり、好ましくは20μm~60μmである。
【0026】
複合材料1における無機粒子20の含有量は、特定の値に限定されない。複合材料1における無機粒子20の含有量は、例えば、10質量%~80質量%であり、好ましくは10質量%~70質量%、より好ましくは10質量%~55質量%である。また、複合材料1における無機粒子20の含有量は、例えば、1体積%~50体積%であり、好ましくは2体積%~45体積%、より好ましくは5体積%~40体積%、特に好ましくは5体積%~30体積%である。無機粒子20の含有量を適切に調節することによって、複合材料1は、より高い熱伝導性能を発揮しうるとともに、適切な剛性を有しうる。
【0027】
複合材料1における無機粒子20の含有量[質量%]は、複合材料1から無機粒子20以外の材料を焼失等により除去して求めることができる。精度の高い測定とするために、無機粒子の含有量[質量%]は、元素分析を用いて算出してもよい。具体的には、複合材料1に酸を加え、マイクロ波を照射し、複合材料1を加圧酸分解する。酸は、例えば、フッ酸、濃硫酸、濃塩酸、及び王水等を使用できる。加圧酸分解して得られた溶液について、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES)を用いて元素を分析する。その結果に基づいて、無機粒子20の含有量[質量%]を求めることができる。
【0028】
複合材料1における無機粒子20の含有量[体積%]は、複合材料1に含まれている無機粒子20の質量及び密度と、複合材料1の体積及び空隙率とから求めることができる。具体的には、無機粒子20の質量と密度とから、複合材料1における無機粒子20の体積Aを算出する。これとは別に、複合材料1の空隙率に基づいて、空隙40の体積を含まない複合材料1の体積Bを算出する。無機粒子20の含有量[体積%]は、(A/B)×100により求めることができる。空隙率の算出方法は、後述する。
【0029】
無機粒子20の密度は、複合材料1を電気炉にて高温加熱により有機材料を焼失させ、残った無機粒子20について、日本産業規格(JIS) R 1628:1997又はJIS Z 2504:2012に準拠して求めることができる。
【0030】
無機粒子20の少なくとも一部は、空隙40に面する固体部10の壁面に存在する。無機粒子20の別の一部21及び22は、空隙40の接続部43に存在していてもよい。固体部10の壁面において、無機粒子の一部23は、他の無機粒子と積層されていてもよい。無機粒子20の少なくとも一部は、それぞれ、隣接する無機粒子と接触し、又はごく近接し、伝熱路5及び6の一部を構成している。ただし、無機粒子20の別の一部24は、樹脂30に囲まれて存在していてもよい。言い換えると、固体部10は、その内部に空隙40に接していない無機粒子24を含みうる。
【0031】
無機粒子20の実質的にすべてが、固体部10の壁面と空隙40同士の接続部41及び43とに存在していてもよい。本明細書において、「実質的にすべて」は、70質量%以上、さらには80質量%以上、特に90質量%以上であることを意味する。この形態によれば、熱伝導率の向上に寄与する無機粒子の比率が高くなる。固体部10の内部における無機粒子20の分布は、例えば、超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡におけるエネルギー分散型X線分光法を用いて分析できる。
【0032】
空隙40に面する固体部10の壁面の一部は、無機粒子20以外の材料、典型的には樹脂30により構成されていてもよい。樹脂30は、例えば後述する第2樹脂である。
【0033】
固体部10を構成する樹脂30は、例えば、架橋ポリマーであり、具体的には熱硬化性樹脂である。熱硬化性樹脂の例は、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アニリン樹脂、シリコーン樹脂、フラン樹脂、ポリウレタン樹脂、アルキルベンゼン樹脂、グアナミン樹脂、キシレン樹脂、及びイミド樹脂である。樹脂の硬化温度は、例えば、25℃~160℃である。
【0034】
空隙40及び50の外形は、球形状であってもよく、実質的に球形であってもよい。本明細書において、「実質的に球形」は、最小径に対する最大径の比(最大径/最小径)が1.0~1.5、特に1.0~1.3であることを意味する。ただし、空隙40及び50の外形は、特定の形状に限定されない。その外形は、ロッド状、多面体状であってもよく、球形状と呼ぶには上記比が大き過ぎる楕円状であってもよい。空隙40及び50は、その50%以上、さらには80%以上が球形状であってもよい。発泡技術では、空隙の形状が不規則になるため、この程度に揃った形状の空隙を形成することは困難である。
【0035】
空隙40の平均径は、特定の値に限定されない。その値は、例えば、50μm~5000μmであり、好ましくは100μm~2000μm、より好ましくは300μm~1500μmである。本明細書において、空隙40の「平均径」は、複合材料1の断面をSEMで観察することによって求めた径の平均値を意味する。具体的には、空隙の全体を観察できる任意の100個の空隙40について、その最大径及び最小径を測定してその平均値を各空隙の径とし、その値が大きいほうから15個の空隙の径の平均値を「平均径」と定義する。ただし、空隙40の大きさによっては、SEMに代えて、光学顕微鏡を用いて平均径を測定してもよい。なお、後述する複合材料の製造方法において使用する第1樹脂の粒子径がよく揃っているときは、その粒子径を複合材料の空隙の平均径とみなしても、実質的には値に相異は生じない。
【0036】
複合材料1において、複合材料1の体積に対する空隙40の体積の比、つまり空隙率は、特定の値に限定されない。その空隙率は、例えば、10体積%~60体積%であり、好ましくは15体積%~50体積%、より好ましくは20体積%~45体積%である。
【0037】
空隙率は、SEMを用いて複合材料1の断面を観察し、観察した全面積に対する空隙40の総面積の比率を算出し、10枚の異なる断面の画像についての比率の平均をとることにより求めることができる。ただし、製造過程が既知の場合に限っては、以下のようにして求めてもよい。後述する第1樹脂の質量及び第1樹脂の表面に無機粒子20が配置された複合粒子の質量から、複合粒子に含まれている無機粒子20の質量を算出する。これとは別に、無機元素分析によって、複合材料1における無機粒子20の含有量[質量%]を算出する。無機粒子20の含有量[質量%]と複合材料1の質量とから、複合材料1における無機粒子20の質量が算出される。複合材料1における無機粒子20の質量と複合粒子に含まれている無機粒子20の質量とから、複合材料1を製造するときに使用した複合粒子の数量が算出される。空隙40の平均径から空隙40の体積を算出する。空隙40の体積と複合粒子の数量の積によって、複合材料1における空隙40の総体積を求める。この値を複合材料1の体積で除することによって空隙率を算出する。
【0038】
複数の空隙40は、実質的に相似である外形を有していてもよい。本明細書において、「実質的に相似」とは、個数基準により、空隙40の80%以上、特に90%以上が同種の幾何学的形状、例えば、球形状及び正多面体状、を有することを意味する。実質的に相似である複数の空隙40の外形は、好ましくは球形状である。この外形は実質的に球形であってもよい。発泡により形成した複数の空隙も個々の膨張に伴って互いに接することがある。しかし、この場合は、通常、発泡により生じる内部圧力が空隙の接続部に作用し、接続部近傍を大きく変形させる。このため、発泡による技術では、事実上、互いに接するとともに実質的に外形が相似である複数の空隙を形成することができない。
【0039】
多孔質構造は、複合材料1の一方の主面から他方の主面に至る貫通孔を有していてもよい。複合材料1が板状である場合、複合材料1の一方の主面に設けられている空隙は、複合材料1の他方の主面に面した空間に連通していてもよい。また、複合材料1の一方の主面に設けられている空隙は、複合材料1の一方の主面と交差する側面に接した空間に連通していてもよい。このような構成によれば、複合材料1は、熱伝導性と通気性とを両立しうる。本明細書において、「主面」は、複合材料1の最も広い面積を有する面を意味する。
【0040】
複数の空隙40は、局部的に接していてもよい。この場合は、空隙率を増加させた場合であっても、複合材料1の強度が低下しにくい。接続部41における空隙の連通部の径は、空隙40の平均径の25%以下、20%以下、さらには15%以下であってもよい。連通部の径は、平均径と同様、SEM又はX線CTにより測定できる。空隙40の接続部43は無機粒子21で画されているために連通部が存在しない。
【0041】
本実施形態に係る複合材料1では、例えば、下記式(1)により決定される値P0が30以上である。このような構成によれば、弾性率、硬度、緩衝性、及び防振性などの物性及び機能が変化しにくい複合材料1を得ることができる。加えて、このような構成によれば、無機粒子20の使用量を低減させることが可能になるため、複合材料1の製造コストを低減させることが可能になる。
P0=(空隙40の平均径[μm]/無機粒子20の平均粒径[μm])×(空隙率[体積%]/100) ・・・式(1)
【0042】
値P0の上限値は、特定の値に限定されない。その値は、例えば、1000であり、好ましくは700、より好ましくは500、特に好ましくは450である。
【0043】
以上の説明から明らかな通り、複合材料1は、非発泡体であってもよい。特許文献1に記載されたような従来の発泡体は、
図1及び2に示したような特徴的な構造、すなわち微細かつ正確に無機粒子20の配置が制御された構造を有し得ない。
【0044】
複合材料1は、高い熱伝導率を有する。複合材料1によれば、無機粒子20の含有率が小さいことと、熱伝導率が高いこととが両立されうる。このため、複合材料1は、優れた熱伝導性能を有しつつ、弾性率、硬度、緩衝性、及び防振性などの物性及び機能が変化しにくい複合材料1を得ることができる。加えて、このような構成によれば、無機粒子20の使用量を低減させることが可能になるため、複合材料1の製造コストを低減することが可能になる。複合材料1は、例えば、0.5W/(m・K)以上の熱伝導率を有し、0.64W/(m・K)以上、好ましくは0.7W/(m・K)以上、より好ましくは0.8W/(m・K)以上、場合によっては1.0W/(m・K)以上の熱伝導率を有しうる。熱伝導率の上限値は、特定の値に限定されない。その値は、例えば、2.1W/(m・K)であってもよく、2.0W/(m・K)であってもよく、1.9W/(m・K)であってもよい。複合材料1の熱伝導率は、米国材料試験協会規格(ASTM) D5470-01(一方向熱流定常法)に準拠して、試験体1枚及び対称構成方式にて測定した値である。
【0045】
図3を参照して、本明細書において、複合材料1の特定の領域における各元素の組成を求めるための測定領域の決定方法を以下に例示する。まず、複合材料1について、SEMによって空隙40を観察する。SEMによって観察された空隙40の最長径を測定し、この最長径の長さLを有する線分Aを定める。次に、線分Aの中点を通過して線分Aに直交し、かつ、空隙40の一方の端から他方の端まで長さL’を有する線分Bを定める。さらに、線分Aの中点を重心とし、かつ、隣り合う2辺が線分A及び線分Bにそれぞれ平行であって平行な線分A又は線分Bの2倍の長さ(線分Aに平行な方向に2L、線分Bに平行な方向に2L’)を有する長方形Cを定める。この長方形Cから空隙部分を除いた領域を測定領域と定義する。
【0046】
この測定領域内を、50μm四方の正方形で定められた複数の領域Dに分割する。複数の領域Dのそれぞれにおいて、領域Dに含まれている原子の割合を分析する。分析には、例えば、超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡におけるエネルギー分散型X線分光法が用いられる。
【0047】
複数の領域Dにおいて上記した分析の結果、無機粒子に含まれている原子(例えばB)の割合[原子%]が最大となる領域における値をYと定義する。同様に、無機粒子に含まれている原子(例えばB)の割合[原子%]が最小となる値をXと定義する。このとき、Y/Xが、例えば、Y/X≧2の関係を満たす。上記Y/Xの下限値は、2.2であってもよく、2.5であってもよく、場合によっては3.0であってもよい。Y/Xの上限値は特定の値に限定されない。その値は、10であってもよく、9.5であってもよい。なお、分析対象とする原子は、無機粒子が化合物から構成される場合はその化合物の正イオンの元素とするとよく、無機粒子が単体から構成される場合はその単体を構成する元素とするとよい。例えば、無機粒子が窒化ホウ素(BN)の場合、分析対象の原子はホウ素(B)である。無機粒子がアルミナ(Al2O3)の場合、分析対象の原子はアルミニウム(Al)である。
【0048】
Yを示す領域Dは、空隙40との間に別の空隙が存在しない領域、すなわち空隙40に隣接する領域であってもよい。本実施形態では、下記式により決定される値Qが、例えば、65以上である。値Qは、68以上であってもよく、70以上であってもよい。値Qの最大値は、特定の値に限定されない。その値は、100であってもよく、95であってもよい。
Q=100×Y/(Y+X)
【0049】
<複合材料の製造方法>
以下に、本実施形態に係る複合材料1の製造方法の一例について説明する。
【0050】
複合材料1は、第2樹脂を含む固体部10と複数の空隙40とを含む。複合材料1の製造方法は、複数の第1樹脂、典型的には樹脂粒子を含む粒子集合体の空隙に第2樹脂又は第2樹脂の前駆体を含む流動体を充填する工程と、複数の樹脂粒子を加熱して収縮又は除去することにより、複数の空隙40を形成する工程と、をこの順に具備する。ここで、複数の樹脂粒子の表面には複数の無機粒子20が含まれる。
【0051】
まず、複合粒子を得るために、第1樹脂と粘着剤との混合物を作製する。粘着剤は、無機粒子20を第1樹脂の粒子の表面に貼り付けるための添着剤である。粘着剤は、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)を含む。次に、この混合物に無機粒子20を加え、混合することによって、第1樹脂の表面に無機粒子20が配置された複合粒子を得る。混合の方法は、特定の方法に限定されない。混合の方法の例は、ボールミル、ビーズミル、プラネタリミキサー、超音波ミキサー、ホモジナイザ、及び自転公転ミキサーを用いた混合である。
【0052】
次に、複合粒子が互いに接して粒子集合体を形成するように複合粒子を型の内部に収容する。この型へ別途調製した流動体をさらに加えて混合体を調製する。流動体は、第2樹脂を含む。流動体は、第2樹脂の前駆体を含んでいてもよい。流動体は、複数の複合粒子の少なくとも一部が互いに接している粒子集合体の空隙に充填される。流動体は、少なくとも、複合粒子の表面及び複合粒子同士の接触部分に存在している。こうして、互いに接する無機粒子20により形成された伝熱路が複数の複合粒子の表面を経由して延びるように複数の複合粒子の少なくとも一部が互いに接している複合粒子の集合体が形成される。
【0053】
次に、混合体から気泡を取り除く。混合体から気泡を取り除く方法は、特定の方法に限定されない。その方法の例は、減圧脱気である。減圧脱気は、例えば、25℃~200℃で1秒間~10秒間実施される。
【0054】
その後、混合体を加熱することによって流動体の流動性を低下させる。流動体は加熱されることによって、例えば、第2樹脂の前駆体から第2樹脂が生成する反応が進行し、或いは第2樹脂の硬化が進行し、その流動性が低下する。こうして第2樹脂を含む固体部10が生成される。これにより、複合材料の前駆体が得られる。
【0055】
次に、複合材料の前駆体から第1樹脂を収縮又は除去することによって、複合材料1を作製する。複合材料の前駆体から第1樹脂を収縮又は除去する方法は、特定の方法に限定されない。方法の例は、複合材料の前駆体を加熱する方法と、複合材料の前駆体を特定の溶媒に浸漬させる方法である。これらの方法が併用されてもよい。これにより、空隙40が形成される。こうして、第1樹脂の表面から第2樹脂の表面へと無機粒子20が「転写」され、第2樹脂の壁面に無機粒子20を備えた複合材料1を得ることができる。
【0056】
複合材料の前駆体を加熱する温度は、第1樹脂を軟化させることができる温度であれば、特定の温度に限定されない。その温度は、例えば、95℃~130℃であってもよく、120℃~160℃であってもよい。
【0057】
複合材料の前駆体を特定の溶媒に浸漬させる場合、溶媒は、第2樹脂を溶解させず、かつ第1樹脂を溶解させることができれば、特定の溶媒に限定されない。溶媒の例は、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、及びアセトンである。
【0058】
第1樹脂(樹脂粒子)は、中空構造を有していてもよい。中空構造における中空部は、単一の中空部であってもよく、発泡樹脂ビーズのように複数の中空部から構成されていてもよい。中空構造を有する樹脂粒子を用いた場合は、加熱処理により第1樹脂を構成する樹脂が軟化して中空部が消失又は収縮し、それに応じて複数の空隙40が形成されることになる。ただし、樹脂粒子の中空構造は必須ではない。複合材料の前駆体を特定の溶媒に浸漬させる場合、第1樹脂は、例えば、第2樹脂より容易に溶媒に溶解することが好ましい。このような方法によれば、所望の形状を有する空隙40が形成されやすい。第1樹脂は、例えば、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、及び熱可塑性エラストマー(TPE)である。樹脂粒子は、後述する方法によって作製されてもよく、特定のサイズを有する市販の樹脂粒子を用いてもよい。原料とする第2樹脂は、例えば、架橋ポリマーであり、樹脂30として上記に例示した熱硬化性樹脂である。
【0059】
第1樹脂は、特定のサイズに限定されない。第1樹脂が球形である場合、その平均径は、例えば、50μm~5000μmであり、好ましくは300μm~2000μm、特に500μm~1500μmである。第1樹脂のサイズを適切に調節することによって、複合材料1は、適切な空隙率を有しうる。加えて、複合材料は、適切な空隙のサイズを有しうる。第1樹脂は、これらのサイズから選ばれる複数種のサイズの樹脂を使用してもよい。つまり、第1樹脂は、互いに実質的に相似である外形を有していてもよい。これにより、複合材料1は、複数の空隙40が互いに実質的に相似である外形を有することができる。
【0060】
本実施形態に係る複合材料1の製造方法によれば、無機粒子20の少なくとも一部は、空隙40に面して存在しうる。加えて、複数の空隙40にわたって延びる伝熱路が無機粒子20により形成されうる。
【0061】
本実施形態に係る複合材料1の製造方法によれば、発泡工程を経ることなく空隙40が形成される。つまり、空隙40は、発泡により形成されたものではない。
【実施例】
【0062】
実施例により、本発明をより詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0063】
(ポリスチレンビーズの作製)
純水100重量部、リン酸三カルシウム0.2重量部、及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.01重量部を、撹拌機が付属されているオートクレーブに加えた。このオートクレーブに、開始剤としてベンゾイルパーオキサイド0.15重量部及び1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.25重量部を加えて混合液を作製した。混合液を350回転/分で撹拌しながら、スチレンモノマー100重量部を加えた。その後、この溶液を98℃まで昇温させることによって重合反応を実施した。重合反応が約80%終了したとき、反応溶液を30分間かけて120℃まで昇温させた。その後、反応溶液を120℃で1時間保温して、スチレン樹脂粒子含有溶液を作製した。スチレン樹脂粒子含有溶液を95℃まで冷却した後、発泡剤としてシクロヘキサン2重量部及びブタン7重量部をオートクレーブに圧入した。その後、この溶液を再度120℃まで昇温させた。その後、溶液を120℃で1時間保温した後、室温まで冷却することによって、重合スラリーを得た。この重合スラリーを脱水、洗浄、及び乾燥させることによって、発泡性スチレン樹脂粒子を得た。この発泡性スチレン樹脂粒子をふるいにかけて、粒子径が0.2mm~0.3mmの発泡性スチレン樹脂粒子を得た。この発泡性スチレン樹脂粒子を、大開工業社製の加圧式発泡機(BHP)を用いて、650μm~1200μmの平均径を有する球形状の発泡ポリスチレンビーズを得た。この発泡ポリスチレンビーズを、公称目開き(JIS Z 8801-1:2019)が1.18mm及び1mmであるJIS試験用ふるいにかけた。このとき、公称目開きが1.18mmのふるいを通過し、かつ、公称目開きが1mmのふるいを通過しなかった発泡ポリスチレンビーズを使用した。さらに、発泡ポリスチレンビーズを、目開きが0.69mm及び0.63mmである奥谷金網製作所社製の平織金網を用いてふるいにかけた。このとき、目開きが0.69mmの金網を通過し、かつ、0.63mmの金網を通過しなかった発泡ポリスチレンビーズも使用した。
【0064】
(サンプル1)
ガラス製容器に、前述の球形状のポリスチレンビーズ(平均径:1000μm)(かさ密度:0.025g/cm3)及びポリエチレングリコール(和光純薬社製、PEG-400)を1:1の重量比になるように秤量して加えた。この混合物を、THINKY社製の自転公転ミキサー(ARE-310)を用いて撹拌させた。次に、この混合物に、昭和電工社製の鱗片状の窒化ホウ素(UHP-1K、主面の平均寸法:8μm、厚さ:0.4μm)を、ポリスチレンビーズと窒化ホウ素とが1:2の重量比になるようにさらに加えて混合物を調製した。この混合物を、自転公転ミキサーを用いて2000revolutions per minute(rpm)で、5分間混練することによって、窒化ホウ素が被覆されたポリスチレンビーズを作製した。
【0065】
信越化学工業社製のシリコーン樹脂(KE-106F)及びシリコーンオイル(KF-96-10CS)を10:5の重量比で加えた。この混合物に、信越化学工業社製の硬化剤(CAT-106F)を、シリコーン樹脂と硬化剤とが10:0.85の重量比になるようにさらに加えることによって、熱硬化性樹脂を作製した。
【0066】
前述の窒化ホウ素が被覆されたポリスチレンビーズを内径95mm×95mm×24mmのプラスチックケースに充填し、プラスチックケースに吉田隆ステンレス社製の平織金網(直径:0.18mm、50メッシュ)を敷き、さらにその上に、ステンレス製パンチングメタル(直径:5mm、厚さ:1mm、ピッチ:8mm)を敷き、クランプで固定させた。
【0067】
このプラスチックケースに前述の熱硬化性樹脂を加え、減圧脱泡させた。このときの圧力は、ゲージ圧で、-0.08MPa~-0.09MPaであった。この操作を3回繰り返して、ポリスチレンビーズ間に、熱硬化性樹脂を含浸させた。次に80℃で2時間加熱することによってシリコーン樹脂を硬化させて、ポリスチレンビーズが内包された樹脂成形品を得た。この樹脂成形品を所定の寸法に切断した。これを130℃で30分間加熱することによって、ポリスチレンビーズを軟化させ、樹脂成形品から流出させた。これにより、サンプル1に係る複合材料を作製した。
【0068】
(サンプル2~4)
表4に記載したポリスチレンビーズ及び窒化ホウ素を使用したことと、表1に記載した分量になるように混合物を調製したこととを除き、サンプル1と同様にして、サンプル2及び3に係る複合材料を得た。表1に記載したポリスチレンビーズ及び窒化ホウ素を使用したことと、表1に記載した分量になるように混合物を調製したことと、熱硬化性樹脂に代えて、窒化ホウ素が30質量%含まれているシリコーン樹脂を使用したこととを除き、サンプル1と同様にして、サンプル4に係る複合材料を得た。なお、表1~3において、「-」は、当該成分を含んでいないことを意味する。
【0069】
(サンプル5)
窒化ホウ素に変えて、昭和電工社製の球形状の半径1μmのアルミナを用いたことと、表1に記載した分量になるように混合物を調製したこととを除き、サンプル1と同様にして、サンプル5に係る複合材料を得た。
【0070】
(サンプル6)
表4に記載したポリスチレンビーズ及び窒化ホウ素を使用したことと、表1に記載した分量になるように混合物を調製したこととを除き、サンプル1と同様にして、サンプル6に係る複合材料を得た。
【0071】
(サンプル7)
ガラス製容器に、上述のポリスチレンビーズ(平均径:1000μm)、昭和電工社製の窒化ホウ素(UHP-1K、主面の平均寸法:8μm、厚さ:0.4μm)、及び上述のシリコーン樹脂を表2に記載の分量になるように秤量して加え、混合させた。この混合物のみをプラスチックケースに充填したことを除き、サンプル1と同様にして、サンプル7に係る複合材料を作製した。
【0072】
(サンプル8)
昭和電工社製の半径1μmのアルミナ粒子CB-P02、日立化成社製の不飽和ポリエステル樹脂WP-2820、及びエタノールを表3に記載の分量になるように秤量して加え、混合させることによって、スラリー状の混合物を調製した。次に、混合物を、直径50mm、高さ7mmの有底筒状の金型内に加えた。次に、金型内の混合物を、150℃で1時間加熱することにより、エタノールで不飽和ポリエステル樹脂を発泡させつつ、発泡した不飽和ポリエステル樹脂を硬化させることで、サンプル8に係る複合材料を得た。
【0073】
(サンプル9)
デンカ社製の窒化ホウ素(HGP、主面の平均寸法:5μm、厚さ:0.1μm)、シリコーン樹脂、及びエタノールを表3に記載の分量になるように秤量して加え、混合させることによって、スラリー状の混合物を調製した。次に、混合物を、直径50mm、高さ7mmの有底筒状の金型内に加えた。次に、金型内の混合物を、100℃で1時間加熱することにより、エタノールでシリコーン樹脂を発泡させつつ、発泡したシリコーン樹脂を硬化させることで、サンプル9に係る複合材料を得た。
【0074】
(サンプル10)
シリコーン樹脂に代えて、日立化成社製の不飽和ポリエステル樹脂WP-2820を使用したことと、混合物を150℃で1時間加熱したこととを除き、サンプル9と同様にして、サンプル10に係る複合材料を得た。
【0075】
(無機粒子の含有量[体積%]の算出)
サンプル1~10に係る複合材料における無機粒子の含有量[体積%]は、以下のようにして求めた。まず、サンプル1~10に係る複合材料から有機物を除去し、無機粒子を抽出した。抽出した無機粒子の質量を、窒化ホウ素の密度2.3g/cm3で除することによって無機粒子の体積Aを算出した。これとは別に、複合材料の体積及び空隙率から、空隙の体積を含まない複合材料の体積Bを算出した。複合材料における無機粒子の含有量[体積%]は、(A/B)×100により求めた。
【0076】
(無機粒子の含有量[質量%]の算出)
サンプル1~10に係る複合材料における無機粒子の含有量[質量%]は、以下のようにして求めた。まず、サンプル1~10に係る複合材料約10mgをフッ素樹脂製の容器に秤量して加えた。このフッ素樹脂製の容器にフッ酸を加えて密栓した。フッ素樹脂製の容器にマイクロ波を照射し、最高温度220℃で加圧酸分解した。得られた溶液に超純水を加えて50mLに定容した。この溶液を日立ハイテクサイエンス社製のICP-AES SPS-3520UVによってホウ素原子(B)を定量分析し、検出されたホウ素原子の含有量から窒化ホウ素の含有量[質量%]を算出した。
【0077】
(熱伝導率の測定1)
米国材料試験協会規格(ASTM) D5470-01(一方向熱流定常法)に準拠して、レスカ社製の熱伝導率測定装置TCM1001を用いて、試験体1枚及び対称構成方式にて熱流計法によりサンプル1~10に係る複合材料の熱伝導率を測定した。具体的に、まず、厚さt=4000μmの各複合材料を20mm×20mmの大きさに切断し、試験片を得た。試験片の主面の両面に、サンハヤト社製のシリコーングリース(SCH-20、熱伝導率:0.84W/(m・K))を、シリコーングリース層の厚さが100μmになるように塗布した。標準ロッドとして、加熱ブロック(80℃)を有する上部ロッド及び冷却ブロック(20℃)を有する下部ロッドを使用した。試験ブロックとして、無酸素銅製のブロックを使用した。試験片を、シリコーングリース層を介して無酸素銅製のブロックで挟んで測定試料を作製した。この測定試料を、上部ロッドと下部ロッドとの間に挟んだ。試験片の厚み方向に熱を流した。
【0078】
試験片の上面及び下面の間の温度差ΔTSを下記式(2)及び(3)に従って決定した。式(2)及び(3)において、ΔTCは、無酸素銅製のブロック(試験ブロック)の上層の上面及び下層の下面の間の温度差である。加えて、q1は、上部ロッドの複数の測温点における温度差に基づいて算出される温度勾配によって決定される熱流束[W/m2]であり、q2は、下部ロッドの複数の測温点における温度差に基づいて算出される温度勾配によって決定される熱流束[W/m2]である。tbは、無酸素銅製のブロックの厚みの和である。kbは、無酸素銅製のブロックの熱伝導率である。
ΔTS=ΔTC-(qS×tb)/kb 式(2)
qS=(q1+q2)/2 式(3)
【0079】
試験片の厚み方向における熱伝導率λ1[W/(m・K)]を、下記式(4)に従って決定した。上記(熱伝導率の測定1)によって得られた熱伝導率の値λ1を表4~6に示す。
λ1=qS×t/ΔTS 式(4)
【0080】
サンプル1~7に係る複合材料では、無機粒子の少なくとも一部は、空隙に面する固体部の壁面に存在し、複数の空隙にわたって延びる伝熱路が互いに接する無機粒子により形成されていた。これらのサンプルの空隙の平均径は、用いた樹脂粒子の粒径をよく反映して300μm以上であり、その形状も互いに相似であった。一方、発泡技術を用いたサンプル8~10では、無機粒子が固体部の壁面以外にも相当数存在し、空隙の平均径は相対的に小さく、空隙の形状もばらついていた。加えて、サンプル1~7に係る複合材料の値P0は30以上であり、熱伝導率は0.5W/(m・K)であった。一方、発泡技術を用いたサンプル8~10では、値P0と熱伝導率とを共に上記程度に高く維持することはできなかった。
【0081】
サンプル1~7に係る複合材料では、空隙は、それぞれが互いに実質的に相似である外形を有していた。
図4にサンプル1のSEM写真を示す。加えて、空隙の外形は、実質的に球形であった。
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
(水分散型アクリル系粘着剤の調製)
冷却管、窒素導入管、温度計、及び撹拌機を備えた反応容器に、イオン交換水40重量部を入れ、窒素ガスを導入しながら60℃で1時間以上撹拌して窒素置換を行った。この反応容器に、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]n水和物(重合開始剤)0.1重量部を加えて混合液を調製した。この混合液を60℃に保温しながら、モノマーエマルションAを4時間かけて徐々に滴下して乳化重合反応を行って反応液を得た。モノマーエマルションAとしては、2-エチルヘキシルアクリレート98重量部、アクリル酸1.25重量部、メタクリル酸0.75重量部、ラウリルメルカプタン(連鎖移動剤)0.05重量部、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、商品名「KBM-503」)0.02重量部、及びポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム(乳化剤)2重量部を、イオン交換水30重量部に加えて乳化したものを使用した。モノマーエマルションAの滴下が終了した後、この反応液をさらに3時間、60℃で保持し、その後、反応液を室温まで冷却した。次に、10%アンモニア水をこの反応液に添加して、反応液のpHを7に調整して、アクリル系重合体エマルション(水分散型アクリル系重合体)Aを得た。上記アクリル系重合体エマルションAに含まれるアクリル系重合体100重量部当たり、固形分基準で10重量部の粘着付与樹脂エマルション(荒川化学工業株式会社製、商品名「E-865NT」)を加えて、混合物を得た。さらに、この混合物:蒸留水の重量比で表して、10:5になるように、この混合物に蒸留水を加えて、水分散型アクリル系粘着剤を得た。
【0089】
(サンプル11)
ガラス製容器に、市販の球形状のポリスチレンビーズ(平均径:3000μm)(かさ密度:0.017g/cm3)及び水分散型アクリル系粘着剤を、1:7の重量比になるように秤量して加えた。この混合物を、生産日本社製ユニパックL-4に加えた。ユニパックを密閉し、このユニパックを5分間手で振ることによって、混合物を混合させた。次に、この混合物に、昭和電工社製の鱗片状の窒化ホウ素(UHP-1K、主面の平均寸法:8μm、厚さ:0.4μm)を、ポリスチレンビーズと窒化ホウ素とが、7:24の重量比になるように、ユニパックにさらに加えて混合物を調製した。このユニパックを5分間手で振ることによって、窒化ホウ素が被覆されたポリスチレンビーズを作製した。
【0090】
信越化学工業社製のシリコーン樹脂(KE-106F)及びシリコーンオイル(KF-96-10CS)を10:5の重量比で加えた。この混合物に、信越化学工業社製の硬化剤(CAT-106)を、シリコーン樹脂と硬化剤とが10:0.85の重量比になるようにさらに加えることによって、熱硬化性樹脂を作製した。
【0091】
前述の窒化ホウ素が被覆されたポリスチレンビーズを95mm×95mm×24mmのプラスチックケースに充填し、プラスチックケースに吉田隆ステンレス社製の平織金網(直径:0.18mm、50メッシュ)を敷き、さらにその上に、ステンレス製パンチングメタル(直径:5mm、厚さ:1mm、ピッチ:8mm)を敷き、クランプで固定させた。
【0092】
このプラスチックケースに前述の熱硬化性樹脂を加え、減圧脱泡させた。このときの圧力は、ゲージ圧で、-0.08MPa~-0.09MPaであった。この操作を3回繰り返して、ポリスチレンビーズ間に、熱硬化性樹脂を含浸させた。次に80℃で2時間加熱することによってシリコーン樹脂を硬化させて、ポリスチレンビーズが内包された樹脂成形品を得た。この樹脂成形品を所定の寸法に切断した。切断後の樹脂成形品の全体を、酢酸エチルに30分間浸漬することによって、ポリスチレンビーズを溶解させ、樹脂成形品から流出させた。その後、樹脂成形品を90℃で3時間乾燥させた。これにより、サンプル11に係る複合材料を作製した。
【0093】
(サンプル12~14)
表7に記載したポリスチレンビーズ及び窒化ホウ素を使用したことと、表7に記載した分量になるように混合物を調製したこととサンプル11と同様にして、サンプル12~14に係る複合材料を得た。
【0094】
(サンプル15)
表7に記載したポリスチレンビーズ及び窒化ホウ素を使用したことと、表7に記載した分量になるように混合物を調製したことと、熱硬化性樹脂に代えて窒化ホウ素が10質量%含まれている熱硬化性樹脂を使用したこととを除き、サンプル11と同様にして、サンプル15に係る複合材料を得た。
【0095】
(サンプル16)
表7に記載したポリスチレンビーズ及び窒化ホウ素を使用したことと、表7に記載した分量になるように混合物を調製したことと、熱硬化性樹脂に代えて窒化ホウ素が20質量%含まれている熱硬化性樹脂を使用したこととを除き、サンプル11と同様にして、サンプル16に係る複合材料を得た。
【0096】
(サンプル17~24)
窒化ホウ素、シリコーン樹脂、及びエタノールを表8に記載の分量になるように秤量して加え、混合させることによって、スラリー状の混合物を調製した。次に、混合物を、直径50mm、高さ7mmの有底筒状の金型内に加えた。次に、金型内の混合物を、100℃で1時間加熱することにより、エタノールでシリコーン樹脂を発泡させつつ、発泡したシリコーン樹脂を硬化させることで、サンプル17及び19~24に係る複合材料を得た。窒化ホウ素、シリコーン樹脂、及びエタノールを表8に記載の分量になるように秤量して加え、混合させることによって、スラリー状の混合物を調製したことと、シリコーン樹脂に代えて不飽和ポリエステル樹脂を使用したこととを除き、サンプル17と同様にして、サンプル18に係る複合材料を得た。
【0097】
(熱伝導率の測定2)
米国材料試験協会規格(ASTM) D5470-01(一方向熱流定常法)に準拠して、レスカ社製の熱伝導率測定装置TCM1001を用いて、試験体1枚及び対称構成方式にて熱流計法によりサンプル11~24に係る複合材料の熱伝導率を測定した。具体的に、まず、厚さtの各複合材料を20mm×20mmの大きさに切断し、試験片を得た。試験片の主面の両面に、サンハヤト社製のシリコーングリース(SHC-20、熱伝導率:0.84W/(m・K))を、シリコーングリース層の厚さが300μm以下の所定の厚さになるように塗布した。標準ロッドとして、加熱ブロック(110℃)を有する上部ロッド及び冷却ブロック(20℃)を有する下部ロッドを使用した。試験ブロックとして、無酸素銅製のブロックを使用した。試験片を、シリコーングリース層を介して無酸素銅製のブロックで挟んで試料を作製した。この試料を、上部ロッドと下部ロッドとの間に挟んだ。試験片の厚み方向に熱を流した。
【0098】
試験片の上面及び下面の間の温度差ΔTSを下記式(5)及び(6)に従って決定した。式(5)及び(6)において、ΔTCは、無酸素銅製のブロック(試験ブロック)の上層の上面及び下層の下面の間の温度差である。加えて、q1は、上部ロッドの複数の測温点における温度差に基づいて算出される温度勾配によって決定される熱流束[W/m2]であり、q2は、下部ロッドの複数の測温点における温度差に基づいて算出される温度勾配によって決定される熱流束[W/m2]である。tbは、無酸素銅製のブロックの厚みの和である。kbは、無酸素銅製のブロックの熱伝導率である。
ΔTS=ΔTC-(qS×tb)/kb 式(5)
qS=(q1+q2)/2 式(6)
【0099】
試験片の厚み方向における熱伝導率λ2[W/(m・K)]を、下記式(7)に従って決定した。
λ2=qS×t/ΔTS 式(7)
【0100】
上記(熱伝導率の測定2)によって得られた熱伝導率の値λ2を表7~9に示す。なお、試験片の厚さtは、カメラを用いた測定により決定した。
【0101】
(組成分析)
日立ハイテクノロジーズ社製の超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡(SU8220)を用いて、サンプル1~24に係る複合材料の特定の領域を測定し、エネルギー分散型X線分光法によって複合材料の特定の領域内に含まれる無機粒子に含まれている原子の割合を算出した。まず、サンプル1~24に係る複合材料について、上記した方法により、測定領域を定めた。この測定領域において、無機粒子に含まれている原子の割合を測定した。無機粒子が窒化ホウ素の場合、測定対象とした原子は、ホウ素(B)である。無機粒子がアルミナの場合、測定対象とした原子は、アルミニウム(Al)である。測定領域内において、無機粒子に含まれている原子の割合[原子%]の最大値をYとして、無機粒子に含まれている原子の割合[原子%]の最小値をXとして、Y/Xを算出した。また、上記した方法により、値Qを算出した。結果を表7~11に示す。
【0102】
サンプル11~16に係る複合材料では、無機粒子の少なくとも一部は、空隙に面する固体部の壁面に存在し、複数の空隙にわたって延びる伝熱路が互いに接する無機粒子により形成されていた。これらのサンプルの空隙の平均径は、用いた樹脂粒子の粒径をよく反映し、その形状も互いに相似であった。一方、発泡技術を用いたサンプル17~24では、無機粒子が固体部の壁面以外にも相当数存在し、空隙の平均径は相対的に小さく、空隙の形状もばらついていた。加えて、サンプル11~16に係る複合材料の値P0は30以上であり、熱伝導率は0.5W/(m・K)であった。一方、発泡技術を用いたサンプル17~24では、値P0と熱伝導率とを共に上記程度に高く維持することはできなかった。
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
サンプル1~6、11~16のY/Xは2以上であった。これらのサンプルにおいて最大値Yが測定された部位は、空隙に隣接する空隙周縁部であった。これは、無機粒子が空隙の周縁に集中して存在していたことを示している。一方、サンプル7~10、17~24のY/Xは、2未満であった。
【0107】
【0108】
【符号の説明】
【0109】
1,2 複合材料
1a,1b 表面
5,6 伝熱路
10 固体部
20,21,22,23,24 無機粒子
30 樹脂
40,50 空隙
41,43 接続部
60 粒子